ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード 作:メンマ46号
sideミテキ
洞窟を出て場所を変え、サトシの望むポケモン修行に最適だという島の裏側の入江に案内して貰った。
ここで俺とダイゴさんはポケモンバトルをする。
「僕の使用ポケモンは四体。君は六体。先に全滅した方の負けだ」
ダイゴさんはバトル用のポケモンを四体しか用意していなかった。あくまでこの島にいた目的は石の発掘だったからな。その為にレベルの低いココドラなんかを手持ちに入れていたらしい。まぁいきなり押しかけての申し込みだし、仕方のない事だ。
それにこれを舐めプとは思わない。
チャンピオンであるダイゴさんと一介のトレーナーに過ぎない俺とではそれだけの…いや、それ以上の実力差があるんだ。
「まさかホウエンチャンピオンのバトルを生で観られるなんて!」
「ミテキー!頑張ってー!」
「では審判は俺が務めよう」
審判役をタケシが買って出てくれたので、俺は遠慮なく一体目を先に繰り出した。数の上では俺が有利なんだから先に出すのは当たり前だ。
「まずはお前だ!行けガブリアス!!」
「いきなりガブリアス!?」
真っ先にエース中のエースであるガブリアスを出した事にマサトが驚くが、相手はチャンピオン。出し惜しみなんてしてられない。最初から全力でぶっ放す。
「ガブリアスか…なら僕はこいつだ!メタグロス!」
「メタグロス……メタングの進化系か!」
……色違いじゃない。つまりエースでありタイゴさんの相棒のメタグロスではないという事だ。
サトシとハルカはポケモン図鑑を出してメタグロスを検索する。俺がメタングを持っている事もあって興味津々だ。
ガブリアスとメタグロス……600族同士のバトルだ。遠慮はいらない。
「ガブリアス、じしんだ!!」
「でんじふゆう」
最初は当然弱点攻撃。しかしダイゴさんもメタグロスにでんじふゆうを指示して躱してくる。即座に指示を出していても完全に余裕を持っているか……。
だが浮いて回避するのは想定内!
「つるぎのまい、そしてほのおのキバ!!」
磁力で浮いている間に攻撃力にバフをかけての弱点攻撃。まずはこの物理攻撃を当てつつ、やけどの状態異常を狙う。メタグロスもガブリアスと同じ物理型のポケモンだ。攻撃力は削いでおきたい。
だがそう都合良く追加効果は出ない。それどころかつるぎのまいで二段階攻撃力が上がったガブリアスのほのおのキバを受けてもダイゴさんのメタグロスはちっとも堪えていない。
「ぜ、全然効いてない!?」
「シャドークロー!!!」
もうこの時点で俺は最後の四つ目の技枠を使う。普段ならあり得ないが、ガブリアスの覚える技でメタグロス相手に効果抜群を取れる技はかなり限られている。タイプ一致のじめん技はでんじふゆうで当たらないしな。
「アームハンマー」
ほのおのキバから間髪入れずに叩き込もうとしたシャドークローがヒットする前にメタグロスの強烈な一撃を腹に喰らい、ガブリアスは大きく後退する。
ガブリアスのスピード相手に後出しの技で先に攻撃を当てただと?
それだけじゃない。今の一撃でガブリアスは相当なダメージを受けている!技ではない完璧なカウンターでアームハンマーを喰らったガブリアスは大きく仰け反り、後退させられた。たった一撃で……それもタイプ不一致の攻撃で俺のガブリアスがここまで……!!
「なるほど、やはりそのガブリアスの特性はさめはだだね」
見ればメタグロスの腕には微々たるものだが、確かな傷があった。けどそれはガブリアスの攻撃で付いたのではなく、あくまで特性によるものだ。
それを確かめる為だけに接触技を使ったってのか。多少のダメージは何の問題もないと判断する程の差があるのか。
「メタグロス、サイコファングだ」
「もう一度つるぎのまいをしながら躱せ!」
巨大な牙のオーラを纏い、接近して来るメタグロスだがガブリアスは俺の指示を取り零す事なく、舞いながら躱して見せる。にしてもさめはだ覚悟で接触技か。その程度のダメージは問題じゃないってか。
だが素早さの種族値と動き出しではガブリアスのスピードの方が上だ。重量級のポケモン相手なら尚更だ。それに今のメタグロスはアームハンマーで素早さが下がっている。
仮に途中でサイコキネシスで動きを止めに来ても、俺のガブリアスなら力づくで振り解けるし、つるぎのまいを二回も積めば尚更だ。むしろそのサイコキネシスに集中して生まれた隙を突いて距離を詰めてやる。
だが、それ位はダイゴさんも
それならそれで良い。カウンター攻撃を警戒しつつ、サイコファングとやり合いながらほのおのキバとシャドークローで攻める……と見せかけて、
「……でんじふゆうの効果が切れた瞬間にじしんを叩き込む。かな?」
「っ!?」
「確かにアームハンマーで素早さが下がっている以上、さっきみたくでんじふゆうで浮かび直す前にじしんを喰らってしまうだろうね」
「こうそくいどう」
「っ!」
予想はしていたが、アームハンマーによるデバフを帳消しどころか、一段階上げられるようにこうそくいどうで補填して来たか!
「ミテキ君、君と君のポケモンは
「……」
ぐぅの音も出ないとはこの事だ。同じ600族の中でもメタグロスとやり合う機会は特に多かったし、その分経験も積めてはいるが、個体ごとに違いがあるのは当然だし、何よりメタグロスと凌ぎを削り合い、勝ちをもぎ取った自信から俺もガブリアスも自信過剰になっていた。
だからこそ、俺もガブリアスもでんじふゆうの時間切れとそこを狙ってのじしんが無意識にパターン化していた。そこを見抜かれて、動揺してこうそくいどうの発動を許してしまった。
「サイコファング!!」
「シャドークロー!!」
急接近してオーラの顎で仕掛けて来た攻撃に合わせてバフを積んだシャドークローをお見舞いする。互いにモロに喰らったが、メタグロスは耐え切り、ガブリアスは地に叩き伏せられた。
「ガブリアス、戦闘不能!メタグロスの勝ち!」
ポケモンのレベル差はあった。だがそれ以上に俺が
こんなにも差があるのか……!
「あんなに強いガブリアスがあっさりやられちゃうなんて……」
「スズラン大会でもあんな簡単には負けなかったのに……」
さっきも言ったが同じ600族でもレベル差もそうだし、トレーナーの技量も大きく違う。格上なのは分かり切っていたが……これがシロナさんと同じ地方チャンピオンであり、マスターズエイトか。
思考を切り替えろ。ガブリアスがメタグロスに刻んだダメージは決して小さくはない。俺はガブリアスをボールに戻すと次のポケモンを出した。
「行け!バクフーン!!」
俺が二体目に出したのはバクフーンだ。対してダイゴさんはメタグロスを続投。
ポケモン図鑑でバクフーンを検索したハルカはその画像と俺のバクフーンを比較して首を傾げた。
「あれ?図鑑と違うかも……」
「ミテキのバクフーンはリージョンフォームなんだよ!」
「リージョンフォーム?」
聞き慣れない単語に再び首を傾げるハルカの疑問に答えたのはタケシだ。
「ポケモンが住む地方独自の環境に適応した姿の事だ。その生態は通常のものとは大きく異なり、見た目だけじゃなく、タイプまで変わる事もある」
タケシの解説中に俺は深呼吸をして精神を整える。バクフーンとのコンビネーションであのメタグロスを倒す。それだけだ。
「だがバクフーンにリージョンフォームがあるなんて話も、あんな姿も以前のスズラン大会まで俺も見た事も聞いた事もなかった」
そう。俺のバクフーンはリージョンフォーム。つまりはヒスイのすがただ。ほのお・ゴーストの複合タイプ。メタグロスを相手にする場合の相性はかなり有利だ。アームハンマーも俺のバクフーンなら効かない。
「それが話に聞いたヒスイバクフーンか。確かにジョウトのバクフーンとは違うようだね」
「……ヒスイって名前は知ってるんですね」
歴史に詳しくないとヒスイ地方という名前自体出て来ない。まぁポケモンリーグのチャンピオンの一人だし、知る機会はいくらでもあるだろう。
「ひゃっきやこう!!」
俺は早速バクフーンにひゃっきやこうを指示。ゴーストタイプの特殊技で効果抜群を狙いつつ、追加効果のやけども狙う。とはいえ、追加効果はそう都合良くは出ない。ガブリアスのほのおのキバ同様、メタグロスがやけどになる事はなかった。
流石のダイゴさんも恐らくはスズラン大会でちょっと見た程度のひゃっきやこうがどんな技かは理解できていないようで、敢えて受けさせて分析しようとする。
ならばその余裕を利用させて貰おう。
「あやしいひかり!」
「こうそくいどうで躱せ。捕捉させるな!」
混乱を狙ってあやしいひかりを使えば流石にそれは避けたいダイゴさんはメタグロスの素早さを上げて躱してくる。回避に専念して攻撃はできない。ここだ!
「ここは範囲攻撃だ!バクフーン、ふんか!!」
あやしいひかりの狙いは混乱の他に、攻撃させずに万全の体力によるふんかを直撃させる事。一定範囲内をチョロチョロさせる事でサイコファングを使わせずに最大火力で発動すれば……!!
「距離を詰めてサイコファング!」
だがダイゴさんのメタグロスはこうそくいどうで素早さを上げながらサイコファングを発動してふんかを掻い潜り、攻撃をヒットさせてきた。
しかも素早さを上げているとしても想定よりも遥かに速い……!原種と比べて僅かに遅い俺のバクフーンじゃ対応が難しいぞ……!!
「……ふんかを無駄撃ちにされたのは初めてです」
「流石にこれ以上はダメージを喰らいたくはないからね。スズラン大会でのバトルを少し観ただけだけど、そのバクフーンは普通のバクフーンと比べて特殊攻撃が強いんじゃないか?それでフルパワーのふんかを喰らえば僕もメタグロスも流石に耐えられない」
種族値の違いまで見抜くか。こりゃゴースト複合ってのもバレてるな。アームハンマー使おうとしねぇもん。
それに今のサイコファングでバクフーンもかなりのダメージを受けている。流石に600族のガブリアスほど体力も物理防御も高くないし、何よりレベルが違い過ぎる。むしろよく今の一撃でやられなかったもんだ。
だがここでメタグロスには退場して貰おう。
サイコファングを喰らったバクフーンはその両手でしっかりとメタグロスを掴んでいるのだから。沸々と燃えるような橙色のオーラを纏ってな。
「今だバクフーン!0距離のブラストバーン!!」
ここまで体力を削られた以上、ふんかは無意味だ。ならば御三家の究極技をもうかの特性込みでぶちかます。
「サイコファング」
正面から0距離ブラストバーンを突き破られて、バクフーンに直撃した。
「……うっそだろ?もうかで強化されたフルパワーのブラストバーンを?」
確かに0距離という点は向こうのサイコファングも同じだろう。だが技の発動はこっちが先だったし、ガブリアスから受けたダメージが蓄積した状態で一瞬でももうかのバフを受けたブラストバーンを浴びたはずだ。
「バクフーン、戦闘不能!メタグロスの勝ち!!」
何が流石に耐えられないだよ。その気になればサイコファングのオーラで身を守っていくらでもこっちを蹂躙出来たんじゃないか。
倒れたバクフーンを下げて三体目を出す。正直アームハンマーの事もあるからこいつをここで出したくはなかったが、残った中でゴウカザルの他にメタグロスの弱点を突けるのはこいつだけだ。だからこそバクフーンで仕留めたかった。
「頼むぞ、ダイケンキ!!」
俺の三体目はダイケンキ。もうお察しかもしれないが、こいつもヒスイ地方のリージョンフォームだ。
「ミテキの次のポケモンはダイケンキか……初めて見るな」
「ダイケンキはイッシュ地方の初心者用ポケモン、ミジュマルの最終進化系なんだが……」
「もしかしてあのダイケンキも……?」
「ああ。リージョンフォームだ。だがバクフーンと同じでミテキがスズラン大会で披露するまで確認されていない姿なんだ」
「シンオウ地方のリージョンフォームって事なんじゃないの?」
「そんなはずは無い。それならもっと広まっているはずだ」
バクフーンに続いてダイケンキもヒスイのすがただが一応言っておくとジュナイパーは持っていない。いや欲しかったけど、そもそもモクローが手に入らなかったから……。もうそういう機会も無いだろうし。
だがあくタイプを複合しているダイケンキならタイプ一致のサイコファングも効果はない。バクフーンと反対にアームハンマーは効いてしまうが。
「バクフーンに続いてダイケンキのリージョンフォームもお目にかかれるのは嬉しいね。僕とのバトルの為に用意してくれたのか」
用意するも何もこちとらガンメタ張ってこのザマなんだけど。
「ちょうはつ」
「やるね。アームハンマー!」
「ふいうち!」
まずはちょうはつで変化技を封じてこれ以上こうそくいどうで素早さを上げられないようにする。そして向こうもダイケンキがあく複合と見抜いているのか、サイコファングは使わずにアームハンマーで直接叩き潰しに来た所をふいうちで先制。
しかしこの一連の流れはダイゴさんもちょうはつの段階で理解していたようでわざと乗って来ている。現に効果抜群であり、威力も倍増したタイプ一致のふいうちを受けてもメタグロスはピンピンしている。クソ、多分バクフーンのふんかやブラストバーンをまともに受けても倒せてなかったな……!!
「ダイケンキ、アクアジェット!そしてひけん・ちえなみ!!」
ふいうちで仰け反らせた後は間髪入れずにアクアジェットで撹乱しながらひけん・ちえなみでのヒット&アウェイを仕掛ける。向こうの変化技を封じた事でこうそくいどうによる素早さのバフがこれ以上かかる事はないとはいえ、充分に速くなっているんだ。
素早さではバクフーンにも劣るダイケンキで素早さにバフがかかっているメタグロスに先手を打つには先制技しかない。そこを更に専用技のひけん・ちえなみで追撃して今度こそ仕留める。
だがそれでもすばやさが上がっているメタグロスに紙一重で避けられる。
当たらない。どれだけアクアジェットで素早く移動してもダイケンキがそのフランベルジュのようなアシガタナを振るおうと当たらない。
チャンピオンのポケモンだけあって回避能力も高い。ガブリアスだからこそ、ダイゴさんの思惑に関係なく攻撃を当てられていたんだ。
だからこそ、ここで俺は賭けに出る事にした。
「周りを駆け回っても撹乱にはならない!真っ直ぐにアクアジェットで突っ込め!!」
正面から勝負を仕掛ける。下手にチマチマ周りを駆け回るのではアクアジェットの最高速は出せない。ダイケンキの素早さであのメタグロスに一撃入れるにはこれしかない。
「アームハンマー」
当然、ダイゴさんはさっきのガブリアス戦同様にカウンターでのアームハンマーを狙ってくる。これが狙いだ。俺は更にそれに対するカウンターを狙う!
「もう一度ふいうち!」
アームハンマーを使ったその瞬間に先制できるふいうちをチョイスした。
こっちがアクアジェットで撹乱する中、向こうが回避しかしなかったのは回避は出来てもアームハンマーのパワーを溜めながらアクアジェットで移動するダイケンキを捉える事ができなかったからだ。
互いにスピードを捉えられず、一撃を入れられないのであれば、それができるシチュエーションを作れば良い。勿論、俺達が勝てる出来レースで。
「これでどうだぁーー!!」
「でんじふゆう」
頭から水をぶっかけられた気分だった。焦らされ続ける事でアクアジェットで超速で突っ込みながらカウンター返しのふいうちを使う事自体、誘われていた事にその瞬間、やっと気付いた。思えばちょうはつの効果時間もギリギリ過ぎてる。
ガブリアス戦からとっくに効果が切れていたでんじふゆうをもう一度使う事で浮かび上がり、突っ込むしかなく止まる事ができないダイケンキの水を纏ったふいうちを紙一重で上に躱して頭上からガラ空きになった背中への攻撃を叩き込んだ。
「アームハンマー!」
メタグロスの物理攻撃力に加えて高威力の効果抜群のかくとう技。当然モロに喰らったダイケンキが耐え切れるはずがなく、たったの一撃で沈められてしまった。
「だ、ダイケンキ、戦闘不能!」
ガブリアスがやられて、じめん技をこっちが使わないからって……俺は勝手にでんじふゆうを死に技と決め付けていた。他の技の回避に使ってくるなんて思いもしなかった。ポケモンの技はいくらでも応用が効くと知っているはずなのに。
その全てをダイゴさんに読まれていた。掌の上で踊らされていた。
メタグロス一体でガブリアス、バクフーン、ダイケンキと三体抜きされてしまった……。しかもガブリアス以外はほぼ瞬殺も同然。まさかここまで差があるとは……!
俺が呆然としているとダイゴさんはメタグロスをボールに戻した。流石にもう限界だと判断したんだろう。
「そう落ち込む事はないよ。君のポケモン達はガブリアスもバクフーンもダイケンキも確かに強かった。よく育てられているのが分かる。だからこそ君だけじゃなく彼らの方にも課題は多い。トレーナーである君に頼り過ぎだね」
ポケモンが俺に頼り過ぎ?むしろ逆じゃないのか?俺があいつらのスペックに甘えた結果がこれなんじゃ……
だがダイゴさんは今ここで考える時間はくれない。そうだ。今はバトルに集中しなくちゃ。次にダイゴさんが繰り出したのはエアームドだ。ならこいつの出番だ。
「次はレントラーだ!今度こそ勝つぞ!」
俺の四体目はレントラー。俺が初めて捕まえたポケモンでゴウカザルに次ぐ古株だ。コンビネーションだってコイツとなら負けない!
「図鑑は青なのにこっちは黄色……もしかしてあのレントラーも!?」
「お姉ちゃん、ミテキのレントラーは単純に色違いだよ」
「あ、そうなの……」
睨み合うレントラーとエアームド。
エアームドは物理型だが防御主体のポケモンだ。てっぺきとボディプレスのコンボには要注意だな。
「レントラー、エレキネット!!」
まずは攻撃と同時に素早さを下げる。
レントラーもエアームドと同じく基本的には物理型だが、特攻も低くはない。対してエアームドの特防はかなり低い。下手に物理技を使うよりもダメージの蓄積はできる。
だがエアームドは飛んで空中へ回避。当然の対応だが、こちらもエレキネットを滞空するエアームドに向けて乱射する。躱し続けるエアームドだがその重い身体ではいくら素早さの種族値がレントラーと同格でも体重による差が出る。一発当たれば痺れと素早さへのデバフで動きが悪くなり、面白いように次々と当たり出す。
「ドリルライナー」
「エレキネットで阻め!」
最早避けられないと悟ったタイゴさんはドリルライナーを指示。正面から突っ込んで来るのなら大きく展開したエレキネットで壁を作る。
土煙で身を守れてもパワーダウンは免れないし、網を突き破るまで僅かな時間はかかる。
エレキネットに引っ掛かり、突き破ろうとする間に真横に移動させて、次のコンボを仕掛ける。
「じゅうでん!」
「じゅうでん?」
「でんきタイプの技を強める効果がある技だ。さっきのエレキネットを何発も喰らってエアームドの体力はかなり減っている。ここで手早く決める気だな」
まだ未完成だが、この技に懸けるしかない。じゅうでんで補助すれば形にはなるはずだ。
「レントラー、サンダーダイブ!!」
ワイルドボルトを上回るでんき物理技を必要としていたレントラーに切り札として練習させていた技だ。
エレキネットに引っかかっている今のエアームドでは躱す事はできない!
「まもる」
だがダイゴさんは冷静にまもるでサンダーダイブを完璧に防いだ。
サンダーダイブは外れたり、防がれると自身が大ダメージを負う技だ。レントラーはその反動に悶えて蹲る。その隙にエレキネットを突き破ったエアームドのドリルライナーをまともに喰らってしまった。
……勝負を焦り過ぎた。少なくとも技枠を埋めさせてから使うべき技だったのに……!!
「ボディプレスだ」
追撃のボディプレスを喰らってレントラーは倒れた。あれだけやられてたらてっぺきを使うまでもない。勝負を焦ってこっちが勝手に自滅したんだから。
「レントラー、戦闘不能!エアームドの勝ち!」
「……ごめん、レントラー」
モンスターボールにレントラーを戻しながら謝る事しかできなかった。焦りで冷静な判断ができなくて、普段なら絶対しないような指示ミスで悪戯にレントラーを自滅させてしまった……!
ダイゴさんもエアームドを戻して三体目を繰り出してきた。出してきたのはボスゴドラだ。
「まだだ……!まだこいつらがいる……!!」
せめて一体くらいは倒してやる。俺はゴウカザルとガブリアスにも並ぶとっておきのポケモンを出す。
「お前の初陣だ!スイクン!!」
伝説のポケモン、スイクン。俺がシンオウ地方でゲットした最後の25体目のポケモンだ。まだ公式戦こそ出していないが、既にバトル自体は何度も行い、その能力はちゃんと把握できている。
「スイクン!?それにその色……」
「伝説のポケモンの色違いなんて持っていたのか!!」
「スズラン大会じゃあんなポケモン出してなかったよ!?」
スズラン大会の後にゲットしたんだよ。こちとらギンガ団の他にもフライングで起きた劇場版の対処だってやってたんだ。
「まさかスイクンとはね。クラウンシティの事件は聞いているけど、守り神自ら君をトレーナーに選んだというのも本当だった訳か」
「ひやみずだ!」
タイプ一致の効果抜群と確定で攻撃のデバフをかけられるこの技でボスゴドラを削る。だが流石はチャンピオンのポケモン。この程度は何でもないとピンピンしている。
「ストーンエッジ!」
「躱してめいそう!」
「ちょうはつ」
めいそうで特攻と特防……どちらかと言えば特攻を積まれるのは流石に鬱陶しいようでちょうはつを使って変化技を封じてくる。
「ひやみず!」
間髪入れずにひやみずで攻撃とデバフを与える。まずはボスゴドラの物理攻撃力を下げないと話にならない。いくらスイクンが耐久力に優れていても相手はチャンピオンなんだ。
あまごいは使えない。最後に控えているゴウカザルが不利になる。
ならぜったいれいどを使うか?いや、命中率が低過ぎる上に向こうのボスゴドラの特性ががんじょうだったら技枠の無駄撃ちに終わる。
「メガトンパンチ」
ボスゴドラもその巨体に見合わない速さで距離を詰めてスイクンを殴り飛ばす。二段階攻撃のランクを下げてこれか……!!
更に追撃でストーンエッジを仕掛けて来るが、こちらも三つ目の技、みきりで防いでお返しのひやみずをもう一度浴びせてやる。
これで体力は大分削れたはず。ならばこの技が活きる!!
「しおみずだ!!」
「ギガインパクトで突き破れ!!」
同時にダイゴさんもギガインパクトを発動。ダメージで体力が半分以下になった状態でのしおみずをまともに喰らわせれば終わりだった。だからこそ、ダイゴさんはギガインパクトのオーラでしおみずを阻んでボスゴドラを守りつつ、そのまま突き破ってスイクンを仕留めにきた。
デバフのかかったメガトンパンチでは耐久の高いスイクンを仕留め切れず、ストーンエッジではみきりで防ぐ時間を与えてしまう。だからこそのギガインパクト。
元々デバフのかかったメガトンパンチでもあれだけのパワーだったんだ。ギガインパクトならスイクン相手でも充分に仕留められると判断したのか。
「スイクン、戦闘不能!ボスゴドラの勝ち!」
でも反動で動けなくなるギガインパクトを耐久の高いスイクン相手に物理攻撃のデバフがかかった状態で普通やるか!?ここで仕留められなかったら確実にしおみずにやられてたんだぞ!?
いや、分かっている。ダイゴさんには仕留められる確信があったんだ。スイクンの力量とボスゴドラの力量を完璧に把握し、ボスゴドラならやれると信じた。だからこその指示。
「今のは危なかったよ。流石は伝説のポケモンだ。君もそれなりに使いこなせている」
それなりに……ね。反論はできない。まだ付き合いも短いし、本格的なバトルも経験は浅い。伝説のポケモンの力に頼りっぱなしになる訳にもいかなかった……。いや、ただの言い訳だな。
……だとしても、こんなにも差があるなんて……!
「ここまで一方的なの……?」
「まだだ…!まだ終わってない!俺にはまだこいつがいる!頼むぞゴウカザル!!」
「ウキャア!!」
最後に出したのは当然俺の一番の相棒だ。
流石にゴウカザル相手では体力がミリになったボスゴドラでは厳しいと判断したのか、ボスゴドラを下げる。次にダイゴさんが出して来たのはドリュウズだ。
「遂に来たねゴウカザル。その子とのバトルが一番楽しみだったんだよ」
「こいつはそう簡単にはやられませんよ。今バトルしていたみんなの想いも背負っているんだ!マッハパンチ!」
初手は先制技。だがこれしきの事はダイゴさんも読めている。こうそくスピンの超回転でゴウカザルの拳を弾いて無効化し、回転したままつばめがえしに繋げてきた。
「ゴウカザル、大丈夫か!」
「ウキャッ!」
まだまだ平気なようだ。ドリュウズは回転を続けたまま、もう一度つばめがえしとのコンボを決めに来る。
「ビルドアップして両手のほのおのパンチで受け止めろ!」
攻防両方のランクを上げて炎を纏った拳で挟み込む事で止めにかかる。高速回転していてもこっちも拳を炎で守れば五分五分だ。はがねタイプがこの熱に耐えられまい。
案の定、その高熱に音を上げて叫びながらドリュウズは回転をやめる。その瞬間に顎目掛けてほのおのパンチのアッパーをお見舞いしてやった。
「もう一度マッハパンチ!」
追撃して吹っ飛び、地面を転げ回るドリュウズ。あなをほるで地中に逃げるならじしんをお見舞いしてやる。ダイゴさんもそれが分かっているからその指示は出さない。
「マッドショットからこうそくスピン!」
三つ目の技マッドショットで牽制しつつ、こうそくスピンで四方八方で振り撒いて来やがる。嫌な使い方をする……!それどころから泥を撒き散らしながらつばめがえしまで併用して突っ込んで来やがる。これはさっきのほのおのパンチじゃ凌げない。
「フレアドライブからほのおのパンチに繋げろ!!」
ここで四つ目の技でフレアドライブを発動した。センリさんとのバトルでも見せたコンボ技。技同士の組み合わせは今目の前でダイゴさんがやっているように一定のレベルを超えたトレーナーとポケモンなら可能な技術だ。
だがそれでも俺はこのコンボには自信があった。目の前のマッドショット、こうそくスピン、つばめがえしを合わせたコンボと正面からぶつかっても勝てる。それだけのパワーが俺とゴウカザルのフレドラパンチにはある。
「いっけええええっ!!」
ゴウカザルが全身の炎を拳に集中させて爆発させようとした瞬間、ダイゴさんは四つ目の技を指示した。
「ドリルライナー」
こうそくスピンをベースにマッドショットで泥をコーティングし、つばめがえしで必中させるコンボに更にドリルライナーを組み合わせて来た。マジかよ……技を三つまでならともかく、一度のバトルに使える四つの技枠全てでコンボを決めるなんて、今まで見たことないぞ!?
正面衝突し、基礎パワーとタイプ相性で負けていたゴウカザルは解放した炎諸共押し負けて呑み込まれ、吹き飛ばされて背後の岩壁に激突した。
あまりの事に誰も動けず呆然としていた。ゴウカザルがこの最強技で押し負けるなんて思いもしなかった。
そして数秒してハッとしたタケシが目を回して倒れるゴウカザルの様子を確認して勝敗を告げた。
「ゴウカザル、戦闘不能!ドリュウズの勝ち!よって勝者、ダイゴさん!」
「ゴウカザルまで負けちゃった……」
「スズラン大会じゃみんな滅茶苦茶強かったのに……」
「これがホウエンチャンピオン……」
俺は放心して未だに動けずにいた。嘘だろ……これまで育て上げてきたポケモン達がみんなこんなあっさりと負けるなんて……何より俺のゴウカザルが純粋にパワー負けして叩きのめされた。
「ミテキくん、良いバトルだったよ。ホウエンリーグ、期待しているよ」
褒められても何も響かない。俺はゴウカザルをボールに戻してから、ダイゴさんの言葉に返事もできずに俯いていた。
「これを君達にあげよう」
ダイゴさんがタケシに何か手渡しているが、気にする事もできない。歯軋りをして俯き続けるだけ。
「これ……もしかしてキーストーンですか!?それも四つも!?」
「ハハハ、実はここ数日そればっかり見つかってね。僕はもう持ってるし、肝心のメタグロスナイトが見つからなかったけど……君達に渡せたならその甲斐もあったかな」
その後、ダイゴさんはタケシやサトシと一言二言何か話してから、用意していた自前のヨットでこの島を去って行ったらしい。
それを聞いたのはいつまでも棒立ちしていた俺を心配してハルカが何度も揺さぶってくれた事で正気を取り戻してからだ。
今はポケモンバトルで負傷したゴウカザル達を回復させる為にムロタウンのポケモンセンターに戻って来ていた。
「やはりチャンピオンは強いな……」
恐らくはこの中で一番俺とダイゴさんの差を理解していたであろうタケシが肩に手を乗せて来る。俺は無言で頷く事しかできない。
負けるとは分かっていた。けどここまで一方的にやられるとは思ってもいなかった。ギンガ団を倒したってだけで……レッドと似たような実績を積んだってだけで、俺はどこまで思い上がっていたんだ……!!
本物のチャンピオンクラスを相手にしたら、一矢報いる事すらできなかった……!!
ポケモンのレベルが全く届いていなかったもある。けどそれ以上にトレーナーの差が大きい……!!俺がポケモン達の力を引き出し切れなかった上にダイゴさんの技量を前に圧倒されて二歩も三歩も遅れを取り続けていた……!!
例えばシロナさんが俺のポケモンと同等レベルのポケモンを使って今のダイゴさんに挑んでいたとしても、シロナさんならああも良いようにはやられなかった。
この惨敗は完全にトレーナーである俺のせいだ。
これがホウエンチャンピオン……マスターズエイトと俺の差……!!
「悔し過ぎんぞ……畜生…っ!!」
****
side三人称
ボートを漕ぎながらダイゴは口元を緩め、先程のバトルを思い出す。とても旅に出て一年とは思えないバトルの腕前。ポケモン達も充分に育て上げられていた。
例のクラウンシティの事件でゲットしたというスイクンも振り回されずにあそこまで戦えるのなら合格点だ。
「ミテキくんか……シロナさんの言った通りの子だったな」
『ミテキくん、ハレタくん、コウヤくん……あの子達はいつか必ずチャンピオンリーグを勝ち上がってくる……その時が楽しみで仕方がないの』
しばらくボートを漕ぎ、近くの島に辿り着いて上陸し、先程のバトルでダメージを負ったメタグロス達の治療を始める。特にメタグロスとボスゴドラはダメージが深い。片や三体を連続で相手取り、もう一方は伝説のポケモンと戦ったのだから。
だがダイゴの予想に反して最もダメージが深かったのは……
「ドリュウズ……痛むのか?」
「ドリュ……」
最後にゴウカザルとバトルをしたドリュウズだった。
「まさか僕のドリュウズにここまでダメージを与えるなんてね」
あの時の最後のフレアドライブからのほのおのパンチのコンボが確かに効いていたようだ。それだけあのゴウカザルのパワーは規格外だった。レベル以上のパワーを持っていると言っても良いとダイゴはゴウカザルを高く評価する。
(もしかしたらガブリアスやスイクンよりも強いかもね……繰り出す順番次第では、メタグロスやエアームド、ボスゴドラも他のポケモン達にやられていたかもしれない……)
そう考えながらかいふくのくすりをリュックから取り出してドリュウズ達の治療を始める。
「確かに楽しみだ。僕もいつかもっと強くなった彼と本気のバトルをしてみたいな。今年のホウエンリーグで彼が優勝するならもしかするかもね」
折角ならチャンピオンリーグ優勝後は自分達ホウエンのチャンピオンと四天王に挑んで欲しいものだ。そう思いながらキャンプの準備を始めた。
主人公は負け無しな訳じゃないけど、物語の中で早目に黒星を付けたかった。
一応四体ともこれまでにちょっとだけ伏線張ってました。直接結び付きはしないけど、繋がりはする形で。
16.バクフーン(♂)ヒスイのすがた
特性:もうか
備考:ヒノアラシの時、ヨスガシティに学会で来ていたウツギ博士から譲り受けた。
17.ダイケンキ(♂)ヒスイのすがた
特性:きれあじ
備考:ミジュマルの時、ヨスガシティに学会で来ていたアララギ博士から譲り受けた。
2.レントラー(♂)色違い
特性:いかく
備考:コリンクの時、202番道路で捕獲。初遭遇でいきなり色違いだった。ルクシオ時代、ギンガ団とのトラブルで帯電症状になった事がある。
25.スイクン(色違い)
特性:プレッシャー
備考:『幻影の覇者ゾロアーク』に出てくる個体。スズラン大会後、フライングで劇場版をやった結果、自らミテキにゲットされた。
今回ゴウカザルのバトルをどうするか物凄く悩みました。負ける事自体は決まっていたんですが、レジェンズZAでゴウカザルにメガシンカ貰えなかったらキズナ現象を使う事も検討しているので……。その片鱗を出すべきかと……