ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード   作:メンマ46号

30 / 48
ゴロツキ

 sideミテキ

 

 ダイゴさんに惨敗して数日。俺達はダイゴさんの教えてくれた入江を中心にムロ島の自然の中で鍛える為、キャンプをしていた。

 サトシはトウキさんへのリベンジを果たし、ジムバッジを手に入れる為。俺はダイゴさんとのバトルで体感したあのチャンピオンクラスの実力へと近付く為。要は強くなる為に特訓を続けていた。

 

 俺の手持ちは先日と変わらずゴウカザル、ガブリアス、バクフーン、ダイケンキ、レントラー、スイクンだ。俺はこいつらを出して坐禅を組んで精神統一を図っていた。

 

 あのバトルを通して学んだ事を活かせるかはこれからの修行にかかっている。まずは冷静な判断力を『ナーッハッハッハ!「バクフーン、ふんか」やなかんじぃぃぃぃぃっ!!!』養いながらダイゴさんの言っていた事の意味を今一度考えてみないと……。

 

「あまり根を詰め過ぎるなよ。自分のペースでゆっくりと強くなれば良いんだからな」

 

「……ああ。ありがとうタケシ」

 

「でも本当に凄く強かったよねダイゴさん」

 

「なんたってチャンピオンだからな。それにマスターズエイトの一人でもある」

 

 地方チャンピオンやリーグは原作ゲームに出てきたものだけじゃない。この世界にはゲームでは描写されていない全く別の地方やそこのリーグがある。つまりチャンピオンや四天王もカントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス、ガラルなどの他にも沢山いたりする。その数いるチャンピオンや四天王達を大きく突き放して頂点に立つ八人がマスターズエイトだ。その肩書きは単なるチャンピオンとは一線を画する。

 

 要するにダイゴさんはチャンピオン達の中でも最強クラスという事。今の俺じゃあどうやったって勝てなかったのは当たり前の話。つってもそれで終わる気なんて更々ないけどな。俺はそのタイゴさんより上位にランキングされているシロナさんやカントーだけでなく世界チャンピオンでもあるレッドも倒すつもりなんだから。

 

「良いか、みんな。トウキさんに勝つ為にはまず集中力を高めるんだ。トウキさんのポケモン達の動きはサーフィンで鍛えられている。だから、押し寄せる波を相手のポケモンだと思え。その波の動きを肌で感じ取れるよう、精神を集中するんだ」

 

 サトシはピカチュウ、マリル、スバメ、キモリと共に波をギリギリまで引き付けて避けるという特訓をしていた。

 

「アレがポケモン修行?ミテキもサトシもあんなので本当に修行になってるのかしら?」

 

「ミテキもサトシも自分の考えがあるんじゃない?」

 

「二人共ただ座ってるだけにしか見えないんだけどなぁ」

 

「確かに言われてみれば……」

 

「そうでもないさ。アレでも立派な修行になっていると思うよ。ムロジムでのジム戦はサトシが熱くなり過ぎた為に負けてしまった。ダイゴさんとのバトルはその実力差を前に気圧された事でミテキは多くのミスを犯してしまった。だからこそ、二人は技や体力を鍛えるよりもまず冷静な判断力を養う事にしたんだろう」

 

 そうして暫く坐禅を続けて一休みしようと立ち上がると、サトシは波を引き付ける修行で何度も失敗して波を受けてずぶ濡れになっていた。……ありゃ水着に着替えてやった方が良いんじゃないか?

 

「あんな調子で大丈夫なのかしら……」

 

 そこは大丈夫さ。サトシだってチャンピオン達と同じだ。俺にとっちゃ倒すべきターゲットの一人だ。ここで終わったりしねぇ。原作知識云々抜きにして俺はもうサトシを認めている。

 

「しっかし参ったなぁ。何度やっても全然上手く行かないや」

 

「やっぱりジム戦に備えてるのは大変なのね。まぁ精々頑張ってねサトシ!」

 

 ハルカの言い方が流石にムカついたのかサトシもハルカの課題について指摘する。

 

「ポケモンコンテストに出るのだって大変なんだろ?少しは練習してるのか?」

 

「そうだよ。お姉ちゃんの方は大丈夫なの?」

 

「へっへっへ〜。よくぞ聞いてくれました!」

 

 サトシとマサトの指摘に対してハルカは得意気な笑みを浮かべて俺達の前に立つ。

 

「ポケモンコンテストはポケモンの美しさやカッコ良さを魅せるものでしょ?特にモンスターボールから出て来る所は一次審査の大事な得点ポイントよね!だから私、今登場の仕方を練習している所なの」

 

 正直まだそこかよとは思うけど今の所俺が貸したバトルレコーダーで勉強自体はしているから一応プランは練っているようだ。

 

「ステージ・オン!アチャモ、ルリリ、カラサリス!出ておいで!」

 

 ハルカは手持ちのポケモン達を一編に出して登場演技をさせる……が、ポケモン達は誰もそれを理解しておらず、普通に出てきてのんびりしていた。まぁカラサリスに至っては動けないしな。

 

「違う違う!出て来たら一回転でしょ!?シュッと立って!クルクルっとね!」

 

 そう言って自分でクルクル回ってみせるハルカ。かわいいけど色々と違うぞそれは。

 

「ハルカ、ポケモンコンテストは基本的に一次審査も二次審査も一体のポケモンしか使えないんだよ。偶にダブルバトルの形式で二体使う事はあるけど、三体を一度に使う事はないぞ」

 

 一次審査と二次審査で別々のポケモンを使うケースもあるが、それでも三体を同時に使う事はまず無い。

 

「え?そ、そうだっけ?で、でもホラ!何かの役に立つかもしれないし!」

 

「それにコーディネーターが踊って目立つのはなぁ」

 

「お姉ちゃん、コンテストの主役はあくまでポケモンなんだよ!」

 

「そんなぁ……折角振り付けまで考えたのに〜!それに今のはトウキさんのバトルを参考にしてしなやかさをプラスしてみたのに」

 

 タケシとマサトにもダメ出しを食らうハルカ。発想そのものは悪くないけど、それをポケモンにどう演技させるかだな。

 

「そっか。トウキさんの戦い方はポケモンコンテストにも応用できるのか」

 

「まぁ言われてみればそうだな。俺ならトウキさんのサーフィンを一次審査に取り入れるかな。と言っても二体使用時だけどな。みずポケモンになみのりを使わせて、もう一体にサーフィンをさせる。それだけで演技の基盤にはなる。そこからポケモン達独自の魅力をどう際立たせるかだな」

 

 一次審査は技ばかり魅せるような演技にならないように気を付けないといけない。そこをミスれば、それって同じ技が使えるなら極論他のポケモンにもできるよね?って話になる。アニポケのダイパ編でのヒカリは正にその状態に陥っていた。

 

「うぅ……やっぱりちょっと難しいかも」

 

「登場にインパクトを出したいならシールでも使ってみるか?」

 

「シール?」

 

「ああ。シンオウのコンテストじゃ結構メジャーでさ、モンスターボールを専用のカプセルに入れてデコレーションしたシールの模様をボールから出す時に浮かび上がらせるんだ。そのポケモンに合った物を選べば登場のポイントも……」

 

 ホウエンのコンテストでシンオウのシールを使った登場は別に違反ではない。これはカナズミホールでのコンテストで確認した事だ。

 他にもダークボールやクイックボールと言ったボールの模様が特殊なものやそのボールからポケモンが出る時のエフェクトの利用についても教えたら割と真剣に考え込み始めた。

 ……うーむ、もしかしたらハルカがオシャボ厳選に目覚めるかもしれん。厳選と言っても単純にボールを買い揃えるだけだが。

 

 そうしてハルカのコンテストについて話し合っていると、いきなり俺達が寝泊まりしているテントが揺れ始め、引き摺られるかのように崩れ、何かに引っ張られた。

 

「ああっ!テントが!」

 

「洗濯物がぁ〜!」

 

 近くの草むらにぶつかる事で崩れたテントがそれ以上引き摺られる事はなくなったが、その先で土が盛り上がって突き進む。ありゃ何かがあなをほるでも使ってるな。

 

「あそこに何かいるよ!」

 

「よし、ピカチュウ!10まんボルトだ!」

 

「よせ!テントが黒焦げになる!」

 

 電撃で止めようにもタケシの言う通り、テントや洗濯物が危なくなる。ならば被害を最小限に抑えられるのは……

 

「ダイケンキ、アクアジェットだ!」

 

 みずタイプのダイケンキのアクアジェットだ。これならテントも洗濯物も濡れるだけで済む。ゴウカザルやバクフーンのにほんばれでも使って乾かせば良い。

 

 俺が指差した先は俺が予測したあのポケモンの進行方向。アクアジェットで先回り……というより、奴の通るタイミングに合わせて突っ込む事で一方的に吹っ飛ばす。

 

「ヘイー!?」

 

「お。ヘイガニだ」

 

 砂浜から打ち上げられたのはごろつきポケモンのヘイガニだ。おお、まさかここで出るとは。

 

「そうか。ごろつきポケモンのヘイガニは俺達が自分の縄張りに侵入したと思ってキャンプを滅茶苦茶にしに来たのか!」

 

「ヘイヘーイ!」

 

 タケシの推測は多分当たってる。そしてそれを邪魔ダイケンキにキレてクラブハンマーで殴りかかるヘイガニ。だがダイケンキはアシガタナで一閃。その一刀の元に斬り伏せた。目を回してるし、戦闘不能だな。レベル差があり過ぎたな。

 

 ダイケンキに瞬殺されて倒れるヘイガニ。見事な噛ませ犬具合だ。これ多分サトシのヘイガニだよな。

 

「ビックリした……」

 

「でもやっぱりミテキのダイケンキは凄いや!完璧に対応してやっつけちゃうんだもん!」

 

 でももうみず枠に関しちゃもうサトシにはマリルがいるんだよな。しかもサトシがバトルせずにダイケンキが倒しちゃったし。俺?ヘイガニはなぁ……ぶっちゃけいらないなぁ。シザリガーに進化してもみずとあくの複合ならもう既に目の前にダイケンキがいるし。

 

 それに俺のポケモンになったらこのヘイガニの性格上、間違いなくマニューラにおちょくられる格好のカモだろう。キレて襲い掛かっても返り討ちにされるのがオチだ。あいつのそういう所は本当大好きなんだけど、俺のポケモンになる以上はそんなストレスの溜まる生活をさせるのも気が引ける。……やっぱ捕まえんのは無しだな。

 

「ヘイ!ヘイヘイヘーイ!!」

 

 復活したヘイガニがダイケンキに喧嘩を売っているがダイケンキはガン無視である。ついこの間格上とはいえ、連戦で消耗していた相手にボロ負けしたからなぁ。その辺の野生に構ってる余裕はないって所か。

 

「あれ?もうキャンプを壊そうとはしないの?」

 

「どうやらミテキのダイケンキにターゲットが変わったようだな」

 

「無理じゃない?ただの野生のポケモンじゃミテキのポケモンには勝てないよ」

 

 するとマサトの発言にキレたヘイガニはそのハサミでマサトのケツを挟み込む。

 

「痛い痛い痛い!でもこれがヘイガニのかいりきバサミのはさむ攻撃かぁ〜!感激だぁ〜!!」

 

 どうやらこいつは正真正銘のドMだったようだ。救いようがねぇな。あとかいりきバサミの効果は攻撃のランクが下がらない事だぞ。

 

「ミテキどうするの?」

 

「ん〜、別にヘイガニをゲットする気はないしなぁ……サトシはどうだ?」

 

「う〜ん、でもこのヘイガニはミテキがバトルして勝ったんだし……」

 

 今の所サトシもヘイガニを捕まえる気はないようだ。こりゃ原作崩壊待った無しか?でもぶっちゃけヘイガニがマリルに代わっても特に影響なさそうなのが……。

 

 

 

 

 それからも俺達はキャンプを続けたのだが、ヘイガニはまるでロケット団のように連日俺達のキャンプを襲撃し、ダイケンキを倒そうと躍起になって襲い掛かる。が、全て返り討ち。ダイケンキはヘイガニの存在など気にも留めずに修練に励んでいた。

 

「ヘイガー!」

 

 今日もまた最終的にダイケンキにぶっ飛ばされたヘイガニはキラーンと飛んで行く。なんかやられ方までロケット団みたいだな。……あいつロケット団のポケモンになったりしないよね?

 

「ふあぁ…なーに?またヘイガニが来たの?」

 

「ああ。何が何でもミテキのダイケンキにリベンジするつもりらしい」

 

「あのヘイガニ、転んでもタダじゃ起きないぞ。ダイケンキに負け続けても着実に強くなってる」

 

 現に俺は今日唯一やなかんじーにならずにこの場に残されたムサシを使ったバカガードでクラブハンマーを凌いだが、その一撃で盾が空の彼方へ吹き飛ばされて武装解除されてしまったからな。

 

「て事はまた来るのかな」

 

「来る……!あのヘイガニは絶対に来る。二度ある事はサンドパン!オーキド博士も良くそう言ってた」

 

「二度ある事は三度あるじゃないの?」

 

「お姉ちゃん、ポケモン川柳にそういうのがあるんだよ」

 

「ポケモン川柳?」

 

 首を傾げるハルカにマサトが溜め息を吐き、一冊の本を取り出して見せ付けた。

 

「オーキド博士公認!ポケモン川柳傑作100選!」

 

 そんなもん持ち歩くくらいなら食料や道具の一つでも持ち歩けバカ。

 

「にしてもサトシ、妙にあのヘイガニを買ってるな」

 

「ああ!あのヘイガニ、すっごく強いダイケンキに勝とうと頑張ってるだろ?それを見てあの諦めないガッツは凄いと思ったんだ。だから決めた!俺はあのヘイガニをゲットするぜ!」

 

 どうやら原作通りにサトシはヘイガニを捕まえる気になったらしい。正直ちょっとホッとした。サトシがマリルを捕まえた時からヘイガニの立場が危うくなってたからな。

 

 そして正午になってヘイガニがまたダイケンキを倒す為にやって来た所をサトシが割って入り、キモリで挑んで勝利を納め、ヘイガニをゲットした。

 

 え?雑に纏め過ぎ?それはその後に起きた事が俺にとって重要だったからだ。

 

 

 

 

 

「フン、そんなヘイガニを捕まえるなんて相変わらず程度の低い奴だ」

 

 ヘイガニを捕まえたサトシに対して、不意にそんな言葉が投げかけられた。

 

 声のした方を見ればノースリーブを着て、前髪の二房が交差するという普通に変な髪型をしたガラの悪い少年が立っていた。

 なんだこいつ。いきなり他人のポケモンに難癖付けるとか失礼な奴だな。

 

 そしてそいつを見たサトシの顔付きが一瞬にして変わり、強い怒りを抱いているのが分かった。

 

「お前は……クロス!!」

 

 その名前を聞いて思い出した。こいつ、無印のリメイク映画、『キミに決めた!』に出てくる敵トレーナーだ。手持ちからして恐らくはアローラ出身の。

 

「まさかこんな所でお前に会うとはな。お前もホウエン地方に来ていたのか。って事はリーグに出るつもりか」

 

「ああ!俺はホウエンリーグで優勝する為に来た!」

 

 見下すようにサトシに問いかけるクロスとそのクロスを睨み付けながら答えるサトシ。どうにも剣呑な雰囲気が漂う中、ハルカが耳打ちしながらタケシに問う。

 

「誰なの?サトシの知り合い?」

 

「……あいつはサトシのリザードンの元トレーナーなんだ。リザードンがヒトカゲだった頃、弱いからという理由で雨の中、ヒトカゲを捨てたんだ」

 

「雨の中で捨てたの!?そんなの尻尾の炎が消えて死んじゃうじゃないか!!」

 

 マサトの叫びを聞いてハルカも信じられないものを見る目をクロスに向ける。対してクロスはマサトの非難染みた反応を鼻で嗤う。

 

「弱いポケモンなんて捨てて当然だ。そんなゴミがどうなろうと知った事か。ポケモンは強さこそ全て。死にたくなければ強くなれば良い」

 

「何よそれ!最低かも!」

 

「マジそれな。俺にとっちゃお前の方が使えないし、ザコでいらないゴミだぞヘンテコ前髪ヤロー」

 

 どんなポケモンだってトレーナーの育成次第でいくらでも強くなる。それを放棄してポケモンを捨てる奴の方がゴミだ。

 

「口の聞き方に気を付けろ。潰すぞ」

 

「潰す?潰されるの間違いだろ?」

 

「丁度良い。退屈なジム戦じゃやりたい所までやれないからな」

 

 その言葉の意味はすぐに分かった。公式戦でのバトルは相手を必要以上に痛め付ける事ができない。こいつはそう言っているんだ。

 最近手に入れたであろうバッジを指で弾き、キャッチする。まるで見せ付けるかのように。

 

「それは……ナックルバッジ!?」

 

 クロスの手にはムロジムのナックルバッジがあった。こいつ、トウキさんに勝ったのか。クロスは驚くサトシを顔を見ると見るからに見下した表情でサトシを嘲笑う。

 

「お前ムロジムでこっ酷く負けたんだってな。どうせまた使えないザコばかり捕まえて挑んだんだろう?そのヘイガニもそこのそいつのポケモンに負け続けていたらしいな」

 

「俺のポケモン達は弱くなんかない!ヘイガニだって何度強い奴に負けても挑み続けられるガッツがあるんだ!」

 

「相手との実力差も測れず、現実を直視できないだけだろう」

 

 ああ言えばこう言うだな。サトシが何言ったって揚げ足ばっか取る。すると今度はタケシが前に出て怒気を隠さずに話しかけた。

 

「セキエイ大会でユーリにあれだけコテンパンにやられて、まだ懲りていないようだな」

 

 ……ユーリ?確かサトシが初出場した二年前のセキエイ大会で優勝したカロス出身のトレーナーの名前だな。

 

「あいつの名前を出すな!……あいつはチャンピオンリーグで叩き潰してやる……!!」

 

 強く歯軋りをしてからタケシに怒鳴り散らすクロス。どうやら余程に苦い思い出があるようだ。二年前のセキエイ大会のバトルは観た事ないし、今度ネットで調べてみるか。

 にしてもさっき言った「相手との実力差も測れず、現実を直視できない」って言葉が完全にブーメランだな。

 

 だが何となく読めて来たぞ。タケシの言った通り、サトシのリザードン……かつてのヒトカゲの元トレーナーはアニメのモブじゃなくて、映画のコイツ。だが、肝心の大筋は映画ではなくアニメの流れを踏んでいたんだろう。だからホウオウと登山のイベントがなく、クロスは今になってもまだ改心せずにこんなゴロツキ同然のクズトレーナーって訳だ。

 

「……で?お前結局何しに来た訳?サトシを煽ってこっちの空気を悪くしに来たんならとっとと帰れよ。それに聞いた限りだと二年前のセキエイ大会じゃお前の言う強いポケモンを使ってイキリ散らしてボロ負けしたんだろ?だったら弱いのも使えないのもポケモンじゃなくてお前だよ」

 

 正直今すぐどっか行けって心底思う。関わられても不愉快なだけだ。

 だが俺の言葉にこいつもムカついたのか、モンスターボールを取り出して喧嘩を売ってくる。

 

「そこまで言うなら試してみるか?フルバトルだ。フタバタウンのミテキ」

 

 ……なるほど、こいつの目当ては俺か。ムロジムで聞いたのか、それとも別の情報源かは知らないが、昨年のシンオウリーグ準優勝の俺がここにいると聞いてバトルしに来たらサトシがいたって訳ね。

 

「良いぜ。お前に現実ってもんを教えてやる」

 

 俺はガブリアスの入ったモンスターボールを構える。

 俺はもうこいつを完全に格下として見ていた。例えこいつが何かの間違いでメガシンカやZワザを使えたとしても微塵も負ける気がしない。

 

「待ってくれミテキ」

 

「サトシ……?」

 

「クロスとのバトルは俺に譲ってくれ。こいつは俺達が倒さなくちゃいけないんだ!」

 

「ピカッチュ!」

 

 サトシとピカチュウはクロスを睨みながらバトルを譲って欲しいと頼んでくる。確かに因縁を考えれば俺の出る幕じゃなさそうだが……

 

「……分かった。負けんなよ」

 

「ああ!」

 

「って訳だ。お前がサトシに勝てたなら相手してやるよ」

 

「フン」

 

 意外にもクロスはサトシとのバトルを呑んだ。少し肩透かしだな。あの手のタイプは無理矢理にでもバトルを仕掛けてくる奴が多いのに。……セキエイ大会での惨敗が何かしら影響しているのか?

 

「ピカチュウ、君に決めた!」

 

「ピッカァ!」

 

「ルガルガン、トゥアームズ!!」

 

 ピカチュウを出したサトシに対し、クロスが出したのはまよなかのすがたのルガルガン。じめんタイプは少なくとも今は手持ちにいないようだ。

 

「ピカチュウ!こうそくいどうだ!」

 

 まずはこうそくいどうで素早さのランクを上げながら翻弄しに行くか。少し前なら効果今一つなのもお構いなしにでんこうせっかを使っていただろう。

 

 対するルガルガンは素早さではピカチュウに追い付けない。まよなかのすがたでは先制技のアクセルロックは使えないしな。

 

「後ろに回ってアイアンテール!!」

 

「カウンターだ!!」

 

 ピカチュウのアイアンテールが振り向いたルガルガンの顎を捉えるが、空いていた左手での攻撃を文字通りのカウンターで腹に食らう。アレはダメージデカいな。

 

「大丈夫かピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

「ルガルガン、ストーンエッジ!!」

 

 ピカチュウを心配するサトシだが、クロスはそれを待ちはしない。即座にストーンエッジで追撃をしてくるが、サトシはピカチュウにこうそくいどうを指示する事で回避する。

 

「ピカチュウ!なみのりだぁーー!!」

 

「ピーカチュウウウウッ!!!」

 

「何だと!?」

 

 最近新たに得たサブウェポンであるなみのりを発動。ピカチュウがなみのりを使う事は予想外だったのか驚くクロス。それによって指示が遅れてルガルガンはモロになみのりを食らった。

 

「今だ!10まんボルト!!」

 

「チッ、ルガルガン!すなかけだ!」

 

 文字通り、ピカチュウの目元に砂をかけて命中率を下げる。そして砂に驚いたピカチュウは10まんボルトのコントロールを乱して、電撃は大きく外れた。

 

「ブレイククロー!!」

 

「アイアンテール!!」

 

 その隙を突いてのブレイククロー。だがサトシも負けじとアイアンテールを指示。ピカチュウも目が辛いだろうにどうにか指示に食らいついてアイアンテールを振り回し、ブレイククローと衝突。お互いに大きく仰け反り、後退する。

 

 そしてその瞬間、ルガルガンの真上に鉄の檻が落ちてきて、ルガルガンを閉じ込めた。

 

「「「ナーッハッハッハ!!」」」

 

 この馬鹿丸出しの笑い声など一つしかない。上空に目を向ければロケット団の気球が浮いており、当然ロケット団が乗っていた。

 

「ルガルガンゲットよーー!!」

 

「空気読めよ……」

 

「……またお前らか」

 

 クロスもロケット団の事は知っていたらしい。まぁあの感じだと少なくともカントーじゃ何度もサトシ達と揉めてるっぽいし、ロケット団とも絡みはあるか。

 

「うっさいわね!アンタの事は元々気に入らないのよ!な〜にが強さこそ全てよ!ポケモンの命を軽く見るような奴に強くなる資格なんかないわよ!」

 

「そうだそうだ!お前なんかに使われるより俺達ロケット団が使った方がルガルガンも幸せってもんだ!」

 

 ロケット団にすら露骨に嫌われてんな。口上をベラベラ垂れる事やピカチュウを捕まえるよりも優先してクロスに意見したり、クロスのポケモンを奪ったりするなんて相当だぞ。

 

「ルガルガン、ストーンエッジ!!」

 

 だがルガルガンのストーンエッジで鉄の檻は容易く破壊された。

 

「「「え」」」

 

「ピカチュウ、10まんボルト!!」

 

 絶句するロケット団にピカチュウの10まんボルトが炸裂し、ロケット団の気球が爆発。いつものように空の彼方へと吹き飛んだ。

 

「「「やなかんじ〜!!」」」

 

 何しに来たんだってレベルで瞬殺だったな。ここ数日ずっとそうだけど。

 ロケット団がやなかんじーになったのを見届けるとクロスは興醒めだとばかりにルガルガンをボールに戻し、元来た道を引き返し始めた。

 

「お、おい何処行くんだよ!?」

 

「ピカチュウ以外碌に育ててもいないポケモンを倒してもいくらでも言い訳できるからな。バトルしたいならもっとまともなポケモンを連れて来るんだな」

 

 なるほど、確かに元々俺にフルバトルを仕掛けに来た訳だし、サトシとのバトルも一対一とは言ってなかったしな。

 

 ……そういう意味ではクロスの言っている事が正しい。ピカチュウとサトシの他の手持ちとの間にはレベル制限で一緒にジム戦には出られない程のレベル差がある。そんな状態でバトルしてもクロスのポケモン達とまともに戦えるのはピカチュウだけだ。つまりピカチュウだけでそいつらを相手取らなきゃいけなくなる。ピカチュウがやられたら負け確だ。

 

 サトシを否定したいであろうクロスからすればそんなハンデがある状態で勝っても意味が無いって事か。

 

「何よ!サトシに負けるのが怖くて逃げる気!?」

 

「いや、見逃して貰ったと言うべきだろう。クロスの今の手持ちは分からないがルガルガンの他にも確実にガオガエンはいるはず……今のサトシの手持ちではピカチュウ以外が勝機を見出すのはジム戦より難しいだろう」

 

 タケシも俺と同じ考えのようだ。少なくとも今はまだスバメ達は戦力外。今バトルしたいならジョウトリーグまでを共に戦ったポケモン達を呼ぶ必要がある。

 

 それに、クロスと決着を着けるのならサトシの手持ちにはリザードンがいるべきだ。

 

「サトシ、あんな奴に絶対負けちゃ駄目だよ!」

 

「そうよ!ポケモンを捨てるなんて最低かも!」

 

「全くだ。自分の無能を棚に上げてポケモンのせいにする。俺の一番嫌いなタイプだ。あんな奴ぶっ飛ばしてやれ」

 

「俺もみんなと同じ意見だ」

 

 去って行くクロスの後ろ姿を睨みながらマサト、ハルカ、俺、タケシの順でサトシに発破をかける。本当にあいつにサトシが負けるなんて我慢ならないし、俺だってあいつに負けるとか絶対に嫌だ。トレーナーとしてはロケット団の方がマシなくらいだ。

 

「ああ……あいつには負けない。絶対に負けたくない!!」




改心していないクロスが出るのは前々から考えていた案です。他の案の一つとしてはバトルフロンティア編でサトシのリザードンとは別個体のヒトカゲを捨てた所を主人公がヒトカゲを助けて敵対するというのがありましたが、やっぱりサトシと敵対させたいので。それに主人公はホウオウとは何も関係ありませんし。あ、でもスイクンは持ってるか。

今回冒頭でロケット団が仕掛けてきたのは主人公のポケモンを見て、

・強いのが分かってる二体(ゴウカザル、ガブリアス)
・激レアの特殊個体(バクフーン、ダイケンキ)
・色違い二体で内一体伝説(レントラー、スイクン)

こりゃピカ様諸共奪うっきゃないと考えていつものメカで武装してたけど、耐熱面は原種バクフーンの特攻を想定していた為、原種より特攻の高いヒスイバクフーンには普通に破られてやなかんじーです。

尚、今回クロスとバトルしてたら主人公がストレート勝ちしてました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。