ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード   作:メンマ46号

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これでようやくハルカのコンテストが本格的にできるぜ……


ムロジムリベンジ! サトシvsトウキ

 sideミテキ

 

 今日は待ちに待ったサトシのムロジムへの再挑戦だ。この二週間での自然の中でのトレーニングの成果を存分に発揮して、今度こそバッジを獲得して欲しいものだ。

 

 ジムに向かう途中で現れたロケット団を名乗ろうとする前にやなかんじーにしてジムに辿り着いた。今日ばかりは絶対に邪魔はさせない。

 

「これよりジムリーダートウキとチャレンジャー、マサラタウンのサトシによるジム戦を始めます!使用ポケモンは四体!ポケモンの交代はチャレンジャーのみに認められます!」

 

 今回サトシは前回負けたスバメとマリルだけでなく、キモリとヘイガニも加えての四体でバトルを挑む事にしたらしい。

 

「さぁサトシ君、あれからどれだけ成長したか、特訓の成果を見せて貰うよ!」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 前回ジム戦した時とは大違いだな。トウキさんへの誤解もなくなり、この二週間の修行で精神的にも一皮剥けたか。サトシは落ち着き払っている。

 

「ワンリキー、テイク・オフ!」

 

「スバメ、君に決めた!」

 

 まずは相性で有利なスバメか。前回と同じくトップバッターを張らせているが、得意のひこう技はマクノシタに受け流されていた。恐らくそのスキルはワンリキーも同じ。特殊技で攻める訳でもないだろうし、どうする?

 

「ワンリキー、かみなりパンチだ!」

 

「かわせ!」

 

 トウキさんは早速弱点を突いてきた。サトシはまずスバメを回避に専念させて上空に留まらせる。あれじゃそう簡単にはワンリキーの攻撃は届かないが、スバメは特殊技を使うタイプでもない。ここからどうバトルを組み立てるつもりだ。

 

「きあいだめだ!!」

 

 お?

 

「サトシが変化技を使うとは珍しいな」

 

「修行の成果が出たのかも」

 

 これまでもかげぶんしんやこうそくいどうを使わせているし、アニメじゃ良くバタフリーに粉技を使わせていたとは思うし、全く使わない訳じゃないだろうが、サトシは基本攻撃技でガンガン攻めるタイプだから少し意外だ。

 

「気付いていないのか?サトシに変化技の有用性を教えたのはミテキだぞ?」

 

「む…」

 

 タケシに言われて俺はこの二週間…というよりサトシに会ってからのバトルや特訓を思い返す。

 確かに俺はバトルでも良く変化技で流れを変えたり優勢状況を更に固めたりしているからな。あんだけ散々見せられたらサトシも取り入れるくらいには学習するか。

 

 そしてサトシがきあいだめをチョイスしたのは急所に当てる事でお決まりの受け流しをしてもダメージを与えられるようにする為か。

 

「つばさでうつ攻撃!」

 

 急降下と同時に必殺のひこう技。真正面からではなく、上から仕掛けるか。確かに受け流しの難易度は上がる。きあいだめで急所に当たり易くなっているなら尚更だ。

 

「ワンリキー、こわいかお!」

 

「スバメ、こうそくいどうだ!」

 

 全く同時の指示だった。ワンリキーがこわいかおで素早さのランクを下げると同時に一瞬の硬直を狙ったのに対してサトシはこうそくいどうで更にスピードを上げようとした。

 

 結果、ランク補正の上下は相殺され、スバメの硬直が一瞬にも満たなかった事で互いに中途半端にタイミングを外し、半端につばさでうつとかみなりパンチがヒットした。つばさでうつは急所に当たらなかったか。

 

 だが狙い通りワンリキーは受け流しができなかった。この事実は大きい。

 

「良いぞスバメ!この調子だ!」

 

「スバスバ!」

 

「やるじゃないかサトシ君。まさかお互いに全く同じタイミングで真逆の効果の技を使う事になるとは思わなかったよ」

 

 そこからは互いに二つの技を駆使した素早さの上下による隙の伺い合いが続く。自分のスピードを上げつつ、受け流しもカウンターもさせずにつばさをうつをヒットさせたいサトシと相手のスピードを下げつつ、スバメの攻撃を受け流してかみなりパンチによるカウンターを決めたいトウキさん。互いに狙いを理解しているからこそ、決め切れない状況が続く。

 

 以前のサトシなら痺れを切らしてつばさでうつのラッシュをして受け流しの憂き目に遭っていただろう。だがこうして上手く隙を伺って確実につばさをうつを当てる為の策を戦いながら練っている。

 

 互いの攻撃が上手く当たらない状況を打開するには互いに次の技のチョイスが鍵になる。

 

「あてみなげ!」

 

 ここでトウキさんとワンリキーは必中技で確実に当てる事を選んだか。前回と違って考え無しに攻めて来ない上に受け流しやカウンターのタイミングをズラそうとしてくるサトシ相手にスバメの機動力も考えると半端な技じゃ攻撃を当てるのは難しいと判断したんだろう。

 

 だが必ず当たる代わりに必ず後手に回るこの技を選んだのは失敗だった。サトシは最後の四つ目の技枠を使ってある技を先出しした。

 

「ちょうおんぱだ!」

 

「混乱させて技も受け流しも封じるのか!」

 

 確かにスバメはタマゴ技でちょうおんぱを覚えるが、偶々覚えていたのをポケモン図鑑で見つけてこうしてバトルに組み込んだのか。

 目論見通り、ワンリキーは混乱してあてみあげに失敗どころか訳も分からず自分を攻撃する。あれじゃもう攻撃の受け流しは無理だ。冷静な判断ができないからな。

 

「今だスバメ!トドメのつばさでうつ!」

 

「ワンリキー!かみなりパンチだ!」

 

 一か八かのかみなりパンチでカウンターを狙う。文字通りのラッキーパンチ狙いか。混乱しても決して不可能ではない。かなり奇跡的な確率ではあるが混乱が解けずとも普段からの習慣として身体が覚えていれば本能でやってのけるだろう。

 

 そして現にワンリキーは正面のスバメ目掛けて拳を振り抜いた。

 

「こうそくいどう!」

 

 だがそれすら織り込み済みで変速したつばさでうつが拳を空振りさせたワンリキーに直撃し、受け流させずにトドメを刺した。きあいだめの効果もあって急所に当たったな。

 

「上手い。突っ込む途中でスピードを上げた事でカウンターのタイミングをズラしてクリティカルヒットさせたか」

 

 てか最初の急降下の時に狙っていたのがこれなんだろう。それをちょうおんぱで補助する事で穴となる部分を埋めた。今ワンリキーがかみなりパンチをカウンターで当てる事も受け流す事もできなかったのは変速と混乱の両方が揃っていたからだ。

 

「ワンリキー、戦闘不能!」

 

 ワンリキーも倒れたな。後からなら何とでも言えるがワンリキーの方はまだ技枠が一つ残っていた。あそこでかみなりパンチでのカウンターではなく、まもるを使っていればまだ分からなかったかもな。まぁトウキさんがその事を理解していないはずがないし、混乱している状態じゃ上手く発動できずにあのままやられてた可能性も高いから、かみなりパンチのギャンブルに出たんだろうけど。

 

 にしてもこのバトル、サトシがスバメに使わせた技枠の内三つが変化技で攻撃技一つしか使ってねぇぞ。波を読むどころか波の流れを生み出すバトルと言っても良い。

 

「なんだかサトシのバトル、これまでと全然違うね」

 

「ああ。攻撃一辺倒だった今までと違い、相手の動きを待つというある意味大人な選択を取り入れ、変化技で状況を整える。トウキさんから学んだ事とミテキの影響だな」

 

 かと言ってサトシのバトルが消えた訳でもない。攻撃の途中でこうそくいどうによるスピードアップを威力増幅に繋げる奇策はサトシらしさに溢れている。

 

「ちょっと俺もサトシとバトルしたくなってきたな」

 

 そしてサトシは今のバトルで疲弊したスバメをボールに戻す。続投はさせないつもりか。技枠を使い切ったとはいえ、かくとうタイプに有利を取れるひこうタイプだからな。この先またスバメの力が必要になるだろうし、良い判断だ。

 

「カポエラー、テイク・オフ!」

 

「キモリ、君に決めた!」

 

 そして互いの二番手はカポエラーとキモリだ。互いに相性こそ普通だが、双方共にひこうタイプなんかの効果抜群の技は覚えられる。キモリなんかはゲームじゃ夢特性のかるわざとアクロバットを組み合わせるなんて事もできる。ここはゲームじゃないし、特性もしんりょくだが。

 

「キモリとカポエラー…勝負が読めないね」

 

「だがカポエラーもきっと攻撃を受け流すスキルは体得しているはずだ……」

 

「でもミテキがやってたみたいに特殊技なら受け流せないかも!」

 

 ハルカの言うように特殊技なら受け流しは難しいだろう。現に俺は特殊技主体で戦ったしな。でも全ての特殊技がそれに当て嵌まる訳ではない。みずタイプの技は前回攻略されてるし、そもそもサトシのキモリが今覚えている特殊技はメガドレインくらいだったはずだ。

 

 先に動いたのはサトシだ。

 

「キモリ!にらみつける攻撃だ!」

 

「また変化技だ!」

 

 まずは防御のランクを下げて、一瞬の硬直を生み出す。さっきのワンリキー戦でトウキさんがやってきた事だ。そしてその硬直を突いてのでんこうせっか。速攻のスタイルはやはり変わらないらしい。

 

「カポエラー!こうそくスピン!」

 

 だがトウキさんも黙ってやられはしない。硬直したままでも迎撃できるよう、普段から逆様になっているのを利用してのこうそくスピンで突っ込んできたキモリを弾いた。

 

「トリプルキック!」

 

 そしてその回転をしたままトリプルキックに繋げてきた。元々カポエラーが使うトリプルキックは回し蹴りでの連続キックが基本だ。こうそくスピンと掛け合わせての威力増幅はしやすいだろう。

 それでも元々の技の威力の割りにキモリのダメージがでかい。ありゃ特性はテクニシャンだな。

 

「前回のジム戦ではハリテヤマのつっぱりとはっけいを組み合わせていたな」

 

「ミテキもダイゴさんもやってたけど、ポケモンの技と技を組み合わせるのってそんなに簡単にできるの?」

 

「確かに…ゲットしたばかりのマリルリもやってたもんね」

 

「そんな訳ないだろ。口で言うのは簡単だけど、それをやるのはポケモンだ。ポケモンからすればそもそも組み合わせに使う技を完璧に使い熟していなきゃいけないし、組み合わせるならその感覚をちゃんと掴む必要がある」

 

 ゴウカザルもフローゼルも相当苦労してマスターしたんだ。マリルリはちからもちの特性もあったからか物理技のれいとうパンチの冷気が他のみずタイプより強かったから偶々できただけ。既にフローゼルが理論を完成させていたからのお溢れでもある。その辺を簡単にやってのけたのはマニューラくらいだ。あいつは間違いなく俺のポケモン達の中では一番のバトルの天才だ。

 

 ま、そこら辺の指導をジムリーダーやチャンピオンなんかはやってのけるんだが。

 

「負けるなキモリ!メガドレインだ!」

 

「キャモ!」

 

 ここでメガドレインか。メガドレインは受け流しも弾く事もできないし、何よりキモリが回復できる。そして苦しむ所をでんこうせっか。にらみつけるで防御が下がっているからダメージは大きいぞ。

 

「良いぞキモリ!」

 

「サトシ君、正直驚いているよ。以前は一本調子の戦いで押したり引いたりの戦い方を身に付けてはいなかった。だがそれを変化技を使う事によってカバーし、少しずつ実践して来ている。大したもんだよ」

 

「まだまだこれからですよ!俺達の修行の成果は!」

 

 前回はサトシが熱くなり過ぎていたのもあって、押す事しかしないバトルだった。だがトウキさんの言う通り、変化技を使う事でまだ不完全な一歩引いた戦い方を身に付けている。

 

「こうそくスピン!トリプルキックに繋げろ!」

 

「躱せキモリ!」

 

 独楽のように逆様に回りながら突っ込んでくるカポエラーを躱し続けるキモリ。これは波を読んでギリギリで躱す特訓が活きているな。すると今度はこうそくいどうを併用して途中からスピードを上げてきた。これはさっきのスバメの戦法を真似して来たか。自分のやり方をそのまま返された時の対処を試すつもりか。

 

 超速で回って突撃してくる様は独楽どころか最早ベイブレードだ。サトシとキモリもあれをまともに喰らって更に必殺転技のトリプルキックをやられたら不味いとでんこうせっかを駆使して躱し続ける。

 

「かげぶんしん!!」

 

 トウキさんは最後の四つ目の技にかげぶんしんをチョイス。かげぶんしんもまた逆様の超速回転をしており、取り囲まれたキモリは逃げ場を無くしてしまう。全方位の何処から突っ込んで来るか分からない。キョロキョロと本物を探しているからこれは本気で見分けがつかないようだ。

 頭の角を使って回転しているが、アレはもう遠心力でやっているな。にらみつけるで身体を硬直させても止まらないから見分けられないだろう。

 

 そうしてカポエラーはかげぶんしんを動員して全方向から回転して迫ってくる。実体があるのは一つだけだが、見分けられずにモロに喰らえばトリプルキックに繋げられて終わりだ。マジでベイブレード見てる気分になってくるが、焦るキモリと対照的にサトシは冷静に技を指示した。

 

「みきりだ!」

 

 瞬間、キモリの目がキラリと光る。

 カポエラーのこうそくスピンを紙一重で躱し、しゃがんでカポエラーの回転する足の下に潜り込んだ。

 

「今だ!にらみつけるからのでんこうせっか!」

 

 しゃがんだ瞬間ににらみつけるでまた防御のランクを下げてでんこうせっかでぶっ飛ばした。

 攻撃を掻い潜られ、防御力が下がった事で弾く事もできなかったカポエラーは宙を舞い、目を回してぶっ倒れた。

 

「カ、カポエラー戦闘不能!」

 

「やったぜキモリー!」

 

「キャモ…」

 

 はしゃくサトシと対照的に少しぐったりして座り込むキモリ。キモリはギリギリまで追い詰められていたから精神的な疲労も大きかった。でもサトシは終始冷静な判断を心掛けていた。だからこそ、相手の技を受けないみきりという技の選択肢を見逃さなかった。そこからサトシ独自の奇策に繋げてみせた。

 

「初めて会った日の……イーブイだった頃のエーフィとのバトルを覚えていたんだな」

 

「確かにあの時キモリはみきりを使ってたもんね!」

 

 みきりを使えばキモリ自身がカポエラーのかげぶんしんを見抜けられなくても関係なく攻撃を防げる。ただ正面から耐えるのではなく、技で防ぐ事も学んでいた訳だ。

 これも以前なら一か八かのでんこうせっかで突っ込ませていただろうな。

 

 カポエラーをボールに戻すトウキさんを見てみると、口元が少し緩んでいた。サトシが予想以上に成長している事を目の当たりにして嬉しいんだろう。

 そしてサトシもキモリをボールに戻して互いに三体目を繰り出した。

 

「アサナン、テイク・オフ!」

 

「ヘイガニ、君に決めた!」

 

 トウキさんはアサナン。サトシはこの島での修行の中で捕まえたヘイガニだ。あのヘイガニは出会ってから(ダイケンキに)負け続きだが、ここでビシッと勝って欲しいものだ。デビュー戦だし。

 

「今度はヘイガニだ!」

 

「でもヘイガニは冷静に戦うなんてできるの?すぐ熱くなっちゃうのは前回のジム戦の時のサトシとそっくりかも」

 

「そこがサトシの腕の見せ所だよ」

 

 ハルカの懸念も尤もだ。ぶっちゃけヘイガニはサトシがこの二週間で挑んでいた課題を理解しているかも怪しい。

 

「ヘイガニ、バブルこうせん!」

 

 早速アニポケのアドバンジェネレーションにおけるクラブハンマーに並ぶヘイガニの十八番を繰り出した。水そのものではなく、泡を使った攻撃なら通じるかもしれないと考えてのチョイスだな。

 

「ねんりきで逸らすんだ!」

 

 だがトウキさんも冷静に対処。相手の攻撃をねんりきで逸らすというこの間俺がジム戦でエーフィにやらせた対処法だ。

 

「やっぱりそう簡単にみず技を決めさせてはくれないね……」

 

「けど……前回のハリテヤマと違って受け流しはしなかったな」

 

 単純にアサナンがそこまでの技術をまだ身に付けられていないのか、バブルこうせんの泡系の技がサーフィン修行による受け流しの対象外なのか……それは分からないが、バブルこうせんはこうしてねんりきで逸らす必要があるのは確かだ。

 

「ふるいたてる!」

 

 アサナンの攻撃と特攻を上げてきたか。物理も特殊も強くなるならあまりを攻撃を受ける訳にはいかないぞ。修行に途中参加のヘイガニがどこまて回避性能を上げられているか…。

 

「ねんりきで動きを封じて連続ではっけい!」

 

 そう考えていると先手を打ってトウキさんはねんりきで直接ヘイガニを固定してきた。そうして追撃のはっけい。どちらもタイプ一致技だ。これは痛いな。ただでさえヘイガニはバブルこうせんが通じなくてダメージを与えられていない中、一方的に攻撃されている。

 

「ヘイガニ!かたくなる!」

 

 だがサトシも動けないのなら動かないという選択を取って防御を上げて凌いだ。これなら攻撃が上がったはっけいも大して効かないだろう。いや、むしろねんりきで固定しているからこそ、結果的により強固になっている。

 

 トウキさんもそれに気付いてねんりきをやめさせる。その隙をサトシは見逃さない。

 

「クラブハンマー!」

 

 もう一つの十八番、クラブハンマーでアサナンをぶっ飛ばした。そして宙を舞うアサナンに追撃のバブルこうせん。しかしそう簡単にはやられまいともう一度ねんりきで逸らされる。

 千日手になりそうだなと考えているとねんりきでバブルこうせんに対処するアサナンにヘイガニが独断で突撃していく。

 

 確かにキャンプを襲撃した時にも見せた突進力と速さならねんりきで防御している隙に一気に接近できる。ヘイガニの奴、サトシの指示無しで直感でそれを理解してやったのか。

 

「よーし、ヘイガニ!もう一回クラブハンマーだ!!」

 

 そのアドリブに即座に対応して追撃させるサトシ。こういう所はさっきのスバメやキモリのトドメと同じで修行で身に付けたんじゃなくてサトシが元々持ち合わせている所だよな。

 

 さっきと打って変わってアサナンが一方的にヘイガニの攻撃を喰らっている。ならばと起死回生の秘策としてトウキさんはもう一度ふるいたてるを使わせてから逆転の一手を指示。

 

「とびひざげり!」

 

 かくとうタイプの中でも高威力の技だ。ふるいたてるで攻撃力も上がっているし、はっけいを何度も喰らったヘイガニなら一撃で倒せるだろう。

 

 当たればだが。

 

「ヘイガニ、まもるだ!」

 

 だがサトシはきっちりとまもるでとびひざげりを防いだ。

 

「……俺のミスから覚えたやり方だな、あんにゃろ」

 

「それだけじゃない。柄にもなくサトシ自身がポケモンの技についてちゃんと勉強して、理解しての技選択なんだろう。全部ミテキに影響されての成長だ」

 

 タケシはそう言うが、それはそれとして間違いなくダイゴさんとのバトルで俺がやらかしたレントラーのサンダーダイブから学び取ったんだろう。とびひざげりもサンダーダイブと同じく外したり防がれたりしたら自分がダメージを負う技だからな。

 

「今だヘイガニ!クラブハンマー!!」

 

 そして最後にクラブハンマーでノックアウト。アサナンを沈めてヘイガニが勝利を収めた。

 

「ヘイヘーイ!」

 

 そういう鳴き声なのは分かっているが、滅茶苦茶煽ってるように聞こえるな。多分最後のはトウキさんもサトシの対処が見たくて敢えてとびひざげりをチョイスしたんだろうし。

 このバトルを観ているからこそ、改めて実感する。ジムリーダーはバトルに勝つ事よりもチャレンジャーを導く事、そして成長を確かめる事を第一に戦っているんだよな。

 

「……うん。ゲットして日が浅いポケモンのアドリブへの対応も見事だよサトシ君。本当に見違えたね」

 

「ハハ……こういうのは結構得意なんです!」

 

 照れ臭そうに頬を掻きながらヘイガニをモンスターボールに戻すサトシ。薄々思っていたけどこれは……。

 

「それじゃあ最後は……ハリテヤマ、テイク・オフ!」

 

「遂に来たな!リベンジ決めるぞ!マリル、君に決めた!」

 

 最後はハリテヤマとマリルか。前回負けたマリルでキッチリ借りを返すつもりらしい。そしてトウキさんに合わせて自分もポケモンを変えている辺り、あくまでそれぞれタイマンで勝つつもりだ。

 

「サーフィンで鍛えてるあのハリテヤマにみず技は通用しないし、フェアリー技のじゃれつくもハリテヤマには受け流されちゃうよ……」

 

「サトシは馬鹿じゃない。ロケット団と違ってその辺もちゃんと考えているさ」

 

 睨み合うマリルとハリテヤマ。先に動いたのはハリテヤマだった。

 

「ハリテヤマ!かみなりパンチ!」

 

「避けろマリル!」

 

 早速マリルも波を避ける修行が活きたな。ハリテヤマのかみなりパンチを躱して上手く距離を取る。

 

「ハリテヤマの足元にバブルこうせんだ!フィールドを泡まみれにしろ!!」

 

 ここでサトシはバブルこうせんによる泡をハリテヤマの周囲にバラ撒く手段に出た。下手に動けば足を滑らせて大きな隙になる。まずはハリテヤマの自由を奪う気か。

 ハリテヤマ自身を狙う訳ではないから、受け流し云々もなく、瞬く間にハリテヤマの周囲は泡に囲まれた。

 

「考えたなサトシ。ハリテヤマのパワーを支えているのはあの下半身の強さだ。動く際に足に力を入れられなければパワーも十分に発揮できないはずだ」

 

「やった!これならハリテヤマは迂闊に動けないよ!」

 

「もしかしたら受け流しだってできないかも!」

 

 それに身を捻って受け流すにも限界があるだろう。マリルが間髪入れずに大きく動いて攻撃すればするほど、ハリテヤマも足を動かさなければならない。だが下手な動きでは足を泡で滑らせ、倒れて隙だらけになるし、それを警戒して足元を注意しながら動くのでは受け流しの精度は著しく落ちるはず。

 

「よーし、マリル!アクアテールだ!!」

 

「甘いなサトシ君。ハリテヤマ!地面に向かってはっけい!」

 

 だがトウキさんはハリテヤマのはっけいを地面に叩き込む事で、その衝撃で足元の泡を全て吹き飛ばした。マジかよ。

 

「ハリテヤマ!ちきゅうなげだ!!」

 

 迂闊に接近したマリルのアクアテールを受け流し、逆に捕まえて相性無視の固定ダメージを与えて来た。だがマリルは前回の屈辱を晴らしたいのか、やぶれかぶれのバブルこうせんをヤケクソ気味に放ち、ハリテヤマの顔に命中させた。

 

「ハリ……」

 

 マリルを地面に叩き付けてから、痒そうに顔を拭うハリテヤマ。……技の性質上、マリルには一定のダメージが入ったが、地面に叩き付ける際の踏み込みが浅かったな。

 

「……!」

 

 あの顔、サトシも気付いたな。そしてサトシはもう一度ハリテヤマの足元に向けてのバブルこうせんを指示。一度通用しなかった戦法をもう一度取った事に訝しげな表情になるトウキさん。また同じようにはっけいで対処させる。だがサトシの狙いはそれによって生まれる僅かな時間だった。

 

「とびはねる!」

 

 ハリテヤマがマリルに構えなくなるその一瞬でひこう技のとびはねるを使った。当然、トウキさんとハリテヤマはこの手の攻撃の迎撃策などいくらでも考えているのか、ハリテヤマはカウンターに備えるかのような構えを取る。

 

 だがサトシはここである意味予想外の一手を打った。

 

「マリル、あまごいだ!」

 

 攻撃に移す前にあまごいで雨を降らせる。みず技が大して効かないトウキさんのハリテヤマ相手にどういうつもりかとマサトが疑問の声を上げたが、俺はすぐ分かった。

 

「リルー!!」

 

「ハリィーテェ!!」

 

 直後、マリルのとびはねるがハリテヤマに直撃。受け流す事もできずにモロに喰らった。効果抜群の上、急所に当たったな。

 

「どういう事!?」

 

「人間も何かしてる時に顔に水をかけられたら気が散るだろ?ポケモンだって同じだ。サトシはそこを突いたんだ」

 

 驚くハルカに解説を入れてあげる。きっかけはマリルが勝手に繰り出したバブルこうせんだ。

 あまごいによってハリテヤマは視界を雨に遮られた上、顔が濡れた事により集中力が途切れ、注意力が散漫になった。だからこそ、普段のバトルで当たり前にやっていた読みの精度があの数秒だけ著しく落ちた。

 サーフィンなら話は別だろうけど、何より雨で視界を遮られたのが大きかった。

 

「今だマリル!トドメのアクアテールだ!!」

 

「リィ〜ルッ!!」

 

 そしてあまごいによって威力が増幅したアクアテールをお見舞いしてやり、ハリテヤマをもノックアウト。

 

「ハリテヤマ、戦闘不能!マリルの勝ち!よって勝者、チャレンジャー、マサラタウンのサトシ!!」

 

「よっしゃあぁーーーーー!!!」

 

 拳を振り上げて大喜びするサトシ。トウキさんも一瞬面食らったような顔だったが、すぐに口元を綻ばせ、笑顔になった。

 

 まさか全部一対一でストレート勝ちするとは。アニメ以上に島での特訓の成果が出てるんじゃないか?

 

「本当に凄く成長したねサトシ君。どのバトルも見事だったよ。受け取ってくれ。これがムロジムを制した証、ナックルバッジだ」

 

「ありがとうございます!」

 

「最後まで良く自分を見失わず頑張ったね、サトシ君。自分の欠点を直そうとして良い所まで失くすトレーナーは多い。だが君は持ち前の破天荒さを失う事なく切り抜けたんだ」

 

 確かに俺もそういうトレーナーを何人も見てきた。サトシは修行で身に付けた事や俺から吸収した事を見事に自分のバトルに組み込んでみせた。これは本当に凄い事だと思う。俺に同じような事ができるかと言われたら、分からないとしか答えられない。

 

「でもサトシの作戦は凄かったかも!」

 

「本当に計算してたのかは分からないけどね」

 

「アドリブと計算の半々だろうけど、それがサトシにピッタリと嵌ったのかもな」

 

「そうそう。そこがサトシの良い所さ」

 

「君の才能はいつの日か大きな波となって、ポケモントレーナー達の間に嵐を巻き起こすだろう」

 

 トウキさんの言葉は割とマジで予言になるんだよな。アニメ視聴者視点の話になるが、この世界の主人公の一人だし、アニメじゃアローラのチャンピオンや世界王者にもなるからな。

 

「これからもしっかりな。サトシ君!」

 

「はい!」

 

 でも俺だって負ける気はこれっぽっちもない。今年のホウエンリーグで優勝するのは俺だし、いずれPWCSのマスターズトーナメントで優勝して世界チャンピオンになるのも俺だ。

 

「よーしナックルバッジ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……今回のバトルでのヘイガニとマリルの勝ちはサトシの指示無しであいつらが勝手に技を使った事が鍵になっていた。

 

 

 俺のポケモン達はまずやらない行動だ。

 

 

 まさかダイゴさんが言っていたトレーナーに頼り過ぎってのはこういう事か?




サトシらしさを貫けたバトルだっただろうか……
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