ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード 作:メンマ46号
せめてハルカのコンテストデビューまでは終わらせたい。アニメになかった要素を結構入れるつもりだから大変だ……。
sideミテキ
俺達は二週間後にコンテスト開催の迫るカイナシティにやって来た。暫くはこの街のポケモンセンターに滞在して、ハルカのコンテストに備える事になっている。
「お。コーディネーター沢山いるなぁ」
ちょっと周りを見るだけでもバタフリーやジグザグマ、カクレオンといったポケモンやそのポケモンと一緒に一次審査の為の魅せる演技のレッスンをしているコーディーターが溢れ返っていた。
流石はコンテスト発祥の地、ホウエン地方。コーディネーターにとっちゃある意味聖地だよな。
「みんな燃えてるな!」
「なんたってポケモンコンテスト開催まであと二週間だからね!」
「その為に早くからここに泊まって練習を積んでるって訳だ」
「こりゃハルカも負けてられないな」
「みんな手強そうだよ?お姉ちゃん大丈夫?」
「二週間なんてあっという間だぞ?」
マサトとサトシの質問も尤もだろう。だがハルカはとびきり可愛らしい笑顔で胸を叩いて元気良く答える。
「まっかせなさーい!……でもちょっと不安かも」
どっちだよ。
****
そんな訳で俺達はハルカのコンテストの特訓の為にカイナシティ自慢のリゾートビーチ……の外れにやって来た。人の沢山いる所でコンテストの練習しても普通に迷惑だからな。
「じゃあまずは一次審査に向けて魅せる演技の練習よ!アゲハント、ステージ・オン!」
ハルカは早速アゲハントをボールから出して練習を開始する。やっぱり一次審査はアゲハントをチョイスしたか。まぁコンテストを志したのもメグミさんのアゲハントを見てだし、当然か。
ハルカの手持ちポケモンはアチャモ、ルリリ、アゲハント、ヤミラミだが今回のコンテストに出せるのは一次審査と二次審査で一体ずつの二体だ。勿論一次と二次で同じポケモンを出すコーディネーターもいるが。
前述の通りアゲハントは確定として、もう一体をどうするのかもこの準備期間で決めなくてはならないだろう。アニメではいなかったルリリとヤミラミもこの先活躍するだろうし、色んな意味で楽しみだ。
アゲハントはボールから出ると同時に大きな羽を羽ばたかせて鱗粉を綺麗に撒き散らす。登場の掴みはそこそこ良い線行ってるな。
それからメグミさんの演技を参考にしたのかフリスビーを投げてアゲハントのかぜおこしで返させる。これも悪くない。アゲハントの羽の力強さのアピールになるだろう。
「ハルカ、次の演技は何だ?」
「ふっふふ〜ん。じゃあとっておきのを見せるわ。アゲハント、ビシッと決めてね!」
ドヤ顔しながらサトシの質問に答えてアゲハントに期待するハルカ。だが対照的にアゲハントは不安そうだ。まだ成功率はそこまで高くなさそうだな。
「アゲハント!ぎんいろのかぜ!」
指示通りにぎんいろのかぜを発動するアゲハントだが、途中で技が上手く続けられず、風も弱々しくなって消えてしまった。これは技自体がまだ未完成と見た。
「うぅ……また失敗かぁ。成功率低いかも……」
「お姉ちゃん、コンテストで使うのはまだ無理があるんじゃない?」
「でも、ぎんいろのかぜはコンテストでは良い線行くと思うのよ」
「確かにそうだな」
「ああ。コンテスト向きの技ではある。実際むしポケモンを使うコーディネーターもぎんいろのかぜの採用率はかなり高い」
俺だってコンテスト出場経験はあるし、何なら小さい頃から親に無理矢理コンテストを観させられて、ぎんいろのかぜはかなりの頻度で使用されているのを見た。
「ハルカ、こういう時は練習あるのみだぜ!」
「サトシの言う通り。それに要はアゲハントにぎんいろのかぜを教えてくれる先生がいれば良い」
そう言って俺はクイックボールを取り出し、そこに入っているポケモンを出した。
俺が出したのはガーメイルだ。この為に今朝ナナカマド研究所に連絡して呼び寄せた。
「ガーメイ!!」
「ガーメイルだ!シンオウリーグでも強かったよね!決勝戦じゃ真っ先にやられてたけど」
余計な事を言ったマサトはねんりきで張り倒された。
「ガーメイルもぎんいろのかぜを使えるからアゲハントにアドバイスしてやれると思って呼んだんだ」
「ありがとうミテキ!ガーメイル、お願いね!アゲハント、もう一度練習しましょ!」
蝶と蛾だがむしポケモン同士アゲハントとガーメイルはすぐに仲良くなったようだ。ガーメイルはまず言葉でぎんいろのかぜのコツを教えているのか何やら鳴き声が長い。だがアゲハントはあまりしっくりこないのか、少し困ったような表情だ。
なので取り敢えずぎんいろのかぜは後回しにして一次審査での他の練習をする事になった。出鼻を挫いてごめんなガーメイル。
で、練習再開として再びメグミさんリスペクトのフリスビーを使った演技の練習だ。互いにキャッチボールの感覚でフリスビーを行き来させるのが今回の演技の肝になるとか。
アゲハントのかぜおこしで返された三枚のフリスビーを見事に二連続でキャッチするハルカ。華麗でいつまでも眺めていたいが、痛恨のミスをしている。
「あれ……」
三枚のフリスビーに対して掴んだのは二枚。一枚取り損ねていたのだ。これ本番のコンテストじゃ減点対象になっちゃうな。
そしてそのフリスビーが飛んで行った先には階段があり、いつの間にか人がいてこちらを見ていた。
「人がいるぞ!」
「危ない!」
タケシとハルカの叫びを対して涼しい顔でその人物は当たりそうになっていたフリスビーをキャッチした。クールぶって目を閉じて片手でキャッチしたのが何処となく鼻に付く……ん?
「……うげ」
絶対に会いたくない……というよりハルカに会わせたくない奴とエンカウントしてしまった。俺がハルカと結ばれる為には一番の邪魔者だ。
コンテストに出る以上は同じ大会に出場する事もあるだろうとは覚悟していたが、それ以外では絶対に接触しないように裏で手を回すつもりだったが、その前に向こうから来やがった。クソが。
「すみませーん!」
「君、まさかその程度の腕でポケモンコンテストに出ようって言うんじゃないだろうね」
開口一番それかよ。駆け寄って謝ったハルカに向かってそいつはそう吐き捨てた。
ハルカの足元に乱雑にフリスビーを投げて砂に突き刺す。喧嘩を売ってるのはよーく分かった。階段から降りて態々ハルカの前に出てこいつは次にこんな事を言いやがった。
「美しくないよ、君」
「……あ゛?」
ハルカを見てそんな感想が出るなんてどうやらこいつは美醜感覚が極めて狂っているようだ。コーディネーターには致命的だ。脳味噌に鼻糞でも付いているんじゃないか?
「いきなり何なのよ!」
「僕の名はシュウ。ポケモンコーディネーターだ」
「うっせーさっさとどっか行け」
おっと、つい本音が。
「やれやれ、初対面から失礼な事だ。君も美しくない」
礼儀に関しちゃオメーに言われたくねぇよ。このナルシスト野郎が。お前のやる事なんて薔薇持って無意味にカッコ付けるだけだろうが。やってる事はコジロウと同レベルの癖してハルカに難癖付けてんじゃねぇぞコラ。
「ポケモンコーディネーターって事はハルカと同じだな」
「一緒にされては困る。君も、君のポケモンも美しくないからね」
サトシの発言を一蹴してハルカとアゲハントをディスってくるクソナルシストをゴウカザルでやなかんじーにしてやろうと思い、ボールを手に取ろうとしたら先にハルカがキレた。
「私の事ならともかく、私のポケモンや友達を馬鹿にするのは許さないわよ!」
「喧嘩売ってんのなら買うぞコラ」
「怒ると揃ってますます美しくない」
「ムキー!!」
「お姉ちゃん落ち着いて!」
ハルカが俺の事もフォローしてくれたので、今すぐにでもゴウカザルを出したい衝動を抑えつつ、俺はナルシ野郎に問いかける。
「ハルカの腕前を素人だって馬鹿にしているけど、最初はみんな初心者だろ。それともお前は初心者を馬鹿にできる程最初から上手かったのかよ」
「そういう訳ではないさ。でもコンテストに出るのは必要な実力まで上達してからだったからね」
「そこまで言うならお前のポケモン見せてみろよ」
「サトシの言う通りだ。一方的に難癖付けやがって!」
どの位の腕でコンテストに出るかはコーディネーターの自由だろう。本番を経験して実力を上げていくタイプだっているし、結局優勝するなら100%勝つ気でやるしかないんだから、他人がそこに口出しする時点でおかしい。
「そんな必要はないね。それより早くここから出て行ってくれないかな。ここは僕の泊まっているリゾートホテルのプライベートビーチなんだ」
なーにがプライベートビーチだ、ボンボンが。だが道理で海辺なのに人がいない訳だ。ハルカの練習の為に人のいない場所を探してすぐ目に付いたここを選んだのが仇になったか。
「行こうぜみんな」
不法侵入とか言われて揉めるのも面倒だし、サトシの言葉に従って俺達はこの場を後にする。あーあ、初っ端からそもそも知り合わないという選択肢は潰れたか。
「……貴方も、ポケモンコンテストに出るの?」
「その為にここに来たのさ」
コーディネーターという時点でハルカの気を引く要素になってしまっている。クソ……どうにかしないと。
****
俺達は場所を移して街外れの林の中でハルカのコンテスト特訓を再開する事にした。気分転換も兼ねて今度は二次審査のコンテストバトルの方だ。
一次審査はアゲハントで決定したようだが、二次審査はハルカもまだどのポケモンを起用するか決めあぐねているようで、まずは全員試してみようという流れになった。まずは一次審査の枠が決まっているアゲハントだ。コンテスト経験者であるトゲキッスにも見て貰う。
「確かミテキはコンテストに出た事があるんだったな」
「まぁな。優勝してリボンをゲットした事もあるけど、グランドフェスティバルに出られるだけのリボンは集められなかったな。リーグ挑戦の片手間にできる程甘いもんじゃなかった」
リーグ挑戦とコンテストの二足の草鞋をやってのけたミツミの凄さが今ならよく分かる。
俺が挑戦したのはズイタウンとトバリシティのコンテストで優勝した二回だけだ。どっちも記念参加だったがな。
そんな訳で唯一コンテストバトルの経験がある俺が最初にハルカの模擬戦の相手をする事になった。と言ってもシンオウリーグを戦ったメンバーやこないだ捕まえたミカルゲじゃ強過ぎるので今回は育成組からエーフィを選出した。アゲハントに華を持たせるなら相性不利なエーフィが良いだろう。
「つーわけで、頼むぞエーフィ」
「エフィ!」
「相手はエーフィね!」
タケシに審判をして貰い、模擬バトル開始。先攻はまだバトル慣れしていないハルカだ。まずはアゲハントに鱗粉を撒き散らしながら優雅に空を飛ばせて綺麗に舞わせる。さっきも見たがやっぱり掴みは悪くない。
ひこうタイプでもあるアゲハントの強みを活かせるように上を取るのも良い判断だ。
「アゲハント、かぜおこし!」
「エーフィ、ねんりきで自分を固定するんだ」
ひかりのかべで防御するのも良いが、折角の模擬バトルだ。攻撃技の応用を身に付けさせるチャンスでもある。
ねんりきで自分を固定した事でかぜおこしにも負けずに踏み留まるエーフィ。この防御が上手く行くようになれば変化技無しでバトルを組み立て、技枠を節約できるようになるかもな。
「次はねんりきでアゲハントを引き摺り降ろせ!」
「ええっ!?ア、アゲハント!躱して!」
折角の優位性を崩す動きにハルカは唖然とし、慌ててねんりきを躱すように指示。しかしハルカの焦りがアゲハントにも伝わってしまっているのか、アゲハントも困惑してねんりきに捕まってしまった。
必死に抵抗するアゲハントだが、エーフィはどっしりと構える事で集中できているのでアゲハントを地に下ろそうと引っ張り続け、少しずつ落ちて来ている。
「そうだ!いとをはく!」
おっと。そいつは悪手だぜい。アゲハントが放出した糸はエーフィに届く事なく直前で勢いそのままに反射されて逆にアゲハントに直撃。技を放ったアゲハントが糸に絡まる事態になってしまった。
「ど、どうして!?」
「お姉ちゃん!ミテキのエーフィの特性はマジックミラーだよ!変化技は跳ね返されちゃうんだ!」
「そんな!どうしよう……ア、アゲハント!早く脱出して〜!」
かぜおこしを指示してもアゲハントもテンパっているのか上手く発動自体できない。
糸がこんがらがったアゲハントは上手く滞空する事もできなくなったのか、ねんりきに引っ張られてフラフラと地面に落ちてくる。着地した所で一気にでんこうせっかで距離を詰めさせ、前足をアゲハントの前で寸止めさせる。
「そこまで!エーフィの勝ち!」
「そんなぁ……」
うーむ、キノココかキモリにするべきだったか?いやでも結果は大して変わらないか。むしろマジックミラーのようなかなり特殊な相手との戦い方を学んだ方がハルカの為か。
それにハルカはトウキさんとのジム戦でマジックミラーの効果を見ていた。それをちゃんと頭に入れておけばあのミスは防げたはずだ。今後の課題だな。ヤミラミをメガシンカさせる事ができた時……ハルカがマジックミラーを使う時の為にも。
「ごめんね、アゲハント。大丈夫?」
「いやぁ!お見事お見事!」
ハルカがアゲハントの無事を確認している中、拍手してこっちに近付いてくるのは一人のおっさん。服装的に大工か何かの職人とかだろうか。
「中々キレのある技だったよ!」
「いやぁ、それほどでも……」
「君、今度のポケモンコンテストに出るのかい?」
肩を掴まれてそう聞かれたのは俺だ。自分が言われてるのかと思い、照れたハルカは固まった。
「いや……出るのは俺じゃなくて」
「私です……今回が初めてのエントリーなんですけど」
がっくししながら挙手するハルカ。まぁ今のバトルを観れば俺の方がコンテストに出ると思われるわな。
「おお、そうなのかい!思い出すなぁ…俺が初めて出場した時は凄く緊張しちまってなぁ……」
急に自分語りされてもなぁ。おっさんの過去話とか正直興味無いし。俺は二回とも記念参加だったからまるで緊張しなかったけど。今思えば最初っから最後までリラックスして出てたからベストパフォーマンスが出来て優勝できたのかもな。
「え、じゃあ!」
「おうよ!かつては俺もポケモンコーディネーターとしてコンテストに出てたのさぁ!」
「わぁ〜!大先輩だぁ〜!」
「俺は花火職人のハナビシだ!」
まるでその仕事をやる為だけに生まれたような名前だな。
「初めまして!ハルカです!」
「サトシです!」
「ピカ、ピカチュウ」
「タケシと言います」
「僕、マサトです!」
「ミテキっす」
「トゲキッス」
おいトゲキッス、なんか韻踏んでるみたいになったじゃねえか。これを言う為にお前を出したみたいに読者に思われたらどうする。
「あの!ハナビシさんはコンテストで優勝した事はあるんですか!?」
「ハハハ!リボンの数なら三つって所かな?」
それを聞いた瞬間にハルカの目の色が変わってキラキラし始めた。かわいいっ!!
「凄いかも〜!!教えて下さいハナビシさん!コンテストで勝つポイントとか!気を付ける所とか!あとコーディネーターに大切な事とか!それからそれから〜!」
「まぁまぁまぁ、落ち着いて!実はポケモンコーディネーターにとって大切なのはまず落ち着く事なんだ」
「落ち着く事?」
さっき自分で分析してみた考えを早速裏付けてきた。元とはいえ、本職のコーディネーターが言うなら間違いないだろう。
「ああ。コーディネーターが慌てるとそれがポケモンにも伝わって技が失敗する事があるからねぇ」
正にさっきのハルカがそれだな。それでアゲハントもテンパってエーフィの攻撃を避けられなかったり、かぜおこしすら失敗していたからな。勿論エーフィの効果抜群を突けるぎんいろのかぜも無理だったろうな。
ハルカも思い当たる節があるようで、ハナビシさんの言葉を聞いて考え込む。
「コーディネーターはどんな事態に陥ってもどっしりと構えてなきゃな!」
「つまりいつでも平常心を待てという事ですね」
「その通り!」
今のハルカの一番身近な課題という訳だ。
それから急遽ハナビシさんによるポケモンコンテスト講座が開講された。何故かハルカだけでなくマサトも正座して真剣に聞いている。何故に?
「それからもう一つ!コーディネーターならトレーニングだけでなく食事でもポケモンの気を使う必要があるんだ!」
「食事ですか?もしかしてポフィンとかポロックとか?」
「そう!コーディネーター御用達のポケモンのおやつ!シンオウならポフィン、ここホウエンならポロック!ポケモンの毛艶やコンディションを整えるのには不可欠って訳だ!それじゃ、これを君にあげよう!」
そう言ってハナビシさんが取り出して、ハルカに渡したのはちょっと古いモデルのポロックケースだ。
「ありがとうございます!わーい!貰っちゃったー!」
「良いなぁ…」
喜んでたり羨ましがってる所悪いが、それおっさんのお古だぞ。
ぶっちゃけ専門のショップに行けばもっと軽量化や保存面で優れた物が買えるのだが、流石にここで水を差すのは悪いので黙ってる事にした。まぁ俺の持ってるポフィンケースも人の事言えないしな。
****
その後、ハナビシさんがハルカに必要な良いものがあると言って職場の花火倉庫に案内してくれる。流れ的にポロックやポフィンの材料になるきのみだろうか。
道中、ハナビシさんが今製作中のポケモン花火についての説明を受ける。なんでも打ち上げ花火が夜空に鮮やかにポケモンを描くんだとか。そういえば俺もそういうの見た事あるな。
「でも中々良い色が出なくてなぁ。今晩、花火大会の役員に試作品を見せなきゃいけねえんだけど……」
そんな話をしているとハナビシさんの倉庫に到着した。だが良く見れば倉庫の扉が開きっぱなしになっている。不用心だな。
するとその開きっぱなしの倉庫から見知った後ろ姿が出てきた。
「アチャモ?こんな所で何してるの?」
「ニンフィアまで」
模擬バトルの際に見学の為に出していたアチャモと勝手にボールから出て、まぁ良いかと出していたニンフィアだった。お前ら昼寝してたはずなのに何故にここにいる?
「チャモチャー!」
「フィアー!」
振り向いたアチャモとニンフィアの顔……というか口周りが真っ黒に染まっていた。
「アチャモ!?」
「ニンフィア、どうしたお前!?……お前、なんかつまみ食いしたな?」
「口の中も周りも真っ黒だ……」
慌てて駆け寄って汚れを見ると、甘い香りが鼻をくすぐる。何かのきのみを食べて果汁がベトベトにくっ付いたのか。
それを見てハナビシさんが慌てて倉庫の中に入る。ああ、流れ的にハナビシさんの倉庫にあったきのみを勝手に食ったって事だよな。
確認するとポケモン花火の色を鮮やかなものにする為に取り寄せていたブリーの実があったらしいが、それが全て無くなっているそうだ。確定だな。アチャモとニンフィアで勝手にブリーの実を食べちゃったのか。
タケシが以前ハルカの水着回でナオコちゃんから貰ったノートにもブリーの実を食べると口の中が黒くなるとあった。なんでもポケモンが食べると色艶が良くなるからポロックの材料にも良く使われるらしい。ハナビシさんもその理由からハルカに分けてあげようと思ったそうだ。
「しかし弱ったなぁ……ブリーの実を混ぜると花火の色も良くなるから今夜の試し撃ちの花火に使おうと思ってたんだが……それを全部を食べられちまうとは」
「ご、ごめんない!そんな大事な物を!アチャモ、あなたも謝りなさい!」
「すいませんでしたぁー!ニンフィア、謝れ!とにかく謝れ!」
「いやあ、アチャモとニンフィアが悪いんじゃない。倉庫の扉を開けっぱなしにしていた俺が悪いんだ……」
そうは言っても罪悪感は半端じゃない。ちゃんと教育はしてきたつもりだが、まさか倉庫にあるような明らかに人のものだと分かり切ってるようなものを勝手に食べるなんて………ああ、そういや他のポケモンも結構やらかす。マニューラとか、ダイケンキとか、あいつとか、あいつとか。
ハナビシさんはブリーの実なしでやるしかないと言うが、ポケモンのやらかした事はトレーナーの責任。俺達でなんとかブリーの実、もしくは代わりになるきのみを探して来る事にした。
「……で、結構集まったな」
「ブリーの実だけに拘らなかったら結構見つけられるもんだな!」
「これだけあればハナビシさんもきっと試作の花火が作れるよ!」
オレンの実にモモンの実、クラボの実、オボンの実、etc……ポロックやポフィンを作る分も確保できそうだ。
肝心のブリーの実もアチャモが崖の木に成っているのを見つけたので、ガーメイルに回収して貰い、少量だが手に入れた。きのみを横取りしようとするロケット団もやなかんじーにしてやった。
ハナビシさんに集めたきのみを渡すとお礼を言われるが、そもそもが俺とハルカのポケモンへの監督不行届なので、微妙な気分だ。今夜試し撃ちするポケモン花火を絶好のスポットで見せてくれるというので、それまでの間にまたハルカのコンテストの準備をする事にした。
「お姉ちゃん、早速余ったきのみでポロックを作ってみようよ!」
「そうね!」
「ナオコちゃんから貰ったノートにもレシピがあるから、それを参考にしてみよう」
そんな訳で一旦ポケモンセンターに戻ろうとしたタイミングが奴が現れた。
「やぁ」
「シュウ!?何しに来たの!?」
さっき出会ったお馴染みのナルシスト、シュウがポケモンセンターまでの道で待ち構えていた。さっきのいざこざもあってハルカが反応するが、奴はハルカには大して目を向けない。
「用があるのはそこの彼さ」
そう言ってこいつが指名したのは俺だ。そして隣にいるトゲキッスにも視線を向けて口を開く。
「そこのトゲキッスでシンオウのコンテストに出ていただろう?当時はトゲピーだったね。緻密に練られた魅せ方で中々美しかったよ」
「……交換はしないぞ」
「ああ、そういうつもりで言ったんじゃない。バトルがしたいのさ」
どうもこいつは態々シンオウのコンテストもチェックしていたらしい。それでさっき出会った俺がコンテスト経験者と知って追いかけてきたようだ。
ハルカにバトルの手本を見せる意味でも丁度良いので受ける事にはしたが、先に忠告はしておく。
「言っとくけど、魅せるバトルは専門じゃねぇからあんま出来ねえぞ」
「分かってるさ。シンオウのコンテストを観た限りでもこんな即興まで期待できる程ではなかったからね」
………こいつムカつくなァ。
コンテスト経験者とはいえ、俺はコンテストバトルは専門ではないので今回は普通のバトルという事になり、俺とシュウは対峙する。
指名されたトゲキッスを出しながら俺はもうどう戦うかは決めていた。普段ならこういう野良バトルではやらないが、ムカつく相手には容赦はしねぇ。
「行くぞ、トゲキッス!」
「ロゼリア!GO!」
俺のトゲキッスに対してシュウはロゼリアを出して来た。フェアリータイプ相手にはどくタイプという意味では定石だな。おまけに普通のバトルの形式を取っていても花粉を撒いて自分を魅せる事を忘れていない辺りは徹底されている。
「ロゼリア!?」
「ロズレイドの進化前だよ!すっごく綺麗だ!」
「フッ、本当の美しさの前ではどんな褒め言葉でも陳腐に聞こえる」
そのナルシスト発言で台無しだぞ。
「くさタイプとひこうタイプって点ならミテキが有利だけどどくタイプとフェアリータイプじゃ不利だよ!」
「相性は互角って事だな!」
「だがあれだけ育て上げたロズレイドを持っているミテキならロゼリアの事を良く知っているだろうし、充分有利に戦えるはずだ」
「ロゼリア……」
本職のコーディネーターのポケモンを見てハルカも観察を欠かさない。元々初心者のハルカとしては相手のポケモンを見て学ぶべき事は沢山あるからな。
……あのロゼリアの特性は十中八九どくのトゲだろう。交代ができないコンテストバトルではしぜんかいふくの旨味がないし、リーフガードもコンテストのアピールでは使い辛い。これはロズレイドに進化すればテクニシャンになるから話は別だが。でも何よりアロマセラピーで魅せながら状態異常を治す方がコンテストに映える。消去法でどくのトゲだ。それに相手をどく状態に出来ればその後のバトルを優位に進めやすいし、そこまでを想定できるコーディネーターなら迂闊に物理攻撃はできなくなる。物理防御の低いロゼリアともマッチしている。
まぁ特殊技で一方的に嬲るから関係ねぇけど。
「ロ、ロゼリアァーー!!!」
先攻を譲ってきたので遠慮なくでんじはをお見舞いし、痺れて動きが鈍った所をエアスラッシュで連打。
容赦なくまひるみキッスの餌食になって倒れたロゼリアに駆け寄るナルシストを見てちょっと胸がすく思いになった。
「絶対やると思ったよあの戦法」
「でんじはで相手をまひ状態にして、エアスラッシュの追加効果の怯みを特性てんのめぐみで倍の確率で発生させる……それによって高確率で相手を行動不能にして一方的に攻撃し続ける……やっぱりえげつないな」
「でも思い付いたのは凄いぜ!」
じめんタイプが相手でもトライアタックを使えば良い。場合によってはこおり状態になって確定で行動不能だ。
「変化技とポケモンの特性と、攻撃技の追加効果……」
ハルカはハルカでちゃんとメモを取っている。感心感心。
「……どうやら、君を甘く見過ぎていたようだね」
ボールにロゼリアを戻して素直に負けを認めるシュウ。あれ、案外潔い。屈辱に歪んだ顔を見たかったのに。すると今度はハルカに目を向ける。
「彼がバトルの基礎を教えているのなら、期待はして良さそうだね。君とのバトルも楽しみにしているよ。尤も、君が一次審査をパスできればの話だが」
そう言ってシュウは一足先にポケモンセンターに向かって去って行った。
「……負けるもんですか!」
ハルカはハルカで対抗心を燃やして笑みを浮かべている……。え、何この感じ。あいつズタボロに負けたよね?俺が圧勝したよね?なんであの二人が良い勝負したみたいな雰囲気になってんの?距離縮まる感じになってんの?
****
何処となくスッキリしないまま夜になり、ハナビシさんお勧めの花火スポットにて打ち上げられたポケモン花火を俺達は眺める。ポケモン達にも見せてやれるようにボールから出す。
「ピカチュウだ!」
「ピカチュー!」
「綺麗ね〜」
ピカチュウを筆頭に次々と打ち上がるポケモン花火。ピチューにアチャモ、ミズゴロウ、キモリのホウエン御三家。どれも綺麗だし完成度たっけーな。
ホウエン地方だから当たり前だけどシンオウ御三家の花火は無いのか……。シンオウで見るヒコザルの花火大好きなんだけど。
「あ!今度はニンフィアよ!」
「フィア!?」
ハルカが指差した先にはニンフィアの花火が広がり、他にもエーフィやブラッキーといったブイズの花火が次々と打ち上がった。
「へへっ、集めてくれたきのみの中に良い色を出してくれるものがあったからな。ある意味ニンフィアとアチャモがブリーの実を食ってくれたからこそ、君達が見つけてくれたって事で、俺からのお礼さ!」
ハナビシさんの粋な計らいに思わず顔が綻ぶ。エーフィとニンフィアも大喜びしているし、これは本当に嬉しい。
見事に夜空を飾るポケモン花火。みんなで見たこの日の花火は最高に綺麗だった。
10.ガーメイル(♂)
特性:いろめがね
備考:ガーメイルの時、ハクタイの森で捕獲。ゲームじゃないので甘い蜜とか金色の木は無しで偶然遭遇。話をする際はやたらと擬音語などを多用して説明したつもりになるタイプ。
ガーメイルはダイパをやってた小学生の頃、特に理由もなくやけにお気に入りだったので入れました。何ならガブリアスより先に確定しました。
因みに主人公のロズレイドの特性をしぜんかいふくにしたのはフルバトルなどで交代しながら戦う事を前提とし、技枠も節約する為……と言いたいけど実際はゲットした個体がたまたましぜんかいふくだっただけ。
ミテキ:前世の時点で子供心ながらシュウハルというカップリングは大嫌いだった。サトハルの方がまだ受け入れられた。なのでシュウは嫌い。恋愛は戦争じゃー!!恋敵の排除くらい当然するよ。
シュウ:ハルカへの態度で反感を買っている事は自覚しているが、それを踏まえてもハルカの隣にいる少年から物凄い敵意を向けられてる事に実は内心戸惑ってる。