ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード 作:メンマ46号
sideミテキ
先日、カイナシティのポケモンセンターで新人トレーナーに渡す予定のアチャモが新人に渡す前にワカシャモに進化するという珍事が起きた。
コンテストの練習中にハルカが座礁したホエルオーを発見した事から留守にするジョーイさん(&手伝いに行ったタケシ)の代わりに俺とサトシとマサトで新人用のホウエン御三家の面倒を見る事になったのだが、その中のアチャモはジョーイさんが大好きなのかホエルオーの治療の為に出かけたジョーイさんの後を追おうとしたのだ。
脱走を許す訳にもいかないので止めようとしたのだが、このアチャモ、中々に素早くて乱暴な為、サトシのヘイガニを倒してしまったのだ。その直後にヘイガニ戦で経験値を得たからかワカシャモに進化したのだ。
進化して興奮したのか俺達に襲い掛かるワカシャモをゴウカザルのねこだましで怯ませた隙にボールに戻した。
脱走は防げてもこれは不味いとサトシとマサトは慌てるが、進化したものは仕方ない。ワカシャモは新人には扱い切れないだろうからキモリとミズゴロウの二択にして貰おうという事で落ち着いた。途中ハルカのアチャモを替え玉にしようとか抜かしたので流石に俺も怒った。
これは俺がハルカを好き云々じゃなくて、自分のポケモンを勝手に何かの替え玉にされるとか絶対嫌だろうって話だ。新人の子がアチャモを選ばないようにすれば良いとかそういう問題じゃない。
そもそもハルカは二次審査のポケモンをまだ決めてないからアチャモも普通に連れて行ってるしな。どう足掻いても替え玉は不可能だしさせねーよ。
てゆか、進化云々前に既にサトシのヘイガニに勝てるくらいのレベルになってんならポケモンセンター側の管理問題だろう。進化してなくてもここまで育ってたら新人トレーナーには渡せねーよ。
という訳で戻ってきたジョーイさんに事情を説明し、ホエルオーを捕まえようとしたロケット団をやなかんじーにして、新人の子には二択にして貰う事にしたが、その新人に該当する女の子は普通にミズゴロウを選び、残ったキモリを何故かその父親が引き取った。なんで?
そして肝心のワカシャモはポケモンセンターに留まって、ジョーイさんのお手伝いをする事になった。まぁあの様子じゃ進化せずに新人トレーナーに引き取られても言う事聞かずに勝手にジョーイさんの所へ戻ろうとして遅かれ早かれこの形に収まってたと思うし、これがベターなのかもな。
そんな日々を過ごながら今日はハルカのコンテストに向けて練習の他に別の事をする。
「じゃあ早速俺流のポフィンゼミナールを開講しまーす!」
「「はーい!」」
「でも練習しなくて良いの?」
「練習も大事だが、コンテストにはポロックやポフィンも重要だからな」
今日はハルカの為、ポケモンセンターの調理室を一つ借りて楽しいポフィン教室を開く事にした。参加者はいつものメンバーだけだが。
因みにこの調理室は学校にある家庭科室をイメージして貰えば良い。
周りを見れば俺達の他にもこの調理室の一部スペースを借りて調理している人はそこそこいる。と言っても殆どの人がポロックを作っているが。
ホワイトボードにある程度の概要を書き込み、まずは基本的なタイプ……かわいさを引き立てる甘いポフィンの作り方を教えていく。これは暫くはアチャモ用かな。
「このように細かく刻んだきのみを鍋で混ぜて煮込んで出来た生地をラグビーボールみたいな形にする。型に入れて固めるのが楽なんだけど、ホウエンにはその為の型が無いからな。粘りを持たせて形を作りやすくするのがコツ」
説明しながら実際に見せる事でハルカ達も不恰好ではあるがどうにか模倣して形にはなっている。中でも普段から料理慣れしているタケシは抜群に上手い。
こういうやり方なら極論屋外でも作れる。あとは冷やして固める訳だが、冷蔵庫に入れて……なんてやってたら時間がかかり過ぎるのでここはショートカット。
「つーわけで、頼むぜマニューラ、ユキメノコ!」
「マニュ!」
「メノ!」
ナナカマド研究所から呼んだマニューラとユキメノコにポフィンの生地を冷やして貰い、固める。これを参加している全員分にやって貰い、ポフィン完成という訳だ。
「ポフィンできたかもー!」
「俺のもできたぜー!」
ハルカが完成させたのは少々形が歪でピンクに青や赤が混ざったような微妙な見た目のポフィン。サトシが作った分は灰色で見るからに不味そう。おいおい……。
早速ポケモン達に食べさせてみようとなったのだが、ほとんどのポケモン達は俺やタケシが作ったポフィンに群がり、サトシとハルカ、マサトの三人が作ったポフィンには見向きもしない。
「ピカチュウ……」
「アチャモまで〜…」
特にピカチュウとアチャモは良く俺のポフィンを食べているから食い付きが凄い。手持ちに作ったポフィンをスルーされたサトシとハルカは悲しそうだ。
「こうなったら自分で食ってやる!……っ!まず…」
「うぅ〜…ポフィンって難しいかも」
サトシはヤケになって自分で自作のポフィンを頬張るが、結果として吐きそうになってる。色も灰色でゲームで言う、まずいポフィンだと見ただけで分かるレベルだからな。ハルカも微妙そうな顔で味見している。
「……数をこなしつつ、改善していく必要がありそうだな」
「むしろ一発で完璧なものが作れるタケシってマジで料理の天才なんだな」
素人目から見ても改善点はいくつもあったしな。ハルカはバランスを見ないできのみを割と好き放題入れようとしてたし、サトシは混ぜる際に早過ぎて溢したり、遅過ぎて焦がしたりしてたしな。
「ねぇ、あっちにもポフィンを作ってる人がいるよ」
するとマサトがそう言って隅の調理台でポフィン作りをしている女の人を指差す。確かにきのみを入れた鍋をかき混ぜているし、間違いなさそうだ。
「あの人、シンオウ地方出身のコーディネーターなのかな?」
「良い匂い!もしかしたらすっごいポフィンを作ってるのかも!」
ゾロゾロとその人に近づくサトシやハルカに続いて俺も近寄る。やっぱり俺の教え方じゃ限界があるし、本職のコーディネーターなら是非ハルカにポフィンについて教えてあげて欲しい。
てか、あの緑色の髪、どっかで見たような……?
「……ミツミ?」
思わず顔見知りのコーディネーターの名前を呟く。その呟きは向こうにも聞こえたようで、キョトンとした顔でその人はこちらを振り向いた。
「へ?……え!?ミテキ!?なんでここにいる訳!?」
「え!?マジでミツミ!?え、いや…こっちの台詞なんだけど!!」
俺の顔を見て目を見開き、驚きのリアクションを見せる。対して俺も驚きのあまり、指差して大声でツッコみ返してしまう。
部屋の隅の台でポフィン作りをしていたのはマジでミツミだった。俺と同じシンオウ地方出身のトレーナーでナナカマド博士の助手の一人。そしてコロコロコミックで連載されたポケモンDPという漫画に出たキャラだ。
レッドとグリーンがマスターズエイトな時点でお察しかもしれないが、この世界はアニポケはあくまでベースなのであって、他のメディアの要素はいくつもある。ポケモンDPもその一つだ。
「まさかお前がいるって事はハレタもいるのか!?」
俺はシンオウ地方での旅の中でこのミツミと主人公ハレタとも知り合っている。なんなら二人ともシンオウリーグで戦った。ハレタとは二回戦、ミツミとは準決勝で。どっちも俺が勝ったがな!
「ハレタならガラル地方に行ってるわ。勿論ガラルリーグ挑戦の為にね」
「……あいつ、一人旅でシュート大会に出れんのか?寄り道しまくって時間足りなくなる未来が余裕で想像付くんだけど」
実際お目付け役のミツミがいなかったら、確実に寄り道しまくってスズラン大会にも出られなかっただろう。理屈よりも本能で動く辺り、アイツはポケモン以上に獣だ。
それにゲーム視点になるけどエンペルトはガラル地方出禁なんだけどな。
「ナナカマド博士もよくハレタ一人で行かせたよな。あんなトラブルメイカー」
「一人じゃないわ。ハレタのお父さんのカイセーさんと親子水入らずの二人旅よ」
「不安要素倍になっただけじゃねえか!!」
あのおっさんのせいでムゲンダイナが目覚めても俺は驚かねぇぞ。仮にアローラに行かせたら確定でウルトラビーストをこっちの世界に大量に招くだろうしな。
「なぁミテキ、その人知り合いなのか?」
サトシに聞かれてハッとする。そうだった。知り合い俺だけだった。まずは紹介しないとな。
「こいつはミツミ。シンオウ地方での仲間の一人だよ。つっても一緒に旅した訳でもないけど」
「一言多いのよ。普通に友達って言えば良いでしょうが。相変わらず捻くれてんだから」
ハルカに変な誤解されても困るからな。すると今度はタケシが間に割り込み、ミツミの手を取り、いつものように口説き始めた。いきなりの事でミツミもギョッとしている。
「ミツミさんと言うのですか!美しい貴女に相応しい名前だ!自分は天才ポケモンブリーダーにして、ミテキの心の兄!タケシと申します!」
タケシが凄え勢いでミツミをナンパしてる。絶対やると思ったぜ。むしろ遅いくらいだ。ミツミが助けろという目を向けてくるからガン無視してサトシ達との話に集中する。
「あの人スズラン大会準決勝でミテキとバトルした人だよね!ゴウカザル対ゴウカザルのミラーマッチは手に汗握る凄いバトルだったよね!」
「準決勝……って事はシンオウリーグじゃベスト4なのか!くぅ〜!バトルしてみたいぜ!」
ぶっちゃけアカギより強かった。まぁ勝ったのは俺だがな!!
「それだけじゃない。ミツミは去年のシンオウのグランドフェスティバルで優勝したトップコーディネーターだ」
「トップコーディネーター!?」
ミツミの事を軽く教えてやるとそれを聞いたハルカの目がキラキラと輝き出す。是非ともハルカの成長に一役買ってくれ。
ミツミの手を握り、口説こうと話しかけ続けるタケシを押し退けてハルカがミツミの前に出て挨拶し始めた。あ〜あ、面白かったのに。
「凄いかも〜!本物のトップコーディネーターだぁ〜!!あのっ!私、ハルカって言います!今度のコンテストがデビュー戦なんです!」
「ハルカちゃんね。私はミツミ。よろしくね。……もしかしてミテキの彼女?」
「ふえっ!?か、彼女!?」
今はまだ彼女だと言えないのが悔しい。でもこのホウエンでの旅の中で必ず……!!
「つーか、結局なんでお前ここにいる訳?」
「決まってるでしょ。ホウエンのコンテストに出る為よ。ホウエンと言ったらポケモンコンテスト発祥の地じゃない!コーディネーターとしては一度はホウエンのグランドフェスティバルで優勝したいじゃない!あ、勿論ホウエンリーグにも出るわよ」
気持ちは分かったけど、ホウエンリーグをついでみたいに言うんじゃねぇよ。
「って事はハルカと俺とミテキ、全員のライバルか!俺、マサラタウンのサトシです!こっちは相棒のピカチュウ」
「ピカ、ピカチュウ」
「僕、マサトです!」
「よろしくね。サトシ君にマサト君。それにピカチュウ……ハレタのマイナンみたいで可愛い〜!」
サトシとマサトと挨拶してからピカチュウを抱き上げてデレデレするミツミ。こいつもこーゆーとこ変わってないよな。ハレタのマイナンが生まれた時もこんなだったし。
「でもトップコーディネーターなのに今更普通のコンテストに出るの?」
「むしろトップコーディネーターになった奴が真っ先に掲げる次の目標と言っても良い。全ての地方のグランドフェスティバル制覇はな」
マサトの疑問に俺がそう答えると今度はタケシが説明を付け加えてくれる。
「コンテストが行われている全ての地方のグランドフェスティバルを制したトップコーディネーターにはコンテストマスターの称号が与えられるんだ」
今の所その称号を持っているのはトップコーディネーター兼ジムリーダーのミクリのみ。そのミクリの師匠であるアダンですら、トップコーディネーターではあってもコンテストマスターの称号は持っていない。
「アンタこそまさかホウエンに来てるなんて。急にいなくなったからハレタもコウヤ君も探してたわよ?特にコウヤ君ったら凄い熱の入れようで」
「ナナカマド博士には言ったぞ」
まぁコウヤには絶対伝わらないようにって頼んだから言わなかったんだろうけどな。
「リーグ挑戦にホウエンを選んだ理由は?」
「……秘密だ」
流石に恋愛する為なんて言えねえ。まぁメガシンカも目的の一つではあるので深く突っ込まれたらそっちで誤魔化そう。
「でもまさかアンタが誰かと一緒に旅してるなんてね。ハレタが何度誘っても断ってたのに」
「あいつと旅とか色んな意味で身がもたねぇから断ったんだよ」
主にツッコミ的な意味で。
「なぁ、そのハレタってどんな奴なんだ?」
この場にいないハレタの話題が気になったサトシが尋ねてきた。興味持っちゃったよ。
「一言で言えば……人の皮を被ったポケモン?」
でも個人的にはちょっとハレタとサトシのバトルは見てみたい。きっと熱いバトルになると思う。
「確かスズラン大会の二回戦でミテキとバトルしたトレーナーだよね。エンペルトはカッコ良かったなぁ……レジギガスのスロースタートが解ける直前になって必ずレントラーのほえるで引っ込ませたのは酷いと思ったけどね」
むしろそんなの定石だっつーの。キッサキ神殿の粗大ゴミなんて言われはするが、本調子になったら伝説の名に恥じないスペックではあるんだ。だったらそうならせないようにするのは当然。
「あ〜、あったわね。そんな事。こいつって考える戦術がエグいのよね……」
「真っ向勝負の方が多いっての」
どいつもこいつもエグいだのえげつないだの。前世での廃人レベルの事はまだしてねぇよ。ほえる連発やまひるみキッスなんてまだ優しいレベルだっての。
ミツミやマサトの評価に納得できないでいるとミツミのモンスターボールから一匹、ポケモンが勝手に出てきた。
「……そのブラッキー、あの時のイーブイが進化したのか」
「うん。ついこの間ね」
出てきたのはブラッキーだ。前にミツミがアカギに脅されてハレタと戦わされた際の人質…ポケ質?にされていたイーブイだろう。
ブラッキーは俺の前に来ると俺の足にスリスリと顔を擦り付けて甘えてくる。キューティクルぱねぇ。
「この子もアンタに会いたがってたのよ。あの時アンタとハレタが協力して助けてくれた事、ちゃんと覚えてるんだから」
「……このブラッキーで今度のコンテストに出るのか?」
「まだ考え中。しばらくは見学させるのも良いかなって」
ブラッキーを撫でて答えるミツミ。まぁ同じブイズ系にはグレイシアやリーフィアもいるしな。
「あのあのっ、ミツミさん!コンテストのアピールやバトルの事教えて貰えませんか!?」
「勿論!コンテストって最高なんだから!」
折角知り合えたのでミツミに教えを乞うハルカ。プライドが邪魔して素直に教えてと言えないトレーナーが多い中、先達に素直に聞けるのは美徳だ。
俺を介して知り合った事でミツミはハルカにコンテストについてのレクチャーを承諾。色々と教えてくれる事になった。逆に言えば今のハルカに教えても脅威にならないと判断された訳でもあるな。
そんな訳で調理器具を片してポケモンセンターの外に出る俺達はまたしても驚きの人物を目の当たりにした。
「きらきら〜!くるくる〜!」
大勢の人の前でそんなアイドルみたいな真似をしている女の子がいた。周りにいるのはカメラを構えたオタク集団。だがこのノリとあの顔に俺は見覚えがあった。
「何あれ……」
「ルチア。コンテストマスター・ミクリの姪っ子だよ。各地のコンテストに挑戦しているらしいぞ」
ORASに登場したコンテストライブのメインキャラだ。アニメでも新無印で出ていた気がする。偶にコンテストの方で噂は聞いていた。
グランドフェスティバルでの優勝こそまだだが、既に色々と成績は残しているらしく、ぶっちゃけシュウより強いんじゃないかと思う。だがまさかアドバンスジェネレーションの時期にフライングで出てくるとは。
「ここにいるって事はカイナ大会に出るんだろうな」
「またライバル出現って訳だな」
「だがあのコンテストマスターの姪っ子ともなるとやはり相当な実力者なんじゃないか?」
てか今回のハルカのコンテストデビュー、アニメに比べてハード過ぎない?ミツミとルチアって初心者の段階でぶつけて良い相手じゃねえ。それを言えばシュウもそのレベルだが。
だがまぁ特に絡みに行くつもりはない。どうせ後々ハルカと接点持つ事になるだろうしな。ハルカはこの世界のNo.1ヒロインだし。
****
「わぁ〜!グレイシアだぁ〜!!」
場所を変えてコンテストのレクチャーを受け、ミツミのグレイシアを見て目を輝かせるハルカ。そんなハルカを見てちょっと気に入らないのか頬を膨らませるニンフィア。ハルカに懐いているのは良いけど、お前俺のポケモンだよね?
「お姉ちゃんとミツミさん、気が合うみたいだね」
「ハルカはメグミさんのコンテストを見て憧れて参加する事にしたんだし、ミツミさんもコンテストが大好きみたいだしな」
「やっぱりミツミさん、素敵だ…!」
「一番の壁はやっぱりミツミだろうな。マジもんのトップコーディネーターが相手だ。そう簡単にはいかないぞ」
アニメで今度のカイナ大会で誰が優勝したかなんてもう覚えていないが、流石に今のハルカがデビュー戦でいきなり優勝なんてできるとは思えないし、多分シュウ辺りなんだろうけど、その全部覆してミツミが掻っ攫う可能性大だな。普通のバトルでも俺ですらかなり追い込まれるレベルには強いし。流石は元ギンガ団最強幹部と言ったところか。
「バァァァウ!!」
「良いわよグランブルちゃん!そのガッツで次のコンテストは頂きよ!」
コンテストの練習をするハルカとミツミを眺めていたら今度はすぐ近くでほえるによるパワフルな演技の練習で注目を集めるグランブルとそのトレーナーと思わしき中年女性がいた。その二の腕は筋肉が目立ち、かなりがっしりしている。
なんだあのパワフルなおばちゃん…と思っていると今度はサトシがさっきの俺のように驚いた顔でその人の名前を呼んだ。
「カネヨさん!?」
「お久しぶりです!」
「なんだサトシもタケシも知り合いか?」
駆け寄るサトシとタケシに着いていく形で俺とマサト、こっちが気になったらしいハルカとミツミがその人の所に行く。
「あら貴方達お久しぶりねぇ〜!」
何故かボディビルダーのような筋肉を見せつけるポーズを取って挨拶するおばちゃん。取り敢えず凄えキャラが濃い事は分かった。
「この人はカネヨさん、ジョウト地方で知り合ったグランブルのトレーナーだよ」
「相変わらずグランブル共々逞しく力強い……!正に理想のコンビだ」
カネヨさんを紹介してくれるサトシとウンウンと頷くタケシ。……思い出した。この人、金銀編でロケット団のニャースに惚れて尻尾を散々噛んでいたブルーのトレーナーだ。て事はあのグランブルがそうか。
いきなり過ぎて色々と着いてはいけない所はあるが俺達も自己紹介を済ませつつ、折角なのでレジャーシートを敷いてみんなでランチにする。
「ところでカネヨさんは何故ここに?」
「ええ、グランブルちゃんと再会してからこの逞しさを活かしてあげたいと思ってね。思い切ってポケモンコンテストに出る事にしたのよ!!」
「カネヨさんとグランブルもコンテストに出るんですか!?」
「グランブルか……」
ピカチュウを筆頭に俺のエーフィ、ニンフィア、ミツミのリーフィア、グレイシア、ブラッキーと遊んでくれているグランブルを観察してみる。確かに中々強靭な顎と牙だ。同じ犬系ポケモンと比べても噛み付くパワーは頭一つ抜けているんじゃないか?
「グランブルかぁ〜…どんな演技するんだろ?」
「グランブルの魅力と言えばやっぱり力強さだろうな。あの牙と顎の力を見せつければかなりの高得点を狙えるだろう」
ここまで育てられたグランブルならパワーを前面に出してのアピールをすればコンテストでも通用しそうだ。かっこよさと逞しさが凄いし、こりゃ思わぬ強敵かもな。
そう考察していると俺のエーフィとニンフィア、ミツミのブラッキーとリーフィア、グレイシアを巨大なアームが掴んだ。
「な!?」
「まさか!」
「「「ナーッハッハッハ!!!」」」
驚くみんなの耳にお決まりの馬鹿笑いが届く。だから空気読めよあいつら……。笑い声が聞こえる空の方を向けばいつものニャース型の気球にロケット団がいた。
「トップコーディネーターのポケモンゲットよーー!!」
「違うのニャ!イーブイ進化系セットニャ!」
「ブースター、シャワーズ、サンダースはいないけど、揃ってレアポケモンだぜ!」
「バウ!?」
あ、なんかグランブルが反応してる。いきなりポケモンを奪ったロケット団にミツミがキレて怒鳴りつける。
「なんなのよアンタ達!」
「なんなのよアンタ達!と聞かれたら!」
「答えてあげるが「ユキメノコ!ふぶき!!」」
「「「さっぶうぅぅぅっ!?」」」
そーゆーのは俺がいる限り全カットだ。人のポケモン奪おうとして自分達は気持ち良く口上全部言えるなんて思うなよ。あとやっぱり長くてうざい。
「ピピッカチュ!」
「あんのジャリンコ、いっつもいっつも口上の邪魔してくれちゃって!」
「今までの邪魔のお返しとしてエーフィ達は貰って行くぜ!」
「謝ったってもう遅いのニャ!」
「誰が謝るか。俺のポケモンに手ェ出した以上、タダで済むと思うなよ!」
少なくともニャースへの報復方法はもう決まった。
「そうよ!さっさとその子達を返しなさいよ!」
「やなこった!アンタのポケモン達は私のコンテスト優勝の為に使ってやるんだから!」
「何勝手な事言ってんのよ!大体私のポケモンがアンタの言う事聞く訳ないでしょうが!!」
それは本当にそう。奪ったポケモンで活躍を目論むのはロケット団あるあるだが、何故言う事を素直に聞くと思うのか。まぁあいつらがアホだからの一言に尽きるが。
俺のエーフィとニンフィアをこうして襲っている以上こいつらに地獄を見せるのは確定だが、まずはブイズ五匹を助けねば。
「マニューラ、きりさくであのアームをぶっ壊せ!!」
「ヨノワール!ブラッキー達を助けるのよ!」
俺がマニューラ、ミツミがヨノワールを出してブイズの救出にかかる。妨害しようと追加のアームでマニューラとヨノワールを捕まえようとするが、ヨノワールのサイコキネシスでアームを気球ごと停止させ、その隙にマニューラがアームを全て切断。エーフィ達は解放されて着地する。
「あー!なんて事すんのよー!」
「ボスへのプレゼントがぁーーー!!」
「おのれ!あのマニューラに今日こそ目に物見せてくれるのニャー!!」
「スバメ!ロケット団の気球に穴を開けるんだ!」
ここでサトシがスバメを出して乱入。その翼で気球を切り裂き、吹き飛ばしにかかる。
だがここで単にやなかんじーでは終わらせない。ユキメノコにおにびを指示して気球を爆発させて地面に激突させる。ここからズタボロにしてやるぜ。
そして気球から落ちたニャースのすぐ側にはいつの間にかグランブルがスタンバッていた。アレ、なんかデジャヴ……。
そしてグランブルがニャースをキャッチし、その尻尾に思いっきり噛み付いた。
「うぎゃあああああっ!!い、痛いニャアァァァァァッ!!」
金銀編のニャースの悪夢再び。いやむしろパワーアップして帰って来た。正直狙っていたがあそこまで大声で泣き叫ぶとは。
「お、おミャーはまさかあのブルー…いやグランブル!?にゃんでここに……いやそれよりもやめてくれニャー!!痛いのニャー!!」
泣きながらジタバタ暴れて逃れようともがくがガッチリホールドされているので尻尾を噛まれ続ける。あれは痛そう……。俺のポケモンじゃなくて良かったぁ……。アレで愛情表現のつもりなのが手に負えない。
「ニャース!今助けるぞ!ウツボット!どくづきだぁーー!!って、だから俺を呑むなって!!」
コジロウがニャースに助け船を出そうと効果抜群のどく攻撃のできるウツボットを繰り出すものの、いつものようにコジロウを呑み込んでしまう。これは普通にコジロウのミスだ。ここはマタドガス使えよ。
取り敢えず隙だらけなのでユキメノコのれいとうビームでウツボットを仕留めた。
その間にグランブルの顔を引っ掻いてどうにか逃れたニャースの前にマニューラが先回り。そのままニャースをぶっ飛ばして華麗に宙を舞わせる。そして空中で弧を描きながらニャースはグランブルの眼前にまで届く。
そして再び大口を開けたグランブルがニャースの尻尾を丸齧り!
「うぎゃあああああっ!!!!!」
泣き叫ぶニャース。こんな事が続けばその内アイツの尻尾千切れるんじゃねぇの?
ミツミは呆れた視線をマニューラに向けてくる。
「相っ変わらずアンタのマニューラ性格悪いわね……」
「へへっ、よせやい」
「褒めてないわよ」
性格悪いは俺のマニューラの褒め言葉だぜ。じゃなくて、アレだ。マニューラはグランブルの恋を応援しての行動なんだよ。多分。きっと。メイビー。
「どう見ても嫌がらせじゃない。あのマニューラのニャース嫌いにますます拍車かかってんじゃないの。指示してもないのに自主的にやってるし」
……指示してもないのに自主的に?
ミツミの言葉に引っ掛かりを覚えた俺はもう少し話を聞こうとしたが、今度はムサシがポケモン強奪の為、ミツミに喧嘩を売った。
「ごちゃごちゃ言ってないでアンタのポケモンさっさと寄越しなさいよ!いっけーパルシェン!!」
「ピカチュウ!10まんボルト!!」
次の瞬間には割り込んだサトシによるピカチュウの10まんボルトで纏めて瞬殺。氷漬けのコジロウの隣で黒焦げになって倒れた。
そして泣きながらどうにかグランブルのホールドから脱出したニャースは噛まれた尻尾を吐息でフーフーと冷やそうとしている。そこにマニューラが挑発。
「マニュニュ。マニューラァ」
「ペ、ペルシアンに進化すれば撃退できるかもな!?ふ、ふざけるニャー!!おミャー絶対わざとニャーが噛まれるように仕向けたのに何を抜かしてるのニャーー!!」
う〜む、マニューラはもうあのグランブルとニャースの関係性を大体察しているなぁ。
だがニャースよ、進化が嫌ならアイアンテールなり、メタルクローなり覚えてグランブルに対抗できるくらいに強くなるしかないぞ。
「マーニュ、マニュマ」
「ニャにぃぃぃぃっ!?ポケモンとしての誇りがない奴には良い薬だとぉ!!?」
遂にそこまで見下されたのかニャース。まぁポケモンなのにポケモンを捕まえてそれを悪用する組織に献上しようとしているから反論はできなさそうだが。
「マニュウ。マニュラ」
「ニャにっ!?」
「マーニュ。マニュニュ」
「ニャッ!」
「マニュ、マニュマニュラー」
「ニャンだとぉ……!!」
「おいさっきから一個も反論できてねぇぞお前」
何言ってるのか全然分からんがニャースがマニューラに論破されて言い掛かりすら言えていないのは間違いない。
「う、うるさいのニャ!ニャーはおミャーの生意気な態度が許せないのニャー!!歳上には敬意を払うのニャ!このジャリンコマニューラ!!」
「ポケモン同士で年齢言い出したぞ」
「それ以外でマウント取れる要素を見つけられないんだよ」
いつの間にか復活していたコジロウとマサトが可哀想なものを見る目を向け始めた。
「ジャリボーイ4号には良い顔する癖に……こ、このマニューラ相手によって自在に顔を使い分けているのニャ……!!」
「アンタが徹底的に馬鹿にされてるだけじゃない」
ムサシにすら呆れられてるよ。
「マニュニュニュニュ」
「おミャーは黙ってるのニャ!……え?こっちばかり見ていて良いのかって?」
マニューラに煽られ続けて頭に血が昇っているのか、先程まで自分に襲い掛かっていた惨劇をすっかり忘れているようだ。
そして背後に来ていたグランブルが三度、ニャースの尻尾に噛み付いた!
「んぎゃあああああっ!!痛いのニャアア!!」
グランブルの目はすっかりハートだ。一度フラれてもアタックを続けるその姿勢は俺も見習わないといけないな。
「あらまぁグランブルちゃん、そのニャースちゃんの事が好きなのね」
「ポケモン同士の恋……これって見物かも!!」
「……あの二人も結構ズレてるわね」
カネヨさんもハルカもニャースが泣き叫んでいるのにかなりポジティブに捉えている。もしかしたらグランブルの恋の応援に回るかもな。
「さて、色々グダグダになる前にトドメといきますか。やるぞサトシ!」
「お、おう!」
「ユキメノコ!シャドーボール!!」
「ピカチュウ!10まんボルト!!」
尻尾を噛まれてグランブルを泣きながら引き摺って走るニャースだけは免除して、そっちに気を取られていたムサシとコジロウにトドメを刺して空の彼方へと吹き飛ばす。
「「やなかんじ〜!!」」
「待ってくれニャー!助けて欲しいのニャー!!置いてかないでくれニャーー!!」
流石に可哀想になってきたので今日はニャースにはトドメの技はぶっ放さないでそのままにしておく(棒読み)。
グランブルの恋の炎は再燃したようだし、こりゃまた尻尾を噛まれる日々に逆戻りだなニャース。
20.ユキメノコ(♀)
特性:ゆきがくれ
備考:ユキワラシの時、216番道路で捕獲。ゲームじゃないからポケトレなぞ不要。
ユキメノコは正直もっと話が進んでから出すつもりでしたが、アマプラでアニポケ配信が終了するので、下手したらもう日の目を見る機会がないかもしれないので……それでもどう足掻いでも出せない主人公のポケモンもいますし。
ミツミの服装は漫画とは違いますし、ニット帽も被ってません。ヒカリと被るし、あの身体であの服装は色々とアウトでしょう。
一応言っとくとジュンはアニポケ準拠なのでまだトレーナーにもなっていません。
コンテストマスターについては独自設定です。アニポケじゃ結局トップコーディネーターとどう違うのか解説されなかったので、取り敢えず全ての地方のグランドフェスティバルの制覇を成し遂げたコーディネーターという事にしました。ミクリはトップコーディネーターの中でも別格扱いですし、多分そう間違ってもないんじゃないですかね。