ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード   作:メンマ46号

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ミテキvsサトシ

 sideミテキ

 

 ポケモンセンターのバトルフィールドを借りて俺とサトシは向かい合う。審判はタケシに頼んだ。

 ジム戦メンバーから急遽対サトシに手持ちを調整したが、ポケモン達のコンディションも問題なさそうだ。

 

「使用ポケモンは六体!交代ありのフルバトルとする!」

 

 タケシの宣言に俺もサトシも頷く。先攻は俺だ。

 

「行くぞマニューラ!」

 

「マニューラか……。だったらスピード勝負だ!行けピカチュウ、君に決めた!!」

 

 互いの一番手は俺がマニューラ。サトシはピカチュウだ。真剣な表情のピカチュウに対してマニューラは飄々とした態度で余裕を見せている。その様子にピカチュウは舐められているとでも思ったのか、マニューラを睨んで頬の電気袋をバチバチと漏電させる。

 

「ピカチュウ、でんこうせっか!!「はやてがえし」」

 

 ピカチュウがでんこうせっかを発動しようとした瞬間にはやてがえしで先手を打つ。追加効果で怯んだ隙につるぎのまいを積んで、ピカチュウが動き出す前に追撃を叩き込む。

 

「つららおとし!」

 

「よ、容赦ないなぁ……」

 

 出鼻を挫かれて元々高い攻撃性能を更に積み技で強化してのタイプ一致攻撃にマサトがドン引きしているが無視。俺のマニューラは性格が悪いんだよ。(おまいう)

 そして狙ってはいたが、つららおとしの追加効果の怯みが発動したので再度ピカチュウは動けなくなる。ここでもう一度つるぎのまいを積んで、つららおとしを叩き込む。紙耐久のピカチュウにはひとたまりもない。

 

 サトシのピカチュウのスピードは確かに驚異だ。素早さ種族値90とは思えない俊敏さ……間違いなく素早さの個体値はVだろう。

 

 それに加えてロケット団に目を付けられる程に高い潜在電撃パワー。トレーナーのサトシも変化技を活かす事を学び始めた。ピカチュウならいくらでも不利な形勢をひっくり返せるだろう。サトシがそういうどんでん返しを得意としている事からも。

 

 だからピカチュウには何もさせない。これが今の所の最善策。

 

 悪いなピカチュウ。今回は犬死にしてくれ。

 

「ピカチュウ、戦闘不能!マニューラの勝ち!」

 

 二度目のつららおとしが決定打となり、ピカチュウは気絶して倒れ、タケシも戦闘不能と判断。普段割と(ロケット団相手に)無双しているピカチュウが惨敗してハルカは唖然としている。

 

「ピカチュウに一方的に勝っちゃった……」

 

「ミテキのマニューラは相手に反撃の隙を与えずに超スピードで攻撃するのが特徴なんだよ」

 

 耐久の低いポケモンなのはマニューラも同じ。だから一方的に勝つのが俺とマニューラのやり方だ。それを可能にする程の実力とセンスがマニューラにはある。前に何処かで言ったが、俺のポケモンの中でバトルにおける一番の天才は間違いなくマニューラだ。才能という一点においてはゴウカザルやガブリアスよりも上だ。

 

 だがそれとは別に一方的に勝たなきゃ結果は逆だったかもしれない。そう思う程度には俺もピカチュウの実力は認めている。

 

「やっぱり強いなミテキ……。次はヘラクロス、君に決めた!」

 

 ピカチュウを回収してハルカに預けたサトシはヘラクロスを出して来た。予想通りホウエン以前のポケモンを呼んでいたか。

 あく・こおりタイプのマニューラにむし・かくとうのヘラクロスは良いチョイスだ。

 

「ヘラクロス、ミサイルばりだ!!」

 

 弱点攻撃でありヘラクロスに有用な物理技。何より懐に潜り込ませるべきではないマニューラを牽制する手か。悪くない。

 マニューラはミサイルばりを軽々と躱し続ける。この手の連続攻撃や範囲攻撃を躱す技量は捕まえる前から持ち合わせていた。

 

 こちらの技は向こうが先制技を使わない限り使えないはやてがえしに積み技のつるぎのまい。そして攻撃のつららおとしだ。まだ一枠残っている。

 

 まずはつららおとしをヘラクロスではなく、ヘラクロスとマニューラの間に落として氷の壁を作り、ミサイルばりなどの遠距離攻撃を防ぐ。さて、二つ目の技に何を使う?

 

「じならしだ!!」

 

 サトシの指示と同時にすぐさまマニューラは飛び上がって回避する。氷の壁で阻まれようと振動で攻撃すれば関係ない。ヘラクロスの物理攻撃性能とマニューラの物理紙耐久を上手く突いた上にスピードも下げられる。咄嗟の判断としては良い。

 

 しかもそれは陽動であり、飛び上がって空中でフリーになったマニューラに対して羽を広げたヘラクロスに飛行させて一気に距離を詰めさせてきた。

 

「今だヘラクロス!メガホーン!!」

 

「まもる」

 

 最後の技枠のまもるで渾身のメガホーンを防ぎ、驚いた隙につららおとしを叩き込む。攻撃が四段階上がっているので十分なダメージが入り、運良くまた怯みが発生したのでここでマニューラを引っ込める。

 

「片付けろムクホーク」

 

 俺の二体目はムクホーク。ここは容赦なく四倍弱点で沈めさせて貰う。相性の悪さからサトシは一旦ヘラクロスを交代させようとボールを取り出そうとする。

 

「でんこうせっかとつばめがえし」

 

 その前に先制技と組み合わせて超速のつばめがえしで確実にトドメを刺す。交代の暇など与えない。

 

「ヘラクロス、戦闘不能」

 

 タケシによって無慈悲に告げられる判定にサトシは息を呑む。お前がボールを取り出す瞬間に生まれる隙だってこっちは見逃さないぞ。

 

「立て続けに二体もやられちゃった……」

 

「分かってたつもりだったけど、やっぱりミテキって凄いのね……」

 

 マニューラが先にピカチュウを片付けてくれたお陰でムクホークが大分自由に使えるのが大きい。でんきタイプはピカチュウ以外持ち合わせてはいないだろうし、この時期のサトシはいわタイプやこおりタイプもあまり持ち合わせてはいなかったはずだしな。

 

「ケンタロス、君に決めた!」

 

 サトシが三体目に出して来たのはケンタロス。そういえばサトシは30体くらいケンタロス持ってんだよな。飼い殺しは良くないぞ。マジで。

 ここは空の利がある事からも俺はムクホークを続投する。

 

 ムクホークとケンタロスは睨み合う。さてどうするか。単純な種族値で言えばこちらの攻撃力が上な訳だが特性のいかくでそれは下げられている。スピードはケンタロスのが上。その上あの巨躯から生み出されるパワーは正面から喰らえばヤバいな。

 

「でんこうせっか」

 

 まずは様子見ででんこうせっか。効果抜群ではないとはいえ、タイプ一致だ。ジワジワとダメージは与えていける。さぁここからどうするサトシ?

 

「こわいかおだ!!」

 

「ほう?」

 

 ムクホークが突っ込む直前、こわいかおを指示して素早さを二段階下げてきた。そしてその一瞬の硬直を突いてケンタロスは独断でタックルを仕掛けてくる。技でもなんでもない攻撃だが、その体格のパワーは当たればひとたまりもない。ムクホークはどうにかそれを紙一重で躱すが、無理に躱した事でバランスを崩して、地面に足を着けてバランスを取り直そうとする。

 

 このシチュエーションはムロジムでのトウキさんとの再戦に似てるな。鳥ポケモンを使っているのは俺の方だが。

 

 そして地に足を着いた隙を見逃す事なくサトシはケンタロスを突っ込ませる。

 

「レイジングブルだ!!」

 

 専用技を使って来た…というか知っていたのは少し意外だ。俺がエーフィやニンフィアで結構壁技を使うからそれも想定してのタイプ一致攻撃か。だがそれを受けてやる程余裕がある訳でもないんでな。

 

「すなかけ」

 

 躱せない状態ならば迎え撃つまで。と言いたい所だが、ケンタロスの一撃にパワーを込めた攻撃は例えインファイトを使っても攻撃が下がっている事に加えて性質の違いからムクホークじゃ迎撃は難しい。全力で突っ込んでくるケンタロスを弱点攻撃で迎撃するのは諦め、すなかけで視界を遮り、少しだけ勢いが緩んだ瞬間に上へ羽搏かせて紙一重でレイジングブルを回避した。素早さ下げられてたからギリギリだったな。

 

「つばめがえし!!」

 

 そして真上からつばめがえし。背中に攻撃を受けてケンタロスが痛みを訴えて叫ぶ。

 流石にケンタロスじゃ厳しいと悟り、サトシはケンタロスをボールに引っ込めた。

 

「凄いな……。ピカチュウとヘラクロスがやられて、ケンタロスも少しではあるがダメージを受けた。だがミテキのマニューラとムクホークは一撃も貰っていない」

 

 審判をしているタケシが感心しながら現状を語る。結果的には確かにそうだが、マニューラはともかくムクホークは結構ギリギリだったけどな。

 サトシは悔しそうに、だがクロスの時とは違って楽しそうに次のボールを取り出す。

 

 ここで俺もムクホークを戻す。素早さを二段階下げられているのはリセットしたいしな。

 サトシより先に俺の三体目のポケモンを出す。

 

「デビュー戦だミカルゲ!」

 

 先日シーキンセツで捕まえたミカルゲだ。だが最近捕まえたと言ってもレベルはシンオウ組に劣らない。

 言う事を聞かないじゃじゃ馬枠と予想してたが、普通に言う事を聞くのでここで使う事にした。

 

「バタフリー、君に決めた!!」

 

 四体目はバタフリーか。ロケット団のウツボットやパルシェンの件でもう驚きはしないが、どうやら彼女はできなかったらしい。しかしミカルゲ相手にバタフリーとはな。意外性というか何と言うか。

 

 とは言え、油断する気は無い。サトシのバトルは時に相性や種族値をひっくり返して来るのは良く知っている。

 

「むしのさざめきだ!」

 

「ふいうち!」

 

 変化技を使うようになったとはいえ、普段からの習性はそう簡単に消えるもんじゃない。早速攻撃しようとしてきたのをふいうちの餌食にしてやった。

 

「だったら、ちょうのまいだ!」

 

 今度は変化技でステータスを上げてくる。だがタイミングも考えずに迂闊に攻撃技を使って来たらふいうちの餌食だ。それに素早さを上げて来たならばそこをひっくり返してやる。

 

「トリックルームだ!!」

 

「トリックルーム?」

 

「ポケモン同士の素早さを逆転させる技だよ!せっかくちょうのまいで素早さを上げたのを逆手に取られちゃったんだ!」

 

 解説乙。

 種族値でもバタフリーの方が素早さで優れているが、トリックルームならばそれも無意味。ここから更に嫌がらせだ。

 

「あやしいひかり!」

 

 ここでバタフリーを混乱させる。遅れを取る上に混乱で上手く攻撃できない。速攻を好むサトシにはキツいだろう。四つ目の技を使って追い込んでやる。

 

「あくのはどう!」

 

「むしのさざめき!」

 

 バタフリーの特防が上がっているので特殊技は避けたかったが、ミカルゲはまだそこまで物理技を多くは覚えていないのでまずはあくのはどうを使う。だがバタフリーもサトシの根性論で育って来ただけあってどうにか混乱を潜り抜けてむしのさざめきで相殺してきた。ちょうのまいが上手く作用しているな。

 

「だが混乱を連続して潜り抜けるのは難しい!ミカルゲ、連続であくのはどう!!」

 

 トリックルームで先制できる利点を活かして連続してあくのはどうを叩き込む。ちょうのまいで特防が上がっていてもこれはキツいだろう。

 

「……!そうだ!どうせ無理矢理遅くされているなら、バタフリー!ふきとばしだ!!」

 

 ふきとばしは無理矢理相手を退場させて交代させる技だ。だがそれは一時凌ぎでしかない。確かに強制交代でマニューラなんかが出ればトリックルームで素早さを逆転した上で弱点攻撃はできるが、それはステロなんかの設置技と絡めてやる戦法であって……。

 

「ふきとばしであくのはどうを全部跳ね返すんだ!!」

 

「……はあぁぁっ!?」

 

 サトシがふきとばしの対象に選んだのはミカルゲではなく、技のあくのはどう。そしてバタフリーは混乱しながらもまたもやサトシに応えてふきとばしを発動。本当に連続して放ったあくのはどうを全てミカルゲに返してしまった。

 

 連続という指示に従っていたミカルゲはあくのはどうを生成中だったのもあり、反応が遅れて返されてきたあくのはどうを全て受けてぶっ飛ばされて仰向けに倒れてしまった。

 

「動けないならこっちが遅くされても関係ないぜ!バタフリー、むしのさざめきだ!!」

 

 その隙を突いてちょうのまいで威力を増したタイプ一致のむしのさざめき。等倍とはいえ、あれだけあくのはどうを返されてダメージを受けていたミカルゲはなすすべなくそれを喰らって倒れてしまった。

 

「……うっそだろ」

 

「ミカルゲ、戦闘不能!」

 

「やったぜバタフリー!!」

 

「遂にサトシがミテキのポケモンを倒したぁ!」

 

 見ればもうバタフリーの混乱も解けている。あやしいひかり完全に無駄撃ちだったじゃねえか。混乱も確定で自傷行為になるとは限らないとはいえ、流石にこれはキツいもんがあるぞ。

 

「戻れミカルゲ。……初バトルでこれなら上出来だ。もっと強くなるぞ。一緒にな」

 

 正直ミカルゲ使ってバタフリーに負けたのは地味にショックだが、探り探りのバトルじゃ長い付き合いのバタフリーとのコンビ相手は無理があったか。

 

 にしてもふきとばしをあんな使い方するとはな。サトシ特有のアニポケ殺法で逆転されるのはモブによくあるやられ方だが、まさか自分で受ける事になるなんて。

 

 あんなの事前情報無しで想定しろなんて……いやあったわ。事前情報思いっきり持ってるよ原作知識で。

 

 碌に機能しなかったあやしいひかりじゃなく、ちょうはつでも使っていれば防げた事態だった。

 

 つまりこの失態は俺のミスでしかない。ここまでリードしてて正直調子に乗っていたからだ。だからこそミカルゲを使ってバタフリーに負けるなんて体たらくを晒している。

 

「じゃあそろそろ決めさせて貰うぞ」

 

「え?」

 

 俺は四体目としてゴウカザルを出した。

 

「ここでゴウカザルか……!」

 

「でもミカルゲの出したトリックルームはまだ残ってるのに、これじゃバタフリーの方が早く動けるよ?」

 

「よーし、だったらぼうふうだ!」

 

 トリックルームの素早さ逆転がある内にゴウカザルを仕留めようとサトシは命中率こそ安定しないものの、高威力の特殊技のぼうふうで一気にゴウカザルを削りにくる。

 

「かえんほうしゃ!!」

 

 対して俺はかえんほうしゃを指示。ゴウカザルの高熱の炎で空気を急激に暖めて気流を一気に掻き乱した。

 それはバタフリーのぼうふうとゴウカザルのかえんほうしゃを纏めて巻き込み、バタフリーに直撃した。

 

「ああっ!?バタフリー!?」

 

 大きく乱れた気流により、地面に叩きつけられてバタフリーは動けない。気流に振り回された挙句、弱点のひこう技とほのお技を纏めて喰らったんだ。むしろまだ戦闘不能になっていないのが驚きなくらいだ。

 トリックルームの素早さ逆転にも穴はある。先制技を使われたり、身動きできなきゃ速さもクソもない。

 

「ゴウカザル、トドメのかえんほうしゃ!!」

 

 ぶっ飛ばされて動けない所に容赦なく叩き込んだ効果抜群の一撃でバタフリーをKOする。ふいうちの一撃だけとはいえ、既にミカルゲに削られていた状態でゴウカザルの攻撃に耐えられるはずもないからな。

 

「バタフリー、戦闘不能!」

 

 ミカルゲの敗北は俺の責任。だったらここからは一体も落とさずに勝たなきゃミカルゲに申し訳が立たん。

 

「サトシ、バタフリー強かったぜ。でも俺とゴウカザルには勝てなかったな」

 

「やっぱり強いなゴウカザル……だったらキングラー!君に決めた!」

 

 五体目はキングラーか。まぁこれも予想はしていた。サトシも俺がゴウカザルを選出する事は流石に読んでいただろうし、みずタイプは入れるべきだ。

 サトシはまだ持続しているトリックルームを利用してキングラーに一気に距離を詰めさせる。

 

「クラブハンマー!!」

 

「ハサミの根元を掴んで防げ!おにび!」

 

 指示通り振るわれるクラブハンマーのハサミの根元を掴ませて、届かないようにする事で防ぐ。まもるや積み技で防御力を上げたりするだけが防御じゃない。

 そしてやけど状態にしてその高い攻撃力を半減させる。

 

「かみなりパンチ!!」

 

 間髪入れずにかみなりパンチでキングラーを後方へぶっ飛ばす。既にやけど状態だからまひを引く事はなくても効果抜群技は効くだろう。

 

「キングラー、うずしお!!」

 

「最大火力でかえんほうしゃだ!!蒸発させろ!!」

 

 下手に物理技を使っても防がれると理解したサトシはうずしおで拘束を狙ってくる。流石に水の渦に囚われるのは勘弁なので最大火力のかえんほうしゃで相殺する。

 

 真っ白な蒸気がぶわりと一帯に広がる。

 

「つるぎのまい!そしてクラブハンマーだ!!」

 

 やけどによる半減分の攻撃力をつるぎのまいで補填し、蒸気に隠れての不意打ち(技に非ず)を狙ってのクラブハンマー。成程、やっぱり機転の利かせ方は俺より上手い。

 

 だがゴウカザルも上手く反応して左腕でクラブハンマーを受け流し、時間をかけて稲妻をチャージした右拳を全力で振り抜く。

 

「かみなりパンチ!!」

 

 ぶっ飛ぶキングラーに更に追撃でかえんほうしゃを放つもさっきと同じようにうずしおで相殺してきた。

 ここでトリックルームの効果が切れた。互いの素早さの上下関係は元に戻る。

 

「一気に決めるぞ!かみなりパンチ!!」

 

「あわ攻撃で足元を滑らせるんだ!!」

 

 トリックルームが解けたのを良い事に距離を詰めさせた俺に対してサトシは地面にあわを撒かせる事でゴウカザルの足を滑らせにきた。これはトウキさんとの再戦の時の……!

 

 かみなりパンチを叩き込もうとしても、足元が滑ったゴウカザルはタイミングをズラしてしまい、逆にその隙を突いてキングラーはサトシの指示より早くクラブハンマーを叩きつけてきた。

 

 正面からかみなりパンチとクラブハンマーがぶつかり合い、互いに後退する。ゴウカザルはみず技を受けて少なからずダメージを負い、キングラーは三度目のかみなりパンチのダメージで虫の息だ。

 

 ……今のはかなり危なかった。つるぎのまいを積んでいたし、キングラーの攻撃種族値を考えるとおにびでやけど状態にしていなかったら倒れはせずとも大ダメージだっただろう。

 

 そして蓄積したダメージに追加のやけどダメージがここで入り、キングラーは力尽きた。

 

「キングラー、戦闘不能!」

 

「やるなサトシ。今のは大分ヒヤッと来た」

 

「でも結果はゴウカザルの勝ちだった。やっぱり凄いよミテキもゴウカザルも!」

 

 キングラーが倒れてサトシはケンタロスを出してくる。俺はこのままゴウカザルを続投。いかくで今度はゴウカザルの攻撃が一段階ダウンする。

 

「レイジングブルだ!!」

 

「かえんほうしゃ!!」

 

 まっすぐ突っ込んでくるケンタロスをかえんほうしゃで迎撃。勢いを弱めつつ、こいつの攻撃力も削ぐ。

 

「おにび!」

 

「こわいかお!」

 

 向こうはゴウカザルのスピードを削いできた。……ゴウカザルが使った技は三つ。ケンタロスは二つか。こっちは最後の技が重要になるな。できればかくとうタイプの攻撃技を使いたい。

 おにびでやけどにしたとはいえ、向こうもからげんきは覚えさせているだろうし、かえんほうしゃをどう上手く使うかだな。

 

「ケンタロス、じならしだ!」

 

「跳び上がって躱せ!!」

 

 サトシは三つ目の技にじならしをチョイス。効果抜群と追加効果の素早さダウンを狙って来た。徹底的にゴウカザルの素早さを削って必殺の一撃を決めようってか。

 

 こちらも空中からかえんほうしゃを撃つが、ケンタロスはその突進力を使って躱し続ける。着地したらサトシはすぐにじならしを使ってくるのでまた跳び上がらねばならない。

 

 何度目かのじならしの後、ケンタロスがやけどダメージを負い、痛みで一瞬動きが止まる。

 

 その瞬間、ゴウカザルは俺に目配せをしてきた。見れば拳に力をチャージし始めている。流石はゴウカザル。俺の考えを先読みして俺がどの技を使おうとしているのか分かっている。

 

 そしてサトシも着地の瞬間の一発逆転を狙って四つ目の技を使う。

 

「からげんき!!」

 

 予想通りのからげんきで全速力で突っ込んでくるケンタロス。だがゴウカザルは的確にケンタロスのタックルの流れを読み、角を掴んで身体を逸らし、そのタックルの勢いと振り回す投げの相乗効果でケンタロスを地面に叩きつけた。

 

「ケンタロス!」

 

「……見事な合気だ」

 

 ここで俺は四つ目の技の名を叫ぶ。

 

「きあいパンチ!!」

 

 倒れるケンタロスの無防備な腹に全力のきあいパンチを叩き込んだ。当然、その一撃にケンタロスは耐えられなかった。

 

「ケンタロス、戦闘不能。まさかここまで差があるとは……」

 

「そりゃミテキはシンオウリーグで準優勝したけど、こんなに一方的にやられる程差があったんだ……」

 

 ここまでの差があるとは思っていなかったらしいタケシとマサトは驚きを隠せない様子だ。ハルカに至っては完全に言葉を失っている。

 

 だがサトシだけは悔しさと同時に楽しさをその顔に浮かべていた。

 

 心の底からポケモン達と一緒にバトルを楽しんでいる。強い相手に会えて嬉しいのだと表情で語っていた。

 

「ありがとうケンタロス。後はゆっくり休んでてくれ」

 

「ゴウカザル、交代だ。ミカルゲの分もよくやってくれた」

 

 サトシがケンタロスをボールに戻すと同時に俺もゴウカザルを引っ込める。十分に大暴れしてくれたし、潮時だ。

 

 サトシの目はまだ諦めてなんかいない。ここから五体抜きするつもりなんだろう。サトシは帽子のつばを掴んでクルッと半回転させる。あのルーティンと一緒に投げたモンスターボールは当然あの絶対的エースのもの。

 

「リザードン、君に決めた!」

 

 最後はリザードンなのは分かっていた。だから俺もとっておきをぶつけてやる。ジョウトリーグの放送を観た時からサトシのリザードンとやるならこいつを戦わせたかったんだ。

 

「ラストだ。ガブリアス」

 

 五体目に俺が出したのはガブリアス。やっぱりリザードン相手なら一番燃えるのはこいつだろう。

 ガブリアスを見て一目で強者だと見抜いたらしいリザードンは口からかえんほうしゃを出して気持ちを盛り上げている。盛り上げているが……

 

「もうちょい躾ろよ……」

 

「あはは……」

 

 バトルが始まってもいないのにかえんほうしゃ無駄撃ちしてるし、PPが肝心な所で切れたら洒落にならん。てか下手すりゃ大惨事だぞ。

 

「頼むぞリザードン!あれからのリザフィックバレーでの修行の成果を見せてくれ!」

 

「徹底的にやるぞガブリアス!このリザードンは強いぞ!!」

 

 ガブリアスもまたサトシのリザードンを見て、そこらの雑魚とは違うと判断したらしく、珍しく目をギラつかせている。そんな顔をするのはゴウカザルやコウヤのメタグロスを相手にする時くらいだってのに……。

 

「「ドラゴンダイブ!!」」

 

 真っ先に出した技は全く同じ。ガブリアスはタイプ一致攻撃として。リザードンは弱点攻撃として。ぶつかり合い、競り勝ったのはガブリアス。リザードンは後方へ押しのけられ、ついでにさめはだのダメージを受ける。だがこちらも少なくないダメージを負った。

 

「だいもんじ!!」

 

「アクアブレイク!!」

 

 だいもんじを向けてくるもこっちはアクアブレイクで水を纏い、身を守りつつ、再び突っ込む。多少蒸発して弱まったとはいえ、弱点攻撃とさめはだの二重苦だ。

 

 だがそれがなんだとばかりにリザードンは雄叫びを上げてガブリアスを弾き飛ばす。なんつーパワーだ。俺のガブリアスが弾かれるなんて。

 

 気付かない内に俺の頬は緩んでいた。

 

「なぁサトシ」

 

「なんだ?」

 

「育てたポケモンと一緒にするバトルって、楽しいだろ?」

 

「ああ!最高だ!!」

 

 そこから先にトレーナー同士の言葉はいらない。ただポケモンと一緒に勝利を目指すだけだ。もう一度アクアブレイクを仕掛けるもリザードンはその翼で飛んで上空に回避。ならば空中戦だとガブリアスにも空を舞わせる。ガブリアスは空だって飛べるんだよ。技としてのそらをとぶは覚えないが。

 

「りゅうのいぶきだ!!」

 

「それは勘弁。まもる!」

 

 ドラゴンダイブで突っ込ませよとすれば特攻の高いリザードンでりゅうのいぶきを使って来たのでまもるを発動。接触技じゃないなら態々受けるつもりはないし、追加効果のまひを引いたらあのリザードン相手じゃいくらガブリアスでも滅茶苦茶危ないからな。

 

「だいもんじ!!」

 

 上から追撃のだいもんじでガブリアスを地面に押し戻して撃墜してくる。ならばこっちも撃ち落としてやる。

 

「りゅうせいぐん!!」

 

 ガブリアスが吐き出したエネルギー弾を紙一重で躱すリザードン。だがここからが本番。エネルギー弾は分裂し、文字通りの流星群となって雨のように広範囲に降って来た。

 

「不味い!避けるんだリザードン!!」

 

「よそ見してて良いのかよ?アクアブレイク!!」

 

 上空から降って来たりゅうせいぐんに気を取られて回避に専念しようとするサトシとリザードンの意識の裏を突いてもう一度飛び上がったガブリアスがその無防備な背中にアクアブレイク。今度はリザードンが撃墜された。

 

「もう一度りゅうせいぐん!!」

 

 物理的な上下関係が逆転して今度は上からりゅうせいぐんを発動。

 

 降り注ぐりゅうせいぐんを躱し続けるリザードン。当たれば良し。当たらなくても躱し続ける事で俺が狙ったポイントへ誘い込めれば良い。

 真上から降り注ぐりゅうせいぐんを躱し行き着く先には既に着地してクラウチングスタートの姿勢を取るガブリアスが待ち構えていた。

 

「ドラゴンダイブ!!」

 

 ドラゴンダイブが直撃し、まともに受けた事でリザードンは吹っ飛ばされる……と思っていたが、正面からガブリアスのドラゴンダイブをリザードンは受け止めていた。今も押し切ろうと突っ込み続けるガブリアスを止めようと踏ん張り続けている。

 さめはだの接触ダメージを受けているのにリザードンはその手を離そうとはしない。

 

「うっそー!?あんなに強いガブリアスの攻撃にビクともしてないわ!」

 

「凄いや…!ミテキのガブリアスもサトシのリザードンも!」

 

「良いぞリザードン!そのままガブリアスを離さずに飛ぶんだ!」

 

 サトシのリザードンはガブリアスを掴んでそのまま空に舞い上がる。やべ、これジョウトリーグでシゲルのカメックスを仕留めたリザードンの十八番じゃん。

 

「ちきゅうなげだ!!」

 

「振り解けガブリアス!力づくでリザードンを地面に叩きつけてやれ!!」

 

 空中で何度も回って威力を高めようとするリザードンと全力で抵抗するガブリアス。抵抗の甲斐とさめはだの特性もあってか最後の地面に向かう最中でガブリアスは傷付いたリザードンの手を弾いて、逆にリザードンの身体を押さえ付けにかかり、ドラゴンダイブのオーラを纏う。

 

「「行けええええっ!!」」

 

 二体は同時に地面に墜落。凄まじい地響きと共に砂煙が舞う。

 

 何かが動く気配と共に砂煙が晴れるとガブリアスとリザードンの両者が息を切らしながら睨み合い、立っていた。

 そしてフラリ……と体勢を崩したリザードンが倒れて気を失った。

 

「リザードン、戦闘不能!ガブリアスの勝ち!!よって勝者、ミテキ!!」

 

「……しゃあっ!!」

 

 思わず叫び、力の限り拳を握っていた。

 

「リザードン……ありがとう。ゆっくり休んでくれ」

 

「良くやったガブリアス。ナイスファイト」

 

 サトシの手持ちは全滅。対して俺のポケモンでやられたのはミカルゲだけ。俺の圧勝……とは言えない。ゴウカザルもガブリアスも結構追い詰められたし。

 

 特にリザードンは凄い。俺のガブリアスとほぼ互角に渡り合ったし、勝てたのは種族値と特性の恩恵もかなりデカい。多分ピカチュウより強い。今のサトシのポケモンの中で最強は恐らくリザードンだ。

 

 なんでクロスの馬鹿はこんな凄えリザードン(当時はヒトカゲ)を捨てたんだ?見る目が無いっつーか、育成能力低過ぎっつーか、先見性が無いっつーか。

 

「二人とも、良いバトルだったぞ」

 

 審判をしてくれたタケシは俺達のバトルを讃えてくれる。続けてハルカとマサトも大興奮して要領を得ないものの、口々に俺達のバトルを褒め称えてきた。

 

「……それでサトシ、このバトルでお前なりの答えって奴は出たか?」

 

「ああ」

 

 サトシはリザードンの入ったモンスターボールを見つめて語り出す。

 

「俺は全部のポケモンと友達になりたい。きっとそれがポケモンマスターなんだ。それが例えそんなつもりじゃなくても仲間外れみたいになるのは駄目だよな」

 

 そして今度は俺の目をまっすぐ見て宣言する。俺の知るアニポケ歴代の旅の前提を覆す決意を。

 

「ミテキ、俺決めたよ。俺は俺と友達になってくれたポケモン達、みんなと一緒に戦い抜く。これまでも、これからも」

 

 旅とリーグ双方においてポケモン達を総動員してポケモンマスターを目指す。ある意味では前世での視聴者達の多くが望んだサトシの姿がそこにはあった。

 

「そしてホウエンリーグで今度はミテキに勝つ!勝って()()()()()()()()!」

 

「……言ってくれるね。俺だって優勝は譲れない。サトシには負けない。仲間としても。ライバルとしてもな!」

 

 サトシの挑戦状に俺も挑戦状で返す。その直後、なんだかおかしくなって互いに噴き出して大笑いしてしまう。

 こうして今回のフルバトルは俺の勝利で終わった。多分サトシはアドバンスジェネレーションのホウエンの旅に限らず、ダイパ以降の各地方の旅でもピカチュウだけでなく他のポケモン達も使うだろう。

 

 全てのポケモン達を使い、いつかはリーグ優勝を飾るサトシを見るのは俺としても楽しみだ。今回のホウエンリーグは俺が優勝するけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 バトルも終わり、その後はポケモンセンターで俺とサトシのポケモン達を回復させ、手持ちを再びジム戦の為に調整していざキンセツジムへ!!

 

 ……と、思ったら

 

「「ジムリーダーが失踪〜!?」」

 

 ジムを訪ねるとジムリーダーがおらず、留守を任せされていたジムトレーナーに告げられたのはジムリーダーが自信喪失して何処かへ行ってしまったという知らせだった。




この小説初のフルバトルは主人公とサトシのバトルと決めていました。だからダイゴ戦はちょっと変則的なものに。まぁアニメを見る限りの手持ちを考えると普通にフルバトルは無理だったのもありますが。

因みにピカ様とマニューラの今回のバトルは当初ホウエンリーグでやるつもりだった。(ガチ)
でもまぁあんまりな内容なのでサトシの成長途中である今回にしました。

リザードンの相手はガブリアスとゴウカザルで迷った。

出番の無かった六体目はフローゼルです。

サトシはこの小説のラスボスなので真っ当に原作主人公させつつ、強化していきたい。
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