ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード 作:メンマ46号
sideミテキ
この間川から流れてきたスイカを食べていたら、そのスイカのあった畑の人に泥棒と間違えられた。
以前の光る石の件と違って、一方的に攻撃はして来なかったし、実際に本当に食べてしまった事もあり、どうしたもんかと思っていると犯人を目撃していたらしいスイカに擬態した番人役のマルマインが誤解を解いてくれた。
誤解だと分かると素直に謝ってくれたし、こっちも勝手に食べた事には変わりないのでイーブンという事で和解した。この間の光る石の女とは大違いだ。でも人前でスイカの種を口から飛ばすのはやめた方が良いぞ。
その後も色々あってスイカ畑の娘ことナッチとの交流の中で、ダブルバトルをしたり、スイカを強奪しに来た真犯人のロケット団をやなかんじーにしたり、お礼にスイカをご馳走して貰ったりした。
そんなこんなで旅の途中、俺達はハルカレイクという素晴らしい名前の美しい湖にやって来ていた。
「湖の上に何かいるぞ」
「ありゃイルミーゼだな」
この湖で少し休んで行こうとしたらサトシが湖の上で飛行するイルミーゼを発見した。すると今度は別方向から飛んでくるバルビートをハルカが見つける。
合流したバルビートとイルミーゼは空を飛びながら求愛のダンスをしている。ふむ、もしかしたら番なのかもな。見る限り蝶ネクタイを着けているし、トレーナーがいるのは間違いないだろう。
「君達もハルカ祭りを見に来たの?」
そう言って話しかけてきたのはジョーイさんだ。なんでもこのハルカレイクで行われる祭りで、イルミーゼとバルビートのダンスが伝統らしい。
あのイルミーゼとバルビートのトレーナー、ジュリエさんとロミオさんという人達が主導で伝統のダンスを披露するんだとか。
「うおおおっ!ジュリエさん!自分は貴女と出会う運命だったんですー!」
そしてそのジュリエさんを一目見たタケシは目をハートにして打ち合わせをしてるっぽい二人の元に駆け寄ろうとし、マサトとハルカが必死で止める。カスミとまだ出会ってないからかマサトは耳を引っ張って止めないから手間がかかるな。そういやそろそろか?カスミ回。
「このお祭りでイルミーゼとバルビートのダンスを見たカップルは幸せになれるって言い伝えがあるの」
カップルは幸せになれる……か。正直そんなんで恋が叶うなら苦労はしないのだが、そういうロマンチックな話は嫌いじゃない。
「あいつ…!ジュリエさんの相手ができるとはなんと羨ましい…!!」
うーん、タケシは平常運転。ジュリエさんの相方のロミオさんとやらに嫉妬丸出しである。……シュウ?俺はあん畜生に嫉妬などしていない。ただ心の底からハルカの前から失せろと思ってるだけさ。
だがどうにもそのロミオさんとやらは自信が足りないのか、オロオロしており動きも鈍い。追加で出すバルビート四匹も出す前にモンスターボールを落としたり、指揮棒も手からすっぽ抜ける始末である。
そしてバルビートもバルビートで五匹の内、最初から外に出ていたリーダー君が目をハートにしてイルミーゼに近付き、レッスン中にも関わらず、適切な距離を保てずに求愛している。
あのバルビート、すっげえポンコツだな。リーダーが足を引っ張ってちゃなぁ……。と思っていたらリーダーのバルビートが減速できずにイルミーゼと激突し、他のバルビート達も追突して纏めて湖に落ちた。
「ああっ!?」
そしてついでに手からすっぽ抜けた指揮棒を拾おうとしてこけたロミオさんはイルミーゼを心配したジュリエさんとぶつかり、そのまま湖に落ちるというギャグにしか見えない失敗を晒している。しかも泳げないのか必死に犬かきをしている。
「イルミーゼ!ロミオ!」
彼等を案じるジュリエさんの声が響く。とにかく今は湖に落ちて溺れたバルビート五匹とイルミーゼ、ついでにロミオさんだ。早いとこ助けてやらないと。
「ミテキ!サトシもタケシも!ロミオさん達を助けてあげて!」
「勿論!マリルリ!フローゼル!頼むぞ!」
「ヘイガニ!マリル!ゼニガメ!バルビート達を助けるんだ!」
「頼むぞハスボー!ミズゴロウ!」
サトシがサラッとゼニガメを出したが、今は救出が先なので俺もマリルリとフローゼルを出してバルビート達の回収を頼む。……全然離脱してねぇなサトシのポケモン。ピジョットやオコリザル、ラプラスも普通にいるんじゃねぇの?この調子だとこの先ゲッコウガも離脱回避したりしてな。
そんな事を考えながらみんなで手分けしてロミオさん、バルビート五匹、イルミーゼ…と湖に落ちた連中を救出する。
ポケモン達は早々に回収され、ロミオさんもちからもちマリルリが軽々と引き上げてくれる。アクアリングもそろそろ完璧になりそうだし、次のジム戦でまた使ってみるのも良いかもな。3タテくらいできるかもしれん。
イルミーゼ達はジョーイさんに診て貰い、ロミオさんもぐったりしながら礼を言ってくる。
「助けてくれてありがとう……」
お礼の言葉をスルーして俺はフローゼルとマリルリをボールに戻すと、しゃがんで目線を合わせてサトシのゼニガメを観察する。
どういう訳かは知らないが、ゼニガメが離脱していないならカントー御三家をサトシは変わらず持っている事になる。出身地方の御三家を揃えるって結構ロマンあるよな。俺もシンオウの旅で野生のナエトルとポッチャマとかに遭遇したかったな。いつか本格的に野生のシンオウ御三家を探してみるか。最悪ハレタにでもタマゴを貰うか?でもそれなら俺もなんかタマゴ用意しねーと。
それはそうと、カントー御三家の中で進化拒否のフシギダネと普通に進化したリザードンと違って進化の兆しすらないんだよな、このゼニガメ。もしかしたらその辺がサトシに会う前に捨てられた理由なのかもしれん。てかサトシのみずポケモン自体キングラーとXY編のゲッコウガ以外進化しないんだよな……。
是非いつかフシギダネ共々最終進化まで行って欲しい。もし俺がドダイトスとエンペルト手に入れられたらカントーとシンオウの御三家対決をサトシとするのとか熱過ぎだろ。
そんなこんなでイルミーゼとバルビート達に問題ないとジョーイさんからのお墨付きを受けたロミオさんは先に一旦帰ったジュリエさんと違い、ポケモンセンター近くの池でバルビート達と自主練を始める。俺達も何故かそれに付き添う事となり、一斉に空を舞うバルビート達のダンスを眺める。
「行くよみんな!編隊飛行!!」
前世でこの話を観て漢字を変えてくだらねー事考えた小学生は絶対いるよな。
それで見せて貰ったバルビート達のダンスはさっきと全然違い、見事に統率が取れている。ビートと呼ばれるリーダーのバルビートはあのイルミーゼが絡まなければ問題なさそうだ。
「この動きが本番でもできれば問題なさそうですが……」
「それが……バルビート達と練習をしている時はそうなんだけど、ジュリエと一緒にやろうとすると途端に駄目になっちゃうんだ。原因も分からなくて……このビートもイルミーゼの前になると調子が出なくなっちゃうし」
いや丸分かりじゃねーか。自覚はできなくてもバルビートの様子でそっちだけでも気づけよ。
「つまり緊張して本来の力が出せなくなる訳だね」
「俺なんか緊張した事なんて全然ないけどなぁ」
「そりゃサトシはそうだろーよ」
そんなのとは無縁の性格してるしな。この先セレナも苦労するだろーよ。朴念仁め。
「てゆーか、大体原因なんて想像付くだろ」
「えっ!?ミテキ、分かるのか!?」
すると今度はハルカがロミオさんに諸々の確認を取り始める。
「ねぇロミオさん、ジュリエさんの前に出るとどうなるの?」
「うん……なんだか、急に胸が締め付けられるように痛くなって、心臓がドキドキし始めて、手に汗が滲んできて、それから上手く喋れなくなって、身体が固まって思うように動けなくて……もうどうしようもなくなっちゃうんだ」
聞いててこっちが恥ずかしくなるわ!そこまで典型的な状態になってなんで自覚できないの!?
「完全に惚れてるからじゃん。恋の病って奴だよ。バルビートの方もそう。明らかにイルミーゼにメロメロ状態だったじゃん。メロメロ使われたポケモン以上だったよ」
「これが……恋?」
そんな少女漫画みたいな反応されても。
「ミテキの言う通り!これは恋よ!ロミオさんはジュリエさん、ビートはイルミーゼの事が好きなのよ!」
「ああ好きだ!好きで好きで堪らない!」
「タケシは黙ってて!」
突如割り込んだタケシを押し除けるハルカ。横恋慕をやめろとは言わないけど、空気は読んでくれ。
ロミオさんとジュリエさんは幼馴染らしく、これまで培ってきた関係と距離感があるからこそ、余計にどうすればいいか分からずに困惑している。
ハルカの頭上に電球マークが浮かぶ。なんで視えてんの俺?
「それなら私に良い考えがあるわ!ロミオさん、ジュリエさんに告白するの!今からその練習よ!」
「ええっ!?」
なんで俺をガン見して言うの?
****
side三人称
その夜、妙にノリノリなハルカの提案でロミオからジュリエに告白する為の練習が始まった。
因みに練習台としてジュリエの役をやるのはミテキのサーナイトである。サーナイトは人の感情を敏感に察知する能力を持っている為、ロミオの態度や言葉と実際の感情の差異を図る為にこの為だけに転送して呼び出された。
(ぶっちゃけ必要か?その役割……でも妙にサーナイトもノリノリだし)
♀故か、軽く事情を説明すればサーナイトは二つ返事で引き受けた。こういう恋バナが好きなのは人間もポケモンも変わらないらしい。
そしていざ告白練習が始まってもロミオは練習だけでガチガチにアガッてしまい、ヘタレてしまう始末である。
「告白なんて僕にはできないよ……」
「簡単じゃない。告白さえできたらジュリエさんの気持ちも分かるし、プレッシャーも無くなるわ!」
「振られちゃったらどうするの?」
「その時はスッパリ諦めるの」
「そ、そんなぁ!」
(残酷だな……俺、ハルカに振られたら立ち直れないと思うんだけど……)
勿論ミテキとしては仮にそうなっても諦めるつもりなど毛頭ないが。因みにハルカはその手の心配事に関しては自分は余裕のある立場だと自覚しているからそんな事が言えてたりする。
「告白なんて僕にはできないよ」
「では!代わりに自分が手本を!ロミオさん、ジュリエさんへの想いは決して自分も負けていません!恋のライバルとして、正々堂々と青春しましょう!」
「は、はぁ……?」
ここぞとばかりにタケシが名乗り出て、恋のライバル宣言。いきなりの事にロミオはついていけずに困惑するばかり。
そして手本を始めた瞬間にタケシは何処からか薔薇の花束を取り出し、目をハートにして偽装ジュリエであるサーナイトに抱きつこうと飛び上がる。
「ジュリエさーん!貴女はこの薔薇のように美しい!!この想いを受け取ってくださーい!!」
サーナイトはねんりきでタケシを張り倒した。
「な、なぜ……」
「いや、そりゃそうだろ……」
どうやらサーナイトは茶番に付き合う気はないらしい。あくまでロミオが醸し出す甘酸っぱい青春が見たいのだろうとミテキはアタリを付ける。サーナイトも中々に曲者であった。
すると今度はマサトが口出ししてきた。
「まずはロミオさんのメンタルをどうにかしなきゃ駄目だよ。ミテキ、サーナイトと一緒に転送して貰ったんだよね?」
「ん?ああ」
言外に出せと言われたミテキはムウマージをボールから出した。サトシはポケモン図鑑を出してムウマージを調べている。ブレない。
「マサト、頼み通りムウマージも転送して貰ったけどどうするんだ?」
ミテキが今回サーナイトと一緒にムウマージを呼び出した理由はマサトに頼まれたからだ。何でもマサトに考えがあって、その為にムウマージの協力が必要だと言うのだが……。
「ムウマージにロミオさんへおまじないをかけて貰うのさ!」
「……はぁ?」
何を言ってるんだこいつは。とでも言いたげなミテキは胡散臭い物を見る目でマサトに向ける。
「ムウマージは恋を叶える呪文を使えるって聞いた事あるよ!それを使って……」
「使える訳ねーだろそんなもん」
ただの迷信である。
「恋のおまじないだと……!?ミテキ、少しムウマージを貸してくれないか!?」
「……タケシ、本気にしてる訳じゃないだろ?」
「てゆーか、ロミオさんがジュリエさんに告白する話だろ?」
流石にサトシですらツッコまざるを得ない程に脱線していた。
ダメ元でムウマージにそんな事ができるのかと聞いてみても首を横に振る。それとは別にムウマージの力で一種の催眠状態にして緊張を取っ払う手もあるが、そんなやり方で告白してもロミオの為になる気はしないのでミテキは黙っておく事にした。
ここで元々の言い出しっぺであるハルカがパンパンと手を叩いて注目を集める。
「しょうがないわ。私達がお手本を見せてあげる」
「私…達?」
ふふん…とちょっとドヤ顔になったハルカはミテキに目を向けて、ビシッと指差す。
「ミテキと私で告白シーンを演じるのよ!」
「んん!?」
いきなりの指名に飲んでいたミックスオレを噴き出すミテキ。サーナイトとムウマージはコソコソ話しながらミテキの反応を見てニヤニヤと楽しんでいた。こういう所の
「良い?ミテキ。お手本なんだからちょっとやそっとの軽いのじゃ駄目よ。ただ好きって伝えるだけじゃ駄目。もっとガッと強烈な感じにするの」
タケシとマサトは思った。ハルカの狙いは最初からこれだったのだと。
その後のやり取りは割愛するが、全てが終わった後、ホクホク顔のハルカと顔を真っ赤にして魂が抜けたようなミテキ、それを見てニヤニヤするサーナイトとムウマージ、そして赤面して固まったロミオがジョーイさんに目撃されたとか。
少し後、宿泊しているポケモンセンターの部屋でマサトはタケシに軽いお説教をしていた。
「もう!ロミオさんがジュリエさんに告白する為の練習なのにタケシがやってもしょうがないじゃないか!」
「いや、例え誰であろうとこの俺の想いを止める事はできない!俺もジュリエさんへの想いで負けているつもりはない!!」
「いや、そういう事じゃなくて……」
バルビートとイルミーゼのダンス成功の為にロミオ側の問題を解決する為の告白練習だったのだが、途中からハルカの独壇場に変わった事でロミオの恋の病云々は完全にほっぽり出されてしまった。
そのきっかけは告白練習を結果的に乗っ取ろうとしたタケシだったが、思えばそれが無くてもああなっていたとはマサトも思う。
「……お姉ちゃんも変だよね。サトシにジュリエさんの役をお姉ちゃんがやれば良いって言われたら、コーチ役で忙しいとか言ったのに、ミテキにロミオさん役で告白の見本を見せる時は自分でジュリエさん役やってミテキにアレコレ注文付けるし」
「多分、最初からアレが目当てだったんじゃないかな。勿論ロミオさんへの親切心もあるんだろうけど」
タケシの返答にマサトはある種の確信を得て、タケシと答えを照らし合わせる。
「……やっぱりお姉ちゃんってミテキの事が好きだよね?」
おや…?とタケシは姉の想いを察していたマサトに僅かながらも驚く。サトシはあの一連の流れを見ても全く気付いていなかったというのに。
「マサトも気付いていたのか」
「そりゃお姉ちゃんはあんなに分かりやすいからね」
ミテキがどう思ってるかは知らないけど……と付け足してからマサトはムウマージをちゃんと見たいと言って部屋を出て行った。
(むしろミテキの方がハルカに入れ込んでいるように見えるが……)
以前、ミツミに少しミテキのシンオウでの旅の事を聞いた事があったが、どうもミテキは周りの人間には結構ドライだったようだ。勿論、全くの無関心という訳ではないが、去る者は追わず、来る者もほっとくと自分で言っていたらしい。実際には何だかんだ結局人助けもしていたようだが。
少なくとも誰に対してもハルカ程世話を焼く事はなかったのは間違いない。ハルカに対して嫌な態度を取るシュウにあそこまで噛み付く事から見ても明らかだ。
これはもうミテキからハルカに向ける感情も間違いないだろうとタケシは断定する。同時にどうしても自分の気持ちに素直になれない天邪鬼の事を思い出す。
「……カスミもミテキやハルカみたいに素直に接すれば良いのになぁ」
****
sideミテキ
はー。今思い出しても顔が熱くなる。まさかハルカに告白シチュのお手本の相方を頼まれるとは思わなかった……。
「とまぁこんな感じよ!女の子は好きな男の子の熱烈なアプローチが最高に嬉しいのよ!」
言ってる事さっきと微妙に違うが、突っ込む気力もねぇ……。
「で、でででででも僕には無理だよ!あんな……あんな……あんな事って!!」
「デカい声で言わないでくんない!?本当に恥ずかしさ増してくるから!!」
思わず突っ込んじゃったよ!穴があったら埋まりたい!毛布があったら被りたい!なんで何人も見てる前であんな事を言って……うあああああああああああっ!!
ゴウカザルを出してあなをほるを使わせようにもアイツもニヤニヤして見てくるのが想像付くからボールから出せない!
「勇気を出して!ジュリエさんの事が好きなんでしょ!」
「それは……そうだけど」
そしてなんでハルカは見本と言えどあんなドラマでも早々ないような告白シーンをやった後であそこまで普通に振る舞えるんだよ……。……俺の視点じゃハルカは後ろ姿しか見えないけど、耳が赤い?
とにかく羞恥に悶えて暫く顔を両手で塞いでいるとハルカに身体を揺さぶられる。見れば周りにはハルカと俺のポケモン以外誰もいない。何でもロミオさんの告白練習を続けている所にジュリエさんがやってきて、イルミーゼが何処かに消えてしまったんだとか。サトシ達はイルミーゼの匂いを元に捜索に出て、ハルカは俺にそれを伝える為に残ったんだとか。
詳しい話を開くとジュリエさんのイルミーゼはバルビートらしき光を追いかけていなくなったとか。だがバルビートは一匹残らずロミオさんのモンスターボールの中。となると誰かがイルミーゼを誘き出したと考えるのが妥当だ。
そしてそんな事をするのはロケット団くらいだろう。
バルビートが匂いを辿るやり方でイルミーゼを探すサトシ達に合流し、イルミーゼがいると思われる崖の上にサーナイトの力でテレポートするとそこにはバルビートとイルミーゼの着ぐるみを着たロケット団が立っていた。後ろにはイルミーゼを閉じ込めた檻まである。
「な、何だこれは!?」
「何だこれはと聞かれたら!「サーナイト、張り倒せ」」
予め予想はしていたし、イカレた服装と長ったらしい口上に付き合う気は無いので名乗り始めた所でサーナイトにねんりきでムサシとコジロウをしばかせた。
「ちょっと!いっつも言って「ムウマージ、シャドーボール」ぶべっ!?」
「俺達の口上は…「サーナイト、サイケこうせん」あばばっ!?」
抗議してくるが喋る時間は与えずに追撃をかける。さてそろそろトドメだ。
「ちょっと、ミテキ君!?この人達喋ってる途中だよ!?」
うるせぇ、今の俺はやり場のない感情を発散しなきゃやってられないんだ。ピカチュウを見てみろ。最早問答無用でニャースの横っ面にアイアンテールかましてぶっ飛ばしてるぞ。
後ろから止めてくるロミオさんに手で口を塞がれて指示が出せなくなるとムウマージとサーナイトは攻撃をやめる。
「ちょっとジャリボーイ4号!さっきからなんで無表情で間髪入れずに攻撃しまくるのよ!?」
「口上どころか抗議すら許されないのか!?今日のお前怖いよ!」
キレるムサシと半泣きのコジロウ。ピカチュウの電撃で痺れるニャース。流石に可哀想に思ったらしいハルカに手を掴まれる。同時にロミオさんも俺から手を離す。
「ミテキ、ちょっとだけ可哀想だしやめてあげて?」
「………………分かった」
でもロケット団がイルミーゼを攫ったのは間違いない。ジュリエさんがイルミーゼを返してと抗議してもロケット団は腹の立つ顔でベロベロと舌を出して断る始末。
「このイルミーゼとバルビートのダンスはサカキ様にお見せするのだ!」
「お次はバルビート、ついでにムウマージにサーナイトとピカチュウも頂いてやるわ!」
本当に碌でもない事しか考えないなあいつら。流石に同情の余地はないのでいつものようにロケットをぶっ飛ばす事になり、バトルが始まる。折角だし、久々にムウマージでバトルする。
「ムウマージ、ゴーストダイブだ!!」
「ソーナンス!やっちゃって!」
カウンターを発動しようとするソーナンスだが、ゴーストタイプのムウマージにはカウンターは効かないのだよ。
ソーナンスをぶっ飛ばし、そんなの反則だと喚くムサシにピカチュウが10まんボルト。
「サボネア!お前も…って、だから俺じゃなーい!!」
「マジカルフレイム!!」
相変わらず自分のポケモンの激しい愛情表現でコントを繰り広げるコジロウ諸共マジカルフレイムでサボネアを仕留める。
「凄い威力だな。とてもタイプ不一致とは思えないぞ……」
感心するタケシの言葉が心地良い。ムウマージの努力を認めて貰ったようなものだからな。
俺のムウマージは他にもしっとのほのおやれんごくも使える。ムウマージというポケモンの特徴としてほのお技のレパートリーこそ少ないが、俺のムウマージは異様にほのお技が得意だ。モウカザルだった頃のゴウカザルにほのお技のコツを良く聞いていたのもあるが、もしかしたらアイツのテラスタイプがほのおタイプなのかもしれん。
「ピカチュウ!10まんボルト!」
そしていつものようにサトシとピカチュウが10まんボルトでトドメ。あっという間にやなかんじーとロケット団は飛んで行った。……が、やっぱり俺の中の複雑な感情は全然スッキリはしなかった。
その後、ロミオさんはジュリエさんに告白し、子供の頃から結婚の約束をしていたとジュリエさんはそれを受けて二人は結ばれたので俺が恥ずかしい思いをした甲斐はあったのだが、全然気分は晴れない。羞恥で悶えそうになる。
翌日の夜、目的のバルビートとイルミーゼの光のダンスを俺達は見物していた。その出来は昨日の練習とは比較にならない程の良さだった。
「ロミオさん、落ち着いて指示を出してるぜ」
「昨日とは別人みたいだね!」
「ああ!」
「恋の力って偉大よね!ねっ、ミーテキッ」
「お、おう……」
笑顔で話しかけてくるハルカにドキッとしながら返事を返す。
バルビートとイルミーゼの光のダンスが夜空を彩る中、俺はそれを見ながら考える。昨日のロミオさんの告白練習の中、ハルカはかなり無理矢理に見本として俺がハルカに告白するシチュエーションをねじ込んできた。
その内容は……まぁ、割愛するが、問題は何故ハルカがそこまでしたのかという事だ。しかもサトシ達も見ている前で。まるで外堀を埋めるかのように。
「カップルは幸せになれる……か」
ポツリと呟く。見本だからなのか、あの告白練習での俺の言葉に対する返答はYes.
このダンスの伝説は片想いや友達以上恋人未満の人達の為ではなく、あくまでもカップルの為のもの……ハルカがアレを押し通したのは例え形だけでも一緒に見たカップルは幸せになるという話を実現させたかったから……と考えれば筋が通る。
つまり、ハルカも俺の事……。
だからサーナイトもムウマージもニヤニヤすんのやめろ。
ハルカはライバル視とかが無く、素直に好意を向けた相手には要所要所でグイグイ行くタイプだと思ってます。
9.ムウマージ(♀)
特性:ふゆう
備考:ムウマの時、ハクタイの森で捕獲。かなりの悪戯好きでかなりの甘えん坊。フライングでやった劇場版で色々あってシェイミが大嫌い。意図は分からないがその時期にほのお技を猛練習していた。
ハルカ:別に恥ずかしくなかった訳じゃない。周りにバレてでも押し通したいものがあった。ミテキには少し悪いとは思ったがそれでも嫌われたりしないと分かってるからやった。
これでまだ出ていない主人公のポケモンは一体のみとなりました。多分ノーヒント。どのポケモンか当てられるかな?
主人公のポケモン、シンオウ御三家を揃えるくらいの贅沢しても良かったなぁ……と思い始めたこの頃。私の中で奴のエンペルトをライバル視し過ぎた。