ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード 作:メンマ46号
知識も中途半端だからポケモンバトルをちゃんと描写できてる人って凄いと改めて分かりました。
sideミテキ
「ガルーラ!ねこだまし!」
開幕一番、センリさんはガルーラにねこだましを使わせてラムパルドを怯ませてくる。怯んで動けないでいるラムパルドにかわらわりで追撃してくるが、どうにか耐える。初手で中々手痛い一撃を喰らったか。
だがそんな事はバトル前から百も承知。踏ん張ったラムパルドの目が光る。
「ラムパルド!ストーンエッジ!!」
ストーンエッジで眼前に岩山を隆起させて攻撃を仕掛ける。真下から盛り上がった岩にぶっ飛ばされるガルーラ。ここで追撃しようとしてもかわらわりでカウンターされるな。かげぶんしんで回避率を上げる事にする。
「確かにそのラムパルドはかなりのパワーだ。たった一撃でここまでのダメージを喰らうとはね。だがその反面、耐久力に難があると見た」
たったこれだけでそこまで見抜くか。
ラムパルドはその種族値の大半を攻撃に割いたある意味究極の脳筋とも言えるポケモンだ。HPはそれなりにあるものの、耐久力はそこまででもない。だが肝心なのはその攻撃種族値が165という規格外の数値という事だ。
いくらタイプ一致と言えど、いわタイプにはノーマル技は半減される。基本的にはガルーラのパワーに任せた物理かくとう技で来るだろう。
互いに既に技を二つ使っている。残りの技をどう使うか……。
ポケモンバトルにおける公式ルールの一つとして、使用できる技は四つまでというものがある。五つ目の技を使用すればその時点で失格負け。俺のラムパルドはストーンエッジとかげぶんしん、センリさんのガルーラはねこだましとかわらわりだ。つまり互いにこのバトルにおける技の枠はあと二つ。
「ガルーラ!距離を詰めてもう一度かわらわりだ!」
「ラムパルド!もう一度かげぶんしんで撹乱しろ!!」
ラムパルドの防御種族値と残り体力を考えるとこれ以上かくとう技を喰らうのは避けたい。一撃でやられる事はないだろうが、三発以上は厳しいだろう。かげぶんしんの良い所は残像を作り出す際に元々の立ち位置から移動できる点だ。ガルーラも本物が見抜けず、取り敢えず元々いた場所にある残像に詰め寄ってかわらわりをするが、見事にすり抜けている。
「つるぎのまい!」
ストーンエッジだけであれだけのダメージを既に受けているんだ。ここで積み技で攻撃のステータスを二段階上げて確実に仕留めに行く。
「ストーンエッジ!」
「かわらわりで砕いて凌げ!!」
再びストーンエッジを繰り出して、隆起した岩山を生み出す。ガルーラはそれを砕くがその際に腕に負担が行く上、破片によって傷付けられる。
「こらえる!」
ここでセンリさんも三つ目の技でギリギリでストーンエッジを耐える。かわらわりだけでは耐え切れないと直前になって分かったからだ。となるとこのタイミングでガルーラに出させる技も自ずと見えてくる。
センリさんがガルーラに命じた最後の枠の技はやはり予想通りだった。
「ガルーラ!きしかいせい!」
きしかいせいは自分の残り体力が少ない程威力の上がるかくとうタイプの技だ。ガルーラの受けたダメージを逆に利用してパワーの上がった物理攻撃か。だが逆に言えばガルーラも限界に近い。こらえるを使っている以上、体力も残り1の可能性が高い。
「ラムパルド!ストーンエッジ!」
もう一度ストーンエッジを使って岩山を生み出して、ラムパルドに届くまでの壁を作り、ガルーラを襲う岩石と両立させる事できしかいせいの威力とガルーラの体力を同時に削りに行く。正面から向かってくるならばそれを利用してダメージを与える。
だがそれでもガルーラは倒れない。こらえるでようやく保ってるたった1の残り体力をちっとも削れてないって事だ。それ程にきしかいせいのパワーが凄いんだ。
そしてストーンエッジを突破したガルーラはそのままラムパルドに殴りかかり、空振りした。
ガルーラが殴ろうとしたのはラムパルドのかげぶんしんだったからだ。
「もろはのずつき!」
ここで俺はラムパルドの火力での最強物理技で既に大きく威力の削れたきしかいせいを空振りしたガルーラに真横から突撃させた。
ストーンエッジを砕き終えて勢いを失ったガルーラにほとんど不意打ちに近い形でもろはのずつきを叩き込んだ。モロに攻撃を受けたガルーラは大きく吹っ飛び、壁に激突。そのまま目を回して気絶した。
「ガルーラ、戦闘不能!ラムパルドの勝ち!」
「しゃっ!!」
まずは一勝。ラムパルドも相当ダメージを負っているからもうもろはのずつきは使う訳にはいかないが、かげぶんしんで撹乱しつつ、つるぎのまいを積み、ストーンエッジで牽制し続けて、少しでも次のポケモンの体力を削るのが今回の方針だな。
「パパのガルーラがやられちゃうなんて……」
「ちょっとびっくりかも……」
「すっげえ!センリさんのガルーラもミテキのラムパルドもすっげー!俺も早くバトルしたいぜ!な、ピカチュウ!」
「ピカチュー!」
ガルーラをボールに戻しながら労い、次のポケモンを出そうとセンリさんがモンスターボールを持ち替える。
「流石だね。では次はこのポケモンで……」
その瞬間、ジムの壁が強い衝撃で突き破られた。砂煙が吹き込んで来て、誰もがそれで顔を顰める。
「な、何だ!?」
「なんだかんだと聞かれたら!」
「マリルリ!砂煙の方に向かってみずでっぽう!」
「答えて…うぎゃーーー!?」
もうこのパターンだけで誰の仕業なのかすぐに分かったので観客席にいるマリルリにみずでっぽうを指示して穴の先でポーズを決めていた二人組を水の圧力でぶっ飛ばした。
お前らの名乗りに付き合う気はない。
「ちょっと!アタシらが名乗ってる最中でしょうが!!」
「コトキタウンでも問答無用でかえんほうしゃを浴びせて吹き飛ばしたり、俺達に何か恨みでもあるのか!!」
「ロケット団!!またお前達か!!」
みずでっぽうでは威力が足りなかったのか、すぐに戻って来て怒鳴ってくるムサシと抗議するコジロウ。だってお前ら面倒臭いんだもん。どうせ犯罪者なんだし、その内ボコった後、マグマ団同様ジュンサーさんに引き渡す予定だ。
「まぁハルカのお友達ですか?うちのハルカがいつもお世話になりまして……」
「違うわよ!悪い人達なの!」
天然が発動しているのか、ミツコさんはロケット団をハルカの友達と勘違い。ハルカのツッコミもあまり意に介していない。
「ただの悪い人じゃないのよね〜」
「スマートでスタイリッシュでスポーティ!」
「それがロケット団なのニャー!」
俺に怒鳴った時の形相は何処へ行ったのやら。ご丁寧にロケット団という組織について説明している。それを聞いたセンリが眉を顰める。
「ロケット団?カントーのあの組織か!」
どうやらオダマキ博士と違い、センリさんはロケット団を知っているらしい。まぁジムリーダーだし、ジムリーダーはジムのある街の防衛の役目も担っているからな。悪の組織の情報はポケモンリーグから教えられているんだろう。
「で、まーたサトシのピカチュウが狙いか?」
「ピカチュウだけじゃないわよ!ロケット団の狙いは強いポケモンに珍しいポケモン全部よ!」
「そこの俺達の名乗りを邪魔ばっかするジャリボーイ!お前のそのポケモンも化石ポケモンで相当珍しいそうじゃないか!」
「そのラムパルドも頂く事にしたのニャー!」
何という自己中。迷惑千万だなこいつら。やっぱりその内あいつらみたいに豚箱にぶち込んでやろう。
俺がそう決めたタイミングでロケット団もモンスターボールを出して襲い掛かってくる。
「アーボック!ピカチュウとラムパルドを頂いちゃいなさい!」
「そうは行くか!ラムパルド!しねんのずつきでアーボックをぶちのめせ!」
つるぎのまいの効果はまだ持続している。それにラムパルドの攻撃種族値での弱点攻撃ならムサシのアーボック程度一撃で……!
「いわタイプにはくさタイプだ!行けぇウツボット!!…ってだから俺を呑むなーーー!!」
アーボックを返り討ちにしようとしたらコジロウが何故かまだいるウツボットで割り込もうとして自分でウツボットに呑まれる。その間にアーボックをぶっ飛ばしてムサシに激突させた。
「ピカチュウ!10まんボルト!」
サトシもピカチュウを出して呑まれているコジロウごとウツボットに電撃を浴びせている。容赦なくていいかんじー。
「やってくれるわね!だったらアンタの出番よパルシェン!」
ムサシは一撃でやられたアーボックに代わって今度はパルシェンを出してきた。……ん?ムサシってパルシェンなんて持ってたか!?ほとんど覚えていないとはいえ、アニメでそんなん観た覚えねぇけど!?
まぁ関係なくぶちのめすけど。
「パルシェン!みずでっぽう!」
「チッ!ラムパルド、まもるだ!」
流石にここまでダメージを負っているラムパルドにみずでっぽうとはいえ、弱点攻撃をされる訳にはいかない。まもるで凌いで確実にいわ技でノックアウトしないと。
イーブイ兄妹やマリルリじゃまだレベルが足りなくてあのパルシェンやウツボットに対抗するのは無理だ。
サトシとピカチュウがいるとはいえ、ラムパルドも限界に近いし、ここはジム戦に用意していたゴウカザルと最後の一体を出すべきか?
そう考えているとセンリさんもポケモンを出して加勢してくれる。
「ヤルキモノ!力を貸してくれ!」
センリさんが出したのはヤルキモノ。見た感じ恐らく俺とのジム戦ではなく、サトシへの稽古用に用意したポケモンだろう。ロケット団のポケモンを倒すには充分な強さなのはすぐに分かった。
だが強い相手を撹乱する術はロケット団の方がそれなりに上だったらしい。ウツボットから脱出したコジロウが新たにボールを投げる。
「マタドガス!えんまくだ!」
「マタドガース」
登場と同時に煙を吐き出して視界を奪ってくる。しかも普通にガスらしく、臭いもキツければ息も苦しい。くそっ、ひこうタイプを連れて来ていれば、かぜおこしなり、きりばらいなりで対処できたんだが……!
「お姉ちゃん!お姉ちゃんもポケモンを出さなきゃ!ポケモンにはポケモンで対抗するんだよ!」
「あ、そっか。出て来なさい!アチャモ!ルリリ!」
そんな中、マサトに言われてハルカもアチャモとルリリを出したのが聞こえてくる。でもこんな視界が悪い中、新しく出してもあまり意味はないと思うぞ。
「それで、どうするんだっけ?」
「だから、技を指示するんだよ」
「そうよね!技よね!え〜っとぉ……」
「パルシェッ!!」
アチャモとルリリの技が何かと思い出そうとしている間にムサシのパルシェンが襲い掛かったらしく、たいあたりでも使ったのか、アチャモとルリリがぶっ飛ばされた鳴き声が聞こえてくる。くそ、こんな視界じゃ攻撃しても味方のポケモンや他の誰かに当たりかねない。
「今よ!ピカチュウとラムパルドを奪うのよ!」
「そうは行くか!ピカチュウ!10まんボルト!」
「あっ!馬鹿!」
サトシはロケット団に抵抗しようとピカチュウに10まんボルトを指示。だけどこの煙の中じゃ誰が何処にいるのか分からないので止めようとしたが、既にピカチュウは10まんボルトを放っていた。
「ぎゃああああっ!?」
「しまった…!マサト、大丈夫か!?」
「ピカチュ!?」
俺の懸念通り、ピカチュウの10まんボルトは敵ではなく、マサトが浴びせられる結果に。……ちょっとスカッとした。
「ピカチュウの10まんボルトってTVで観て知ってたけど、実際に喰らうと効くなぁ……う〜ん、痺れたけど感激……」
……コイツ本当にドMか?引くわー。
漸く煙が晴れて視界がクリアになる。
「あれ!?ロケット団がいないわ!?」
ハルカがロケット団がいなくなっている事に気付く。撤退したのか?俺の隣にラムパルドがいるのは分かっている。ターゲットを捕まえず、返り討ちにされる事もなくロケット団がここから消えるか?
「俺のラムパルドは無事だけど……」
「ラァム」
「俺のピカチュウも」
「ピカピカ」
ラムパルドもピカチュウも攫われてはいない。無事なのは良いけどこれは流石に違和感しかないので周りを見渡す。俺とラムパルド、サトシとピカチュウ、ハルカ、センリさん、ミツコさん、マサト、センリさんのヤルキモノ、ハルカのルリリ、観客席に出しておいたマリルリと兄イーブイ……。
「お、俺のイーブイがいなーい!!」
「私のアチャモも!!」
続いてハルカもアチャモがいない事に気付く。慌てて外に出たら、ロケット団の物らしきニャース型の気球が遠くを飛んでいた。
「確かにポケモンは頂いたわよー!」
モゴモゴと蠢く袋を肩にかけるムサシ、ガキみたいなはしゃぎ様のコジロウ、やたら腹の立つ煽り顔をするニャース。奴らがその気球に乗っていた。
妹イーブイとハルカのアチャモがピカチュウと間違えられてロケット団に連れ去られた!……いや間違えられたのはアチャモで、俺のイーブイは名乗りに付き合わずにぶっ飛ばしてた俺への報復かもしれんが。
俺達はそのまま空を飛んでいく気球を見ている事しかできない。ハルカは顔を真っ青にして膝を突いて項垂れる。
「私のアチャモ……貰ったばかりなのに……」
「立つんだハルカ」
俺はロケット団の気球を睨みながらハルカに声をかける。俺達が今するべき事はここで何もせずに泣いている事じゃない。
「イーブイとアチャモを助けに行こう。俺達はトレーナーなんだ。何があってもポケモンを守るのが俺達の務めだ」
「ミテキ……」
俺はハルカに手を差し伸べ、ハルカもそれを掴んだ事でハルカを引っ張り上げて立ち上がらせる。サトシも頷きながら同意してくれる。
「ミテキ、ハルカ。俺も手伝う!イーブイもアチャモも必ず取り返してやるぜ!」
ジム戦の邪魔だけじゃなくて妹イーブイとアチャモを……!あいつら今度はブラストバーンで丸焼きにしてやる!!
****
「あいつら何処に行ったんだ?」
「いくら気球とはいえ、そんな早くそう遠くには行けないはずだ」
俺達はロケット団の気球を追ってトウカシティ近隣を探し回っていた。とはいえ、既にロケット団の気球を見失ってしまっているので、後は虱潰しに探すしかない。あいつら本当害悪。次からは最低でも確実に一撃で仕留めないと。理想を言えば今回で捕まえてジュンサーさんに引き渡す事だけど。
「ここからは手分けして探そう。ママ、我々はこっちへ」
「はぁい、パパ♡」
そう言ってセンリさんとミツコさんは二人で北方向へ行ってしまった。
「いつも仲良いんだから全く……」
「なんか楽しんでない?あの二人」
「それ俺も思った。俺とハルカからすれば気が気じゃないんだけどなぁ」
「パパもママもちょっとお気楽過ぎるかも……」
センリさんは多分ロケット団の詳細を知っているんだから、もうちょっと切羽詰まってくれても良いんじゃないの?仮にも娘の初めてのポケモンが強奪されてるんだからさぁ。
「こんな時、ヨルノズクがいたら空から探せるのになぁ」
「俺もひこうタイプ連れて来れば良かった。進化と育成の為にイーブイ達とマリルリを手持ちに固定してるけど、ちょっと考え物かもなぁ」
実際その隙を突かれて妹イーブイが攫われたようなもんだし、マリルリに関してはナナカマド研究所に預けてる他のみずポケモンに任せてそっちで鍛えて貰うべきだったか?
「う〜ん、足跡は残ってないか」
「って、ロケット団は空を飛んで行ったのよ」
マサトはマサトで探偵気取って虫眼鏡で地面を観察するなんていう昭和の探偵みたいな事して遊んでるし。
「ならば僕は灰色の頭脳を使って名推理を働かせ、サトシとミテキを手足の如く使って、事件を解決へと導くー!」
「ピカチュウ、もう一発10まんボルト頼むわ」
「ピカァ!?」
妹イーブイとアチャモが攫われたこの状況下でクソガキらしい俺とサトシをパシリにしようとする生意気発言とおふざけ要素にイラッときたので思わずピカチュウにマサトへの10まんボルトを頼んでしまう。流石にピカチュウもギョッとしてるわ。すまんピカチュウ。
だがマサトのおふざけに付き合ってられないのはハルカも同じだったようで、拳骨をかましている。
「変な事言わないの!」
「うわーん!お姉ちゃんがぶったー!」
「嘘泣きしないの」
「ちぇっ、年々この技が通用しなくなるんだよなぁ」
ハルカの拳骨から始まり、マサトが泣いてジタバタ。それを嘘泣きと指摘されて真顔に戻って立ち上がり、眼鏡のレンズを光らせる。この間、僅か5秒。サトシも流石に唖然としている。
「そんな事よりも私のアチャモとミテキのイーブイを…「みんな!奴らの気球を見つけたよ」うわっ!?」
そんな時、ロケット団を発見したらしいセンリさんとミツコさんが戻って来た。早えな……。楽しんでいるように見えて実は一番真剣に探してくれていたんだろうか。
センリさんとミツコさんの案内で森のど真ん中に停めてあるロケット団の気球の場所へ行く。今更ながらあんな目立つ気球で移動とか、隠密性が欠片もねぇな。一応悪の秘密結社がそれで良いのか?見つけやすくて助かるから指摘はしないけど。
「アレだ」
「間違いない!」
そして肝心の妹イーブイとアチャモは揃って気球の真ん前に不自然に設置された檻の中に閉じ込められていた。おぉう……揃って今にも泣きそうな顔してるなぁ。早く助けてやらないと。
「イーブイ、無事みたいだな」
「私のアチャモ!」
草むらに隠れて様子を見ていたが、アチャモの姿を確認したハルカは反射的に飛び出し、マサトもそれに続く。
「「アチャモー!」」
「ちょっと待て!それは……」
ロケット団との付き合いの長いサトシがハルカとマサトを呼び止めようとする。しかしそれを聞かずに突っ走ったハルカとマサトは檻の前で落とし穴に引っかかった。
「罠だって……」
「落とし穴とはベタな罠だなぁ」
そして落とし穴に落ちた我が子達を心配したセンリさんとミツコさんが二人を助けに飛び出していく。あ、もうオチが読めた。
「ハルカー!」
「マサトー!」
「ああー!それも!」
そして揃ってまた落とし穴に落ちた。
「罠だって…」
「つーかセンリさん達が落ちたとこ、先にハルカ達が素通りしてなかった?」
え?そんな事はどうでも良い?そりゃそうか。そしてセンリさん一家が落とし穴に落ちたのを確認したロケット団が四人を馬鹿にするかのように笑って出てくる。
「イェーイ!かかったー!」
「ざまーみろーい!」
「ニャハハハ!」
良い年こいて良くもまぁあんなはしゃぎっぷりを晒せるもんだなぁ。
「ロケット団め…!」
「まぁ、あいつら自体は大したことないし、他にも罠が無いかを警戒しとけば倒せるだろ」
俺とサトシは草むらから出てロケット団と対峙する。落とし穴に落ちたハルカ達を助けた上でロケット団を倒し、妹イーブイとアチャモを取り戻すにはもうジム戦の手の内がなんだのと言ってられないな。
「行くのよパルシェン!!」
「行っけー!ウツボット!!」
「ピカチュウ!君に決めた!」
「出て来いルカリオ!!」
サトシはピカチュウを出し、俺は今回のジム戦の二番手として用意していたルカリオを出す。はがね・かくとうタイプだからどくタイプメインのロケット団には有利に立ち回れる。パルシェンもこおりタイプを持ってるしな。
ピカチュウがパルシェン、ルカリオがウツボットを相手取っている内に俺がハルカ、サトシがマサトを落とし穴から引き上げる。センリさんとミツコさんには既にゴウカザルとマリルリを向かわせ、引き上げている。
「なんでこんな所に落とし穴が……」
「話は後!まずはここを切り抜けるぞ!ルカリオ!コメットパンチ!」
ウツボットを殴り飛ばし、パルシェンもピカチュウの電撃で痺れている。そこにセンリさんがヤルキモノを出して加勢してくれる。
「人の持っているポケモンになんて事をするんだ!しかも初めて貰ったポケモンなのに!!」
「そんな事知ったこっちゃないね!」
「そうだニャ!」
コジロウが続けて出してきたマタドガスにヤルキモノがメタルクローを決める。この乱戦の内にマサトが妹イーブイとアチャモが閉じ込められている檻に近寄ろうとするが、それをソーナンスが阻む。
「ソォーナンス!!」
「ゴウカザル!ルカリオと交代!ゴウカザルはウツボットにマッハパンチからほのおのパンチに繋げろ!ルカリオはソーナンスにあくのはどう!」
マサトに危害が及ぶ前に速攻でゴウカザルがルカリオを相手していたウツボットを仕留め、ルカリオはあくタイプの特殊技でソーナンスを倒しに行く。
ロケット団のソーナンスが相手の攻撃をダメージを受けずにそのまま跳ね返すというチートスペックなのは良く覚えている。だがそれはあくまでもタイミングが重要。タイミングさえ外してしまえば跳ね返せない。じゃなきゃソーナンスは今頃無敗で最強議論に上がってる。
マサトを見ていたソーナンスにほぼ不意打ちに近い形であくのはどうが決まり、攻撃を跳ね返せなかったソーナンスはそのまま気球に激突した。
この隙にマサトに目配せをして檻を持ち出させる。マサトも頷いてハルカの元へ檻を持っていき、妹イーブイとアチャモを解放する。
アチャモはハルカに抱き寄せられ、妹イーブイも俺に駆け寄ってくる。
「イーブイ!心細くなかったか?」
「ブーイ!」
「そうはいかないのニャ!!」
だがいらん事にニャースが俺に向かって走るイーブイの進路に割り込んで捕まえようとしてきた。……潰す。
「ゴウカザル!ルカリオ!二人がかりでニャースにインファイト!!!」
「ウキャア!!」
「ルカッ!!」
既にウツボットとソーナンスを仕留め終えていたゴウカザルとルカリオに指示を出すと既に動いていたようで、ニャースの前後を挟み、そのまま同時に全力の拳をニャースに振り下ろす。
「ニャアアアァァァッ!!?」
殴る。殴る。殴る。殴り続ける。効果抜群の拳の暴風雨がニャースの顔を歪め、泣こうとも青タン塗れになろうともゴウカザルもルカリオもニャースを殴る事をやめない。イーブイ兄妹は仲間内では大切な末っ子なのだ。ゴウカザルもルカリオも妹イーブイを攫った事にはキレてんだよ。勿論、俺も止める気は一切ない。
「ん?」
ポンッとベルトに装着したモンスターボールが開くと兄イーブイが出て来た。
「ブイブイ!」
「お?なんだお前も戦いたいのか?」
「ブイ!」
兄イーブイはやる気満々だ。そら妹が攫われたとあっては兄としては黙ってなんかいられないよな。お兄ちゃんとして成長しているようで嬉しいです。
「よーしイーブイ!どばどばオーラ!」
ゴウカザルとルカリオにボコされてるニャースはほっといて、ヤルキモノとピカチュウに加勢させる。エスパー技を使ったので分かるだろうが標的はマタドガスだ。
「マタドガー!?」
センリさんのヤルキモノに散々ボコボコにされていたマタドガスにとってはトドメ同然だったらしく、この一撃で戦闘不能になっている。
「アンタ達!?何やられてんのよ!」
気付けば残りはもうムサシのパルシェンだけだ。アーボックはトウカジムでラムパルドに瞬殺され、ソーナンスはルカリオ、ウツボットはゴウカザル、マタドガスはヤルキモノと兄イーブイに負けたのだ。ニャース?現在進行形でボコられてます。
「えぇーい!こうなったらピカチュウだけでもとっ捕まえるのよ!パルシェン!みずでっぽう!」
ピカチュウのみに狙いを絞り、みずでっぽうを繰り出してくるパルシェン。ピカチュウもそれを正面から喰らってしまうが、特に吹っ飛ばされる事もなく、その場で耐え切った。
「ピィカ!」
「嘘ぉ!?いつもより効いてない!?」
どばどばオーラは技の追加効果としてひかりのかべを展開できる。これでお前らの特殊技の通りは悪くなったんだ。ピカチュウにみずでっぽうの効きが悪いのはそのせいだ。ひかりのかべはダブルバトルとかじゃ味方のポケモンにも適用されるからな。ちょいと効果が薄れはするが。
「ピカチュウ!10まんボルト!!」
そして遂にパルシェンもピカチュウの電撃で倒れ、ロケット団のポケモンは全滅する。ボコられ終えたニャースはコジロウに投げつけられてぐったりしてる。俺しーらない。
「良くも私のアチャモに酷い事してくれたわね!」
ハルカも泣き終わったアチャモと一緒に合流し、ロケット団はいよいよ後がないと理解したのか顔を青くする。
「ちょ!ちょっと待ちなさいよ!」
「そ、そうだ!こんな多勢に無勢なんて……」
「ピカチュウ!最大パワーでかみなりだ!!」
「アチャモ、ひのこ!」
「ヤルキモノ!ハイパーボイス!」
「ゴウカザル!ブラストバーン!!」
聞く耳は持たん。まるで打ち合わせでもしたかのように俺達は今出せる最高火力の特殊技を同時にぶちかましてロケット団を呑み込んだ。
爆発と共に空の彼方へとロケット団は吹き飛んでいく。
「こんな事ならアチャモとイーブイで満足しとくんだったー!」
「反省する時はいつも遅いんだ……」
「ニャんでニャーばっかりこんな袋叩きに……」
「「「やなかんじ〜!!!」」」
あいつら何も反省してねぇな。この先旅に付き纏ってくるとか憂鬱でしかねぇ。アレはアニメだから楽しめるのであって、いざ実際に自分のポケモンが狙われるとなると……やっぱりどっかで豚箱にぶち込もう。サトシとピカチュウにとってもそれが良い。
「アチャモ、怖い思いさせてごめんね」
「イーブイも、寂しかったろうに、よく頑張ったな」
「アチャ〜」
「ブイ〜」
俺とハルカはそれぞれ妹イーブイとアチャモを抱き上げ、頭を撫でる。まぁ今はこいつらが無事だったからそれで良いか。
****
ロケット団との一悶着も終わり、俺達はトウカジムに戻る為の帰路を歩んでいた。その道中でロケット団についてサトシからピカチュウが狙われる経緯を聞いていると、ハルカが疑問を口に挟んだ。
「でもなんでロケット団はサトシのピカチュウをずっと狙ってるの?強いポケモンなら他にも沢山いるじゃない」
ハルカの疑問はサトシのピカチュウをこれまで散々狙い続け、その都度失敗してきたという話を聞いたからだろう。普通はそこまで失敗し続けるなら諦めるなり、他のポケモンに切り替えるなりするだろうと。
「確かにね。ピカチュウってポケモン自体はそこまで強い方じゃないし、サトシのポケモンの中ならむしろリザードンとかの方が狙われるんじゃないの?」
マサトの発言も尤もだった。というか普通に考えれば仮にあいつらがサトシからピカチュウを奪ってサカキに献上しても、ピカチュウ一匹をドヤ顔で出されたサカキは怒鳴り散らすだけに思える。あいつらだってそれが分からない程馬鹿じゃないだろう。……多分。
でもそれでもロケット団の三人がサトシのピカチュウを狙う理由にはある程度の予測ができた。
「とんでもなく強いピカチュウという点には前例があるからだろう」
俺がそう教えるとセンリさんも頷き、続ける。
「そもそもロケット団とは一度壊滅した組織なんだ。それがここ数年で再び動き出した」
「そうなの!?」
そう。この世界ではロケット団は一度壊滅している。
「でもロケット団ってカントーやジョウトで勢力を持ってる組織なのになんで壊滅したの?」
「当時あるたった一人のポケモントレーナーがシルフカンパニーを制圧していたロケット団の部隊を蹴散らし、最後にはロケット団ボスを討ち倒した事で、ロケット団は一時存続できなくなったんだよ」
センリさんもやっぱり詳細を知っているらしい。
その後、サカキはロケット団ボスとして身バレしていなかったのを良い事にジムリーダーとして活動しつつ、水面下でロケット団の再興を進めていたらしい。そこら辺の事情はゲームやアニメとは明らかに異なる。そしてそれをポケモンGメンをしている
「ロケット団を壊滅させたそのトレーナーはとても強いピカチュウを連れていた。そのピカチュウを始めとするポケモン達を使い、ロケット団ボスのサカキを倒したんだ」
「そっか。その人のピカチュウに匹敵する強さになるかもしれないから、サトシのピカチュウを狙ってるのね……」
ロケット団三人も最強のピカチュウという前例を知っているからサトシのピカチュウが同じ可能性を秘めていると考えたんだろう。
「ロケット団を壊滅させたトレーナーってどんな人なの?」
「んー、ハルカもマサトも名前くらいは聞いた事あるんじゃないか?」
「ああ。そのトレーナーは今は世界最強の称号を持ち、ポケモンバトルの頂点に君臨している」
センリさんの言葉にサトシの顔が引き締まるのが分かった。同郷の先輩トレーナーだからな。憧れでもあり、目標でもあるんだろう。
その人がいるから、アニメではカントーのチャンピオンと兼任していたワタルさんはこの世界では
「それこそが前回のPWCS優勝者にして、カントー地方チャンピオン、レッドだ」
ロケット団がピカ様を狙う理由として、レッドのピカチュウという前例とそのレッドのピカチュウに対抗できるポケモンを組織全体で欲しているから……という設定。
いくらなんでもチャンピオンがレッドならサカキがジムリーダーやってんの気付かなかったの?と思ったあなた。レッドさんはその後普段どうしてると思う?
19.ルカリオ(♂)
特性:せいしんりょく
備考:タマゴの時、鋼鉄島でゲンから譲り受けた。