私の名前は   作:影後

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3years after

それは唐突に起こった事件であった。

バウマイスター騎士爵家に冒険者が現れたのだ。

どうやら俺がヴェンデリンを憎んでいると思っている王都の男爵風情が配下を使ってきたようだ。 

俺は相手が望むような口調、返答をしてやる。

俺の馬鹿な取り巻きの用意もできた。

子供達には悪いが、お前の父親は犯罪者になる。

歴史的な汚点になる、すまない。我が子達よ。

 

領地を見ていればやはりと思う、馬鹿を演じているのも、馬鹿になるのも、俺はもう面倒だ。さっさと表舞台から消えたい。

 

「………来たか、ヴェンデリン」

 

愛する弟達に武器を向ける、それは許されざる行為だ。

だが俺はそうするしかない。

 

「父上…ヴェンデリンか………生きていたか」

 

「え?」

 

「クルト、控えろ!!バウマイスター男爵で」

 

「……俺は下がりますので」

 

「クルト兄さん、生きていたかとは」

 

「……男爵様、それを話す許可を受けてはおりませんので」

 

俺はそれだけを告げると退室する。

あからさまな監視がある、あの男爵の部下の監視だろうか。

俺が下手なことをするのは不味い、だがこの数日わかったのは彼奴等は俺を舐めているフシがある。夜に監視がないのだ。

夜は自由に動かせてもらう、だが殺しは不味い。

 

そして、夜中。ヴェンデリン一行が姿を見せた。

 

「………お前達、なんのマネだ」

 

大剣を背負い、話しかける。

 

「いや、兄さんの仕事ぶりを見たいって皆が」

 

「……死んでも自己責任だぞ」

 

俺は友愛レベル5を発動させ、何時でも回復できるようにする。

そして、森へと入った。

 

「……兄さん、森の勢力図ってどうなったの?」

 

「混沌としている、ドスマッカォまで現れた。何処から流れて来たのかも不明だ。ドスジャギィ、ドスジャグラス、ドスランポス、四つ巴だけでなくリオレウスとリオレイア。この前は古龍まで」

 

「古龍だって?!!」

 

「…ヴェンデリンが仕留めた紛い物じゃない、真の古龍とは自然の具現化だ」

 

「あの、古龍とは……自然の具現化とはいったい」

 

エリーゼだったか、緑色のシスターが話しかける。

 

「……古龍は嵐を呼ぶもの、雷を呼ぶもの、色々居る。自然物そのものの具現化だ。お前たちの魔法は効かん、効くのはモンスターから作られた武器のみ」

 

「つまり、クルト様は」

 

「兄さんは俺が生まれる前からたった一人のハンターとしてここを守ってたんだ」

 

「何だよ!なら愛想よくしても」

 

「…馬鹿な小僧だな、ヴェンデリンの敵対者がこの領地にいて監視すらしているのだ。距離を保つのは当たり前だ」

 

「まじかよ」

 

「……ねぇ、クルトさんって強いよね」

 

「人を殺した事はない、俺の相手はモンスター……隠れろ」

 

ドスン、ドスンと足音が響いた。近くの茂みに隠れさせ、音の主を確認した。

 

「でっけー」

 

「……ちっ!生態系が変わっているな。そもそもこんな浅い場所にモンスターは来ないはず、どうなっている」

 

「兄さん?」

 

俺は砕光の撃剣を抜き、アンジャナフの顔にクラッチを仕掛けた。

 

「まじかよ」

 

「喰らえ!!」

 

クラッチ攻撃で傷つけをしたあと、石ころを拾いアンジャナフを木にぶつける。起き上がるまでに何れ程のダメージを与えられるだろうか。

 

「不味い!」

 

アンジャナフのブレスであたりが焼ける、だがそれは慣れたことだ。

 

「ヴェル!魔法で」

 

「モンスターに……魔法は効果が薄いんだよ」

 

「……嫌な事ばかりだ、全部」

 

アンジャナフのブレスをタックルで回避し、そのまま真ため斬りを叩き込む。クラッチダウンではないため、先程よりも長く倒れていてくれるだろう。

 

「ふん…ふっ……」

 

一段目、二段目、そしてクラッチの強化撃ち。

 

「真ためだァァァァ!!!!!」

 

アンジャナフの尻尾に向かって真溜めを狙うが外し、足を部位破壊した。

 

「あぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「クルト兄さん?!」

 

「てめぇ……動くんじゃねぇ!!尻尾剥ぎ取らせろぉぉぉ!!!!」

 

アンジャナフの咆哮をフレーム回避する、逃がしてやるものかよ。

 

「来たァァァ!!!!」

 

ため斬りが当たった一段目のため斬りだが、突進してくるアンジャナフの頭を部位破壊する力は余裕である。

 

「捕獲……成功!」

 

シビレ罠を仕掛け、捕獲用麻酔玉を2回当てる。

眠ったアンジャナフの下にネコタク達が現れる。

 

「にゃ?ハンターさん、彼等は何かにゃ?」

 

「……見学者だ、第3王女と同じタイプと思ってくれ」

 

「にぁぁ……ハンターさんも大変にゃ。アンジャナフはギルドの方に送るにゃ、それじゃあにゃ!」

 

ネコタク達は即座にアンジャナフをしばり上げる、彼等の腕は一流だ。

ネコタクでも、捕獲したモンスター専門のネコタク。

モンスターが真面目ない為の薬、目覚めた場合動けなくするために効率的な位置を縛り上げている。

 

「……どうしたんだ」

 

「今のは」

 

「なんだ、アイルーだ。可愛いだろ」

 

「はい!…いえ、喋って」

 

「何処がおかしいんだ。アイルーは喋るものだろ?」

 

「……エリーゼの嬢ちゃん、ハンターは揃って理解が及ばない奴等ばっかだ。俺等の常識には絶対当てはまらない。俺の知り合いに山から落ちたのに生きてるやつがいる」

 

「?」

 

「……駄目だ、何を当たり前の事をって顔してる。昔は違ったのに」

 

ショートカットの為に落ちるのは日常茶飯事だ。

まったく……何を言っているのだ、この御仁は。

 

「……とりあえず今夜はこれで終わりだ。お前達はお前達の仕事をしろ」

 

「なぁ、いくら弟でも男爵だぞ。お前は」

 

「………黙れ!この森に入ったならそこにあるのは食物連鎖だけだ。淘汰し、淘汰される。お前達は現状、最下位に等しい。魔法使いだから問題ない?それは驕りだ。そしてだ、ゾンビ達だったか、諦めろ。どうせモンスターに食われて何も無いだろう」

 

「その様な事は」

 

「……誰よりもこの森に詳しい俺が言うんだ。ゾンビ共に心当たりは……いや、この位置か?」

 

俺はマップを広げ、ヴェンデリン達に見えるようにする。

 

「……万が一のことだが見落としたかもしれん。この位置なら戦死した者達の位置に近い。わかるな?」

 

「……はい、あのクルト様」

 

「…………小型モンスターや中型程度なら何とかなるだろう。だが、気を付けろ。モンスターは生き物だ。お前達の狩る旨味も無ければ感謝されることは無い。逃げろ、良いな」

 

「わかった、男爵様や嬢ちゃん達は俺が守る」

 

「………待て」

 

初老の男の話が終わった後、モンスターの咆哮の様な物が聞こえた。

 

「……歌声?」

 

ヴェンデリンがそう呟く。

歌っているようにも聞こえるその響き、咆哮では無かった。

だが、この鳴き声いや音を俺は知っている。

 

「……ヴェンデリン、明日だ。俺は無能を演じるのを止める」

 

「え?クルト兄さん?」

 

この国が終わるのを俺は無視しない。

結局、アマーリエを愛せはしなかった。

自分の息子達も愛せなかった。

だが、そんな父親として失格な俺でも未来位は護りたい。

 

「おい!お前、ヴェルの」

 

「……明日話す」

 

俺は剣士の言葉すら無視し、屋敷へと帰った。

 

翌日だ、村長だけでなく親父、お袋、弟のヘルマンもいる。

 

「兄貴が命令なんて珍しいな、親父の腰巾着でもしてると思ってたのに」

 

「そう、思わせていた。無能だと、何もできない、何も成せない存在だとな。クズどもと徒党を組み、従いたくもない親父の腰巾着となり、たった一つの願い。この領地の消滅を目指していた」

 

あたりの目の色が変わる、当たり前だろう。

領地の消滅という、理由のわからない話を切り出したのだから。

 

「ヴェンデリンは功績を出し、男爵となった。判るか、ヘルマン。エーリッヒとヴェンデリンならうまくやる。むしろ、これだ」

 

俺はギルドナイトセーバーでヴェンデリンの肉体を斬りつけた。

 

「クルト!血迷ったか!」

 

「兄貴!」

 

襲い掛かるヘルマンを蹴り飛ばし、ヴェンデリンに回復魔法をかける婚約者を見る。

 

「……俺はこれでお尋ね者だ。そして、俺はまだバウマイスター騎士爵領を制式に受け継いでいない。また、この国の法には親の罪は子の罪では無いらしい」

 

「エリーゼ、もう大丈夫。軽く斬りつけただけみたいだ」

 

ヴェンデリンが立ち上がり、俺を睨む。

 

「…アマーリエ義理姉さんを悲しませますよ」

 

「妻も、子も、愛せなかった。だが、せめてこの国の、子供たちの未来は守る」

 

「………クルト、どういう」

 

「…クルト・フォン・ベンノ・バウマイスター。

仮初めだ、俺はハンター。モンスターハンター」

 

煙玉を使い、その場から逃れた。

 

「………死は生への道標である」

 

キャンプに飛び、装備を整える。

奴を殺すなら貫通ヘビィだ、覚醒貫通ヘビィとドラゴン一式。

 

「………一狩り行こうぜ…か」

 

言ってみたかったな

 

 

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