私の名前は   作:影後

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大地揺るがす巨龍の唄

それは魔の森深層、いつ出来たのか。

いつの間にか完成していたのかも判別できない空間だった。

少なくとも半径1km以上もある巨大な空間。その入り口にキャンプを設置し、貫通ヘビィ(赤龍)を構える。

重ね着はカガチ、何処かの軍人のようで格好が良い。

 

「…クエスト報酬は無し、それどころかお尋ね者だ。だが、まぁどうでも良い事だな」

 

ヘビィを構え、その空間へと歩いていく。

地下のはずだ。しかし内部は光り輝き何処か神秘的な、それこそかのゼノ・ジーヴァがいた結晶洞の最奥を思わせる。

 

「……アン・イシュワルダ」

 

唄を歌い続ける最後の龍がそこにいた。結晶で固まった外殻に身を包み、数多に乱反射する光は思わず引き込まれそうになる。

名付けるなら結晶龍アン・イシュワルダ亜種。魔の森に存在する魔素と地脈エネルギーを吸収し進化したのだろうか。

記憶にある攻撃と同じと考えないほうが良いだろう。

 

「さぁ、狩りの時間だ」

 

レベル1通常弾を装填し、アン・イシュワルダ亜種に射撃をする。アン・イシュワルダ亜種は俺に気が付いたのか地を潜りながら迫ってきた。

 

「ディアかお前は!」

 

背中の翼?の器官を角に見立て地面から飛び出してきた。

原種の方は結構わかりやすい奴だったが、此奴はトリッキーかつパワーファイターのようだ。

 

「はぁ!」

 

頭にクラッチし、傷をつける。しかし、1回では傷がつかない。

 

「嘘だろ、2回族?いや、まじかよ」

 

恐らく、進化しより強くなったためにクラッチの回数も上がったのだと理解する。嫌な相手だ。頼むから外殻を脱いだら変わってくれ。

 

「なら、もう一度」

 

その時、あり得んばかりの咆哮が当たりに響いた。

不動の装衣を着ていれば耐えられたのだろうが、耳を塞いでしまった。

 

「なん」

 

尻尾だ。回転する尻尾に身体が吹き飛ばされる。岩石が纏わりついたその一撃はディアボロスの物とは比較にならない程だった。

吹き飛ばされ、大勢を立て直す間もなく地面から砂が槍のように湧き上がる。冗談じゃない、流石の古龍だ。このアン・イシュワルダ亜種にはこのフィールド全てが武器なんだ。

あまりにも強い、並のハンターなら死ぬだろう。

俺も、主人公にはなれない。この世界ではそこら辺にいるハンターだ。だが、そんな事は関係ない。今ここで、目の前に立つ彼奴を狩る。それ以外にすることは無い。

 

レベル3貫通弾を装填し、アン・イシュワルダ亜種に向けて撃ちまくる。シールドパーツも勿論ある、ガード強化もつけてきた。

 

「ぐぅ……」

 

並大抵の技なら防ぎきる事も出来るはずだ。

回復カスタムも付いている、貫通弾を撃つたびに回復するのは良い。だが正直、間に合うかは判らない。

 

「そんな…もう形態変化?!」

 

アン・イシュワルダ亜種の形態が変わる。見慣れた仏の様なものではない。まるで、不動明王の様に赤く怒りに満ちた顔がそこにある。

 

「なっ…タメ無しで?!」

 

空気砲をタメ無しどころか予備動作無しで撃たれる。

ゲームだったらクソゲーだ、でも現実はもっとたちが悪い。

初見のモンスターと戦う、ソレが何れ程危険なのか今身をもって知った。あぁ、だからこそ血が滾る。

 

「…骨の髄までハンターか………どうやら俺には天職らしい」

 

再び貫通弾を連射する。

血が出るが、それ以上に目の前のモンスターに対してとてつもない高揚感を得ている。

今、俺はこの人生で一番『生』を実感している。

 

「しっ!」

 

ガギン!と重い音と共にシールドにぶつかる空気砲。

吹き飛ばされないのは奇跡かそれとも。

 

「弾切れ!?調ご」

 

調合している余裕は無い、回避し奴の連撃をどれだけ避けられるかにかかっている。

 

「散弾装填!」

 

レベル3散弾。至近距離戦になるが、動きの速いコイツがどう出てくるか。散弾ヘビィカスタムではない。

コレがネギなら簡単に殺せたと言うのに。

 

「ごぶ?!」

 

死角からの空気砲、三人称視点なら避けられたがこれはリアルだ。死角からの攻撃など判るはずがない。

 

「傷が?!」

 

傷つけを再びしなければいけない。戦っていて判る。

コイツは弾肉質が異様に硬い。ネコタクが来てくれるかわからない以上、容易に乙れないどころかリアルだ。普通に死ぬ。

せめて、モドリ玉を用意しておくべきだったか。

 

「お前……先輩のアカムトルム見習えよ」

 

装填した瞬間、事前行動無しに大ブレスが俺を襲った。肉体がバラバラになるかもと思えるほどの衝撃、空中を跳ぶこの身体。

 

「あ……くそ………」

 

血が溢れている。骨も折れているのか動けない。

高所から落ちようと、砕けなかったこの身体。しかし、目の前のアンイシュワルダ亜種の一撃で身体はズタボロだ。

 

「兄さん!」

 

「よせぇぇぇぇぇ!!!!」

 

弟が、護りたいと思っている存在が姿を見せる。

動けない、骨は砕けている。だが、立ち上がる。

肉を裂き、骨が露わになろうとするが関係ない。

 

「ヴェル!!!」

 

「なっ!」

 

「俺の家族に…手を出すなぁぁぁぁ!!!!」

 

照準器を覗き、アンイシュワルダ亜種を見る。

 

「とでも思ったか!」

 

スリンガーに装填されているのは閃光弾、アンイシュワルダ亜種の眼前で眩い光を起こす。効果あるかなんて関係ない。

此処に、ハンターがいて、狩るべきモンスターが目の前にいる。

 

「狙い撃つぜ!」

 

アンイシュワルダの左目に徹甲弾が撃ち込まれ爆発した。

 

「良し!モドリ玉!」

 

ヴェルを抱きしめると近くのキャンプにファストトラベルをした。

 

「馬鹿なのか!死ぬかもしれん所で」

 

「馬鹿なのはクルト兄さんでしょう!一人で」

 

「はぁ………くそ」

 

俺はキャンプに寝転び少し休む。これはクエストじゃない、依頼ですらない。

 

「よし、全回復!」

 

「……寝れば治るの?」

 

「当たり前だろ、寝ればどんな状態異常やダメージも回復するだろ」

 

ヴェルが頭を抱えているが関係ない。久し振りにバージルとして太刀を使う。

 

「天上天下無双刀」

 

「ヴェル、なんでこの太刀の名前を知っているか知らないが……まぁ、兎に角休んでろ」

 

この世界に来てから全力で覚えた。、覚えなければ死ぬからだ。

 

「ふっ!」

 

これはゲームじゃない!だから、太刀を構えながら走る事もできる。

 

「見様見真似の……見切りギリィ!!!」

 

アン・イシュワルダ亜種の攻撃に合わせて、奇跡的に見切り斬りが成功した。そこから兜割りに繋げると、奴はダウンする。

 

「頼むから……死んでくれぇぇぇぇ!!!」

 

その時だ。まるで見越していたかのように頭の中に嫌なBGMが

流れ始めた。

 

「嘘だろ…この感覚……なんで?!」

 

モンスターを狩っている時、いつしか集中し始めるとそのモンスターのBGMが脳内再生されるようになっていった。

そして、今聞こえているのはあの曲。

ワールド、アイスボーンで嫌というほど聞き只管に面倒くさいアイツの曲。

 

『飛来せし気高き非道』

 

叫び声の様な鳴き声をあげながらソイツは姿を見せる。

通った後は爆撃機に襲撃された様に焼け野原となり、獲物を確実に殺すことに努めた生態のモンスター。

『爆鱗竜バゼルギウス』

の特殊個体。

豊富なエネルギーと餌がある地点に生まれるという余計に面倒くさい、マスターランクのモンスター。

『紅蓮滾るバゼルギウス』

 

「縄張り争危な?!」

 

ソレはまさに大自然からの怒りだろう。

己の為に全てを書き換えんとするアンイシュワルダと、今現在の豊富な栄養から生まれた紅蓮滾るバゼルギウス。

バゼルギウスは常に上空からの攻撃、そして飛び掛りに努め

アンイシュワルダ亜種に対して反撃を許さない。

たが、俺はソレを良しとしない。

 

「アンイシュワルダを殺るのは……この俺だぁぁぁ!!!!」

 

アンイシュワルダの脳天に向かって走り、飛び上がる。

アンイシュワルダの頭すら足場とし、此奴の頭に太刀を振り下ろした。

 

「ギャァァァ……」

 

激しい悲鳴、そして憎しみの目を向けながらアンイシュワルダ亜種は倒れる。そして、その肉体へ爆鱗を余す所なく撃ち落とし、

紅蓮滾るバゼルギウスは頭を抉り取ると消えていった

 

「……大自然って奴は………まったく」

 

私の役目は終わった。なら、やることは一つ。

 

「バウマイスター伯爵。降参する」

 

「……わかった、バウマイスター伯爵家の名において

他の家族には手出しさせない」

 

 

 

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