私の名前は   作:影後

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白亜の海竜

「……何か弁明は?」

 

「無い、私の目的はバウマイスター騎士爵領の発展。

コレは全て私が行い、実行した暗殺計画である」

 

「……ぬぐっ…せめて食事もだけでも」

 

「諄い」

 

牢に繋がれた罪人、クルトは誰からの施しも受けず、

ただ冷たい石畳の上に座している。

弟の殺人未遂、しかも相手は伯爵家である。

 

「……クルト兄さん、僕は」

 

「衛兵、独房で私語は禁止されているはずだ」

 

「なぁ、兄貴。その」

 

「黙れ、独房で私語は禁止されている。

エーリッヒ殿を連れ出せ、全責任。

そして!すべての罪は私に帰するものである」

 

普段の無能ではなく、一人の漢としての教示。

日も当たらない牢獄で1週間、

ほぼ飲まず食わずでクルトは過ごした。

 

「………クルト兄さん、アマーリエ義理姉さんが」

 

「お父さん?」「パパ?」

 

「……私はお前達の父親でも無ければ、お前の夫でもない。

私は卑しい犯罪者、お前達もこんな男の事は忘れ」

 

「……貴方が私を愛していないのは知っているわ。

でも!子供達にもその態度で」

 

「され」

 

「兄さ」

 

「去れ!」

 

無精髭を生やし、

頰は何も食して居ないため痩せこけ始めている。

まるで自殺だ。

時に食事に手を伸ばそうとし常にそれを檻の外へと押し出す。

自分の手では届かない位置へ出しつつ、

汚れないように心がけている。

 

「ねぇ、ヴェル。

お兄さんって、エーリッヒさんの結婚式の時から」

 

「まぁ……弟思いの人だよ。自分に政は判らない。

そう言いながら、夜中必死に本とか読んで勉強してた。

もっと言えば、ハンターとして何回も死にかけてたらしいよ」

 

「……でも、ヴェルを斬りつけた理由は」

 

「……知ってるよ。古龍、エンシェントドラゴン」

 

「それって伯爵様がその……」

 

「ブランタークさん、違います。

ハンターの言う、古龍とは

自然の具現化と言っても過言でない存在です。

クルト兄さんは俺を斬った後、

直ぐ様古龍を単身討伐に向かいました」

 

「まじかよ……ハンター、やっぱイカれてるわ」

 

「大地を振動させ、自由に地面を溶かして進む古龍。

あの日起きた地震もその古龍が原因でした」

 

「まてよ……倒したのか?」

 

「はい、兄さんが」

 

「……それって、英雄だけどよ。伯爵様を斬りつける理由には」

 

「状況が変わったとか言ってましたし、

本当に不味かったのでは?正直、クルト兄さんがそんな馬鹿を

するつもりはないと思いましたし、監視されてるって話も」

 

「だとしてもよ、このまま行けば死罪は確実だ。

伯爵様は殺したくないだろ?」

 

「……それは……でも、本人が」

 

「せめて、監視者がわかればなぁ……」

 

その時だ、ヴェンデリン達に悲鳴が聞こえてくる。

 

「海竜だ!海竜が……攻めて」

 

白色の雷光が全てを消し炭にし、数多の死者が出る。

 

「彼奴………あの時のラギアクルス?!」

 

「知ってるのか!」

 

「クルト兄さんが撃退した個体です!傷もあの時の…」

 

ラギアクルス亜種は何かを探すように放電し、

多数の死者を出す。

ヴェンデリン達が応戦するも、魔法使い以外は危険であり、

さらに言えば魔法使いの攻撃も効いているように見えない。

 

「彼奴を牢から出せ!」

 

「そんな……でも」

 

「俺達は足止めが手一杯だ!本職に任せろ!!」

 

バウマイスター騎士爵領の地下牢でクルトは

弟の部下から話をきいた。

コレは緊急クエストだ、やるしかない。

直ぐ様屋敷の自室に行き、ドラゴン一式と輝剣リオレウスを

装備する。そして、こんがり肉を一気に食べ、秘薬を飲んだ。

 

「うそ……ガリガリだったのに」 

 

「今度こそ仕留めるぞ、ラギア」

 

指笛を鳴らすとジャグラスが姿を見せる。

 

「旦那さん!」

 

「いくぞ……チョビ!」

 

「なにそれ!?」

 

「猫だ、見たこと無いのか?!」

 

ジャグラスの背にチョビと共にのり、

ラギアクルス亜種の待つ場所に向かう。

近くに川も無ければ、比較的に内陸に近い所。

奴は恐らく、此方を探しに来たのだろう。

それこそ、復讐のために。

 

「なっ…なんだその禍々しい装備は!」

 

「なめるなよ、俺はハンターだ。お前らはとっとと失せろ!

このクエストは俺専用だ!」

 

それは身体能力に物を言わせる泥臭い戦い。

大剣を構えたハンターがラギアクルス亜種に立ち塞がる。

誰もが耳を塞ぐほどの大咆哮。しかし、ハンターは

耳栓レベル5をつけているため、無効化する。

 

「ふ!」

 

1段目が振られる、

「ふっ…」

 

二段目に入る。そして三段目と行こうとした瞬間にラギアクルス亜種の尻尾が襲ってくる。

しかし、それを大剣のタックルで無効化し真溜めに入る。

 

「シャア!」

 

ラギアクルスの胸元に真溜めが一気に入り高いダメージが出る。

しかし、その時にラギアクルス亜種が咆哮と共に放電を行い、

ハンターはその放電にやられ吹き飛ばされる。

 

「……嘘だろ、あんなの食らったら人間なんて」

 

「……見ろ、アレがハンターだ」

 

しかし、ハンターは起き上がるとラギアクルス亜種に向って走り出す。今度は同じミスはしないと、不動の装衣を着用し、

ラギアクルスの攻撃での吹き飛ばしを無効化する。

 

「ハァ!!!」

 

ラギアクルス亜種の身体に傷が付く。

大剣は1回族であり、簡単に傷付けが可能なのだ。

弱点特効も入っている、正直カジュアル民であった為、

肉質とかすっかり忘れている。

しかし、関係ない。弱点特効、見切り、超会心、挑戦者で

会心100%にしていれば問題ない。

火事場?んなのできるわけない。TA勢でもなければ、

プロハンでもないのだ。

ハンターは堅実に戦い、勝利する。

回復役グレートを飲み、回復。

そのまま、抜刀からのタックル真溜め斬り。

 

「あっ…」

 

だが、大剣を振り回そうとした瞬間。

頭上から雷撃が降ってきた。属性耐性積んだか?

という疑問が出てくる。

 

「がぁぁぁぁぁ………」

 

麻痺し、動けない。

 

「あっ…終わった」

 

「旦那さん!!」

 

だが、ハンターには最高のオトモアイルーが居るのだ。

ミツムシど根性、大回復ミツムシのエキスを身体中に浴び、

オトモアイルーへグッドマークを送る。

そのまま秘薬を飲み込み、再びラギアクルスに対峙する。

 

「……」

 

ラギアクルスの大放電で当たりが焼け野原に変わるが、

ハンターにとってそれは日常茶飯事だ。

身体が感電するのも、焼かれるのも、麻痺するのも、

毒になるのも、滑るのも、何もかもが日常だ。

 

「ふ…ふっ…ハァ!」

 

1段目の貯めがラギアクルスの尻尾に入ると、

空中を飛びながら地面に突き刺さる。

 

「まだだ」

 

閃光弾をスリンガーに装填し、直ぐ様ラギアクルスの顔面に

命中する様に光らせる。

 

「しゃぁ!」

 

そのままラギアクルス亜種の背電殻にリオレウスを振り降ろす。

空の王者と大海の覇者、互いが互いにライバルであり、

属性としても最高の相性だ。

 

「あの時は足手まといがいたし!

邪魔されたし!弓だったし!今の俺は本気だぁぁぁぁ!!!!」

 

背電殻が破壊され、ラギアクルスが転倒する。

 

「そのまま待ってろ!ラギア!!」

 

「ニャァ!」

 

チョビが回復ミツムシを届けてくれる。

傷が治り、完全な状態でラギアクルスの胴体に真溜め斬りが

ぶっ刺さる。

 

「ニャァオ!」

 

「……嘘だろ、こんな弱かったか」

 

ラギアクルス亜種が雄叫びを上げながら転倒していく。

数年前のあれはなんだったのか。

転生した肉体に慣れていなかった?

それとも所謂撃退クエストで絶対に狩猟不可能だったのか?

それか、数日前に殺し合った存在に無意識に比べて

しまったのか。

とにかく、呆気ない。剥取はリアルに行われる。

ゲームとは違う。

そう、ゲームとは違う筈なのにこの呆気ないという

気持ちはなんだ。

俺の知るラギアクルスは大海の覇者であり、

ラギアクルス亜種ともなればもっと強い筈なのだ。

 

「……巫山戯るな………巫山戯るな!!

俺が求めているのはお前との命を削る狩りだ!

立ち上がれ!その程度か!俺は強くなって、お前は弱い!

巫山戯るな!お前は大海の覇者だ!お前はその程度なのか!」

 

周りの人間がビビり、後退り中でピクっと何かが

動いている。それは瞼だ。

ピクピクと動き出し、何かを待っている。

 

「そうだ……お前は俺に敗北を刻んだモンスターだ!

その程度で死ぬな!その程度で、俺をかたすな!」

 

「旦那さん、何するにゃ!?」

 

それは〘いにしえの秘薬〙秘薬よりも優れたソレを、

何を血迷ったかクルトはラギアクルス亜種の口に突っ込み、

回復薬グレートを流し込む。

 

「?!」

 

「ははっ……目覚めやがった!最高だ!」

 

ラギアクルス亜種の口から腕を引き抜き、

再びクルトはラギアクルス亜種を睨見つける。

 

「………そうだ、俺の勝ちだ。

ここは俺の縄張りだ。お前から取り戻した。

だから今度は俺からお前の縄張りを奪いに行く」

 

ラギアクルス亜種が帯電し始める。

だが、クルトは笑っているのみだ。

 

「逃がしてやる、次はお前のフィールドだ。

あの海で、お前を狩る」

 

ラギアクルス亜種は大放電を最後に放つと、

海原へと消えていく。

 

「旦那さん!何してるにゃ?!」

 

「奴は希少種になる、俺はソレを狩る。

彼奴は慢心していただけだ。きっと強くなる。

強くなって俺の挑戦を受けてくれる。

最高だな、ラギアクルス」

 

 

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