おしゃべりしよう   作:渋音符

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作者が個人的に好きなオペレーターをのんびり出すつもりです。


メランサと 1

 

 ロドスの仕事は多岐に渡る。感染者の保護や治療はもちろんの事だし、過度な差別が見受けられる場合には介入をすることもある。現地民や政府との交渉も行う必要があり、大抵の場合は微妙な立場に置かれる。

 ただ、それはドクターやケルシー先生、アーミヤさんを始めとするお偉いさん達が担う仕事で、俺みたいな下っ端が気にする必要はない。

 今日だって、俺に任されたのは極めて一般的な仕事と言える。ただ、それはあくまでも、曲がりなりにもロドスの前衛オペレーターに位置している俺にとっては一般的であるだけだ。多くの事務員や一般人にとっては確実に脅威になり得るし、だからこそ、慢心する訳にはいかない。

 

「ここで目撃情報があった、という話でしたよね?トゥオーノさん」

「ああ、そのはずだ」

 

 龍門スラム街。その中でももう人が住んでいない、朽ちた建物の残骸が残る寂れたエリアに、俺ともう一人のオペレーターはやって来ていた。

 周囲に気を配りながらもこちらを窺うのは、紫の色味を帯びた艶やかな黒髪を持つ猫人(フェリーン)の少女、メランサだ。まだあどけなさが残るが、立場としては俺よりも多くの責任を負っている行動予備隊A4のリーダーでもある。

 普段なら彼女は自身の部下(というよりは友人と言った方が正しい)を連れて任務に着くことが多いのだが、今回は俺とコンビを組んでいる。その理由は単純なもので、今回の任務の難易度は彼女たちが普段行っているものよりいくらか低いと予測されているからだ。

 

「それにしても、感染生物が見かけられたなんて……。どこから侵入したんでしょう」

「さあな。レユニオン達の置き土産かも知れないし、自然発生かもしれない。どちらにせよ、俺達は任されたことをやるだけだ」

「規模と原因の調査、現地で対処可能な場合は対処、手に負えないなら救援を求める。……ですよね」

「ああ、上出来だ」

 

 事前の打ち合わせの内容をきちんと理解しているのは、流石メランサといったところか。

 今回の任務は、スラムで見かけられたらしい感染生物の調査だ。奴らは戦闘員にとっては取るに足りない相手だが、非戦闘員にとってはそうもいかない。それも、スラムで暮らしているような非力な感染者にとっては十分な脅威だ。

 ただ、先程も述べた通り、俺やメランサの手にかかれば、感染生物は取るに足りないだろう。規模が大きくても十分に対処できる。しかし、基本的には低知能とされる奴らは、専門の源石術(オリジニウムアーツ)があれば操ることができる。そしてそれはレユニオンの手口でもある。

 つまり、俺達がやるべき仕事は実質、レユニオンが関連しているかを調べるということだ。もし、レユニオンが関わっているのであれば、龍門政府と連携して作戦を執り行う必要がある。そのための偵察として俺達が選ばれた。

 メランサはフェリーンとしての敏捷性と単独での戦闘力を買われて。俺は普段から単独ないしは少人数での偵察を行っているから、メランサの補佐として選ばれたんだろう。

 

「えっと、トゥオーノさん」

「ん、どうした?」

「いえ、あの、接敵した時なんですが……」

 

 少し言い淀む。視線をこちらに向け、それから俺が腰に提げた得物を見て、また俺の顔を見る。

 そういえば、メランサとはお互いに面識はあるが、実際に組んで戦ったことはなかった。

 

「……仕事の打ち合わせはしたが、戦闘時の連携についてはまだ擦り合わせてなかったな」

「はい。なので、どう動けば良いかを聞きたくて。すみません。最初に確認しておくべきでしたよね……」

 

 ぺたん、と耳を伏せながら少し(うつむ)く。その姿には流石に罪悪感を覚え、口を開く。

 

「いや、言わなかった俺も悪い。誰かと組むのは久々でな。今更だが、少し擦り合わせておこう」

「……はい!」

 

 気持ちを切り替えたのか、今度は耳がぴんと立つ。素直な子だ。少々分かりやすいきらいがあるが、それもまた彼女の魅力なんだろう。

 

「トゥオーノさんは、確か前衛オペレーターですよね?」

「ああ。普段は偵察やら調査やらを担当してるが、単独でそこそこ戦えるからそっちに回されてるって感じだ。元々はレユニオンの制圧を担ってた」

「なるほど。なら、別行動の方がやりやすいですか?」

「いや。別に独奏主義(ソリスト)って訳でもない。それに、たった二人しかいないのに、ばらばらで動いても仕方ないだろう。メランサのそれは、刀だよな。極東系の流派か?」

「はい。少しアレンジしてますが。トゥオーノさんの得物も、刀、ですか?」

「いや、寄せて造ってはあるが、一応は片刃の剣だ」

「そうだったんですね」

 

 少しずつお互いの動きを話し合いながら、擦り合わせていく。メランサの活躍はドクターやドーベルマンを通してある程度は知っていたが、予想通り、機動力を活かした剣士のようだ。その代わり正面からの斬り合いが苦手らしいが、そこは俺が担当するべき場面だろう。

 

「接敵時は私が先行して、トゥオーノさんは私が捌き切れなかった敵や、奇襲などへの対応をお願いします」

「分かった。無茶せず、慎重に行こう。レユニオンとの遭遇時の対応や、撤退に関してはメランサに任せるが、こっちでも引き際は見極めておく」

「助かります。……少し時間を使っちゃいました。すみません」

「いいよ。こういうのはちゃんと時間を使うべきだ。感染生物が相手とはいえ、油断したら痛い目を見るからな」

「そうですね。気をつけて、調査を続けましょう」

 

 そう言うメランサには油断は見受けられない。やはり、予備隊のリーダーを任されるに相応しい人物だと、改めて思った。

 





トゥオーノ 能力測定
【物理強度】優秀
【戦場機動】標準
【生理的耐性】標準
【戦術立案】普通
【戦闘技術】優秀
【アーツ適性】卓越
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