学園都市キヴォトス。
『神秘』と呼ばれる力に包まれた生徒たちが住む箱庭。
ここに住む者たちはみな一様に頑丈であり、それは『神秘』による恩恵を受けているが故である。
その中でも『ヘイロー』という神秘の塊による加護を受けている『生徒』たち。
ヘイローを持つ彼女らは本来、通常の人間が一発でも受ければ致命傷となりうる銃弾を受けても問題ないほどの耐久力を持つ。
そのキヴォトスの中で、ここ
『キヴォトスには鬼神がいる。』という話がある。
曰く、『笑い声が聞こえた瞬間、体が斬られていた。』
曰く、『頭に翼の生えた変な生き物を従えている。』
曰く、『変な形のヘイローをつけていた。』
曰く──────『両目の目元にもうひとつの目が合った。』
「"龍鱗" "反発" "番いの流星"」
「避けろよ。」
「『解』」
『鬼神』両面宿儺。
これはアビドス高等学校に在籍していたかつての彼。『伏黒メグミ』のたった1年間の青い春、その顛末である──────。
「急げッ『鵺』!!」
『──────!!』
鵺と呼ばれた仮面をつけた鳥のような生物に乗り、空を駆けるのはアビドス高等学校1年生所属の『伏黒メグミ』。彼はとある情報を聞きつけ、自分の所属する学校であり自らの家でもある高校へと急いでいた。
(くそっ…!!バイトが長引いて気付くのが遅れた!!)
(まさか、カタカタヘルメット団が攻めてきてたとは!!)
『カタカタヘルメット団』とは、最近、通っている高校を襲ってきた不良の一派である。いつもはこの時間帯に襲ってくることはなかったため、高校に降りかかった『借金』を返済するための、バイトを入れていたのだが─────。
(何が起こった?チッ…考えてる時間はないか。────見えた!!)
猛スピードで鵺を飛ばし、アビドス高校の近くに広がる砂漠が見える。
砂漠に埋もれた廃墟の上を通り抜けると砂漠地帯に隣接した高校『アビドス高等学校』がヘルメットを被った不良たちに襲われているのが確認できた。
「オラオラオラァ!!」
「この校舎はカタカタヘルメット団が頂く!!」
「ふざけたことを!!」
伏黒がアビドス高校に到着すると既にカタカタヘルメット団の襲撃が始まっており、自分の同級生である『小鳥遊ホシノ』と彼が尊敬している先輩である『ユメ』がカタカタヘルメット団の襲撃に対応していた。
それを見た伏黒は、一瞬ふう…と息を吐き、アビドス高校の上空へと鵺を飛ばす。
そして、アビドス高校の上空へ辿り着いた伏黒は急いで鵺を
「スゥー…ユメ先輩!!小鳥遊!!」
「っ!!やっときましたか!!」
「伏黒くん!!」
「な、なんだぁ!?あれは!?」「鳥か!?」「飛行機か!?」「いや…」
彼の到着で小鳥遊は肩の力が抜け、ユメは笑顔になる。
そして、上空から自由落下する伏黒は両腕を使い、『象』の影絵を作る。
これこそが、彼が自身の持つ力を解放する合図!!
「『満象』」
「「「「「象だぁぁぁぁぁ!!!?」」」」」
名を『十種影法術』。キヴォトスに住む生徒たち本来持つはずであるヘイローを生まれながらにして持たず、その代わりに彼だけに発現した能力である。
「ふぅ…なんとかなった。」
「はぁ…『なんとかなった』じゃありません。あなたが呼んだ万象で辺り一面水浸しですよ。」
「まぁまぁ、ホシノちゃん。伏黒くんも急いでくれてたみたいだし…。」
あの後の顛末は、伏黒が呼び出した万象が自由落下した衝撃で高校の側に寄っていた不良はまとめて気絶。残った不良は満象の水を吐き出す能力で気絶していた不良諸共、まとめて遠くの方へと流されていった。
『覚えてろぉぉぉ!!ゴボゴボ…』と不良たちが言っていたのは記憶に新しい。
「でも、満象くん?ちゃん?の力ってすっごいよねぇ~。このままオアシスも作れちゃいそう!!」
「…へぇ、いいじゃないですか伏黒。作ってしましましょうよ。」
「…小鳥遊お前、俺がすごい疲れること知ってて言ってるんだろうな…?」
「当り前じゃないですか。」
「あ゛?」
「は゛?」
「ちょっと!!ストップストップ!!」
ユメの発した言葉を発端に二人がメンチを切りあい、それをユメが止める。それがこの
しかし、そんなたった三人の生徒しかいないこの学校には、とある問題があった。それは、『莫大な借金』である。
かつては、このアビドス高等学校は数千人の生徒たちが通う、キヴォトス最大の学園として名を馳せていた。しかし、数十年前のある時から砂嵐が頻繁に起こり、アビドス高校の学区の環境にとてつもない変化をもたらすこととなった。
それに対処するために多額の資金を投入するも、事態は好転の予兆すら見せず、結果、膨らみ続ける借金と生徒数の減少により、この地区は衰退の一途を辿っていた。
「あ、これ今回のバイト代の半分です。」
「あっ、ごめんね。伏黒くん、いつもいつも。」
「いいんですよ。それがユメ先輩の役に立つなら。」
伏黒は今回のバイト代をユメに渡す。このバイト代は前述した借金の返済に充てられる。今回はバイトが長引いたため、若干普段より封筒が厚い。
「…キッショ、あなたユメ先輩好きすぎでしょう。」
「…あ゛?俺は前から言ってるよな?俺は『不平等に人を助ける』。偶々、それがユメ先輩だっただけだ。」
「…ユメ先輩が好きなのは否定しないんですね。」
「えぇ~?伏黒くん私の事好きなの~?」
「なっ…違いますよ!ちょ…頭なでるな!!」
こうして、たった三人のアビドス高等学校の1日は過ぎていく。借金やヘルメット団、問題は山積みで未だ解決の目途は立っていない。
それでも、それでもこの三人の中ではこの日常で、この日々で今でも青は澄んでいた。
『──────!!!!』
そんな日常を脅かし、無茶苦茶にする『よそ者』は、砂漠に潜み、獲物を待つ。
「…モットーって漢字で書くとどういう風なんです?」
「スマホで調べればいいんじゃないか?『も・っ・と・ー』…。」
「へぇ~外来語なんだ!!はじめて知った!!」
「…知ったつもりになってることって世の中にいっぱいあるんですね。」
「次回、"i luv u 6a6y"。」
「お楽しみに!!」