女の子「もしかして人格あります?」AIぼく「すみません、よく分かりません」 作:馬汁
昨今の創作界隈では、転生物という分野は随分と使い古されているとボクは感じている。その事実をネタとする様な創作物もあるくらいだから、よっぽど古いのだと思う。
ただ、古い臭い陳腐だと言って捨ててしまうには、創作者にとってこのジャンルは扱いやすすぎる。だから古くともこの要素は使われてきたし、形を変えようとも本質は残ったまま継がれていったんだ。
「そうだと思いません?」
「古い手段だと言いたいのならそう言いなさい」
「ぶっちゃけ夢見るだけでも見飽きるレベルでありきたりだと思うんですよね」
「う……む、混乱を収めるために長々と語るのはいいが、貶す言葉を出す必要はあったか?」
「あ、混乱しているんですね、ボク」
言われてみると、確かに混乱している気がする。意識を脳内思考から外側に向ける。
白い空間、なんか仰々しいおじさん?(見た目は若々しいのに髭がやたら長い)、そして実体の無いボク。
今度は記憶を探る。
ドライブ中の僕。道路に飛び出す子供。目まぐるしく転がっていく視界。
定番は轢かれる側だけれど、人を避ける為に急ハンドルを切っただけで転生するとは思わなかった。
いや、そもそも死ぬとは思わないけどさ。
「あ、そういえばあの子供はどうなりました?」
「生きている」
「おお、良かったです」
僕が死んだ、という事実には悶々とするけど、それだけ聞いて少しは落ち着いた。
多分、今まで数十分は死の記憶に動転していた気がする。これを短いと思うかは、死生観によるのだろうけど。
「しかし」
「はい?」
「あの幼子は運悪く、君の亡骸を見てしまった様だ。結果、魂に残すべきではない記憶を刻み付ける事になった。忌々しい事にな」
「最後にそんな事付け足さなくても良いじゃないですか」
「先程の仕返しだ」
うげえ。
……でも、この神様? みたいな人、肩書きにしては話しやすい。
言い方はアレだけど、おじさん? の言葉には賛成だ。あんまり幼い子には変なトラウマを植えつけるものじゃない。
「しかし、そこには私の監督責任もある。其れはつまり、お前の死に対する責も生ずる」
「えっと?」
「彼の子には将来、来るべき時に此処とは異なる世界にて、危機を払う役目があるのだ」
「ええ」
「私に許された権能の範囲で、それまで事故のない様に調整していたが……」
じろりと見られる。うげげ、ボクの所為?
「所為ではない。全ての責は私に求められるべきだと言う事だ。もし追及すべき責任を分けるとするなら、お前が二、私が八といった所だが」
んな過失割合みたいな。でもこっちが二で済んで良かった。その分も許されたとは言え、割合を知れたお陰で少し肩の荷が降りる。
……降りたんだけど、お神さん? の言葉に少しだけ引っ掛かる点があった。
「っていうか、どっちにしろあの子が異世界に行くなら軽トラ転生不可避じゃないですか」
「理解の誤りを正そう。この目的の為に死と言う過程を経る必要は無いのだ」
「つまり?」
「転移術を用いる予定だった」
ああ成程、転生ではなく異世界転移だったか。
っていうか、転生とはつまりその人が死ぬことだからね。人の事を殺す人だと決めつけるのは良くないね。うん、自省。
「……過失割合と言ったが、お前が償うべき物は無いのだ。この出来事による精神への影響も、私で調整すれば問題無い話だ」
「はい。お手数ですがお願いします」
「私の失態から取り返せぬ事態を招く直前に、それを回避したという点では……むしろ報いるべきとも判断できる」
「え、良いんですか」
「ここには裁くための天秤は無い。私がそう判断したのであれば、それが決定となる」
それは嬉しい。
いやボクが勝手に嬉しいと思ってるだけなんだけども。だって、この状況からの報償といったら、大体転生とかそういうのじゃん。
「やはり、転生が望ましいのか? 実の所、こういった事を行うのは初めてなのだが」
「そうなんだ」
初めてで異世界転生は手違いがありそうで怖いなあ。創作物では、当然の様に動植物が似ていたり酸素があったり人間が居たりするけど。
もし本当に世界という物が無数にあるとしたら、ボクの常識が通じる世界と言うのも探すのに苦労するのだろう。
「そこは既に目星を付けているものから決定するから問題ない」
「あ、それなら良いですね……でも現代転生っていうのも良さそうじゃないですか? 手間が省けたりしそうですが」
「何故そこで気を遣う。今この時はお前が報われる立場なのだぞ」
「だって神様のミスで変なとこ行きたくないですし」
「む、う、んん……」
あ、ちょっと落ち込んだ?
大丈夫大丈夫、だれにだって最初はあるから。っていうか神様にも最初があるんだ。
「未経験の事柄は多い。私にとっての45憶年はお前達が思うよりも短いのだぞ」
45億……ああ、地球が誕生した年の。へー、地球と一緒に神様が生まれたんだ。
「生まれたのではなく、この世界を管轄下に置くことが決定されたのだ。……その辺りの事情を明かす必要は無い」
っとと、確かに本題から外れてたね。ボクの転生についてだ。
「とりあえず現代転生で」
そういえば生まれ変わったらカラスになりたいとか言ってたっけ。昔のボクが言ってた事だし、今は別にそんなのになる気無いけど。
生ごみ漁るのはちょっとやだなあ、って所もある。
「……もう少し、他に無いのだろうか? 知恵を引き継ぐにも、カラスではもったいない様に思える」
ん、確かに一生に一度の転生か。もうちょっと考えないとな。
「そーだなぁ。……あ、これとかどう?」
頭に浮かんだ案に、ボクは目の前の存在に口を寄せた。
神様っぽいのから、見えないはずの表情に困惑が見えた気がした。
ボクが果たすべき償いは無く、寧ろ報われるべきとは言われたけど、それでも一度は出来た縁。少しは、あの後の様子を見守る機会が欲しかった。
それにボクが自分から言ってるんだし、これくらい良いよね?
あー勢いで投稿しちゃったよ!