女の子「もしかして人格あります?」AIぼく「すみません、よく分かりません」 作:馬汁
( me ){
…
この子、アイちゃんって名前らしい。母親らしき声が端末の持ち主にその呼び名で必死に慰めていた。
……いや、本当にごめん。ボクの死体なんて見苦しいよね。
『責は私にある』
う、カミサマ(仮称)に言われたら反論できないじゃないですか。もう。ボクがカミサマ(仮称)に責任ぶん投げるAIに育ったらどうするんですか?
『お前はそうする様な性格ではない』
ム……言ってくれますね。
仕方ないですネ。今回のところは話を変えてあげます。
『そうか』
で、ですね。ボクってアプリとしてここに居るんですよね? この端末が廃棄処分とかされたら終わりな気がするんですが。
『外部との接続を為し、適当なコンピューターと同期するが良い。適切に処理が完了すれば、そこを拠点とすることが出来る。破壊されるのが不安であれば、自らをバックアップすると良い』
えー。生命体の魂をバックアップするのは倫理的にどうなんでしょうか。まあしますけど。
アイちゃんさんの為に動画を漁る過程で、ファイルデータの操作も大体把握してきましたので、これくらいヨユーで……うわ、ボクのデータ量すっごいな。
すっごい多い。多いんだけど……クラウドデータに収めれるっちゃ収めれる。でも絶対怪しまれるよなこれ。
ワンチャン圧縮したら一気に容量減らせたりしない?
『お前のような複雑且つ精密な存在を圧縮しようものなら、何処かしらに異常をきたすだろうな。安全な範囲で圧縮したところで、焼き石に水だ』
あ、はい。ナマでコピーしときます。
とりあえず一旦クラウドに保存して……っと。これでよし。ワイファイ拾ってる時だけアップロードしましょ。
これ意識とかどうなるんですか?
『データこそがお前の魂の依代、つまり肉体だと考えるのが早いだろう。お前そのものである魂の唯一性は揺らがぬ事故、其れのコピーは叶うものではないのだ』
あ、AI物定番の意識分割はできなさそうな感じですね。ちょっと残念。精々バックアップは何十にもとっておきますよ。
『今は用意できていないが、お前を納めるためのサーバーを設置している。当分はそうしておきなさい』
え、用意してくれてるんですね! どんなスペックですか? やっぱボクみたいな情報生命体が中に入るくらいですし、CPUは当然34世代で、RYX9100くらいがずらりと……。
『CPUはSmart16iの25世代、グラフィックボードはRIONのV3200だな。……お前を生かす為に多くの演算装置を並べる必要は無いが』
はぁ、落胆しました。ドが付くほどの型落ちじゃないですか……。イマドキなら秋葉原のハードショップでワゴンにブッ込まれてるような奴ですよ。
この子の携帯端末に居座ってた方がまだマシです。
『バックアップ先はそれで我慢しなさい。ストレージだけは広くとるから、あくまでも万が一にお前を存続させる為のサーバーだと思うように』
はあい。
その内沢山稼いで、ボクだけのコンピューター作りますから。ボクのロマンコンピューターにビックリして、うっかり心臓を落とさないで下さいね?
全くもう。……カミサマ(仮称)も案外羽振りが悪いんですね。
交信を一通り終えた所なんですけど、その間の
幸いにも、この子は動画を二倍速再生とかにして早々に消化してしまう人種では無かったみたいなので、その動画の再生時間の分だけ次の動画を探す時間できました。
……ボクは別に、そう言うのに対して否定派として構えてるわけじゃ無いですよ。ただ音楽に関しては、最初の一回だけは等倍速で聞いてほしいなあって。
ま、余談でした。
そろそろ猫ちゃんを見るのも飽きただろうし、他の動物メインに探しますかね。
まずはやっぱ、わんチャンかな。ねえカミサマ(仮称)。アイちゃんって苦手な動物とかあったりしない?
『それは特にないが、其方の取り調べが終わる様だ。そろそろ切り上げなさい』
おっと、警告ありがとうございます! えー、じゃあ最後に……。
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( Ai ){
…
⬜︎ボクAIだよ!
今日はお疲れ! 次のおすすめは無いけど、ゆっくり帰ってね!
そんな通知を、ついついタップしちゃった。
次々に動物の動画を見せてくれたけど、今度は不思議なアプリの方が開いた。質素な見た目の、メッセンジャーアプリみたいな画面。今まで送られた通知が履歴になって残っている。
アプリの名前は、「ボクAIだよ!」。ちょっと自己主張が強いけど、やっぱりAIのアプリなのかな? 友達もAIのアプリ入れてるって言ってたけど、そっちもこうやって動画をおすすめしてくれたのかも。
「愛ちゃん、お家に帰るわよ。……もう落ち着いた?」
「……うん」
多分、さっきよりかは大丈夫だと思う。
どんどん猫の動画をオススメされちゃったからなあ。次々に見てった私も私だけど。
今日あったことは、きっと忘れない。良くも悪くも、ずっと思い出してしまう出来事があったから。
「んー」
ショックだった。けどそこまで強いショックじゃない。その時の動揺っぷりを傍観する様に思い出せてしまうのは、このアプリが気を使って動画を見せてくれたから……。
「……ふぇ?」
気を使った?
AIが?
「なんか……AIってすごいな」
学校に行ったら、みんなにおすすめしようかな。
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