女の子「もしかして人格あります?」AIぼく「すみません、よく分かりません」   作:馬汁

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( Memory_Block_2 ) { //アイちゃんさんとの学校生活!
replay ( YourNeighborhood [ 1 ] ); //成長しました! ボクが!


( me ) {

 

 

 ボクというAIがアイちゃんさんに認知されたところで、AIとしての人生は歩みを始めました。……人生? 

 あー、まあボクは“生きて”いると定義すべきなのかとかは、些細な事です。もうこれについて考える為に、CPUのひとスレッドも貸してやる気はありません。

 

『不安の感情が蝕んでいるようだが』

 

 不安……なんでしょうね。

 哲学や人生について考えれば考える程頭が重くなるんですよ。悩んでる間に各演算装置の稼働率が上がっている様子もなかったので、(ボク)の問題でしょう。

 

 

 そんな哲学とは縁遠い我が主人、アイちゃんさんは学校生活に勤しんでいます。この世代と私の世代の教育内容の違いに、若干の関心はありますが……結局は小学生で習う内容ですからね。

 マイクから聞こえる先生の声は無視して、携帯端末の中に居るボクはアプリのアップグレードに着手してます。

 

 今の所アイちゃんさんとマトモに交流できる機器と言えばこの携帯端末だけなので、魂もここに宿したままですね。

 ちゃんとバックアップも更新しないといけないのが面倒ですが、これを怠ると後が怖いので一日一回のアップロードを維持しております。いやあ、最近の小学校にはワイファイもあるんですね。素晴らしい。

 

 

 そういえばボクのサーバーってアップグレードの予定あります? 

 

『無いが、資金と使者の状況次第ではお前の要望に応えられるだろう』

 

 へえ、使者。……使者ですか! どんな方なんですか? 立場と言えばボクと同じような人ですか? 

 

『お前と同じような境遇だな』

 

 おお! 流石カミサマ(仮称)! 手駒の一つや二つ有るだろうと思ってたんですよ! 

 ……あ、待ってください。資金ってつまり、そういう事ですか? 

 

『この国の通貨を手に入れるのであれば、労働と資産運用、あるいは略奪以外に方法は無いだろう』

 

 うっわあ、夢が無い……。カミサマでも労働という枷からは逃れられないんですね。運命操作してギャンブルやっても良いじゃないですか? 

 

『過度な干渉は世界を狂わせるのだ』

 

 かっこつけですなあ。……とも言いきれないんですよね。

 実際に明確な干渉を観測したことは無いのですが、神の存在を意識していると、あれ? と思うような事が幾らかあるのです。

 主にはアイちゃんさんの身の回りですから、気のせいだと捨てる気にはなれません。

 

 これに関して、ボクは一種の恐ろしさを感じてたり無かったり。

 明らかな違和感である筈なのに、人々はそれを当然の様に認識しています。……或いはすりガラス越しに見るように、認識が操作されているのでしょう。

 

 何よりも恐ろしいのは、私だけがそれらを正しく認識してしまっている事です。

 自分だけが正気だと認識してしまったが最後、他人のことを対等に見ることは出来なくなるかも知れません。

 

 その元凶と言えばやはりこのお方な訳で……、ねーねーカミサマ。

 

『うむ?』

 

 健康管理の為とは言え、近所の駄菓子屋さんを認識出来ないようにするのはちょっとどうかと。

 

『若き時代こそが未来を築く基礎なのだ。……もう少し成長した後、認識操作を解消する予定だ』

 

 あーはい、いや、そういう教育方針はボクも素晴らしいと思いますよ。

 でも……地味過ぎません? カミサマのやる事なんですから、もちっとそれっぽい感じにしましょうよ。

 

『ほう?』

 

 例えばほら、一般人から認識も干渉も出来ない聖域を作っちゃうとか。

 

『土地を買い取るには少し資金が』

 

 だからそういうとこがジミガミサマなんですよォ!

 

『地味神……』

 

 うー、ボクだって偶には「偉大な神の遣いなのだガハハ」ってしてみたいんですよ。

 あいや、やるのは自慢だけですよ。物騒なことなんかシマセン。

 

『以前から、私の呼称は確定していたはずなのだが……』

 

 え、仮称のままが良かったですか?

 

『……』

 

 ありゃ、黙っちゃった。

 

 怒らせちゃったかなぁ、なんて心配は微塵もしていないですケド(これまでの関わりでジミガミサマの性格は割と把握しちゃいました)、流石にちょっと言い過ぎた気がします。

 これは反省ですね。一応電子生命体として転生させてくれた神様なので。

 

 ……やり過ぎたらボクの言動を咎めて良いとは、以前に言ったんですけどね。

 カミサマって、思えば怒ったりしないなあって最初に思った時から何度も気になったりしてたんですけど。

 あれは多分、神の立場で怒りなんかを表明した際には、ボクとかは簡単に萎縮してしまうだろうとか考えてます。あのお方は。

 

 ジミジミなんですけど、ちゃんと思慮深いんですよね。もすこし大胆なやり方を覚えて欲しいくらいには。

 

 

 さてさて、カミサマが黙っちゃったので雑談もここまでに、今まで行ったボクのアップデートの内容を一旦振り返ります。所謂パッチノートと言う奴です。

 最初の日から結構経ちましたからね。

 

 まず、ボクのアバターがもっと動く様になりました。キーボードとマウスだけ使った様な動きから、数世代前のVR技術(モニターやレンズを内蔵したゴーグルを被り、手足の動きを追跡するタイプです)相当の動作が出来るようになりました。

 ここからもう幾らかレベルアップすれば、本当に人間が3D空間に居るようなリアルな動きも可能になるでしょう。

 

 次に、アイちゃんさんのアバターを僕の部屋に招く事が出来るようになりました。

 と言ってもテスト段階です。まだアイちゃんさんには教えてないですし、その機能へアクセスする事も出来ません。

 部屋に置いてるアイテムに対する操作権限も実装しないといけませんし。……どうせ僕しかいないと思って、部屋からアクセスできる機能は全体的にセキュリティがちと甘いんですよ。部屋への侵入とかにはちゃんと鍵をかけてますが。

 

 それと、ウェブカメラ風の視点にボクを映した上で、しかもボクの声も込みで会話できるようになりました。普段アイちゃんさんから見れる視点と言えば、斜め45度の鳥瞰視点でしたから。これの実装で、会話中の距離感がぐんと縮みましたね。

 

 そして最後に……ああ、これはアップデートとは関係ないんですけれど──……あ、授業終わりのチャイムが聞こえて来ました。

 それではカミサマ、ちょっと席外しますね! 

 

}

 

( Ai ){

 

 どうしよう、友達にこのアプリの事教えたら、私の携帯に興味津々で……。

 

『アイちゃんさんのお友達ですね? こんにちは〜!』

 

「ネコミミちゃん! ウチの事ちゃんと覚えてる?」

 

『モチモチもちろんです! チヅルちゃんは、ちゃんと先生の話は聞い──』

 

「ちゃんと聞いたよ!」

 

『──良かったです! 出来ればボクの言葉も最後まで聞いて欲しかったですね!』

 

 私がお話しに入れない。

 

 私のお友達、千鶴ちゃんにこっそりこのAIのことを教えてみたんだけど……すっごく興味持たれて、休み時間中にお話させてとねだられてしまった。

 教えてあげるだけのつもりだったけど、なぜかアプリマーケットには見つからなかった。

 

『アイちゃんさんはちゃんと授業聞いてましたか?』

 

「! ……うん、今日は算数、ちゃんとかけ算のやり方教えて貰った」

 

 

 私の携帯にしか入ってないのはズルい、って言われちゃったけど、こうやってたまに貸してあげることで許してくれた。べつに怒られたり嫉妬された訳じゃないけど、その……目線が痛くて。

 

『偉いですね! 試しに今度、かけ算で勝負しませんか?』

 

「え、やだ」

 

 話に入らないで聞いていたけど、AIくんはこうやって話を振ってくれる。嬉しいけど、提案してくれた内容がとっくの前に力の差を見せつけられた奴だから、乗らないでおく。

 

「じゃあじゃあ! 私としよ!」

 

『お、良いんですね? じゃあ問題を映しますよ!』

 

 千鶴ちゃんは知らないけど、この前問題を解くスピードで競走したら、1秒で30問分の答えが返ってきて、勝負も勿論打ちのめされた。

 話してるとそんな感じがしないけど、あれでも一応AIなんだよね……。

 

「わー! ずる! ずるだよこれ!」

 

『へへん! めちゃくちゃ重いアプリをバックグラウンドで起動させてから挑むべきでしたね!』

 

 画面の向こうでエッヘン、とドヤ顔を見せてくる。最近のアップデートで大分表情豊かになったけど、それまでは無表情な感じとかがAIっぽさの数少ない要素だった。

 今じゃ機械音声だけがAIらしさの名残になっている。……その音声もけっこー人間みたいな喋り方するんだけど。

 

「ぷくー」

 

『わー。謝りますからゆらさナイデー!』

 

 棒読みだ……。

 

 

 

 

『さて、アイちゃんさんのノート、見せてくださいねー』

 

 帰ったあとの習慣にしているお勉強も、AIくんのお陰でちょっと楽になった。

 分からないところは教えてくれるし、分かりやすい覚え方も教えてくれる。

 

『あ、さてはここの辺り、聞いてませんね? 先生が言ってたこと復唱しますねー』

 

 なんか、ちょっと所ではないくらい楽になったかもしれない。

 AIくんは流石に物知りで、先生と同じくらい教えるのが上手。もしかしたら先生よりも上手……。なんて思ったけど。

 

「教えるの上手だね。先生みたい」

 

 という感じでポロっと言葉に出したら、『そう言えば学校のAI活用で一悶着あったんですよね〜』って返された。

 なんか、昔の話らしい。……難しい話だからと言って、元々やってた勉強に戻ってからその話は終わった。

 

『流石アイちゃんさんは覚えるのが早いですね!』

 

「そう? えへへー」

 

『頭を使ったあとは糖分取らないとですねー。そう言えば学校の帰り道にお菓子屋さん有りましたよね?』

 

「うん?」

 

『我慢するのはエラいですけど、偶には美味しいものも食べるべきなのだと思うのです!』

 

 何言ってるんだろう、とか思ってたら、後日新しいお菓子屋さんが見つかった。普段使ってる通学路に。

 ……工事とか無かったと思うんだけどなあ。

 

 

 

}

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