その兎、触れるべからず   作:猫を乗っけた青髪の女

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十話

刀が空を斬り義経は後方へと飛び退く。この距離でも当たらないとか、やはりあいつの力の秘密を知らなければ倒すことが出来ないのか。

 

「危ねぇ、もう少し反応が遅れていたらやられていたな」

「随分と余裕そうだな義経、貴様...ほんとに何者だ?」

「我は我だ。他でもないあんたと本気の戦いがしたかった怨霊だ」

「そうか、もう充分であろう?さっさと成仏せぬか」

「まさか、ここで終わるなんてとんでもない。お互い一度死んだ身、失うものなどないだろう?思う存分死合おうではないか」

 

そう言った後真っ直ぐこちらに切り込んでくる。私は瞬時に身を守るために壁を作り出しスピード落とさせようとする。あいつはそれをお構いなしに壁に激突し穴を開ける。しかしスピードは落ちることなくむしろ上がっているようにも感じた。真っ直ぐ突っ込んでくる義経を刀でガードしようとして刀同士が交わる。甲高い音を出し火花が散ったように見えた。しかしスピードがある分義経に分があり押し切られそうになり、思わず刀を逸らさせることにより私から僅かにズレ地面に突っ込む。凄まじい爆音がなり砂埃が高く舞う。流石のあいつも衝撃を抑えることは出来ないと思うがまだ油断出来ない。なんせ奴は源氏だ。あそこ血筋...というよりあの時代の人間は私含め頭がおかしいほど強い。

 

砂埃が収まり奴の姿が見える。先程まで普通の人であったが、今は背中に黒い翼が生え人とはかけ離れていた。

 

「貴様...天狗であったか、なら合点する。いくら怨霊であろうとおかしかったからな」

「ふむ、流石に解けるか。だかまぁそれも仕方ないか、それでもやることは変わることはねぇ。あんたに勝つ、ただそれだけだ」

 

また姿が消える。あいつのいた場所には勢いよく砂埃が舞い、周囲からでかい音が鳴り響く。あいつ元々身体能力高かったが天狗になったことでそれ以上の速さが出ている。私は些細な小細工は全て無駄だと判断し、全て解除し刀構え居合の態勢になる。息を吐き脱力し余分な力を抜く。そしてふとあいつが言っていた言葉が浮かぶ。

...失うものはないか...奴はそう言っていた。だけどそれは違う、私が死んだら悲しむ人がいる、ほっとけない人がいる。だからまだ死なない。

決意を胸にすると少し気分が楽になった気がする。勝負を焦らない、一度決めなくていい狙うは軌道力。

 

「....我は貴様を...いや、我は絶対に君に勝つ、義経!」

 

そう意気込むと周りから音が急になくなり空高く飛んでいた。あいつはあの一撃で決めるつもりだ。義経は星を踏み台にするかのように足を置き、狂気的な笑みを浮かべているように見えた。決めるは一瞬、外せば死ぬ。溜めに溜めた力を解放するかのようにこちらに突撃する。こちらは目で追わず後ろに引き刀を抜く。

 

「『朧月』」

 

抜刀した刀が奴に当たる、翼が当たったように見えた。しかし、

 

「...ッ!」

 

気づくと腹に刀が貫かれていた。口から鉄の味が染み、刺された刀から血がダラダラと流れ始める。

 

「我の方が上手だったな」

 

刀は腹を斬り裂き、血が吹き出す。

 

「冥土の土産に教えてやる。我の力は空気中に足場を置くことが出来る能力だ。地味な能力だが存外使い勝手が良いものだ」

 

つらつらと語り始める義経、勝ち誇ったような態度。完全に油断している。そう思ってしまい、私もまだまだだなと思いつつつい吹き出してしまう。

 

「...何がおかしい」

「いやぁ、すまん、思わず吹いてしまった。君、今勝ったって思ったよな?」

「..?何が違う」

「義経、やはり君はあの頃の義経ではないな。でなければ今頃我は首を刎ねられている...戦いは最後まで油断してはならない...」

「それはどうゆう...ッ!」

 

刀を収める動作をすると奴の翼を片方斬り落とした。遅れて攻撃が来ることを予期していなかったのか反応がワンテンポ遅れて聞こえてきた。更なる追撃をさせない為に義経は後ろに大きく下がった。

 

「何をした!赤鬼ぃ!」

「失礼な、我はただ斬ったまでよ。今までやらなかっただけで」

「その致命傷で何故このようなことが出来たと聞いているのだ!」

「あぁそのことか?」

 

と私は振り向き斬られた傷が見やすいよう薄着になる。そこには黒い空間が広がっていた。

 

「我はこの体になってある力を得た。袋から物を取り出したり入れたりするだけのなんの変哲もない能力だ。今までは袋からでしか出来ないものだと思っていたが、拡張術式を知ったときこれを思いついた。ものは考えようだ人の体も同じように臓器がある、それら一つ一つが袋のような形をしている。そしてこの体もそれらを入れているある種の(ふくろ)だ。」

 

腹から小刀を取り出してみせた。

 

「『胎楼空落(たいろうくうらく)』そう名付けた」

「どんな小細工をしようが無敵ではない」

 

また姿を消した。だが片方の翼を斬り落としたせいかスピードは落ち、目視でも追えるようになった。

 

「先程まで速さはどうした?天狗は速さが売りだったはずだが?」

 

挑発をするが反応してこなかった。そこまでの余裕はないのだろう。だが、まだ油断ならない。いくら遅くなっても元は強い人間だ。多少弱体を受けても誤差でしかない。あいつを祓うまで気を抜いてはならない。横からの攻撃を防ぎこちらも動くことにする。

 

「兎の足を舐めるなよ」

 

そう言ってこちらから攻撃を加える。だが防がれてしまったが、それでも少なからず動揺はするはずだ。その隙を狙い空から槍を降らせる。無数に降ってくる槍に加え至る所からから剣山を作り出し着実に逃げ場を無くしていく。

足場作る暇も与えないように四方八方に矢を放ちまくる。

 

「あぁ!もう焦ったい!」

 

痺れを切らしたのかこちらに斬りかかろうと突っ込んできた。私はこの時を待っていた。奴の刀が私の体に触れそうになる刹那、私は持っていた小刀で奴の刀を弾き飛ばす、弾かれたことにより胴体がガラ空きになり、その隙に私の愛刀で、

 

「『三日月』」

「....お見事」

 

次こそはちゃんと入り腹から鮮血が吹き出す。義経は倒れそうになるが刀を地面に突き刺しなんとか堪えた。間髪入れず刀を両手に持ち変え、奴の首を切り飛ばした。

 

「最後に言っておく、この刀は五メートルまでならどこでも斬れる」

 

領域が崩れ始める、私もかなり無理をしたので当然の結果ではあるが。集中が切れ体が人形のように崩れ落ちて、意識が深い底に落ちて行った

夏油は闇堕ちした方が良いですか?

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