その兎、触れるべからず   作:猫を乗っけた青髪の女

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八話

がらけぃで車を呼び数十分後、車がやって来て乗り込む。補助官の人が少し変な顔をしたがすぐ表情を戻し車が発信する。何時間経ったのだろうか、周囲は暗くもう夜になっていた。激しく揺れる車の中で考える。たまたま領域展開が使えたからよかったが、使えなかったら何日掛かっただろうか。流石に疲れた、すこし眠るかと瞼を閉じ揺れを身を任せ深い眠りにつく。

 

ガコンッ!と勢いよくぶつかり眠気が覚める。何かと思い前を見る、すると何やら道路の真ん中で何者かが待ち構えていてそれに気づいた補助官の人が急ブレーキを踏んだわけか。私は車を降り車の前で通せんぼしている何かをどかそうとそれの前まで歩く。それは見た感じ呪霊のそれであり、

頭が山のような顔であり一つ目が特徴的な呪霊だ。相手も私に気づいたようですこし驚いたような表情を浮かべる。

 

「なッ⁉︎あの病院の呪霊の反応が消えどんな術師かと思い来てみれば儂と同じ呪霊ではないか!何故同じ同胞で争っているのだ。」

「...?なんのこと?...あんま...騒がないで...頭痛い」

 

同じと言われても、害を為すから祓っただけなのだが。しかしこの感じこの呪霊はさっきの奴とは段違いで強さが違う。どう表現すべきか、呪いの規模が違うと言うべきか。ともかく油断ならない相手であることには違いない。軽く臨戦態勢に移る。

 

「...あなた..誰?」

「儂か?儂は漏瑚!さあ答えろ何故貴様が術師紛いなことをするのだ。返答次第では容赦はせぬ」

 

頭が痛い。さっきからずっと痛くてしょうがない、疲れてるからあんま戦いたくないし後ろに人がいる。ここでの戦闘はなんとしても避けねば、

 

「それは...私を拾ったのが呪術師だったから...」

「貴様、それだけの理由で...ならば貴様はそいつらに拾われなかったら術師にならなかったのか?」

「...それは知らない...私は前も人に仕えてたから...少なくとも人を呪うようなことはしないと思う」

「ならば..貴様は何者だ!その呪力、うまく隠しているのかも知れぬが儂には誤魔化されんぞ。そこらの呪霊とは一線を画している、名を名乗れ、そして何故そんなちんまい姿をしているが何故姿を隠す?」

「...な、なんで...そ、そんなぁ...」

「何をそんな隠す必要があるか、早く名を名乗れ」

「なんでそんなこと言うのぉ〜...」

 

この呪霊、まともに戦ったらあの宿儺程ではないが並の術士は絶対勝てない。ならばどうすればいいか、泣き落としをすれば良い。古来より女の涙には男は弱いと本に書いてあった。私は女にされたことはないがやられていたらきっと私も迷うんだろうな。漏瑚は男?だろうからきっと効くだろうと思うとチラリと見るが、

 

「な、何もそこまで泣かなくても」

 

困惑しているようだ。それもそうだいくら呪霊と言っても喋っている、つまり考える思考があるわけだ。私の身体がデカかったらすぐ殺されていたであろう、だが今の私は背は低くそして何よりこの顔、幼い顔であれば躊躇うであろう。躊躇ってもらわねば困る。こっちはさっきの戦いで集中力はなく疲労困憊でできる限り戦いたくない。

 

「だが貴様何故急に泣く?まさk「びぇ〜〜ん‼︎」わ、わかった、わかったからそう泣くな」

 

大泣きして考えさせるな、戦意を削がせあわよくばこのまま逃げる。

 

「うッ...ぐすッ...か"え"り"た"い"よ"ぉ〜〜...」

 

もちろんこれは嘘ではない、私は一刻も早く帰ってベッドに倒れて寝たいものだ。手で目を擦り大きな声で喚き、これには漏瑚も呆れたように、

 

「...興が削がれたわ...儂はもう帰る。小童もはよ泣きやめ!」

 

そう言って漏瑚はどっかへ行った。私はもうしばらく泣き奴の気配が完全に消えたことを確認すると泣くのをやめ車に乗り出発するように言う。補助官の人、完全に引いている。何か私の大切な何かが失ってしまったが、戦わずして勝ったので良かったと思い、帰った。

 

 

                        

 

私が帰ってきた後、何故か夜蛾に呼ばれて色々聞かれた。話を聞くにどうやら私が任務に出掛けて四日ぐらい消息不明になったそう。病院へ行こうと何度も行こうとしたが病院に行くことなく気づいたら降っていて、応援に駆けつけられなかったらしい。四日ぐらいいなかったのか。嫌な予感がしたがどうやら避けることはできないらしい。窓の外で視線を感じる。つんざくような視線を。多分きっとどっちかだろうがしばらく離してくれくれなさそうだ。その後も淡々と答え事情聴取的なことが終わり部屋を出るとそこには灰原が満面の笑みを浮かべこちらを見ていた。暗い廊下の真ん中にいたので体がビクッと震えて何事もなかったかのように反対側から行こうとすると、

 

「こっちの方が近いよ。なんでわざわざ違うところから出ようとするのかな?」

 

私の腕を掴み引っ張る、その瞬間恐怖が私を支配し引き攣った笑みで振り返る。灰原は顔色一つ変えずただ私を見ていた、目に光が灯っていない。普段優しい灰原がこんなにも怖いと感じさせているなんて夢にもおもわなかった。

 

「じゃあ部屋に戻ろうね」

「う、うん」

 

灰原が私の手を引っ張り部屋へと戻らされる。今灰原に抵抗すれば何をするかわからないので大人しく着いてった。部屋に入らされ鍵を閉められ灰原と二人っきりとなる。私の方に振り返りこちらに歩いてくる。離れようと後退さるがベッドが後ろにあり座り込んでしまい、灰原は私を押し倒す状態になってしまう。灰原は私の眼を見続け一切喋ることがない。その圧力に私は耐えられなくなり、

 

「ご...ごめんなさい...」

 

と言うが変わらず見つめ続ける彼、だんだん怖くなり涙目になっていく。

 

「ねぇ...なんで黙っているの?...我ぇ、何かしちゃった?」

 

聞いてはみるが返答がない、抜け出そうとすると肩を掴まれ身動きが出来なくなる。怖くなり目をつぶり震えていると、不意に抱きしめられる。

 

「稲羽さん、僕はね心配だったんだよ。」

 

そう言う彼の体は少し震えていた。

 

「あの時、君を無理矢理にでも一緒に帰らせるべきだったと今でも後悔してるんだ。今回の任務だってそうだ。今回はなんとか戻ってきたけど、戻ってくるまでの間、ずっと悔やんでいたんだ」

 

抱きしめ力が強くなる。

 

「君は強い、きっと僕らより強いんだろうね。でもいつか死んでしまう、君より強い相手に。もし君が死んでしまったら、僕はおかしくなってしまいそうなんだ」

 

再び私の眼を見る。彼の目には涙が溢れている、そこで気づく灰原は怒っていなどいなかった、心配してくれていたのだ。何故そこまで心配するのかわからないが頭を抱き寄せ優しく頭を撫でる。灰原は抵抗せず顔を胸に埋めてくれた。弟が絡んで泣きじゃくった時に母がよくしていて、これで弟は泣き止んでいたが、どうだろうか。すると灰原は涙が決壊したのか嗚咽の声を上げていた。

 

「ごめんなぁ...そこまで心配されるとは思わなかった。我は死なんさ、もう負けないと決めたからな。だからそんな泣くな、男がそんなめそめそと泣いたら我が困る。今夜はずっと一緒にいるからもう泣きやめ」

 

しばらくした後灰原は安心したのか寝息を立て眠っていた。私も流石に疲れたので眠る。

 

 

                        

 

朝を迎え、灰原はいつもの灰原へと戻りいつも通りの生活へと戻る。何事もなくて良かったが、しかし昨日の夜の灰原は言葉では表せられないが胸の奥でゾクゾクと感じ、なんか背徳感があった。

それは今も灰原の背中を見ると時折その感情が湧き上がる。その度に気持ちを抑えるが、好奇心には抗えない。その時は飯時でちょうど灰原の頭が私の手の届くところにあり、自然と体は動いていた。灰原がピクッと反応して七海がなんとも言えない顔でこちらを見ていた。ハッと我に帰り手を離す。

 

「気にしないでくれ...」

「稲羽さん?急にどうしたんですか?灰原の頭を撫でて、まさか呪霊狩りで疲れたのですか?」

「そ、そうだと思う...ちょっと昔の記憶と混濁しているみたいだ。我はこれを食べたら少し眠る」

 

恥ずかしいのか灰原はずっと俯いたままプルプルと小刻みに震えている。さっきの光景を見ていたであろう悟は吹いていた。

 

「ブフッ‼︎どうしたんだよ稲羽、お前そんなキャラじゃないだろ。固っ苦しいのにさぁ、急に灰原の頭なんか撫でて、おかげで灰原固まっちゃったじゃん。...ククッ..!ダメだ笑いがとまんねぇ」

「ダメだよ悟、そんな人のこと笑っちゃダメじゃないか。稲羽さんはもともとそんな感じゃなかったかい」

 

二人とも相変わらずバカにしてる。今日こそはぶっとばす、そう意気込むが悟は顔寸前で拳は止まる。まるで膜が何重にも張られたような感触があり、拳が前に進むほど重くなっていきついには動かなくなった。

 

「アッハッハァ‼︎お前のちっちゃい拳が当たるわけないじゃないか。俺は」

 

トンと頭を軽くて叩かれ襟首を掴まれる。身長差で足が浮く。暴れはするがなまじ力が入りづらくぽかぽかと効果音みたいな軽く攻撃しか出来ない。

 

「離せぇ...!我のまともに攻撃ができないではないか、早ぅ離さんか」

「まあ落ち着けよ、あんたの攻撃なんて当たらなかったら意味ないだろう?もう諦めろよ」

「諦めるものか!こんな身なりでも我とて武士、諦めたら武士として死んでしまう。死ぬまで諦めんわ」

 

足掻くのをやめない私に流石に灰原が止めに入る。

 

「稲羽さんそのへんにしときなよ、君はまだ疲れが取れてないんだから、五条さんもあんまり稲羽さんをいじめてあげないでください」

「ったく、しょうがいなぁ。離してやるよ、あんたも急に殴ったりするんじゃないぞ」

「〜〜ッ‼︎だが灰原ぁ、こいついつも我をバカにするんじゃ。じゃから..」

「だからもなんでももありません。大人にならばいいんだよ、五条さんは子供みたいなもんなんだからさ」「おいちょっとまて」

 

悟が突っ込んだが灰原はスルーする。そこに傑が割り込むように入り、私を抱き抱える。

 

「悟、やるなら外でやってくれ、私はこの子を愛でるとしよう」

「ちょっ、傑お前もそいつのことバカにしてたろ!」

「いやいや、私は別にバカにはしていない。思ったことが口に出てしまうだけだ」

「その口がバカにしてたろ!」

「さて、なんのことか?」

「稲羽、お前...男誑かしか」

 

私を巡って争っている。もっとも全員純粋ではないが、悟はいじりたいだけだし、傑はなんかよくわからないが多分きっと私が思う好きではなさそうだ。灰原はこの中で一番マシではあるが昨日の晩でかなりの束縛を加えるからなぁ...家入か七海かどちらか来てくれないかなと思いながらあっちこっちと私の取り合いが横行していった。

 

 

 

もちろん後で、私含め四人で夜蛾に怒られた。

夏油は闇堕ちした方が良いですか?

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