その兎、触れるべからず   作:猫を乗っけた青髪の女

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少し修正


九話

ここ数日、異様に傑のスキンシップが多くなった気がする。朝起きて外を出ようとすると傑が待ち構えていた。

 

「やあ、稲羽さん。これから体を動かすのかい?私も一緒に連れてってもらおうかな」

 

彼は私のいく先々に回り込むように着いている。

 

「ん〜...それはいいんだが...傑、お前少し怖いぞ。私の行くところに必ずいて、我のことが好きなのか?」

「そうだよ、私は君が好きさ」

「なっ!?」

 

なんと簡単に言っていた。私はそのストレートな発言に心が跳ね顔が熱くなる。最近になって気づいたのだがどうやら私は誰にでも惚れやすい頭らしい、強い男を見ると鼓動が高鳴って仕方ない。特に灰原や傑が頭の中で淫らなことをしている妄想をしてしまう。きっとこの体の特性なのだろうと考えているが、あわあわしていると傑は髪を触られる。

 

「君の髪は艶やか綺麗だね、ずっと触っていたいよ」

「あ、あんまり触るでない、恥ずかしいではないか」

「いいじゃないか、顔を赤らめた君も可愛いよ。もっと見せてよ」

 

傑は頬をぷにぷにと抓る。私は顔を振り手を離させる。

 

「あんまり揶揄うな、我とて曲がりなりにも人なんだ。動物のように扱うでない」

「そんなつもりじゃないさ、ただちょっともっと可愛い反応が見たくなって気分が上がってしまった」

「あんましつこいと今後無視するぞ」

「ごめんね、この通りだからさ」

 

と手を合わせて謝罪する傑、これ以上怒っても奴をつけ上がらせるだけだと思ってこの辺でやめ、一緒に走りに行く。

 

三十分間山道を走りちょうどいい休憩場所がありそこで休むことにした。

...このぐらいでいいかな、私は傑にここ最近気になっていたことを話してみた。

 

「傑ぅ?」

「どうしたんだい稲羽さん?」

「傑は人間をどう思っている?」

「...それは呪力を持たない人のことを言っているのかい?...そうだね、我々呪術師が守る存在だよ。それg「嘘をついたな」...何を言っているんだい」

 

こいつ、今私に嘘をついた。少なくともその使命は呪術師としてはあたりは当たり前なことなのだが、あくまで今は傑の本心が聞きたいのだ。

 

「そなた今嘘をついたな。我は嘘が好かん、我はそなたの本心が聞きたいのだ。ここ最近ずっとそなたは迷っておる、そなたの声で聞きたいのだ。」

「...それは..」

「何を迷っておる?そなた我が好きなのであろう?好きな我に隠すなどそんなのおかしいではないか、まさか我ではそなたの力になれないと?」

 

傑は俯いたまま黙っている。後一押しか。私は俯く傑の顔を持ち私の方を任せる。面と向かって、

 

「なあ、ここで全部吐いてしまえ、そなたは色々溜め込む癖があるからの、ここには誰もいない、我に全部言ってみないか」

「......わかった話すよ」

 

諦めてくれたのか傑は話す気になった。こういうのは自分自身の口でないとわからないものだからな。

 

「稲羽さん、君はどこまで私のことを知っているんだい?」

「我は知らんぞ。ただな、少し他より人の感情がわかるくらいだ。そなたの顔を見てからそうに感じたから気になっていただけ」

「そうだったのか...私はそんな顔に出ていたのか..」

「そりゃもう分かりやすい」

「そこまで言われると何か悲しくなっていくね。...私はね、今まで呪術師は呪力を持たない人たちを助けるためにあると思っていたんだ。だけどあの日以来ずっと悩んでいるんだ。私たちは何故あんな奴らのために守ってやらないといけないのか」

 

傑は重々しく語った。呪力を持たない人たちの傲慢さ、勝手な都合でただ一人の少女に思い責務を負わせること、その裏で動く陰謀。様々なことが起き彼を苦しめていたのだ。悟ならこんなこと一切気にしない、というよりもあいつは後先のことをあまり考えていないのだろう。きっと呪術師全体にも言えることなのかもしれないが、そう言った苦悩はないのかもしれない。私はそんなこと考えたこともないのだが、

 

「良いのではないか?別に」

「えっ?」

「悪くはないかもな、呪術師だけの世界」

 

傑は肯定され少し驚いたような顔を浮かべる。私は立ち上がり彼に向き直す。

 

「じゃが、ちと気負い過ぎだ。そなたはなんでも意義を求めてるしまう、少しは降ろせそんなもの、何だったら我が下ろしてやろうか?」

「え、それどうゆ...」

 

言葉を遮るように頭を胸に押し付けるように抱き寄せ優しく撫でる。

 

「そなたは頑張って悟と対等になろうとしていたのじゃろ?偉いのぅ。」

 

傑は何か藻搔いている。何かを言っているが何と言っているのか分からない、そして私の腕をタップしているように見え放す。傑はゼーハーと息がアガっていて苦しそうな表情を浮かべ青筋が立っていた。

 

「君は私を殺す気か、それは胸がある人がやるからこそに意味があるんだ、ないものでやっても息苦しいだけだ」

「そ、そんな怒らんでも良いだろぅ?我、悪気はなかったんだ。謝るからそんな怒らんで欲しい」

「悪気がない分余計怒るんだ!」

 

今までにない表情で起こる傑にビビる私、先程とは反対の立場なってしまう。人生の先輩として見栄を張ろうしてこっ酷く怒られて、屈辱や悲しみで胸いっぱいになりしばらく立ち直れなかった。その後灰原に慰められ自分の惨めさにさらに落ち込んだ。

 

次の日、すっかり元気になった私にある任務が舞い降りる。それは京都の方にある呪霊が出現したらしい。普段ならそこは京都校が払うべきなのだが次々と行方不明になってしまうためこちらに回ってきたらしい。私はこの前の任務で知らない間に一級に上がってたらしい。そんなこともつゆ知らず私はそのことをついさっき知ったばかりだった。他の人に任せないのかと聞くと悟は北海道、傑は福島とそれぞれ不在にしているため私に来たとか、断る理由もないので受けたが。

 

やあやあ我こそは京に聞こえし源義経なり。全ては兄上のために我が体が朽ちようとも全てを薙ぎ払おうぞ

 

耳が痛いほど馬鹿でかい声で何かを叫んでいる呪霊がいた。あれが言うに源義経と言ったか、なるほど厄介だ。生前であんな暴れているのにまだ未練があるのか、少し呆れたがまあでもこいつならやらかねんと思ってしまった。するとあいつは私の気配を感じ取ったのか。こちらを向く。

 

ッ!...この気配、まさかそこにいるのか!隠れてないで出てこい。あかおによ

 

少し厄介なことになってしまった。今出なかったならここら一帯を切り刻むだろう。あいつに従い素直に出る。

 

おぉ!赤鬼よ久しいないつ以来であろうか。もう思い出せぬが貴様が我らと共に会ったことはこれ以上にないほど心踊ることはなかったぞ。しかし生前は果たし合う前に我が自害してしまったから、直接戦うことがなくてそれだけが心残りであった

「やめよ、今の我はあの時ほど強いわけではない。それに貴様そんな些細ごと気にせぬであろう、あとその訳のわからん話し方をするでない。頭がキンキンするから我に合わせろ」

「ん、それはすまぬ。気が昂ってしまってな、しかし何故だ。前はあんなに威勢が良かったのに今ではそんなちんまい姿なって身体につられあるのか?だが貴様その力は...」

「何の話じゃ我には力なんてものないぞ、それに我の刀はもうないからな...何処に行ったのかもわからん」

「それはこれのことか?」

 

義経は背中からある刀を取り出す。その刀に見覚えがある。あの特徴的な形、刃が黒くそして『天輪兎月』と刻まれている。間違いないあれは私が生前使っていた刀だ。

 

「それじゃ!しかし何故貴様がもっておる」

「決まってあろう?そこらの雑兵からの戦利品じゃ。そこらの一兵卒が手に余るものだからな」

「貴様は弁慶か!」

「何を‼︎雑兵から奪ったのはこれだけじゃ!それに...」

 

それにの後の言葉はゴニョゴニョも言っていてわからなかったが取り敢えずあの刀は返してもらおう。

 

「そんなことはどうでも良い早く返さぬか」

「おぉ、そうだったな」

 

と私の方に放り投げ受け取る。手に取った瞬間身体から力を吸い取られていくような感触がした。前はこんな感じ無かったのに、と思っていると、刀から声がする。

 

(...契約だ。あんたは何を犠牲に力を望む)

 

随分と律儀になったものだ。前はそんなこと言わずに有無を言わさず寿命を奪ったくせに...。そう思いながら刀を腹に突き刺した。激痛が走ったが血は流れることはなかったが、その代わりにもの意識が飛びそうなくらい何かが吸われた。

 

(寿命...血を犠牲に契約するのか、こんな馬鹿げたことをやるとは...気に入ったあんたを認めてやるよ。この力存分に使えよ)

 

と刀の声がだんだんと消えていき、意識が戻っていき、契約が成立した。私は刀を抜き取り見る。さっきまで何もなかったのに今は呪力が流れ、禍々しく見える。

 

「ほぉ、それは妖刀か、あんた前も思っていたがやっぱイカレてるな」

「我はイカれてはいない。貴様と違って立場は弁えるさ。さあ死合いを始めるか」

「おぉ良いなそれ、『死合い』次の相手に使わせてもらうぞ」

 

刀を構え体を脱力させ神経を尖らせる。奴はどう動く?義経は下卑た笑みを浮かべ立っている。やっぱりこいつ戦いがどうのこうのになると途端におかしくなる、人が変わると言えば良いか。あいつは刀を抜く、あの刀は...薄緑だったか。

 

「あんたから来ないのかい?だったらこっちからいかせてもらうぞ」

 

すると姿が瞬間消える。あいつはどうするか、次の行動を予測し後ろ振り向く。すると奴は今にも私の首を切らんとする形相を浮かべていた。すぐさま刀を収める動作で居合斬りの体勢に移る。

 

「居合抜刀ゥ...『十六夜』」「『八艘跳び』ッ‼︎その首ィ頂く!」

 

私は刀を斬り上げ奴の胴体を狙い、義経は首一直線で切り込んできた。甲高い音が鳴り響く、それでも奴の力が強いのか徐々に押されそうになる。

 

「ほんと貴様は馬鹿力だな、嫌になってくるぞ」

「あんたに言われたくないなァッ‼︎」

 

私は刀を弾き距離を取りまた構える。あの異常なほど速い移動は一体何なんだ。術式を秘密があるはずだ。

 

「じゃあこれはどうかな」

 

また来る...!義経は目にも止まらぬ速さで動き愚直にも私の首を狙ってくるだろうと思い刀を抜く。

 

「居合抜刀...『十六夜』ッ⁉︎」

 

私の技は空を斬る、あれはブラフ!斬り上げた刀を振り返り斬る。破裂音が鳴り響く。こいつは必ず後ろに回ってくる...そんな術式なのか、

 

「あんたが考え事なんて珍しい。あぁ我のこの力のことか?教えてやろう!我は後ろに回り込む能力だ」

「はいそうですかと信じるわけないだろ。貴様の言葉を信じるわけないだろう?」

 

こいつがそう言うと急に信用できなくなる。だがくどいのは嫌いだ

 

「一気に決めさせてもらうぞ」

 

刀を地面に刺し手印を組む。

 

「領域展開『欠月叢雲』」

 

平安の都が形成され月はまだ雲に覆われいる。

 

「ほぉ、粋なことをするではないか」

 

また姿を消した。私は背後に無数の空気の膜を生成し、擬似的な無下限を作り出し、念の為後ろからの攻撃を守る。悟の無下限を喰らってコピーではないがこの状況下では作り出すことが出来るようになった。謂わば廉価版無下限呪術と呼ぶべきだろう。そして蜘蛛の糸を四方八方に張り巡らせ奴の動き読む。こうすることで一瞬だが行動が読めるようになる。万全の態勢で挑む対義経、あいつはどう動く?

途端に義経は消える。またかと思い蜘蛛の糸の動きを感じ取る。...後ろか!

 

「どうじゃ?その刀は我に届くか?」

 

刀が私の首元で動きがなくなり、流石のこいつも驚いているだろうな。

 

「なッ!動かぬ!」

「そうであろう、そうであろう?貴様と我の間には無限が存在する。それを作った。廉価版ではあるがある程度は真似できる。」

 

これで終わらせよう。

 

「居合抜刀...『霜月』」

 

左回りに回転しそのスピードで斬りかかる。奴の首にかかるその瞬間、当たるはずだった攻撃が空を斬っていた。

夏油は闇堕ちした方が良いですか?

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