淫な実力者です!   作:ただのニンゲン

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僕は教室から誰もいなくなったことを確認し、拳で自分の胸を叩いた。


動け!!動け!!


何度も何度も叩き、強引に呼吸する。


うごけぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!


「ゲホッ!!ゴホ!!ゴホッ!!」


動いた...
停止していた心臓が、ドクンドクンと鼓動を再開する。


モブ式奥義十分間の臨死体験ハート・ブレイク・モブ


心停止から微細な魔力により脳血流を保ち、通常ではありえない長時間の心停止状態を後遺症なく達成する奥義である。


一歩間違えばそのままあの世逝きのハイリスク奥義だが、命を懸けてでもやらねばならぬ時があるのだ。


それが今日だった、ただそれだけの話だ。


「いってぇ...」


マリーが心臓とか大事な部分を治してくれたけどそれでも痛い、それにしても迫真の演技だったなぁ。


胸の傷を確認する、間近で見られる危険性があったため今回は実際に斬られているのだ。


致命傷を負ってしまったが、よりリアリティを出す事ができた為及第点としよう。


魔力で他の傷の応急処置を試みる、魔力は限りなく細く加工することで阻害を無視して行使できるようだ。
他にもおそらく圧力をかけて開放すれば阻害を強引に排除できると思う、あとマリーの魔力エンチャントの応用でも良さそうだ。


「こんなとこかな?」


僕は傷を完全に塞ぐのは時間がかかるし、後で見られたときにまずい...動きに支障のない程度で留める。


あとは奇跡的に一命を取り留めたパターンでいけば大丈夫でしょ、そのお膳立てをマリーはしてくれたしね。


「よっこらせ」


僕は立ち上がり肉体と魔力の動きを確認する、顔の血痕を拭い制服の乱れも正す。


窓からは爽やかな午後の風が流れ込み、白いカーテンを大きく膨らませていた。


倒れた椅子と乱れた机壊れた扉と床に残った血痕、それは日常が終わったことを告げていた。


「さて、行くか」


...僕は教室を出て、誰もいない静かな廊下を歩き出す。


誰にもやらなきゃいけない時がある

さてどうしたものか、既に連行済みの私が動くのは少し難しい。

確か今空いてるのは七陰じゃガンマぐらい、ナンバーズはニューが居るのは確認してる。

 

 

「う〜ん戦力不足だ...さあどうしたものか...」

 

 

やはりシドに頼る羽目になるか、私はどうやって抜け出すかね。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

シェリーをサポートしながら向かった先は一階の奥にある副学園長室だった。

 

 

僕らは少しだけ重厚な扉を開けて室内に入る...

趣味のいい応接セットが部屋の中央に置かれ、壁一面には背の高い本棚が並んでいる。

 

 

奥の実務用の机には資料が積み上げられ、北向きの窓から柔らかな光が差し込んでくる。

 

 

落ち着いた大人の空間って感じだ、シェリーは勝手知ったる様子で机の引き出しをあさりだした。

 

 

「あんまり大きな音出さないようにね」

 

 

机の向こう側で桃色の髪がコクコクと頷いた、どうやら髪に筋肉と神経が繋がっているらしい。

 

 

「ふー」

 

 

僕は二人掛けのソファーに脚を投げ出して大きく息を吐く、疲れた。

 

 

シェリーが今回のメインキャラで間違いないだろう、だが彼女だけでこのシナリオを攻略するのは無理だ。

 

 

彼女では絶対にシナリオ攻略できない...

こういう場合は必ず相棒キャラがいるはずなんだけどそんな気配はどこにもなかった、酷い欠陥シナリオである。

 

 

結局悩んだ末、僕はお助けモブのポジションで介入することにした。

 

 

僕はモブである、表では絶対に活躍しない。

絶対にだ...マリー分かっているよね?

 

 

「ありました」

 

 

「何これ」

 

 

文字やら図形やら数式やら、僕にはまったく意味が分からない。

...なるほどこのシナリオを攻略する相棒キャラはマリーだったか、僕はどうやらシナリオを変えてしまったらしい。

なら代わりに僕がしないといけないな...もしかしてマリーは立場を譲ってくれたのか?そういう事だったのか!!なんて素晴らしいんだ!!

 

 

「これは強欲の瞳というアーティファクトです、おそらく現在魔力を阻害している原因がこれです。」

 

 

何やらピンポン玉サイズの球体の禍々しいデッサンを見せられる、昔マリーが欲しいと駄々を捏ねた物に近い。

 

 

「この強欲の瞳は周囲の魔力を吸収しそれを溜め込みます、そのため強欲の瞳が発動するとその周辺は魔力の錬成が困難になるのです。」

 

 

「黒ずくめの人たちは普通に魔力を使ってたけど?」

 

 

「予め強欲の瞳に魔力の波長を覚えさせたのでしょう、登録した魔力は吸収しないことを確認済みです。

他にも極めて微細な魔力や、強い勢いを持った魔力などは吸収し辛いですが...そもそもそんな魔力は今の時代の人間には扱えません。」

 

 

ふむ...マリー使ってたけど見なかったフリをすればいいのかな?

 

 

「これだけでも厄介なアーティファクトですが、強欲の瞳は溜め込んだ魔力を利用することもできるのです。

恐らく強欲の瞳の本来の目的は魔力の保存にあったと思われます、ですが長期間の魔力保存がを前提としていないアーティファクトだとマリーさんは考察しました...私も同意見ですね。」

 

 

「長期間が無理だとしても短期間なら大丈夫なわけだ、なるほど外付けの魔力庫か。」

 

 

「はい...

現在大講堂には多くの魔剣士が囚われています、仮にそこで吸収している魔力を解放したとすれば学園が吹き飛びます。」

 

 

「へぇ...」

 

 

「この強欲の瞳は以前私の母が研究し解明したものです、その危険性を考えて学界では発表せずに国で保管してもらうことにしたんですが...どうしてこんなことになったのでしょう。」

 

 

シェリーはしおらしい眼差しで外を見た

 

 

「同型のものがあったか盗まれたかってところだね...それで強欲の瞳の対処法とかってあるの?」

 

 

「あります」

 

 

「汚いペンダントだね」

 

 

「これは強欲の瞳の制御装置だと思われます、強欲の瞳はそもそも単体ではなくこの制御装置と組み合わせて真価が発揮されるのでしょう。

...マリーさんは正しかったです、私なんかより数段優秀な学者です。」

 

 

「長期保存できるの?」

 

 

「それは二つ合わせて研究してみないことにはわかりませんが、可能性は十二分あります。」

 

 

「へぇ」

 

 

「この制御装置によって強欲の瞳の機能を一時的に停止させることができます、その間に大講堂を解放することができる筈です。」

 

 

「いいね...それで?」

 

 

「えっと、まだこのアーティファクトの解読が完全には済んでいないのでまずは解読をします。」

 

 

「その次は?」

 

 

「解読したら、起動したアーティファクトを強欲の瞳に近づけます。」

 

 

「どうやって?」

 

 

「えっと...地上は警戒されているので、まずは地下から大講堂に近づこうかと考えています。

学園の施設には脱出用の隠し通路がいくつか残されているんです、やっぱこの通路はしばらく使われていませんね安全そうです。」

 

 

「へぇすごいね」

 

 

「階段に埃が積もったまま...足跡がついていません、お義父様がここから脱出してくれていればよかったのに。」

 

 

「ルスラン副学園長?確か義親だっけ?」

 

 

「もともと母の研究を支援してくれていたんです、ずっとお世話になっていて...母が死んだあとも身寄りのない私を引き取って育ててくれたんです。」

 

 

「いい人だね」

 

 

「はい!!ずっと助けられてばかりだったから...だから今回は私が助けるんです!!」

 

 

「無事だといいね、それで地下から近づいた後はどうするのかな。」

 

 

「えっと...地下から近付いて起動したアーティファクトを大講堂に投げ入れます!!」

 

 

「壊されたりしない?」

 

 

「壊されても一時的に機能は奪えるので大丈夫です、後は魔剣士の皆さんに頑張ってもらえれば何とかなる筈です。」

 

 

最後が少し弱いけど僕がシャドウになって暴れれば問題ないかな、むしろいい感じの活躍シーンを用意してくれてありがとうまである。

 

 

「最高...それでいこう!!」

 

 

「やった!!それじゃあ急いで解読しますね...」

 

 

「もう目眩もするし目の焦点が合わなくなってきたから僕はもう協力できないけど...がんばって!!」

 

 

まともな作戦で本当に良かった、これならお助けモブの出番もほぼなさそうだ。

 

 

「シド君は無理しないで下さい...私頑張りますから!!

今まで何もできなかったから、私がお義父様やみんなを助けるんです。」

 

 

「うんがんばれ、あ...トイレ行ってくる。」

 

 

解読に集中するシェリーを残して、僕は遊びに出かける。

 

________________________________

 

 

銃で撃たれたタイミングで自分の一部を分離させて、人の形にした後に囮として置いてきた。

アホだよね人質兼魔力倉庫の生徒を撃ち殺すとか、全員の怒りも蓄積させてさ。

 

...殺されるのはチルドレンだけだもんね、かなり胸糞だ。

 

 

おっ見つけたわシド、シャドウとして突入するんだろう?今はフリーだから少しぐらい噛ませろや。

 

 

「やっシド、元気そうで何より。」

 

 

「あっマリーじゃん、さっき怪我治してくれてありがとうね。

それに中々迫真の演技だったよ、一朝一夕で身に付く様な感じじゃなかった。」

 

 

「いやアレは演技でも何でもないんだけど...ていうか心臓を止めるって無茶するよね、死なないでよ?私も姉さんも悲しむからね無茶はもうしないで。」

 

 

「分かったよ、それとお願いがあるんだけどいいかな?シェリーのアシストをして欲しいんだ。」

 

 

「いいよ、それくらいなら任せて。」

 

 

私達の立場をチェンジ、今回も私はアシストに徹する。

 

 

________________________________

 

 

それはレックスが部下と校舎の廊下を歩いている最中に起こった、アーティファクトを捜索していた彼らは突然の怪奇現象に襲われた。

 

 

前を歩くレックスの部下が、彼の目前で突然消えたのだ。

 

 

「は?」

 

 

何が起こったかわからず辺りを見回すレックス、だが付近に怪しい影はない。

 

 

手掛かりと言えば、何か空を切るような音が聞こえたぐらいか。

 

 

シュン...シュン...と空気を裂く音が聞こえる、そして。

 

 

「...ッ!!」

 

 

レックスの隣にいた部下が突然消えた、だが今回はかろうじて見えた。

 

 

血濡れの学生服を着た少年だ、そいつが部下を掌底で気絶させそのまま連れ去ったのだ。

 

 

視力を限界まで強化し、集中しそれでようやく視認できた...それほどの早業。

 

 

「気をつけろ!!敵だッ!!」

 

 

レックスは叫び、周囲を警戒する。

 

 

「...あ?」

 

 

背後にいたはずの部下がどこにもいない、いつの間にかレックスはこの長い廊下で一人きりになっていた。

 

 

そして再び音が聞こえたその直後、レックスは全力で心臓を守った。

 

 

「クソッ...!!」

 

 

掌底がレックスの腕を叩いた、ビキ...と骨が折れる嫌な音と共に、レックスは後方へ吹き飛ばされる。

 

 

「く...くそが!!」

 

 

即座に体勢を立て直し剣を抜く、たった一撃の掌底で魔力で保護した左腕が折れた。

錠剤を飲み無理矢理腕を治す...もしガードが間に合わなかったら、間違いなく心臓が破壊されていただろう。

 

 

背後の気配に向けて勘だけで剣を振る、タイミングは合っていた...そしてその剣は腕を切り落とす。

 

 

「ハッ!!当たったぜこの野郎!!

性能のいいアーティファクトを使ってるようだな、だがもう限界だろ。」

 

 

「アンタ強いね、こりゃ噂になる訳だ。

...後で服縫わないとな、シドの借り物だし。」

 

 

「てめぇも無理してたんだろ?だから俺の攻撃を喰らった後、すぐに動きが止まった。」

 

 

人間を超越した力を出すには必ず犠牲が伴う、その痕跡をレックスは見逃さなかった。

 

 

「そうだね、学園一年生程度の体と魔力量じゃ少し大変だ。」

 

 

「制服が血濡れだぜ?」

 

 

「ああこれはウチの片割れがやんちゃした結果だから私の血痕じゃないよ、賞美という訳じゃないが面白いモノを見せてあげる。」

 

 

それが虚勢である事は目の前の少年の出血量から見ても明らかだ、もうすぐ敵は限界を迎える。

 

 

ほんの僅かな情報から敵を丸裸にしその敵に適した戦術を取る、それがネームドチルドレン叛逆遊戯のレックスなのだ。

 

 

「ハッ!!どうだかな!!」

 

 

レックスは声に力を込めて言った、しかし相手からの反応はない...レックスが話し始めてからずっと敵は何の動きもなく沈黙し続けている。

 

 

「今の私じゃアンタに勝てない、だから少し本気を出す。」

 

 

レックスは唇の端でニイっと嗤った、勝ちは見えた。

だがレックスの勘は告げている、コイツは危険だと。

 

 

...今の彼が一度引く選択肢はない、このまま殺せばいいと判断した。

だが足は動かない、その未知の恐怖に竦んで。

 

 

「おら!!黙っちまってどうしたんだ?」

 

 

レックスは強気に出る、敵に弱気を悟られてはいけない。

 

 

その挑発する時間で逃げれば生き残れた筈だ、だがその数秒間で目の前の少年は姿形を大きく変えた。

 

 

「来いよ!!チキン野郎!!」

 

 

シュン...と、空気が裂ける音と同時にレックスは目の前の人間の様なナニかに左半身を食い千切られた。

 

 

「ガアァァァッッッ!!」

 

 

根性だけで後ろに飛ぶ...だがしかし、敵は追ってきた。

 

 

これまで何もしてこなかった敵が急に攻撃をしてきた、人の形を捨てて。

 

 

「くるなァァァァ!!」

 

 

気合と共にレックスは急所を守る、だが諸共...頭と上腕部を食い千切られる。

 

 

「君、中々強かったよ。

...怪腕部での貪食実験は上手くいったな、うん中々いいんじゃないかなこれ。」

 

 

________________________________

 

 

「紅の騎士団獅子髭のグレンね」

 

 

騎士団では知られた名だったが、魔力を封じられれば呆気ないものだ。

 

 

この研究室にはもう一人、騎士が倒れていた...彼にはまだ息があった。

 

 

「マルコ・グレンジャー、あなたは紅の騎士団に入ったのね。」

 

 

その顔はニューの記憶にある人物だった...

美しい青髪に端正な顔立ちで魔剣士としての実力も高く、将来は騎士団長になるだろうと噂された男。

 

 

思えば昔から正義感が強かった、マルコはかつてニューの許婚だった男だ。

 

 

何度も手紙を交わし舞踏会では共に踊った相手、だが結局親の決めた相手でしかなかった...彼がどう思っていたかはわからないがニューは最後まで彼に愛情を抱くことはなかった。

 

 

ただ別に嫌いだったわけではない...愛情こそ抱かなかったが、いい人だとは思った。

 

 

将来結婚することになっても不満はなかったし、誰もが称賛する彼と結婚すれば輝かしい未来が続いていくと思っていた。

 

 

かつてのニューは自分の意思というものが薄かった、周囲の価値観に従い周囲の言葉を聞いて生きてきた...別にそれが悪かったとは誰も言わない。

 

 

ただ今思えばそれはひどく窮屈な生き方だった、彼の顔を眺めているとふと舞踏会の記憶が蘇る。

顔立ちの整ったマルコをアクセサリのように連れ回していたかつての自分を思い出して、ニューは苦笑した...今すぐ忘れたい記憶は決まっていつまでも忘れられない記憶なのだ。

 

 

「何してるのニュー?」

 

 

「シャドウ様...」

 

 

「ごめんごめん私だよ、声は似せてるけど。」

 

 

黒髪の平凡な少年がいつの間にか研究室の中に居た、ニューの横を通り過ぎて研究室の棚を開けていく。

 

 

「別に...何でもありません」

 

 

「へぇ...」

 

 

「私個人としては生かす理由も殺す理由もありません、報告は必要でしょうか。」

 

 

「うんそれがいいね、シドから何も聞いていないから私が必要なら報告して。」

 

 

シドに変装したマリーはそう言いながら棚を開けて何かを探していく、ニューはマルコのそばを離れて少年の傍らに立った。

 

 

「遅くなりましたが報告させていただきます...

現在シャドウガーデンは学園の周囲に潜伏し待機しております、指示があればいつでも動けます。」

 

 

「ウチの子達は後方支援だよね?」

 

 

「避難誘導と生徒の保護を行ってもらうつもりです、ただ魔力が制限された状況下での行動にはリスクが伴います。

普段通り動けるのは七陰の皆様ぐらいですが、現在王都にいるのはガンマ様だけです。」

 

 

「ん〜何ていうか時期が悪かったな、まあ無い物ねだりしても仕方ないか。」

 

 

「それで...あの...ガンマ様はあまりこういったことが得意ではないというか...」

 

 

「センスLevel.-100だね」

 

 

「あの...はい...私も普段の半分ほどの力しか出せませんので...」

 

 

「大丈夫だよその点に関しては、今シェリー・バーネットって生徒にアーティファクトの調整をして貰ってるから。」

 

 

「ガンマ様が現在全体の指揮を執っています、魔力が制限された状況はそう長くは続かないとガンマ様は予測しており無理をせずそれまで待てばいいと。」

 

 

「うん本当に何で戦闘だけはできないんだろう...」

 

 

「黒尽くめの男たちは大講堂にたてこもったまま動きがありません、現状彼らからの要求もないようです。

騎士団は学園周辺を囲っていますが...この中で戦力になりそうなのはアイリス・ミドガルと他騎士団長だけ、対立もあって連携は厳しいでしょうね。」

 

 

「でしょうね元々アテにしてない、突入の合図はシドに決めてもらうからんじゃそういう事で。」

 

 

「はい」

 

 

________________________________

 

 

「戻ったよ、それと道具足りなかったでしょ?ついでに持ってきた。」

 

 

「ありがとうございます!!これで完成させることができます!!」

 

 

「がんばって〜」

 

 

マリーはソファーに転がって本を読み出す、そしてそのまま静かな時間が流れた。

 

 

窓から差し込む陽の色が少しずつ茜に染まっていく...

シドの変装をしたマリーは時々立ち上がり水を飲んだ後にトイレに行く、シェリーは頻繁にトイレに行くシドの変装をしたマリーに胃腸薬を渡し微妙な顔で受け取られた。

 

 

大じゃねぇよ...

 

 

やがて陽が完全に落ちる頃にシェリーの作業は終わりを迎えた、彼女は側でストレッチをしていた内に調整は終わったらしい。

 

 

「できました!!」

 

 

シェリーはペンダントを持ってシドの姿をした人間に見せた、優雅に座禅を組んでいた彼はチラリと見る。

 

 

「すごいね、もう少しかかると思ってたよ。」

 

 

「はい!!やりました!!」

 

 

「陽も落ちたし隠密行動にはいい感じだ、学園の未来は君にかかっている。」

 

 

「もう僕に手伝えることはない、あとは君の手で国を救ってくれ。」

 

 

「本当にありがとう...シド君のおかげでお義父様を助けられます!!」

 

 

「僕はほんの少し力を貸しただけさ」

 

 

「はい」

 

 

...がんばらなきゃ

 

 

________________________________

 

 

皆が大講堂に連れてこられてもうずいぶん時間が経った、既に日は沈みランプの暖かな光が講堂を照らしている。

 

 

皆何時でも動ける、だが動いても無駄だということも存分に理解していた。

 

 

...黒ずくめの男たちは数こそ少ないが一人一人が油断できない実力者だ、しかも統率が取れている。

 

 

だが今の私達は魔力を使えない、犠牲を覚悟して何とか周囲の魔剣士を全員取り押さえても上からの十字砲火で全滅だ。

 

 

中でもレックスと呼ばれていた男と、その上官と思われる痩騎士の力は抜きん出ている...実力を見誤り反抗した教師は何もできずに惨殺された。

 

 

例え魔力を使えたとしても勝てるかどうかわからない、でも幸いなことにレックスの姿はしばらく見ていない。

 

 

外で騎士団に倒されていればいいが...あれほどの実力者が不覚をとるとは思えない、レックスが戻ってくるまでに何とかしたいというのがローズのこの場の戦闘できる人間の正直な思いだった。

 

 

痩騎士の濃密な魔力やその佇まいからその実力は達人の域を超えているだろう、もしかするとあのアイリス・ミドガルすら凌ぐか...それはないと思いたい。

 

 

時間がない、いつ奴らが私達を全員殺すか分からないのだから。

 

 

続々と心に込み上げる不安と焦り、段々と体力気力共に消耗していく。

 

 

周囲に突然、数名の新たな黒尽くめの集団が現れる。

 

 

「失礼シェリー・バーネット嬢、借りるね制御装置を。」

 

 

...そしてその瞬間は唐突に訪れた、突如として大講堂が白く眩い光に照らされる。

 

 

それが何なのかはわからない、しかしローズは考えるより速く動いていた。

 

 

...その光が何だっていい、ただこれが最後の機会であることを本能で感じ取った。

 

 

眩い光に誰もが目を奪われる中、ローズは目を細めて身近な黒ずくめの男へと駆けた...そしてその隙だらけの首に手をかける瞬間ローズは気づいた。

 

 

「魔力が使える!!」

 

 

ローズの足刀が男の首を一瞬で断ち切った...

なぜ魔力が使えるようになったかはわからない、それこそどうでもいい。

 

 

ただ、ローズは首から上を失くした男の腰から剣を奪い、それを天に掲げて吠える。

 

 

「魔力は解放された!!反撃の時だ!!」

 

 

大講堂が沸く、だがその瞬間百人近い人数の集団が私達を囲い込んだ。

 

 

「我々はパクス・マリー平和と調和を齎す者です...以後お見知り置きを、ミドガル王国の皆様。

側面は守ってやる...戦える者は剣を持て、脱出路は自分達で開け。」

 

 

そしてその瞬間に、更にもう一つの黒尽くめの集団が現れる。

 

 

「我らはシャドウガーデン」

 

 

「「陰に潜み影を狩る者」」

 

 

とある男が青紫の魔力を天に放つ...その光を浴びた者達は怪我を癒され、黒装束の一団が大講堂に飛び込んできた。

 

 

黒装束の一団は華麗に着地し、即座に黒尽くめの男達と戦いだした。

 

 

仲間割れ...という雰囲気ではない、騎士団の人間にも見えない。

 

 

それにこの突入してきた人間全員が...

 

 

「強い...」

 

 

その誰もが強い、ただ純粋に強かった...黒尽くめの男たちは瞬く間に数を減らされていく。

 

 

「全員伏せろ!!」

 

 

そう誰かが叫んだ瞬間、照明器具が発火し周囲は火の海となる。

 

 

「火が回る前に走れ!!我々が剣圧で道を作る!!」

 

 

「出口が近い人から外へ!!怪我人は優先的に運び出せ!!」

 

 

________________________________

 

 

「シェリー・バーネット嬢」

 

 

「何ですか貴方達は!!」

 

 

「先に進むのか?」

 

 

「...どういう事ですか?」

 

 

「絶望の真実と、絶望の中の希望...何方を知りたい?」

 

 

「退いて下さい!!私はお父義様の場所に行かないといけないんです!!」

 

 

「...偽りの世界で狂うのもまた一興か、私は貴女の選択を尊重します。」

終わりはどうして欲しい?

  • ハッピーエンド(生存)
  • ハッピーエンド(死亡)
  • バッドエンド(生存)
  • バッドエンド(死亡)
  • 只管にオリ主マリーを虐めて欲しい(胸糞)
  • 上記の自殺ルート
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