フリーレンと忘れられし時の勇者   作:エクソダス

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第10話

「はっ! 生きてる」

「どうやら上手くいったみたいだね……」

 

 

 どうやら生き残ったようだ。

 フリーレンは木の葉っぱに突っ込み、フェルンは馬車で顔を上げた。

 リンクは葉っぱに突き刺さっているシュタルクを引っ張り上げる。

 

 

「シュタルク、戦士ならこの位の高さは慣れないと駄目だよ」

「……リンクは慣れてんのかよ」

「冒険の最初から、高い距離から落ちて蜘蛛の巣破いてた。日常だよ」

「何言ってんの?」

 

 

 リンクの言っていることが一切わからないシュタルク。

 彼は馬の元に行き、傷を確認する。

 

 

「馬は、大丈夫みたい。ザイン、そっちは?」

「馬車は駄目だな、修理が必要だ」

 

 

 親指で馬車を指すザイン。

 やれやれと、リンクはため息をついた。

 

 

「……ごめん」

「むしろ感謝しています。私一人では死んでいましたから」

 

 

 フリーレンと商人がそんな話をしている。

 一端は馬車の修理をするという話に落ち着き、少しの時間この場所で過ごすことに。

 

 

   ◇

 

 

「最近温かくなってきましたな……」

「そろそろ衣替えの季節ですかね」

 

 

 それは、シュタルクとフェルンの二人が春の陽気を感じた頃。

 ザインはフェルンの手首を見て、問いかける。

 

 

「そういや、フェルン。そのブレスレットって」

「……はい、シュタルク様からの誕生日プレゼントです」

 

 

 特に反応することもなく、あっけらかんと応えるフェルン。

 シュタルクは悲しげな顔でぼやいた。

 

 

「選ぶのに三時間もかかったぜ……」

「選んであげたんだね」

「私が好きに選んでほしいと言ったので」

「ああ、なるほど」

 

 

 その言葉に、リンクは何かを納得する。

 

 

「大変だったね、一番面倒なパターンだ」

「顔色うかがいながらの三時間、生きた心地がしなかった」

「たいへんだったなぁ……」

 

 

 シュタルクのぼやきに、ザインは同調したように悲しげな顔をした。

 

 

「でも、気に入ってもらえたなら。良かったよ」

「…………」

 

 

 シュタルクの言葉に、フェルンは一瞬固まる。

 その後ブレスレットに目を向け、優しく笑った。

 

 

「嬉しそうだね、フェルン」

「リンク様、そう、見えますか?」

「うん、とっても」

「……ならそうかもしれません」

 

 

 フェルンはシュタルクを見た後、興味なさげに呟いた。

 

 

「モヤモヤの気持ちとか、嬉しい気持ちとか。そういうのが宝物になるらしいよ?」

「そう、なのですかね」

「うん、僕も奥さんへの対応はいつも苦労する。男の子は、女の子の気持ちを理解するのはすごく難しいんだよ」

「そうなんです……え?」

 

 

 突然、リンクから聞き慣れない単語が聞こえた。

 ついフェルンは聞き返す。

 

 

「奥さんって、誰のですか?」

「え、そりゃあ。僕のだけど」

「え……?」

「?」

 

 

   ◇

 

 

 それから数日たった夜。

 リンクは毎晩抜け出しているフリーレンを、林の奥で見つける。

 

 

「フリーレン、馬車の修理終わったから。明日には出発できるよ」

「そう」

「毎晩抜けだして、なにやってるの?」

 

 

 地面を見てしゃがんでいるフリーレンに問いかけるリンク。

 

 

「ヒンメルからもらった指輪、無くしちゃってね」

「それは大変、手伝うね。出発は延期だね」

 

 

 リンクもしゃがみ、指輪を探し始める。

 

 

「いいや、今夜見つからなかったら諦めるよ。なくし物には慣れている」

「……」

「ヒンメルからもらったものは、あれだけじゃないしね」

 

 

 ランタンの明かりに照らされて、静かに笑うフリーレン。

 その顔が少し曇って見えたのは、リンクはお人好しだからだろう。

 

 

「でも、そんな小さなものを貴女は探してる。どこにあるかもわからないのに」

「……どういういみ?」

「わかるよ、失ってから気付くなんて。みんな経験することだからね」

 

 

 リンクは考え込む。

 

 

「しかし困った、何かを見つける方法なんて。僕知らないからな」

「リンク……」

「ま、地道に行くのも勇者の道筋かな」

 

 

 爽やかに笑うリンクの姿。

 それが、フリーレンには自身の勇者と重なった。

 すると、

 

 ――くいっ。

 

 

「ん、なに?」

 

 

 リンクが突然振り向いた。

 しかし、そこには何もいない。

 

 

「どうしたの、リンク」

「おかしいな、さっき確かに引っ張られたような……」

 

 

 リンクが不思議に思っていると。

 またくいくいっと、何者かがリンクの服を引っ張る。

 引っ張っているはずだが、

 

 

「……なにか、ひっぱってるね、見えないけど」

 

 

 それを視認することは、フリーレンには出来なかった。

 何も存在しないはずの暗闇、それが引っ張っているように見える。

 

 

「……敵?」

「ううん、多分違う」

 

 

 警戒するフリーレンを止めた後、リンクはあるものを取り出す。

 それは三つのトゲがついた不思議な虫眼鏡、ほんの少しの魔力が宿っている。

 

 

「リンク、それは?」

「まことのメガネ、色々見えるすごい奴」

 

 

 リンクはそう言った後、レンズ越しに正体を見る。

 

 

 ――それは、葉っぱだった。

 

 

「……なにこれ」

 

 

 フリーレンは無表情に目を丸くする。

 正確には葉っぱのお面を被った木の姿をした小人。

 

 

「魔物? 随分小さいけど」

「……なるほどね」

 

 

 目の前の存在が理解できないフリーレン。

 だが、リンクはどこか訳知り顔だ。

 

 

 ――たったったっ。

 

 

 その生き物はリンク達が自分を認識したのを確認すると、走りだす。

 そして、こちらに大きく手を振った。

 

 

「どうやら、指輪の場所に案内してくれるみたいだよ」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「……ほんとにあった」

 

 

 フリーレンは感嘆の声を小さく漏らす。

 彼の持つ道具でしか見れない魔物、最初は警戒したが、

 

 

「まさかこんな簡単に見つかるとは思わなかったよ」

 

 

 案内してくれた先にあったのは、紛れもなくあの指輪。

 

 

「良く見つけてくれた、ありがとう」

 

 

 フリーレンはそう言った後、しゃがんで指輪を取る。

 ふとリンクの方を見ると、魔物を見て悲しげな表情をしていた。

 

 

「……どうしたの? リンクももっと喜んでくれてもいいんじゃない?」

「え、あっ、うん、そうだね……」

 

 

 フリーレンの視線を受けたリンクは、軽く愛想笑い。

 彼らしくもない、作り笑いだった。

 

 

「なにか、思うことでもあるの?」

「ううん、ただ……少し悲しくなってね」

「?」

「もう……肉眼では見れなくなっちゃったか」

 

 

 彼はまことのメガネで葉っぱの魔物を見つけている。

 その顔は慈悲深くありながら、奥底に冷たさがあった。

 

 

 □ □ □

 

 勇者ヒンメルの死から29年後。

 北側諸国、ラオブ丘陵。

 

 

「なあ。このパーティーには足りないものがある。何だと思う?」

 

 

 階段を降りていると、真剣な顔で言うザイン。

 フリーレンは考える。

 

 

「うーん、前衛はいるし、魔法使いも僧侶も揃っているし……」

盗賊(シーフ)でしょうか」

 

 

 最初に答えを出したのはフェルンだ。

 

 

「フリーレン様がミミックに引っかかるので」

「宝箱には無限の可能性があるんだよ」

「あまりフェルンを困らせないであげてね」

 

 

 ふんす、と胸を張るフリーレンに苦笑するリンク。

 ザインは首を横に降った。

 

 

「違う。足りないものはもっと重要なものだ」

「強いて言うなら、妖精……」

 

 

 リンクも答えを出してみた。

 だがその瞬間、

 

 

「ぐ……っ」

 

 

 何かが刺さった、心に。

 

 

「リンク、なんか自分でダメージ受けてないか?」

「だ、いじょうぶ」

 

 

 シュタルクがリンクの心配をしていると、

 

 

「そう! 妖精のような年上のお姉さんだよ!」

 

 

 突然ザインが絶叫した。

 リンクはびくりと肩をふるわせる。

 

 

「普通はパーティーに一人くらいはいるだろう!! 色っぽい大人のお姉さんがさあ!」

「そうかなぁ……」

「フリーレンがいるでしょうが」

 

 

 ザインはシュタルクの言葉に一瞬フリーレンを見る、

 

 

「嫌だ……お姉さんじゃないもん……」

「すごく辛そう」

 

 

 その顔はとても絶望に満ちているザイン。

 

 

「なあ! リンクもそう思うだろ!?」

「さあ……? 僕はあんまりパーティーを組むことがないから」

 

 

 その後、リンクは考える。

 

 

(そもそも、こんなに賑わっている冒険も、あんまり無かったな。彼女が今の僕を見たら、なんて言うかな)

 

 

 つい、思い出さずにはいられない。

 時の勇者としての功績を知っている、彼女を……

 

「……リンク様?」

「なんでもない、行こう」

 

 

 

 □ □ □

 

 

 フリーレン一行は次の村に着く。

 だが、その村は今異変が起きていた。

 

 

「これは……?」

 

 

 その村の住人が、倒れていた。

 リンクはすぐさま一人の倒れた住人に駆け寄り、フェルンも続く。

 

 

「どうですか、リンク様」

「大丈夫、眠ってるだけみたい」

 

 

 見たところ、争ったような痕跡はない。

 

 

「皆眠ってる、どういうことだ?」

「のろい、だな」

 

 

 シュタルクの言葉に答えを出したのは、ザインだ。

 フリーレンは「やっぱり」という顔をする。

 

 

「やっぱりか、面倒だね」

「なあフリーレン、呪いってなんなんだ?」

「魔物や魔族が使う魔法の中には、人を眠らせたり石にしたりするものがあってね、その中で人類が未だに解明出来ていない魔法を呪いと言うんだ」

「?」

 

 

 リンクは呪いの解釈に違和感を覚えた。

 だが、口には出さない。

 

 

「人類の魔法技術じゃ原理も解除方法もわからない」

「じゃあ、この村は手遅れなのか? リンク、なんとかならないか」

 

 

 シュタルクの問いに、リンクは唸る。

 

 

「呪い、か。方法がないわけじゃないけど」

「ホントか!」

「ただし、これを生身の人間にやったことがない。最悪寝ている人間が天に昇るけど、それでもいいなら」

「遠慮しときます……」

 

 

 リンクの提案にゾッと身体が悲鳴をあげるシュタルク。

 フリーレンがザインに話しかける。

 

 

「ザイン、なんとかなりそう?」

「急かすな、今は呪いの種類と発信源を調べている」

 

 

 ザインが探知をしている中。

 リンクは木陰でぽけーっとしていると、

 

 

『時のマスター、報告します』

 

 

 リンクの耳だけに声が聞こえた。女性らしい、やさしい精霊のような声。

 片目だけ開け、精霊の姿を捉える。

 

 

「どうしたの? 最近は随分おしゃべりだね」

 

 

 水色の女性をもした、その精霊の名はファイ。

 マスターソードに宿る、様々な勇者を導いてきた精霊だ。

 

 

『魔力残滓に該当あり、ゾーラ族の魔法の可能性、九十二%』

「……へえ」

 

 

 リンクは目を細くした。

 

 

『さらに、その力が水の賢者に関連する可能性、四十五%』

 

 

 




https://syosetu.org/novel/421295/

こっちも同時進行中、悪役令嬢もの。
ファンタジア3時落ちの供養。気になったら見てね
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