フリーレンと忘れられし時の勇者   作:エクソダス

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第3話

 木が生い茂り、川のせせらぎが優しく聞こえる場所で、私達は目的地に行く途中に魔物退治に来ていた。

 

 

「ここが最近村人が消えた場所だね」

 

 

 村人達の話しによると、死んだ身内や知り合いの幽霊が生前の姿のまま目撃された。

 話しかけられたと言う人もおり、アンデッドでは無いだろう。

 

 知り合いの幽霊が話しかけてきて行方不明……恐らく、アインザームの仕業だ。

 

 

「だね、どうにかしないと」

「はい」

 

 

 そいつは面倒なので避けて通ろう思ったのだが、二人は村人を助ける気満々らしい。

 まぁ、修行にはなるから良いが。

 

 

「ここで魔法が使われた形跡があります」

「そうだね、どんな魔法だと思う?」

「幻影魔法です、幻を見せて、獲物を誘い出す魔物がいると魔法生態学の本に書かれていました」

 

 

 私はフェルンのその考察に頷いた後、そいつの名前を教えた。

 

 

「アインザーム。その主の魔物の中でも狡猾で貪欲で、等しく捕食しない偏食家。死者の幻影を見せて人を誘い込む」

「そんなので、誘い込めるの?」

「その人にとって大切だった人の幻を見せるんだよ」

 

 

 リンクの問いに私はそう答えた。

 しかし問題は無い、奴は高密度な魔力を放てば離散させることが出来る。彼の持つディンの炎で十分。

 

 

「死者の幻影を撃てばいいのですね」

「撃てる?」

「当然です、偽物だとわかっているのですから」

 

 

 私は振り返り、フェルンに覚悟を問う。

 フェルンはあっけらかんと答える。

 

 

「私は命乞いをする先生の幻影を撃ったよ……まぁ先生の命乞いは聞き慣れていたから、そこまで罪悪感は無かったけどね」

「「え」」

「でも気分の良い物じゃ無い」

 

 

 そんな話をすると、何故かフェルンはよそよそとリンクに耳打ちをしていた。

 

 

「……命乞いを聞き慣れるって、どんな状況なんでしょう」

「本とか物語の中では、師匠を超えた弟子は『師匠を超えた』という名目で殺すことがあるから。多分それ」

「うわぁ」

 

「違うからね」

 

 

 □ □ □

 

 そして、私達は霧が覆う樹海に入った。

 まるで夜になったと錯覚しそうなほどなにも見えず、魔力も漂っている事から奴は近いだろう。

 

 

「近いね、幻影が出てきたら迷わず撃つんだよ」

 

 

 そういうと、フェルンは杖を構える。

 

 

「…………」

「リンク、君もあの魔法石を――」

「僕は僕のやり方でやる、大丈夫」

 

 

 しかし、リンクはあの魔法石を持とうとせずに、特に考えなしに周囲を見渡している。

 

 

「あいつは魔法でしか離散しないよ」

「そう」

「惑わされたら捕食されてしまう」

「…………」

 

 

 私は何度か注意喚起をするが、リンクは黙ったまま歩を進める。

 しかたない、何かあったらこちらで対処するしかなさそうだ。

 

 そして、

 

 ――リンクの前に幻影が三体現れる。

 

 

『久しぶりゴロ』

「うん、ダルマーニ」

 

 

 一体は大きな巨体で黄土色が特徴的なのにもかかわらず、優しげなつぶらな瞳をしている化け物だ。

 服はほとんど着ておらずふんどし一丁。

 

 

『ohベイベー! 俺のご機嫌なカーニバルを聞きに来てくれたのかい?』

「そうかもね、ミカウ」

 

 

 もう一人は半魚人のような容姿であり、魚の骨の形をしたギターを携えている真っ白な身体の化け物だ。

 

 

『…………』

「……やぁ」

 

 

 そして、最後の一体は小柄で薄気味悪い顔をしており、身体は奇妙にも樹木で出来ている。

 その小柄な化け物に向かって、リンクは歩み膝を突く。

 

 

「リンク、魔法を撃って」

 

 

 私はリンクにそういう。

 彼らがどんな存在なのか、彼にとってこの化け物達は何なのかはわからない。

 しかし、それでもこれは幻影だ。本物でもないし、ただ惑わせるだけの物だ。

 

 

「…………」

 

 

 しかし、リンクは一切動く気配は無い。

 わたしは再度言葉をかける。

 

 

「リンク、それは幻影。惑わされないで」

 

 

 再度リンクにそう言うが、リンクはやはり動く気配が無い。

 仕方ない、気は進まないが私が撃とう。

 彼はどうやら撃てそうに無い。魔法を構えようともしなければ驚きもしていない。

 ――まだ彼の心は幼いと言うことなのか。

 

 

 

 

 

「――幻じゃない」

 

 

 

 

 ふと、リンクはそんなことを言った。

 目の前の光景が幻とわかっているはずなのに、魔物のせいだと理解してるはずなのに、リンクは優しい声でそう断言した。

 

 

「そう、君達は幻なんかじゃないよ。夢じゃないし悪夢でもない」

 

 

 リンクは木の化け物の頭をなでながら、微笑んだ。

 

 

「君達のことは、ずっと僕が覚えてる。たとえ悪夢だったとしても、存在しない時間だったとしても、僕は君達をずっと覚えている。君達の力を借りて、世界を救った夢をずっと忘れない」

 

 

 ――僕の心の中には、ずっとみんな存在してるんだよ。

 

 ――たとえ、それが本当は存在しない世界であっても。

 

 

 リンクはオカリナを取り出し、吹いた。

 その音色は優しげであり不協和音さも感じられる不思議な曲で、まるで魂を浄化し除霊するような。

 神秘的でありながらも、真っ暗な墓地を彷徨っているような恐怖心を感じる曲調だ。

 

 

 □ □ □

 

 あの曲のこと、あの三体の化け物のこと。

 私は聞かないことにした、何処か訳がありそうだったし、なんとなく掘り返してはいけない気がした。

 けど彼はあの曲を……『癒やしのうた』とだけ教えてくれた。

 

 中央諸国リーゲル峡谷。

 そこで私達は物陰に隠れ、今回の獲物を観察していた。

 

 

「あれが、目的の竜……」

 

 

 目の前の竜の姿に唖然とするフェルン。

 その竜はリンクが倒した個体よりも明らかに大きく、堅い鱗と角を持っている赤い竜だ。

 そしてそいつの巣の中に、目的のブツがあった。

 

 

「巣を見て、魔導書があるでしょ? アレ探していた奴なんだよね」

「相変わらず好きだね、魔法」

 

 

 リンクがそう言うので、「ほどほどにね」と答える私。

 竜は魔力のこもった物を好んで営巣の材料にする。

 

 

「紅鏡竜、こいつは冒険者を何人も喰っている。どちらにせよ仕留めた方が良いでしょう。巣に当てないように気をつけて」

「はい」

 

 

 私がそう指示をすると、フェルンは魔法陣を展開し、魔力を竜に向けて照射した。

 その攻撃は見事に命中し、ドラゴンの後ろにあった岩は衝撃で崩れる。

 

 

「フリーレン様……あまり手応えが……」

 

 

 やはりと言うべきか、この程度では傷一つつけれないようだ。

 

 

「やっぱり堅いね、リンク。やれる?」

「やってみる」

 

 

 そう言って、リンクは私を持ち上げ、手をイス代わりにして頭の上まで持ち上げた。

 

 

「……なにやってるの?」

「投げれば倒せるかなって」

「無理だよ?」

「一応経験談」

「無理だよ?」

「大丈夫、いざとなったら多分最初の地点にワープするから」

「しないよ???」

 

 □ □ □

 

 そして、私達は竜を撒いた。

 かなりの時間走り回っていたため、フェルンは既に息切れだ。

 

 

「し、死ぬかと思いました……」

「ようやくまけたか、飛ぶのも早いね。空中戦も無理そうだ」

「だね」

 

 

 リンクはフェルンの背中をさすりながら、のほほんという。

 

 

「それにしても、君逃げるの早いね。なにあれ、前転?」

「アレが一番早いからね、あの竜どうする? 諦める?」

 

 

 特に息切れしていないリンクの問いに、私はまずは質問を返す。

 

 

「リンクはアレを見てどう思った? 倒せそう?」

「倒せないとは言わない。けどあまり自信は無い」

 

 

 そりゃそうだ。

 あの堅い鱗は彼の持っている剣やブーメラン、魔法は明らかにきかないであろう。

 他に奥の手はあるみたいだが、それでも倒せるかどうか。

 

 

「とりあえず、コレ続けて体力削ろうか」

「そうだね、撃って逃げてを繰り返してたら流石に倒せるでしょ」

 

 

 淡々というリンクに、私は同意する。

 この状況ではそれが一番合理的で効率的なやり方だ。

 まぁミスったら即座に死ぬわけだが、死ななければどうと言うことはない。

 と、思っていると。

 

 ――フェルンが私の服を引っ張った。

 

 

「…………」

「だよね、竜と追いかけっこなんて魔法使いのやり方じゃ無いよね」

 

 

 私はフェルンの頭を撫でた後、近くにある村を指を指して『あっちにいく』という意思をリンクに伝える。

 

 ――これは、素直に仲間にするか。

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