幼馴染がアイドルを始めたらしい   作:yskk

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前話の真姫ちゃん視点
海未ちゃんのときの話と同じような感じで、内容自体は前話とほとんど一緒


EX:あなたの知らない私

 あぁ、何なのよ、もう。

 さっきから私の中でモヤモヤとした霧の様な物がずっと晴れずにいた。変に自惚れるつもりは無いけれど、人並み以上には頭も良いつもりだし、感情の処理だって上手に出来てきたつもり。でも今は違う。頭は上手く働かないし、胸の中のつっかえは取れないまま。

 原因ははっきりと分かっているわ。そう、諸悪の根源はアイツ。さっきアイツと会ってからこんな風になってしまった。だってその前までは何ともなかったはずだもの。もっと言えば、いつものように朝起きて、授業を受けて、放課後みんなと練習をする。そこまでは全くもって普段通りの私だったはずだわ。

 それなのに、あいつがひょっこり顔を見せるから。その瞬間から私の心は乱されていた。

 大体、練習が全て終わってから来るんだもの、来るんだったらもっと早く来なさいよ。そう心の中で叫んでみたけれど、よくよく考えたてみたら、そうしたらそうしたで、今度は練習に集中できていなかったかもしれない。うん、間違いない。だとしたらあのタイミングで来てくれたというのは、とても助かったということになるのだけれど、それを認めてしまうのはとても癪だった。

 

「……ふぅ」

 

 私と航太、花陽、凛の四人でこのファミレスに入ったはずなのに、今は私一人ぽつんと席に取り残されていた。彼女たちはドリンクバーを頼んで、私は普通に紅茶を一杯頼んだだけだから仕方がないのかもしれないけれど、やっぱりなんだか納得がいかない。

 

「普通、女の子を一人残していったりしないでしょ……」

 

 誰にも聞こえないような声でぼそりと呟いた。我ながら理不尽な事を言ってる。そんな自覚はもちろんある。でも、三人で話をしながらドリンクを選んでいる姿を遠くから眺めていると、自然とそんな愚痴が溢れてしまう。だって、しょうがないんじゃない。私一人こんなに苦しんでるっていうのに、当の本人はのほほんと別の女の子とおしゃべりしてるんだもの。

 ……っていけない。これじゃまるで私がただ嫉妬してるだけみたいじゃない。ないない。ありえないわ。別に恋愛感情があるってわけでもないし。そうよ、ただアイツの失礼な仕打ちに怒っているだけなんだからっ。

 

 事の発端は、μ'sのメンバーのみんなと私の家の別荘に合宿に行った時のことだった。というかそれ以前に、せっかく私が場所を提供したっていうのに、行かないなんて言い出すんなんてどういうつもりなのかしら。

 って、それは別にいいのよ。問題はその後。実際に現地に行って、夜になってみんなで布団を並べて寝ようということになった。そして布団に潜り込んで、さあ寝ようとした時、いわゆるガールズトーク的なものが始まった。修学旅行なんかでよくあるようなあの雰囲気。正直言って私はあの感じは苦手だったんだけど、今回は黙って聞いている分には別に嫌な気はしなかったわ。だって、その、仲良くなった友人の話だもの。趣味や好み、考え方。私の知らなかった彼女たちの新しい情報が耳に入ってくる度に、なんだか少し嬉しくなったわ。

 

 でもそうしているうちに事件は起こった。彼女たちの取り留めのない会話を、特に口を挟むわけでもなく、ただ聞いていたんだけど、話の流れからアイツの話題になったの。最初は今まで通り話を聞いていただけだったけれど、次第に違和感を感じるようになったわ。だって、この中じゃ私しか知らないだろうと思っていた航太の昔のことを、当然のようにみんな語っているんだもの。しかもそんな事を知っているということに対して驚きを見せる子なんて一人も居なかった。そうなるともう限界。私は思わず、ちょっと待って、なんて大きな声を上げていたわ。

 当然みんなの視線は私に集まるわけで。その場は恥ずかしさを隠しながら、何とか誤魔化したけど、やっぱり航太がみんなと幼馴染だったという事と、それを私だけ知らなかったというのはとてもショックだった。

 

 

 

 

 どうしよう、どうしよう。今度はそんな言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。凛と花陽が先に帰ってしまったから、図らずもふたりきり。問いただすには絶好のシチュエーション。でも、どう切り出していいのやら全く分からない。

 あーもうっ。いつもだったら必要の無いときにまで話しかけてくるのに、何でこんなときに限って黙ったままなのよ。そんな八つ当たりに近いような言葉を頭の中で呟いてみたところで、結局何が変わるわけでもなかった。

 しかたないわね……。諦めて腹を括って口を開くことにしたけれど、何故か非を認めさせようとしている私の方が緊張して胸が高鳴っていた。

 

「……ねぇ」

「はいっ!」

「……何か私に言うことない?」

「えっ?」

 

 ちょっと遠まわしに言い過ぎたかしら。航太は一瞬驚いたような顔を見せてから考え込んでしまった。でも、しばらくそうしていたあとに、航太はとんでもない事を口走った。

 

「……えっと、真姫のパンツ盗んだのがばれた、とか?」

「ゔぇええ!? な、ちょ、ちょっと何それ、私知らないんだけど!」

 

 ちょっと待ってよ。一体どういうこと? 私自身、全然気が付かなかったってことは普段ほとんど穿いてないようなヤツってことかしら。ということはアレ? それともあっち? そもそもいつの間に盗ったっていうのよ。ましてや何のために。あぁ、もうっ。頭が全く働かない。

 さっきまでのモヤモヤなんて何処へやら、あっという間に頭の片隅からも消え去っていた。

 

「……まぁ、もちろん嘘だけど」

「ふぇ!? もう、な、何なのよ、それ!」

 

 ホントに何のよ! そんな嘘を付く意味が何処にあるっていうのよ。冗談だったにしろ、真剣に考えてた私がバカみたいじゃない。彼はごめんごめん、なんて悪びれる様子も無く謝っていはいるけれど、もう怒る気力も無いぐらいにどっと疲れてしまった。

 

「ついでに、答えの方も教えてくれると助かるんだけど……」

「答え?」

「だからほら、言わなきゃいけないとか何とか言ってた事の正解を」

「あっ」

 

 そんな航太の言葉で、遥か彼方へと旅立って行った悩みがとんぼ返りして戻ってきた。わざわざ言わなければ、少なくとも今は思い出さなくて済んだかもしれないっていうのに。まぁ、そうしたところで後でまた悩むことになるのは目に見えているんだけどね。

 というか結局、思い当たる節は無かったってことなのね。だったらいいわ、きっちりと説明してあげる。そう決意して、私は大きく一つ息を吐いてから、口を開くことにした。

 

「ごめんなさい」

「……とりあえず謝っとけば済むと思ってるでしょ?」

 

 一応は神妙な顔をして私の話を聞いていた航太は、最後までそれを聞き終えると素直に謝罪の言葉を口にした。

 ずるい。いつだってそう。私が怒っているときは変に言い訳なんかせずにすぐ謝ってくる。それが本当にずるいと思う。唐変木で朴念仁の癖に私の性格だけは良く理解しているんだから。

 だってそうでしょ。素直に謝られたりなんかしたら、それ以上追及しようなんてこと出来ないもの。そんな事をしたらどっちが悪いことをしてるんだか分からなくなるわ。

 

「というか、ホントに言ってなかったけ?」

「聞・い・て・ま・せ・ん」

「ちなみに他のみんなは?」

「全員知ってたわ」

 

 航太は改めて私の言葉を確認する。彼の口ぶりから察するに、本当に他意があってしたことではないのだろうと思う。元々そんなことは私だって分かってはいる。悪意があってそんなことをするような人間じゃないってことぐらい、十分に承知しているわ。ただ彼の口からこの耳で実際に聞いて確認したかった、ただそれだけ。

 

「ごめん」

「だからっ……」

「いや。意図的ではないにしろ、不快な気分にさせたなら悪かったなと思ってさ」

「……」

「でもほら、あの中じゃ真姫が一番付き合い長いわけだからさ。だから他のヤツが知らないような俺のことも知ってるんだから、真姫の勝ちじゃん、みたいな?」

 

 ……何それ、意味わかんない。フォローしているつもりなんだろうけれど、全然フォローになってないんだもの。ましてや恋人や好きな相手以外にそんな台詞を言われたってちっとも嬉しくない。別に航太に対して恋愛感情があるってわけでもないし。……多分。

 

「大体、自分は昔のことなんてよく覚えてないくせに」

 

 そもそも、私が昔話をしても覚えてないなんて言うくせに、どの口がそんな事を言うのかしら。半ばそう呆れつつも、彼の言っている言葉が少し気になっていた。

 

「……ねぇ、ホントに?」

「ん? 何が?」

「だ、だからその、今言ったことよ」

「え!? あぁ。それは本当だけど」

「……そう」

 

 素っ気ないそぶりで、興味の無いように振舞っては見たけれど、やはり心のどこかで、航太の話した事実に喜びを覚えている自分がいた。

 やっぱり彼はずるい。私の気持ちなんて全然分かってないくせに、私の欲しそうな言葉を無意識でポンと投げつけてくるんだもの。その証拠に、さっきまでの憤りが嘘みたいに晴れていた。

 




グダグダ言いつつも、結局書いちゃった……
だって書いてる方としては楽しいんだもの、しょうがないね

元々、箱推しというかメンバー全員大好きだったけど
書いてるうちに更に好きになっていく

とりあえず、真姫ちゃんと結婚します
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