ロキの”夫”を目指して   作:ロキの夫(自称)

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"アイツ"

 

「ロキ……結婚、するの?」

「――――は?」

 

ある日。【ロキ・ファミリア】の拠点である『黄昏の館』にて。

 

ロキはアイズから聞いた言葉にあんぐりしてしまう。

 

「……すまん、もういっぺん言うてくれる?」

「結婚、するの?」

「……誰が?」

「ロキが」

 

もう一度聞いてみたが、聞き間違いではなかった。

 

どうやら、アイズたんはウチが結婚すると思うとるらしい。

 

――結婚??

 

「はぁああああああああッ!!? うっ、ウチが、け、結婚やとぉおおお!?」

 

何が理由でアイズたんの口から、自分が結婚することになっているのか。

 

その事実に、激しくうろたえてしまう。

 

「あ、アイズたん……いっ、一体どうしてそないなことになってるん?」

「えっと……話を聞いたから」

「話?」

 

話を聞いたから、ウチが結婚すると思っとった……? な、なんやその話とやらは?

 

「うん……ロキのことが、“好き”なんだって」

「好き、やと?」

 

好き、好き。それは異性としての“好き”なんやろか。それとも――って、それよりも。

 

「――誰が言うとったん? それ」

 

ウチが結婚なんて結論になっとるのかはわからへんが――神であるウチを“好き”なんて物好きもおるんやなぁ。

 

――――あかん、自分で言うといて悲しくなってきよったわ。

 

「……分からない。多分、冒険者」

 

アイズたんは、わずかに眉をひそめて困ったような表情を見せる。でも……とその直後話を続ける。

 

「『俺はロキが好きなんだ。ロキと添い遂げたいから俺は強くなって帰ってきたんだ』……とその人が言ってたから」

「ばっ――――」

 

――これはもうアカンやんけ。“添い遂げたい”なんて言ったらもうそっちの意味で確定的やん!?

 

「……うそぉ」

 

ま、マジでそんなん言う奴がおるん? ウチのファミリアに入りたいから、ウチをだしに使っとるとかその方が信ぴょう性あるんやけど。

 

……あかん、また悲しくなってきよった。

 

――――というか、ウチと結婚したいらしいその人とアイズたんはいつ会ったんやろか。

 

「ん、ダンジョンで」

 

それを聞くと、このような回答が返ってくる。

 

だから“多分、冒険者”と言ったわけやな。

 

「……どんな感じのヤツやった?」

「どんな感じ? うーん……」

 

首を少し傾げて、うーんと唸り始めるアイズたん。

 

「……あ、ロキと同じ髪色をしてた」

「へっ、ウチと?」

「うん。それと男」

「お、男……」

 

ウチと同じ髪色をしていて、男……か。

 

……なーんか見覚えがありそうな気がするんやけど、これ気のせいか?

 

「あっ、アイズさん!」

 

そこに、レフィーヤが駆け寄って来る。

 

「レフィーヤ……ロキ、結婚するんだって」

「え゛ッ」

「ちょ、アイズたん!?」

 

なんてことを言うねん、アイズたん!?

 

「その――おめでとう、ございます。 あれ、ロキって結婚できるんですか……?」

「それはどういう意味や」

 

何気に毒ついてくるやん、レフィーヤ。

 

「ち、違います!? そもそも神様って結婚できるんですか、って気になってて……!」

「なんや、そういうことね。神様同士の結婚なら、まぁ話に聞くんやけど……ってか、ウチ結婚なんてせぇへんよ?」

「そ、そうなんですか?」

 

あわあわと慌てだすレフィーヤ。

 

「ロキのことが……好きって言う冒険者が、いたから……」

「ロキを好きなんて言う冒険者がいるんですかっ!?」

「……」

 

ちょーっと、驚き方が大げさすぎひん、レフィーヤ?

 

「ご、ごほん……なるほど、それでアイズさんはロキが結婚する、なんていったんですね」

「うん、結婚するなら、その冒険者もファミリアの“家族”になるのかなって」

「そういうことですか。……実際のところ、どうなんですかロキ?」

「どういうことも何も――ん、待てよ……」

 

すぐさま否定しようとしたロキだったが、先ほどアイズが言っていた“ウチと同じ髪色のした男の冒険者”に心当たりがあるような気がしてきたため、不意に話を止める。

 

「……ロキ?」

 

ウチと同じ髪色……同じ髪色……あ、ま、まさか……アイツなん?

 

「……やばい、ちょっと心当たりあるわ」

「えぇッ!? や、やっぱり結婚するんですか!?」

「いや、せぇへんわッ!? ちょっと心当たりあるって言うとっただけやん!? ウチを結婚することにしたいんかレフィーヤはッ!?」

「……ロキ、うるさい」

「そもそもこの話を始めたの、アイズたんやん! なんでうるさい言われなアカンねん!? もーこれも全部アイツのせいやぁああああああッッ!!」

 

思い当たる人物に向けて、呪詛に近いモノを吐き出すロキであった。

 

 

 

 

「ロキ、一体どうしたんだい? 緊急召集なんて」

 

時は少し進み。【ロキ・ファミリア】の団長達含め団員全員が、集合場所に使われる庭園に集まっていた。

 

ロキから緊急召集がなされたこともあり、緊迫とした空気になっていた。

 

「あー……うんとな、それな……」

 

何やら言葉を濁す様子のロキに、何が出てくるのかとざわざわし出す団員達。

 

「……ロキ、結婚するんだって」

「「「……は?」」」

 

この場にいる、【剣姫】であるアイズのその一言で、一瞬静かな間が空いた。

 

なんで誤解される事言うん、アイズたん!!?

 

「「「ええええぇぇっっ!!?」」」

 

そして、次の瞬間多人数の驚いた声が場に響き渡る。

 

「ほ、本当なの、ロキ!?」

「嘘ぉっ、結婚するんだ! ねねね、相手は誰なの!?」

「まさかあのロキが……のぅ」

「けッ、酒臭い女神と結婚なんざとんだ物好きもいるもんだなァ?」

 

――ベート、お前後でしばいたる。

 

「皆、落ち着いてくれ」

 

団長であるフィンが、そう一言を打ち出すと同時に右手を挙げる。

 

すると、シュン……と騒がしかった場が嘘のように静まった。

 

「ロキ……アイズの話は、本当なのかい?」

 

妙に神妙めいた顔をしたフィンはそう問いかけてくる。

 

「ちゃうねん。そういうことやけど、そういうことやないねん」

「……違う、んだね?」

「せや、ちゃうねん。そういうことやけど、そういうことやない」

「どっちなのかハッキリしなさいよ、ロキ」

 

ウチにそうツッコミをかけるティオネ。

 

「ちゃうねん……ウチもどうしてええか分からへん……」

 

今起きとるであろう事態に、思わず頭を抱える。

 

「――ロキ。どういう事なのか、説明をお願いできるかい」

 

改めて、毅然とした口調でそうフィンに言われる。

 

「……せやな」

 

ひとまず、深呼吸を一つする。

 

「――フィン達は知っとるかもしれへんけど……“アイツ”がオラリオに帰ってきとるかもしれへん」

「アイツ?」

「せや……“ラルク”がな」

 

“ラルク”と、そう口にするとフィン達──ファミリアの最古参とも言える彼らは、あぁ……と納得する表情をした。

 

「彼か……何十年ぶりになるのかな」

「オラリオに帰ってきよったという事は、本当にロキとの事やるつもりかの?」

「……そうだとしか考えられんな」

 

ロキと同じ人物を思い浮かんでいるであろうフィン達は、神妙な顔をしていた。

 

「――その"ラルク"って、一体誰なのっ?」

 

話の続きが気になってしょうがないと言わんばかりに目を輝かせて、そう口にするティオナ。

 

ティオナだけではなく、他の団員達も同意見のようであった顔をしている。

 

こりゃあ、話しない事には逃がしてくれへんなぁ……

 

そう思ったロキは、渋々とそう話を繰り出し始める。

 

「今から何年前になるやろか……ラルクは、ウチに求婚してきたんよ」

「「「求婚っ!?」」」

 

求婚、とそう聞いた団員達は驚きの声を上げる。……なんか鼻につくなぁ?

 

「ウチも最初はからかってきよるだけやと思ったんやで? でもアイツと接する内に、ああ、コイツ本気なんやなって思うてきて……」

 

ごくッ、と場にいる誰かが息を呑む音がやけに大きく聞こえてきた。

 

「でも、ウチ神やん。 ヒューマンと神が結婚なんてあまり聞いたことせぇへんし、ウチかてファミリアのこともある。それで求婚に応えられなかったんよ」

 

でも、アイツは――――

 

「そしたらアイツな、どうしても諦められないって感じでなぁ……そこで、ウチはこう言ったんよ」

「……何て言ったの?」

「『冒険者の誰よりも強くなりぃ。そうなったら考えといたる』とな」

「……ロキ、それは流石に無茶じゃない?」

「っていうか、遠回りに断ってんだろ……冒険者の誰よりもって、無理難題だろ」

「うん、流石にウチも無理難題やと思ってん。それで諦めてくれればええ……と思ったんやけどなぁ」

 

あの時、ウチがそう言ったらラルクは、目を輝かせておったわ。

 

『――つまり、誰よりも強くなったら求婚を認めてもらえるんだな!?』

 

そう興奮気味に言っていたのを今でも覚えている。

 

あの頃は、【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が猛威を振るっていた時代。

 

冒険者の誰よりも強くなる、となれば……史上最強であった――【女帝】。そのレベルは誰しもがたどり着けなかったLv.9。

 

【女帝】は、まさしくあの時代では頂点だった。並程度の冒険者ならば誰もが、【女帝】の前では“弱者”と化す。

 

それほどに、一線を引く存在だった。

 

その者を超えるなどと――どんなに困難な道になるのか。

 

それが分かっているからこそ、ウチはこんな事を言ったんや。

 

「今思えばホンマに……なんて事を言ったんや、と後悔しとる……」

 

あの時のウチは、まだ青かった。アイツの求婚を一時的な憧れのようなモノと思っとった。

 

一時的憧れにしても、なんにしても“誰よりも強くなれ”なんて無理難題を押し付けてしまったという気持ちが強かった。

 

それで無茶をしてアイツが死んでしまわないか、という可能性など今の今まで忘れていたのだから。

 

――――結局、アイツはウチんとこではなく他のファミリアの所に行きよった。

 

その時のアイツが、何を考えてそうしたのかは分からなかった。こうしてる間にアイツとはそれっきり。

 

それで、何となく覚えている――程度にしかなかったんやけどな。

 

「――その彼が、オラリオに帰ってきている。それはつまりロキとの約束を果たす時が来たという事……なんだね?」

 

一通り話を聞いたフィンは、相変わらず神妙な顔をしてそんなことを言う。

 

「――そうなる。元々ウチが撒いた種やからしゃーないにしても、ホンマに冒険者の誰よりも強くなっとったら……なぁ」

 

そうしたら、いよいよアイツの求婚に応える……と思うと思わずため息を吐きそうになる。

 

「ロキ……なんか、笑ってる?」

「へ?」

 

アイズたんにそう言われて、一瞬頭の中が真っ白になった。

 

笑っ……とる? ウチが?

 

試しに、口に手を当ててみると――確かに、口端が上がっていた。

 

……ロキとしては、笑える要素など何一つない。

 

むしろ、アイズたんにそう言われて――自分と相違う自分がいたことに驚きを覚えていた。

 

「……全部アイツのせいや」

 

そしてそれを誤魔化すかのように、"アイツ"に責任を押し付けるロキであった。

 

 





続き……いる?(震)

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