高校生を轢いたら異世界転生したんだが? 作:巻き込まれ転生者
男は目の下に濃い隈を作り、エナジードリンクとタバコをお供に眠気を紛らわしながらトラックを運転していた。
少しばかりの頭痛もする。
長距離トラックの仕事をしているため腰にもかなりの疲労が溜まる。
早くどこかに止まり休憩を取りたい。
そんな急ぐ心がこの後の悲劇を呼び込んだのかもしれない。
辺りは暗く、車のライトが前方を照らすのみ。街灯も無いそんな山道。
それなりスピードを出し、カーブに差し掛かったその時だった。
「──っ!?馬ッk……!」
脇から高校生が目の前に飛び出してきた。
慌てて避けようにももはや間に合わない。
ドンッと何かが当たる感触。
いきなりハンドルを回したため車体は急旋回。バランスを崩し、横転しながら車体は壁へとぶつかる。
男はそのまま壁と車体に挟まれ運転席には血が飛び散った。
こうして男の生涯は終わりを迎えた──
◆◆◆
「──って思ったんだけどなあ…」
そんなことを呟きながら馬車の手綱を握る俺。
死んだ。俺は1度死んだ。
と、思ったらなんか生まれ変わってた。しかも中世的なヨーロッパ的なそんな時代に。
さらに魔力とか魔法とかそんなのもあるらしい。ファンタジーかよ。……ファンタジーだわ。
まあつまりはあれだ。"異世界転生"ってやつだ。
そんな世界に生まれて既に10年ほど。
今世の俺も運送業者。しかもこの世界じゃ年端もいかないクソガキの頃から社畜だ。クソが。
「おいクソガキ!酒出せ!」
「ツマミがもうねぇぞ!」
「「「ぎゃははははは!!」」」
しかも我が上司共は盗賊だ。くたばり散らかせ。
ある日俺の住む村が盗賊に襲われました。俺は人攫いにあいました。本当なら奴隷堕ちのはずでした。でも、俺は移動で役に立つよと自分を売り込みました。そしたらこうなりました。
2度目の生はクソ人生確定だな。やってらんねえぜ。
これもあれもあの時飛び出してきたクソガキが悪い。いつかあったらけちょんけちょんにしてやる。
盗賊から投げられる酒瓶が頭に当たり血が垂れる。痛い…。
ある日のこと。
例に漏れず盗賊どもの足として何とか生き長らえてる俺氏。
とある村が標的に。3分クッキングもびっくりの速度で廃村になったそこ。
離れた場所では盗賊たちが宴会をやっている。
そんな中、俺は目の前にいる"
「──俺の人生クソだろ?どう思う?」
「……ぁ……ぅぁ」
「…………」
話しかけても言葉という言葉は返ってこない。
「水、飲める?」
「………ぁ」
「飯は?」
「………ぅ」
「ジャンケンポン」
「………ぅぇ?」
……ダメだ。もはや生気がない。
確か本で読んだことある。悪魔憑きだったか。
普通に産まれたと思ったらある日を境に体が腐っていく病気……病気?病気なのか?呪いとか?いや、わからん。
この世界魔力とかあるファンタジー世界と言っても俺そんなの自覚したことないし。
「直してやりたいとは思うんだがね……」
「……あ………」
頭……らしき部分を撫でる。グチョッとした感触。
それに対して初めて声らしき声が聞こえた。
悪魔憑きは教会によって処刑される。
盗賊どもも教会に売り捌けばそれなりの金になる。故にこうしてるわけだろうが。
望まぬ生き方。同情はある。だが、何か出来る訳でもない。
普段から盗賊たちの略奪光景は見ていたから人の死に対して特に思うことも無くなってしまったが、流石にこれはいくらなんでも可哀想だ。
と、その時だった。
──盗賊たちが騒がしい。
悲鳴にも似た叫び声。
盗賊どもとは違う別の声。
風を切る音も聞こえてくる。
まさかの襲撃?盗賊たちを?
………いいゾ〜これ。やっちまえ、やっちまえ。
と思ったら唐突に俺のいる部屋の扉が開いた。
「あ、まだ生き残りがいた」
「……ども」
「ああ、ども……」
頭を下げれば相手も頭を下げる。
……なんだろう、この不思議な時間。
「えーと……殺していい?」
「うわ、初めてされるわそんな質問」
剣を構えにじり寄って来る全身黒の俺と同じくらいの少年。
うーむ、なんてこった。
「せっかく転生したのに2度目の人生はこんな終わり方かい……」
「………」ピタッ
唐突に動きを止める少年。
「……え?何?」
「今なんて言った…?」
「こんな終わり方かぁ、って」
「ああー、もうちょい前」
「……初めてされるわそんな質問?」
「あー!行き過ぎだなぁ…!」
となると残るは……、
「せっかく転生したのに…?」
「それだ!……え?お前も転生者?」
「お前もって……そっちも?」
互いに指差し確認。
交互に自分と相手を指差し2人して驚きの表情。
「生まれは?せーの…」
「「日本」」
……なるほどなあ。
「うわー、同郷は殺りたくないなあ…!」
「俺もあんまり殺されとうない」
「よし!お前僕の下につけ!」
「断る」
「即答じゃあん……」
ヤダ。なんかヤダ。
だって盗賊ぶち殺す少年ぞ?厄介事の匂いしかせんよね。
「行く宛ては?」
「ない」
「じゃあ、僕の下に着こうよ……」
「絶対嫌」
「断固拒否か……」
しゅん、とする少年。
あ、そういえば、
「お前こいつ治せる?」
「え?……ってこれ悪魔憑き?」
「そーそー。さすがに可哀想でな」
「流石の僕でも医療技術は無いしなあ……って待てよ?これは」
となにやら気づいた様子を見せる少年。顎に手を当て何度か頷き、ブツブツと独り言を始めた。
「これは、使えるな」
「……は?」
「あ、ねえ下につかなくていいからお手伝いしてよ」
「何をさ」
「僕が陰の実力者になるのを」
何言ってんだコイツ?頭おかしいんじゃねえの?
馬鹿なの?馬鹿なんだろうなあ。
「この子のことはどうにかしてあげるから」
「……あー、まあいいか。もう行く場所ないし。雨風しのげる寝床くらいはくれよ」
「ああ、契約成立だね」
手を差し出してくる少年。
それに少し躊躇ったが、手を握った。
「僕は……今はシド・カゲノーって名前だ」
「俺はヒィロ・ライト。……まあシクヨロってことで」
続きは……誰かに丸投げしたい。