高校生を轢いたら異世界転生したんだが?   作:巻き込まれ転生者

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悪魔憑き直してくれた命の恩人で組織のボスという高嶺の花的な立ち位置のシド(シャドウ)

口は悪いけど同じ屋根の下で親身になって面倒を見てくれた同年代の異性。

七影は恋愛感情を持つとしたらどうなるんだろうなと考えてみたりした。


第11話

 

 

「あー、クソが」

 

地下水道に出ると見張りの兵がそこかしこにいた。

 

ようやく一段落。

兵士から奪った剣を肩に担ぎ、壁を背にして腰を休める。

ポケットからタバコを取りだし一服。

これだこれ。不味いけど美味い。

 

さて、にしてもコイツらは国の兵士じゃねえな。教団の下っ端と見ていいか。

 

王女サマ、王族の血……濃い英雄の血。アルファが言っていた言葉。

うーん、俺馬鹿だからよくわかんねえけどよ……馬鹿だからよくわかんねえや!

 

まああれだろ?王女サマの血が欲しくて教団の息がかかった騎士団を利用して誘拐。からの罪を俺になすり付け。

それが出来るやつとなるとそれなりに強い権力持ってるやつ……、

 

「………」

 

予想は出来る。どうせあいつだ。

 

こんなクソ騒動に巻き込んでくれやがって。スクラップにしてやる。ついでにミケの泣き顔見れたらラッキーだな。そうなったら腹よじれるまで笑ってやろ。

 

「さてと」

 

まだ息のある兵士の口の中へタバコをポイッとな。

そのまま立ち上がり、地面でのたまう"ソレ"の顎をタバコと一緒に潰して先に進む。

 

……自分で思ってるより、相当こいつらに対して怒りが湧いてるんだなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、歩いてどれほどか。

地下水道の光景。同じ風景。

 

もはや飽きてきた。帰りたい。帰って風呂入って寝たい。もう疲れた。

そう思う度にこの先にはミケの泣き顔が待ってると喝を入れ、やる気を取り戻す。

 

その時、聞こえてきたバシャッと水が跳ねる音。

 

ようやくだ。やっとたどり着いたか。こんなに歩かせやがって。子のストレスはあいつにぶつけてしまおう。

 

そうして曲がり角を曲がると、その目に映る2つの人影。

 

「ようやっと見つけた…」

「「………!?」」

 

そこに居たのは、下水の水に浸かる大っ嫌いなクソ王女のミケと上級クラス顧問、学園の剣術指南役のゼノン・グリフィだった。

 

「ひ、ヒィロ…?」

「あん?何名前呼びしてんだ?いつもみてえに上から目線でポチって言わねえのかよ。調子狂うだろ」

「……なによ、そう呼んで欲しいの?」

「呼んだら殺すわ。つか、ボロボロの雑巾みてえにされてると思ったら元気に下水で水浴びか?元気なのはいいが臭えから近づくなよ」

「………」

 

軽口は帰ってくるが、それでも声音に覇気がない。

これじゃ猫かぶりのミケじゃなくて、大人しい子猫のミケになっちまうな。

 

「これはこれは……いや、驚いた。まさかこんな場所に君が来るとはね。安心してくれ。アレクシア王女はこっちで保護した。君はもう戻るといいよ」

「な…!?」

「………」

 

……こんな状況でもこんな言い逃れが通じる相手だと思われてるのか。

舐められてんなあ。腹が立つなあ。頭に血が昇っちゃうなあ…!

 

「どうしたんだい、黙り込んで」

「いやなに、驚いだけだわ。てめえらの組織はすごい技術を持ってんだなあと」

「……ッ」

「……ゴミが喋るたぁ、こりゃ驚きだ」

 

その言葉に突っ込んでくるゼノン。

放たれる突きを身を捩って躱す。スピードは……アルファよりは下だな。

 

「……教団のことを知ってるのかな?」

「知らねえ。知りたくもねえ。興味もねえ。どうでもいい。そんなくだらねえ組織。勝手にやってれば?」

「君に罪を擦り付けようと思っていたが……これは中止かな。君はここで殺すとしよう」

「出来んのぉ?ゴミカスの分際で」

 

直後、首元に迫るゼノンの剣。

それを仰け反る形で紙一重に避ける。

 

そのまま二撃三撃と迫る剣閃に対して剣を突き出し受ける。

 

「これは驚いた。まさかこれほどの腕前を持っているとはね。授業では手を抜いていたのかな?」

「手を抜いてたっつーか、別に披露する必要もねえしな」

「そうか、なら私ももう少し本気を出すべきだね」

 

直後に高まる魔力。

ギアが上がったのが嫌でもわかる。

 

だが俺はこのまま"魔力を使わず"にこいつと戦う。

 

ゼノンの連撃が飛んでくる。

最小限の動きで、最大限の効果を。逸らし、受け、時に避ける。

 

 

 

 

 

アレクシアはゼノンとヒィロの戦いに魅入っていた。

 

幼い頃から神童と呼ばれ、いくつもの大会で優勝し、剣術指南役にまで登りつめた男、ゼノン・グリフィ。この国で彼の名を知らぬ剣士などいないのだ。

 

それに相対するは平民の出のただの不良学生。

 

こんな分かりきった勝負。ただの一方的な虐殺、そうなることは誰もが予想すること。

 

だが実際には両者の実力は拮抗していた。

 

さらにはギアを上げたゼノンに対して、ヒィロは魔力を使っていない。

そんな彼の初めて見る本気の剣術、そして表情。

 

アレクシアはその剣さばきとヒィロの姿に目を離せないでいた。

 

「凡人の剣……」

 

これが、彼女の目指した剣だった。

才能や力や速さじゃない。基本の積み重ねによって作られる持たざる者の剣。

 

「俺ァよォ……要領悪くて不器用だからよォ……愚直に同じ動きを続けるしか出来なかったんだよなァ…」

「クッ……!」

「応用とか、そういうの出来ねえからよォ……わッかりやすい動きしか出来ねぇんだよなァ!!」

 

そうして一旦距離を取るヒィロはその動きとともに鞘に剣をしまい、腰を捻った体勢に。

 

「……ッ!?それは…!」

 

ゼノンの驚きとともに放たれる剣技、"居合"。

 

刀身の速度、ヒィロ自身の速度。その2つが合わさりゼノンの体を防御ごと吹っ飛ばした。

 

「おら、どうした立てよ。テメェの才能も魔力も俺の努力が叩き斬ってやるよ」

「……ッ」

 

ヒィロの言葉に歯噛みするゼノン。

互いに未だダメージは入っていない。だが、実力差はすでに明白。

 

「……つってもまあ、このままだとテメェを斬ることが出来ねぇ。魔力で強化したその体じゃあ俺の最速の居合でも防御が間に合っちまう」

「だったらどうする気だ…!」

「簡単だ。必殺技を使おう。誰もがやったことある技だぞ」

 

そう言ってヒィロは片手で持っていた剣を両手で握る。

構えは刀身が正中線に来るように。

そのまま、切っ先を上へ向けるように振り上げる。

 

「誰もが剣を握れば最初にやる型だ」

「……まさか、それが必殺技という訳じゃないだろうな…!?」

「いいや、必殺技だ」

 

その構えから繰り出される剣は上から下への振り下ろし。いわゆるただの素振りのようなものだ。

 

それを必殺技だと言い張るこの男。

 

しかしアレクシアはその構えの美しさからその言葉に嘘は無いと感じていた。

フォームに乱れなく、呼吸は整い、剣を握る手にも余計な力はない。正しく完璧な構え。

 

努力をする彼女だから分かる、ヒィロの努力量。

果たしてこの男はこの構えから放たれる動作を何度繰り返したのだろうか。

 

「……居合よりも長くやってた型だ。回数を累計したら百や千じゃ収まらねえ。万……億に行くかもな」

「な、な………舐めるなァァァァァアッ!!」

 

突っ込むゼノン。

剣を構え、ヒィロの体を切り裂こうと剣閃を走らせ、それを見てヒィロもまた、穏やかにしかし鋭く剣を振り下ろした。

 

そして、地に膝をつけたのは──

 

「グッ……カハッ……!」

 

──ゼノンだった。

 

直後、地面へと落下するゼノンの持っていた剣の破片。

断面は滑らかで綺麗な太刀筋だった。

 

そして、ゼノンの体、左肩から右腰へと走る傷口。そこから吹き出す鮮血。決着は明白だった。

 

「どうよゴミカス。努力がてめえの全部斬っちまったぜ?」

 

アレクシアは姉の言葉を思い出していた。

 

──貴方の剣が好きよ

 

その言葉の意味を彼女はようやく理解した。

 

 

 

 

 

いっちょ上がりー……っと。

いやー、疲れた疲れた。剣オンリー縛りの戦いは楽しくはあるがちとハラハラ度が高すぎるな。

 

……てか、そんなことよりだ。

 

「おいクソミケ。テメェはいつまで下水に入ってるつもりだよ。はよ上がってこい」

「……へ?あ、ええ、そうね……」

 

……歯切れの悪い。そんな様子をずっと続けられると調子狂うんだっつーの。

 

「あーあー、髪も濡れてテメェは。世話妬かせんなよな、たくっ……」

「……ッ」

 

拭くもんないしワイシャツでええやろ。

頭にかぶせて、頭をわしゃわしゃ。

……うーむ、アルファ達を面倒見ていた感覚でやっちまったけど大丈夫か?大丈夫か!

 

それにしても頬が腫れてるな。

十中八九、ゼノンに殴られたんだろうな。

 

「こ、この……このまま終われると思うな」

「………」

 

立ち上がるゼノン。

懐に手を突っ込み何かを取りだした。その手にあるのは錠剤の入った小瓶。

 

元気なやっちゃ。寝てればいいのに。

 

「この錠剤によって人を超えた覚醒者となる。しかし常人ではその力を扱いきれずやがて自滅し死に至る。だがラウンズは違う。その圧倒的な力を制御できる者だけが、ラウンズになる権利を得るのだ」

「おう、そうか」

 

興味無し。勝手にやってろ。

 

ゼノンが薬を飲む。するとみるみるうちに肥大していく体。

分かりやすいパワーアップ。まさにドーピングだ。

 

回復速度も凄まじい。みるみるうちに傷が治る。

そうしてゼノンはニヤリと笑った。

 

「最強の力を見せてやろう」

「………」

 

……つまんないやつだ。

力ってのはそういうもんじゃないだろ。

 

いや、こんな奴に言ったとこで分かるはずもないか。

 

そんなことより、だ。

 

「なあ、クソゴミゼノン。俺が嫌いなやつを知ってるか」

「………?」

「一つ、飯を残すやつ。二つ、金をぞんざいに扱うやつ。三つ、ワガママで上から目線で発言が特大ブーメラン刺さってて──」

「……それ私の事言ってる?」

 

俺の言葉を遮りミケが物申してきた。

そんなわけないじゃないですかヤダー。

 

「……だが、それ以上に大っ嫌いな奴がいる。それが女を殴るやつだ。どんだけ腹が立っても女には暴力は振っちゃいけねえ。それは男して当然のマナーってやつだ」

「………ッ」

「それに、このクソ王女ってばクソなことに仮初とはいえ今は俺の彼女なんだと。このままだと俺のメンツが立たねんだわ。……テメェよくも人のツレに手ぇ出したな

 

睨みを効かせて1歩前に進むとゼノンは1歩下がった。

 

「趣味の悪ぃ体に、趣味の悪ぃ性格、趣味の悪ぃ組織と………だったらよぉ、それに合うように趣味悪い形にしねえとな………貴様の顔面の形をよォ」

「何……!?」

 

剣を投げ捨て、拳に魔力を纏わせる。

全力全開の一撃。

 

ゼノンの懐めがけて一直線に走る。

 

「クッソがァァァァアッ!!」

 

迎撃の拳を避け、そのまま低い態勢からのアッパーの形で拳を顔面へ。

 

地面に当てちゃうとここら一体吹き飛んじゃうからな。

 

「じゃあな。くたばれ」

「………ッ」

 

メキメキと頭蓋骨が砕けていく感触。

そのままふり抜き、岩盤を粉々に。そのまま夜の星空へと打ち上がるゼノンの体。魔力の奔流が吹き荒れ、直後上空にてゼノンを中心に大爆発が起こった。

 

さて、

 

「一件落着だな」

「………フッ、ええ、そうね」

 

笑うミケとスッキリした俺。

と、その時だった。

 

ヒビが広がり崩れそうな地下水道。

……スゥー、やべ。

 

「おいミケ!避難だ!崩れっぞ!」

「……え?って、ちょ…!」

 

惚けるミケを米俵のように担ぎあげ出口へ急ぐ。

穴から抜けようにもそこから崩れてきてんなら通れないし。来た場所から外に出るしかない。

 

「ねえ、こういう時はなんて言うか……お姫様抱っことかが定番なんじゃないかしら」

「ロマンチストかよ。俺にんなもん求めんな」

 

そう言うと後頭部にゴンッと衝撃が走った。

 

「いっつ……!?テメェ後頭部に肘入れただろ!?」

「あらごめんなさいね。こんなに揺れると事故が起きて当たっちゃうのよね」

「わざとだろうが…!叩き落として行こうかゴラ…!」

 

軽口を言い合いながら出口へ向かう。

 

……まあ、調子が戻ってきて何よりだなクソが。

 

 

 

 

 

ちなみに、ヒィロたちが地下でワチャワチャしてる間に地上ではシドがアトミックしてたりした。




この作品において直接的な恋愛的な描写はまだ入れてないけど、七影サイドとかの話もいつか描きたいなっては思ってるからそうなったらそこら辺の設定ちゃんとしなきゃだよなあ。

でもそこら辺の設定まだ決めきれてないんだよなあ。だからタグのハーレムってのにも"…?"つけてるし。

……読んでくれる人たちの反応見ておいおい決めてこうと思います。
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