高校生を轢いたら異世界転生したんだが? 作:巻き込まれ転生者
7人の美少女たち、シャドウガーデン(笑)のメンバーとの生活を続けて数年。こんな暮らしもようやく慣れてきた。
アルファにベータにガンマにデルタにイプシロンにゼータにイータ……あのクソガキのネーミングセンスは適当か。
いやほんと、ベータ、ゼータ、イータなんて響きが似すぎてて何回間違えたと思ってんだ。
いやしかし、俺が面倒見るという形で一緒に暮らし始めたのだが、最近はもはや俺が面倒を見られてるような立場になってきている。
気がつけばご飯は用意され、部屋は常に綺麗に保ち、一日の終わりにはいつの間にかお風呂の用意までされてる始末。
なんてこったい、7人の美少女たちのヒモになってるじゃないか。素晴らしいな。こんな楽な生活ならいつでもバッチコイだぜ。
まあ、その代わりに色々と"教育"をしてる訳だが。
例えば、アルファには一通りの家事を。ベータには俺が好きだった作品を読み聞かせ、ガンマには色んな知識を叩き込んだ。
デルタはもはやペットだ。前世で飼ってた飼い犬と雰囲気が似すぎててめちゃめちゃ甘やかしてしまう。なんだあの犬ころ可愛すぎか?
イプシロンはピアノに興味持ったらしいから一通りの弾き方を教えたし、ゼータは……あいつはなんだろう。
もはや猫みたいなあいつはずっと俺の後ろを着いてくるだけだったからなあ。一挙手一投足を観察されてた感じ。……ストーカーか?
いや確かに昼寝でそこら辺でゴロンと寝てたらいつの間にか俺の腹を枕代わりにして一緒に寝てたからな。ストーカーやな。
イータは表情を表に出さないが科学の話をしたら食い付きが凄かった。研究に没頭してしまったくらいにはハマったようで何より。分からないことがあれば聞きに来なさいね。
とまあこんな生活を続けもはや娘のように慈愛の心を持ち始めてしまった。
俺も前世をもう少し長く生きてたら結婚してこんな娘ができてたのかもしれない。
……いや、口が悪くて女寄ってこなかったんだっけ?それなら結婚出来ねえか、がはは。
さて、そんな俺は今何をしているでしょう。
「違うわヒィロ。魔力の練り方はこう」
「……こうって言われても分からんわ。感覚派かよ」
アルファから魔力の練り方を教わってました。
いやほんと何?魔力って?知らんわボケ。そんなん使わなくても殴れば人は倒せるだろ。
いつの日だったか、シャドウガーデン(笑)たるもの強くなければとか言われて、鍛えて下さいと皆からお願いされた俺。
前世は学生の頃に柔道、社会人なってから趣味で居合道をやってたためそれなりに体の使い方とか剣術は教えれたが……魔力とかそっちの類はてんでダメ。
もはやそっち方面は彼女らの方が練度が高い。俺はよう知らんけど。
ただなんかアルファ曰く、俺は無意識のうちに魔力を使ってはいるっぽい。
ただ、常人と比べて桁外れに量が多くて、量に物言わせて自身の身体能力をブーストしてる節があると。つまり無駄な魔力を使ってるらしい。
それを矯正しましょうって話になったんだが。
「こういうことに関しては……不器用ねえ」
「別にいいだろ。強さを求めてるわけじゃねえし」
「はぁ…、彼の隣に立つものがそれじゃダメでしょう」
「だから、俺はシャドウガーデンに入ってねえんだって」
彼女らはあの厨二病バカを心底崇拝してらっしゃる。それだけならいいが、なんなら俺もあのボケカスと同列に扱われてたりする。やめてくれ。俺を同類にするな。
しかもあのクソカス、最近はシド、ではなく彼女らにはシャドウと呼べとか言ってるらしい。なんだそれ。俺そんなやつと同じとか思われてんのか。泣くわ。
と、そんな時だった。
「ヒィローッ!!」
「グェッ!!?」
横からの衝撃に思わず地面へと転がった。
この声、この衝撃。そして体に抱きついてきたこの感触。
「……で、デル、タか…」
「はい!デルタなのです!今日も一緒に遊ぶのです!」
フッ、元気いっぱい、愛いやつよのぉ。
だがな、デルタよ。お前的確に人体急所の肝臓に頭突きをかましたな。息出来んのやが?痛すぎる。痛すぎて板になっちゃう(?)
「げっほ!ごほ…!」
「……デルタ、あなた…!」
「……?」
キョトン顔のデルタと怒り顔のアルファ。
このままだとデルタがアルファに説教をされてしまう流れ。
「よぅし、デルタよ。これを取ってこい…!」
「……っ!行ってくるのです!」
手にしたフリスビーを円盤投げのように投擲。直後それに向かって走り去っていくデルタ。やっぱワンコやなぁ。戻ってきたら頭をわしゃわしゃしてやろう。
「はぁ、あの子はほんとに……」
「いいじゃねぇの。笑える時間ってのは幸せなもんだ。体が腐り落ちていってたあの頃に比べりゃ今のこの時間はあいつにとってはかけがえないもんでもあるだろうよ」
「それは、そうね」
「よし、んじゃ今日の特訓終わりなー」
「何自然な流れで終わろうとしてるの。まだ続けるわよ」
……クソが。アルファが意外とスパルタだ。
「──チェックメイト」
「……!……まいりました」
アルファとの訓練も終わり、ガンマとチェス勝負。
無事に本日も勝利を収めることが出来た。やったぜ。
いやしかし、こいつ強くなりすぎだわ。戦闘面壊滅のくせに頭の回転だけはシャドウガーデン(笑)ナンバーワンだなほんと。
「35手目位の時に俺を誘い出そうとしてただろ」
「……やはり気づいてましたか」
「狙いは良かったけどなあ。狙いすぎでもあるなあの手は。成功してたらメリットはでけぇけど失敗の時のリスクは高い手だ。どんな場面でもだがリスクヘッジっつーのは大事だぞ。そこを丁寧にして攻めてきたら俺もきつい」
「精進致します」
こういうアドバイスしたら次の対局マジでキツくなる。
だがそのヒリヒリの対決はやってて楽しいものだ。次の対局が待ち遠しものである。
「あ、ヒィロさん。ここにいましたか」
「イプシロンか。どした」
「いえ、ピアノのことで少し聞きたいことが……あ、お忙しいなら大丈夫ですが」
「暇だし別にいいぞ。なんだ?」
そのままイプシロンに連れられてピアノ教室が開かれた。
シャドウ(笑)から新しい曲を教えてもらったから弾き方を教えて欲しいねぇ…。
そのままあのバカから教わっても良かったんじゃね?(鼻ほじ)
「…………」
「…………」
廊下を歩いてたら打ちひしがれるようにイータが爆睡をかましていた。
こいつ、また研究に没頭してたな。全く……、
「よいっせ……と」
首と膝の下に腕を差し込み持ち上げる。
こんなとこで寝てたら風邪引きますよーっと…。
「んん…?あ、ヒィロ……」
「お前、寝る時は自分の部屋で寝ろっつってんだろ」
「んん……」
一旦起きてまた眠る。スヤスヤしやがって。いっつもこうやって運んでんの俺ぞ?もっと感謝されてもいいと思う。感謝しろ。
で、だ。
「ゼータはまた俺の後ろつけて何しよる」
「見つけたから来た」
「ああそう」
「………」
「………」
「………」
眠るイータを運ぶ俺の横を歩くゼータ。
……なんだこれ(なんだこれ)
「最近」
「ん?」
「最近デルタにばっか構いすぎ」
「……別にそうでも無いだろ」
何故にデルタ?と思ったが、そういやゼータとデルタってちょっと仲があれだもんな。対抗意識か?
「ねえ、今度付き合ってよ」
「あ?何に?」
「買い物、とか?」
「………」
家でのんべんだらりとしてたいんだけどなあ。毎日がエブリデイで疲れるし。
……いや、だがまあゼータからの誘いかあ。
「まあいいか」
「……!じゃあ明日」
「……急だな。まあいいけど」
「よし。じゃあもう行くから」
そう言って去っていく。
マイペースなやっちゃ。さすが猫。……顎撫でたらごろごろ鳴くんかな?
「………」
「……あ?」
腕をぎゅっと掴まれる感覚に下を向くとイータが目を開けこちらをジト目で見てきていた。
「なんだよ」
「………別に」
そう言ってまた目をつぶる。
……年頃の女子はよくわがらん。
「今日は何を読み聞かせてくれるんですか?」
「あー、じゃあ簡単に赤ずきんでいいか」
夜。この時間になるとベータが寝る前の読み聞かせをしてくれと言ってくる。
ベッドに横になる彼女の横にイスを持ってきて、そこに座り読み聞かせ。読み聞かせとは言ってるが基本前世の絵本とかの話なので手元に本は無い。
記憶頼りで時にアレンジを加え物語を作る。
「なんでそんな森の中におばあさんの家があるんです?」
「あー、隠居だ。自然に囲まれたいとかってあるだろ」
「なるほど」
……ベータはこうしてどうでもいいとこに疑問を持ったりするからやりづらい。辻褄合わせがしんどいでおっちゃんは。
「……食べられたんですか?」
「まあ。物語はこっからが盛り上がりを見せるから安心してくれ」
「はい」
しかも全然寝やしない。
もはや次の展開が待ち遠しとばかりに急かされる。いや寝ろよ。
「それからどうなりましたか」
「なるほど、では続きをお願いします」
「死んでなかったんですか?これは驚きですね……」
………絵本の話でそんな盛り上がってるやつ、俺ァ見たことねぇぜ…。
しかも真面目な顔して言うもんだからウケる。
とまあ、話を一通り語り終え、日常会話をすると段々とまぶたを下ろしていくベータ。
眠ったのを確認してから、部屋を後に。
「………ふぅ」
廊下に出て息をこぼす。
……存外、この暮らしを楽しんでる節があるなあ。
しみじみとそんなことを思う。ただ不満があるとすれば、
タバコとアルコールが欲しい。
モチベを上げさせて。