高校生を轢いたら異世界転生したんだが? 作:巻き込まれ転生者
時が経つのは早いもので俺は15歳になっていた。無事に学園への入学を果たし、今は王都にいる。
学園での生活は既に二ヶ月が過ぎようとしていた。
「………」
渡されたプリントに目を通す。
実技試験の結果表。判定はD。魔力量は人の数倍あるのに制御がお粗末、的なことを書かれていた。
……まずい、これは非常にまずい。
結果なんてどうでもいいが、この後に待ち受ける展開がまずいのだ。
痛む頭を手で押えているとこちらに話しかけてくる人物が2人。
「お、ヒィロ。それ実技試験の結果表だろ?」
「シドくんはC判定。僕らはB判定でしたけど、ヒィロくんはどうでしたか?」
「………っ」
なんってことだ。誰よりも下の成績じゃないか。
彼らはこの学園に来てからの友人。ジャガ・イモとヒョロ・ガリ。……この世界の人の名前ってなんでこうも適当なんだろうか。
腹は立つが悪い人間では無い。……腹は立つが。
「なんだその顔色。もしかして……」
「あ、D判定ですね」
「マジかよ。シド、ヒィロはDだってさ」
「何…!?」
おいコラ、何勝手に覗いてんだ。プライバシーの侵害だ。死ね。
「ヒッ…!?あ、相変わらずの目つきの悪さ。人を殺しそうな目ですね」
「そんな目してもダメだぜ。テスト前にした約束覚えてるよな?判定で負けたヤツは罰ゲーム」
「……俺はそれに良しとした覚えはねえ。シドにやらせろよ」
「ダメだ。ほら行くぞ」
クソが。
……シドは何を睨んで見とんねん。罰ゲーム受けなくて嬉しいはずだろ。……ああ、余計なこと考えたっぽいな。
今回ばかりは譲りたい。
「アレクシア王女。どうか私とお付き合い願えないだろうか。共に貴重な青春を過ごしたいんだ」
「ごめんなさい。悪いのだけど興味が無いの……」
人の告白を物陰から見る
ほんとにやるのか。憂鬱だ。とても憂鬱。帰りたい
「おお、相変わらずバッサリだな」
「彼は公爵家の息子さんですね。それを突っ撥ねるとは、やはり手強いですね……」
告白を断った女子。アレクシア・ミドガル。
この国の王女サマ。恋愛なんてくだらないとばかりの言葉。
俺は今からあの王女サマに罰ゲームで告白しなきゃならん。なんで俺がこんな目に合うんだ。貧乏くじにも程がある。
「……学園の人気者に告白して玉砕。僕のモブ生活のプランが…!まさかヒィロがここまで魔力制御において落ちこぼれだったとは」
「言いたい放題言いやがって死ね」
シドはやっぱりくだらないことを考えてたか。代わりにやってもええんやで。
それはそれとして落ちこぼれという発言は見過ごせんくたばれ。
「……ほんとにやんの?」
「たりめーだろ!!」
「どうせ振られんのに?」
「バーカ、だから面白いんだろ。とにかく他人がこっぴどく情けなく振られるとこが見てーんだ俺は」
「背骨へし折るぞ貴様」
「いいから早く行ってこいって!」
そう言われ背中を押される俺。
付き合う人間を間違えたな。
ため息をひとつ吐き出し。歩き出す。面倒だがチャチャッと適当に終わらせよう。
「……おい、見ろよ。あの歩き方」ヒソヒソ
「ポケットに手を突っ込んで……あれがほんとに王族に合いに行く平民の姿ですか?」ヒソヒソ
「もうヤンキーだね」ヒソヒソ
「カタギじゃねーな」ヒソヒソ
「身代金要求する感じの顔ですよ」ヒソヒソ
「もう輩だね」ヒソヒソ
聞こえてんだよクソが。帰ったら汚ぇ花火を3発打ち上げてやろうか。
そんなことを考えてるうちに件の王女サマの目の前までやってきた。
あっちもこっちに気がついた様子。それを確認した俺は、一世一代の大プロポーズをするため口を開いた。
「あー……王女サマ…?……あれだ、あのー……アンタノコトスキナンダー。ツキアッテクレマセンカー(棒)」
そう言ってポケットから右手を取りだし前へ突き出した。
「「(プロポーズ下手くそか!?)」」
「ブフォッ!」
後ろからシドが吹き出した声がかすかに聞こえてきた。
「………」
無言の王女サマ。
まずったー。気持ちも籠らんし、慣れない敬語で棒読みがひでえ。まあ、どうにせよオーケーなんて貰えないし──
「あら、嬉しいわ。よろしくお願いします」
──変わらんか……って、
「……は?」
「「うぇッ……!?」」
「お…?」
「……?」
……キョトン顔の王女サマ。
今なんつったこいつ?俺の聞き間違いじゃなきゃOKしたのか?嘘やろ?……いや嘘だな。聞き間違いだ。もういっかい聞いてみよう。
「えーと……俺と付き合って……?」
「……?ええ、よろしくお願いします」
よろしく……よ、よよろ、よろし…?よろしく…?
よろしくって言葉の意味ってなんだっけ?お断りしますの意味だっけ?……なわけねえだろボケが。
………ウッソだろ、おい。
「おかしいだろ」
「おかしいなぁ」
「おかしいですね」
「おかしいな…!」
四者同じ意見。
呑気なシドと手にしたカップを揺らし動揺を隠せてないジャガと下唇を噛み怒り心頭のヒョロ。
そして頭を抑える俺。
食堂に集まった俺たちは早速先程の告白について話していた。
「公爵の男はこっぴどくフってたのに、ヒィロなんかをOKするなんて怪しすぎるなあ」
「"なんか"ってなんだよ、おいコラ」
「でもまあそのままよろしくやってろよ。王女ともなれば俺みたいなイケメンは見飽きてるからヒィロみたいな不良に少し憧れちゃってんだろうな…!」
「誰がイケメンだ?あとその中指は喧嘩売ってんのかてめえ」
ちくしょうが。面倒なことになっちまったな。
周りのヒソヒソ声が耳障りだ。
あれが王女の彼氏?とか、目つき悪いとか、脅迫したんだってとか、目つき悪いとか、殺してやる…!とか、目つき悪いとか……なんだこいつら喧嘩売ってんのか。
「目立ってよかったなヒィロ」
「黙れシド死ねカス」
「うわー、こわーい」
クソが、これからどうするか。入学したての中、余計な目立ち方したくねー。つかあの女も女だ。フれよ、こんな男。
「とにかく俺は王女サマと付き合う気はねえよ。王族と平民だ、家柄も許さねえだろ」
「「確かに!」」
ハッとした表情のジャガヒョロ。いや気づけよ。
「早めに別れる。極力、波風と立たねえようにしてえから罰ゲームのことも誰にも喋るな」
「おっけー」
「勿論だぜ!」
「友情に誓って言いません!」
……言いそー。すげえ言いそー。信用出来ねえんだよなジャガヒョロ。
と、そんな時だった。
「あら、何の話?」
背中にかかる声。
向かいに座るジャガヒョロは俺の後ろの人物を見て固まっていた。
この声は聞き覚えがある。なんならさっきも聞いた。
「「アレクシア王女!!」」
「昼食、同席しても?」
「どどど、どうぞ!」
「こんな所でよければ…!」
それを聞いて、隣のシドはポンと手を叩き、俺の椅子を移動。
自分の椅子を持ち向かいの方へと座った。
……王女分のスペースを開けやがって。ろくなことしねえな。
そのまま流れるように王女サマも隣へ座る。俺の許可取りましたー?
「いただきます」
そう言って手をつける食事。その量はこの場にいた4人の誰よりも多く豪勢なものだ。
「す、凄いですね。大貴族コースでしたっけ?」
「量が多いんですね!」
「ええ、いつも食べきれないの。本当はもっと下のコースでいいのだけど、私がこれを頼まないと他の皆が頼み辛くなるから……」
「そうか、じゃあ俺が貰う」
そうして俺は王女サマの皿を手に取り目の前に持ってきた。
俺の嫌いな人間の特徴その1。飯を残すやつ。
お残しなんて許せん。絶対にな。それなら俺が食った方がいい。
それにこうして無礼な態度を示してればすぐ別れましょうとか言ってくるだろ。つか、言わなきゃおかしい。
「……ふふ、食いしん坊なのね」
そう言って笑う王女サマ。
……なんやこいつ、感性バグっとるんか?頭のお医者さんを行った方がいいだろこれ。誰か救急車ー。
「お、お優しいんですね、アレクシアおうにょ!」
「すみません、こいつ平民でルールとかマナーとか知らない猿なんで」
よし、ジャガは殺す。
なんだ猿って。てめえの方が猿みたいな頭してんだろうが。
そういやシドは……めちゃくちゃ腹立つ顔でニヤニヤしてる。死ねばいいのに。どっからかフォーク飛んできてこいつの頭に刺さってくんねえかな。
「ねえ、あなたって午後からの実技試験は王都ブシン流だったわよね?私も同じだから一緒に受けましょ」
「……は?」
クラス違うと思うんですがー?
「わたしの推薦で上級クラスの枠を一つ空けてもらったの。王女命令よ。いいでしょ?」
それ職権乱用じゃね?クソやんけ。
いやしかしまあ、変に突っぱねるのはあれか?いや分かんねー。何が正解だ?ぶっちゃけこの王女サマ、ちょいときな臭えんだよな。
OKか、お断りか。
……どっちに転んでもめんどくせえことになりそうだな。
作画とか良さそうだし声優も豪華そうだしアニメ見ようかな。
……まとまった時間ないからキツそう。