高校生を轢いたら異世界転生したんだが? 作:巻き込まれ転生者
……まだ2話しか見てないぜ!
「──はい注目!みんな準備運動はそこら辺にして集まってくれ」
俺の横に立つ教師の声で手を止め集まり出す生徒たち。
めんどい。すごくめんどい。何がめんどいって……なんかもう全部がめんどい。
「彼は今日から上級クラスに来たヒィロ・ライト君だ。みんな仲良くするんだよ」
教師のそんな言葉に生徒達は次々に言葉を口にしていった。
やれ下級クラスだ。やれ邪魔になる。やれ平民だ。やれ目つき悪いだ。やれ人殺してそうだ。やれ女泣かせてそうだ。……ほぼただの悪口じゃねーか。
位の高い貴族になるとこうなんですかー?この国の将来が不安で不安でしゃあないなー。
「こらこら、仲良くと言ったところだろ?何よりアレクシア王女の推薦だよ」
そういうと、王女の推薦ならと引き下がる生徒たち。
マジかよ。すげーな王女パワー。俺も今度使お。
王女がいいって言ってましたーって言えば何しても許される説。ありますねえ。
「おまたせヒィロ君。それじゃ、さっそく打ち合いしましょ」
そう言って現れた訓練着姿の王女サマ。手には剣を1本。
西洋剣って苦手なんだよなあ。刀ねえのかよ刀。
「……エー、オレナンカガオウジョサマノアイテナンテツトマラネーデスヨー」
「大丈夫よ。合わせてあげるから」
「……わーい」
……逃げられねえなクソが。
剣を撃ち合うこと数度。金属音が響く。
攻めてくる王女サマに受けるだけの作業を続けかれこれ数分。
こう見てみると太刀筋がかなりいい。基礎がしっかり整えられてるのがよくわかる。
剣術という点じゃアルファには遠く及ばないが太刀筋のキレはいい勝負……甘くみ積もれば超えてそうなほど。
……いいゾォ。努力を惜しまず基礎を整える子はわしゃあ好きやで〜。
「……あなたの剣、いい剣ね」
「はあ……ども」
まあ、そらねえ。
趣味の居合始めたの20代初めの頃だから、剣を手にして前世合わせて30年近いですからね。ちゃんと居合だけじゃなくて基礎的な剣の振り方も飽きるほど練習しましたから。
……そう考えると俺ってだいぶジジイじゃねえか。若い体って……いいね!
「でも嫌いな剣」
「……おっ」
思いっきり弾かれる剣。弾かれた拍子に剣が飛んでいきそうになるががっちりと掴み体ごと後ろに下がることで軽減。
危ねー、変な考え事して気ぃ抜いてたあ。
……つか嫌いって言ったか?おおん?……ほならワシもおまえ嫌いだわ!
「アレクシア、気をつけないとダメだよ」
そう言って近づいてきた教師。
ゼノン先生。ゼノン・グリフィ。
イケメンフェイスで女の子はメロメロ。女子人気の高い教師だ。
けど俺が嫌いなタイプでもある。別にイケメンだからとかじゃねーし。ただ、完璧すぎて気持ちの悪い感じ。説明が難しいな。
「ヒィロ君、君も筋がいい。新入生とは思えないな」
「はあ」
「王都ブシン流はブシン流から派生した革新的な流派だ。最初は風当たりは強かったが君みたいな若者にも受け入れられて嬉しいよ」
「……あっそじゃねーや、ソウデスカ。ソラヨカッタデス」
「ははは、気楽にしてくれればいいよ」
やばいなー、慣れないな敬語。口の悪さの弊害がこんなとこで出てくるとは。
と、その時、いきなり服を引っ張られる感覚が。
そのまま頭に何やら柔らかい感触。
「先生。2人きりで練習したいので無駄話はそこら辺で。見てのとおり私たちラブラブなので邪魔をしないで貰えますか?」
……あ、頭を抱かれてたんですね。
体勢崩れて俺が王女サマの胸に飛び込んでるみたいになってね?
セクハラですね。誰が?俺やな。
「……そうやっていつまでも逃げられる訳じゃないよ」
「大人の事情は子供には分かりませんの」
ふぅむ。なるほど。
……予想はしてたが相手はあの教師だったか。こりゃ特大にめんどくさいもんが飛び込んできた。圧倒的に大貧乏くじを引いたな。
「──俺は当て馬ってことね」
授業後。裏庭に俺と王女サマは来ていた。
ベンチに座り一息入れつつ、王女サマに向けて言葉を投げた。
「婚約者?」
「じゃ、ないわね。婚約者候補よ。なのに強引に話を進めてきて困ってたの」
「そうか。で?俺を巻き込まないでくれね?」
こちとらただでさえ厨二病の特殊プレイに巻き込まれてんのに。これ以上問題事を俺に持ってくるな。
「告白OKはあれだ。いざとなれば切り捨てやすい平民だからだろ。ゼノンが諦めて用済みになったらスパッと終われるように。確かにそれなら貴族より平民の方が楽だわな。……男心を弄ぶたあ性悪な王女サマもいるもんだな」
「あら、それはお互い様ではなくて?罰ゲームで告白してきたヒィロ・ライト君?」
「…………誰だ?」
バレテーラ。まあ誰かが言ったんだろうが。シドはねえな。こういうのに興味無いだろうし。ジャガヒョロのどっちかか。
「確か、ジャガ君だったかしら?私が話しかけたら聞いてもないことまでペラペラと話してくれたわ」
「よっしゃ!アイツ殺すか!……素っ裸にひん剥いて街のど真ん中にモニュメントとして飾ってやろ」
「今までで1番イキイキしてるわね」
ジャガ。やっぱりあいつが1番ゴミだな。
……人って燃えるゴミでいいんだっけ?
「ひどいわ、乙女心を弄ぶだなんて。王女を泣かせたなんて世に知られたら即処刑よね…」シクシク
「あー、だる」
ストレスがマッハでたまるな。
猫かぶり女が。きな臭かった理由はこれか。クソが。
「とりあえず処刑はご勘弁だから話は聞いてやるよ。つっても俺ァ平民だ。当て馬にしちゃパンチが弱えぞ。それにあの教師の何が不満だ?」
そう言って懐から何かを取りだした王女サマ。
何かが入った袋。それの封を開け、中に手を入れながら口を開いた。
「あなたも見たでしょあの胡散臭い笑顔。イケメンで地位もあり人望の厚い超優良物件。でもね、完璧な人間なんていないの。いるとすればそれは嘘つきかおかしな人。それに比べればあなたは分かりやすくクズでいい」
そう言って袋から取りだした金貨を地面に散らばせる。
………。
「報酬は払うわ。拾いなさい」
「…………はあ」
ため息がこぼれる。
しゃがみ、地面に落ちた金貨を1枚1枚。
「給料出んならやってやるさ。だが、こういう行為はあんまり俺ァ好きじゃねえ」
「………っ」
「価値のあるもんを価値のあるやつが蔑ろにする行為はてめぇ自身の価値を落とすことになるぞ」
「……ふん」
俺の言葉にそっぽを向く王女……いや、猫かぶり姫。
こういうとこはまだまだガキっぽいな。
「あとパンツ見えてる」
「見たければ見なさいよ」
「なんだ痴女か?とんだお姫様もいるもんだな」
「減らず口は大した物ね。まあいいわ。お金を受け取ったからには私の言うことには従ってもらうわよ?……とりあえず恋人の振りは続けてもらうわ。期限はあの男が諦めるまで。分かったわねポチ」
金を拾う俺を見下すクソ王女。
なるほど犬扱いね。
「それならお前は猫かぶりのミケってとこか?」
「……ほんとに口だけはよく回るわね…!」
「まあだが、そっちの方が100倍やりやすいぜクソ王女」
「ええ、ほんと。楽しくなりそうね」
そうして2人して笑う時間。
──ははははは
──ふふふふふ
ただしこの瞬間目を合わせた俺たちの目は笑ってなかった。
アレクシアと口悪い主人公を絡ませて口喧嘩させてみたかった。