高校生を轢いたら異世界転生したんだが? 作:巻き込まれ転生者
「オラッ!」
「まだ足りねえかァッ!?」
棒切れが顔面を叩き、口元が切れ血が舞う。
こんなことがもうかれこれ数時間。……飽きたな。
「状況からしてお前以外ありえないんだよぉ」
「王女アレクシア様をどこへやった?」
「だから、知らねーよ。言葉通じてねーのか猿ども」
「こいつ…!」
「……まだ状況が飲めてねえみたいだな」
手に数本のナイフ。それを椅子に座る俺の太ももへ突き刺してきた。
「ははは……!」
「……こんなんで笑ってるとか余程の小物だな」
「口だけは達者だな…!」
「チッ…!ペンチもってこい。爪剥ぐぞ」
マジかあ。いっぺん剥がれたら生え揃うまでかなり時間かかるんだよなあ。
……ここ出たらクソシドに治してもらうか。アイツ魔力使えば回復とかできたはずだし。
……今頃、ミケは何してんだろうな。俺と同じような目にあってたりして。それはそれでざまぁの大草原不可避。誘拐犯さん、もっとケチョンケチョンにしてええでー。
「ペンチ持ってきたぞ。ついでにスタンガンと拳銃」
「死なない程度にやれる痛みを全部味合わせちまうか。口割らせりゃそれでいい」
あー……なんで毎回俺が貧乏くじ引かなきゃならんのだ。
このシチュならゲボシドあたりなら、わーい拷問に泣き叫ぶモブがやれるぞー、とか言ってノリノリに演技しそうなのに。
……俺もその路線で行ってみるか?いやキツイな。見てられんわ。
「よし、覚悟しろよ」
「………はあ、さっさとやれば」
つか、座りっぱなしだから腰が痛てぇ。むしろ腰の方が痛てぇ。
……あー、誰か迎えに来ねえかな。
それから5日後──
「おら、さっさと行け」
外へと放り出される俺氏。
地面に倒れ込む俺の身体の上に荷物一式がどっかり投げ捨てられた。
あー、久々のお日様。日光浴ってこんなに気持ちよかったっけ?
パンツ一丁のすがたで往来のど真ん中で仰向けに寝転がる学生。しかも全身傷だらけ。もはや事案だな。
さて、立ち上がり脱がされた制服を着用。
爪が剥がされたからいちいち痛んでウザったい。
ひとまず寮に帰ろう。疲れた。精神的にな。
拷問じみた取り調べは別になんだが、この数日間、同じ椅子の上で鎖に縛られて身動き取れなかったからそれに対するストレスが凄い。
「………っ」
「ひッ…!?ご、ごめんなさい…!!」
通りすがりの人と目が会った瞬間逃げられた。
……うーむ。平静を装うとしたけど無意識にイラつきが顔に出てきてしまうか。
全くあんな小物畜生にキレるなんて俺も大人気がないな殺す絶対に殺す確実に殺すメラッと殺す。
こういう時こそ、こっそり所持してるタバコを吸って心を落ち着か………寮に置いてるやん。ほなアルコール………は普段から持ち歩いてるわけないんだよなあ。
はははははははははは──
「フン……ッ!」
横の壁に拳を叩き込む。
蜘蛛の巣状に広がるヒビ。多少はスッキリ。
粉砕はしないように力加減はしたから大丈夫でしょう。
それにしても後ろから2人だな。尾行してる奴がいるな。
面倒だな。殺るか。……いやこんな往来で俺がなんかしたら目立つよなあ。
はあ──
「──後であなたの部屋で」
「………」
前から歩いてきた人とすれ違いざまに聞こえた声。
聞きなれたその声は懐かしいものだった。
直後、背中に微かにかかった悲鳴のような叫び声。
ちゃんとお片付けしなさいよー。
「スゥー……フゥー……」
自室に戻ってきた俺。
異世界の不味いタバコで一服。窓を開け、外に向かって紫煙を吐き出した。
セ○タはねえのか。ピ○スは?●ボロは?……クッ、現実世界が恋しいぜ…!
「灰皿がいっぱいじゃない。帰ってきてからどれだけ吸ったのよ」
「今日は少ないぞ。2箱だ」
「十分多いわよ……」
呆れたため息が後ろから聞こえる。
聞き慣れた声。……つか、いつ部屋に入ったのよ。
「ちなみに僕もいるよー」
「そうか帰れ」
クソの声も聞こえてくる。帰ってくれ。お前の声を聞いてさらに1箱吸いたくなったわ。
「ベータから連絡を貰って来てみれば、随分厄介なことになっているみたいね」
そう言ってベッドに腰掛けるアルファ。
彼女を見てみればこの会ってなかった間にかなり成長してる。身長も女としても。愛娘の成長におっちゃん涙が止まんねえよ。
「腹減った、なんか無い?」
「"まぐろなるど"ならあるわよ」
「食う」
アルファから渡される紙袋。
中には肉厚マグロが挟まれたバーガーが。最近話題になっているまぐろなるどのジャンクフード。
……既視感すげえな。
かぶりつき1口。久々の食べ応えのあるものに感動。うましうまし。
「相変わらず呑気ね。状況わかってる?このまま行けばあなたが犯人よ」
「そだな」
「はぁ……。ヒィロを犯人に仕立てあげようとする動きがあるわ」
「放っておいてもヒィロが犯人になるでしょ」
「早く解決させたいんでしょうね。平民のパッとしない学生ならちょうどいい」
「だね、僕でもそうするよ」
「……騎士団は信用できないわ」
「教団が入り込んでる?」
「ええ、間違いなく。王女誘拐の犯人は教団の者よ。目的は濃度の高い『英雄の血』ね」
シドとアルファが話を進める。
あの、ディアボロス教団の話なら別のとこでして貰えませんかねえ。
「で?ミケ……じゃなくて、王女サマはまだ生きてんの?」
「死んだら血が抜けないでしょ」
「なるほど」
「あなたがなぜ王女様とロマンス繰り広げていたか知らないけれど」
アルファがジト目でこちらを睨んできた。
「あんな罵り合いがロマンスなわけねーだろ。友人付き合いの流れでああなっただけだわ。……そこの酒取ってくれや」
「はぁ……」
ため息を吐きつつ酒瓶を手渡してくれるアルファ。
ため息ばっか吐いてると幸せ逃げちゃうぞー。
「割る?」
「直瓶やろ」
「……それ度数50近いはずじゃない?」
「ストレス溜まってんだよクソが」
こんな日は飲まなきゃやってられん。
栓を開け、そのまま口をつけてラッパ飲み。くぅー!アルコールが染みるねぇー!!
「これから人を集めて作戦に出るわ。丁度デルタも来てるし」
「デルタ…?あの無鉄砲特攻兵器アタック極振りのデルタ…?」
「マジかよ。頭撫でなきゃ」
「ええ、あなた達に会いたがってたわ」
懐かしきかな我が愛犬。
再会の時はいつものように突進頭突きの抱きつきだろうか。もはや様式美である。
「それとヒィロ。この事件が解決したら『まぐろなるど』でご馳走して。さっきのサンド私の分だから」
「えー、俺金欠なんだけど」
「そう、それならお金は私が出すわ」
「……ご馳走の意味知ってるか?お前」
そう言うと、アルファはフッと笑って部屋の窓から外へと飛び出して行った。
……行っちまったか。
懐かしい顔が見れてストレス半減。すげえな。アルファたちは俺のストレス緩和剤だったんだな。
「で、クソガキてめぇ。いつまでこの部屋にいるんだコラ」
「えー、久しぶりに2人で楽しい会話しようよ」
「黙れ帰れ死ね」
「久々の暴言はいいねー」
なんだこいつきっしょ。
「チェスしない?ボードと駒の用意は出来てるよ」
「しねーよ。こちとら疲れてんだよ失せろカス」
「ヒィロが勝ったら僕のこと全力で殴っていいよ」
「言ったなコラ!!ボコボコのぐちゃぐちゃにしてやるわボケ!!」
腕まくりをしてシドの対面へと座る。
絶対泣かす…!ガルルルゥゥゥ……!!
ちなみにこの後、寝ずに朝までチェスを続けることになった。
ちなみにアイリスさんのとこにクレアさんが殴り込んだとか殴り込んでないとか。
感想……くれたりすると嬉しいなあ(チラチラ
モチベがすごく上がるんだよなぁ(チラチラ
お気に入り登録等々してくれる人たちに感謝の土下座<(_ _)>