ゲームによく喋るブロリーが出たからとかでは無いです
八握剣異戒神将魔虚羅とは、禪院家相伝の術式『十種影法術』の式神の一体で、歴代十種影法術師の中でこれを調伏できたものは誰もいない最強の式神である。
基本的に影絵の動物を召喚する十種影法術だが、この魔虚羅のみは異なり手で影絵を描くのではなく、左腕内側に右手拳を押し当てた上で「布瑠部由良由良」の祓詞を唱えることで召喚する。
渋谷の夜の空の下にて召喚された魔虚羅はまさに最強の一言であった。
術者である伏黒恵を一蹴したのはもちろん、全ての指を取り込めてはいないものの特級呪霊相手に傷1つつかなかった宿儺がまるで赤子のように殴打されている。
「くっ……」
(オレの斬撃が全く効いていない。当たってはいるが、限りなく効果が薄い)
調伏できていなくとも「術者の力量に関係なくどんなタイミングでも調伏の儀式は開始できる」、「調伏は複数人でも可能」という十種影法術の式神調伏の儀のルールを利用し、相手を巻き込んで魔虚羅を召喚することで相手を自分もろとも魔虚羅に倒させる実質的な自爆技として魔虚羅を召喚した伏黒恵。
自分の命と引き換えにどんな相手も倒せるため、当初から伏黒恵は強敵に追い詰められた際の奥の手として使用を考慮していた。
彼の思惑通り、伏黒恵の命を対価に魔虚羅は宿儺を圧倒している。
だが、ここで想定外だったことが2つあった。
「気が溢れるぅ……昂るぅ……!」
(それにしても……コイツ、ただの式神ではないな)
伏黒恵や宿儺は知る由もないが、本来の魔虚羅の姿は筋肉質な人型でやや猫背気味の巨漢である。
目に当たる部分には左右2対の翼が生えており、また背には八握剣の紋章のパーツが、右手には剣が備わっている、という他の式神とは一線を画す異様な風体をしている。
しかし、実際に召喚された魔虚羅の姿は違う。
式神とは思えない非常に人間に近い、いや人間の姿をした上半身は裸で金色のベルトに赤い腰布を巻きつけ、白地のシャルワール風パンツを履いた大柄の戦士だった。
両耳にイヤリング、首にはチョーカー、ベルトに似たデザインの首飾りを下げ、両腕上腕にアームレット、両手首にもベルトに似たブレスレットを着けていたりとそのデザインはまるで……。
(小僧の記憶ではコイツの姿は確か……)
宿儺が受肉するきっかけとなった宿儺の器である虎杖悠仁の記憶を探ると、目の前にいる式神に宿儺は見覚えがあった。
それは「ドラゴンボールZ」の映画に出てくるボスキャラクター、ブロリーの姿と酷似していた。
(だが何故だ? 伏黒恵の術式ははるか昔からあるはず。ブロリーという戦士は虚構の存在)
1900年代後半に現れたキャラクターがどういうわけか、少なくとも慶長からある術式の式神として顕現している。
あまりの異常さに宿儺は訝しむ。
「ふんっ! であぁっ!」
「ちっ!」
しかし、そんな宿儺の疑問を余所に魔虚羅と宿儺の攻防は激しさを増していく。
魔虚羅の拳や蹴りが、まるで雨のように宿儺へと降り注ぎ、それを躱すも余波だけで周囲の建物や道路が破壊されていく。
その威力は並大抵のものでは無かった。
「ぐっ!」
(この力! 受け入れ難いが小僧の身体ではなかったら受け止め切れるものでは無い!)
もう1つの術者すら知らない事実、それは魔虚羅のある能力が失われている代わりに宿儺を圧倒するパワーとスピード、そして凶暴性を手に入れたことだった。
「【捌】」
「……なんなんだぁ、今のは?」
そのため、本来、対象の呪力量・強度に応じて自動で最適な一太刀で相手を卸す斬撃であり、回避は不可能であるはずの【捌】を受けても魔虚羅は平然としている。
かすり傷などは見当たらず、わざわざ攻撃を受けて懐に入って魔虚羅に触れたというのに、その魔虚羅は嘲るように宿儺へと尋ねた。
「本当に化け物の類か……!」
「化け物? 違う。オレは悪魔だ……ははははっ!」
相手に触れないと発動出来ないとされている【捌】を使うため魔虚羅に近づいたが為に、宿儺は魔虚羅の巨大な掌で頭部を鷲掴みにされると、そのまま地面に押し付けると笑いながら地を駆ける。
「ふははははははっ!!!」
アスファルトを宿儺の顔が削りながら魔虚羅に引きずられていく。
「はははっ!! ふんっ!」
そのまま高層ビルの入口へと放り投げられ、受付へと叩きつけられた宿儺は受付を崩壊させながらもすぐに瓦礫の中から身体を起こす。
「ぐっ……」
(致命傷にはならんが、このままでは小僧の身体がもたんな)
すでに【解】と【捌】の斬撃を使っており、それでも致命打どころかダメージにもなっていないとなれば宿儺のやることは1つしかない。
ただ、問題があるとすれば───────そう思った時、宿儺が顔を上げると彼の眼前に緑色の球体が迫っていた。
「……ッ! 【解】!」
呪力や反転術式のような正のエネルギーではない、もっと別の何かを凝縮した球体を宿儺は咄嗟に2対の斬撃で相殺する。
「今のは……」
(確か、【気】という概念が絡んだ技だったか……?)
魔虚羅の攻撃をいなし、何が起こったのかを確認するため、真上に飛び上がった宿儺の視界に不敵に笑う魔虚羅がいた。
「おとなしく殺されていれば痛い目に遭わずに済んだものを……さすが呪術師と褒めてやりたいところだ」
地面に降り立ち、魔虚羅から目を離すことなく対峙する宿儺。
すでに何度も攻撃を当てたというのに一切ダメージが通っていないことを受け、次の攻撃に移らずに彼は魔虚羅の観察へと意識を集中していた。
「貴様こそ、ただの味見ではもう済まさんぞ」
すでにハロウィンの面影を一切残さず空虚な廃墟へと変貌した渋谷で、2人の最強が目線を激突させる。
─────── 一体渋谷はどうなってしまうのか。仮死状態の恵、意識を乗っ取られたままの悠仁の運命は!?
ふるべぶろぶろブロリーですぅ……▶︎魔虚羅が様々な外的要因によって変化したことによって生まれた式神。式神であるため反転術式での撃破が不可能。また本来持つ能力を捨て去り、術者の意向を無視し、さらに激しい残虐性を得る代わりに、圧倒的なパワーとスピード、タフネスを会得した。
十種影法師術の式神で調伏可能だが、調伏してもブロリーは破壊と殺戮を楽しむため、ブロリーを倒せるのであれば、ブロリーを調伏せずとも他の式神たちの能力を使った方が遥かに有意義である。
ちなみに少年院で出していたら宿儺(虎杖)と伏黒はもちろん、釘崎と同行していた伊地知さんも巻き添えでぶち殺していたし、東堂に対して使っていても恵と釘崎、東京校2年生と真衣どころか高専内にいるであろう夜蛾や楽巌寺、家入もぶち殺していた(東堂はブロリーがマップ破壊兵器みたいな技を使ってこない限りは多分死なない……はず)