死の支配者と呪いの王   作:国盗りしたいお

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嚆矢邂逅

ナザリックが転移してから数日後。モモンガと宿儺は玉座の間にて鏡を眺めていた。直径一メートルほどの鏡に映っているのは、モモンガ達ではなく草原だった。時間の経過を示すように、昇りだした太陽が草原を明るくしていく。このアイテムの名前は遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)。指定したポイントを映すが、低位の魔法で簡単に対策されるため微妙系に数えられるアイテムだ。しかし外の風景をたやすく映せるこのアイテムは、今の状況ではかなり便利だった。

「この動きで、画面のスクロール」

「そしてここを動かすと、視点を変え同じ場所を観察できるのか」

モモンガと宿儺は互いに試行錯誤しながら、知的生物―できれば人間―を探していたが一向に見つからない。しかも単調な作業で延々と同じ風景を見ているため気分も萎える。そんな中モモンガが適当に手を動かすと、視点が大きく変わった。

「おっ!」

「むっ」

驚き、歓喜、そして自慢が宿った声を2人は上げる。そしてその声に答えるようにセバスが拍手を上げる。

「おめでとうございます。モモンガ様、両面宿儺様」

「ありがとう、セバス。長く付き合わせて悪かったな」

「何をおっしゃられますか。主人に仕え、命令に従うこと。それこそが私の存在意義です」

「そうか…」

モモンガはセバスとの会話を終えると、鏡を宿儺と操作しだした。やがて、一つの村が見えてきた。村の周りには麦畑が広がり、牧歌的という言葉が似合い、文明レベルは高くないように見える。モモンガは村を更に拡大しようとし、違和感を覚える。

「……祭りか?」

朝早くから人が家から出たり走ったり、なんだかあわただしい。

「いや、これは違うな」

横から見ていた宿儺が低い声で答える。宿儺の声に嫌なものを感じ、画面をスクロールしモモンガは眉をひそめた。村人とおぼしき服を着た人々を、鎧で武装した騎士風の集団が剣を振るって襲っている。

「これは殺戮だ」

対抗手段がないのか、村人は逃げ惑うだけ。しかし騎士はそれを許さず斬り殺していく。

「ちっ!」

嫌なものを見たと感じ、モモンガは舌打ちをした。苦労して見つけた村の最初の光景が殺戮だったことに不快感を感じたのだ。

「で、どうするのだ?助けるのか、見捨てるのか」

宿儺が村人を救うか否か尋ねる。

「…いえ、見捨てます。助けに行く理由もメリットもありませんから」

「…そうか」

モモンガの答えを聞いた宿儺は、小さく―そして落胆したような声を出した。

宿儺の答えを聞いたモモンガは、何気なしにセバスに視線をやり 

――その背後にかつての恩人であるたっち・みーを幻視する。

「なっ……たっちさん…」

―誰かが困っていたら助けるのは当たり前。

かつて自分を救ってくれた人の言葉を思い出し、モモンガは気を変える。

「宿儺さん、やっぱり助けます」

「クヒッ、そう来なくてはな」

モモンガの言葉に、宿儺は小さく笑い答えた。

「セバス、ナザリックの警備レベルを最大限に上げろ。私と宿儺さんは先に行くから、アルベドに完全武装で来るよう伝えろ。ただし、真なる無の所持は許可しない。そして万が一の事を考え、村に隠密能力に長ける者を複数送り込め」

「畏まりました」

場面が変わり、一人の少女が妹と思われる女の子を連れ逃げようとする。しかしその間に少女が背中を切られた。もう時間は無い。

〈転移門〉

モモンガと宿儺は魔法を発動させ、移動する。

 

 

 

 

少女とそれより幼い少女を前に、全身を鎧に身を包んだ者は剣を振りかぶった。確実に殺すと言わんばかりに、大きく振り上げられた剣は日光を反射し輝く。

少女は目を閉じた。もし、少女が何かしらの力があったら、目の前の者に叩きつけていただろう。しかし、少女に力はない。だからこそ少女はここで死ぬ。

剣が振り下ろされ―――痛みは来なかった。

閉ざしていた瞼を開く。最初に見えたのは、目の前で振り下ろしかけ止まっている剣。次に映ったのは、少女の横を凝縮する騎士。騎士の視線につられ、同じ方向に顔を向ける。

そして――絶望を見た。

そこには闇があった。どこまでも黒く、終わりが無さそうな漆黒。それが楕円の形を切り取り浮かんでいた。次の瞬間、闇の中から2つの影が零れ落ちた。

「ひいっ!」

それが何か、認識した瞬間少女は悲鳴を漏らす。

人間では決して勝てぬ絶対者。

一人は漆黒のローブを纏い、白骨化した頭蓋に濁ったような炎を宿し、肉も皮もない手にはこの世の美を結集させたかのような杖を握りしめた死の化身ともいうべきもの。

もう一人は人間に近い姿をしていたが、4つの目に4本の腕。そして腹には口があり全身に紋様を刻んだ人間とは到底呼べぬ異形。

これら2つの絶望が、闇より顕現した。

そのうちの1人が、驚愕し動けない騎士に向けて手を突きつける。

「女子供は追い回せても、毛色が変わった相手は無理か?」

そう言い、何かを握るような仕草をする。

心臓掌握(グラスブ・ハート)

そして何かを握り潰したような仕草をした直後、騎士は地に倒れ伏した。笑ってしまうほど簡単に騎士を殺した死と異形は、少女の怯えの視線を浴びながら、少女に向かって歩き出す。そのまま自分も殺されるのではと考え、少女は妹を抱き締める。せめて痛い思いをせず死ねますように、願わくば自分が一緒に逝くことで妹が寂しい思いをせぬように。そう祈ることしかできなかった。やがて、足音が2人の前で止まる。

そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




宿儺が空気になってしまった……。
次回は出番増やすんで期待していてください。
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