気づいたらカードゲームアニメの強キャラに憑依した   作:名無しのカードバトラー

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035/急転

「エ’’レ’’ナ’’ぢゃん’’ぼん’’どう’’に’’よ’’がっだよ’’お’’お’’お’’!!!!!」

「ご、ごめんね。心配かけちゃって」

「うわああああああああああん!!!!!」

 

 俺は目の前で号泣して目覚めたばかりのエレナに抱き着くセシルを見てドン引きしていた。先ほどまでのサモナーらしい凛々しい雰囲気は消え去り、残念美人ともいえる醜態を晒す、ギャップになんと声をかけていいのか分からなくなっていた。

 無論、俺だってエレナに駆け寄って声をかけたいがセシルのせいでそれが出来ない。まぁ、今は同じアイドル仲間同士で喜んだ方が良いだろう。

 

「エレナ~! 良かった、本当に良かったよぉぉぉ!!」

「カルメンもごめんね。でも、ほらこんなに元気になったよ?」

「うわああああああああああん!!!!!」

「え? え?」

 

 心配かけさせないようにと考えたためか弱弱しい笑顔でそう言ってくるが誰がどう見ても空元気なのは明白だ。結果、セシルは更に号泣した。この調子じゃ体の水分を全て出し切ってしまうのは時間の問題だろう。ほら見ろ。エレナが寝ているベッドに涙でシミが出来ていやがる。位置が悪すぎてこれじゃまるでおm……。

 

「黒導君? 変な事考えていない?」

「イエ、ナニモカンガエテナイデスヨ?」

 

 ……危なかった。まさか心の中を読んでくるとは。エレナの目は笑ってないし少なくともエレナの前ではこんなことは考えないようにしないとな。

 

「それよりも意識が戻ってよかった」

「……うん。ごめんね。心配かけて」

 

 泣きすぎて嗚咽を漏らすだけになったセシルの頭を撫でながらエレナはそう言ってくるがいまさら過ぎた話だ。確かに心配したが無事に回復出来た、そのことを喜ばないといけない。何時までもしみったれた雰囲気でいては治りも遅くなるからな。

 

「構わない。あれは防ぎようがない。むしろ命が助かり、こうして意識も回復出来た事を喜ぶべきだ」

「ふふ、黒導君本当に変わったね。鼻血が出ちゃいそうだよ」

「……そうか」

 

 何やら変な事を口走っているが肉体的には問題はなさそうだな。暫くは安静にしていないといけないかもしれないがこれなら外のファンも安堵するだろう。

 だが、そんなことを考えたからだろうか? いきなり外が騒がしくなり、様々な物音がここにまで届くようになっていた。

 

「大変です! 外のファンが暴徒と化しました」

 

 そして、その理由は大変なものであった。話を要約するとついにファンたちが我慢の限界に達して病院に向けて突撃し始めたらしい。そして、即座に統一軍が鎮圧に動いたがファンたちは物量でもって兵士を強引に突破しつつあるようだ。数分もしないうちに先頭が病院にたどり着く可能性もあると。

 

「病院に籠るのは危険だな。付近の基地や駐屯地に連絡し、暴徒鎮圧の応援を要請しろ。エレナ以下人魚の天使(エンジェルマーメイド)の面々は屋上のヘリで病院を脱出してくれ」

「なっ! 別にそこまでしなくともエレナが無事と知らせれば……!」

「奴らの理性は消えた。暴徒と化す前なら可能性はあったが今の状況で出せばどうなるかは予測が出来ん。事態が収拾すれば良し。だが、もし、そうならなければ……」

 

 それ以上は言わなかったがそこまで言えば伝わったのだろう。エレナ達は顔を青くしていた。実際、一人がラインを超えてくれば最後。エレナ達は暴徒と化したファンたちの欲望にさらされる事になるだろう。

 せっかくエレナが回復したというのにそんなことをさせるわけにはいかない。

 

「誰か車いすを持ってこい!」

「はっ!」

「他は三人の護衛だ。屋上のヘリまで護衛しろ。屋上には誰も通さないようにバリケードを設置しろ。たとえ俺だとしても決して通さず、守り通せ」

「「了解しました!」」

 

 扉の護衛をしていた兵士たちに命令を下し、俺も下に降りる準備をする。幸い、デッキもサモンディスクも持ち歩いている。幸いというべきかカードゲームの世界らしく暴徒は理性を失ってもサモンで勝利して強引に突破しようとしているようだ。それなら負けずに圧勝していけば通さずに済みそうだ。だが、それも時間稼ぎにしかならないだろう。

 全く、ただのお見舞いのつもりだったのにこんなことになるとはな。それにファンもファンだ。先ほどまで騒げど暴徒になりそうな感じはしなかったのにいきなり理性を失うとはな。……いや? 普通これだけの数がいきなり暴徒となるか? まさか、レジスタンスがかかわっているのか? 確かに奴等からすればエレナが負傷している現状は好機だろう。ここで無力化なり、殺すなりすればアース帝国にとっては大損害だ。

 

「……まぁ、ここまで来てしまえばどちらだって同じことだ。先ずは数万の暴徒を鎮圧しないとな」

「お待たせしました! 既に病院は非常事態に入っており、通路は一部を除いてシャッターや扉で封鎖されつつあります!」

「分かった。エレナ、意識が戻って直ぐにこんなことになってしまってすまないがヘリに乗って避難してくれ」

「え、ええ。私は問題ないです」

「私たちも!」

「いつでも行けます!」

 

 エレナの私物は今の所ほとんどないようだしセシルとカルメンも話を聞いている間に準備を終えていた。流石に軍属ではないとはいえこの辺の非常事態の備えや覚悟はできていたようだ。考えてみればユーロ軍管区のみならず世界中で人気のアイドルだ。こういう事は想定済みなのだろう。

 

「よし、俺は病院前で暴徒の鎮圧を行う。後は任せたぞ」

「「了解です!」」

「黒導君……。気を付けて」

「……ああ」

 

 エレナ達を兵士に任せた俺はサモンディスクを再び装着して病院内を駆ける。暴徒がやってくるという事で籠城の準備が進められており、重病患者や動かすことが難しい患者がいる病室は医師やナースが中に入り扉を封鎖している。医師であろうとサモンディスクを持ち込むあたり何度も世界の違いを知ら締められているようだ。

 

「っ! 黒導少佐!」

「状況は?」

「暴徒は四方より迫ってきています。前線の兵士が対応中ですが如何せん数が桁違いで押しとどめる事さえ難しい状況です」

「応援は?」

「既に向かってきているとのことです。ですが応援が到着するよりも先にここに暴徒がたどり着く方が早いでしょう」

「……ふむ」

 

 完全に後手に回ったな。ファンならば暴走はしないと思ったが一体どうするべきか……。流石に俺も万単位の暴徒を相手にする事は出来ないからな。

 

「……仕方ない。病院周辺を封鎖し、入り口を正門に絞れ」

「え? それはどういう……」

「四方八方から雪崩れ込んでくるのなら一か所に絞り、そこで叩く」

 

 完全に封鎖してしまえば暴徒は壊してでも突破しようとするだろう。しかし、入り口があればどうだ? 誰もが向かうだろう。たとえ罠だと気づいても一度流れが出来てしまえばそれを変える事は難しい。

 

「正門前に兵士を集めよ! 1対多(ワン・トゥ・メニー)のゲームルールで暴徒をせん滅する」

「り、了解しました!」

 

 そうなれば俺のデッキでは活躍させるのは難しい。確かに相棒はモンスターがいればいるほどその力を発揮するがそれでもデッキそのものがそれを生かし切れるわけではない。そのため、このゲームルール専用のデッキを俺は構築している。そちらに相棒を映して戦う事になるだろう。

 数分後、俺の周囲には集められた統一軍兵士が集っている。全員が1対多(ワン・トゥ・メニー)を想定した構築済みデッキを装備しており、暴徒との戦いを万全に備えていた。それでも、兵士たちに余裕の表情が見えないのは暴徒に対してこちらが圧倒的に少ないからだろう。

 

「っ! き、きました!」

「総員! サモンディスク展開! 暴徒を一人として病院内に入れるな!」

「「「「「了解!」」」」」

 

 そして、ついに最初の一団が姿を見せる。ふむ、最初は12人か。肩慣らしにはちょうどいい。

 

「強制執行! ロック!」

「うわっ!? な、なんだこれ!?」

 

 俺はサモンディスクに搭載された逃亡防止用のチェーンを生み出し、12人全員の腕に装着する。これで相手はサモンが終了するまで移動する事は出来なくなったというわけだ。

 

「暴徒と化したお前らに慈悲は必要ない。行くぞ」

「くそっ! こいつを倒してエレナたんの下にいくぞ!」

「「「「「ゲーム、スタート!」」」」」

 

 こうして、病院防衛の最初の戦いがスタートしたのだった。

 

カード紹介は別作品として分けた方が良い?

  • 分けた方が良い
  • 今のままで良い
  • 登場した話のあとがき欄で十分
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