――ゼラ星系・第一惑星ゼラ近傍――
「こちら『ヴァルケ・シュルツ』。これより第一惑星『ゼラ』に接近する。」
知的生命体を育むのに最適な、豊富な水と緑を称える未知の惑星"ゼラ"。ガミラス軍の数的主力であるケルカピア級駆逐艦の『ヴァルケ・シュルツ』は発見されたばかりのこの星に関する情報を収集するため接近していた。
「センサーに何か引っかかったか?」
「駄目ですね、惑星上空の大気のせいか観測を受け付けません。」
「やはりか…」
管制官から返ってきた半分予想通りの答えに、艦長のヴァルデマール・ラングはため息を漏らす。
発見から間もないこともあるが、この惑星について分かっていることは異様に少ない。光学映像から辛うじて水と植物が存在することが伺えただけで、知的生命体が存在するのか、ガミラス国家の第二の母星たり得る星なのか…現状何も掴めていない状況だった。
「まるで、我々を拒絶しているかのようだ。」
「七色星団星域のイオン乱流によく似ていますが…本艦の装備でイオン乱流吹き荒れる惑星の地表に降り立つのは…」
「ああ、分かっている。『ボーゼン』に連絡―」
出来るなら二等臣民出身の名将、ヴァルケ・シュルツ大佐の名を称えたこの船で偉大な業績を挙げ、ヤマトとの戦いで義理を通したために味方に撃たれ死んだ兄の名誉を回復したかったが仕方あるまい…そう艦長が帰投の命令を出そうとしたところで管制官が叫んだ。
「惑星表面に異常発生!高エネルギー反応、来ます!」
「最大戦速!回避しろ!」
確認する間もなく、軍人の勘で危険を察知し即座に回避命令を出す。刹那、『ヴァルケ・シュルツ』の横を一筋の光線が掠めた。軽快さが売りのクリピテラ級二等航宙装甲艦なだけはあり、間一髪のところで回避に成功したようだった。
「艦体後部のミゴヴェザー=コーティングに損傷発生」
「損耗率5バーゼル。航行に異常なし」
上がって来た被害報告も軽微なもので、任務に支障はないようだ。あと一歩遅ければフネはあの光に吞み込まれていただろう。二等臣民差別にもめげず猛訓練に励んできた乗員たちの練度と艦の性能が合わさった結果だった。生き残ったことに安堵していると、新たな報告が上がってきた。
「見てください、あれは…」
メインモニターに映し出されたそれを見て、艦長以下の乗組員は呆気にとられた。高エネルギービームが発射されたと思しき場所に空いた大気層の下にあったもの―それは小さいながら紛れもなく都市であり…知的生命体の存在の証拠以外の何物でもなかった。
「艦長、裂け目から何かが浮上してきます。衛星に見えますが、これは…」
「何だと」
サブモニターに映るそれは、確かに衛星と呼べなくもないものだった。パラボラアンテナにも似た円盤状構造物の下部には原始的な推進器が備え付けられており、惑星の重力に逆らって浮上してるようだ。
「状況から見て、こいつが先の「攻撃」の下手人のようだな。」
「反撃しますか?」
「いや待て、様子がおかしい」
見れば、各所に損傷が発生しており、衛星は分解し始めていた。おそらくあの一発を撃つのが精いっぱいだったのだろう。向こうから撃ってきたとはいえ、不用意に未知の知的生命体との戦闘をおっぱじめれば、かの名将のような最期を遂げることになるかもしれない…損害が軽微だったこともあり、ヴァルデマール艦長は冷静に判断し、部下に指示を飛ばす。
「向こう側にはおそらくこれ以上の攻撃は不可能と見た。我々はこれより技術サンプルを回収する。接舷準備にかかれ!」
「ザー・ベルク!」