かませ犬のノブレス   作:リーシャン

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かませ犬と山奥

 フリーレン達が勇者一行として王都から旅立って1ヶ月後。とある山奥にある廃村に巣くった魔物達を倒してから休息を取っていた時のこと。

 

 

「ヒンメル、気付いてますか?」

「あぁ、何か近付いてきてるね」

 

 

 焚き火を囲って座っていたフリーレン達の耳に何かが土を踏みしめて近付いてくる音が聞こえるや否や、休息を取っていた4人は即座に身体を動かせるように臨戦態勢へと入った。

 

 

「フリーレン、魔力探知の反応は?」

「こっちに近付いてくる数は1つ。魔力量的にはそんなに強くはなさそう」

「よし、なら相手の姿が見えるまでは待機だ」

 

 

 こんな辺鄙な山奥で、しかも魔物が巣くっていたせいで人っ子一人居ない廃村に近付いてくるのはいったい何なのか。

 

 魔物か、魔族か、はたまたそれ以外か……フリーレン達が固唾を飲みながら暫く待っていると、ついにその何かはフリーレン達の前に姿を現す。

 

 

「おや? こんな山奥で煙が見えたから誰か居るのかと思って来てみればまさかキミ達とはね。ボクよりも先に旅立っておきながらもう追いつかれてるなんて……キミ達は呑気に観光でもしながら進んでいたのかい?」

 

 

 現れたのはフリーレン達にとって非常に見覚えのあるキノコ頭の青年。

 

 纏っている服こそいつぞや見た時よりも煌びやかさは無いものの、動きやすさを重視したような服を着てる以外は人を小馬鹿にするような笑みも出会い頭の嫌味混じりの挨拶も全て記憶の中に残っていたままであった。

 

 

「あ〜……久しぶりだね、カマセ」

「誰がカマセだ! ボクの名前はマカセだ!!」

 

 

 訂正、ヒンメルは姿は覚えていても名前までは覚えていなかったらしい。

 

 

「ごめんごめん、久しぶりに会ったからつい間違えたんだ」

「フン、それならば仕方ないな。キミ達のような平民の頭では人の名前を覚えておくのも難しいだろうからな……次からは間違えないように気をつけるといい」

 

 

 あ、許してくれるんだ。嫌味ったらしくはあるものの懐が狭いという訳では無いらしいマカセにヒンメル達は割とそこまで嫌な奴では無いのかもしれないと内心で評価を上げつつ臨戦態勢を解いた。

 

 

「あぁ、以後気をつけるよ。それはそうと、どうして君が此処に?」

「さっきも言ったろう? 煙が見えたから来ただけさ。万が一山火事でも起きていたとしたら大変だからね、念のため確認に来ただけさ。キミ達の方は? まさか本当にこんな山奥まで観光しに来たとかじゃないだろうね?」

「そんなまさか、こっちは魔物の討伐だよ。ここから近くの所に村があって、そこに住んでる一部の人達は元々この村に住んでたみたいなんだけど数年前に魔物達が突然やってきて村を占拠されたんだ。村の人達は避難するために仕方なくこの村を捨てて他の村に移動したけれど、どうにかして故郷の村を取り戻したいと嘆いていたから僕らが代わりに魔物達を討伐する役目を受け持ったんだよ」

 

 

 ヒンメルはマカセに説明しながら、自分達から少し離れた場所を指差す。

 

 そこには徐々に消えかかっているものの、獅子の胴体に鷲の上半身を持つ巨大な魔物の死骸がいくつも横たわっていた。

 

 

「ふーん、グリフォンか。飛ばれるとかなり厄介な魔物なのにやるじゃないか。礼儀をロクに知らない偽物の勇者でも実力だけはちゃんとあるらしいね」

「それ……褒めてるのか?」

「フンッ!」

 

 

 嫌味が混じっているせいで褒めてるのかどうかよく分からないマカセにアイゼンが思わずツッコミを入れると、マカセは強く鼻を鳴らして誤魔化した。

 

 

「ははは、ありがとうマカセ。褒め言葉として受け取っておくよ。まぁでもなんでか知らないけどグリフォン達は飛ぼうとしなかったから結構楽ではあったよ。フリーレンが魔法でグリフォンの動きを縛ってくれてからはこの僕の見事な剣さばきによってグリフォンを一刀両断して───」

「待った、飛ばなかっただって?」

 

 

 勇者として実力はありつつもナルシストな気質があるヒンメルが調子に乗って語り出そうとしたタイミングで、マカセは眉を吊り上げながら割り込んだ。

 

 

「ヒンメル、キミ達が戦ったのは飛ばないグリフォンだけだったのか?」

「なんだよ急に、これからって時に……僕らが倒したのは全部そうだったけど、それがどうかしたのかい?」

「くっ……!」

 

 

 自分語りを邪魔されたヒンメルは少しムッとしながらも質問に答えると、マカセは突如として顔色を変えながら腰に下げていた剣を抜き放ち辺りを警戒するように見回す。

 

 

「マカセ? どうしたんだ急に?」

「バカかキミ達は!? むしろどうしてそんなにのんびりしていられるんだ!?」

 

 

 いきなりのマカセの様子にヒンメル達が目を点としながら見つめていると、マカセは警戒を怠らないようにしつつヒンメル達に怒鳴り声をあげた。

 

 

「知らないようだから教えてやる! いいか、グリフォンは基本的に群れで行動するんだ! 狩りをする時も寝る時もずっと複数匹で行動している! だが、そんなグリフォンもある時期を迎えると雄と雌とで別れて行動するようになるんだ! それは───」

 

 

 マカセがそこまで口にした瞬間、ヒンメル達の耳に遠くの方から甲高い鳥の声のような鳴き声が聞こえてきた。

 

 

「ヒンメル、まだ遠くだけど魔力探知にかなりの数の反応がある。これは……」

「グリフォンだ。間違いなくこっちに向かってくるぞ」

 

 

 ヒンメル達の方に視線を向けることなく鳴き声の聞こえてきた方向に剣を向けるマカセの顔には普段の人を小馬鹿にするような笑みは浮かんでおらず、真剣な表情で空を睨んでいた。

 

 

「グリフォンは繁殖期になると身重になって飛ぶことが出来なくなった雌を巣に置いて雄達が遠出で狩りをするようになる。そして大量の餌を手に入れたら巣に持って帰って自分達の子が産まれるまで雌達を守るために巣に籠るんだ」

「あ〜……つまり僕達はちょうど雄達が狩りに出かけている時にやって来たと?」

「そういうこと。平民の割には頭の飲み込みが早いようで何よりだね」

 

 

 つまるところ。

 

 

「自分の嫁さんをぶち殺されてブチ切れたグリフォン達がボク達のことを何がなんでも殺しに来るぞ」

「総員、戦闘態勢ー!!」

 

 

 マカセの説明を聞いて状況を理解したヒンメル達もすぐに武器を構えた。

 

 

「ハァ……ただ煙の確認をしに来ただけなのになんでこのボクがこんな目に遭うことに……」

「ごめんマカセ! 今度好きなお酒奢るから!」

「無礼だぞ平民! そんな程度でこのボクが許すと思うな!!」

「あ、でしたら代わりに私が飲みましょう。要らないようでしたら折角の酒が勿体ないでしょうし」

「うるさいよ生臭坊主! 君にあげるぐらいなら僕が全部飲み干すわ! そんなことより来るぞ!!」

 

 

 ワイワイガヤガヤと騒ぎ立てるヒンメル達と、それに負けないぐらいの声量で怒りの鳴き声をあげながら空を切り裂くようにして高速で迫りつつあるグリフォンの大群。

 

 なんともグダグダな空気のまま、戦闘が始まった。

 

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