あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです。
最近になってアニワンのクロコ最終戦に流れた交響曲のタイトルが「新世界より」と知り改めて尾田先生に脱帽した今日この頃。
当時はなぜこれがBGMだったのか疑問でしたが新世界のレベルを知っているクロちゃんだからこそあの選曲なんだと思いました。
それでは続きをどうぞ( ´ ▽ ` )つ


17話 俺の名は 下

 辺りは暗く何も見えない。だが、そんな空間にひとりの少年が目の前にいた。

 

「父ちゃ~~ん」

 

 少年はワシを見て笑顔で手を振る。ワシは少年に手を伸ばすも届かない。……なぜ。

 

「父ちゃーん」

 

 少年はみるみる成長し青年に変わる。それでも変わらず笑顔でワシに手を振る。ワシはもう一度手を伸ばすも届かない。…………なぜ。

 

「父ちゃん」

 

 青年はやがて成人となり立派な大人へと変わる。その笑顔は変わること無くワシに手を振り続ける。ワシは今度こそ手を伸ばすがはやり届かない。………………なぜ。

 

 そして、成人となった彼はワシの前から消えてしまう。何処へ行ったのかわからずもはや手を伸ばすことすらできなくなってしまった。

 

 とにかく探すため暗闇の空間を見渡す。けれど見つからない。その時後ろから声が聞こえた。

 

「と、父……ちゃ…ん」

 

 振り向くとそこには傷だらけになった成人……否、息子が倒れていた。

 

 血はみるみる広がりそれを見ただけでもう助からないと理解してしまう。ワシは必死に手を伸ばす。けれど……息子には届かない。

 

 ……………………なぜ?

 

 なぜ手が届かない?目の前にいるのに。すぐ目の前に大切な家族がいるのになぜ届かない?

 

 待っておくれ。逝かないでくれ。お前は……ワシの大切な息子なんじゃ!!

 

 必死に近付くも届かない。むしろワシの意思とは反対に遠ざかってしまう。それでも諦めず手を伸ばすが……。

 

 ここで空間が歪み視界がボヤけ始める。無意識にもう息子と会える事はないと自覚してしまうとこれまで以上に手を伸ばし……ワシは見てしまった。

 

「……アァ……ドゥ……ザ……ン……」

 

 手錠と首輪をつけボロボロの布切れを羽織る子供がワシと同じく倒れている息子に必死で手を伸ばす姿を。

 

 

 

 

「グアアアッ!!?ハァハァ!……ここは……」

 

  目を覚ますとそこには見知らぬ天井。呼吸を整え冷静になりなぜここで寝ていたのかを思い出す。

 

 そうじゃ、ワシは倒れた後この病院に連れてこられここで療養のためにそのまま寝ていたんじゃった。

 

 気持ちを落ち着かせるとワシは窓の外を眺めながら先程見た夢を思い出していた。

 

 最後に見たあのボロボロの子供……孫に似ておったな。

 

「……アルガ」

 

 

 

 

 

 ウォーターセブンへ来て最初の夜が明けた早朝。朝日が差す前の時間に俺は起床する。周りのみんなはまだ寝ているため静かに男部屋から出てキッチンへ向かう。

 

 軽く暖かい飲み物を用意した俺は外へ出て見張りをしているサンジにマグカップを渡す。

 

「おはよーサンジ、はいこれホットミルク。寝る前に飲むならコーヒーよりこっちがいいでしょ?」

「おお悪ィな。ズズ……フィ~。冷えた体に染みるぜ」

 

 サンジはホットミルクで冷えた体を暖める。

 

「まだロビンは帰ってこない?」

「ああ、あれからずっと海岸を見張っているが誰も来る気配がねェな」

「そっか、なら交代しよう。サンジも少し仮眠をとった方がいいよ。見張りはやっとくから」

 

 そういい俺はサンジから双眼鏡を受け取る。流石のサンジも一晩中外にいたせいか体力を削られているようだ。目を擦り少し眠たそう。

 

「ウシ、後は任せた。おれは寝る前に野郎共の朝食の準備だけしてから寝させてもらう」

「あ、そうだと思って朝食用にサンドイッチ作ってあるから大丈夫だよ」

「相変わらず気が利くなおめェ。そういう事ならお言葉に甘えて寝るとするわ」

「どもども」

 

 そういいサンジは男部屋に入っていった。俺も自分用のホットミルクを飲みつつ見張りを始めた。

 

 ロビンが戻ってくることはないだろうけど、フランキーがアジトに戻った後怒ってこちらへ来る可能性は捨てきれないからな。

 

 そして、しばらくすると朝日の光が差し込み辺りが徐々に明るくなってきた。日が完全に出るとみんなも起床し船から出てきた。

 

「みんなおはよ~。キッチンにサンドイッチがあるから朝食どうぞ」

「うっひょ~~!メシメシ~~!!」

「サンキュー!さっそく食べてくるぜ!」

 

 サンドイッチを聞いてルフィ達はヨダレを滴しキッチンへ走っていった。そんな中、ナミがこちらへやってきて状況を確認する。

 

「ふあ~~。おはよアルガ後でいただくわ。それで、あれからロビンはどう?」

「ナミおはよ~。サンジと交代で見張ってるけどまだ帰ってこないよ」

「そう……心配ね」

「心配といえば、実はついさっきから町の方がなんか騒がしいんだよね」

 

 一晩中経っても戻ってこないロビンに対し心配しているナミに俺は気になっていることを伝える。

 

「騒がしい?町が……?」

「うん、昨日は賑やかって感じの声が大きかったけど今日はそんな感じじゃないんだ。まるで、慌てているような焦っているような……」

 

 ナミも町の方へ耳を傾けると俺の言いたいことがわかったのか眉を寄せる。

 

「確かに……町で何かあったのかしら?朝食を済ませたらルフィと一緒に確かめに行ってみるわ」

「うんお願い」

 

 その後、朝食を済ませたナミはルフィとウソップを連れて町の方へ行く。そして、仮眠から起きたサンジもチョッパーを連れてロビンの捜索へ向かった。

 

 あまり寝れてないハズだが、どうやらロビンが心配過ぎてあまり眠れないらしい。チョッパーも同じ気持ちなのかこちらも朝食を済ませてすぐに町の方へ行った。

 

 そして、最後に起きてきたゾロがこちらへやってくると船番を替わってやると言ってきた。

 

「おめェも爺さんが心配なんだろ?病院に見舞いにでもいってやれよ」

「ゾロ……ありがとう」

 

 俺はゾロの言葉に甘えて船番を交代することにした。そして、俺も町へ入り病院へ向かうのだった。

 

 

 

 

 病院へ着くとじいちゃんの病室を教えてもらい部屋まで向かう。そして、病室へ着き扉を開くとベッドで会話をするじいちゃんとその相手、ひとりのお婆さんがいた。

 

「じいちゃん見舞いに来たよ。えと、その人は?」

「おおアルガわざわざ来てくれたのかスマンのう。どれ紹介しよう、この人がワシの妻リーススじゃ」

 

 俺は目を見開いた。まさかここで会うことになるとは。

 

 思わぬタイミングで反応が遅れた俺は体が固まっているとお婆さん……いや、ばあちゃんがこっちに来る。

 

「お前さんが……爺さんの言っていた……確かにリベルと似ておる。まるで若かりし頃の爺さんを鏡で写したかのようじゃ」

「え?そんなに似てる?」

「相変わらず婆さんは例えるのが好きじゃのう」

 

 じいちゃんはそういい笑っていると俺は目的を思い出して手に持っていたフルーツ等を棚に置いた。

 

「はいこれお見舞いの水水フルーツの盛り合わせ。後で食べてよ」

「おお、こりゃありがたい。後で婆さんに剥いてもらうとするかのう」

「そうしてもらい。それにしてもすっかり元気になったみたいでよかったよ」

「まあ、元々対した怪我じゃなかったしな。壁に頭をぶつけて意識が朦朧としただけじゃし」

「……ん?」

 

 心配していた俺はじいちゃんの言葉に少し引っ掛かり改めて確認してみる。

 

「あれ?抵抗したって言ってたよね?フランキー一家に殴られたりとかは?」

「いや、フランキー一家はワシらみたいなカタギには手を出さん。じゃが、あのケースはアルガの物じゃったから無理やり奪おうとしてきてな。そこで公園を出た後、隙を見て逃げようとしたらうっかり足を滑らせてこの有り様よ」

 

 どうやら俺が想像とは少し違うようだ。俺はてっきり金を奪うためにリンチにしたもんかと……。よく考えれば一応解体屋とかいう真っ当な仕事をしているんだしカタギには手を出さないか。

 

 まあ、元を辿ればじいちゃんを傷付けた原因はあっちにあるからどの道報復はしたけど。

 

 しかし、そうなると少しマズイかも。ケガをさせた原因はフランキー一家とはいえこれは事故だから帰ってきたフランキーがブチギレてここへ来るかもしれない。

 

 にしたって危ないなじいちゃん。もし、大金に目が眩んで相手が見境なくなってたらどうしてたんだ。

 

「確かにあれは大事なものだったけどじいちゃんの方が大事なんだから無茶しないでよ……。もしもの事があれば逃げてもよかったのに何でそこまで?」

「そんなの決まっておろう。アルガはワシの──」

「……っ!」

 

 じいちゃんが言い終える前に俺はとっさに後ろを向く。あ、もう来たのか思ったより早いな。

 

 俺は見聞色で病室の外から敵意の声が多数聞こえてきたので病室の窓を開けて身を乗り上げる。

 

「ゴメンちょっと用事ができたからもう行くよ。とりあえず、元気そうでよかった。もし、また会えたら一緒にお酒でも飲も」

「ん?お、おいアルガ……お前そっちは窓……」

「最近若者の間では流行ってるらしいよ。"山風ごっこ"」

「そーなのかー。カクさんは人気あるからな~。じゃが、あまり無茶はせんようにな」

「うん」

 

 咄嗟についた言い訳にじいちゃんはあっさりと納得した。やっぱ普段から飛び回ってるのねあいつ。

 

 じゃあね。じいちゃん……ばあちゃん……。

 

 俺は窓から飛び降り地面に着地する。3階の窓から飛び降りたので周りの人達が俺を見てギョッと驚く。

 

 しかし、そこにいたのは驚く人達だけではない。俺を見ると血相を変えて一斉に俺を囲い込む。

 

「手配書と同じ……いたぞ!"麦わらの一味"だっ!!」

「仲間がひとりこの病院へ来たって情報は本当だったようだな……!」

「ここにアイスバーグさんがいると思っていたのか!?何にせよひとりでノコノコ現れておれ達にゃ好都合だ!!」

「絶対逃がすな!取っ捕まえて他の奴らの情報も吐かせろォ!!」

「うへェ~~。もう情報が広まったのか。流石に早いな」

 

 早めにお見舞いにこれてよかった。もう少し遅かったら一目も見れずじいちゃんのお見舞いに行けないところだった。

 

 さと、ここからどうしよ。こうなるとどこへ逃げても敵だらけだ。ひとまず病院から抜け出そう。

 

「病院を出たぞ!追えェ!逃がすなァ!!」

 

 俺は次々に襲いかかる人達を傷付けないよう注意し逃げ回り病院を出た。当然、みんなも追いかけようと俺に向かってくる。その時、どこからか陽気な音楽が流れてきた。

 

 周りのみんなは俺から視線を外し嫌そうな表情で辺りを見渡す。同時に俺はこの音楽を聞き困惑していた。

 

 ……ハッ?なんでこの音楽が?あいつは今ここじゃなく造船所にいるハズじゃ……!?

 

「あそこを見ろ!上だァ!!」

 

 

 ひとりの住民が建物の屋上に指を差す。そこには布で姿を隠す3人の影。そして、音楽のリズムに合わせて踊っている。

 

「おれはこの島一のスーパーな男!!ウォーターセブンの裏の顔!!!そうだおれは人呼んでワァオ!!ん~~~~っ!!」

 

 布が剥がれるとその姿を現しハデな爆発の演出と共にポーズをとっていた。

 

「フランキ~~~~ッ!!!!」

 

 姿を見せると俺を襲ってきた人達を含め全員が焦ってこの場を逃げ出す。俺はポツンとその場で立ち尽くしているとフランキーが俺を見つけサングラスを外した。

 

 そして、屋上から飛び降りると俺の目の前にズシンと重い音と共に着地した。

 

「見つけたぞ。オメーがアルガだな?随分とまあウチの子分共をヒドイ目に遭わせたじゃないのお兄ちゃん」

「先にお前らがじいちゃんをケガさせたんじゃねェか」

 

 目が血走っているフランキーに対し俺もガンを飛ばす。お互い譲らない睨み合いが続く……かに思われたが。

 

「アウ……確かに、その通りだ」

「おん?」

 

 俺の言葉を素直に肯定しさっきまでの敵意がまるで感じなくなった。どういうことだ?

 

「子分から話は聞いた。途中から海賊のオメーらと一緒にいたもんで最初はあのジジィも仲間と思っていたらしい」

「最初?」

 

 俺が疑問を浮かべるとフランキーはああと頷き話を続ける。

 

「だがすぐにジジィはこの島の住民とわかったんでとりあえず手は出さず公園から連れ出しオメーらの金の入ったケースだけ強奪しようとしたが……逃げ出したジジィが勝手に自滅したもんで仕方なく救護船を呼んだ後に金は持ち去ったんだと」

「ああ、なるほど」

 

 病室でじいちゃんが言っていたことと合致するのでウソではないようだ。

 

 それに、実はフランキーハウスに行く道中既に救護船がじいちゃんの元へ向かっていく所を見て少し対応が早すぎないかと不思議に思っていたけどそういうことか。

 

 そこまで説明しするとフランキーはワナワナと肩を震わせこちらを睨む。

 

「その結果があれだったわけだ。随分とおもいっきり暴れてくれたじゃねェか。……と普段のおれなら言うだろうが」

 

 一瞬怒りが込み上げた様子だったが、すぐに正常に戻り俺を見つめる。

 

「理由がどうであれおれ達ゃカタギのジジィに被害に遭わせたのは事実だ。非はこっちにもある。だからその点に関して既に子分どもにも一喝入れた。スマなかったな」

「…………」

「どうした?そんな黙りこくってよ」

「あ、ああいや……まさかここまで素直に謝罪してくるとは思わなくて……」

「バカ野郎。こちとらフランキー一家の棟梁フランキー様だぜ?こう言った線引きはしっかりしねェとな」

 

 これが上に立つもののカリスマ性ってものなのかな?だてに不良達をまとめあげるだけはある。

 

「そういや、ひとつ聞きてェ事があるんだが。昨日一緒にいたカタギのジジィとはどういう関係だ?」

「ああ、俺のじいちゃんだんだよ」

「オメーの?それじゃ何でオメーは海賊やってんだよ?」

「まあ、色々あって……じいちゃんと会ったのだって昨日が初めてだし」

「……っ!!?」

 

 俺の言葉を聞きフランキーは何かショックを受けたのかその場で固まってしまう。

 

「そうか、訳ありか……。お互いその歳まで会えねェなんてよほど苦労したんだなァ~……!」

 

 何かを察したのかフランキーは突然泣き出し俺は少し困惑した。あー……そういや涙脆かったね。

 

「ズビビッ!なるほどな。それでカタギのジジィにあんだけ過剰な反応をしてたわけか。そりゃあおれ達を目の敵にするわな。……ヨシ!なら今回の件は互いに痛み分けってことで手を打たねェか?」

「……わかった。けど、その代わりしっかりじいちゃんには謝罪してよ?それなら俺もこれ以上は何も言わない」

「そこは当然の筋だわな。じゃあ決定だ!」

 

 フランキーが和解の証として手を差しのべる。俺もそれに応じその手を握ったその時だった。今まで離れていた住民達がまた近付いてきた。

 

「おいフランキー!用が済んだんならそいつをこっちに明け渡せ!!」

「そうだ!おれ達はそいつを捕まえなきゃならねェんだ!!」

「んあ~?やたらと島の奴らが殺気だってるがオメーこいつらに何かしたのか?おれでもこんなに恨まれることは滅多にねェぞ」

「実は昨晩にこの島の市長アイスバーグさんが何者かに襲われる事件があった。その犯人のひとりに俺の仲間がいたから俺達が島中に狙われている感じ」

 

 俺が端的に話すと予想外の事実にフランキーは驚愕する。

 

「ハァ!?オメーあのバ……アイスバーグの野郎に手を出したのか?」

「何者かにって言っただろ!嵌められたんだよ!仲間のロビンを連れ去った誰かがな」

「なるほどね~。おれのいない間に色々とあった訳か……」

 

 フランキーはそういい少し考えると重くため息を吐く。

 

「仕方がねえ、ここじゃゆっくり話しもできねェし……おれに掴まりやがれっ!!」

「「はーーいだわいなアニキー!」」

「へっ!?あっちょ!!?」

 

 そう叫ぶと近くにいたキウイとモズがフランキーの背中にしがみつき俺を無理やりだき抱えた。

 

「逃げる気だ!!捕まえろォ!!」

「”風来(クード)噴射(ブー),,!!!」

「クソッ!逃げられ……ギャァアア!?臭ェエエエ!!?」

「でもちょっとコーラの香りが……!」

 

 フランキーのお尻が一気に膨らみとんでもない勢いのオナラで屋上まで到達した。

 

「ワハハハ!!そんじゃとっととズラかろうぜ!!」

「うわー……下が悲惨なことに……」

 

 けど、正直助かった。あのまま逃げても振り切れるかわかんなかったし。

 

 こうして俺達は屋上から移動を始めこの場所を後にした。

 

 

 

 

 あれから屋上から屋上へ伝って移動していると俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「おお~~い!アルガァーー!!」

「あっ、チョッパー!」

 

 下でチョッパーが俺を呼びかける。サンジはおらずひとりのようだ。裏路地のため人の気配はないのでとりあえず屋上から降りてチョッパーと合流する。

 

 話を聞くとどうやらロビンと会ったらしいがその場で別れを切り出され一方的に去っていってしまったと泣きながらいうチョッパー。

 

 サンジは別行動をとり今はこの事をみんなに伝えるために探し回ってたとのこと。そして、まず最初に俺を見つけたらしい。

 

「あ、それとこれ……」

「何これ?……封筒?」

「うん、これをアルガにって」

 

 チョッパーから渡されたのは小さな封筒だった。軽くて薄いので入っているのは紙媒体のものだろう。とりあえず俺はそれを懐に入れた。

 

「まあ、確認は後でいい。今はそれよりもルフィ達を見つけよう」

「うん!」

 

 チョッパーは頷くと今度はルフィ達と合流するためにまた仲間の捜索を開始する。チョッパーの鼻のお陰でサクッと見つけ出し今度は人気の無い屋上でチョッパーはロビンについて説明する。

 

「本当に言ったのか!?ロビンがそんな事!!!」

 

 今までロビンがそんなことをする奴じゃないと信じていたルフィはチョッパーの説明を聞き驚愕する。チョッパーも悲しげにコクンと頷いた。

 

「ロビンが敵にせよ味方にせよ……まずはこれからどう動くかが先決だ」

 

 ウソップの言う通りまずは状況の整理から始めた。アイスバーグ暗殺未遂事件。その首謀者が俺達に罪を擦り付けようとしていること。未遂なら今夜にでもまたアイスバーグの所へ来る可能性が高いこと。

 

 以上を踏まえ、真相を知るためにも今夜俺達もそこへ行きロビンともう一度話し合うことが決まった。

 

「ところで、さっきから気になってたんだが……一緒にいるその変態共は誰だ?」

「おいおい兄ちゃんそう褒めてくれるな~」

「いや褒めてねェよ!?」

 

 フランキーは変態と言われ褒められたと思いテレるがウソップは全力で否定する。

 

「あ、そうそう紹介が遅れたね。この人は解体屋のフランキー」

「宜しくなー」

「「宜しくだわいなー」」

『敵じゃねェか!!!!』

 

 みんなが一斉に声を荒げた。デスヨネー。

 

「アルガと一緒にいたから友達なのかと思った……!」ガーン!

「お前もお前でちったァ不審に感じろよ!!」

 

 今まで一緒に行動していたチョッパーも気付かなかったのでショックを受けウソップにつっこまれる。

 

「それと、何でアルガはコイツらと仲良くつるんでんだ!?」

「えーと、色々ありまして……一先ず和解しました」

「納得できるかァ!!?」

 

 ウソップの最も過ぎる意見に何も言えなくなる。そして、ウソップ以上に納得のいかない人がもうひとり……。

 

「そうよ!!わたしのお金である2億ベリーさっさと返しなさい!さもないとブッ飛ばすわよ!!!」

「わたし()な!!」

「て言われてもよ~。オメーらから奪った金はもう……使っちまったからなァ~!」

「ムキャ~~~~ッ!!!!」

 

 フランキーはわざとらしく腹立つポーズで散財宣言するとナミは怒りで言葉を失う。コラ煽るな煽るな。

 

「ナミ落ち着いて。それはそうと実はフランキーにお願いがあるんだ」

「アン?お願いだァ?」

「うん、俺達の船をどこか安全な場所まで避難させたい。もうじき"アクア・ラグナ"がやってくるからね」

「"アクア・ラグナ"……何それ?」

「あ、おれそれ知ってる!大きな高潮の事だよな。町の人達が言ってた」

 

 ナミとルフィは知らないがチョッパーは事前の知っていたので"アクア・ラグナ"についても説明する。

 

「えっ!?島が沈むですって!そんな規模の高潮なんて聞いたこともない……。でも、この気温の変化は異常すぎる。少なくとも今夜に大きな嵐が来るのは間違いないわね」

「そそ、だから一先ずメリー号を安全な所まで避難させたいんだけど……頼める?」

 

 俺はフランキーに頼み込むが嫌そうな顔で断ろうとする。

 

「場所なら橋の下倉庫があるが……何でわざわざおれがそんな事しなきゃなんねェんだ。悪ィが断──」

「買い物で余ったお釣りはやるからそこをなんとか」

「アニキー、確かにあるわいなお釣」

「100万ベリーあるわいなアニキ」

「ヌオッ!?そんなにあったのかよ!!釣りを残しちまうたァ今週のおれスーパーダセェ!!……グァアア!!仕方がねえわかったよ引き受けてやらァ!」

「交渉成立。よろしくね」

 

 この交渉に最初はナミがゴネたが船の安否のために渋々了承してもらった。一先ずこの事をゾロに伝えるためにメリー号へ戻る。

 

 しばらくし海岸まで着くと異様な光景があった。メリー号の近くに武器を持った何人もの人達が倒れているのだ。

 

「んお、やっと帰ってきたか。それで町の方はどうだったんだ?」

「ゾロ!それよりこの状況は何なのよ!?」

「いきなりやってきておれを襲ってきやがったんで相手したまでだ。安心しな峰打ちだ」

 

 よく見ればここに倒れている人達はガレーラの船大工だ。船があるんだしここに来るのは当然か。

 

 とりあえず、ゾロにこれまでの経緯を説明しメリー号を安全な所まで運ぶことを伝える。

 

「なるほど事情はわかった。なら今夜向かうっていうその本社におれも行こう。あの女は前々から何かあると思ってたんだ。敵か味方かこの目でしっかり見極めたい」

「わかった。それじゃ俺とフランキー達でメリー号を運ぶからみんなはロビンをお願い」

「おう!任せろ!!」

 

 やるべきことを決め早速行動に移そうとした時ウソップが待ったをかける。

 

「いや、おれはサンジを探そうと思う。ひとりだけおれ達の事情を知らねェんだ。誰かが伝えた方がいい」

「確かにな。だが、あのグル眉がどこにいるのかわからねェぞ?」

「いや、おそらくアイツは海列車の近くにいると思う」

「海列車?何で?」

 

 ルフィが首を傾げるとウソップが説明する。

 

「今夜アイスバーグさんを襲撃した後、犯人はどうすると思う?」

「どうするって逃げるわなそりゃ」

「その通り。だが、島は高潮で船は出せず狭い島中を逃げ惑うハメになる。しかし、ひとつだけこの島を出る術がある」

「そうか!海列車!」

 

 そこまで説明するとナミは答えにたどり着く。ウソップもその答えに頷いた。

 

「ああ、だからサンジはもしもの時のために駅付近を見張ってんじゃねェかと思うんだ」

 

 スゴ……ウソップの予想ドンピシャなんですけど。

 

 驚いた……確かにウソップは頭がキレる方だけどここまでとは……。原作であんな決闘がなければギスギスした展開も減って間違いなくこんな風にプラスの方向にいってたんだろうな。

 

 ……やっぱり……俺は、この一味に……。

 

 俺はそんなウソップを見て……少しモヤッとした。

 

 

 

 

 方針が決まり早速行動を開始した。俺は船を、ウソップはサンジを、そしてルフィ達はロビンともう一度会うために三手に別れた。

 

 そして日が暮れる頃にはなんとかメリー号を橋の下の倉庫に移動させ俺は荷物の整理を始めた。

 

「何やってんだオメー?」

「もしものために一応荷物を出しとこうと思って。倉庫の一室借りるよ」

 

 そういい俺はテキパキと次々に荷物を運び出す。その様子をフランキーはキウイの淹れてくれたお茶を飲みながら見てくる。

 

「なあ、オメーにひとつ聞きてェ事がある」

「なに?」

「……なぜあいつらから避けようとしてんだ?」

「──っ!?」

 

 フランキーの思わぬ一言で俺は核心を突かれ動けなくなる。

 

「……何……言ってんの?」

「オメーを見てて幾つか違和感を覚えた。皆が消えた仲間を心配している中……オメーからはそれを感じなかった。まるで、その件は解決すると確信してるかのようにな」

「そ、それは……」

「それにもうひとつの違和感。仲間といればいる程オメーの目が曇っている風に見える。仲間の危機だって時に別の事で悩んでやがる。随分と自分勝手な奴だなァ」

「…………」

 

 俺はなにも言い返せなくなり黙り込む。

 

「応える気はねェか……。ま、オメーらの事情なんざこっちは知ったこっちゃねェがな」

 

 言いたいことをいい終えるとフランキーはお茶を飲み直す。

 

 そう、フランキーが言っていたことは全部当てはまってる。昨日の公園で見たあのじいちゃんの顔を思い出す度に考えてしまうんだ。

 

 

 これ以上、じいちゃんに寂しい思いをして欲しくないと……。

 

 

 昨日会ったばかりだけど俺はじいちゃんといてとても楽しかった。仲間といた時とはまた違う心の温もりを感じた。

 

 どこか懐かしく感じるあの温もり。それが父さん母さんと一緒に暮らしていた頃に感じたものだと思い出すのにそう時間はかからなかった。

 

 それを理解したのは昨日公園のベンチでじいちゃんの顔を見た時だった。あの時、席を外したのはトイレもあるがそれ以上にある不安が沸き上がったから。

 

 それは、じいちゃんが俺のことをどう思っているのかというものだ。

 

 俺を見て泣くほど喜んでくれたけれど、実際のところじいちゃんが俺のことをどう思ってくれているのかまだわかりかねている。

 

 俺が父さんに似ているからなのか?そんな邪なことを考えてしまう。

 

 そして、そう考えると同時にこんなことまで思ってしまう。俺が……一味を抜けたとしても大丈夫だろうと。

 

 別に、俺が居なくたって物語には支障はない。原作には俺と言う存在はいないのだから……。

 

 この島に着いた時にロビンと行動しなかったのだって、今の時点では何をしようとまだみんなにロビンの心の扉を開くことができないとわかっていたから。

 

 ロビンが連行されエニエス・ロビーで初めて自分の過去と奥底に秘めていた本音をみんなに伝えそれをルフィ達が受け止めて初めてロビンは真の仲間となる。

 

 その時、俺が居なくたって結末は変わらない。そう、変わらないのだ……。つまるところ俺の存在はいてもいなくても……。

 

 クソ……もはや俺は何を考えているのか自分でもわからなくなる。

 

 海賊を続けたい。けど、じいちゃんに寂しい思いはして欲しくない。けど、そのじいちゃんが俺のことをどう思っているのかわからない。

 

 もう、俺自身考えることが多くて頭が混乱している。

 

 俺が最後の荷物を運び終えた時、チリーンチリーンと倉庫のベルが鳴る。その音を聴いた瞬間、思いに耽っていた俺はすぐに気持ちを切り替え一室の扉を開いた。

 

 そこには不審に思ったキウイとモズが倉庫の扉を開こうとする姿があった。

 

「待て!開けるな!!」

「え──」

 

 咄嗟に呼びかけるも遅かった。扉を開いた瞬間キウイとモズは吹き飛ばされ気を失う。それを見ていたフランキーは激昂するがその人物を見て驚く。

 

「キウイ!?モズ!?誰だァ!!!おれの妹分にこんなマネを──っ!!?」

「あまり手荒な事はしたくないが此方も急いでいるんでね。悪いが眠ってもらった」 

 

 そこにいたのはルッチ、カク、カリファ、ブルーノ。全員ウォーターセブンで知られる人達だ。

 

 一瞬驚いたフランキーだったがすぐに我に返り大切な妹分を傷つけられたことに再び怒りを覚え4人に襲いかかる。

 

 だが、ルッチにブッ飛ばされてしまう。そして、ルッチがここへ来た理由を話し始める。世界政府が探し求めている古代兵器の設計図をフランキーから奪い取ること。

 

 もちろん、フランキーは抵抗しルッチに攻撃を仕掛けるが呆気なく熨されてしまった。その後カリファのトゲの鞭で無力化され捕まってしまう。

 

 設計図を渡さないとわかるとフランキーをこのまま捕らえエニエス・ロビーまで連行しそのありかを吐かせるという手段に切り替えた。

 

「お前は確か……麦わらの仲間じゃったな」

「っ!?」

 

 突如、後ろから声が聞こえると俺は振り返り金棒を構える。瞬間重い衝撃が金棒越しに伝わる。

 

 俺も負けじと反撃するがいまいち調子がでない。カクもそのことに気付いていた。

 

「なんじゃ、ワシらを前に迷い事か?随分と余裕じゃな!」

「グッ!クソッ!!」

 

 俺の攻撃は当たらず防戦一方だが俺も同じくカクの攻撃を紙一重でいなす。そんな攻防戦をしていると後ろから殺気を感じる。

 

「カクもういい。そんな奴に手間をかける暇はない。おれがとっとと終わらせよう」

「ウオッ!?何だコイツの姿!オメー能力者だったのか!!」

 

 振り返るとそこには大きな豹の姿に変わったルッチがいた。そして、そのまま俺に迫ってくるルッチに金棒を振るう。

 

「”鬼鏑(おにかぶら),,……!」

「”鉄塊(てっかい),,!!!」

「──っ!!」

 

 ついに俺は金棒に覇気を纏わせることもできなくなってしまい逆に硬化したルッチに俺の金棒が砕かれてしまった。

 

「8000万を越える首がどれ程のものか期待したが……呆れた。闘いの最中に迷いでロクに見極めもできんとは……殺す価値もない」

「──っ!?ゴフッ!!?」

「飛べ」

 

 瞬間、俺はルッチに殴り飛ばされてしまう。勢いは止まらず倉庫の扉をぶち破りそのまま外へ放り出されてしまい……俺は裏町の沈む海へ落ちてしまう。

 

 カナヅチで体がうまく動かせずどんどん沈んでいく。息も続かず薄れゆく意識の中……俺は父さんのことを思い出していた。

 

 

 

 

 ………………ん?どこだここ?俺は確かに飛ばされて海へ……辺りが黒い。

 

「ん?お前……アルガか?」

「あれ?声が聞こえ……えっ!?」

 

 声が聞こえた方を向くとそこには父さんがいた。

 

「いや、父さんがいるってことは……俺は死んだのか?」

「なーに神妙な顔になってるんだお前は」

「アイテッ」

 

 唐突にデコピンをされ俺は額をおさえる。

 

「何すんのさ」

「痛いってことは少なくとも死んではいないな!」

「あっ、そうか……っていや、普通こういうのって自分の痛みで実感するもんじゃないのかよ」

「それは無理だな!だっておれ死んでるし!なので痛みはない!」

 

 そういわれ俺はさらに困惑する。え?俺は生きてるけど父さんは死んでる?ならなんで俺は今父さん話が……?幻覚?

 

「何故かはおれにもサッパリだ!」

 

 父さんはアッハッハッ!とあっけらかんと笑う。

 

「突然こんな場所にいたと思えば息子がいる。どうなっているのかはおれにもわからんが……時にアルガ。お前今なにか悩み事があるんじゃないか?」

「えっ……なんで」

「わかるさそれぐらい!おれの息子だからな!」

 

 そういわれ俺は胸が締め付けられるように苦しくなった。

 

「そういやお前とはこうやって腹割って話すのは初めてだな。せっかくだ、色々話そう!」

「……う、うん」

 

 不思議と父さんを見ていると安心する。そのお陰か俺は今までのことを父さんに話した。

 

 はじめての友達ができたこと。今は海賊として生きていること。様々な出会いや冒険をしたこと。

 

 そして、ウォーターセブンでじいちゃんと出会い今後どうすればいいのかわからなくなるなって悩んでいること。

 

「なあ、父さん……。俺は……どうすれば……いいんだろう?」

 

 その瞬間、俺の頭部に激痛が走りその場に踞ってしまう。そこでようやく自分が殴られたのだと理解した。

 

「アルガ。お前をこうやって折檻するのも初めてだな」

 

 顔を上げると父さんは怒りや悲しみといった複雑な表情をしていた。

 

「アルガ、お前はいつからそんな弱い奴になったんだ?」

「グッ……イテテ、父さんいきなり何を──」

 

 俺の言葉を遮るように父さんはしゃがみこみ至近距離で俺を叱りつけた。

 

「自分の決断から逃げんじゃない!!!」

「っ!?」

「お前の抱えているモノはおれにはどうすることもできない。おれだって困った時はいつでも助けてやりたい!だが、頼るフリして自分の運命を他人に委ねるな!!最後に何かを決めるのはお前だぞ!!!」

 

 そこまで言われると俺は何も言えなくなってしまった。

 

「アルガ。お前は今目の前の出来事が重なり視野が狭くなっている。そのせいで悩み苦しんでいるが……そんな時こそ思い出せ!お前が本来やりたかった事を──お前の"夢"を!」

「俺の……夢……」

 

 目の前のことに頭がいっぱいで忘れていた。俺の"夢"……。

 

 

『おじさーーん!!』

 

 

「…………」

「……どうやら見付けたようだな。お前の進む道を」

「で、でも……そうしたらじいちゃんが……」

「アルガ……よく聞きなさい」

 

 俺の不安を察したのか父さんはポンと俺の肩に手を置き……真剣な顔で俺と向き合った。

 

「おれの父ちゃんをナメるなよ?」

「──っ!?」

「確かに父ちゃんはおれが死んで悲しんでいるだろう。だが、そこから立ち上がれなくなる程弱い人じゃない事をおれは知っている」

 

 その言葉は昨日会ったばかりの俺の言葉なんかよりずっと重い……何年何十年と共にした者の言葉だった。

 

「だからお前は余計なことは考えすぎず自分の本音をぶつけてこい!そうすればアルガもわかるハズだ。父ちゃんがどれだけ強いかがな!」

 

 父さんの言葉で俺は胸を締め付けていたモヤが少しずつ消えていくのがわかった。だが、同時に少し申し訳なさを覚える。

 

「でも、いいのかな?そんな一方的にワガママを言っちゃって……俺だけ気持ちを受け止めてほしいってのは強欲な気が……」

「ワガママ?いいじゃないか!子供はワガママを言うぐらいがちょうどいい!それに、おれは海賊じゃないからわからんがソールならきっとこう言うぞ」

 

 そういい父さんは母さんを思い浮かべているのか顔を上げ笑った。

 

「『強欲でワガママ?いいじゃない。ワガママで欲張りなのは、"海賊の本質"だ』とな!」

「──っ!!」

 

 その言葉で……俺の胸を締め付けていたモヤは消え今まで重く感じていた心が軽くなった。

 

 同時に、辺りの空間が歪み始める。

 

「どうやら、そろそろお別れみたいだな」

「うん、ありがとう父さん」

「アッハッハッハッ!なーに気にするな!悩める息子を父親として相談に乗ったまでさ!だがな、今後も大変な事があれば来なさい。──いつでも、おれはお前の力になるからな!」

 

 父さんはそういいニカッと笑い俺に手を差しのべる。俺もその手を掴み──。

 

 父さんは消え暗かった世界は真っ白となった。

 

 

 

 

「……っ!グヘ!ゲホゲホッ!!」

「よかった!水を吐いたな!気が付いてよかった!」

「アルガ体の調子はどうだい?」

 

 目を醒ますと胃に溜まっていた海水を吐き出し意識がハッキリとし視界も戻った。

 

 最初に目にしたのは俺を心配そうな顔で見つめるじいちゃんとばあちゃん。ゆっくり体を起こし辺りを見渡すとここは裏町の屋上だった。

 

「お前を探していたら引き潮で沈んでいたこの屋上に気を失っていたのを見付けてのう。慌ててここまで来たんじゃ」

 

 ……っておいおい!待ってほしい!ここ裏町だよね?いやそれ以前に……!!

 

「じいちゃんここが危ないの知ってるでしょ!?それにまだケガも残ってるハズなのになんで無茶してここまで──」

「んなもん決まっとろう」

 

 じいちゃんは俺の疑問を言い切る前にハッキリとこう答えた。

 

 

「お前が……ワシの家族じゃからだ」

 

 

「──!?」

「お前はリベルがワシに残してくれた唯一の宝物じゃ。なら、それを守ることの何が間違いがあろうか?」

 

 宝物……そっか、じいちゃんは俺のことをそんな風に思ってくれてたんだ。

 

 なんだか涙腺が緩み少し顔を下を向くとある物に目が入る。懐に入れていた封筒だ。

 

 俺はふとそれに手にし中身を見てみると、そこに入っていたのは一通の手紙だった。

 

 そう、俺が10年以上前に書いたロビンへの手紙……。

 

 何故こんなものを持っていたのか。今までずっと捨てずにいたってことは大切にしてくれてたのかな?

 

 なら何故今になってこれを渡したのか……。ロビンは今、俺達と決別するために一度別れを切り出した。ならこの手紙もそういうことなのだろう。

 

 俺との友達だった関係を断ち切るために。

 

 その瞬間、胸の奥から熱いものが沸き上がるのを感じた。それは、己への怒りだった。

 

 俺は……ここまで追い込まれているロビンをさっきまで放っておこうとしていたのか?

 

 仲間のために俺のために自分を犠牲にしてまで大切なものを守ろうと……。はじめての友達の喜びさえ圧し殺して……。

 

 

 俺の……大大大大大バカ野郎がっ!!!!!

 

 

 少し前までの自分の気持ちを思い出す。

 

 俺が居なくたって物語には支障はない?いや、そうじゃねェだろ!俺はそんな打算であいつらと一緒にいたんじゃない!!

 

 俺は……!俺自身があいつらと共にいたいと思ったから一緒にいたんだ!!!!

 

 だったらもう迷うことなんて何もない。俺は……!!

 

「何か……決心がついたようじゃな」

「……じいちゃん」

 

 じいちゃんはそういい不敵に笑う。

 

「それでよい。人は時に迷い苦しむ。じゃが人はそれを乗り越え己の答えを見付けた時、更なる成長を遂げるのじゃ」

 

 じいちゃんは俺を見る。その目からはとても強い者の意識を感じ取れた。

 

「よいかアルガ?人生とは闘いじゃ!前を向かねば勝利は掴めぬ!時には迷い立ち止まり下を向く事もあろう!じゃが!!決してそのまま諦めるな!!その時は……己が死ぬ時じゃと思え!!!」

 

 じいちゃんの激励に俺は覚悟を決めた。

 

『お前は余計なことは考えすぎず自分の本音をぶつけてこい!』

 

 父さんの言葉を思い出す。わかったよ。父さん……。

 

「ありがとうじいちゃん。俺……じいちゃんに伝えたいことがあるんだ」

「聞こう」

「俺……今までずっと悩んでたんだ。父さんが亡くなってじいちゃんがこれから寂しい思いをするなら俺もこの島に残ろうかとか色々……」

「…………」

「でも……俺には"夢"があるんだ。俺の冒険の先で待っている"大切な人"に会うまではこの旅を終わらせるわけにはいかないんだ」

 

 俺の気持ちを全て伝えるとじいちゃんは少し俯き顔を上げると……心底嬉しそうな笑みをしていた。

 

「ようやく……孫の思いを聞けてよかった。そうじゃのう、若いもんが夢に走らずどこに向かおうて。その夢を叶えるためにも……決して止まるでないぞ?」

「うん!」

「あのォ~~、盛り上がってるとこ悪いんだがねェ~~」

 

 思いを伝え晴々とした気持ちでいるとばあちゃんが声をかけてくる。

 

「「ん?」」

「後ろから"アクア・ラグナ"来てますよォ~」

「「んっ!!?」」

 

 ばあちゃんの言葉で同時に振り返る。そこには裏町の全てをのみ込む勢いの超巨大な高潮が迫ってきた。

 

 ヤッベェエエエ!!?じいちゃんと話すことに夢中で忘れてた!!そういやここガッツリ裏町だった!急いで逃げねェと!!

 

 この場をどう切り抜けようか──そう、悩んでいる時だった。

 

──まさかさっそく力になれるとはな!

 

 ……ん?どこかから聞き覚えのある声が……。というかこの声は……いや、まさか!?

 

──アルガよく聞け!おれも詳しいことはよくわかっていない。ただ、これだけはわかる!()()()()()()()()!!

 

 俺はあり得ないことが起き動揺する。しかし、不思議とその言葉を受け入れると眼を瞑り俺の中から感じる者に願いを求めた。

 

 俺に……力を貸してくれ──父さん!!!

 

 瞬間、俺は全身から力が漲るのを感じた。体が軽い……ドンドン力が沸き上がってくるようだ。これなら……イケル!!

 

「じいちゃんばあちゃんちょっとごめんね」

「アルガ……?オヌシ今……」

「あらァ~なんだか輝いてるわァ~。まるで蛍のよう」

 

 両脇に二人を抱え……おもいっきり床を蹴った。すると、ものすごいスピードで裏町の屋上を駆け抜ける。

 

 "アクア・ラグナ"の波との距離はみるみる離されていく。

 

 そして、何百mと離れていたハズの造船島にあっという間に辿り着いてしまった。

 

 抱えていた二人を地面に降ろす。すると、さっきまで溢れ出る程感じていた力は無くなり今度は異様なまでに体が重く感じその場に倒れる。

 

「ウオッ……なんだこれ?ウ、ゼェ~ハァ~……なんか一気に力が抜ける……」

 

 というよりはさっきの異常なまでに感じたあの力……()()()()()()()()……。

 

「アルガ、スゴかったのう今の。お陰で助かったわい」

「アッハッハッハッ!いいよ気にしなくて……家族なんだから」

「……!?……そうじゃな!」

 

 家族という言葉に反応したのかじいちゃんはどこか嬉しそうな顔をする。ちょっとテレ臭かったけど嬉しそうだしいいかな。

 

 そんなことを考えていると徐々に体の調子が戻る。おっ!少しぐらいなら動けそうだ。

 

 俺は立ち上がるとじいちゃん達と向き合う。

 

「それじゃ、俺行かないと」

「どこか行くのか?」

「うん、俺の"夢"のために──奪われた仲間を取り返しに」

「そうか」

 

 じいちゃんはそういいどこか含みのある笑いをする。ん?なんだろ?

 

「時にアルガよ。オヌシの"夢"とは女絡みか?」

「え?いやまあ、違……くはないけど別にそんな浮わついたものじゃ……」

「オヌシは先ほどまでここに残るか悩んでおったそうじゃが、そういう事ならワシらを気にする必要はない!」

「は?」

 

 じいちゃんだけでなくばあちゃんもウッキウキにじいちゃんの言葉に頷き肯定する。

 

「男が女の為に人生を賭けておるのにそれを引き留める家族がどこにおる!」

「はやくひ孫が見たいわァ~」

「…………」

 

 なんだか少し誤解されているような気もするけど……。あのテンションの二人を止める程の力は残念ながらまだ回復していない……。

 

「ワシも昔は婆さんの為に人生を捧げたことがあったわい。だから気持ちはようわかっとる。のう婆さん」

「ええ、あの頃の爺さんは格好よかったなァ。いつもいて楽しかった、まるでいつまでも味のあるガムを噛み締めているかのようで」

「今は?」

「…………ガムは味が消えても楽しめるものですよ爺さん」

「フフン、どうだアルガよ」

「じいちゃんそれ褒められてない」

 

 それでも、じいちゃんは嬉しそうにしているので一々訂正するのはやめておこう。そんな気力無いし。

 

 さっそくルフィの元へ向かおうとした時俺はあることを思い出す。

 

「あ……そいえば金棒砕けちゃったんだっけ」

 

 メインウェポンだっただけにあれがないとちょっと心許ないかも……。

 

 そんなことを考えていたらばあちゃんがとんでもない物を渡してきた。

 

「じゃあこれ要るかい?」

「…………えっ!?」

 

 なんとそれは金棒だった。……いや、なんでこんな物持ち歩いてんのばあちゃん?

 

「昔はこれでよう爺さんを叱りつけたっけなァ~」

「あったの~そんなこと。懐かしいわい」

 

 昔のばあちゃんってかなり恐かったんだね……。武闘派が過ぎるよ。

 

「今じゃ護身用に持ち歩くしかなくなったからアルガさえよければ貰っておくれ」

「いいのばあちゃん?ありがとう!」

 

 こうしてばあちゃんから新たに金棒を頂き後ろに背負う。うん、握った感じも悪くない!

 

 武器を新調し気持ちを一転!いざ、仲間の元へ!!

 

「行ってらっ……あ、そういやアルガひとつ聞き忘れておった」

「なに?」

「オヌシの姓名は何て呼ぶんじゃ?」

「あ~~……」

 

 少し答えにくい質問に答えを渋る。

 

「……やはり無いか」

「うん……」

「なら今後はワシらの名前を使うとよい」

「え……」

 

 思わぬことに俺は声を漏らす。じいちゃんはそんな俺に優しく微笑みかけた。

 

「家族なんじゃから当然じゃろうて。リベルもきっと喜ぶハズじゃ。では、改めて歓迎するぞ!今日からオヌシの名は──」

 

 

「アウローラ・D・アルガ。それがオヌシの名前……ワシの孫じゃ!」

 

 

 俺は今日という日を決して忘れないだろう。それ程までに嬉しさと共に溢れる涙を止められなかった。

 

 

 

 

 

「あら、リベルどこへ行ってたの?探したわ」

「すまない、おれもよくわからないんだ。いつの間にかアルガが目の前にいて悩んでいたっぽいから励ましたらいつの間にか戻ってきていた」

「えっ!アルガと?何それズルイ!私も話したかった!」

「アッハッハッハ!ここはいい場所だが少し退屈な所だからな。久々に息子と喋れていい刺激になった!……ただ」

「あら、どうかしたの?」

 

「いや、それが励ます際に手を握った時──おれの体……いや()()()()()()()()()()()()ような気がして……」

 

「んー……気のせいじゃない?それよりいつもの賭博友達がアナタを探してたわよ。確かあの赤い海賊帽を被ったスゴい髭の男だったかしら?」

「それもそうだな。まあいっか!……って何?ゴールさんが!?こうしちゃおけん連勝更新のためにもすぐ行かねばな!」




どうも皆さんもしロマです!
17話をご覧くださりありがとうございます!

今回出てきた新情報を以下にまとめます。
アウローラ(ラテン語で夜明け)
オリ主フルネーム : アウローラ・D・アルガ

リースス・レーニス(ラテン語で笑顔)
アウローラ・D・リースス(ばあさん)
アウローラ・D・レーニス(じいさん)

金棒 : 鬼嫁(位列なし)
若い頃のリーススがよくレーニスを叱る際に使われていたと言う。レーニス曰く、その姿はまさしく鬼嫁だったと語る。

ではまた会いましょうでわでわ~~( ´ ▽ ` )ノシ
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