あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
《注意》今回のゾロパートは戦闘メインの為かやたらとIQが高いです。今更ながら戦闘時はIQが急上昇するゾロって不思議ですね。
ゾロ「わざわざ注意で伝える事か!?」
それでは続きをどうぞ( ´ ▽ ` )つ


23話 再会 中

 かつて、とある国にひとりの舞台女優がいた。その女優の美貌は国中の男達を魅了するほど美しくおれもそのひとりだった。

 

 だが、おれが惹かれた理由は外見だけではない。彼女は人気者だが気取りなく……家族思いで誰にでも優しい……心まで美しく素晴らしい女性だったからだ。

 

 だからおれは彼女に求婚した。

 

 おれは同じ国に住んでおり医者として名を馳せていた。自分で言うのもなんだが天才であり事実これまで数え切れない患者の命を救ってきた。

 

 そんなおれは地位や名誉、莫大な財産など医者として全てを手にしており彼女も受け入れてもらえると思っていた。

 

 しかし、期待は見事に外れフラれてしまう。理由は婚約者がいたから。それを聞いたおれはショックを受け家に帰ってから枕を濡らした。

 

 求婚を断れてしまいしばらくの間落ち込んでしまったが彼女の幸せを思えばと考え前を向き始めた。

 

 そうしておれは立ち直る……筈だった。

 

 数日後、おれの耳に信じがたいニュースが飛び込んできた。それは彼女の"死亡事故"。おれは何も言えぬ脱力感からそれ以降仕事を放棄するようになった。

 

 そんな時でも患者はやってくる。嫌になる程に……。

 

 おれは思った。何故こんなどうでもいい奴らの命を救えて、好きだったたったひとりの女性の命を救えないのか……。

 

 もう、このままおれも死んでしまおうか……そう考えていた時だった。おれの前に運命を変える人が現れた。

 

 そのお方はおれの医術を欲しており一緒に来るのなら死んでしまった彼女を蘇らせてくれると言った。

 

 死んだ者は蘇らない。いつものおれならそう言い鼻で笑っていただろうが今のおれにはそれが天の声とも思えてしまいその提案にすがり付くような想いで承諾した。

 

 結果、彼女は蘇り今ではいつもおれの隣に居てくれる。これを幸せと呼ばず何と言えばいい?あの時、主人についてきて本当によかった!

 

 しかし、幸せの筈のおれは蘇った彼女の顔を見る度に───心のどこかで何かが足りないと感じていた。

 

 

 

 

 

 モリアのダンスホール、そこは静寂に包まれていた。自分の心臓の音がやたらと聞こえてくる程に。俺の質問後少し時間を空けホグバックは高笑いし俺の質問に答える。

 

「フォースフォスフォス!その死体をどこで拾ったかって?てめェに教える義理もねェがその"没人形(マリオ)"の影の元主の誼で教えてやる」

 

 そういいホグバックは語りだす。

 

「今より数年前、おれ達はオーズと言う最強の死体を発見した事で打倒カイドウの計画に動き出した。その為に今一度ワノ国へ偵察に行った我々は敵の戦力を測りつつ戦力増加も兼ねて侍の死体等も回収していった」

「……そう簡単にあそこに入れるワケないだろ」

「アン?やけに知ったような口ぶりだな。まあいい、その点は抜かりはない。此方にはアブサロムがいる。島に入りゃ隠密するぐらいわけはない。それに、その時は珍しくモリア様もやる気だったからなァ。あの二人が揃えば死体の一つや二つ持ち出すなんて朝飯前だ」

 

 確かに……。アブサロムの透明能力は隠密には最適だが見聞色を使える者にはあまり有効ではない。けど、そこにモリアも一緒にいたのなら話は変わる。アイツの能力は汎用性が高いからな。

 

 特に本体と影の位置を交代できるあの技とか言っちゃえばワープみたいなもんだし。

 

「その時に回収した死体がコイツって訳だ。何でもコイツはカイドウの部下だったが逆らい反逆したため殺されたとか。本当は侍の死体だけ持って帰る予定だったがモリア様が気に入ったようでな。ついでに掘り出してきたんだよ」

「その回収した侍達の死体はどうした……?」

「ああ、どれも良い肉体だったからよ。全員"将軍(ジェネラル)ゾンビ"にしてやったさ!……だが、あのオーズの野郎のせいでさっき"将軍(ジェネラル)ゾンビ"は全滅しちまったと報告が入った……畜生!!あの木偶の坊め!!!」

 

 侍達の経緯までは楽しく語っていたがオーズの所業に対し怒りを露にする。憤怒するホグバックに俺のゾンビが宥めた。

 

「落ち着いてください。ゾンビなんて所詮使い捨て……また造れば良いんですよ。貴方がいれば今まで以上により強靭のゾンビを造れます」

「フーッ!フーッ!……それもそうだな。だが、ゾンビがいなくなった分お前がしっかり働くんだぞ?」

「承知の上です。全ては我が主──モリア様のために」

「──っ!!!」

 

 それを聞いた瞬間、俺の中の何かが切れた。気付けば駆け出し俺のゾンビにめがけて金棒を振り下ろしていた。

 

「危ないじゃないですか」

「ギャアアア!?いつの間に~~!!?」

「てんめェ……!!お前の主は……モリアじゃねェだろ!!!!」

 

 俺のゾンビは俺の金棒を片手で受け止める。だが、俺はお構い無しに手に力を込めゴリ押そうとした。

 

 その時、俺のゾンビが動いた。空いているもう片方の手で背負っていた金棒を掴み殴り返してくる。

 

 咄嗟に攻撃を中断し迫ってくる敵の金棒に俺も金棒を構えてガードをとった。もちろん武装色も纏って。

 

 しかし──。

 

───ガッ!!!ズドォォオオオン!!!!

 

「ブッ──がはっ!!?」

 

 あまりの威力に俺は耐えられず簡単に吹き飛ばされてしまい壁にめり込んだ。

 

「アルガッ!!?」

「そんな!?アルガが力負けするなんて……!!」

「フォスフォス!自身の影だから強さも大して変わらねェと思ったか?おれを誰だと思ってやがる。その肉体にはおれの改造技術により常人の十倍以上もの筋力を発揮する!!!」

「ゲホッ……なんだと?」

 

 何か改造はされているとは思ったが十倍以上!?下手な魚人より強いじゃねェか……。

 

「そんな改造を施したその肉体に生身の人間なんざ相手にもなるまい。……さあ!死なねェ程度に痛め付けろ!!」

「畏まりました。……って訳だ。悪いが眠ってくれ"元主"──んあ?」

 

 俺の元へスタスタと歩み寄ってきた俺のゾンビは体から複数の腕が咲き身動きを止めた。

 

「そこの女の仕業か」

「ロビン……」

「貴方が彼の何なのかは知らないけれど……これ以上アルガをキズ付けさせはしない」

「そうだ!!アルガから離れろコノヤロー!!」

 

 拘束された俺のゾンビに向かって”重量強化(ヘビーポイント),,のチョッパーが殴りかかる。しかし──

 

「邪……魔っ!!」

「っ!何て……力……っ!?キャッ!」

「ロビン!!?」

「オイオイ、接近して敵から視線を外すのはダメだろ。”朧突(おぼろづ)き,,!!!」

「おゥ!!?」

「チョッパー!!てか待て今のって……!?」

 

 無理やりロビンの拘束を振りほどいた俺のゾンビはチョッパーの一瞬の隙をつき拳を繰り出した。モロにくらったチョッパーはたまらずその場に倒れてしまう。

 

 その時、奴の拳が黒く変色したのを見て俺は驚いた。

 

「冗談だろ……まさか覇気まで使えんのかよ!」

「当たり前だろ。俺はお前だぞ?」

 

 マジで笑えなくなってきた。ただでさえ今肉体面(フィジカル)で敗けたってのにその上覇気も使えるとなるといよいよ手が付けられない。

 

 けど……。

 

「さあ、早いところさっさと済ませよう。じゃあな"元主"──おっと!」

「オラァ!!」

 

 俺が金棒を振るうが先程と同様に受け止められてしまう。

 

「さっきも言ったがな。お前の主はモリアじゃねェ。……そして俺でもない」

「ハア?」

 

 俺の言葉に相手は首を傾げる。影は確かに俺のだ。だが、俺はそんなことを言いたいワケじゃない。

 

「俺の影も、俺の命も、俺の持てる全ては──()()()のためにある」

「あの人?」

「……そうか、それすらわからねェか。やっぱお前には敗けらんねェな。──フッ!!」

「訳のわからないこと言いやがって!」

 

 俺の金棒に向こうも応戦する。だが、やはり力負けしてしまう俺は徐々に圧されてしまう。

 

「どうした!?威勢がいいのは口だけか!!」

「んなわけ……ねェだろっ!!!」

「おおっ!」

 

 相手の攻撃を弾くと予想外だったのか後ろへ飛び距離をとった。

 

「へえ、思ったよりやるな。……なら、これはどうだ?”神速(しんそく),,───」

「なっ!?それは!!」

 

 金棒を頭上に持ち上げ上段の構えを取る。そして、床に亀裂が入るほど強く踏み込み……。

 

「”黒蛇駆(こくじゃく),,!!!」

「ごふっ!!?」

 

 あまりの速さに目が追えず気付けば金棒が目の前に迫っており咄嗟に武装色で身を守ったがそれでも充分過ぎる威力に俺はブッ飛ばされた。

 

「アルガッ!!」

「来るなっ!!ハァハァ……俺はまだ大丈夫!それよりチョッパーを頼む!!」

「わかったわ!無茶はしないで!」

 

 そういいロビンはチョッパーの元へと走っていった。

 

「よく耐えたな。これで決めるつもりだったんだが」

「確かに今のは効いたわ。だが、これぐらいじゃ倒せねェぞ」

「言うね~。もうボロボロのくせに」

 

 確かに今の攻撃はヤバかった。まさか”黒蛇駆,,を使ってくるとは。俺が使えば全身筋肉痛になるぐらい負担がデカイのに……。

 

 前世の俺はここまでデタラメな力はなかった。そう考えるとやっぱりホグバックの技術は侮れない。気を抜くと一瞬でやられる。

 

「悪いがお前と遊ぶつもりはない。命令が出てんだ。早いとこお前を倒させてもらう。”(ゴウ)力鬼(リキ),,ィ!!!」

「グッ……!ウォオォオオオ!!!」

 

 2つの金棒が激しくぶつかり合う。そんな中、ロビンは倒れるチョッパーの元へ着いた。

 

「チョッパー!意識はある?」

「ゲホッ……ハァハァ。ああ、大丈夫だ。ありがとうロビン」

 

 ロビンがチョッパーの元へ駆け寄り安否を確認すると何とか起き上がったチョッパーは腹を擦りながらゆっくりと立ち上がる。

 

「フォースフォス!無様だなDr.チョッパー。そのまま大人しくやられてりゃいいものを。さあ、シンドリーちゃん。こいつらにトドメを刺せ!!」

「はい」

「……ここまで悪党だと気持ちいいくらいだホグバック!」

「……ん~~?」

「実際にすごい数の人達の命を救ったお前を……医者として本当に尊敬していた」

 

 チョッパーは語る。ゾンビの研究もそうだが"死んだ者"と"残された人"が救われるのならたとえそれが「邪道の医学」と呼ばれ石を投げられようと"死者の蘇生"を研究しているホグバックはすごい医者だと。

 

「フォスフォス……何をバーカな……。他人の為になぜそこまで……!!」

 

 しかし、そこまで言うとホグバックは鼻で嗤う。今まで多くの命を救ってきたのは自分が天才だっただけ。金の為に手術はしたが次から次へとやってくる患者に嫌気を刺していたと徐々に愚痴が溢れる。

 

「──それを勝手に尊敬すんのはてめェの自由。失望するのは筋違い!!てめェの理想と違ったおれを医者として許せねェとでも思うのなら……とんだ思い違いだぜバカトナカイ!!!このおれに医者のあり方なんぞ説こうってのか!?」

「そんなつもりは毛頭ねェ。おれはもうお前を医者だとも思ってねェんだ!!ここにいるゾンビ達だってそうさ!もう死んでるのに動かされてるだけだ!こいつらは生きてなんかいない!!命をバカにするな!!!」

 

 かつてない程怒りを覚えるチョッパーを前にホグバックは未だ表情は変わらない。むしろ憐れみの目をチョッパーに向ける。

 

「フォスフォス。生きてねェだと?Dr.チョッパー!目の前にいるこいつらが、再び命を得て蘇る……奇跡!!この生命を否定する意味がどこにある!?シンドリー!」

 

 ホグバックが次の瞬間とんでもない命令を下しチョッパーとロビンは戦慄する。

 

「床をナメろ」

「はい、ホグバック様」

「「っ!!?」」

 

 シンドリーはホグバックの命令に返事をしその場に跪く。それ見た瞬間、駆け寄ろうとするも俺のゾンビが行く手を阻む。

 

「おい、どこへ行こうと──っ!?」

「そ、こを……退けェエエッ!!!」

「ぐあっ!?」

 

 火事場の馬鹿力なのか力が上なハズの敵を退け一気に駆け出す。そして、床を舐めようとしたシンドリーの肩を掴み行為を止めさせた。

 

「アルガッ!」

「おい貴様……なぜ止める?」

「これ以上は……()()を越えるぞ」

「ハァ~~?」

 

 俺はホグバックに顔を向けるとひとつ尋ねた。

 

 

「尊厳破壊は楽しいか?ホグバック」

 

 

 俺の言葉にホグバックは何かを感じ取った後、当然と言わんばかりに肯定しる。

 

「──っ!?……アア、そんなもん楽しいに決まってんだろ!」

「…………」

「元々そいつは名のある人気女優だった。おれは当時、彼女に長ェ間ホレ込んでいたが見事にフラれちまってなァ!!そんな女を今おれの命令に何でも従う忠実な女になった!これが笑わずにいられるか!?」

「ホントにそうなのか?」

「何だと?」

 

 これは個人的な解釈なんだが、読者目線だからこそわかるホグバックの人格に俺は何とも言えない感情を覚えていた。

 

 どこか余裕を感じられなくなってきたホグバックに俺は再度聞き返す。

 

「お前の好きだった彼女はホントにコイツなのか?生前に持っていた思考や感情を失った彼女のことを!嘘じゃないと言うんならもう一度彼女の眼を見て……逸らさずに言ってみろよ!!」

「……っ!!お、おれは……!」

「ホグバック様……?」

 

 シンドリーの声を聞いた瞬間、ホグバックが荒げ出す。

 

「──っ!!うるせェうるせェ!!黙りやがれェ!!!知った風な事を口にしやがって!オイ!一刻も早くそいつを殺せェ!!!」

「はい、ホグバック様」

 

 やっぱりダメか……。

 

 ホグバックの命令で俺に襲いかかる俺のゾンビ。俺は少し呆れながら声をかける。

 

「オイ、アイツあんなこと言ってるけど俺を殺せばお前も消えるぞ?」

「そうだな。だが、命令なら従うまでだ」

「……主人のためなら平然と命を懸けられるお前のその姿勢は立派だよ」

 

 改めてこいつは俺なんだと認識させられる。俺も鬼姫様のためなら喜んで命を懸けるからな。だが……。

 

『おじさんは……いなくならないでよ?』

 

「俺の主人はそんなフザけた命令なんて絶対にしないけどな」

「そうか。まあ、お前の主人の話なんて興味はない。さっさと死んでくれ。”神そっ,,──」

「させるかよ!!桜木一刀流(さくらぎいっとうりゅう)紅枝垂(べにしだれ),,!!!」

「──ぐっ!!?」

 

 再び”黒蛇駆,,を放とうとしたので斬撃を飛ばし攻撃を中断させる。その技は強力だがモーションの大きいからな。その技はもう使わせねェぞ。

 

 そういえばコイツ……。

 

「時に聞くがお前……何で刀を持っていないんだ?」

 

 このゾンビを見ててさっきから違和感があった。その違和感の正体は刀が無いこと。そう、俺のゾンビの癖に腰に刀を携えていないんだ。

 

「あ?そんなの邪魔だったからな。実際武器なら金棒で事足りる。わざわざ使い馴れた武器以外を使う意味は無いからな」

「……そうか」

 

 確かに、俺のメインは金棒だ。多少刀の方が小回りが効くと言ってもわざわざ武器を切り替える程ではない。何なら武術だって噛ってる。だから奴は刀の必要性を見出だせなかったのだろう。

 

 記憶がないとここまで考え方が変わるものなのかと考えさせられる。

 

「さっきまでお前がスゲェ強い奴に思えてたんだがなァ……」

「なに?」

 

 そして、同時に今の言葉を聞いた俺は──。

 

「けど今は……さっぱり敗ける気がしねェわ」

「可笑しな事を言う。実力の差ならさっきので理解したハズだが?」

 

 そして、お互い同時に床を蹴った。相手は金棒を、俺は刀を振るい周囲に衝撃が伝わるほど激しい攻防戦が繰り広げられる。

 

 そして、僅かだが相手の表情が強張ってきた。

 

「ウォオオォォオオオッ!!!」

「グッ!!上手いこと受け流してやがる……。コイツ明らかにさっきまでと違いやがる!?どういう事だ!!?」

「俺が刀を置くってのがどういう意味かわかるか?」

「アアッ!?知るかよそんなもん!!」

「そうだよな。だから敗けんだよ!!!」

 

 俺が金棒以外で刀にこだわり続ける理由。それは……。

 

『キミはぼくの従者なんだろ?だったら刀も使えるようにならないと!』

 

「俺が刀を持った理由も!強くなる理由も!!何もかも全部忘れちまったお前は……決して俺には敵わない!!!」

 

 こいつには敗けたくない!もっとだ……もっと力を……!!

 

 俺に強い力をっ!!!!

 

 

……この子ったら。いつまでも世話が焼けるわね

 

 

「こ、のォ……調子に乗りやがって……っ!?何だ?こいつの体が突然光だし──っ!!?」

「ウルァアアアアッ!!!」

「なっ!?バカなっ!!!」

 

 俺の剣圧に圧されついに敵の金棒を弾き俺の二刀がガラ空きの腹を斬り裂いた。

 

桜木二刀流(さくらぎにとうりゅう)!!”紅桜(べにざくら)開華(かいか)」,,!!!」

「ガハッ!!?」

 

 相手の腹から紅い血飛沫が華開くように舞い散る。しかし、相手は倒れず踏みとどまった。

 

「ハァハァ、俺はゾンビだぞ?たとえ致命傷を負おうが不死身の俺は倒せねェ!!」

「だが、ダメージは蓄積するよな?これで決める!!」

 

 そして、俺は刀を仕舞い金棒を振り上げる。刀もそうだが金棒にも鬼姫様との想い出はあるからな。

 

「バカか!!力勝負は俺の方が上だ!!!」

「ああ、そうだな。()()()はな!!!」

 

 俺は闘いの最中ある事に気付き勝ちを確信する。その勝利を飾るのはこの技がいいだろう。

 

 懐かしい。鬼姫様と共に金棒を振り続け俺が初めて覚えたのはこの技だった……。

 

 

「「”鬼鏑(おにかぶら),,!!!!」」

 

 

 二つの金棒がぶつかり合う。威力は凄まじくしばらく拮抗していたが──。

 

「あ、りえねェ……!!何で俺が圧され──っ!!?」

 

 俺より力が強いハズだが圧され始め困惑する。そして、相手の金棒にビキッとヒビの入る音が鳴り驚愕した。

 

 正直、なんで俺が力で圧しているかはわからないがヒビが入った理由はわかっていた。

 

「なぜ俺の金棒が壊れて……!!」

「覇気の差が出たな」

「なにっ!?」

「覇気とは意志の強さ。お前の支配されたニセモノの意志何かで……俺のホンモノに勝てるわけねェだろ!!!」

 

 俺の勢いに呑まれると怯んだのかさらに圧されている。そして、相手の金棒はみるみる亀裂が入り──。

 

「お前はもう十分頑張った!!その体はもう役目を果たし意志は俺が継いでいる!!だからお前はもう!眠りやがれェェエエエッ!!!!」

 

 相手の金棒は完全に破壊され脳天に俺の金棒が振り下ろされた。あまりの威力に床は瓦解し大穴ができる。そして、奴も崩れた床と共に下の階へと落ちていった。

 

 見聞色で奴の気配を感知すると下で倒れてから動く様子はない。声は聞こえるので気は失っておらずどうやらダメージを負い過ぎて動けないようだ。

 

 しばらくそこで大人しくしてやがれ。すぐに俺の足元に戻してやるから。今はそれよりも……。

 

 俺が視線を向けるとそこには全身を振るわせたホグバックが怯えたようにこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 ホグバックの研究所から出た所にあるすぐ近くの森の中。おれはそこで侍ゾンビことリューマと戦っていた。その最中、おれは眉を寄せる。

 

「くそ、どうなってやがる?さっきと明らかに変わりやがった。雰囲気も戦い方も……そして強さも」

 

 研究所内で戦っていた時とは全てが違っていた。そこを思い返しおれは二つの変化に気付く。

 

 一つはおれが今戦っている相手はさっきの奴とは違う事だ。研究所内で戦っていたのは間違いなくあのガイコツの影が入ったゾンビだったが今戦っている相手はおれに似ている。というよりまんまだ。

 

 刀三本を携えおれの技を使っているところを見るとどうやらこのゾンビ、ガイコツの影からおれの影に換わってやがる。

 

 何故いきなり影が変わったのかはわからないが今は置いておこう。それよりも問題なのはもう一つの変化。

 

 強過ぎるんだ。あり得ねェ程に……。

 

 使う技は同じだが威力は別格。おれが出せる威力の範疇を超えていやがる。敵はおれ自身だってのに肉体が変わるとこうまで違うのか!?

 

 考えているといつの間にかリューマが目の前に現れ黒刀が左目を捉える。

 

「うおっ!?危ねェ!!」

「はっ!よく避けたじゃねェか!おれを前に余計なこと考えると痛い目に遭うぜ?」

「んのヤロッ!二刀流(にとうりゅう)七十二煩悩鳳(ななじゅうにポンドほう),,!!!」

「フン!!」

 

 ギリギリ避けられたおれは後ろへ飛び距離をとってから斬撃を飛ばすが簡単に弾かれてしまう。チッ、やっぱおれ相手に二刀流は厳しいか……。

 

「ハハッ、楽しくなってきやがった!」

「おれは楽しむつもりはねェ」

「そう言うなよ。今不思議な感覚なんだ。体が疼いて仕方がねェ。何て言うか……よく馴染む?」

「知るかよっ!てめェの身体事情なんざ!!」

 

 だが、何か引っ掛かる。よく馴染むだと?肉体のことか?つまりおれの影がその体に適合しやすいって意味なのか?

 

 確かに、ガイコツの影が入っていた時のコイツも充分強かったがどこか動きが拙かった。仮説としてもしその理由がガイコツの影があの侍の肉体と戦い方が合っていないものなのだとしたら……。

 

 ガイコツより戦い方が似ているおれの影が……つまりおれの影が入った今の奴こそがその肉体本来のポテンシャルって事か?

 

 それでこの強さって訳か。だとすりゃ悔しいな。要するに奴の肉体がおれより強いって話じゃねェか。おれもまだまだ鍛練不足だな。

 

「おい!無事か!?」

「あん?フランキーか。離れてろ!コイツ影が換わって強さが増してやがる」

「なにっ!影がっ!?ウオッ!ホントだあの野郎刀三本になってやがる。……てことは今アイツの体にゃお前の影が……」

「剣士さん!これをっ!!」

「っ!こいつは……」

 

 フランキーに担がれていたガイコツが投げてきたのはアイツの持っていた仕込み刀だった。それを掴むとガイコツは叫ぶ。

 

「毎日コツコツと磨き上げてきた剣です!!どうぞ使ってください!」

「悪ィな……助かる」

「それと今!貴方が仰っていたのが本当なのだとしたらこれはチャンスです!ゾンビは影を入れられてもすぐはモリアに操られません!支配下に置くには時間がかかるのです!なのでその前に奴を倒してください!私の影はその後で構いませんから!!」

 

 ガイコツの言う通り見たところ今の奴からは誰かの下についているって感じはしない。それこそひとりで自由気ままを楽しんでいる昔のおれの様な。

 

 ま、そうじゃなくても今のコイツは恐ろしく強いことには変わらねェ。早いとこ決着をつけないとこっちがやられる。

 

 刀も三本揃った。こっからが本番だ!!

 

三刀流(さんとうりゅう)!!”百八煩悩鳳(ひゃくはちポンドほう),,!!!」

「おっ、さっきよりもデカイな。だが、一刀流(いっとうりゅう)……」

 

 そう言いリューマは片腕を振るい次の瞬間おれは眼を疑った。

 

「”三百六十煩悩鳳(さんびゃくろくじゅうポンドほう),,!!!」

「なんだとっ!?……クッ!!」

 

 おい嘘だろ!?前にアクア・ラグナで三百までは出せたがコイツそれを上回る威力を!!それも……刀一本で!!?

 

 おれの斬撃と相殺……いや、いとも簡単に打ち消しおれの元へ巨大な斬撃が襲いかかる。だが、おれの斬撃が多少削ってくれたお陰で何とか避けることができた。

 

「今度はこっちの番だ。三刀流(さんとうりゅう)……!!」

「──ッ!冗談だろ!?お前ら!!できるだけ遠くへ逃げろ!!!」

「オ、オウ!わかった!!」

 

 おれは奴の構えを見た瞬間青ざめてしまい後ろの奴らにそう叫ぶとフランキーはすぐに後方へ走っていった。

 

 一刀流で三百六十って事は単純に考えてコイツが三刀流を使ったら……っ!!マズイ!!少しでも軌道を逸らさねェと!!!来るっ!!!!

 

「”千八十煩悩鳳(せんはちじゅうポンドほう),,!!!」

「三刀流!!”龍巻(たつま)き,,!!!」

 

 おれは飛んできた規格外の巨大な斬撃を竜巻によって何とか軌道を上に逸らす。しかし──。

 

「グォォオオァアアアアアッ!!?」

 

 それでも余波だけで充分すぎる破壊力におれの体は斬り裂かれた。何とか致命傷だけは免れたがダメージが馬鹿にならない。くそ、余波だけでこの威力かよ……。

 

「グオッ!?なんて威力だ!大分離れてたってのに……」

「フ、フランキーさん……う、上っ……」

「上?上がどうしたって……ドワァッ!!?と、塔がっ!!!」

 

 二人の会話が聞こえ頭上を見上げるとそこには何もなかった。言い換えるとある筈のものが無くなっていた。

 

 そう、おれ達が先ほどいた筈の塔の上階が跡形もなく消し飛んでいたのだ。改めてさっきの技の威力に畏怖した。あんなのをまともにくらえば間違いなくやられてしまうと。

 

「何だ……?まさか戦意喪失した訳じゃねェよな?」

 

 リューマがおれに尋ねてくる。おれは振り向き己の本音を告げた。

 

「逆だ」

「アア?」

「今はお前の方が強いと認めてやる。だが、この戦いが終わっておれが立っていた時……おれはお前を超えた事になる。───燃えてきた」

「……そう来ないとな」

 

 おれが笑うと向こうも不敵に笑う。そして笑い終えた瞬間、同時に動いた。

 

「三刀流!!”牛鬼(ぎゅうき) 勇爪(ゆうづめ),,!!!」

「三刀流!!”刀狼流(とうろうなが)し,,!!!」

「っ!?そう来たか!!」

 

 おれに突き刺そうとしてくる猛撃を受け流し奴の懐へと潜り込み一撃を入れた。

 

 そうだ、まもとに打ち合うな。流せるものは全て無視し奴を斬ることだけを考えろ!!

 

「だが甘ェ!!三刀流!!”龍巻(たつま)き,,!!!」

「っ!?しまっ──グァァアアアッ!!!」

 

 懐に潜り込みすぎてしまったおれは奴の斬撃の竜巻をモロにくらってしまい空高くへと打ち上げられた。

 

「ゲフッ!くそ、焦りすぎた……だがまだ終わりじゃ──っ!?」

「よお、いつまで飛んでんだ?見上げんのは趣味じゃねェ……さっさと落ちろ」

 

 打ち上げられたおれよりも高く飛び上がったリューマは真上に現れおれは咄嗟にガードをとった。

 

「三刀流!!”虎狩(とらが)り,,!!!」

「グォオオオォォ……ガハァッ!!?」

 

 かなりの高度から地面へ叩き込まれたおれは一瞬意識が飛びかける。ダメだ!早く起きねェとまた来る!!

 

 眼を開くと頭上からみるみるおれの元へ落ちてくるリューマ。黒刀を突き立ておれ目掛け突撃していた。それを見たおれは悲鳴を上げる体にムチ打って無理やり起き上がる。そして、横に跳んで何とか串刺しにはならずに済んだ。

 

「よく動けたな。これで終わりかと思ったぜ」

「ハァハァ……。終わってたまるかよ。おれは絶対てめェをブッた斬る!」

 

 強がっているように見えたのか相手は笑うがおれは何もハッタリで言った訳ではない。これまでの戦いでおれはひとつある事に気付いた。

 

 力こそ強いがコイツ……覇気を使ってこない。

 

 最初で見せた”刀浪流し,,も見聞色を使えば充分対応できた筈だがそれをしなかった。今までも破壊力こそあれどそれは純粋な力によるもの。

 

 当然だ。本人のおれでさえまだ覚えていないんだからな。

 

 以上を踏まえコイツは力は強いがおれが覇気を使えればまだ勝てる可能性はあるってことだ。

 

 ま、それができないから今圧されてんだけどな……。

 

 ロビンを取り返した後、ウォーターセブンでアルガと稽古をし遂に一勝をもぎ取ったおれはそれ以降"武装色の覇気"の修行も始めた。

 

 しかし、覇気の感覚を掴む事すら難しく修行は困難を極めていた。今までとは勝手が違う修行におれは苦戦し未だに覇気を扱いきれずにいた。

 

 だが、それがどうした。ようやく勝ち筋が見えたんじゃねェか。後はおれがこの戦いで───覇気を使えるかによって勝敗が決まる。

 

 おれは呼吸を整え集中する。

 

「雰囲気が変わった……何かする気か?」

「ああ、てめェをブッた斬る気満々だ」

「そうかよ……来い!!」

 

 互いに笑うがすぐに切り替わる。油断すれば斬られる。それがわかっているから。

 

 そうしておれは手に意識を集約させる。そして、徐々に手から刀へ覇気が伝わり黒く変色させた。よしっ!!

 

「「黒刀(こくとう)」……!三刀流(さんとうりゅう)!!”(おに)ぎ,,──っ!!?」

「何の……つもりだァ!!!」

「グハァッ!!」

 

 途中で武装色は途切れ威力が落ちてしまったため簡単に受け止められてしまった。その上大きな隙が出来てしまい奴の斬撃をくらってしまう。

 

 グッ……!やっぱりまだおれには出来ないのか!?……いや違う!!出来る出来ないじゃねェ!!やるんだよ!!!

 

「ゼェ……!ゼェ……!」

「まだやんのか」

「当たり前だ……おれは死ぬまで勝利を諦めねェ……。余裕ぶっ放いておれから眼を離すんじゃねェぞ?」

「なるほど……倒し甲斐がある!」

 

 そういいリューマは再びおれに襲いかかる。あまりに凄まじい斬撃の応酬におれはどんどん圧されていく。

 

 そして、一瞬怯んでしまった瞬間その隙を逃さなかったリューマは勝負に出る。

 

「三刀流!!”龍巻(たつま)き,,!!!」

「ぐああああっ!!」

 

 またも空高く打ち上げられてしまったおれは事もあろうか意識が飛びかけてしまい手に持っていた刀を手放してしまう。

 

 気付いた時には遅くもうおれには咥えていた刀"和道一文字"しか残されていなかった。

 

 悔やんでいても状況は変わらない。おれは覚悟を決め地上から飛んできたリューマに刀を構える。

 

「ほう、刀一本で迎え撃つ気か……上等!!その意気込みにおれも全力で応えよう!」

「てめェを斬るのに一本ありゃ充分だ」

 

 そして、おれは刀を腰に携えリューマは両手を前にかざし刀を円を描くように回し出す。

 

一刀流(いっとうりゅう)!!”飛竜(ひりゅう),,──」

三刀流奥義(さんとうりゅうおうぎ)!!」

 

 お互いに空中で構え今出せる最大の技で斬りかかった。

 

「”火焔(かえん),,!!!!」

「”三・千・世・界(さんぜんせかい),,!!!!」

 

 剣が交差し空で鮮血が舞い散る。そして、その飛び散った血の出所は───おれの体からだった。

 

「か……は……!!」

「終わったな」

 

 リューマは着地すると刀を仕舞った。そして、フランキーの方へと歩き出す。おれは意識が薄れゆく中、無防備な状態で落下していく。

 

 終わった……のか……?おれは───

 

 このまま落ちれば頭から落下し意識も完全に途切れるだろう。そんな事を思い徐々に考える事すら出来なくなってきた。そして、視界が暗転し───

 

 

『おれはもう……二度と敗けねェから!!!!』

 

 

 ──っ!!!!そうだ……何勝手に終わろうとしてやがんだ馬鹿野郎!!おれはここでくたばる訳にはいかねェだろうが!!

 

 アイツに勝つまでは……たとえ自分自身であっても敗けることは許されねェ!!!

 

 瞬間眼を開くとそこには既に地面があり直撃する前に寸でのところで体勢を変え着地する。

 

 敵はもう決着がついたと思い込んでおり完全に無防備。ここを逃せばもうチャンスはねェ!!この一刀に全てを込めろ!!!

 

『難しく考える必要はない。コツは"疑わない事"それが"強さ"だ。これまでの修行で間違いなくゾロは強くなってる。後は感じとるだけだ』

 

『見えない鎧を着る様なイメージを持て。力むなよ?不必要な場所の覇気を拳に流せ。そうすれば自ずと刀にも伝わる』

 

『そして、最後に──窮地にこそ力は"開花"する!』

 

 アルガの教えを思い出しおれは刀を構えた。

 

「「黒刀(こくとう)」!一刀流(いっとうりゅう)……「居合(いあい)」!!」

「──っ!!?何っ!?まさかまだ倒れ──」

 

 おれに気付き驚いた様子で振り返ろうとするが……もう遅い。

 

 

「”()獅子歌歌(ししそんそん),,!!!!」

 

 

 奴が振り返るよりも先におれの刀が奴の背中を斬り裂いた。リューマの驚きの声と共に鮮血が飛び散った。

 

「──っ!!?な……に……!」

「ハァッ!ハァッ!……言った、筈だァ。眼を離すなってよ……ウグッ!」

 

 流石に無理が祟ったか体から力が抜けその場に膝を突けてしまう。そこへフランキーが心配した様子で走ってきた。

 

「オイ!油断するな!!ソイツはゾンビだぞ!?幾ら斬られようが不死身だ!まだ襲ってきやがるぞ!!」

「そうです!早く塩で浄化を!!」

 

 そうだ。コイツはゾンビ。どれだけダメージを与えようが浄化しねェと倒せない。

 

 襲われる前に何とか立ち上がろうとおれは刀を杖代わりにして無理やり体を起こし振り返る。すると───奴は黒刀を地面に落とした。

 

「降参する。おれの敗けだ」

「「ハッ!!?」」

「何だと……?」

 

 あまりの予想外の展開におれ達は困惑する。

 

 どういうつもりだ?正直言っておれはもう限界だが向こうはまだ余力がある筈。このまま戦えばコイツが勝つ確率の方が圧倒的に高い。なのに何故……。

 

 理解が追い付かずにいたおれはリューマに聞いてみる事にした。

 

「お前はゾンビだろ。致命傷のキズでも問題無く動ける筈……何故だ」

「それはお前がおれに"死"よりも"決定的な敗因"を刻み込んだからだ」

「死より決定的な敗因だと?そりゃ……」

 

 そういうと()()()()()()()()を見てリューマはハッキリと答えた。

 

「決まってんだろ?「背中のキズは剣士の恥」だからだ」

「……っ!!」

「さっきおれは決着がついたと早合点し油断ちまった。その結果がこれだ。なら敗けを認めるしかねェだろ。おれは剣士だ。生き恥を晒すぐらいなら死んだ方がマシだ」

 

 リューマはそこまでいうと何だか清々しい感じでおれ達に笑いかける。

 

「お前の最後の攻撃、悔しいが反応できず背中を斬られちまった。何度も言うが剣士にとってこれ以上の敗北はねェ。さァ……浄化だっけか?それでおれを消せるんだろ?早くしてくれ」

 

 そこまで言うがフランキーはまだ半信半疑と言った感じでリューマを見つめる。

 

「騙してる風には見えねェが……お前はモリアのゾンビだろ。抵抗しないのか?」

「アア、実は言うと……さっきからおれの頭の中に目の前の敵を斬れと主人っぽい奴の声が囁いてきやがる」

「っ!?やっぱりか!だが、なら何で……」

「不思議だな。敵を斬れと頭の中でガンガン響くが……()()()()がそれを許さないみてェだ」

「なんだと?」

 

 おれ達はリューマの言葉に眼を疑う。

 

「体が動かねェんだ。死して尚もこの肉体は剣士の誇りを護ろうと意地で主人の支配に抗おうとしている。本当にスゲェ体だよ。それに、おれ自身もそうさ……どこの馬の骨とも知れねェ奴なんかにおれは従わねェ!」

 

 リューマはそういいニヤリと笑う。その時見せた奴の瞳から強い意志を感じフランキーとガイコツは唖然とする。おれはそれを聞き納得した。

 

 なるほど……流石おれの影だな。

 

「と言う訳だ。早ェとこ体が動かない内に……浄化を……頼む。意識も薄れてきやがった……」

「は、はい。すぐに……!」

「それとお前……」

 

 ガイコツがフランキーからソルトボールを受け取るとリューマがおれに声をかける。

 

「その腰に着けてる刀……。使えねェからその杖刀で戦っていたのか?」

「まあな」

「ならよ……この刀を貰ってくれねェか」

 

 リューマはそういい落とした刀に視線を落とす。おれはそれを拾い上げるとリューマは嬉しそうな顔になる。

 

「お前にならこの刀を託せる。この肉体がそう言ってる気がするんだ。勘だがな」

「そうか、そりゃ丁度よかった。おれもそれを頂くつもりだったからよ。ありがたく受け取らせてもらう」

「アア、確かに渡したぜ……。グッ!ウォォオオォ……」

 

 黒刀"秋水"を受け取るとリューマは笑いソルトボールを口に入れる。すると口からゾンビの魂である影が飛び出しおれの足元へと戻っていった。

 

「やったな!!これで影はひとつ取り返したぜ!」

「あの侍に勝つだなんて私目を疑いました!!疑う目……無いんですけどヨホホホホ~!」

「ああ、だが流石に骨が折れたぜ」

「骨だけに?」

「ウルセェ!!」

 

 そういい疲れたおれは体を倒した。少し休んでからアイツらと合流するとしよう。

 

 そう思いながら手に持つ黒刀を見ておれは口元が緩んだがすぐに気持ちを切り替える。

 

 何とか勝てたが……実力は明らかに向こうの方が上だった。今回勝てたのは偶然の賜物だ。いや、正直これを勝ちとは言いたくねェ……。おれにはまだ未熟な点が多過ぎる。

 

 これからもっともっと強くなってお前を超える男になってやるからな。この剣に誓って。

 

 おれは黒刀を見つめそう強く決心するのだった。

 

 

 

 

 

 おれは今、最大のピンチに見舞われていた。

 

「さあ、これで邪魔者はいなくなった。覚悟しやがれホグバック……!」

「ひょえ~~!!?何やられてやがんだあの役立たず!!!畜生このままじゃマズイ!!おいシンドリー時間を稼げ!!おれは逃げる!!」

「そうやって替えが利くからと見切りをつけているクセにお前はコイツをまだ生きていると言えるのか!?命があると言えるのか!!!」

 

 すぐこの場から逃げようとしたおれは馬鹿トナカイの言葉で立ち止まってしまう。

 

「何だと!?たいした医学もねェお前が偉そうに語ってんじゃねェぞ!!やっちまえシンドリー!!」

「はい、ホグバックさ──っ!!?」

「ウオォオオオオッ!!!」

 

 シンドリーに命令を下しすぐに実行しようとした時、馬鹿トナカイが突然走り出しシンドリーの両腕を掴む。

 

 しかし、彼女はただの女ではない。戦闘用にしっかり筋力は強化されている。腕を掴まれてもそのデケェ図体に強力な蹴りをお見舞いする。

 

 馬鹿トナカイは必死に耐えるが明らかに痛みで嗚咽が出ている。しかし、それでも掴んだ腕を放さなかった。

 

「かわいそうに……。もう死んでるのに……。残された家族が知ったらどんな気持ちだっ」

「…………!!手を放せっ!!」

「一緒に生まれて育った"心"はもう死んでいるのに、体だけは人の言いなりに動かされるって……一体何だ!!?」

 

 蹴り続けられる馬鹿トナカイがまだ吠えているのでおれは笑いながら事実を告げてやった。

 

「フォスフォス!てめェの目を疑うのか!?認めろ!!これが人の永遠の夢!!"死者の蘇生"だ!!人間は蘇る!!!」

「動いたらそれでいいのか」

 

 おれの言葉を馬鹿トナカイは真っ向から否定し叫んだ。

 

 

「人間ならもっと自由だ!!!お前が一番人間扱いしてないんじゃないか!!!!」

 

 

 馬鹿トナカイの激昂におれは一瞬たじろいでしまう。しかし、叫んだ後奴はシンドリーの腕を放しその場に倒れてしまった。

 

「チョッパー!?」

「イテテ……。くそォ、さっきゾンビに殴られたダメージが今になって……!」

 

 どうやら新人ゾンビにやられたダメージがぶり返したようだ。弱ェ癖に我慢し続けるからそうなるんだ馬鹿め。

 

 何をともあれシンドリーが解放された今が逃げるチャンス!!

 

「シンドリー!時間を稼げ!!おれァ逃げる!!」

「ホグ……バックゥ……!!」

 

 おれの命令に馬鹿トナカイは汚物を見るような眼でこちらを睨む。フン、動けねェ奴なんざ恐かねェよ。

 

 おれは強気で相手を睨むがここで違和感に気付く。シンドリーからの返事が返ってこないのだ。

 

「……?返事はどうした!」

「──体が……動きません……」

「シ、シンドリー!!?」

 

 シンドリーの様子を見てこの場にいた全員が驚く。動かないと答えるのもそうだが、何より彼女の眼から……涙が流れていたから。

 

「体が動かねェ?一体何を言ってんだ!?そのウソくせェ涙も止めろ!!」

 

 しかし、おれの言葉に反してシンドリーは未だ動かず涙をポロポロと流し続ける。

 

「主人に服従する事のみが貴様らゾンビの存在意義だ!!魂さえあれば動けるだけの体にしたのは一体誰のお陰だと思ってんだ!!!」

「……!!……ウウッ!……ハァハァ。三人を……殺します」

 

 おれがここまで言ってようやくシンドリーがいつもの状態に戻った。おれは安堵し再度命令を下す。

 

「やっと正気に戻ったかシンドリーちゃん!!よし!時間を稼げ!おれが逃げきるまでな!!」

「残念……。何らかの"奇跡"を……想像したのに。”十二輪咲き(ドーセフルール),,!!」

「ウッ!!?」

 

 すると突然シンドリーちゃんの体から複数の腕が咲き体を拘束された。おれは一目散に逃げ部屋の出入口へ走り出す。

 

「マズイ!?ホグバックが逃げるぞ!!」

「私に任せて!」

 

 後ろから馬鹿トナカイの声が聞こえ海賊女がおれに狙いを定める。マズイ!!そう思った時……。

 

「いや、その必要はないよ」

「「え?」」

 

 海賊男がそれを止め二人は困惑する。おれからしたら好都合。なので止まらずに出入口へと向かう。

 

「アルガ!!何で!?」

「奴の罰は……もうじき下る」

 

 奴がそう言った瞬間──

 

───ドゴゴゴォォォオン!!!!

 

 突如フロアの天井からオーズの顔が現れそれによりフロア内が半壊する。おれの居た場所の床も崩れ落ち下の階へと落ちてしまった。

 

「ヌオッ!?オーズの仕業か!!アアッ!床が崩れっ──ウワァアアアア!!?」

 

 突然の出来事におれは焦るが何も出来ぬまま落下してしまい運の悪いことに瓦礫の下敷きになってしまう。

 

「くそ……重い……!おお!シンドリーちゃん!!早くこの岩をどけろ!早く!急げ!助けろ!!」

「う……また……!」

 

 おれの呼び掛けに反応はするがまたも硬直しその場から動けずにいた。またか!?状況を考えろ!!動かねェ筈はねェんだ!!

 

 ズシーン!ズシーン!とオーズの足音が大きくなってきた。このままでは踏み潰されてしまう!!!

 

「おいっ!何つっ立ってやがる!!おれは貴様の主人だぞ!!」

 

 どれだけ呼ぼうとシンドリーは動かない。その時、シンドリーは上の階に顔を向けると上の奴らは驚いていた。何故そんな反応を見せたのかはわからない。

 

 そして、いよいよ驚異が目の前までやってきた。たまらず今度はオーズに呼び掛ける。

 

「オーズ!!下を見ろバカヤロー!おれだ!!恩知らずめ、てめェを動ける体に改造しやったのはおれだぞ!!オイ!!!あああ"あ"あ"──」

 

 しかし、おれの声は届かず遂にオーズの足がおれの真上にやってきた。

 

「ぎゃああああ~~~~……!!!!」

 

───ドスゥーー……ン!!!

 

 そして、おれはオーズの踏み鳴らす足音と共に潰される──筈だった。

 

「……へっ?あれ!?おれァ……シンドリー!!?」

「ハァ!ハァ!」

 

 荒い息遣いで苦しそうにしており抱えていたおれは地面へと下ろされる。

 

「……っ!!ったく助けるのが遅いんだよこポンコツ女!!!危うく天才のこのおれが潰されるところだったんだぞ!!」

「…………」

 

 おれは立ち上がりシンドリーを叱りつけると彼女は俯き此方へ歩いてくる。そして、彼女の手には一本の針が握られていた。

 

「お、おい……シンドリー?どこから取り出したそんな物……何のつもりだ?止まれ……オイ止まれ!!」

「…………」

 

 しかし、彼女は止まらない。何故だ!?ゾンビは命令には逆らえない筈なのに……っ!!?

 

「そ、その針で何をする気だ!?馬鹿なマネはよせ!!く、来るなァ!!!──ヒッ!」

 

 おれは恐ろしくなり咄嗟に目を瞑ってしまう。だが、想像していた痛みなどは襲ってこず僅かに眼を開くと──彼女はおれの服の外れていたボタンを縫い付けていた。

 

「……は?え?……さ、裁縫……?」

 

 確かにさっき落下した拍子にボタンが外れかけていたが……なぜ今?……は?

 

 訳がわからずおれは呆然と立ち尽くす。そして、ボタンをつけ終わると──

 

 

「できましたよ。ホ、グ……バック……()()……」

 

 

 彼女は笑った。

 

「──っ!!?!?」

 

 そして、笑った後糸が切れたように突然シンドリーは倒れる。おれは咄嗟に地面に倒れる前に彼女の体を受け止めた。

 

 今起きた事をおれは未だに理解できずにいた。勿論ゾンビにも笑う程度の感情はある。だが、彼女はこれまで一度も笑った姿を見せたことはなかった。

 

 なかったが……あの笑顔をおれは知っていた。あれはまさに彼女が生前に見せていた──

 

『できましたよ』

『す……!すまねェ。患者にボタンをつけて貰っちまうとは』

『ウフフ、いいんです』

 

 今つけて貰った箇所を見る。あの時も今のようにおれのボタンを……!!

 

「お、おいシンドリー!!何を倒れてやがる!?さっさと起きねェか!?」

 

 おれは抱き上げ起こすように揺さぶる。すると、顔が揺れ力が抜けていたのか顎が下がり口が開く。その時──。

 

 ひゅーーん、パクッと何処からか降ってきた白い小さな玉が彼女の口へと入る。

 

 そして……口から黒い影……ゾンビの魂が飛び出てきた。

 

「ハアッ!!?おいまさか今のって!!!」

 

 気付いた時にはもう遅く、その魂は口から抜けるとどこかへと飛んでいってしまう。おれは必死にそれに手を伸ばす。

 

「あァ!待って……待ってくれ!シンドリー!逝かないでくれシンドリー……シンドリーちゃん!!!おれァまだ……っ!!」

 

 あの日以来、祈っても見る事の叶わなかった彼女の笑顔を……。そして、今つけて貰ったボタンのお礼を……もう一度!!!

 

 だが、おれの言葉は虚しく周囲に響くだけでシンドリーの魂は無情にも何処かへ消えてしまった。

 

「シ、シンドリーちゃん……っ!!!グ……ッ!!ウ……ウォオ"オ"ォォオオ!!!!」

 

 

 

 

「隙を見て塩を食わせられたが……まさかこんな場面を見られるとはな。凄い人だったよ。シンドリー」

 

 

 

 

 

 オーズが現れ外へ出ると大きな叫び声が聞こえてきた。

 

「出て来ォ~~~~い!!!麦わらの一味ィ~~~~!!!!」

「うるさいな。鼓膜が破けそう……。おっ、出口みっけ」

 

 先ほどホグバックを追うために下の階へ降りた俺はそのまま一階のフロアから外へ出た。するとすぐ近くにゾロ達と合流した。

 

「アルガ!何でこんな所に?オメーは確か上の階に向かった筈じゃ」

「訳あって下の階に落ちちゃったんだ。でも、大丈夫。決着はついたよ。それより問題なのは……」

「ああ……」

 

 俺がそういい振り返るとゾロも同じ意見なのか小さく頷いた。その視線の先には……オーズがいたから。

 

 フランキーはオーズを見て敵のスケールのデカさに唖然とする。

 

「倒しようがあんのかあんなもん」

「難しいだろうね。それはそうと……勝てたんだなゾロ。あの侍に」

「……ああ、勝つには勝ったがおれ自身は認めてねェよ。実力は間違いなく相手の方が上だった」

「そうか」

 

 俺はゾロの足元を見て影があることに気付いてそういうと、ゾロはあまり喜んでいない様子で勝敗を教えてくれた。何やら思い悩んでいる様子。リューマと何かあったのかな?

 

「話を戻すけど……アレどうする?」

「さっきも見たがよ。全体で見ると更にデケェ……」

 

 そういいゾロはオーズを見上げ……不敵に笑う。

 

「面白れェな……!!」

「同意見!!」

 

 2年後の俺達はオーズ級サイズの鬼を何体も相手にしなきゃならねェんだ。そのための練習相手にはもってこいだ。

 

 そうして俺達は二人して巨人の倍以上の巨大な敵を見てニヤリと笑った。

 




【没ネタ】
アルガ「尊厳破壊は楽しいか?」
オダセン聖&モシモ=ロマンノカノウ聖「楽しいです」
アルガ「!!?」


どうも皆さんもしロマです!
23話をご覧くださりありがとうございます!

スリラーバーク編を読み返して気付いたのですが、ホグバックってシンドリーの事を普段はちゃん付けで呼びますが切羽詰まって焦っている時はシンドリーと呼び捨てにするんですよね。
これって好きな相手には意識してちゃん付けするけど、余裕のない状況だと人は素の反応が出やすいので心の何処かでもっと親しくなりたいからと無意識に呼び捨てになっているって個人的な解釈をしちゃいます。
皆さんはホグバックの事どう思いますか?

ではまた会いましょうでわでわ~~( ´ ▽ ` )ノシ
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