あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
先週は投稿できず申し訳ありません。最近忙しくバタバタしていました。
それでは続きをどうぞ!( ´ ▽ ` )つ


36話 ぶつかる憧れ 下

 おれは負けず嫌いだ。

 

 世界一の大剣豪を志す者として何者にも負けない最強の剣士を目指していたおれは海を出て名を上げた。

 

 当時負け知らずだったおれは己の強さに過信していた。しかし、海賊になってからは如何に狭い世界で調子に乗っていたのかを思い知らされた。

 

 井の中の蛙……そう言われたおれは正しくそれだった。それ程までに世界一のレベルは高かった。途方もなく……。

 

 海へ出て初めての敗北……だが、これをバネにおれはこれまで以上に鍛えみるみる強くなっていくのを実感した。

 

 しかし、強くなればなる程おれはまだ未熟なのだと痛感する。何故ならすぐ側に、おれよりも遥かに強い男がいたから。

 

 いつもおれの先にいたアイツを見ておれは───

 

 

 

 

 

 ひとり別行動をしていた俺は後から皆のいる海岸に到着した。すると、いつの間にかいなくなっていた俺を心配して仲間達がやってくる。

 

「ああ!てめェどこに行ってやがった!?急にいなくなっちまって心配したぞコノヤロー!」

「ゴメンゴメン、捕虜を連れてきたんだよ」

「捕虜だァ?全く、勿体ねェことをしたな~。新たに現れた二人の敵がシーザーを連れ去ろうとしたところをこのおれ様が打ち倒した華麗なる戦闘っぷりをよォ~♪」

 

 説教してくるウソップに訳を話した後俺はスモーカーのところへ行く。

 

 途中、海兵が境界線がどうのこうの言ってたがすべて無視し岩に座っていたスモーカーの前に立つ。

 

「てめェがおれに何の用だ?」

「お土産があるんだけど……その前に聞いていいかな?「シノクニ」の解毒法って知ってる?」

「何だと、アレの対処法があんのか?」

「スモやん中将!実はその件で話してェ事が!!」

 

 海兵のひとりが会話に割って入る。内容はタイミングがよく「シノクニ」についてだった。

 

「さっきシーザーの奴を尋問して吐かせたんだ!あの殺戮ガスの弱点を!!仲間をまだ助けられる!!」

「本当か!」

 

 思わぬ朗報にスモーカーは聞き返す。海兵は頷き希望を見出だしたようにいきいきと報告する。

 

「ああ!今他の連中が研究所内へ行ってる!全員必ず助けて見せるぜ!!」

「お、ナイスタイミング。それじゃ、解毒法も分かった所でコイツを引き取ってくれない?」

「コイツ……?なっ!?……コイツァ!」

 

 俺がからっていた麻袋を地面に起き中身を見せる。そこには全身バラバラにされ「シノクニ」で固まっているヴェルゴが入っていた。

 

 それを見た海兵は腰を抜かす。

 

「ヒィ!?ヴェ、ヴェルゴ中将のニセモノ!!?……がバラバラァだァ!!?……しし死んで……ッ」

「これはローさんの能力だから死んでないよ」

「……てめェが何故これを?」

 

 俺が説明するとスモーカーが聞いてくる。

 

「彼女の要望を聞いただけだよ」

「彼女だァ?」

「ああ」

 

『──って訳で納得してくれるかな?』

『……分かったわ。あなたの要求を呑みましょう。でも、その前にヴェルゴの命も助けて頂戴』

『ヴェルゴも?』

『ええ、私だけ命が助かるなんてダメ。彼も救わないならあなたの要望は聞き入れない』

『ふーん、この状況で自分よりも仲間の心配?余裕だね』

『私達ファミリーはいつだって若様の為なら命を捨てられる。……だけど、それと同時にファミリーも大切な存在なの。だからその命を救えるのなら私は助けたい』

『……分かった、その条件を呑もう。但しヴェルゴの身柄は無力化した上で海軍に引き取って貰う。それでいいな?』

『ええ、彼は納得しないかもだけど、命だけでも助かるのならそれに越したことはないわ』

『そうか…………うん、自分よりも仲間の命を優先するモネさんやっぱ素敵だなァ~♡』

『さっきまであんな冷めた態度だったのに……。温度差がスゴくてあなたがどういう人なのか分からなくなってきたわ……』

 

「モネさん最こ……じゃなかった。ケムリン的にもコイツを見殺しにするより生捕りにしてキッチリとケジメを付けさせたいんじゃない?」

 

 俺の答えにスモーカーは少し間を置き葉巻を吸い煙を吐いた。

 

「フゥー……まあな、てめェの言う通りコイツには聞かなきゃならねェ事が山程ある。あん時は緊急時だったんでやむを得ず放置したが……今ならコイツの身柄を捕らえられる」

「んじゃ、引き渡したし後の事はお願いね」

「ああ、それと二度とおれをケムリンなんて呼ぶんじゃねェ」

「ルフィはいいのに?」

「誰にも許してねェよ」

 

 用が済んだので仲間のところへ戻ろうとするとタンカーから出てきたローさんを見つけたので駆け寄る。

 

 俺に気づいてかタンカーから降り海岸に着地すると俺を呼んだ。

 

「鬼屋、白猟屋に渡したのはヴェルゴか?」

「うん、「シノクニ」で動けなくなってるから安心してよ。それとお願いがあって、シーザーともうひとりモネさんを捕虜として連れていきたいんだけどいいかな?」

 

 モネという名前を聞き若干ローさんの表情が変わる。だが、軽く周りをキョロキョロしても姿が見えないのでどこにいるか聞いてきた。

 

「モネだと?アイツ生きてたのか。……で?ソイツは今どこにいる?」

「あー、それなら……」

 

 俺が指を指すとローさんはその方向を見た。 

 

「今はサンジが調理をしてるから皿出しの手伝いに行ったよ」

「捕虜だよな!!?自由にさせてんじゃねェよ!!!」

 

 俺が指差す方に小分けするための皿を並べているモネさんがいる。特に錠もかけてなければ縄も縛っておらず完全に自由に行動している彼女を見てローさんがキレた。

 

「まあまあ、モネさんの心臓は俺が持ってるから下手なマネはしないよ。それに()()もあるしね」

「約束……?まあ、モネの心臓を持ってるんなら問題はないか。絶対に奪われるなよ?」

「それは勿論!」

 

 ん?今気づいたけど俺がモネさんの心臓を持っているということは実質モネさんのハートを掴んでいると言うワケなのでは……(違う)

 

「あれー?お前あん時の鳥女じゃねェか。何でメシの準備してんだ?」

「聞いてくれよルフィ~♡アルガがこの綺麗なお姉さんを船に乗せるってニョホホ~♡」

「そ、そんな綺麗だなんて……///」

 

 モネさんがいることに周りが気づき始める。ルフィも見たことある敵の顔を見て疑問に思ってか質問していた。

 

「馴染んできたようでよかったよ」

「おっ!アルガ~!聞いたぜあの綺麗なレディーを船に乗せてェんだってな。おれは大賛成だ~♡」

「ヘェー、お前仲間に入りてェのか?」

「ならないわよ。私はシーザーと一緒で捕虜として船に乗るの」

「さっきローさんに許可貰ったから後はルフィに聞くだけなんだけどいいかな?」

「おう、いいぞ」

 

 いよっしゃあああ!!!

 

 内心ガッツポーズをとっているとルフィが定番の質問をしようとしていた。

 

「にしても不思議な体だよなー。なあ、お前ってうんk──」

「”朧突(おぼろづ)き,,ィィィ!!!!」

「ブホォオ!!?」

 

 ルフィが何を言おうとしたのかをいち早く察した俺は台詞を言い終える前に殴り飛ばす。もちろん覇気込みで。

 

「おいコラてめェルフィこの野郎……今何言おうとしやがった?次変なこと聞きやがったら承知しねェぞ」

「ファイ、ズミバベン」

 

 ったくルフィはすぐ色んな種族に出るのか聞くんだから。今後も気をつけないと……。

 

「随分とあの女に入れ込んでるみてェだな」

「ゾロ?」

 

 振り向くとそこにはゾロが怪訝な表情で此方を見ていた。

 

「お前が何に現を抜かそうが構わねェが府抜けちゃいねェだろうな?なあ、アルガ……」

 

 ゾロはチャキと親指で鞘から刀をチラつかせた。

 

「おれと、勝負しろ」

「え……勝負?」

「ああ、2年前までの稽古みたいなお遊びじゃねェ。ハンデなしの全力でだ」

 

 なぜ突然?そう思ったが冗談で言ってるようにはとても見えなかった。気迫が、眼が……俺と戦えと訴えてくるのがわかった。

 

「おれはひとつ決めていたことがある」

「決めていたこと?」

「ああ、次お前とやる機会があればその時は稽古じゃなく全力でやり合うってな」

 

 いきなりの提案に俺は狼狽えてしまう。何でここまでやる気全快なのか。

 

「ホントはもっと早ェ内にやるつもりだった。だが、シャボンディではお前が最後だったからすぐ出航しちまって、魚人島でもバタバタしちまって出来ず仕舞い。いっそサニー号でやろうにも船内じゃあもうおれ達は満足に戦えねェだろ」

 

 確かに、ゾロの言う通りお互い全力を出そうとすればいくらサニー号といえど耐えられないだろう。だからゾロは島で俺と戦いたかった。   

 

 でも、できなかった。だからゾロは我慢の限界がきた……ということか?

 

「だからアルガ、おれと戦え……」

「……ひとつ聞かせて」

「何だ?」

「どうしてそこまでして俺と戦いたいの?」

 

 戦うのは別に構わない。だが、これだけは聞いておきたかった。ゾロは強い。お世辞とかではなく本当に……。

 

 原作でも2年後のゾロはワノ国までは敵の幹部相手でも苦戦はせず実力差を見せつけ完勝していた程だ。

 

 それほど強い男がなぜ俺にここまで固執するのか?それをどうしても聞きたかった。

 

「前に言ったよな。稽古ってのは互いに足りないものを補う行為。実戦じゃねェ。いづれおれが世界一の大剣豪になるためにお前と闘う日が来たらその時はおれが勝つ……と」

「う、うん」

「おれはこの2年間で世界一の大剣豪になるために修行を積んだ。その通過点として……アルガ、今日ここで決着をつけよう」

「ッ!……そうか」

 

 この時のゾロの眼には仲間としての俺ではなく、ひとりの剣士として戦いたいんだな。

 

 ここまで聞いてようやく理解する。ゾロが俺をそんなに評価してくれていただなんて。

 

 嬉しい。だが同時に同じくらい……いや、それ以上に燃え上がる感情が込み上げてきた。

 

 でもなゾロ……それは、俺にも言える言葉なんだ。

 

「オイ、なに悠長なこと言ってやがる。もうじき追手も来る。長居は無用だ」

「だったら手っ取り早く短期決戦でやろうぜ。その方がペース配分も考えず全力でやれる」

「だね」

「オイ!話を聞いてねェのか!?戦い自体止めてさっさと船を出すって言ってんだ!!!」

「ならそれアッチにも言ったらどうだ?もう料理が出来上がりそうで宴する気満々だぞウチの船長は」

「ハアッ!!?」

 

 完全にやり合う気になっていた俺達を見てローさんが割って入り中断しようとする。だが、ゾロの言葉で咄嗟に振り返るとまさに宴の開始寸前の雰囲気だった。

 

 すぐにローさんが追手について話すとルフィは神妙な顔になりわかったと言い───

 

「お前ら、もうじき追手が来る……だから急げよォ?宴だァ~~~~!!!!」

『ウォォォオオオオオオ!!!!』

「………!?」

 

 止めたハズなのに宴が始まりローさんは呆然と立ち尽くしてしまった。

 

 まあ、ルフィが宴をしないとか無理だから……。

 

「そんじゃ、はえーとこおれらも戦い()と洒落込もうぜ」

「そうだね。あ、悪いんだけど金棒と心臓持っててくれる?」

「……もう好きにしやがれ」

 

 ローさんは諦めた様子で項垂れてしまい俺の金棒と心臓を受け取る。これで心置きなく戦える。

 

 こうして俺達は宴をする皆から離れゾロと向かい合った。

 

「準備はいいか?全力で来いよ」

「ゾロ、ひとつだけ言ってく」

「何だ?」

 

 手拭いを頭に巻き刀に手をかけ戦闘態勢に入るゾロに俺も刀を抜き今の気持ちを伝える。

 

「今回強引にゾロが始めた戦いだけど……この戦いを待ち望んでいたのはゾロ……お前だけじゃない」

「ハッ!上等!!出し惜しみはしねェぞ!!!」

「オイオイいつになくやる気だなオメーら。2年振りなもんで気合い入ってんのか?ならおれ様がレフェリーになってやろう!両者準備はいいか~?勝負…………!」

 

 宴で盛り上がっていたウソップが此方へやってきて試合の合図を出す。

 

「開始ィ!!!」

 

 瞬間、俺は力を解放する。

 

「”降霊・呼憑(こうれいよびつ)き,,ィィィ!!!!」

「ギャァアア!!?飛ばされるゥゥ!!!」

「───ッ!!!?」

 

 俺は初手から2年前の奥の手を発動すると全身から光が溢れ足元にはクレーターができ地面に亀裂が入る。そして周囲には暴風が巻き起こり近くにいたウソップは吹き飛ばされた。あ、ウソップごめん。

 

 ゾロも初めて見る俺の姿に一瞬動揺するがすぐに冷静に戻り警戒心を上げる。

 

「ドワァ~~!?こっからかなり離れてんのにあの野郎何したんだ!!?スモヤン中将助けてェ~~!!!」

「何あれ!?アルガが光ってる!!?」

「アルガの奴いきなりアレ使うのか。アレはマジで強ェぞ」

 

 遠くで皆が驚く中、ルフィひとりだけは冷静に見ていた。そして、ゾロも冷や汗をかきつつも眼と口だけは笑っていた。

 

「それがお前の本気か……。いいぜ面白くなってきた!!さあ、来てm───」

 

 俺とゾロの距離はおよそ20m。少し距離があったため喋る余裕があると思ったのだろう。

 

 この時すでに俺の剣はゾロを捉えていた。

 

「───っぶね……ェッ!!?」

「悠長に喋る余裕があると思うなよ?」

 

 寸での所で反応したゾロは薄皮1枚のところで何とか受け止めるも……一瞬で力負けし後方へブッ飛ばされ研究所の壁にメリ込んだ。

 

「ゾロ、お前さっき言ってたな。俺が腑抜けてねェかって?だったら安心しろよ。俺はこの2年間、修行で手を抜いたことは一度もない」

「それを聞いて安心したぜ……」

 

 崩れた瓦礫から立ち上がったゾロ。額から血を流しているがピンピンしている。まだまだこれからだと血走る眼がそう語る。

 

「この容赦のねェ斬りつけ方……懐かしい。お陰で思い出したぜ。ほんじゃこっからは……」

「全力で来い!ゾロ!!!桜木二刀流!!”鬼桜(おにざくら),,……!!」

「三刀流!!”煉獄(れんごく),,……!!」

 

 お互い同時に地面を蹴り刀は強い衝撃と共に交差する。

 

「”斬咲(きりさ)き,,ィ!!!」

「”鬼斬(おにぎ)り,,ィ!!!」

 

───ガキィィイイイン!!!

 

 周囲に衝撃と"覇気"が迸る。ガチガチと刀を鳴らしお互いに鍔迫り合い一歩も引かない。

 

「ウォォオオオッ!!!」

「グォォオオオッ!!!……ッ!?オォッ!!」

 

 しかし、徐々に形勢は傾きゾロが押され始める。そして───

 

「オオラァアッ!!!」

「グアッ!!?」

 

 またしても力負けしてしまったゾロは吹き飛ばされる。だが、今度はすぐ態勢を整え空中で斬撃を飛ばしてきた。

 

「三刀流!!”千八十煩悩砲(せんはちじゅうポンドほう),,!!!」

「桜木二刀流!!”紅枝垂(べにしだれ)双極輪(そうぎょくりん)」,,!!!」

 

 飛んでくる緑色の斬撃に対し俺も紅色の斬撃を飛ばした。するとゾロの斬撃はかき消され俺の斬撃は空の彼方へと飛んでいった。

 

「なんつー馬鹿げた威力だよ……!?あの破壊力……鷹のm──」

「余所見する暇なんざねェぞ!!!」

「ッ!!!」

 

 どこまで飛んでいっても威力が落ちない俺の斬撃を見て驚愕するゾロだったが未だ空中で身動きがとれずピンチなのには変わりない。俺は続けて追い討ちをかける。

 

「桜木一刀流!!”銃桜無尽(じゅうおうむじん),,!!!」

「ウオッ!?何だ!斬撃の……弾ッ!?」

 

 俺は突きの構えから斬撃を放つ。一点に集約された斬撃はさっきのと比べ規模は小さいがより素早く、より鋭く撃ち込まれまるで散弾銃のような突きがゾロを襲う。

 

 それも一発二発ではない。乱れ突きにより次々と撃ち込まれる無数の飛ばす突きの斬撃を繰り出した。

 

 最初は紙一重で打ち落としていたが終わることのない攻撃に一発二発とくらい始める。

 

「チィ!埒が明かねェ!!三刀流!!”黒縄(こくじょう)大龍巻(おおたつまき),,!!!」

 

 黒い竜巻が斬撃の弾を一斉に振り払う。強風で視界が塞がれた所を狙いゾロは空中から落下速度を利用してその勢いで俺に斬りかかる。

 

「三刀流!!”極・虎狩(ウルとらが)り,,ィィ!!!」

「桜木二刀流!!”神桜狩(かんおうが)り,,ィィ!!!」

 

 真上から振り下ろされる刀は重く足元の地面が衝撃に耐えきれず地割れが起きた。それによりバランスを崩した俺がよろけるとゾロはすかさず追撃する。

 

 しかし、"見聞色"を常時発動していた俺はそこを狙ってくるのを未来視してすぐに対応した。

 

「桜木二刀流……”刀楼流(とうろうなが)し,,!!!」

「なっ!?その技はァ!!?」

「俺とお前の剣術が似てんの忘れたかァ!!」

 

 これは相手の攻撃を受け流し前進するゾロの技”刀浪流し,,に俺の"見聞色"を加え更により的確かつ強力なカウンターを可能にした俺の技だ。

 

 これによりゾロはついに俺の一撃をまともに食らってしまう。血飛沫が上がると胸に十字の傷跡が刻まれる。

 

「グアッ!?チィ!これでも……足りねェのか……!!」

「どうした?こんなもんじゃ……ねェだろ!!!」

「グオァ!!?」

 

 力任せに振り下ろした刀が止めきれなかったゾロを吹き飛ばす。何とか着地するも未だ一撃も入らない現状に顔が険しくなる。

 

「ハァハァ……ダメだ。パワーじゃアルガの方に部が有りやがる」

「パワーだけか?」

「──ッ!!?しまっ……」

 

 ”降霊・呼憑き,,で身体能力を極限まで上げてんだ。パワーは勿論……スピードだって負けちゃいないぞ。

 

 最初にも見せた瞬間移動にも思える超スピードで再び距離の空いていたゾロに一瞬で距離を積め斬りかかる。またしても辛うじて受け止められたがその顔から余裕は感じられない。

 

「ンギギギッ!!……ヌリャアッ!!!」

 

 刀を剃らし俺の攻撃を受け流す。そのままゾロは刀を振り下ろすが寸での所で俺は避け後退する。

 

「流石だな。だが、こっからはもっと飛ばしていくぞ!!!」

「ハァハァ……。後()()()()()なんだよなァ……」

 

 ……?今、何か言ったか?

 

 ゾロが何かを呟くが俺のやることは変わらない。”降霊・呼憑き,,は消耗が激しいから長くは続かない。一気に決めさせてもらう。

 

「桜木二刀流!!”桜華乱舞(おうからんぶ),,!!!」

 

 鮮やかな剣舞。しかし、空を斬り岩を斬り鉄を斬り……その一振一振がそれでいて荒々しくも恐ろしく鋭い切れ味を物語る。そんな舞いの流れるような連撃がゾロを襲った。

 

 

 

 

 

 おれはもっと強くなりたい。

 

 稽古を交える度におれはその気持ちが強くなっていった。

 

 アイツはいつも側にいる身近な存在。だが、実力はおれよりもずっと先にいる遠い存在でもあった。

 

 そんな強いアイツに近づこうと日々鍛練に励んだ。そしてついにおれは稽古でアイツから一勝を掴み取った。

 

 その日から"覇気"を教えてくれる事となりおれは込み上げてくるものを感じた。

 

 これを習得すればアイツに追いつける!そう、思っていたが………。

 

 現実はそう甘くはなく"覇気"の習得は困難を極めた。初めて実戦で使えた時は喜んだが自在に扱えるようになった訳ではなく、結局アイツには追いつけないまま2年という長い時間が過ぎてしまった。

 

 だが、この2年でおれは鷹の目から修行を受け更に強くなろうと努力を重ねた。そして"覇気"を身につけ以前より更に強くなったが……まだ足りない。

 

 おれは2回、アイツの本気を……"覇気"の斬撃を側で見たことがある。1回目は一緒にオーズの腹を切り裂いた時。そして、2回目はシャボンディで黄猿に殺されそうになったおれを助けた時だ。

 

 あの時見せたアイツの"覇気"はどっちも凄まじかった。味方のハズのおれでさえ身震いしてしまう程に。

 

 こんなんじゃダメだ。このままでは世界一の大剣豪になんてなれやしない。

 

 もっともっと強くなりたい。その為に鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて………。

 

 正直、この時からおれはどうかしていた。ただ強さだけに固執し己の限界も省みず体を酷使し続けていた。

 

 そして、がむしゃらに鍛えて続けたある日疲弊しきっていたおれは修行中に倒れてしまう。

 

 意識が戻ると再び修行を続行しようとしたその時、あの男の一言でおれは正気を呼び戻された。

 

 

「おれを倒したい……その意気込みはよし。だが先急ぐな。目標を見失うな!ひたすらに強さだけを追い求めても待っているものは破滅だけ。お前にはあるんじゃないのか?───越えたい目標と言うものが」

 

 

 この瞬間、おれは張り詰めていたものが弾けいつの間にか忘れていたある事を思い出した。なぜここまで必死に強くなろうとしていたのかを……。

 

 親友との約束である世界一の大剣豪になるため。それもあるがそれだけじゃない。

 

 そうだ。おれは───

 

 

 

 

「ングッ!ハアッ!ガッ!?」

「どうしたゾロ!!!受けてるだけかァ!!!」

 

 畜生ォ……!まるで勢いが止まる気配がねェ!!このままじゃジリ貧だ!!!

 

 だが、迂闊にこっちから仕掛けりゃ返り討ちに遭っちまう……ここは耐えろ!耐えるんだ!!

 

 アルガの怒涛の剣舞ラッシュにおれは受け流しては避けてを繰り返し持ち堪える。しかし、少しずつ身体を斬られ無傷ではいられなかった。

 

 その時、おれの脳裏に二文字の言葉が──

 

 

 

 ッ!!!!な、訳ねェだろォッッッ!!!!

 

───ビリッ!バリバリィィ!!!

 

「ッ!!?」

 

 激情に駈られた瞬間、僅かにだがアルガの動きが鈍る。そこを見逃さなかったおれは一気に刀を振り下ろしアルガの猛攻を止めた。

 

「ダッラァアアアア!!!」

「グゥ!?ゾ、ゾロお前今っ……!!?」

 

 攻撃を弾かれすぐに距離をとったアルガはまさか止められると思わなかったのか明らかに動揺した顔をする。

 

 アア?何で急にそんな顔になったのかわからねェが……だんだんと見えてきたぜ?おれの勝利がよ。

 

「……そうか、ここで目覚めたか」

「アン?何か言ったか?まさか一回攻撃を弾かれた程度で戦意喪失したとか言わねェだろうな?」

 

 流れを変えるために一度挑発を入れる。するとアルガは静かにおれを見つめ──

 

「…………ハッw」

 

 鼻で嗤われた。

 

「ア"ア"?」

「戦闘中に敵を挑発してお得意のレスバ戦で相手の冷静さを奪う……悪いがゾロ十八番に乗る気はないぞ」

「いや、どちらかと言やァ挑発はお前の専売特許だろ」

「ア"ア"?」

 

 非常に遺憾であると言わんばかりに青筋を浮かべるアルガ……いや、今のは別に挑発とか関係なく結構マジな感じで言ったんだが……。

 

「上等だその挑発あえて乗ってやるよこの野郎ォ!!!」

「予想以上に乗っかって来やがった。──ってウオッ!?」

 

 怒りに任せて斬りかかるアルガ。動きは単調になったがそれでもパワー、スピード共におれよりも高い為一筋縄じゃいかない。

 

 むしろ焚き付けた事で更に攻撃の重みが増している。

 

 まだ上がんのかよ!だが……これでいい。こうじゃないといけねェ。じゃねェと今日ここでお前と戦う意味がねェ!!!

 

 アルガ、今後もてめェには言う気は無ェんで知らねェだろうがよ。お前と初めて稽古したあの日から己の未熟さに悔やんだと同時に……憧れたんだぜ。その強さに。

 

 お前から色んな事を学んだ。時にはその強さを妬むことだってあった。だからおれはより一層強くなろうと頑張れた。全てはアルガ……お前のお陰だ。

 

 船でいつも一緒にいたお前は、身近にいたスゲェ強いおれの憧れた存在だったんだ!!!!

 

 だからこそ、そんな憧れたお前を───

 

「フッ」

「何を笑ってんだゾロ!!」

 

 心身共に高ぶっていくのがわかる。そう、おれは笑っていたんだ。

 

 戦っていく内にある事に気づく。少しずつだがアルガが息を切らし始めていたのを。

 

 成程な……考えてみりゃあ当然か。あんだけ力が跳ね上がって疑問だったが、制限時間付きか。

 

 恐らく、アルガのあの力はもうじき切れる。そこへ畳み掛けりゃあ充分に勝機はある…………が───

 

 冗談じゃねェ!!!そんなんで勝っても何の意味もねェだろ!!おれは全力のアイツを撃ち破りてェんだ!!!!

 

 それに……ようやく、てめェの剣に慣れてきた所だしな。

 

 

 

 

 

 満身創痍なゾロを見て俺は内心疑問を抱く。

 

 ……おかしい。俺はゾロの動きを"見聞色"で先読みしてる。……にも関わらず今もこうして受け流し対応されているだと?マジでどうなってやがる?

 

『ヘェー、あの腹巻き小僧中々いい動きになってきたじゃねェか。にしてもあの剣捌きどこか懐かしい気が……』

(まあ、親戚だしね。そりゃ似るでしょうよ)

『成程あの小僧がねェ、通りで…………ハッ!!?オイ今何て!?』

(ちょっと騒がないでよ。ただでさえ気が抜けないって言うのに……)

 

「不思議そうな顔だなァ?さっきまで圧倒していた筈の相手を攻めきれなくなってきたってよォ」

「ッ!!?」

「答えは単純……慣れてきたんだよ。てめェのスピードになァ!!!」

「なっ!?」

 

 ここへ来て初めてゾロが攻撃を掻い潜りゾロの剣が俺に届きかけた。なんとかバックステップで避けたがそれ以上にあり得ない現象を目の当たりにし驚愕する。

 

 間違いない。コイツ俺の攻撃を完璧に近い形でみきり始めている。

 

 ……いや、ちょっと待て!

 

 てことは何か!?ゾロは"未来視"で先読みした俺の動きを見てから瞬間的に未来でしていた攻撃を中断し切り替えてるってことか!!?嘘だろ!?!?

 

 ムハハハハ!油断したな。ゾロとはこういう生物だ!てか?やかましいわ!!!

 

 マジでどんな反射神経と動体視力してんだよ!!!バケモノが過ぎるだろ!?こっちは”降霊・呼憑き,,で身体能力を極限まで高めてんだぞ!!?

 

 ……ホントにふざけた奴だよお前は!

 

 おそらく無意識だっただろうさっき見せた"覇王色の覇気"といいホントにゾロには驚かされてばっかりだ。

 

 成長速度が尋常じゃない。だけど───

 

「……アハハッ」

「何だよ、今度はお前が笑ってんじゃねェか」

「ついね!」

 

 戦いの最中、ゾロに続き俺も笑いが漏れてしまう。

 

 2年前の俺だったら今の状況を笑えなかっただろう。以前までの俺は今みたいに急激に成長していくゾロを見て畏怖していた。

 

 コツコツと長年培ってきた俺の実力をあっという間に抜いていかれてしまうんじゃないかって臆病風を吹かせて。

 

 2年前の俺は調子に乗っていたんだ。自分だけ"覇気"と言う強力なステータスを持っていて心のどこかでゾロを侮っていた……。

 

 自惚れるな!そんな考え方だったら同じ土俵に上がった時どちらが強いかなんて明白だ。だからこの2年間で俺は強くなった。

 

 そう、俺はもう2年前とは違う。

 

 2年前の「抜かれそうで恐いから強くなる」という考え方は捨て今は「抜かれたのならまた追い越す。絶対に負けないぐらい強くなる」という考え方に変わったんだ。

 

 だからもうお前の成長速度に気負いはしない。ゾロが強くなり続けるのなら……俺だってどこまでも強くなってやらァな!!!

 

 そうしている内にもゾロのペースは上がり徐々に俺と拮抗し始めて来た。この時、無意識かどうかは定かではないが……ゾロの刀の覆う覇気が緑色を帯びだし黒いイナズマが迸っていた。

 

 見間違いでなければ、これはキング戦で見た……"覇王色"を纏った状態───つまり、カイドウを斬ったあの時のゾロだ。

 

 俺が原作で知りうる一番強い時のゾロが今……目の前にいる!

 

「アッハッハッハッ!!これに勝たなきゃ……アイツに挑めねェよなァア!!!」

「テンション上がってきたな。アイツが誰かは知らねェが……今いる相手に集中しねェと痛い目見るぞ?一刀流──!!」

「安心しな!!今はお前を倒すこと以外何も考えちゃいねェよ!!!桜木一刀流──!!」

 

 お互いに居合の構えを取り同時に地面を踏み込んだ。

 

「”死・獅子歌々(し ししそんそん),,!!!!」

「”桜華一閃(おうかいっせん),,!!!!」

 

 相手にめがけて一直線に駆け抜け刀を鞘に納める時にはお互いに背を向けていた。キン、と刀を納めた瞬間俺とゾロの間の地面からズバァン!と大きな二つの斬撃跡が刻まれた。

 

 お互いに受け流したか……。

 

 互角……て事はゾロがついに”降霊・呼憑き,,の俺と同じレベルにまで到達したと言うこと!!

 

 アッハッハッハッ!ここまで来ると感心して笑いしか出なくなるわ。それに───

 

「嬉しいなァ」

「ア?何がだよ」

 

 おっと、口に出ていたようだ。まあ、この際だしいいか。

 

「ゾロがここまで強くなったことがだよ」

「ヘェ……」

「ゾロはさ、"ウォーター・セブン"で俺から一勝を取ってからの稽古の勝率覚えてる?」

「2 : 8ぐらいだった気がするな。少しずつ勝てるようになっては来てたがそれでも全然負け越しだ」

「うん、その通り。でもね、俺は初めて稽古をした時からゾロ……お前をすごい奴だと思っていた」

「何……?」

 

 最初の頃は一勝どころか勝つ兆しすら見えなかったゾロは俺の言葉に訝しむ。だが、事実だ。

 

「ハッキリ言って稽古する度に劇的に強くなっていくゾロを末恐ろしいとさえ思っていた。けど……」

「けど……?」

「それ以上に強さを追い求めるゾロに俺は憧れた」

「ッ!?お前が……おれに……?」

 

 意外だったのか目を見開き聞き返すゾロに俺は素直に頷いた。

 

「ああ、だからこそこの戦いは俺にも意味があった。際限なく強くなり続けそしてこの瞬間、俺を追い抜こうとしているお前に……俺は勝ちたい!!!」

「…………そんなのおれだって同じだ」

「え?」

 

 ゾロは気恥ずかしくなったのか頭をかきながら俺に教えてくれた。

 

「初めて会った時からおれには持ってねェ強さを持っていたお前におれは憧れていた。そして今、おれはその憧れに手が届いた。なら、やる事ァひとつだ。お前もだろ?アルガ」

「ああ、そうだ。その通りだ……」 

 

 お互いに秘めていた気持ちをさらけ出す。

 

「いつもおれより先にいた。鷹の目よりも身近にいたお前は野望とか関係なくひとりの男としておれの目標だった。そう……アルガ、そんな憧れたてめェをおれは───」

「追い抜かれるのが恐かった。稽古をする度に強くなっていく驚異的な成長速度。素質やセンスで圧倒的な可能性を持つお前が。だけど、それと同時に思っていた。そんな成長し続けるすごい男に勝ちたいと……。ゾロ、そんな憧れたお前を俺は───」

 

 

「「越えたかったんだァアアアア!!!!」」

 

 

 秘めていた思いが、感情が爆発すると両者刀を構えた。これが最後だと気迫でわかる。ならば俺も全力をもってそれに応えよう。

 

「九山八海!一世界!千集まって"小千世界"……!!三乗結んで……斬れぬ物なし!!三刀流奥義───!!!」

「花は桜木人は武士。寒期を越え訪れは春の温もり。そこに見えるは主君の笑顔と共に満ちる初桜。咲き誇る折りしは今日もよき日なり……。桜木二刀流奥義───!!!」

 

 

「”一大(いちだい)三千(さんぜん)大千(だいぜん)世界(せかい),,!!!!」

「”二刀(にとう)和国仙明(わこくせんみょう)千本桜(せんぼんざくら),,!!!!」

 

 

 憧れを越えるために、全力を乗せた一撃が今──衝突した。

 

 

 

 

 

 あの餓鬼共がァァァ……!!!

 

 おれはドレスローザからパンクハザードへ急ぎ向かっていた。このおれの事業に手ェ出してタダで済むと思うなよ。

 

 しかし、途中空の雲が途切れてしまい迂回するハメとなった。悪運は強いみてェだな。お陰でかなりの遠回り、悠長にはしていられない。急がねば……。

 

 そう思っていた矢先に前方から()()()()()が飛んできた。すぐに避けたが今の斬撃のせいで雲がかき消されまたも迂回する事となる。

 

 今のは……方角からしてパンクハザード。まさか何者かが目にも見えねェ遠い海の彼方から斬撃を飛ばしてきた……?

 

 いやあり得ねェ……そんな芸当ができるのは鷹の目ぐらいだ。流石に考えすぎか。

 

 時は一刻を争う、そんな時に緊急用ボートにバッファローとベビー5の生首が流されていた。何事かと思いボートに降りると二人は生きていたからこれはローの仕業だろう。その証拠に側に置いてあった電伝虫からローから通信が来た。

 

 しかし、ローから伝えられたのは交渉なんて名ばかりの一方的な要求だった。"王下七武海"を辞めろだと?

 

 餓鬼が一丁前にでけェ口を叩きやがって……もう容赦はしねェ。

 

 その後急いでパンクハザードに到着したのだが、そこにいるのはG-5の海軍だけで海賊小僧共の影は見当たらなかった。

 

 どっちにしろ深く知りすぎたコイツらは生かしておく訳にはいかねェんで皆殺しにしようとしたが……。

 

 そこへ思わぬ人物が現れた。元海軍大将のクザン……なぜ奴がここに?

 

 流石にここでコイツとやり合ってもメリットがねェんで仕方なくここは大人しく身を引いた。

 

 バッファローとベビー5を連れて一度ドレスローザへと帰還する。まあ、次に奴らが狙うものは概ね見当がついている。その時に消せばいいだけだ。

 

 …………それと、パンクハザードについた時おれは違和感を覚えていた。

 

 シーザーの研究所はちょうどアイツらがいた氷の大地の筈だ。その筈なのだが……。

 

「妙だな……なぜ氷の大地のあの周辺だけ研究所は愚か雪山すら見当たらなかったんだ?というよりも……あそこはあんなに更地だったか?」

 




どうも皆さんもしロマです!
36話をご覧くださりありがとうございます!
今回でアルガの技が一気に増えてしまった……覚えるのめんどい……。
ではまた会いましょうでわでわ~( ´ ▽ ` )ノシ
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