あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
お久しぶりですねぇ~~。初回の方は初めまして!
短編にしようか迷いましたが少し長くなりそうなので連載にしました。
よければ暇潰しにどうぞ( ´ ▽ ` )つ


本編
1話 あなたから教えてくれたモノ


 俺がそれ──いわゆる"前世の記憶"を取り戻したのは色々と……それはもう色々と詰んでいる時だった。

 

 皆は「もしも転生したらどうなるだろう?」などと考えたことはあるだろうか。俺はある。いっぱいある、だって男の子だもん。

 

 異世界に転生し超人的な力で見たこともない世界を楽しく冒険。はたまた、自分の知っている作品の世界に転生しその原作知識を駆使し生きていく。

 

 どうやら俺は後者の方だが……誰か教えてください……。

 

「鬼姫様、人生のリセットボタンってどこにあるんでしょうね?」

「そんなのぼくの方が欲しいよ」

 

 現在、ワノ国を根城にしようと移住し始めた百獣海賊団。その一介の戦闘員兼世話役である俺はヤマト坊っちゃんに落ち込みながら質問する。

 

 

 ここから入れる保険ってありますか?

 

 

 

 

「本日よりお前には鬼姫様の監視の任を与える」

 

 ある日、俺の上司である厳つい顔の……えっと、ババ……トランプのゲーム名みたいな奴からそう命じられた。

 

 当時、ただの戦闘員だった俺はこの任務を与えて貰いすごく喜んでいた。何せ、鬼姫様はカイドウ様の大事な娘。そんな重要な任務を与えてくれたとなれば昇進できるチャンスはそう遠くはないだろうと思ったからだ。

 

 うん、喜んだよ。超嬉しかった。……でも、その喜びはすぐに消え絶望に変わってしまう。

 

 一介の戦闘員なだけの俺はまだ鬼姫様の姿を知らず確認のために一度顔を見に行った。そして、鬼姫様……いや、()()()を見た瞬間、俺の脳裏に知らない記憶が浮かび上がり──。

 

 あ、ここワンピの世界じゃん。

 

 前世の俺はワンピースがそりゃあもう大好きだった。そんな俺が今その世界にいる。そう考えただけで感極まったがだからこそ今の俺の状況に顔が青ざめる。

 

 俺……敵サイドじゃん……。

 

 いや、待て落ち着くんだここは冷静に現状を整理するんだ。

 

《俺の状況》

•百獣海賊団所属(ルフィ達に嫌われる)

•ワノ国を拠点中(ワノ国の人達に嫌われる)

•ヤマトのお目付け役(ヤマトに嫌われる)

 

 3アウト。ゲームセット……じゃねェんだよ!!

 

 しかし、落ち込んでばかりもいられない。どうにかしないと俺はいずれやってくるルフィ達に敵としてぶっとばされてしまう。それだけはどうにか避けたい。

 

 というより一刻も早くここを辞めたい!!誰が好き好んでこんな残忍な海賊団にいられんだよ!記憶が戻って現代っ子の思考になった俺には無理っ!!

 

「あの……」

「ん?」

「えと、おじさん……誰?」

 

 思考を巡らせていると目の前の少女が尋ねる声が聞こえ我に返る。

 

 そうだ、今はヤマト(幼少期可愛い)との初対面の最中だった。これから俺はこの子のお目付け役……要は監視じゃねェか。こんなの嫌ってくださいって言ってる様なもんじゃんヤダナー。

 

 …………いや、待てよ?この立場を上手く利用してヤマトと仲良くなれば俺は敵サイドから脱却できるのでは……。

 

 そんな考えをしているとは思っていないであろうヤマトは首を傾げ(やっぱ幼少期可愛い)、そんな様子を見て俺は考えを面に出さないよう優しく笑いかけた。

 

「はい。私は、あなたを一人にさせない様に仰せつかった者……あなたの従者ですっ」

 

 さあ、ここから巻き返してやるぞ!!

 

 

 

 

 

 初めて出会った時、その人は不思議な人だと思った。

 

 とても海賊とは思えないほど優しくぼくに接してきて逆に警戒心が強まったのは今でも覚えている。初対面でいきなりぼくの従者何て言うんだ。そりゃあ警戒しちゃうよ。

 

 でも、それからもその人はぼくを見つけては笑顔で話しかける。正直、ぼくは彼と話すのが好きだった。

 

 基本的にぼくはお父さんのせいで自由に生活できず外の知識はまるでない。そんなぼくに彼は航海を元に外の話をしてくれる。

 

 そんな彼の話を楽しみに日々を暮らしているといつの間にか最初の警戒心はどこかへ消えてしまっていた。

 

 ある日、彼を探していたら人気のない岩場で黙々と何かを行っていた。すると、拳が黒く染まり近くの岩を殴るとその岩は簡単に砕けてまう。

 

「よっしゃ!!遂にできたぞ!もっと鍛えて今度は武器にも纏えるようにしたいなァ~~」

「おじさん……?」

「ン?ああっ、鬼姫様!なぜこんなところに?」

「またおじさんのお話しが聞きたくて……」

「そうでしたか。では、ちょうど周りに人もいませんしここで話しましょう。今日の話しはですね──」

 

 おじさんと話す時は決まって人がいない時だけだった。お父さんがぼくを他の人と必要以上に関わらせない様にするため今までぼくは一人だった。

 

 その事情のためか彼はこうして周りに人がいない時を見計らい二人でこっそりお話しをする。

 

 今までにない体験にドキドキしぼくはそれがなによりも楽しく大切な時間となっていた。

 

 それからしばらくそんな日々を過ごしているたある日、ぼくは自分の人生や価値観、全てを塗り変える出来事に直面した。

 

 

 

 ある日、お父さんとその部下達が総出でどこかへ行きしばらくの間凄まじい轟音が鳴り響いた。きっと、誰かと闘っていたんだ。

 

 おそらく、おじさんもそこへ行ったのだと思い闘いが終わるまでぼくは不安で堪らなかった。

 

 おじさんにまた会いたい。そう思い続け翌日少し怪我をしているがいつもと変わらないその笑顔を見た瞬間大泣きし安堵した。

 

 おじさんは突然ぼくが泣き出したことに驚きオロオロしておりなんだかおもしろかった。

 

 しばらくするとぼくは泣き止み先日でのことを話してもらった。

 

「それにしても傷付いてるよ……大丈夫?」

「ええ、心配には及びません。カイドウ様の闘いに少し巻き込まれてしまっただけなので」

「えっ!お父さんは誰かと闘ったの?」

 

 ぼくのお父さんはとても強い。それこそ最強という言葉がこれ以上当てはまる人を他に知らないぐらいには。

 

 そんなお父さんと闘える人がいるなんて……。

 

「ええ、その者はとても勇敢で強く……なにより誇り高い侍でした。そして、その侍はカイドウ様に一生消えないほどの大きな傷を負わせました」

「ええっ!?あのお父さんが!!」

 

 開いた口が塞がらない。お父さんは強い誰も逆らえないほどに。

 

 ぼくもそうだった。だから今の状況にも甘んじている。でも、そんなお父さんに反抗しその上傷をつけるなんて……!

 

 ぼくは話を聞いている内に興奮が収まらずにいた。今までそんな人誰もいなかったんだ、当然だ。

 

「それでそのお侍さんはどうなったの!勝ったの!?」

「いえ、残念ながら結果的に敗れてしまい今は幽閉中。後日その処遇が決まります。……ですが、おそらく命は助からないでしょう」

「そんな……」

 

 ようやく……ようやく見つけたと思ったのに。お父さんからぼくを助けてくれるかもしれない人を……。なのに、なのにっ!

 

「見に行きますか?」

「え?」

 

 俯いていた顔を上げるとおじさんはぼくの心を見透かしたかのような瞳で見詰めていた。

 

「まだ内緒ですが、7日後にてその者を含めた従者の侍達はワノ国の町にて公開処刑されるでしょう。鬼姫様さえよければその者達の勇姿をその目でご覧になりますか?」

「いいの?……なら、ぼく行きたい!そんなすごいお侍さんがどんな人なのか。自分の目で見たい!」

 

 なぜおじさんがそんな重要な情報を知っているのか少し謎だったけど、今はそんなことよりもお侍さんの方が大事だっ!

 

 おじさんはぼくの強い気持ちに答えるように頷く。そして、その7日後ついにその時が訪れた。

 

 その日見た光景をぼくはきっと忘れないだろう。あのお父さんに歯向かい敗れても尚失わないその誇り高い瞳を。

 

 己を犠牲にして従者を誰ひとり欠けず逃がしたあの男の勇姿を。

 

 死して尚、敵を恐れず国の未来を信じて笑って逝った偉大なお侍の名を……。

 

「光月……おでん……!」

 

 この日を境にぼくは自身を「おでん」と名乗り始めた。いつかぼくもあんな偉大な人になりたくて。一生消えることのない憧れを追いかけるように。

 

 

 

 

「ちがうよ!おでんはもっとこうっ!豪快に振り抜くんだよ!」

「鬼姫様勘弁してくださいよ……。俺の戦闘は基本金棒なんですよ?刀なんて触れたこともないのに……」

 

 あれから数日経ってもあの時の興奮が収まらずにいたぼくにおじさんがあるものをプレゼントしてくれた。

 

 誰かから贈り物を貰ったことなんてない。ドキドキして受け取るとなんとあのおでんが書いたと言われる航海日誌だった。ぼくは嬉しさのあまりおじさんを強く抱き締めた。

 

 今までこんなにも喜んだことがないぼくはその高ぶりが収まるまで抱き締め続けた。途中ミシミシと何かが軋む音とおじさんが叫んでいたがきっと一緒に喜んでいたんだと思う。ふふっ、同じおでん好きなんだね。

 

 どうやらお侍さんというのは刀という剣を使って闘うらしいのでさっそくおじさんに刀を二本渡し使わせてみた。

 

「キミはぼくの従者なんだろ?だったら刀も使えるようにならないと!なんたってぼくはおでんだからねっ!」

「あんなこと言わなきゃよかった……」

 

 おじさんが何か呟いた気がしたが気にせず剣術の鍛練を続けさせた。

 

 そんな日々は楽しく毎日が充実した日だったがその幸せは突如として終わりを迎えた。

 

 そう、ぼくがおでんを名乗ることが気に食わなかったお父さんはぼくを捕まえ洞窟の中へ閉じ込めてしまった。

 

 その洞窟にはワノ国のお侍さんもいて最初はその人達に殺されるかと思った。ぼくはおでんだけどカイドウの子供だから……。

 

 でも違った。お侍さん達はぼくの鎖を斬ってたった一人用の食事までぼくにくれた。お腹が空いていたぼくはそれを泣きながら噛みしめる。

 

 それから、お侍さん……某さんと名乗った人達はぼくが持っていたおでんの航海日誌を一緒に読んでくれた。

 

「ありがとう某さん。ここまではぼくの従者が読んでくれたけどお父さんの部下から逃げてからは会えなくてひとりじゃ読めなかったんだ」

「ほう。こんな幼子に従者がいたのか?」

「うん!なんたってぼくはおでんだからね!自慢の従者なんだ!この日誌もおじさんが用意してくれたんだ」

「そうだったのか。ならば、我々もその者には感謝せねばな」

 

 そこからは航海日誌だけじゃなくおじさんの話しもした。おじさんを誉められるとおでんの時みたいに嬉しくなってしまう。

 

 あれから10日が過ぎた頃には日誌を読み終えたが体が弱ってしまい倒れこむ。そんなぼくを見てか某さん達はそれぞれ刀を手に取っていた。

 

「拙者達はおぬしをここで"死なせぬ"事で未来の戦に参戦いたそう。20年は拙者達にはちと待てぬ年月ゆえ……!!」

「お侍さん!!そんなことしたら父が!!」

「このまま衰弱死など御免こうむる!!」

「もとより屈服する気などないゆえ!!」

 

 そういい、三人のお侍さん達は洞窟を塞いでいた大岩を切り裂き差し照らす眩い光と共に消えていった。

 

 

 

 

「……お目覚めなされましたか。鬼姫様」

 

「あれ?……おじさん?……ぼくは……っ!?」

 

 あのまま気を失ってしまったのか気がつくと人気のない岩場で目が覚める。

 

「そうだ!大変なんだよ!お侍さん達がぼくを助けるために岩を斬って……!そういえばお侍さん達は!?」

 

 気を失ってからどれぐらいたったんだろう。ぼくの焦った反応とは反対におじさんは冷静だった。

 

「先ほど、カイドウ様の手によって断罪されました。貴女を救ったあの侍達はもう……この世にはいません」

「えっ……」

 

 ぼくの頭は真っ白になった。

 

 だって、お侍さんはぼくを助けるためにあんなことをしたのに……ぼくは……まだお礼も言えてないのに……。

 

「そんな……お侍さん……ううっ」

「鬼姫様涙をお拭きください」

 

 悲しさや後悔といった感情が涙となり溢れ出すとおじさんは懐から手拭いを取り出し涙を拭き取る。

 

「ワノ国の侍は決して無意味な死を選択しません。何か、"大きな役割"を見出だしてあの岩屋から出たのではないですか?」

「っ!!」

 

───拙者達はおぬしをここで"死なせぬ"事で未来の戦に参戦いたそう。

 

「……お侍さん達は、ぼくがいつかお父さんと闘う日まで死なないようにするためっていって……ぼくをあの洞窟から出してくれたんだ……」

「そうですか……。では、鬼姫様」

 

 ぼくの頭を軽く撫でるとしゃがみこみ同じ目線になる。

 

「生きてください」

「えっ?」

「貴女のその命こそ……散っていった生ける侍達の意志なのです」

「お侍さんの……意志……?」

「侍達は決して無意味に死んだわけではない。未来へ繋ぐ希望を貴女に託したのです。侍と交わした言葉に嘘はないですよね」

「……っ!!うん!嘘じゃない!ぼくはいつか自由になるためにお父さん……父と闘う!!」

 

 そういうとおじさんは笑った。

 

「ならこれから強くなりましょう。私も一緒です」

「うん!……ねえ」

「はい、何でしょう?」

 

 ぼくが尋ねるとおじさんは聞き返す。以前から伝えたかった言葉を小さな声でだったがそれでも強く気持ちを込めて口に出した。

 

「おじさんは……いなくならないでよ?」

「はい。勿論です」

 

 おじさんがそう返しぼくの胸の辺りがポカポカしてきた。おじさんは不思議な人だけどなぜか信じられる。

 

「ですが、これまでみたいに時々会えない日があるかもしれませんが」

「それでも!最後にはぼくの元に戻ってくること!!ぼくの従者なんだから言いつけは守るように!」

 

 おじさんはからかう様にいうとぼくはムッとなってしまいつい声を張り上げてしまう。いつまでもこんな風におじさんといられたらいいなと内心想いながら……。

 

 しかし、それがいかに大変なものなのかぼくにはまだ分かっていなかった。

 

 

 

 

 あの一件から月日が流れ雪が降り始める寒い時期がやってきた。

 

 ぼくは未だに父の部下達から逃げ隠れの生活を送っている。そして、たまにおじさんと会っては持ってきたご飯を一緒に食べ共に強くなるため修行していた。

 

「悪魔の実?」

「ええ、実は最近見つけてしまったんですよね。鬼姫様は悪魔の実がどういったモノなのかご存じですか?」

「しってるよ!不思議な力が出せるんでしょ!父さんそれですっごくおっきい竜に変身できるんだよね!」

「はいその通りです。実には3つの種類がありましてカイドウ様のは"動物系(ゾオンけい)"なのであのような変身が出来ます。ですが、私のはこれが何の実なのか分からないんですよね」

「へー、おじさんでも知らない事ってあるんだ」

「なんでもは知らないですよ。知ってることだけ」

「……?」

「…………スミマセン今のは忘れてください」

 

 少し言いまわしが難しく首をかしげるとおじさんは顔を赤くし剣術の修行に戻った。

 

 一通り修行を終えるとおじさんは汗を拭く手拭いと水筒を渡してくれた。

 

「ありがとうおじさん!……ゴクッゴクッ」

「礼には及びません。お疲れ様でした。それと鬼姫様、お伝えしたいことが」

「プハァッ。なに?」

 

 ぼくが聞き返すとおじさんは神妙な顔になった。

 

「実は最近、鬼姫様を探る人数が増え始めておりまして、今後はさらに会える機会が減るかもしれません」

「え……」

 

 おじさんの言う通り最近はぼくを探す人達が増えてきてしまいこうやっておじさんと会う機会が減ってきている。

 

 ただでさえあまり会えないのにこれからはさらに会える機会が減っちゃうのは悲しいな……。

 

 いいや、ダメだ!寂しくない!弱音を吐くな!ぼくはおでんなんだから!

 

「そっか、分かった。でも、一人でも修行は続けるからね!おじさんも一人だからってサボらないように!」

「ええ、分かってますよ」

 

 

 

 

 それからしばらくが経ち降った雪は積もりだした頃だった。

 

「うう……寒い……お腹減った……」

 

 雪が積もりだしたせいで木の実や山菜などが取りづらくなり、その上父の部下に見つからないように常に警戒をし続けてしまい疲労も溜まりお腹の音が鳴り止まない。

 

 このままだと倒れてしまう。だが、体が限界なのか動けず蔵の下に隠れるように座り込む。

 

 せっかくお侍さんに助けてもらったのにこのままじゃ死んじゃいそう。そんなのイヤだ……。

 

「会いたいよ……おじさん……」

 

 そう呟いた時目の前に人影が現れた。しかし、それを見ても警戒はしなかったなぜならその人は……。

 

「お呼びですか?鬼姫様」

「……おじさん?」

 

 現れたのはおじさんだった。そして、手には色々持っておりそれをぼくに渡してきた。

 

「この時期じゃまともな食糧は確保できないと思いこちらを。おむすびです」

 

 そういいおじさんは幾つものおむすびを渡しぼくはついつい頬張ってしまう。

 

「おいしい……おいしいよゥ……」

「喜んでいただけで幸いです。お身体も冷えているでしょう。この毛布をどうぞ」

 

 ぼくは毛布で身体を暖めおむすびを食べ続ける。久しぶりのごはんに涙が出てしまう。

 

「……まさか俺があのキャラだったとはな」

「ん?おじさんなにか言った?」

「いいえ。それより飲み物をちゃんと飲まないと喉に詰まりますよ」

 

 なにか言ったような気がしたが気のせいだったようでおじさんはぼくに暖かいお茶をくれた。

 

「プハァ!ありがとうおじさん!お陰で元気が出たよ」

「いえいえ。それとまたお腹が減らない様にもう一つおむすびの包みを用意しました。よければどうぞ」

 

 そういっておじさんはおむすびの入った包みを渡してくれた。ホントにおじさんは頼りになる。いつも助けてもらってばっかりだ。

 

「鬼姫様」

「ん?」

「貴女はいずれこの国のため、自身の自由のためにカイドウ様と闘う日が来るでしょう。そのためにも強く生きてください」

「うん!勿論だよ!」

 

 ぼくがそう返すとおじさんは笑う。しかし、その笑みは何か覚悟を決めたようなどこか寂しそうな顔だった。なぜそんな顔をしたのかは分からない。

 

 だが、気付くべきだった。おじさんのその顔の真意に。先ほどの言葉はまるで遺言を残す様な言いまわしだったことに。

 

 

 そして、次におじさんと会ったのはその翌日。血みどろの姿ではりつけにされた状態でだった。

 

 

 

 

 

 一目見て感じた印象はどこか不思議な奴。

 

 部下の一人がおれの息子ヤマトに毛布と食糧を与えたと言う報告を聞きそいつを呼び出し、その時に見ておれはそう思った。

 

 とても海賊とは思えねェような優しい目をしてやがる。おれのところにこんなフヌケがいたとはな。

 

 話を聞けばこいつは定期的にヤマトと会っていたらしい。ただの戦闘員ごときがおれ達を騙し続けたことは許されることじゃねェが一つ提案をしてやった。

 

「選ばせてやる。今、ヤマトがどこにいるのかを教えればその命だけは助けてやる」

 

 しかし、奴はその提案には乗らなかった。全くバカな野郎だぜ。

 

 それからはおれが直々に手を下してやった。だが、意外にも覇気を使い負けじと抵抗してきやがった。名も聞かねェただの戦闘員が覇気を使えるとは思いもしなかった。

 

 だが、覇気を使えるからといってそれだけでは決して埋まることの無い差がおれ達にはあった。それでも奴は抗い続けた。

 

 金棒が砕かれれば刀を抜き、刀が折られると拳で応戦。攻撃手段の多さに意外性を感じた。そして、驚いたことにダメージこそ無いがおれの身体に()()()()ができちまった。

 

 しかし、それでも力量差は明白。5分と経たずに今は血反吐を吐きながらその場に倒れこんでいる。

 

「このおれに楯突いてまさかそれで終わりじゃねェよな?さっさと立たねェとその身体ミンチになるぜ」

「……ハァハァ……ゴフッ……」

「勝敗が決まっても尚敵を睨み続けるのをやめねェか。ウォロロロロロ!気に食わねェがおもしれェ。最後にチャンスをくれてやろう。お前、もう一度おれに忠誠を誓え」

 

 必死で立ち上がろうとする奴を見下しおれは笑いかける。

 

「おれに傷をつけられる奴はそうそういねェ。その気概をおれのために使うってんならこれまでのことは水に流してやる。それだけじゃねェ。悪魔の実もくれてやろう。それも希少な"古代種"のな」

 

 古代に生きたとされる生物。その力を使いこなせればただの"動物系(ゾオンけい)"の力も目じゃない。おれの元で働くならそれをくれてやろうってんだ。

 

 間違いなく他の連中よりも厚待遇。メリットはでかい。そもそも、選ばなければ死ぬ状況だ。バカな侍共とは違い選ばねェ訳が……。

 

「お……」

「ん?」

 

 ようやく立ち上がると失っていない戦意を隠さず敵意の瞳でおれを睨みつける。

 

「お前になんざ誰が誓うかよ。俺は鬼姫様の従者だ」

 

 ピキリ。頭に血が上がりおれの額の血管が浮き上がるのが分かった。

 

「確かにあんたと闘うのは恐い、めちゃくちゃ恐いし超痛ェよ……けどな」

 

 奴はおれを見上げほくそ笑む。

 

「いつか敗けると決まってる奴の船に乗りたくないわ。それにここじゃ自由がなくて楽しくねーし」

「……ウォロロロロロ!敗けると決まっている?あれか?おでんが残した伝承か!まさかお前もあんな笑い話を信じる間抜け野郎だったのか!」

「…………」

「以前、岩屋から脱獄しおれの首を狙った侍共も同じことを言ってたな。お前ら本気でそう思ってんのか?仮に本当だとしてそいつらがおれに勝てる根拠はあんのかよ!」

「あるっ」

 

 奴は断言するように言い放った。

 

 

「ソイツはいずれ海賊王になる人だ」

 

 

 聞いた瞬間ピタリと笑いをやめ殺気が溢れ出す。たった今、もうこいつを生かす理由はなくなり金棒を振り上げた。

 

「冗談にしても笑えねェぞオイ。誰の前でそれを口にしたのか分かってんのか?」

「分かってないでこんなこと言うかよ。せいぜい気長に待ってな……海賊王になれなかった者(四皇)の席でよ」

 

 

 

 振り下ろされた金棒は奴に直撃し限界に達したのかピクリとも動かずその場に倒れた。

 

 起き上がる気配はない、逝ったか……。まあ、これで死ななかったとしても致命傷。そう長くは持たない。せいぜい己の過ちを後悔するんだな。

 

「オイ、そいつを縛り上げろ。ヤマトへの見せしめにする。自分と仲良くなろうとする奴は皆こうなるって思い知らせなきゃな」

「は、はいっ!」

 

 近くにいた部下に命令をし奴を連れて部屋から出ていった。

 

 ヤマト。お前の教育のためにもおでんの思想も、仲良しごっこの馴れ合いも全て断ち切る。強者には強者の道理ってのがあんだ。鬼の子であるお前は決して弱者と馴れ合っちゃいけねェ。

 

「ウォロロロロ。これでまた一人に戻ったな……ヤマト」

 

 

 

 

 

 当時の俺は碌でなしだった。

 

 いや、だったでもないな。今だって人に誉められるような生き方なんてできていない。なにせ、今は海賊として生きているのだから。

 

 海賊を稼業として生業にしているなんて前世()の俺には信じられないだろうな。まあ、そもそも死後の世界自体信じないだろうけど。

 

 話を戻すが正直いって前世も現状に負けず劣らずで碌な人生じゃなかった。

 

 親父は家にいる時は決まって酒に入り浸り浮気するわギャンブルして借金をこさえるわ賭けに負けたらその鬱憤を俺を殴って発散するわで尊敬する部分が欠片もない。

 

 母さんもそんな親父に嫌気が差したのか慰みを得るためホストに通いづめ、機嫌よく帰ってきても俺の顔をみた瞬間現実に戻るのか発狂し暴力を振るわれていた。

 

 両親から手を上げられる時以外は基本無関心で食事もろくに出してくれない。そんな環境でまともに育つはずもなく料理もできなかった俺は幼い頃から店の食べ物を盗むことを覚えた。

 

 何度かは人生やり直したいって考えたことはあったが……生まれ変わっても海賊をしているなんて笑える。……いや、やっぱ笑えねェわ。

 

 そんな生活を送り続け現状に絶望しもう目の前が真っ暗になった時、俺はある本を見つける。

 

 そう。それがONE PIECEだった。

 

 それから俺は古本屋などで読んだりしてのめり込むようにハマっていった。どんなに辛い環境でも諦めなければいつか大事な人達ができ成長していくキャラ達を見て俺は魅力的に思い楽しく読んでいた。

 

 そして、数年後とあるキャラとのであいで俺の中の世界を大きく変えた。そのキャラは───。

 

 

 

 

 ………………?あァーー、身体が動かねェ。つーかクソ痛ェ……。

 

 目が覚めるもまだ意識がハッキリせず身体を動かそうとするとガシャンガシャンと何やら金属音が響き手足が動かなかった。

 

 どうやら俺の身体は鎖で縛られ拘束されているようだ。そして、未だに塞がらない傷から血が流れ体温が下がっていく。

 

 また意識が飛びそうだ……。この出血の量じゃ助かりそうもない。イヤだなーー、せっかくワンピの世界にきたのに推しにも会えないとは……。

 

「……おじさん?」

「……あ」

 

 近くに誰かがやってきて俺に声をかけてくる。力が入らず顔をあげられなかったが俺のことをそう呼ぶ人は一人しかいないためすぐに分かった。

 

「その声……鬼姫様……ですか?」

「なんで……」

 

 顔は見えないがヤマトの震える声で泣いていることは分かった。

 

「なんでっ、ぼくなんかのためにここまでするんだよ……」

「…………」

「ここから離れた人の会話を聞いたんだ。ぼくにごはんや毛布をあげたからおじさんはこうなったんだって……なんでだよォ!!」

 

 泣きじゃくりながらもヤマトの爆発した感情は止まらない。これまで父親のせいで友達どころか一緒に話せる人もおらず、ずっとひとりぼっちで生きてきた彼女にとって俺と一緒にいてくれる理由が謎だったのだろう。

 

 そんなヤマトに俺の口が開いた。

 

「それは……」

 

 重い口を動かし己の気持ちをさらけ出した。

 

 

「鬼姫様は私を救ってくれたからです」

「……え?」

 

『クソッ!テメェのせいでまた負けちまったじゃねェかクソガキがっ!!』

 

『あんたなんて産まなきゃよかった!用がないなら近寄んじゃないよ!!』

 

 今でも脳裏から離れない記憶、前世の両親の暴力や暴言の数々。生きる気力を失くしかけたあの日、俺はこの世界を知った。

 

 どんな困難にも立ち向かえる強い船長。

 

 野望のためにどれだけ険しい道程だろうと諦めず鍛え続ける剣士。

 

 大切な人を失っても幸せになるために前を向ける航海士。

 

 己が強くなくても仲間のためなら誰よりも勇敢に闘う狙撃手。

 

 辛い過去でも愛情を受け誰よりも優しく育った料理人。

 

 偉大な医者から人間の感情を与えてもらい誰よりも笑顔が似合う船医。

 

 ずっと一人で生きてきた人生から救い出してもらい今までできなかったことをこれから楽しむ考古学者。

 

 決して曲げずドンと胸を張れるようなまっすぐな生き方を続けられる芯の強い船大工。

 

 仲間との約束を守るために50年も孤独と闘ってきた骨のある音楽家。

 

 差別によって多くの大切な者達が亡くなっても同族のため仁義を貫き通す人情の大きい操舵手。

 

 皆がみんな、何も知らなかった俺に人として当たり前だけどそんな大切なものを教えてくれた。

 

 そしてもう一人。たった一人でも懸命に生き抜き成長し親の呪縛から解放されて自由になったあの姿を見て俺は変われた。

 

 心をくれたのはあの人達だったけど、勇気と覚悟をくれたのは他でもない……ヤマトだった。

 

「私は……前世()から自由になろうと歩み続ける貴女に憧れていました……。そんな貴女だから私は鬼姫様の従者になりたかったのです……」

「おじさん……でもっ」

 

 ヤマトは小さな足取りで近づき俺の視界に入る。そこに映るのは大粒の涙を溢す小さな少女の姿だった。

 

「ひとりは……ざみじいよォ……っ」

 

 その姿を見た瞬間、俺は前世の自分と重なって見えた。

 

 そっか……。そういや俺は小さな頃から一人だったヤマトをみて親近感が湧いたのがきっかけだったな……。

 

 いずれ大きく成長し強くなるとしても今はまだ小さな子供。そんな子が最初っからこんな状況を平気でいられるわけがない。

 

 俺もできることなら20年後の闘いに参戦したかった……。貴女と一緒に闘いたかった……!

 

 でも、これからヤマトは長い時を一人で生きていくことになる。せめて……寂しくならないように……。

 

「鬼姫様……。私は……死にません」

「ヒグッ……エッグ……えっ」

「人は……いつ死ぬと思いますか?」

「グスッ……」

「金棒を脳天に叩きつけられた時……違う。血が止まらず大量に流れた時……違う!」

 

 俺は残りの気力を振り絞り顔を上げヤマトと目を合わせた。

 

「人に……忘れられた時です」

「…………!!」

 

 ヤマトの目が大きく開いた。

 

「私がいなくなってもその意思は貴女に受け継がれる。これまで散っていった侍たちもそうです。皆が貴女を生かすために闘い続けた。それは今もまだ終わっていません」

「……うん」

「貴女が生きている限り私たちは死なず鬼姫様と共に闘い続けるのです。だから……」

 

 俺はいつもと変わらない様に優しく微笑んだ。

 

「生きてください。そして、いつでも笑っていられる強さを忘れないで……」

「……わかったよ」

 

 一度、顔を俯きまた顔を上げるとそこにはさっきまでの泣いていただけの少女はいなかった。

 

「ぼく、生きるよ。おじさんのこと一生忘れない。そして……おじさんにも負けないぐらい大きくなってもっともっと強くなる!だからおじさん……これからもぼくの側にいてね」

「はい……。私より大きくなられるとお布団をかけるのも大変そうですね……」

「ふふっ、ぼくの従者なら頑張って毛布をかけてよね」

「はい」

 

 伝えたいことを言い終えると一気に力が抜け意識が遠退いていく。だが、これでいい。あの表情をみれて俺は安心したよ。

 

 前世で何度も見た、自由のために闘う覚悟を持った強い者の笑み。俺はそんなヤマトというキャラが……。

 

 

「大好きでした」

 

 

 

 

 ………………………………。

 ……………………。

 …………。

 ……ん?

 

 なんだ?身体に痛みがない……どういうことだ?ひょっとして死んだから黄泉の国にでも逝ったのか?

 

 辺りは真っ暗で何も見えず痛みはないが思うように動けない。まるで何かで全身を包み込まれているみたいだ。

 

 そして光を求め手足を動かすと───。

 

「おおっ!産まれた!男の子のようだ。頑張ったな!」

「ええ……。可愛いわ……ハァハァ……私がママよ」

 

 ……………………え?俺ひょっとして……。

 

「バブゥーーーーッ!!?(また生まれ変わってる!!?)」

「あら元気ねっ」

「ああ、嬉しいよ」

 

 一瞬動揺するも心を落ち着かせ冷静に戻る。また違う世界に転生したのかと思ったがどうやら違いそうだ。

 

 俺は上を見上げた。そこには天井に張りついたカタツムリ……でんでん虫がいた。

 

 どうやら俺は同じ世界でまた生まれ変わったらしい。なぜそうなったかは今は分からない。だが……。

 

『ふふっ、ぼくの従者なら頑張って毛布をかけてよね』

 

 最後に聞いたあの言葉を思いだし俺は新たに決意する。

 

 ええ、頑張りますよ。鬼姫様……。どれだけ時間をかけようとまた必ず貴女の元へ戻ります。

 

 

 

 あなたにもう一度毛布をかけるために。

 

 

 

 

 

「産まれたのならとっとと働くえ。このノロマめ」

 

 

 …………ゑゑ?

 

 




どうも皆さんもしロマです!

前作以来ですね!またこうして投稿できるようになって喜ばしい限りです!
以下はこの話の補足として主人公が食べた悪魔の実を教えちゃいます!

【ツギツギの実】
死亡後、黄泉の国から現世に降り生き返る点はヨミヨミの実と一緒だが、同じ肉体に戻るのではなくこれから産まれてくる赤子の中からランダムにその記憶を引き継ぐ能力。
基本、他殺や自殺で能力は発動するが海蝋石で能力が発動しない時や寿命で亡くなる場合は能力は発動せずその命は潰える。

また会いましょうでわでわ~~!( ´ ▽ ` )ノ

ツギツギの実の◯◯人間 ◯◯が決まらないので投票にします!

  • 転生人間
  • 引継ぎ人間
  • 受継ぎ人間
  • 魂継ぎ人間
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