あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
アニワン見れなかったです……。orz
それでは続きをどうぞ!( ´ ▽ ` )つ


39話 人の心 下

 ある所に二羽の小さな小鳥がいました。

 

 その小鳥達は、まだ産まれたばかりのか弱い雛鳥。しかし、不幸にもその小鳥達は親鳥に捨てられ飛び方も分からず地べたを這いずり生きることとなりました。

 

 飛ぶこともできない幼い小鳥達は次第に汚れ体は真っ黒になっていきます。とてもまともに生きていけない二羽にとって、これは厳しい現実でありその淡い命が尽きかけたその時でした。

 

 小鳥達の前に1羽の鳥が現れました。

 

 それは嫌われモノの黒いカラス。しかし、誰も助けてくれなかった小鳥達にとってそのカラスは天の助けでした。

 

 その後、カラスの下ですくすくと育ち小鳥達は自分達で飛べるようになり立派に成長しました。

 

 小鳥達はカラスを慕い、カラスもまた小鳥達を大切にしていました。

 

 そんなある日、運命は突然訪れました。

 

 勢いよく雨が降る中、視界は悪くカラスとはぐれてしまいます。

 

 探していると、雨で汚れが落ち黒い体は元の綺麗な姿に戻ります。そして、どこかで物音が聞こえてきました。

 

 音が聞こえる場所へ行くと……カラスが死骸を食べていました。

 

 小鳥は普段のカラスと違う様子に怯え逃げてしまいます。カラスも逃げる小鳥を追いかけます。

 

 カラスはそれが今まで過ごして来た小鳥と知らずに。

 

 カラスから逃げ惑い追い詰められもうダメだと思ったその時、カラスは動きを止め小鳥達を見つめます。

 

 なぜ急に襲わなくなったのか?小鳥には分からなかった。カラスはハッとなり小鳥達をジッと見つめます。

 

 すると、遠くから小鳥達と同じ鳥の群れがやって来てカラスから守ってくれました。

 

 そして、小鳥達はカラスと別れ鳥の群れと一緒に空へ飛び立ちました。

 

 その間カラスは何もせず、少しの間ジッと小鳥達を見続け───姿を消しました。

 

 こうして、小鳥達は鳥の群れに入り新たな仲間達と共に空の冒険へと飛び立つのでした。大切な家族と幸せに暮らして。

 

 ふと、姉の小鳥は思いました。

 

 あの時、カラスが見ていたのは……小鳥達の幸せを願っていたのかもしれないと。

 

 

『幸せの黒い鳥』

著作 : ツムギ・サン

 

 

 

 

 

 ドレスローザ新地「王宮」の最上階。俺がドフラミンゴをぶん殴ると周囲は息を飲み静まり返った。

 

 そんな中、怒りで顔を歪ませるドフラミンゴに俺は呟いた。

 

「別によかったんだ」

「あ……?」

 

 唐突に出てきた言葉の意図に理解できず首を傾げるので説明する。

 

「ぶっちゃけ、お前程度ならここじゃなくてパンクハザードで迎え撃つ事もできた」

「ッ!!!てめェ……!!」

 

 ドフラミンゴの実力なら俺かルフィかゾロで充分対処できる。しかも、たったひとりでやって来るドフラミンゴに対しこちらの戦力は圧倒的……正直、負けるビジョンが浮かばなかった。

 

「だが、そうしなかった。それは何故か……。それは、この先の事も考えているからだよ」

 

 パンクハザードで迎え撃ってしまったらドレスローザで5000を超える傘下を得られず「麦わら大船団」が成り立たなかったから。

 

 後、もうひとつの可能性として原作以上にドフラミンゴがパワーアップしている線も考えていたが……さっきの一連で実力は原作とほぼ変わらないのを理解した。

 

「この先だと?フッフッフッフッ、おれを前にして別の事ねェ……。もう勝った気でいやがるのか……ッ!!フザけてんじゃねェ!!!」

「フザけてねェし、大真面目だ。むしろそれは俺の台詞だろ」

「何ィ?」

「俺をコロシアムに誘導するためだけにくまさんをダシに使いやがって……!!覚悟はできてんだろうなァ?」

 

 今朝、伝電虫でコイツは俺が欲しいものについて「それを知った時のお前の顔を想像すると笑えてくらァ」とかほざきやがった。

 

 俺とくまさんの関係を知っててあんな事を言いやがったんだ。俺がどういう反応をするのか分かってて……!!

 

「結果、お前の想定通り俺は怒り心頭だコノヤロー。お陰で加減できねェわ。まだ後2発も残ってんのに……よ!!」

 

 我慢できず俺は駆け出す。一直線に向かう俺にドフラミンゴは吠える。

 

「頭に乗んじゃねェ!!”蜘蛛(くも)()がき,,!!!」

 

 先程同様に蜘蛛の巣のような糸の盾を作り出す。だが、そんなものでは俺は勿論止まらず盾をぶち破る。

 

 それを読んでいたのか、すぐに壊される事は分かっていたようで今度は後ろへ跳び攻撃を回避した。

 

「は?お前どこに居るのか分かって──!?」

「おれをコケにした事を後悔させてやる」

 

 既にアイツはこのフロアの端に居た。そんな所で後ろへ跳べばどうなるかは一目瞭然。当然のようにドフラミンゴは屋上から落下した。

 

「もう雲もねェのにどうする気だよ!往生際が悪い!逃がすか待ちやがれ!!」

「べッへへ~!!ドフィにこれ以上やらせないねん!!”ベトラn───」

「”ROOM(ルーム),,!!ハアッ!!!」

 

 トレーボルがドフラミンゴを追跡しようとした俺に狙いを定める。しかし、トラ男さんが鼻水を切断し攻撃を阻止する。

 

「コイツはおれが止めておく!お前はドフラミンゴを追え!!」

「グヌゥ~!!おのれロー!邪魔ばかりしてェ~!!!」

「行け!!」

「ああ、任せた!」

 

 俺も屋上から飛び降りドフラミンゴを探す。落下地点周辺にドフラミンゴの姿はない。だから"見聞色"を居場所を確認した瞬間───

 

「ッ!?頭上!!!」

「正解!”五式糸(ごしきいと),,!!!」

「フッ!!」

 

 予想外なことに先に飛び下りたハズのドフラミンゴは何故か上から降ってき俺に攻撃を仕掛ける。咄嗟に反応できた俺はドフラミンゴの振り下ろす腕を蹴り上げ対処した。

 

 そのまますぐに”飛龍翔,,で空中を蹴り距離を取って体勢を整える。そして、相手の動きを見て何故あんな所から現れたのか理解する。

 

「……なるほど、雲がダメなら建物ってか」

「ああ、雲ほど高くは飛べねェがやりようは幾らでもある!!”弾糸(タマイト),,!!!」

「そんな糸屑飛ばしたって効かねェぞ!!」

 

 "武装色"で硬化した皮膚に”弾糸,,が弾かれる。無駄だと分かっているハズだが奴の顔は何故かニヤけている。

 

 不思議に感じていると"見聞色"で背後から敵意を察知し振り返る。そこには2人のドフラミンゴがいた。

 

「今のは誘導か!!」

「「”足剃糸(アスリイト),,!!!」」

 

 寸でのところで"武装色"を纏わせた両腕で2体の蹴りを受け止める。

 

「グッ!……糸人形もいたか!しかも2体……」

「てめェにはもう出し惜しみはしねェ!!!”影騎士(ブラックナイト),,!!!」

 

 ドフラミンゴは更に2体の分身を作り出し本体と合わせ計5人のドフラミンゴが俺の前に現れる。

 

 いや、それ制限無しだったのかよ。お前原作じゃ分身1体しか出してなかっただろ。

 

「やれ!!」

『”四重(クワトロ),,……!!』

「ちょ!?流石に4体同時は……!」

 

 幾ら"武装色"が強いと言えど、あれをモロに食らえば流石に無傷では済まない。

 

 そんな俺を囲うように4体一斉に動いた。後方に燃える糸を伸ばし勢いよく俺めがけ打ち出した。

 

『”超過鞭糸(オーバーヒート),,!!!』

「クソが!ナメんな糸ミンゴ!!」

 

 俺は更に上空へ飛び上がり回避する。そして、悪い笑みを浮かべ刀を抜いて構えた。

 

「ずーっと考えてたことがあるんだが、お前が飛べているのはあくまで糸でぶら下がってるからなんだろ?だったら……その糸が斬れちまったらどうなるんだろうなァ?」

「なッ!?」

「桜木二刀流!!”桜華繚嵐(おうかりょうらん),,!!!」

 

 刀を振るい竜巻を巻き起こす。そして、その竜巻は4体の糸ミンゴを巻き込むと周囲からプツンプツンと糸が斬れる音がした。

 

「今日の天気は晴れのち斬撃の竜巻が発生するでしょう。空中での散歩にご注意ください……なんてな」

『しまっ!?糸が……!!』

 

 ナミのモノマネをしつつ4体の糸ミンゴを見下ろす。体を浮かせていた糸が斬れ浮遊感に襲われる糸ミンゴ達。俺は武器を金棒に切り替え、身動きが取れず落下する奴らに追撃した。

 

「”鬼奈落(おにならく),,!!!」

「ガハッ!!?」

 

 まずは1体!

 

「”(ゴウ)力鬼(リキ),,!!!」

「グギッ!!?」

「グオッ!!?」

 

 続けて2体3体と……!

「チッ!”五式(ごしき)い──」

「遅ェ!!”鳴鏑(なりかぶら),,!!!」

 

 よし!これで4体!

 

 相手の糸より先に俺の金棒が届き最後の糸ミンゴを破壊すると本体の方へと目を向ける。

 

 本体のドフラミンゴは俺から距離を取っており王宮の壁に手をかざしていた。すると、その壁はみるみる糸へと変化する。

 

 ここで俺はさっきの分身体が囮だったことに気づく。

 

「本命はあっちか!」

「フッフッフッフッ!流石だ、こうも簡単に全滅させるとは。だが、最初ッからあれで倒せるたァ思っちゃいねェよ!!”大波白糸(ビローホワイト),,!!!」

 

 王宮の壁は大量の糸となりそれが幾つにも束ねられ俺に襲いかかる。だが、避けられない攻撃ではなく寸でのところで躱す。

 

 放たれた覚醒技は確かに今までよりも威力は感じられた。だが、あまりにも容易に対処できてしまい不審に思う。

 

 その嫌な予感は的中しドフラミンゴの笑みを見た瞬間、俺はその意図を理解した。

 

「よかったのか?避けちまって……!!」

「───ッ!!?」

 

 通過した覚醒の糸は止まらずある場所へと突き進む。それは……下のひまわり畑にいたディアマンテと戦い終え疲弊していたロビン達。

 

「あんの野郎ォ!!させっかよ!!!」

 

 俺は勢いよく空中を蹴り最高速度でロビン達の下へ向かう。そして、刀を抜き糸を斬りつけた。

 

「桜木一刀流!!”桜華一閃(おうかいっせん),,!!!」

 

 何とかギリギリの所で追いつきロビン達を襲う糸を斬り捨てた。

 

「あっぶねーなクソッ!あの41歳が!!無事かお前ら!?」

「ええ、何とか。助かったわ」

「アルガ!」

「アルランド~!」

「アルガ……そうか、君がアルランドか!我々を守ってくれてありがとう。感謝する!」

「どういたしまして……と言いたいけど、まだ気を緩めないで。来るぞ」

 

 ロビン達の無事を確認しつつ俺はドフラミンゴから視線を外さない。ドフラミンゴもまた俺から視線を外さずゆっくりとひまわり畑へ着地した。

 

「ドフラミンゴ……!!」

「レベッカさん落ち着いて。アイツには指一本触れさせないから。それとロビンこれ……」

 

 俺はレベッカさんを宥めた後、今まで着けていたコロシアムの赤いマントをロビンに羽織らせる。マンシュリーのチユチユの能力で背中の傷は完治しているようだが服はボロボロのままだから。

 

「レベッカさん達をありがとう。今は休んでてくれ。アイツは俺に任せろ」

「ええ、そうさせて貰うわ」

「待ってよ!?相手はドフラミンゴだよ!皆で戦った方が……!!」

 

 レベッカさんが慌てた様子で会話に入ってるがロビンはもう安心しきっているようで余裕を持った笑みで答える。

 

「大丈夫よレベッカ。アルガは「任せろ」と言ったのだから。何も心配は要らないわ」

「さっすがロビン、分かってるじゃん!」

「フフン」

 

 ロビンからの信頼に俺は嬉しくなり褒めると気をよくしたのか年端もなく喜ぶ。それでもレベッカさんはまだ納得しきっていない様子だった。

 

「で、でも……」

「レベッカさん、俺がコロシアムで言ったこともう忘れちゃった?」

「え……?」

「ドフラミンゴをブッ倒すの手伝わせてくれって」

「ッ!」

「それに、レベッカさんを泣かせたアイツを殴らねェと気が済まないからな!」

 

 それじゃと言い残し俺は駆け出した。なぜ悠長に会話を待っててくれたのかと思ったが何やら手で腹部を押さえている。

 

 ……ああ、成程ね、と理解するとニヤリと笑う。

 

 どうやら会話をしている時間に少しでも回復するために応急措置をしていたようだ。俺の"武装色"は内部を破壊するので相当堪えてたみたいだな。

 

「どうしたどうしたァ!さっきのパンチが効いたか!?たかが一発の拳でもうグロッキーかァ!?」

「フッフッフッ!まだ戦いはこれからだろォが!!”海原白波(エバーホワイト),,!!!」

 

 ドフラミンゴの足元の地面がたちまち糸へと変化する。すぐに俺の足場も糸に変わったので”飛龍翔,,で空中を駆け抜ける。

 

「落ちろォ!!千本の矢……”羽撃糸(フラップスレッド),,!!!」

「桜木二刀流!!”桜華乱舞(おうからんぶ),,!!!」

 

 "武装色"の覇気を纏った無数の鋭利な糸が俺にめがけ襲いかかる。まさに千本というおびただしい量の矢が俺に降り注ぐが俺も刀に"武装色"を纏わせ迫り来る糸を全て斬り捨てる。

 

 ドフラミンゴの攻撃は全て不発に終わり一気に距離が縮まると今度は守りを固めようとした。

 

「チィッ!!”盾白糸(オフホワイト),,!!!」

 

 左右の地面から糸を出し、それを分厚く束ねて盾の形にして、俺の攻撃を受け止めようとする。さっきの糸の盾と違い”朧突き,,であれを破るのは厳しそうだ。

 

「今度の盾は一筋縄じゃ壊せねェぞ!!!」

「だったら……!!!」

 

 刀を仕舞い金棒に切り替える。そして、能力を発動した。

 

「”降霊(こうれい)鬼火(おにび)」,,!!!」

「ッ!?燃えた!!?」

 

 能力で金棒に蒼い炎を纏わせた。うん、やっぱ糸には炎だよなァ!!

 

「”鬼炎八卦(きえんはっけ),,!!!」

「バ、バカなッ……!!?」

 

 何重にも束ねられた糸の壁は容易く破壊され俺を遮るものは何もなくなった。ゼロ距離まで近づくと今度は拳に蒼い炎を纏わせる。

 

「歯ァ食いしばれ!!”焔突(ほむらづ)き,,ィ!!!」

「ガッ!オ"ォッ!!?」

 

───ドッゴォォオオオン!!!

 

 2発目の拳が炸裂するとドフラミンゴは後ろの王宮の壁を突き破り王宮内へとブッ飛ばされたのだった。

 

 

 

 

 

 ガラガラァ……と何かが崩れる音がする。

 

 何だ?何が起きた?全身が痛い。こんなに痛いのは何十年ぶりだ?特に腹がイテェ……。内蔵どころか骨まで焼けたみてェだ……!

 

 上体を起こすと腹に拳の跡のような火傷がある。そうだ、おれは"鬼の戦漢"に……ッ!!

 

「やってくれるじゃねェか……奴隷小僧がァアア!!!」

 

 こんな屈辱はいつ以来だ?チョーシに乗りやがってェ!!

 

 確かに奴の攻撃は効いた。だが、これぐらいでやられるような柔な鍛え方はしてねェんだよ!

 

「あの野郎、目にもの見せて……」

「若、様……」

「──ッ!!!」

 

 近くで声が聞こえ振り返るとそこには気絶しているシュガーを抱えたモネがいた。その目からは不安や悲しみと言った感情が見える。

 

 その時、おれは一瞬だけ思考が止まり体が石のように硬直した。

 

「さ~て、ラスト一発……ってモネさん!何でここに?」

「アルガ……!」

 

 後ろの城壁の穴から"鬼の戦漢"が追いかけて来た。そして、居合わせたモネを見ると心配した様子で声をかける。

 

 何故ここに?と尋ねたがモネが抱えている少女を見て察した。

 

「シュガーか……。まあ、唯一の肉親だしそうするか」

「アルガ……さっき言ってくれた事は嬉しかった。でも……ごめんなさい。私、シュガーを置いていくなんて……!」

「……ん。正直、シュガーのやった事は許される事じゃない。きっとこの国中の奴らがシュガーを恨んでいるだろう」

「ッ!そう、よね……」

 

 奴の言葉にモネの表情はみるみる曇っていく。今にも泣きそうな顔だったが、奴の次の言葉でその顔は消え去った。

 

「だけど、モネさんの約束もある。やれるだけの事はするよ。だから、この一件が片付いたら全力で身を隠せよ?」

「アルガ!……ありがとう!」

「そんなワケだし、さっさと用事を済ませよう。……オイ、律儀に話終えるまで待っててくれるとは随分余裕だな?またこの時間に回復でも……ん?」

 

 奴はおれに視線を戻すがさっきまでと様子が違い少し困惑している。そして、ここでようやくおれの体は動いた。

 

「ホントに何もしてねェ……。どういうつもりか知らんがこのまま行くぞ?」

「フッフッフッ、黙って聞いてりゃあ好き勝手言いやがって。モネはともかくシュガーはおれのファミリーだぜ?許可もなしに連れ去るんじゃねェよ!」

「関係あるかよ。お前らはこれから解散すんだから。それに、俺は海賊だぜ?欲しいものは、奪っていく!!」

「ほざけェ!!!」

 

 おれは直ぐ様足元の床を糸へと変化させる。

 

「まずは動きを封じてやる!!”荒浪白糸(ブレイクホワイト),,!!!」

 

 奴の周囲から大量の糸を出し、津波のごとくうね動き奴を包み込む。よし、これで動きを封じた。

 

「串刺しになりやがれ!!”大波白糸(ビローホワイト),,!!!」

 

 螺旋状に束ねた糸に拘束されている敵にめがけ先端を鋭くした糸の束を飛ばす。

 

 あのまま圧縮しても奴はきっと倒せないだろう。だからここで追撃を───

 

「桜木二刀流……」

「───ッ!!?」

 

 糸の中から声が聞こえおれは警戒心を上げる。そして身構えると……。

 

「”紅枝垂(べにしだれ)双極輪(そうぎょくりん)」,,!!!」

 

───ズッパァァアアン!!!

 

 奴を包み込んでいた糸どころか今追撃をかけた糸までまとめて紅色の斬撃に掻き消されてしまった。

 

 今の攻撃は見覚えがある。確かおれがパンクハザードに向かう途中に襲われた……まさかあの時の攻撃は奴の!!?

 

「さて、これでラストだ」

「ッ!?しまっ──」

「耐えろよ。"武装色"「硬化」!!”降霊(こうれい)鬼火(おにび)」,,!!!」

 

 奴は拳に"武装色"と蒼い炎を纏わせた。1発目と2発目の合わせ技がおれに向かって来る。間違いない……これを食らえばタダでは済まない!

 

 すぐに回避しようと身を引こうとした瞬間──

 

「最後は──モネさんの分だッ」

「──ッ!!!」

 

 奴の言葉と同時におれの視界にモネとシュガーの姿が映った。すると、先程と同じ様にまたもおれの体は硬直してしまう。

 

 何故かは分からない。だが、不自然なほど体が動かなかった。それはおれがダメージによるものでもなければ、奴の気迫に押された訳でもない。

 

『若様……どうして……!』

『俺はその前に友達を泣かしたお前にケジメを取ってもらうだけだ』

 

───ただ、この拳だけは絶対に避けられない……いや、()()()()()()()()と思った。

 

 

「”煉獄(れんごく)朧突(おぼろづ)き,,!!!!」

 

 

 おれの腹にメリ込んだ瞬間、頭上高く打ち上げられ勢いが止まらないまま天井を突き破っていった。

 

 

 

 

『ボロボロだな。ここはゴロツキ共の溜まり場だぞ。ガキが二人して何故こんな場所にいやがる?』

『……わから、ない』

『そうか、分からねェか。……お前ら行く宛はあんのか?親は?』

『……ない。ずっとふたり』

『じゃあウチに来るか?』

『え……』

『おれのファミリーに加えてやるって言ってんだ』

『ふァみ……りー?』

『"家族"って意味だ』

『ッ!かぞく……。かぞく!』

『フッフッフッフッ!何だそんな顔もできんじゃねェか。来るものは拒まん!おれは"家族"を裏切らねェ。着いてきな!』

『あ、あの……』

『何だ?』

『あなたのなまえは……?』

『おれか?おれはの名はドンキホーテ・ドフラミンゴ。───この海の王になる男だ』

 

 

 

 

 

「ウオッ!?床からミンゴが飛び出してきた!!」

「しかも相当ダメージを負ってやがる。まさか鬼屋がここまでやるとは……」

 

 ……何だ?チッ、少し意識が飛んでやがった。

 

 空まで打ち上げられたおれは落下中に意識が戻るとすぐに体勢を直し床へ着地する。すると目の前には麦わらとローがいた。どうやらさっきの攻撃で屋上に戻されたようだな。

 

 トレーボルは……二人に倒されたらしく奴らの後ろで伸びていた。

 

「アルガが来ねェってことはもう3発殴ったんだな。ウシッ!ほんじゃこっからはおれがブッ飛ばしてやる!!」

「待て麦わら屋。奴を倒すのはおれだ」

「いいやおれだ!」

 

 おれが手負いだからか目の前でケンカを始める二人。コイツら完全に舐めてやがる……!!

 

 どいつもこいつもおれの思い通りに動きやがらねェ……アァ腹ただしい!

 

 目の前のローといい、ヴァイオレットといい……このおれを裏切りやがって!!!

 

 おれはファミリーを()()()()は絶対に許さねェんだよォ!!!

 

 おれは目の前に映る全てに対し怒りを覚える。そして血管がぶちギレそうになったその時───

 

『若、様……』

 

「───ッ!」

 

 アァ……そういう事か。

 

 ここでおれは何故さっき体が動かなくなったのかを悟る。

 

「裏切り者……か」

 

 おれは"裏切り者"を絶対に許さない。なら、モネ(アイツ)を裏切ったおれ自身も……。

 

「何だアイツ?急に大人しくなりやがった」

「気をつけろ。奴の雰囲気が変わった」

「……何、別に大した意味はねェ」

 

 さっきまで激情に駆られ思考が単直的なっていたが不思議と今は頭がクリアになり冷静さを取り戻していた。

 

「おれと言う存在を、見つめ直してただけだ」

 

 一度切れた関係は戻らない。それはファミリーの繋がりとて同じ。おれはアイツの想いを裏切った。だから殴られた。

 

 だが、おれがやる事は変わらねェ……ケジメを付けた今、最早おれを縛るものはなくなった。ここからは好きにやらせて貰う!

 

「フッフッフッフッ!そうさ、おれはおれのやりたい様にするだけ。まずはてめェらをブチ殺して、下の連中も皆殺しだァアア!!!」

「来るぞ!!麦わら屋!!!」

「おっしゃ!!ブッ飛ばしてやる!!!」

「さァ来い!!ロー!!!麦わらァ!!!」

 

 おれは周囲の床を糸に変え戦闘態勢に移る。目の前の敵を消し去るために。

 

 

 

 

 

 ドフラミンゴをぶん殴った後、俺はゾロ達と合流してすぐ別れた。そして、ある場所へ訪れていた。こんな状況下でも周囲の人達に気を使う必要がない静かになれる場所……。

 

 そう、俺は今ドレスローザ地下の交易港にいた。

 

 ここならもう人もおらず配慮とか気にする心配はない。心置きなく用事を済ませられる。

 

「してアルガ殿。何用で拙者達をここへ連れてきたのだ?今上ではゾロ殿達が「鳥カゴ」を止めようと頑張っておられる。ならば拙者達も早く助太刀せねば!!」

 

 用事のためにここへ連れてきたひとり、錦えもんさんは俺との合流後ゾロを置いていったことを気にしてソワソワしている。

 

「ごめんね錦えもんさん。でも、俺がここに来た理由は上だと()()()の時民間人に被害が出ると思ったからなんだ」

「被害?何ゆえ……?」

 

 首を傾げる錦えもんさんにここへ来た理由は説明する。

 

「俺はこの国でひとつ決めていた事がある。それは本来この先の未来で死んでしまうとある人の運命を変えるため」

「運命を変える……?すまぬが、話が入ってこないでござる」

「要するに、ここで遺恨の決着をつけるって事さ」

 

 ここへ連れてきた理由であるカン十郎に視線を向ける。カン十郎はどういう意味なのか分からないと言った感じで困惑する。

 

「決着?それがしには何の事だか……?」

「……20年前、ワノ国は大きな戦が起きた」

「「ッ!!?」」

 

 まるでホントに知らないような素振りに埒が明かないと考えた俺は語り出す。突然の語り部にふたりは困惑しつつも聞き覚えのあるワードに反応し耳を傾ける。

 

「ア、アルガ殿……いったい何を……!」

「お前らおでん率いる赤鞘達は百獣海賊団に挑み、そして破れた。敗因は多々あるが一番の理由は動向を知られていたから。何故、動向を知られていたかは……もう分かってるよな?」

「ッ!!や、やめてくれ……!ア、アルガ殿!そもそもだ!何故貴殿がそれを!!?」

 

 突然己の過去を第三者の口から聞かされ気が動転し始める錦えもん。

 

「認めたくない気持ちは分かる。だが、嫌な事実から目を背き続ければ今度はおでんだけじゃ済まなくなる。向き合わなきゃならねェんだ!お前らの誰かが……裏切ってるって事実によォ」

「ッ!!!」

 

 俺の悲しげな顔を見て錦えもんは黙ってしまう。そして、向け合えなかった事実を叩きつけられ錦えもんさんは悲痛な表情で胸を押さえる。

 

 だが、俺の次の言葉で食い縛っていた口が大きく開いた。

 

「そして、その裏切り者が誰か俺は知っている。そいつは今……ここいる」

「なっ!?そ、そんなバカな事を申すな!!我々は長年苦楽を共にした仲間でござるぞ!!……そのような事は……決して……!」

「錦えもん!落ち着くでござる!おい!おぬしは先ほどの剣士の仲間ではござらんのか!?何故それがし達にこのような世迷い言を!!」

「お前の家名を知っているからさ」

「……ッ!!な、何を……申して……」

 

 カン十郎は明らかに同様を隠せずにいた。その様子を見て錦えもんは更に困惑する。

 

 その2人に対し俺はハッキリと告げた。

 

 

「なァ、もう観念して白状したらどうだ?カン十郎……いや───黒炭カン十郎!!!」

「「───ッ!!!?」」

 

 

 黒炭、その名を聞き2人は思考が止まったように動きが固まってしまう。それは2人にとって切っても切れぬ縁だから。

 

「く、黒……炭?カン十郎が……?そんな訳ござらん。カン十郎は、拙者達と共にあの釜茹での処刑場で……!」

「カ……カカ……」

「……?カ、カン十郎……?」

 

 衝撃的な事実を聞き受け止めきれない錦えもんだったが、顔を手で覆い肩を震わせるカン十郎は高らかに笑った。

 

「カーーーッカカカカ!!!!」

「ッ!!?」

 

 突然の変わりように錦えもんは目を丸くする。カン十郎は笑った後錦えもんに視線を向ける。狂喜染みた笑みを浮かべながら。

 

「なぜ……おれ達を疑わなかった?」

「え……」

「20年前のあの合戦で……おれ達の動きを読んでいた百獣海賊団。奴らを見てわかっていたハズだ!!なのにお前はしなかった!!人一倍情が強かったお前は向き合うことを恐れて無意識に避けたのだ!!!」

「よ、よせ……カン十郎……!」

 

 錦えもんは次第に涙を流し崩れるように地面に膝を突いてしまう。

 

「もう一度聞く!なぜおれ達を疑わなかった!?おかしかった筈だ!!ずっと!!!何もかも!!!」

「カン十郎ォォオオオオ!!!!」

 

 カン十郎の言葉で全てを理解してしまう。疑いたくなかった仲間へと信頼……そして、裏切られた悲しみ、悔しさ、怒り、様々な感情が混ざり合い情緒が不安定になってしまった錦えもんは無造作に刀を抜きカン十郎へ斬りかかった。

 

「おおっと!」

「おのれェ……!!おのれおのれェ!!!カン十郎!!!拙者はお前の事を……ずっと仲間だと思っていた!!信じていた!!!それをよくもォ!!!」

「カカカカカ!!よもやおれもここで正体がバレるとは思わなかった。この名を明かすのはもっと大きな舞台で御披露目する予定だったが……地に堕ちたおれには、この人目もない地の底こそがお似合いの舞台……か」

 

 錦えもんの刀を大きな筆で受け止めていたカン十郎はそのまま払いのけ後ろへ下がり距離を取る。

 

「ところで……おい、そこの小僧。何故おれの正体を知っている?」

「今、ここで教えるつもりはない。俺はただ、ここでお前を野放しにすれば間違いなく死人が出るからそれを止めたいだけだ」

 

 お前がワノ国に戻って今持っている情報や奇襲作戦をバラせば……康イエが犠牲になってしまうからな。

 

「フゥム……まあいい。どの道、バレてしまったからにはお前らはここで消さねばならん。大人しく死んでくれ!」

 

 完全に本性を現したカン十郎は話しながら足元に鶴の絵を描いており、地面から鶴が飛び立つとその背中に乗りこんだ。

 

「ヌゥ!何だあの絵は!!拙者の知るカン十郎の絵ではござらぬぞ!?あやつめ隠しておったな!!」

「カッカッカッカッ!さァおでん様と同じあの世へ誘ってくれる!!”墨雲(すみぐも),,!!」

 

 空中へ逃げたカン十郎は髪を筆に見立て空中に墨の雲を描く。その雲はみるみる広がり俺達の頭上を覆った。

 

「マズイ!錦えもんあの雲から降る雨に気を付けろ!!大量の針だ!!」

「なんと!?」

「降れ"墨の矢"……”浮世夕立(うきよゆうだ)絵図(えず),,!!!」

 

 頭上に立ち込める雲から墨でできた針が雨のように降り注ぐ。

 

 硬度は中々だが俺の"武装色"なら防げる。しかし、それだと錦えもんが危ないから俺は防御ではなく攻撃に出た。

 

「錦えもん少し離れてろ。桜木二刀流!!”桜華繚嵐(おうかりょうらん),,!!!」

 

 俺は刀を構え斬撃の竜巻を放つ。それにより俺達に降り注いだ墨の針を撒き散らしそのまま墨の雲ごと掻き消した。

 

「おお!アルガ殿お見事!!」

「あやつめ!おれの絵を……ッ!?」

 

 あっという間に雲を消され苛立ったいたが、俺が空中まで飛んでいくとまさか接近してくると思わなかったのか途端に慌て出す。

 

「桜木一刀流!!”桜華一輪(おうかいちりん),,!!!」

「ウオッ!?しまった鶴まで……!!」

 

 一気に近付いた俺はカン十郎の乗る鶴を真っ二つに斬った。すると鶴は実体が消え絵に戻りカン十郎はそのまま落ちていった。

 

「カン十郎ォォオオオオ!!!」

「グッ!?ぐ、なんのこれしき!!!」

 

 地面に着地するとすかさず錦えもんが斬りかかる。カン十郎も負けじと筆で対抗しお互い一歩も引かない鍔競り合いが始まる。

 

「ハァァアアアア!!!」

「ウォォオオオオ!!!……ォ……オォッ!?」

「ぜりゃァアアアアア!!!」

 

 しかし、徐々に錦えもんが押して行き……力負けしたカン十郎は吹っ飛んでいった。そして、後ろに合った廃材に衝突しカン十郎は下敷きになってしまう。

 

「流石だな錦えもんさん!」

「アルガ殿!先程は感謝いたす!!だが、これより先は拙者に任せて欲しい!!」

「ああ、わかった!」

 

 俺は着地して錦えもんの元まで行くと手で突き出されこれ以上は結構だと制された。その目からは涙が見えその決断がいかに辛いものなのかを察した俺は素直に頷いた。

 

 「かたじけない!」と言うと下敷きになっているカン十郎に視線を戻す。

 

「亡きおでん様の為に……カン十郎!!オヌシを今ここで拙者が斬り捨ててくれる!!!」

 

 ガラガラァと廃材の中から立ち上がったカン十郎にそう宣言すると一気に相手の元まで駆け出した。みるみる距離は縮まりその刀が届きそうになった瞬間───ニヤリとカン十郎が笑った。

 

「───ッ!!?」

 

 いったい何故ここで笑ったのか分からなかった錦えもんだったがその答えはすぐに出てきた。

 

 突如、錦えもんとカン十郎の間にある廃材の中からひとりの大男が現れ錦えもんの一太刀を受け止めた。

 

 そして、その大男を見て俺達は驚いてしまう。何故ならその大男は───

 

「いやー、随分と腕を上げたんじゃねェか?錦えもん!まあ、おれには及ばねェがなァ~!」

「…………おでん……様」

「おうよ!でも、これは頂けねェな~。家臣が主君に剣を向けるたァ……お仕置きだ」

「錦えもんさん!!!」

 

 おでんの姿を見た錦えもんは固まってしまい身動きが取れなかった。そこを狙われおでんの刀が振り上げられた。

 

 それを見た俺はたまらず駆け出し振り下ろされるおでんの一太刀を二本の刀で受け止める。

 

「フギッ!?ンギギギ……ガアッ!!!」

「おっとと……へェ、おれの刀を弾いたか。面白ェなおい!!」

 

 俺は何とかおでんの刀を弾くと未だ呆けた錦えもんを担ぎ距離をとった。おでんは俺を見て笑うが逆にこっちは嫌な汗が滲み出る。

 

 今のはマジで危なかった……。

 

「ハァハァ……冗談じゃねェぞ。何だ今の一撃」

 

 所詮ただの絵だと侮った。あの威力、ドフラミンゴの覚醒技と同レベルだったぞ。いや、下手したらそれ以上……!

 

 原作では汚い戦法で赤鞘達を追い込んでいたが……強さも当人とまんまなのかよ!?

 

「ア、アルガ殿……すまなかった!あれが絵だとわかっておきながら……拙者は、手が震えて……!!」

「気にするな、だが気を付けろよ。あのニセモノ……尋常じゃなく強い」

「カーッカッカッカ!!それはそうであろう!!おでん様の強さは家臣だったおれがよくわかっている。故にこの完成度!!この強さ!!!最早お前らに勝ち目など……ない!!!」

 

 カン十郎は高らかに笑うと何かを思い付いたのか更に醜悪な笑みを浮かべる。

 

「そうだ、折角ならもう一体出してお前らには……更なる絶望をくれてやる!!」

「アルガ殿気を付けるでござる!!あやつまだ何かを出す気で……アルガ殿?」

「おい……待て、ふざけるな……反則だろッ!」

 

 錦えもんが声をかけてくるがとても気にかけられる程今の俺には余裕がなかった。何故ならこれから出てくる者が何なのか……見えてしまったから。

 

 もし、さっき距離を取らずカン十郎に向かっていればと俺は激しく後悔した。それ程までにこれから出てくる奴がヤバすぎた。

 

 "見聞色"で見たしまった絶望的な未来。それは……。

 

「オイ、何だこの連中は?まさかこんな小物がおれの相手じゃねェよなァ?」

「カイ……ドウッ!!」

「バカなッ!!?」

 

 確かに転生前からカン十郎の能力は強いなと思ってたけど……流石にこれはチートだろ!!?

 

「……ッ!!!」

 

 …………いや、違う。

 

「カカカカカ!!よいぞよいぞ!その顔だ!!その絶望に引きつった顔……ん?」

「…………フン!」

 

 パチィン!!と乾いた音が響く。それは俺が自分の両頬を引っぱたいたからだ。

 

「アルガ殿!?いったい何を……?」

 

 何……ビビってんだ俺?こんな所で闘うと思わなかったからつい驚いてしまったが……逆に考えろよ。

 

 こんなニセモノ()ごときに臆してる様じゃ……とても本物(カイドウ)には敵わねェだろ!!!!

 

「悪い、少し弱気になってしまった。もう大丈夫だ」

「だ、だがどうする!相手はあの二人ですぞ!!?」

「それについては考えがある。だが、それはあの二人にどれだけ食らいつけるかがカギになる。気合い入れろよ?」

「真か!!ならば、アルガ殿のお言葉を信じてみよう。いざ!!!」

「行くぞォ!!!」

 

 気合いを入れ直すと二人同時に駆け出した。

 

 今言った通り、冷静に考えてみたらこの状況は何も希望がないワケじゃない。確かに、相手はあのおでんとカイドウだ。

 

 さっきのおでんの威力からしてカイドウも恐らく強さは本物だ。だが、だからこそ突破口はある。

 

「無謀に突っ込むとは……何を血迷った事を。この二体を相手に勝てると思うてか!!お望み通り蹴散らしてくれる!!!」

「無謀?そうでもねェさ!”降霊(こうれい)呼憑(よびつ)ぎ,,!!!」

 

 走りながら俺の体は淡い光に包まれる。すると次の瞬間俺の姿は消えた。

 

「んお?消えた……な、訳ねェよなァ!!」

 

 目にも止まらぬ速さでおでんの背後をとり斬りかかる。だが、当然のように反応して俺の剣を受け止めた。

 

「おお~!速くなっただけじゃねェ。さっきより力も増してやがる。いいねェ獣の匂いだ!」

「チィ!流石にムリか!!」

「狐火一刀流!!”火柳一閃(かりゅういっせん),,!!!」

 

 俺に向き合ったことで錦えもんに背後を見せたおでん。だが、二本目の刀を抜き錦えもんの攻撃を防ぐ。

 

「おいおい、そんなんじゃおれの首は取れねェぞ?もっと本気で来いよォオオ!!!」

「グアッ!?」

「錦えもんさ──ッ!!!」

「仕方ねェ。てめェで我慢するか。退屈しのぎにはなってくれよ?」

 

 おでんに弾き飛ばされた錦えもんに気を取られているとようやく重い腰を上げたカイドウが金棒を振り上げて俺に迫り来る。

 

「一発でオチんじゃねェぞ」

「マズッ!!?」

 

───ズドォォオオオオオン!!!! 

 

 振り下ろされた金棒は地面にぶつかると亀裂が入り大きな深い溝が出来上がる。何とか避けた俺はおでんとカイドウから距離をとる。

 

「身の毛がよだつこの威力……思い出すわ」

 

 俺が20年前食らったあの時と同じだ。クソが……ちょっとトラウマが甦ったじゃねェかこの野郎。

 

「ほう、避けたか。だが……そこで打ち合えねェなら程度が知れ───ッ!!!」

 

 カイドウが言い終える前に俺は金棒を奴の顔面に叩き込んだ。しかし、口から出る血を拭いカイドウはニヤリと笑う。

 

「やればできんじゃねェか」

「当たり前だ。ていうか……効くんだな。俺の攻撃」

 

 そう、カイドウの口から血が出ている。それはつまり……通用したのか。俺の攻撃が……!

 

「ああ、久しぶりだ。おれが痛ェと思ったのは……。だが、だとすりゃあ何だ?それでおれに勝てると思ったか?」

「別にそんなんじゃねェよ。ただ……自信がついた!!」

 

 そして、俺は勢いよくカイドウに突っ込み再び攻撃を始める。途中、カイドウも反撃するがそれを細心の注意を払って回避する。コイツの攻撃を一発でも貰うのは危険だからな。

 

 俺がカイドウと闘っている間、起き上がった錦えもんがおでんと斬り合いを始める。助けに入りたいがとてもそんな余裕はなかった。何せ相手はあのカイドウなのだから。

 

 だが、戦いの最中……俺は違和感を覚える。

 

 何だ?この感じ?俺がカイドウと渡り合っているのは単に俺が強くなったから……ってワケじゃない。

 

 モーションが大きかったり俺の方が動きを先よりして対応できている。これは明らかにおかしすぎる。

 

 ひょっとして……。

 

 俺はひとつ試そうと金棒に覇気を纏わせる。そして、カイドウの攻撃の躱し際に合わせてカウンターを決めた。

 

「”雷鳴八卦(らいめいはっけ),,!!!」

「グッ!!やるなァ」

 

 今の攻撃を見てカイドウは反応できずモロに食らってしまう。一瞬顔をしかめたが痣すら残っておらずダメージは薄そうだ。

 

 しかし、俺の予想は的中し疑惑が確信へと変わった。

 

「興冷め、やっぱお前カイドウじゃねェじゃん」

「何……?」

 

 そうだよなァ。あまりに善戦してたもんで調子に乗ってたけど……本物はこんなもんじゃねェよな。

 

「どういう事だ?」

「所詮、お前は人の記憶から作られた存在だって事さ」

 

 さっきの攻撃を見てコイツはあたかも初見のような目をしていた。あり得ないんだよ。何せこの技は、お前の技なんだから。

 

『おでん様の強さは家臣だったおれがよくわかっている』 

 

 さっきのカン十郎の言葉を思い出し気づいた。こいつらはあくまでカン十郎の描いた絵。つまり、カン十郎の知っているデータでしかコイツらの強さは引き出せないんだ。

 

 おでんと比べてカン十郎が知っているカイドウの情報と言えば龍になった姿ばかりで"人型"での戦闘を知らない。だからこのカイドウは技をひとつも出さなかったんだ。

 

 描いた本人がカイドウをあまり知らないから。

 

 これは俺にとって嬉しい誤算だ。更にそれに加えてさっきの考えも合わせれば……!

 

 いよいよ突破口が見えてみた。そう思っていたら近くで大きな衝突音が響く。振り返ると、錦えもんがボロボロの状態で岩に叩きつけられていた。

 

「錦えもんさん!?」

「ゲホッ!アルガ殿……すまぬ。不覚を取ってしまった」

「何だァ~?もう終わりか?なら次はそこの鬼の兄ちゃんが相手してくれよ」

「チッ、流石にあっちの強さは本物か!」

 

 意気揚々とこちらに歩いて来るおでん。そして、カイドウも金棒を構えると一斉に俺達を襲う。

 

 流石に二人同時はマズイ!?そう思った時……二人の動きが急に鈍った。

 

「……?どういう事だ?いや、それよりも今は!!」

 

 好機と見た俺はすぐに錦えもんを担ぎ二人の攻撃を避ける。鈍ったお陰で何とかなったもののいったいどうして……。

 

「ッ!……なるほど。やっぱ狙い通りになったか」

「アルガ殿?どういう……なっ!!」

 

 俺はある方向を見てニヤリと笑った。その視線この先には……息を切らすカン十郎の姿だった。

 

「欲張ったな。俺達を追い込ませたかったんだろうが……流石に遠隔で2体同時はキツかったんじゃないか?」

「ゼェゼェ……抜かった……!」

 

 そう、カン十郎のこの技は自身の体力を激しく消耗させる。原作でも言っていたのを覚えている。だから俺はわざと戦いを長引かせカン十郎の体力を奪う作戦に出た。

 

 作戦は見事うまく行きカン十郎は既にだいぶ体力を削っていた。

 

「よもやここまでやるとは……!!だが、錦えもんはおでんに手足も出ず!鬼の者もカイドウに致命傷を与えられておらん!ここで一気に畳み掛け……お前らの命をもって舞台の幕引きとしようぞ!!!」

 

 カン十郎は息が絶え絶えになりながらも気力を振り絞り俺達を睨みつける。すると、担いでいた錦えもんがフラフラになって降り立ち上がる。

 

「カン十郎……」

「んん~?何だ錦えもん。遺言なら聞いてやろう」

「拙者、おでん様と斬り合っている最中……不思議と感情が流れてきた」

「……ハア?」

 

 錦えもんの突拍子のない言葉にカン十郎はとうとう頭がイカれたのかと呆れた声を漏らす。だが、錦えもんは至って真面目な顔で見つめる。

 

「何故かは解らぬが……剣を交える度に感じるのだ。オヌシの心が……。不思議よの、先程まであれだけ憎んでいた筈のオヌシに……憐れみすら感じている」

「……ッ!!?」

「故にカン十郎。拙者は改めてオヌシと向き合わねばならぬと思ったのだ」

「……れ……まれッ。黙れ黙れ黙れ黙れェェエエエ!!!何だその目は!?止めよ!!即刻その目を止めよォォオオオオ!!!!」

 

 錦えもんの言葉に、目に耐えきれなくなったカン十郎は怒りに任せておでんとカイドウをけしかける。

 

 さっきまでおでんにボロボロにされていたハズの錦えもんだったが、最早そんなもの眼中になくただその奥にいる元親友を見つめていた。

 

「あれだけ手酷くやられてしまったのに……何故なのか───全く恐くない」

「そりゃお前あれじゃないか?」

「む?」

 

 錦えもんの疑問に俺は応えた。

 

「さっきまでは"自身の憎しみ"で剣を振るっていたけど……"誰かのため"に振るう剣の方が、ずっとずっと重く強いからな」

「──ッ!!!そうか、そうだな。所でアルガ殿。目の前の"写し絵"が少々邪魔でござるな」

「ああ、そうだな」

 

 錦えもんの言いたい事を察した俺は頷き──

 

「早う斬り捨てて先へ参ろうぞ」

「そうだな。おでんは任せた。俺はカイドウをやる」

「承知した」

 

 お互いに合意すると二人して脱力し目を瞑る。そして、次の瞬間──一気に力を解放した。

 

「「───ッ!!!」」

 

 目の前の相手は絵だ。だが、いずれは必ず本物だって斬り倒せるようになってみせる。これから俺達はあんたを越える男になる。

 

(だから、見ててくれ)

『ああ、最後まで見届けてやる。だから、ニセモノのおれやカイドウなんかに負けんじゃねェぞ』

 

 俺達は二本の刀を抜くと同じ構えを取る。

 

「「おでん二刀流!!!」」

 

 そう叫んだと同時に駆け出した。そして、カイドウとおでんの所まで近づいた瞬間、敵の攻撃が降りかかる。

 

 しかし───今の俺達に一切の迷いはなかった。

 

 

「「”桃源十華(とうげんとつか),,!!!!」」

 

 

 俺達の刀が……おでんの刀を、カイドウの金棒を斬り落とす。そして……俺達の勢いは止まることなくおでんとカイドウを斬った。

 

 斬られた二人は実体が消え絵に戻される。それを見ていたカン十郎は目を丸くして驚愕した。

 

「バッ!?バカなバカな!!?あり得ん!!!おでん様だぞ!?カイドウだぞ!!?それなのに……!!」

「あんな事言ってるけど、実際の所どうだった?」

「笑止。あんな紛い物おでん様の足元にも及ばぬわ」

「グッ!!?そんなバカな。だが……事実」

 

 信じがたい決着にカン十郎は騒ぐ。だが、次第に大人しくなり自身の結末を受け入れた。

 

「おれの敗けだ……潔く生き場に華を咲かせようぞ。さあ……斬るがよい」

 

 観念したのか筆を投げ捨てその場に座り込む。まるで処刑を待つ受刑者のように。

 

 そんなカン十郎に錦えもんはは刀を──仕舞った。

 

「……何のつもりだ」

「拙者、この島へ訪れてからアルガ殿に言われたのだ。この国を──この国民をよく見よと……」

 

 そういい錦えもんは語り始める。

 

「それでひとつ気づいた事があるのだ。それは、この島の者達は……我々ワノ国の民達と似ておると言うことに……!」

「なに……?」

「憎しみが憎しみを呼び、それによって必要以上の負の痛みを対象に与え過ぎた。結果、この国の者達は現在おのれの犯した諸行が返ってきておる。自業自得の形でな……」

 

 錦えもんは悟ったような顔で地上にいるであろう人達を見上げた後、カン十郎を見つめる。

 

「そこで拙者は思った。ワノ国も何故ああなってしまったのか。そして、オヌシの諸行を、名を聞いて理解してしまった。我々は……やりすぎてしまったと……」

「オイ……。何だそれは……?今さら、おれ達に対して何かを考えているのか……?………!………~~ッ!!!フザケるなァアアア!!!!」

 

 錦えもんの言葉でカン十郎の何かがキレた。

 

 カン十郎はたまらず立ち上がり錦えもん襟を握りしめ額を擦り合わせ想いをぶちまける。

 

「今さらお前が何かを改めた所で何も変わらぬ!!おれは何者でもない!!あの日、黒炭と言うだけで両親を殺された日からおれは人から怨念へと変わった!!そう、黒炭の怨念は決して消えぬぞォ!!!」

 

 カン十郎の咆哮は止まらない。

 

「おれに流れる黒炭の血が、未だに消えぬ民衆の憎悪を駆り立たせる!おれには戻る場所も!帰りを待つ者も!己の意思も!生きる意味も!何もかも全て否定される!!ならばおれにできることは演じる事のみ!それしか許されぬのだ!!!」

「カン十郎……」

「おれはこれしか生きる術を知らぬのだ!!今さら手を差しのべられても掴む術を知らぬ、他者を欺く術しか知らぬ、己を欺く術しか知らぬ、心を開く術を知らぬ、お主らと…………共に歩む術を知らぬゥ!!!!」

 

 色んな感情が混ざり合い錦えもんに怒鳴り散らしていたが、それでも錦えもんはカン十郎に対し悟る目をやめず見つめ続ける。

 

 その目に耐えきれなくなってか今度は少しずつ下がり出し腰を抜かし尻餅をついて倒れ込む。

 

 そんなカン十郎に錦えもんは近づくと手を差しのべるがカン十郎はそれは激しく拒絶した。

 

「来るなァ!!!来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るなァアアア!!!!それ以上近づくな!!その様な目でおれを見るな!!敵意を消すな!!刀を納めるな!!手を……差し伸べるなァ……!!」

「カン十郎……拙者は……」

「もうよい!!おれは敗けたんだ!ならば後はその刀でおれを斬ればいい!!それで終幕なのだ!!おれは役者として生き、役者として死ぬ!それこそが我が人生の舞台なり!!」

「もう、"役者"じゃないだろ」

「ア"ア"!!?」

 

 俺は一言二人の話に割って入ると予想以上の食いつきでカン十郎が反応しものすごい形相で睨みつける。

 

「役者じゃない?そんな訳なかろう!!!もうおれは───」

「じゃあ、なんでお前は今……泣いてんだよ」

「………………アァ?」

 

 この時、ようやく自身が泣いていることに気がついた。

 

「何だこれは?なぜおれは泣いて……?…………ッ!!!違う!!!おれには何もない!!心も思考も信念も!!」

 

 慌てて確認するがそれを認めようとせずただひたすらに否定し続ける。そして……言ってしまった。

 

「おれには何も残っておらぬ。味方も感情も心すら!おれは──空っぽなのだ……!!!」

 

───ドクン

 

「……空っぽ?から……ぽ……」

 

───ドクンッドクンッ!ドクンッ!!

 

「空っぽ……だとォ!」

 

──や~いや~い空っぽ~!

──あの子じゃない?碌でなし夫婦の子供って。

──このガキ何も持ってねェ。空っぽだな。

 

──俺の人生……ホント中身がねェ……空っぽだ。

 

 

──君は空っぽなんかじゃない!!!!

 

 

 カン十郎が放った言葉。それは俺にとって───踏んではならない地雷だった。

 

「フザけんなァ!!!!」

「──ッ!!?」

「アルガ殿……?」

「空っぽな奴がそんな涙を流すか!空っぽな奴がそんな動じるか!てめェのそれはただ知らないものに臆病なだけの寂しがり屋だ!!いいかよく聞きやがれ!!この世に空っぽな奴なんてなァ!ひとりもいねェんだよ!!!!」

 

 突然の俺の激昂に二人は驚く。しかし、そんな事はお構いなしにカン十郎に近づき怒鳴る。

 

「う、五月蝿い!!お前なんかに解るものか!!おれ達の気持ちが!!ワノ国が産んだ怨念が!!!」

「怨念が消えないィ?ああ、そうさ!確かに失ったモノは戻らない!生まれた憎しみや悲しみは消えない!だけど!……それを未来に繋げちゃいけないんだっ!!!」

 

 俺の言葉に反抗するように声を張り上げるカン十郎だったが、そんなもので俺は止まらなかった。

 

「そうやって繋がる未来はやがてかならず破滅に繋がるから!何も全てを許せなんて無責任は言わない!けど、過去を受け入れ今を変えなきゃお前らの国は前へ進めない!!!亡くなった人達の人生が無駄になる!!!!」

「ッ!!?」

 

 負の連鎖はどこかで断ち切らなきゃいけない。その連鎖の先がどうなるのかは……タイガーさんを見て学んだから。

 

「アルガ殿……オヌシの言葉身に沁みた。お気持ち感謝する」

「錦えもんさん」

「カン十郎、今アルガ殿が申した通り……我々はやりすぎた。そして、その結果が今のワノ国でござる。それにもっと早く気づくべきでござった。カン十郎……否、黒炭カン十郎。最早手遅れなのは承知の上。だが、言わせてほしい───深くお詫びいたす」

「───ッ!!?き、錦えもん……!?」

 

 カン十郎は錦えもんの行動に驚愕する。謝罪と共に行われたのはカン十郎に対する……土下座だった。

 

「や、やめてくれ……そんなもの見せたからと言っておれは……おれはァ……!」

 

 カン十郎は歯を食い縛り決壊したように涙を止めどなく溢れ出る。

 

「おれはもう降りたいのだ。この空虚な舞台を……。そして、錦えもん……おれの舞台の幕を引くのは、お前がよかった!なのに、何故お前は……!」

「親友にござるからだ」

「……ッ!!!」

「一度は激しく憎みもした。だが、全てを知った今、拙者はもう一度……いや、()()()()オヌシと解り合いたい」

「ぎ……錦……えもん……!!」

 

 そういい錦えもんは再び手を差しのべる。そして今度は払いのける事なんてせず……戸惑いながらも恐る恐る手を伸ばし───錦えもんの手を掴んだ。

 

「お前という奴は……!お前という奴は……!!」

「ああ、すまなかった……!オヌシの事を全く知らなかった拙者を……許してくれ!」

 

 カン十郎が見せるその涙は決して演技などではない。心から溢れ出たその涙は、間違いなく本物だった。

 

「終わったな。にしても……フゥー、インターバルを挟んだにせよ()()を使った後で”降霊・呼憑ぎ,,は疲れたな……。消耗が激しすぎる」

 

 ようやく一段落が着き少し休憩しようとしたその時───

 

────ゾクッ!!!

 

「───ッ!!?この感じ……コロシアムの時の!!」

 

 俺は無意識で常時発動している"見聞色"の緊急信号を感じ取った。急いで"見聞色"に集中すると───

 

「マズイ!!錦えもんさん!!!避けろォ!!!」

 

───ズプリッ!

 

 瞬間、俺の体は動いていた。錦えもんは突然俺が背後に立ち何が何だかわからない様子だったが───背中から飛び散る鮮血が頬に付き遅れて事態を理解した。

 

「アルガ殿!!?」

「ガフッ!!」

「この傷は何だ!?刺されたのか!?何故だ!!いったい誰が───」

 

 刺された俺を支え周囲を見渡す。指した犯人が誰なのかと。すると、目の前に一羽の鳥が現れた。

 

「クルッポー」

「……は、鳩?」

「ハァハァ……おい、何でもうお前がここにいんだよ」

 

 俺は鳩の先にいる男に吐き捨てるように言った。いや、マジで何でいるんだよ。確かお前がここ来るのってドレスローザの戦いが終わってからだっただろ。

 

「フ、フハハ……!ようやく会えた。新聞でお前がこの島に来ることは解っていた。なら行かない理由があるまい?なァ……アルガァ!!」

 

 

 男は白いスーツに身を包み、俺の血がベッタリついた指を舐める。そして、ソイツは仮面を外しながら俺の名を呼んだ時全身に鳥肌が立った。何故なら政府側で最も粘着質なストーカーと再会してしまったから。

 

 

「ロブ・ルッチ……!!!」

「アルガ……アルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガアルガ───アルガァアアア!!!!」

「いや、やめろよ!?連呼すんな恐ェよ!!!」

 

 ホント2年前から俺の事執拗に狙ってくるな!どうせならカリファとかステューシーとか綺麗な女性にしてくれよ!!

 

「折角、先に邪魔者を消そうと思っていたのに……庇うとは相変わらず腑抜けた男だ」

「落胆したんなら見逃してくれたりはしねェの?」

「それはない!」

 

 畜生!ハッキリ言いやがって!!

 

「アルガ殿!あやつはいったい!?」

「あー、気をつけろ……アレは強いぞ」

「貴様にそう評価してくれるのは嬉しいが、貴様と闘うのはそこにいるゴミ二人を消してからだ」

「ア"ア"?誰がゴミだコラ……てか、何でコイツらを狙うんだよ」

「見ればわかる。ソイツらはワノ国の侍だろ?此方としてもワノ国の侍は見つけ次第消すように命令を受けている。貴様と同様にな」

「あーはい成程ね」

 

 つまり絶対に見逃さないってワケですかいクソが。

 

 俺は逃げる選択を諦めて刺された腹部を押さえながら錦えもん達の前に立つ。

 

「だったら……先に俺を倒してからにしな。じゃねェと前みたいに逃げられちまうかも知れないぜ?」

「……確かに、あんな思いは二度としたくない」

 

 どんだけ俺と闘いてェんだよマジで……。

 

「それじゃ、仕方ないな。なら──」

「ああ、今ここで──」

 

 

「ブッ倒す!!!」

「ブッ殺す!!!」

 

 

 お互いに宣言すると同時に地面を蹴る。目の前の敵を倒すために。




どうも皆さんもしロマです!
39話をご覧くださりありがとうございます!
この話を振り返って言いたいことはひとつ……。
おのれルッチ!!お前のせいでドレスローザ編3話に収まらなかったじゃないかァアア!!!
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