あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
最初は半年ぐらいで終わる予定だった本作ですが、予想以上に長く続き連載を始めてもう1年が経ちました。
……え?嘘もう1年?早くない??(゚ω゚;)
そんな訳で!今回は連載1周年を記念してエピソード・オブ・ウタを書きました!
それでは続きをどうぞ!( ´ ▽ ` )つ


【連載1周年記念】エピソード・オブ・ウタ

 時は頂上戦争終戦後、"新世界"で白ひげの葬儀を終えた私とシャンクスはレッド・フォース号に戻り船を出した。その間も変わらず私はずっとシャンクスの腕にしがみついていた。

 

「ハハハ!お頭今日もウタと仲がいいじゃねェか!」ムシャムシャ

「そ、そんなルウッ。これぐらい……普通だよォ~♪」テレテレ

「おいルウ、あまり焚き付けるような事を言うのは……」

ハ?何よシャンクス嫌なわけ?」ジ--ッ

「おれの娘サイコー……ハハ」

「んもう♡愛してるだなんて……///」

「言ってないが??」

 

 私が一瞬真顔に戻るとシャンクスは私に愛を囁いてくれた。最後否定した気がしたが気のせいだろう。全く、素直じゃないんだから。

 

「四皇と言えど自分の娘相手にはひとりの父親か……四皇も形無しだな」

「ベック……」

「むしろこれだけウタに好かれてよかったじゃねェか。そもそも、おれ達ァ恨まれる覚悟でいたんだからよ」

「……それもそうだな」

 

 ベックのフォローでシャンクスは苦笑しながらも肯定する。かつて、私をエレジアに置いていった事を言っているんだろう。

 

 ベックの言う通り当時の私だったらシャンクスの事を許せず恨み続けていただろう。でも、今は違う。

 

「フフン、その事に関してはアルガに感謝しなさいよね。アイツのお陰で今の私がいるんだから!」

「アルガ……確かルフィのところにいた」

「そ!私にとって……2人目の友達よ!」

 

 潮風が心地よく吹きなびく髪を押さえる。そして、私は当時の事を思い出していた。

 

 そう、あれは今日みたいに潮風が心地よく吹き───虚無感に苛まれ、ただずっと砂浜で海を眺めていたある日の事……アイツは訪れたんだ。

 

 

 

 

 

 原作が開始するおよそ1年前、俺は今日も元気に航海を続けていた。

 

「アッハッハッハッ!儲け儲け~♪」

 

 くまさんとジニーさんの結婚式から早数年、身長も伸び力もつけたので修行も兼ねて今日も"南の海(サウルブルー)"で賞金首を狩って懐を潤していた。

 

 俺は行き着く島々で襲いかかる海賊共を蹴散らして島の住民に引き渡しその海賊の懸賞金の何割かを報酬として頂いて生計を立てている。

 

 ぶっちゃけかなり儲かる。"偉大なる航路(グランドライン)"じゃないので手応えのある敵はあまりいない。そのクセ安くても数百万から数千万ベリーはあるので何人か倒せばその何割かを貰うだけでも転生前の年収をすぐ上回る。

 

 ひょっとしてワンピ世界で一番割のいい仕事は賞金稼ぎなんじゃないか?億超えの強者と戦わなくても数千万台の賞金首を狙えばすぐ大金が手に入る。

 

「お、遠くに島発見」

 

 船内でホクホクしていると窓から島の影が見えたので外に出て望遠鏡で確認してみる。すると、どこか見覚えのある島だったのでよく目を凝らして見ると……。

 

「えーと……っ!!?あ、あれって……!!」

 

 遠くからでもわかるあの独特な形……間違いない───エレジアだ!

 

 エレジア。それはワンピースFILM  REDの舞台となる島の名前。元々、音楽が盛んな国として有名だったがある日、一夜にして滅んでしまった過去をもつ島だ。

 

 この島は映画特典の40億巻に"東の海(イーストブルー)"、"南の海(サウルブルー)"、"偉大なる航路(グランドライン)"のどこかに存在すると記載されており正確な位置は分からなかったが……どうやら"南の海(サウルブルー)"にあったらしい。

 

 原作が始まるまで後1年。つまり今のウタは……。

 

「あれは……!」

 

 島の浜辺を見るとひとりの少女が体操座りでこちらを見ていた。その面影を見た瞬間その少女が誰かわかった。

 

 赤と白で色分けされている髪の長い少女……ウタだった。

 

 

 

 

「ようこそ……旅の人、かな?……この島に人が来るなんて商船ぐらいだから珍しいね。何もない所だけどゆっくりしていってよ……」

「ああ、ありがとう」

 

 上陸するとウタがこちらへやって来た。俺みたいなただの船乗りが来るのが珍しいようで少し興味を示しているようだ。

 

 …………にしてはだよ?なんだか、めっちゃ暗いんだけど。

 

 いや、理由はわかるよ。映画見てますもん。だからこそ、今のウタの心情を察すると心にくるものがある……。

 

 それに……何故だろう。このウタを見ていると胸がモヤモヤする。

 

「今日はもう遅いし……よかったら泊まっていく?今住んでる所スゴく広くて私ともうひとりで暮らしても部屋が余ってるの」

「それじゃ、お言葉に甘えて」

 

 そういいウタに案内してもらう。こちらとしてはありがたいんだけど……危機感無さすぎない?

 

「あのー、案内してもらって何だけど。誰かも分からない人相手にそんなホイホイと簡単に家に連れてくのは……」

「大丈夫だよ。アナタいい人そうだし。それに───」

 

 足を止めたウタがこちらに振り返る。そこには何もかもどうでも良さそうな……虚ろな瞳で俺を見た。

 

「たとえ悪い人だったとしても……奪うような物なんてここには何もないから」

「……っ」

「ほら行こ」

 

 明らかに生きる気力が欠けてしまっている。俺は一瞬言葉を詰まられてしまう。

 

 そして、立派なお城に着く頃には日が暮れており出迎えてくれたもうひとりの住民、ゴードンが優しい笑顔で歓迎してくれた。

 

「ゴードン、今晩はこの人を泊めてもいいかな?さっき島に来たばかりらしくて……」

「へえ、こんな島に旅人が。いいよ、船旅で疲れているだろう。泊まっていきなさい。私はゴードン、この娘と暮らしているんだ」

「ありがとうございます。俺はアルガと言います。よろしく」

 

 その後、お客さんだからか丁重にもてなしてくれた。とても3人だけでは不釣り合いの長いテーブルに豪華な料理が次々に出されていく。

 

「すっご!」

「珍しい来客だ。だから今日の晩餐はウンと豪華にしたよ。お口に合えば嬉しいよ」

「いえいえ、こんなにいっぱいありがとうございます!では、早速いただきまーす!」

 

 旨い!久々にいただく誰かの手作りの料理はいいなァ~。

 

 俺の食べッぷりを見てゴードンは嬉しそうにする。そうして、食事を楽しんでいると食べ終わったウタは自室へと行ってしまった。

 

「…………」

 

 ウタが退室するとしばらく沈黙が続きゴードンが神妙な顔で口が開く。

 

「アルガ君、だったね……。君はいつまでここにいる予定なのかな?」

「特に決めてませんけど」

「そうか……。出会ったばかりでこう言うのもあれなんだが……ひとつ聞いて貰えないか?」

 

 ゴードンはウタについて語り始める。彼女は過去に色々あり幼い頃からずっとひとりでこの島で育った為に友達と呼べる者がいない。

 

「だから、この島で出るまではあの娘を気にかけてやって欲しいんだ」

 

 頭を下げるゴードンの姿はまさに子を心配する親のようでウタを大切に思っているのがよく伝わってきた。

 

 ずっとひとり……か。

 

 俺も、かつてはそうだったな……。転生する前のあの頃。まだ子供だった俺は両親すら敵に思えてこの世の全てが信じられなかった。

 

 その時にONE PIECEを知って幾分か前向きになったけど、それでもひとりだったことには変わらずいつも心のどこかで"寂しい"と感じていた。 

 

 でも、そんな俺にひとりだけ……。

 

 

『ねえ、ずっとひとりで寂しくない?』

 

 

 俺は頭を下げるゴードンの肩に手を置いた。

 

「ゴードンさん頭を上げてください。俺でよければ力になります」

「ホントかい!?ありがとう!!!」

「いえいえ、一宿一飯の恩と言いますし。俺自身……あの娘は見てて放って置けなくて」

 

 俺が了承するとゴードンは肩を震わせ嬉し涙を流す。俺はしばらく彼が泣き止むまで寄り添った。

 

 俺も今のウタを放っておけない気持ちは同じだったから。だけど、それだけじゃない。

 

 

『ほら、行こうよ!』

 

 

 ()()()なら、絶対こうするハズだから。

 

 だから、覚悟してろよウタ。お前のその虚無顔を当時の笑顔に戻してやる!

 

 

 

 

 

 先日、とある男がこの島へ訪れた。男は旅人だからすぐいなくなると思っていたのだが、何を思ってか男はその日以降も島に滞在し続けた。

 

 そして、最近その男が私の側にいるようになった。これは、今までずっとひとりでいた私にとって戸惑ってしまう変化だ。

 

「ほら、行こうよ!」

 

 最初、断ろうとしたが男は手を掴みそう言って私を連れ出した。ゴードン以外の人と接するのなんて久々過ぎて声を出せずにいわれるがまま男と連れ添った。

 

 しかし、私は悩んでしまう。何を話せばいいのか分からない。どう接すればいいのか分からない。何も変わらない私に彼は声をかけてくる。

 

 この島を案内して欲しいとか普段は何して過ごすのかとか色々聞いてくる。だから私は聞かれたことを淡々と話した。

 

 すると、今度は男のこれまでの体験談を話し始めた。ずっとこの島にいた私にとって彼の話しは新鮮だった。

 

 そんな彼との……アルガとの日々はあっという間に過ぎていきそれが次第に楽しみへと変わっていく。

 

 そうしている内に段々と冷めきっていた私の心に少しずつ温もりを感じるようになった。

 

「今日は島を探検しよう!」

 

「今日は水切りをしよう!」

 

「今日はかけっこをしよう!」

 

「今日は早食いをしよう!」

 

 そう言ってアルガは毎日私を誘う。

 

 最初は戸惑ったが、今では当たり前のように毎日私はアルガと共にいた。不思議とどこか懐かしさを感じそれが何なのか思い出すのに時間はかからなかった。

 

『ウタ勝負だ!!今日もおれが勝つぞ!』

 

 ルフィ……。かつてとある島の小さな村でできた私の友達。彼との勝負で同じことをしていたなと私は小さく笑った。

 

「おっ、何だ笑えるじゃん。初めて見たけどやっぱ可愛いな!」

「え……そ、そう……?」

「ああ、これからもっと笑わしてやるよ」

 

 この日を境にアルガは更に私を元気付けようと奮闘する。時には一緒に釣りをして変な魚を釣り上げたり、直接笑わせようとにらめっこをしたり。

 

 そんな彼との数日はこれまでひとりで過ごしてきた数年間よりもずっと濃く充実した日々だった。

 

 だからだろう。私はいつの間にか笑う回数が増えふとした時に鏡に映る自分を見ると少し明るい顔になっていることに気づく。

 

 なんだか、懐かしいな……こういうの。

 

「ンフフッ」

 

 なぜアルガが私にここまでしてくれるのかは分からない。だけど、この時間をずっと大事にしたい。ずっと続いて欲しい……そう思うようになった。

 

 そう、あの時までは───

 

 

 

 

 ある日の夜、ご飯を食べ終えた私は自室に戻る途中に喉が渇いてしまい再び食堂へと戻る。

 

「あれ?灯りが点いてる。まだ居るのかな?」

 

 食事を終えてからそこそこ時間が経っておりてっきりもう誰もいないものかと思ったが戸の隙間から光が漏れていた。

 

 戸を開けようとするとまだ食堂にいたのか二人の会話が聞こえてきた。

 

「君のお陰でウタはみるみる明るくなってきたよ。ホントにありがとう」

「いえ、気にしないでください。俺がしたいと思っただけなので」

 

 何の話だろうと疑問に思いながら部屋へ入ろうとすると、アルガがいつもと違う真剣な声色でゴードンに話し出した。

 

「……ゴードンさんはどう考えていますか?」

「……?どうとは?」

「ウタの今後についてです。これを……」

「これは……"映像電伝虫"?アルガ君、これをどこで……?」

「以前、ウタとこの島を探検した時に見つけました。ウタはこれをただのカタツムリと思っていたようですが……」

 

 映像……?ひょっとして前にアルガと島の探検で見つけたアレの事かな?最初はあのカタツムリを見た時一瞬だけ表情が固まってたけど……アレに何が?

 

「"映像電伝虫"に録音されていた内容はこの島で起きた惨劇の真実でした」

「──なッ!!?」

「ここエレジアでは──」

「アルガ君ッ!!!」

 

 普段のゴードンからは絶対聞かない程大きな声でアルガの名を叫ぶ。私はついビクッとなってしまった。

 

「それを知って……どうする気だ?」

「ウタのホントの笑顔を取り戻したい」

「何……ウタの?」

「はい」

 

 私……?なんでここで私の名が……?

 

 この島で起きた惨劇。その真実。そして、私の名前……。

 

───ドクン!ドクン!

 

 胸がざわめき鼓動が激しくなる。

 

 エレジアで起きた惨劇なんてひとつしかない。幼い頃私を捨てた男……シャンクスが一夜にしてかつて栄えていたこの国を滅ぼした。

 

 それがあの事件の全て……その筈だ。なのに、"真実"って何……?

 

「この真実は勿論アナタも知っているハズだ。その上で話を戻します。ゴードンさんはウタの今後についてどう考えていますか?」

「どう……なんて考えるまでもない。今までも、これからもずっとあの娘は私が支え続ける……それだけさ」

「本気で……そう思ってるんですか?」

「…………」

「フザけんな!!!」

「──ッ!!」

 

 ゴードンの返答を聞くと少しの間沈黙が続く。しかし、次の瞬間アルガは激怒した。突然の怒声にゴードンは声を詰まらせる。

 

「アンタがこれまでウタを支えてきたのは偉いと思うよ!だがな、ずっとこのままでいいワケないって事はアンタが一番分かってんだろ!!これ以上隠し続けてもあの娘は前には進めない!!どこかで決着をつけなきゃならないんだよ!!!」

「しかし、真実を聞かせたらウタはどうなる!?もう、あの時のような悲しむ顔を見たくないんだ!!!君には感謝しているがウタの事をあまり知らない者がこれ以上口を挟まないでくれ!!」

「いいや挟むね!!」

「何故だ!!?」

 

 ヒートアップする二人は今にも爆発しそうな雰囲気だ。このままじゃマズイと思い二人を止めるために部屋に入ろうとした時、アルガは答えた。

 

 

「ウタの笑顔を見たいからだよ!!!!」

 

 

 この一言で再び部屋が沈黙した。この静寂の中、ゴードンは呟くように口が開く。

 

「ウ、ウタの……?」

「ああ、ウタの時間はあの事件の夜から止まっている。幼い頃のままだ。その時間を再び動かすには真実と向き合って受け止めるしかないんだ。たとえそれがどんだけツラく重いことでも……。そうしないと、過去に縛られているアイツはいつか必ず破局する」

「…………」

「もう既にウタとあの人との間には深い溝ができている。だけど、二人をあのまま別れさせるなんて間違ってる」

「そんなこと……分かっているさ。だけど……」

「ウタがひとりの時……何をしてるか知ってるか?」

「何……?」

 

 アルガが呟くようにゴードンに尋ねる。

 

「この前、ウタの部屋から歌が聞こえてきた。その時に聞いた曲が何か分かるか?シャンクスを思う寂しい歌だったんだよ。窓から海を眺めて」

「……ッ!!」

「表では恨んでいても心のどこかで無意識にホントの気持ちが漏れている。ゴードンさん、ウタは会いたがってるんだよ。シャンクスに……!」 

「そうか、やはりウタは……!」

 

 ゴードンは絞り出すような声を漏らす。

 

 結局何の話なのか分からないけど……だからムカつく。二人して何なのよ……私がシャンクスもまだ?ハァ……?意味分かんない!

 

 胸のざわめきはいつの間にかイラつきに変わり扉の前で憤怒する。そんな中、ゴードンは語った。

 

「……そうだな。私はウタの悲しみと彼との約束を理由に逃げていた。だからか……君がここへ来たのも何かの運命なのかもしれないな」

「彼との約束、ですか」

「ああ……そうだ。君の言う通り私は全て知っている。あの日の惨劇はその"映像電伝虫"の映像通り───"赤髪海賊団"の仕業ではない」

「えっ……」

 

 ゴードンの言葉に反射的に反応してしまった私は咄嗟に扉を開けてしまう。ギィ……と扉の開く音で私の存在に気づいた二人は同時に振り返る。

 

「ウ、ウタッ!?お前、いつからそこに……」

 

 ゴードンが思わず近づこうとした時、足がテーブルにぶつかりその拍子に目を覚ましたカタツムリは目が光ると壁に映像を投影した。そして、その映像には───

 

『誰か!大変だ、トットムジカの話は本当だった!魔王が───トットムジカによってよみがえった魔王が街を破壊している……!』

 

 映像から響き渡る悲痛な叫び。痛み、苦しみ、怒り……そして絶望が。大勢の人達が映像から消えていく。

 

『あ!赤髪海賊団!魔王と戦ってくれるんだ!』

 

 そこに現れた海賊……シャンクスが、エレジアを滅ぼした張本人のハズのあの男が……みんなを救おうと立ち向かっている。

 

 

『この映像を見ている人、気をつけろ!ウタと言う少女は危険だ!あの子の歌は───世界を滅ぼす!!!』

 

 

 その言葉と同時に私の感情は爆発し気づけば走り出していた。

 

「ウタッ!待ちなさい!!ウタァ!!!」

 

 後ろからゴードンの声が聞こえた気がした。でも、止まらない。止まれなかった。

 

 何も考えたくない。だからとにかくいっぱい走って気を紛らわそうとした。心臓の音がうるさい。走りすぎたせいなのかさっきの映像を見たせいなのかは分からない。

 

 分かりたくなかった……。

 

「ハァ……!ハァ……!」

 

 いつの間にか私は海辺まで走っていた。そこで息を切らした私は大の字に倒れ星空を眺める。

 

「……ウ"ゥ!」

 

 綺麗な景色とは裏腹に私の心はぐちゃぐちゃになっている。少しづつ落ち着かせ冷静になろうとするとまたさっきの映像が……言葉が甦る。

 

「違った……エレジアを滅ぼしたのは、シャンクスじゃなかった……」

 

 むしろ悪いのは……。

 

「全部……私のせいだったんだァ……!」

 

 込み上げてきたものが涙となり溢れ出る。全てを知った私はどうすればいいのか分からずただただ泣き続けた。

 

「シャンクスも、ホントは私を捨てたんじゃない……シャンクスは……!シャンクスは私を守ろうと……!なのにィ……なのに私は……ウ、ウゥ……ウワァアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 もう、何が何だか分からない。全ての元凶が私だと理解し……もう、全てがどうでもよくなった。

 

 私が滅ぼしたエレジアにはもう何も残っていない。父親だったシャンクスもここにはいない。私という存在が悪なら、やれる事なんてもう……。

 

「死ぬしか……」

「誰が死ぬって?」

「ッ!!」

 

 突然声が聞こえ勢いよく起き上がるとそこには、アルガがいた。

 

「何よ……」

「追いかけて来た。お前が心配だったから」

「あっそう、なら放っておいてくれない。私はもう、疲れたのよ……」

「…………」

 

 私の言葉にアルガは無言で見つめる。だが、そんなことお構いなしに感情をさらけ出した。

 

「あの映像見たんでしょ?どう思った?幻滅した?失望した?大量殺人をした私を……嫌った?」

「なワケねェーだろ」

「嘘だッ!!!」

 

 アルガの軽い返事に私は頭に血が上った。カッとなった私をアルガは変わらず真顔で見続ける。

 

 何なのよその目は……!目の前にいる私は世界を滅ぼす女なのよ!

 

「ハッ!じゃあ何?私を見て哀れんでるの?……ふざけないで!!今はひとりになりたいの!早くどこかへ消えて!!」

「それはできない。今のお前をひとりにしたら、死にに行く様な気がする」

「だったら何よ!!」

「何だと?」

 

 図星を突かれた私はさらに激昂し感情はヒートアップした。

 

「私にはもう何も残されていないの!なら死んだって構わないでしょ!!最近知り合ったばかりの人がでしゃばらないで!!!」

「止めるに決まってんだろ。だってお前にはまだ残ってるものがあんじゃねェか!」

「何よ!!?」

「ゴードンさん……そして、シャンクスが残ってんだろ!!」

「……ッ!……違う、違う違うゥゥ!!!」

 

 アルガの言葉に一瞬鼓動が跳ね上がるが頭をかきむしり否定する。

 

「エレジアを滅ぼした私をゴードンは恨んでるに決まってる!!シャンクスだって結果的には私を置いていった!!なら私の手にはもう何も残ってないじゃない!!!」

「そんな事はない。ウタ、お前にはまだチャンスがある!」

「チャンス?そんなのある訳ないじゃない!!勝手なことばかり言わないで!!!私の気持ちなんてアルガに分かるハズない!!」

「分かるよ!!」

「何で!!!」

 

 

「俺もそうだったからだよッ!!!!」

 

 

 ヒートアップする言い合いを止めたのは、アルガの思わぬ一言だった。

 

「えっ……」

「俺は昔、親とまともに向き合わなかったせいで本音を言えず父さんは死んでしまった。その後も向き合う大切さに気づいた時には遅くて、母さんも死んで激しく後悔した……」

 

 そういい彼は拳を強く握りしめ震える。アルガの初めて見せる悲痛な目に逸らすことができなかった。

 

「だけどウタ!お前は違うだろ!?お前もシャンクスもまだ生きてる!まだ間に合う……やり直せるんだよ!!今ここで一歩を踏み出さなきゃお前はずっと立ち止まったままだ。だから勇気を出せ!!!」

「で、でも……私は……」

 

 アルガの迫力に押された私は一歩後ろに下がってしまう。彼の言葉が、胸を激しく締め付ける。

 

「初めて会った日もそうだった……。お前はずっと皆が戻ってくるのを待ってたんだろ?」

「ちがっ、私は……」

「本音をさらけ出せよウタ!!!ホントは会いたいんだろ!!だからお前はいつも、ずっとひとりで───海を見つめてたんじゃないのか!!!!」

「───ッ!!!」

 

 私がいつもひとりの時は漠然と海を眺めていた。特に理由なんてなかった。でも、心のどこかで願っていたのかもしれない。

 

 また、シャンクス達に……会いたいと。

 

「さァ、いい加減立ち止まっていた重い足を踏み出そう。お前ひとりが無理なら俺が支える。お前が目指す所まで行けるよう励ましてやる」

「アルガ、私は───」

 

 そう、彼の手を掴もうとした時───

 

───ピュン

 

「危なっ!!?」

 

 咄嗟にアルガが手を引いた。何故そうしたのか、その答えはすぐにわかった。アルガの伸ばしていた手の位置に突如、謎の閃光が飛んできたから。

 

「……ッ!?何……アレ?」

「オイオイ……フザけんなよ。何でアレが……いや、そういやあの状態でも動けてたもんなクソが」

 

 あるものを見て私は畏怖し、アルガは悪態を突いた。私たちの目の前に現れたのは、宙に浮く怪しげなオーラを纏った"楽譜"だった。

 

 

 

 

 

 俺は目の前の楽譜を前に冷や汗が流れる。

 

 冗談じゃねェぞ。楽譜の状態でも動けるのは知ってたがあんな攻撃もできたのかよ。……いや、むしろそれぐらいないと長年封印されておいて処分できなかった理由にも納得がいく。

 

 封印された状態でも手に負えなかったってか?……"魔王"とはよく言ったもんだよチクショウめ!

 

「ウタ……離れてろ」

「でも、あの楽譜なんだが嫌な感じが……」

「大丈夫、俺こう見えて強ェから!」

 

 そういい俺は金棒を手に取り楽譜に向かって駆け出した。

 

「ようやく自分を目覚めさせる奴を見つけたってのにまたどこかへ行ってしまうんじゃないかって焦ったか?だったら俺が永眠させてやるよ!!”鬼鏑(おにかぶら),,!!!」

 

 ガキィン!!と共に俺の金棒が楽譜の前で止まってしまう。まるで硬い何かにぶつかってしまったような。

 

「チィ!バリアも張れんのかよ!!封印状態でそのスペックはおかしくねェか!?って、ぶねっ!!」

 

 舌打ちすると楽譜から至近距離から紫色のビームを発射する。慌てて後ろに飛んで回避しすぐに距離を取った。

 

 すると、今度は楽譜の周りに紫の火球が出現し俺に向かって撃ち出された。

 

「ウオオオオッ!?火も出せんのかよ!?マジで洒落になら……んッ!!?」

 

 次々撃ち出される火球を躱していると、楽譜の周りに魔方陣のようなものが展開され……中から鞭のようにうねるピアノの鍵盤の腕が出現し俺に襲いかかる。

 

「こんッ……のォオオオ!!!」

 

 何とか金棒で弾くが予想外の展開に俺は内心驚きの連続だった。

 

「封印状態だからか、威力は映画よりも全然弱い気がする。……だけど、攻撃手段はほとんど変わらないとかキツすぎんだろ!今ここには俺ひとりなんだぞ!!」

 

 ルフィとシャンクスの同時攻撃じゃないと倒せなかったバケモノに俺ひとりで倒せるのか?いや、こんなのハードモード超えてムリゲークソゲーの類いだろ!

 

 そもそもひとりじゃあ現実世界とウタワールドからの同時攻撃だってできねェんだぞ!どうする?考えろ!このほぼ詰んでいる状況をどう打開する?

 

「アルガ……!ここは私が歌ってアレをウタワールドに!」

「いや待て!アイツはウタワールドと現実世界をリンクし自由に行き来できる。俺が寝ちまったらそれこそ終いだ!」

「そんな!それじゃいったいどうしたら……ッ!アルガ危ない!!」

 

 ウタの警告と同時に"見聞色"で殺気を察知した。すぐにガードをしたが金棒越しからでも鍵盤の衝撃が伝わり思わず苦悶の表情に変わる。

 

「ガッ……!?クソ、なんて威力だよ……いや、力が目覚めた状態だったらこれで死んでたな」

 

 俺はすぐに立ち上がり追撃に備えて体勢を整えるが何も来なかった。不思議に感じたがそもそもアイツは俺に向かって来ていなかった。

 

 楽譜が向かう先は……ウタだった。

 

 

 

 

 

 楽譜の怪物は矛先を私に変えて向かってくる。突然な展開に私は慌ててしまった。

 

「えっ!?私っ!!?」

「おい待てよ!まだ俺は倒れてねェぞ!無視すんじゃねェこの楽譜野郎!!!……ウッ!?」

 

 アルガは助けようと走り出すがすぐにビームが飛んでくるため迂闊に飛び込めずにいた。

 

「クソ!近づこうとするとあのビームが邪魔しやがる!!」

 

 それだけじゃない。距離を取っても火の玉や鍵盤が襲ってきて油断ならない状況だ。それだけでも厄介なのに、全部掻い潜ったとしてもさっき見たバリアのせいでどの道攻撃が通じない。

 

 アルガが苦戦を強いられている間にも楽譜が私へ近づいてくる。その恐ろしさに私は腰を抜かしてしまう。

 

「い、イヤァ……」

「恐がってンのに近づくんじゃねェ!!桜木二刀流!!”紅枝垂(べにしだれ)双輪(そうりん)」,,!!!」

 

 アルガが刀を抜き二つの紅色の斬撃を飛ばす。だが、楽譜の生み出す火の玉で相殺された。

 

 ダメだ、アルガの攻撃が通じてない。なのに、あんなに必死で戦っている。それに比べて私は、見て立つことさえままならないなんて……!

 

 己の非力さに嘆くが状況は変わらない。私は何もできないままただ目の前の楽譜に目を通してしまう。

 

『ウタ…エ』

 

 そして、ズキンと頭痛が起きると頭の中に直接何者かの声が聞こえてきた。

 

「聞こえる、この楽譜の声が……。『歌え』って……」

「ダメだウタ!歌うな!!」

 

 アルガの声が聞こえてくる。決死に叫ぶ彼の意図はなんとなく私にもわかってしまう。今ここで、ここに書かれている曲を歌えば───全てが終わる。

 

 だけど、楽譜の圧力が……逆らう心を蝕んでいく。恐怖に包まれ震える口を開いた。

 

「ッ!!!んな事……させて───ッ!?」

 

 アルガが止めようと再び駆けつけようとしたその時……そこへひとりの男が私と楽譜の前に現れた。

 

 この島に男はアルガの他にあの人しかいない。そう……。

 

「もうこれ以上……この子を悲しませはしない!!!」

「ゴードン!?」

「さァ逃げなさいウタ!!私に構わず……ッ!!」

 

 私の前に立ち塞がったゴードンに楽譜は一瞬震え特大のビームを撃とうとエネルギーを溜めていた。

 

「二人とも!危ない!!」

「キャッ!!」

「ウアッ!!」

 

 絶体絶命の瞬間、アルガが追いつくとビームを放つ直前に一緒に地面に倒れた。ゴードンが立っていた所を特大のビームが通過すると、遠くで直撃した森から大きな爆発が起きた。

 

 その光景を見て遅れて血の気が引く。あんなもの食らったら一溜りもない……。どうすれば……いや、今はその前にゴードンを逃がさないと。

 

「ゴードン!ここは危険だよ!早く逃げて!」

「いいや、私はここに残る」

「何で!!?」

「あの楽譜こそ……このエレジアを、君の笑顔を……何もかも全て奪った元凶だからだ」

「えっ……!」

「君達だけでも逃げてくれ。アレには誰も敵わない……。古より伝わる"魔王"───トットムジカには……!!」

 

 楽譜の正体を聞いた私は驚き楽譜に視線を向ける。アレが、映像に映ってた怪物……。すべての……元凶。

 

 ゴードンは己の罪の重さに涙を流しウタに謝罪する。

 

「アレが、トットムジカ……」

「すまない。本来ならあの楽譜をもっと早く処分すべきだった。それなのに私は音楽を愛す者として、あの楽譜を捨てられなかった!私は愚か者だ!その報いが今、訪れたんだ……」

「違う……ゴードンは悪くない!!」

「ウタ……?」

 

 項垂れるゴードンの肩を優しく手を置きウタは真っ直ぐな目で訴えた。そうだ、ゴードンは悪くない。シャンクスだって……!

 

 私はここで立たなきゃいけない。じゃないと、これまで私を守ってくれた人達に顔向けできなくなる!

 

 今まで恐怖で竦んでいた足を震わせながらも気合いで立ち上がった。

 

『本音をさらけ出せよウタ!!!ホントは会いたいんだろ!!だからお前はいつも、ずっとひとりで───海を見つめてたんじゃないのか!!!!』

 

 アルガの言葉を思い出す。そして、もうひとり……ずっと会いたかった人の言葉を───

 

 

『なあ、ウタ。この世界に、平和や平等なんてものは存在しない。だけどお前の歌声だけは、世界中の全ての人達を幸せにすることが出来る』 

 

 

 わかったよ、シャンクス。その為にはもう、守られるだけじゃダメ。私も……戦うんだ!

 

「エレジアがこんなことになってしまった後も私をここまで育ててくれたゴードンを、私は悪いとは思わない。私、覚悟を決めたよ」

「覚悟……?」

「うん、もうウジウジするのはやめる。そして踏み出すんだ。私がこれから歩む人生を!」

「ウタ……君と言う子は……!!」

 

 先程までの下向きだった顔は消え私の瞳に光が灯る。そして、アルガの隣に立ち楽譜と向き合った。

 

 これまでの過去に決着をつける為に。

 

 

 

 

 

「ねえアルガ、色々と聞きたいことがあるけど今はひとつだけ。あの楽譜について詳しそうだったけど倒す方法とかある?」

「そうだな、まず今のまま攻撃を仕掛けても倒せない。奴を倒すには現実世界とウタワールドから同じ場所に同時攻撃だけだ」

「そっか、なら……私の出番だね」

「ッ!?お前も戦うのか?」

「ええ、逃げたって無駄なことぐらいもう分かってる。だったら、開き直って戦ってやるわ!」

 

 まるで別人のように豹変したウタを見て俺は内心驚いた。これが、さっきまで自分の罪に押し潰されそうになっていたウタなのか?

 

 今の彼女は小さい頃、ルフィと勝負をしていた時のような生き生きとした顔をしていた。

 

「急に頼もしくなったと思えばえらい強気だな。相手はあのシャンクスが倒しきれなかったバケモノだぞ?」

「フフッ、言ったでしょ踏み出すって。私はやりたいことを見つけたから」

「やりたいこと?」

「そう、私は"赤髪海賊団"の音楽家ウタ!なら私の帰る場所は決まってる。そして、背中を押してくれたシャンクスとゴードンのために───私の歌声を世界に届けたい!!」

 

 その時見せたウタの顔は映画の時にも見せた生気に満ち溢れた目をしていた。そして、ここに今……世界の歌姫が完全復活した。

 

「アルガ君!あの子の歌声は、世界中のみんなを幸せにする力を持っているんだ!!頼む、アルガ君!ウタを──全てのしがらみから解放してくれ!!!」

「当たり前だろ」

 

 ゴードンの決死の叫びに俺は当然のように答えた。ゴードンは返事を聞き一層涙を流す。

 

「アルガ、ゴードン!耳を塞いでて……!───!!」

 

 ウタの指示通り耳を塞ぎ、ウタは歌い始める。そして、すぐに後ろへ下がりもう大丈夫だと背中を突いて合図を送った。耳から手を離すとウタはニッと笑う。

 

「もういいよ。今、アイツはウタワールドにもいる。現実世界とリンクして動けるのは私だって一緒なのよ。そして、向こうの世界じゃ───私は最強よ!!」

「流石だな。頼りになる」

「へへーン、まあね!でも、現実世界の私は力不足だから……期待してるわよ」

「任せろ」

「タイミングを合わせてね」

「おう!」

 

 そういい大見栄をはるとウタはゴードンと一緒に下がる。そして、不敵な笑みを浮かべ楽譜と対峙した。

 

「つーワケだ。もう原作開始まで1年もないんだ……ここで原作崩壊なんてさせてたまるかよ。だから───」

 

 さっきまで絶望的な状況だったのに、活路が見えたからか、何でか不思議と……敗ける気がしねェや。

 

 何にせよこれでお前を倒す条件は揃った。待たせたな、こっからは……俺達のターンだ。

 

 

ラスボス(カイドウ)より先に裏ボス(てめェ)をブッ倒して───FILM REDは始まる事なく、エンドロールを迎えてやるよ!!!」

 

 

 勿論、ウタ生存のハッピーエンドでなァ!

 

 俺が宣戦布告すると、楽譜から奇声のような音が響き渡る。そして、周囲にこれまでとは比にならない量の火球を飛ばして来た。

 

「どうしたどうしたァ?倒される可能性が出てきて焦ったかァ?だがな、グミ撃ちはフラグ技だって教えてやるよ!桜木二刀流!!”桜華乱舞(おうからんぶ),,!!!」

 

 俺は"見聞色"で命中する火球だけを見切り次々と斬り捨てる。そのまま剣舞いの動きで前進しトットムジカとの距離を縮めた。

 

 攻撃が当たらず近づいてくる俺に今度はビームを撃ち込もうとエネルギーを溜め始める。それを見て俺は内心ほくそ笑む。

 

 やっぱビームくるか。だがな、その判断は誤りだ。さっきまで嫌ってぐらい見てもう解ってんだよ。それを撃ち出すのに一瞬エネルギーを溜めなきゃならないことは。その隙を突く!

 

「ウタ!俺の合図で攻撃しろ!!」

「わかった!」

「桜木一刀流奥義!!”一刀(いっとう)桜漸閃(さくらぜんせん),,!!!」

 

 超速を超えた神速。”桜華一閃,,を凌ぐ勢いでただ一点を狙い獲物を通り過ぎた。同時攻撃じゃなかったので楽譜はどこも斬られておらず俺の行動を不可解に思ってか一瞬動きが止まった。

 

「どうした?通過しただけで不思議だったか?まあ、確かに斬っちゃいねェけど~」

 

 俺の不適な笑みと含みのある言葉を聞き致命的なミスに気がついた。それと同時に俺は手に1枚の紙切れを見せびらかした。

 

「わりーな。生憎と俺は前世や転生する前からも手グセが悪くてよォ。2度の人生に渡る俺のスリテクを、舐めんじゃねェ」

 

 その紙切れは、楽譜の1枚だった。それに気づいた時にもう遅い。今だ!とウタに合図を送るとウタとの同時攻撃で楽譜は真っ二つに斬られトットムジカの楽譜がこの世から1枚消え去った。

 

 それにより楽譜は発狂するかのごとく周囲の大気を震わせさらに魔方陣を展開させた。勿論、中から鍵盤の腕で次々と飛び出し襲いかかる。

 

「アッハッハッハ~~!!何だキレたか?一丁前に怒る感情を持ち合わせているたァ笑えるねェ~!だったらもっとやってやるよォ!!」

 

 煽るように楽譜に対し挑発しながら攻撃を避け続ける。そうだ、それでいい。もっと怒って理性を飛ばせ!

 

 全神経を研ぎ澄ませろ!コイツを倒すことだけに頭を回せ!!

 

 あたかも優位に立っているように見えるが、戦況は差程変わっていない。むしろ攻撃の勢いが増して苦しい状況だ。

 

 だが、このまま奴を怒らせ続け理性を保てなくすれば……勝機は見える!!

 

「だいたいてめェはやる事がセコいんだよ!何も知らない幼いウタを騙して利用したり!流石は産みの親が「本作唯一の悪役」と評されただけはあるなァ!!よっ!子悪党!!」

「ちょっと!どんどん攻撃の手数が増えてるんだけど!?さっきから何か言ってるの!?」

「煽ってる!もうすぐデカイのぶつけッから準備しとけ!!」

「なるほどね!了解!!」

 

 そうしている間にも攻撃の手を緩めることなく火球、ビーム、鍵盤の腕が襲ってくる。だが、徐々に狙いが定まらず的外れなところに攻撃が行き始めた。

 

 さァて、下準備も頃合いだ。残る問題はバリア。ウタワールドにいるウタは万能の力でどうにでもできるだろうが俺は違う。だが、ここまで来たんだ。さっきのでダメならもっと強力な一撃を食らわせてやる!

 

 ゴリ押し上等!一気に決めるぞ!!

 

 俺は一旦距離を取り体勢を整える。

 

「待たせたな"魔王"トットムジカ。次で最後だ。お前をブッ倒して……終曲としよう!」

 

 楽譜はビームを連発し地面の砂浜を巻き上げ土煙が上がる。その中に俺は身を隠し姿を消した。

 

 どこにいるのかわからなくなると癇癪を起こし特大のビームを撃とうとエネルギーを溜め始める。すると、それを狙ったかのように土煙の中からはためく服の影と二本の刀の輝きを捉える。

 

「桜木二刀流……奥義!!!」

 

 俺の声に反応し楽譜は特大のビームをぶっぱなした。そのまま刀もろともビームに包み込まれてしまったが……。

 

「な~~んてな!」

 

 たった今消し飛ばした者の声が聞こえ、途端に笑い声が響き渡る。

 

「アッハッハッハ!!こんな古典的な罠にハマッちまうとはな!俺はこっちだ!!」

 

 今まで隠れていた俺は楽譜の頭上に姿を表す。囮に使った上着と刀を持っていない俺は金棒を力いっぱい握りしめ"武装色"を纏わせた。

 

「ウタ!!これで決めるぞ!!!」

「ええ!!!」

 

  急いで軌道を変え俺にビームを当てようとするが……遅い!!

 

 

「覇気最大出力!!”鬼龍八卦(きりゅうはっけ),,!!!!」

 

 

 俺の金棒が楽譜のバリアと衝突すると周囲に衝撃と覇気が迸る。拮抗するとビキッとヒビが入る。だが、これ以上壊れることなく俺は更に力を込める。

 

「ダメ、だ……!もっと、もっと俺に力が……!!」

 

 コイツを倒せる力が……欲しい!!!

 

『がんばれ』

 

「──ッ!?誰だ?いや、そんなことよりっ!?」

 

 心の底から懇願した時、突如体中から力が湧いてきた。気のせいか全身が光っている気がする。何故かは分からないが、今はそれよりも!!!

 

「グ、ォォオオオオオオオッ!!!!」

 

 俺が吠えると火花が散っていた火が金棒に広がり蒼い炎を帯びる。すると、バリアのヒビは更に広がり次の瞬間、完全に砕け散った。そして───

 

 蒼炎の金棒が直撃し、楽譜は炎のチリとなって崩れていった。

 

「勝負ありだ」

 

 ……なんてカッコつけたのはいいけど、何で蒼い炎が出てるの?楽譜が燃えてるからいいけど。それにさっきの力はいったい……。

 

 勝利宣言した俺は燃え盛る楽譜に目を向ける。既に楽譜の全てに火が回り勝敗は決していた。もう放っておいても勝手に消滅するだろう。

 

 これ以上ヘタに近づいても反って危険になるだけ。だけど、俺は楽譜に近づいた。

 

 コイツの正体を知っていたから。

 

 映画じゃ一見ただの悪役風に見えたけど、小説版も読んで分かってた。「寂しい」「認められたい」「誰かに見つけてほしい」といった歌を愛する人々の負の感情の集合体。それがトットムジカの正体。

 

「倒しておいて何だけど、最期ぐらいは見届けさせてくれ。お前も───ずっとひとりで寂しかったんだろ?……熱っ!」

 

 燃え盛る楽譜に触れる。勿論燃えてるので手が焼け皮膚の焦げる匂いがする。だけど、それでもコイツを独りで逝かしたくないと思った。

 

「俺さ、実はお前の曲聞いたことあるんだ。ここじゃない違う世界で。そこで最っ高の歌い手が歌ったお前の曲──スゲーかっこよくて大好きだったぜ」

 

───…………ッ。

 

 楽譜は一瞬震えた後、完全に灰となってこの世から消滅した。

 

 

 

 

 

 その後、戦いは終わり日の光が昇り始める。皆のキズを治療し回復した私はゴードンにこの島を出ることを伝えた。最初はゴードンも一緒に行こうと誘っていたが、この島を復興したいと言われ断れてしまった。

 

 寂しかったがお互いにやりたいことを尊重しまた会おうと約束を交わしてアルガと一緒に海へ出た。

 

 私のやりたいことはシャンクスとの再会。そして、自身の歌で世界中の人達を笑顔にすること。

 

 それには何をすればいいのか考える中、アルガはある提案を持ちかけた。

 

「革命軍に入ってみない?」

 

 この提案から私の人生は大きく動き始めた。彼が知る"南の海(サウスブルー)"の革命軍支部へ訪れそこで私を革命軍に引き取ってもらった。

 

 昔、知り合いの結婚式に参加してたらしくその誼みで快く私の件を承諾してくれた。

 

 最初はひとりで不安だろうからとしばらくはアルガも一緒にいてくれたお陰で寂しい思いもなくすぐ革命軍の皆と仲良くなれた。

 

 途中、革命軍のハックって魚の人がアルガと修行したりして向こうも馴染めていることに安心していた。

 

「アナタがハックの言ってた人?アルガ君だったよね!私はコアラ!宜しくね!!」

「コッココッココオオオオッッッ!!?!?!?」

 

 そこに、コアラと言う女の子が現れるとアルガは見たこともないような驚き顔で奇声をあげ気絶した。……え?何で??

 

 そんなこんなで数ヶ月が経った頃、アルガは「そろそろだな」と呟き再び海へ出ようとした。

 

 どうやらアルガは"東の海(イーストブルー)"へ行くらしい。それを聞き私はルフィのことを思い出す。アイツも海賊になりたがっていたしひょっとすれば、いつか会えるかもしれない。

 

「えー!アルガ君"東の海(イーストブルー)"に行くの!?だったらこの手紙を渡して欲しい人がいるんだけどお願いできる?」

「ウフォウッ!?は、はいィ……喜んで……///」

「ホント!?嬉しいありがとう!!」

「オ"ッ……♡」

 

 あ、また気絶した……。結局コアラにはずっと緊張しっぱなしだったわねアイツ。

 

 前に彼女のこと好きなのか聞いてみたけど「違う!!これは"推し愛"だ!!!」とか言ってたけどよく分からなかった。

 

「アルガ……今までありがとう」

「何だよ改まって」

「最後にこんなこと言うのもアレなんだけど……実はちょっと悩んでて」

 

 私は心の中で思い悩んでいたことをアルガに話した。

 

「シャンクスには会いたいけど……今さらどんな顔で会えばいいのか……」

「ウタ……」

 

 悩みを伝えるとアルガはいつものように明るい顔で私を見た。

 

「シャンクスのこと、どう思ってる?」

「どうって……」

「会いたいだけじゃない。他にも色々思ってることがあるんじゃないか?」

「……ッ!」

 

 アルガの言葉に私は図星を突かれる。

 

 そう、ただ会いたいだけじゃない。確かに、今まではずっと私のせいでとか下向きなことばかり考えていた。

 

 だけど、ここで暮らしてきてシャンクスに対し色々思うことが増えてきた。「親なら最後まで傍に居て欲しかった」とか「私を思っての事なのは分かるけど他にもあったんじゃないのか」とか「正直、育て方はゴードンの方が父親っぽかった」とか……。

 

「……理不尽だってことは分かってる。だけど、それでもシャンクスと離れたくなかった。ずっと傍に居て欲しかった!寂しかったし……それと同じぐらいムカつく!」

「だったらもう答えは出てるじゃん」

 

 そういってアルガは拳を突き出した。

 

「一言想いを伝えて一発かましてやれ!」

「うん!」

 

 アルガの言葉で私はスゥっと心が軽くなった。複雑に考えていたことを単純明快な答えを見つけスッキリした私は今度こそ笑顔でアルガの出航を見送った。

 

「やっぱお前は笑顔が一番だよ」

「でしょ、知ってる!」

 

 この会話を最後に私は見えなくなるまでアルガの船を見続けた。

 

 それから私は革命軍で任務をこなしつつ配信を始めた。最初は少数だったがみるみる私の歌声に元気がもらえると喜ぶ者達が増えファンができる。

 

 その内、私の歌声は世界中に届きいつの間にか"革命の歌姫"なんて呼ばれるようになったいた。

 

 こうして時は流れ──頂上戦争の終盤、私は彼の前に立ちはだかる。突然現れた私に警戒した彼だったが、私を見た瞬間表情は一変した。

 

 そんな彼に対し私はこれまでの想いを込めて拳を振り上げこう叫んだ。

 

 

「シャンクズゥゥウウウウ!!!!」

 

 

 ゴードン、アルガ……私、元の場所に帰れたよ。




どうも皆さんもしロマです!
エピソード・オブ・ウタをご覧くださりありがとうございます!
2週間ぐらい投稿できず申し訳ありません。途中まで本作を書いていたのですが、もうすぐ連載1周年なのでせっかくならと思い本編は中断し先にこちらの方を一筆させてもらいました。次回は本編に戻ります。

余談、楽譜は完全に消滅しましたがその魂はまだどこかに潜んでいるとかいないとか。
ではまた会いましょうでわでわ~( ´ ▽ ` )ノシ
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