あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
いつも感想評価、誤字脱字報告、ここすき、お気に入りありがとうございます。
それでは続きをどうぞ!( ´ ▽ ` )つ


41話 過去のケジメ

 ドレスローザを出る日、国中から海軍が押し寄せてくるがコロシアムで出会った猛者達の助力もあり無事ドレスローザを出ることができた。

 

 途中、キュロスとレベッカの親子問題やルフィと大将藤虎の対決などもあったが無事に事が進む。

 

 そして、バルトロメオの船に乗り今ここに総勢5千6百人を超える"麦わら大船団"が結成された。

 

「こ度のご恩に報い!我ら7人!!命全霊をかけて、この「子分盃」!!勝手に頂戴いたしますだべ!!!」

 

 勝手に盃を交わしルフィは怒るが宴が始まるとすぐに機嫌がなおった。そのままドンチャン騒ぎで盛り上る中、俺は今後の保険を考えこれだけは知ってて欲しい情報を伝える。

 

「あーお前ら、これから自由にやるのはいいけど「赤髪海賊団」だけにはケンカ売るなよ?特にバルトロメオ、この中だとお前が一番やらかしそうだからな」

「だべ?「赤髪海賊団」っつーとあの四皇シャンクスだか。何故だァ?さっそく四皇の縄張りの旗を燃やしに行ぐ予定だったのにィ」

 

 この段階から決めてたのかよ!?扉絵でコイツがやらかすのは知ってたが即断即決が過ぎるだろ……。

 

 俺はこの段階で軌道修正ができることに安堵しつつルフィとシャンクスとの関係を教える。ルフィは幼少期にシャンクスと出会い海賊の何たるかを学び、海賊王になると誓った証として麦わら帽子をシャンクスから預かった事など。

 

 二人の関係に興味津々だった皆は聞き終えると納得してもらい「赤髪海賊団」には手を出さないと言ってくれた。

 

「ぶォォおおォオオンッ!!!オ"ラは……オラは何て事を……ッ!!かの四皇……赤髪のシャンクスが、ルフィ先輩の大恩人にして憧れの存在だッだどば……ッ!!!腹ァ裂いてお詫びするだ!!!」

「いいから!わかってくれれば充分だから!その小刀仕舞って!?」

 

 話を聞き終えさっきの発言をヒドく後悔したバルトロメオはたまらずその場で土下座した後懐の小刀で切腹しようとしたので慌てて止める。

 

 そうこうしながら宴を楽しむ。終わる頃には名残惜しさもあったが各々やる事があるため解散した。

 

 サニー号がない俺達はこの船団の中からどの船で航海するかを考えた後、特段予定がなかったバルトロメオの船に乗ることに決めた。

 

 その時、解散時にルフィのビブルカードを各自貰っていく中、ベラミーは他にもモネさんから紙切れを貰っていた。

 

 ん?アレってビブルカードだよな?いったい誰のだ?……て言うかモネさんから何かを受け取るとか妬ましいぞコノ野郎。

 

 ベラミーにジェラっていると向こうの方から近づいてき「またな」と言い去っていった。なぜ俺にだけと思ったがベラミーの何か吹っ切れた感じのいい笑顔を見てさっきまでの嫉妬心は消え俺も「おう、またな」と返した。

 

 そして、俺達はバルトロメオの乗る"ゴーイングルフィセンパイ号"へとお邪魔した。そこで俺達の新たな手配書が飾られており各々確認する。もちろん俺も……おおっ!

 

ONLY  DEAD

「鬼の戦漢アルガ」

懸賞金 : 8億1000万ベリー

 

 一律の5000万アップで大台の8億超え!!CP0のルッチを倒したからもう少し上がるかもと思ってたけど……何か理由でもあるのか?

 

 まあ、8億超えの時点で充分嬉しいが。

 

 隣でゾロが俺の手配書の額を見て「チッ、また負けた」と悔しがっていた。確かこの時点だとゾロは3億2000万ベリーだっけか。

 

 倍以上額に差が出てしまっているが実力はそんなに変わらないのでそこまで悔しがらなくても………ん?

 

 俺は見間違えたのか目をこすりもう一度ゾロの額を確認する。

 

DEAD OR ALIVE

「海賊狩りのゾロ」

懸賞金 : 5億ベリー

 

「ちょっと待て!何だその額?」

「アァ?何だ嫌味か?」

 

 嫌味じゃねェよ。興味だよ。

 

 え?何コイツ?3億2000万じゃねェの?何でコイツこんな額が跳ね上がってんの??

 

「いや、ルフィでさえ1億アップなのに何でお前だけ2億も上がってんだよ。俺がいない間にお前何やった?」

「2年前に5億以上も上がった奴が言ってもなァ……。んー、そんな大したことは別に。ピーカ斬ったり、海軍の連中を斬りまくったり、ロビンを拐おうとした白スーツの仮面野郎をブッた斬ったり」

「それじゃん」

 

 海軍にCP0とか……コイツ俺より闘ってねェか?

 

 そうか、サボさん闘技場落下後すぐバージェスと闘ってたからルフィ達がドフラミンゴの元まで行く間、海軍はフリーの状態だったんだ。

 

 え?つまり大将藤虎含んだ海軍にひとりで闘ってたん?んで、その後にピーカとCP0とも闘ってたと??それドフラミンゴを倒すより難易度高くね?

 

「何だよその目」

「いや別に」

 

  そりゃ2億ぐらいアップしますわ。何なら2億でも安いぐらいだわ。

 

 てか、作者の奴また展開端折ったな。(メタい)

 

「ごめんなさい。なので実は今後上中下じゃなくてもっと小分けに投稿するかどうか検討中……」

 

「それよりも、聞いたぜ?錦えもんから……カン十郎の話」

「……うん」

 

 話題を変えるとゾロの表情が険しくなる。

 

 ゾロの視線に先には海楼石の手錠を嵌めたカン十郎が無表情で椅子に拘束されていた。いくら錦えもんと話し合ったとはいえ奴が犯した諸行は許されることではない。

 

 それを分かっているため錦えもんも渋々カン十郎の方をチラチラと見ていた。

 

 ドフラミンゴを倒した後、錦えもんが説明した時は皆驚いていた。元々、俺達がドレスローザへ来た目的のひとつとしてカン十郎の救出があっただけにこの事実は信じがたいのものだった。

 

 と言っても、現時点で全てを話すことができない錦えもんらはワノ国で共に歩んだ同士が実は敵だったと言うやんわりした説明だったが。

 

「まあ、今のところ殺気どころか生気も感じねェし奴のことは錦えもんに任せるけどよ。ホントによかったのか、一緒に連れてきて」

「うん、今のところは大丈夫だよ。錦えもんさんを信じよう。ケジメを付けるのしてもそれを決めるのは───」

 

『おのれ百獣海賊団……!家族を返せェ!!』

 

───ズキッ

 

「俺達じゃないよ」

 そういい俺は船内から出ていこうとするとゾロに呼び止められてしまう。

 

「オイ」

「……何?」

「ずっと気になってたんだが、お前───避けてるだろ」

「──ッ!!」

 

 ゾロの核心を突いた一言に思わず息を飲んでしまう。俺はなるべくバレないように平静を保ちつつゾロに向き合う。

 

「何のこと?俺は別にゾロを避けてなんて──」

「おれじゃねェ……錦えもんからだよ」

「…………」

「ドレスローザの一件以降ずっと今みてェに避け続けて気づかない訳ねェだろ」

「そんなこと──」

「アルガ殿」

 

───ズキン!

 

 ゾロの的確な指摘を受けていると錦えもんがやって来た。だが、咄嗟に俺は錦えもんから目を逸らしてしまう。

 

「先日の件、改めて礼を言いたい。感謝する。しかし、やはり拙者には疑問が残る。何故貴殿は()()()を知っておったのだ?」

 

 あの事とはカン十郎の事だろう。周りにバレないようにあえて言葉を濁しているが容易に察してしまった。

 

「ゴメン、ここでは話せない。それに、今ここでそれを話すワケにはいかないだろ?」

「ム、そうでござるが……ならばせめてこれだけでも教えて欲しい。───どこまで知っておる?」

 

───ズキンズキン

 

 ああ、まただ……錦えもんの言葉に、視線に俺の胸が痛む。

 

「悪いけどそれも言えない。けど、必ず全てを話すよ……それも含めて"ゾウ"でね」

「アルガ殿……」

「…………」

 

 そう言い残し俺は今度こそ船内を後にした。これ以上追求ができない錦えもんはその場で俺の名前を呟き、ゾロは黙って俺の背中を見続けていた。

 

 

 

 

『へへッ、流石ワノ国だぜ。ただの民家の包丁も捨てたもんじゃねェな。おれのナイフよりよく斬れそうだ』

『や、やめてくれ!それは亡くなった爺さんが打った大事な包丁で──グハッ!!』

『アァ?今何か言ったか?おれは百獣海賊団だぞ。おれの気分一つでこんなボロ屋すぐ燃やししてやってもいいんだぜェ~?オラッ!オラァ!!』

『グホッ!ガハッ!!』

『父ちゃ~ん!!?』

『アナタッ!!?お願いしますやめて下さい!!!』

『チッ、喚きやがってウルセーな。お前もお前だ、肉体労働もロクにできず家で横たわってるような軟弱な男が一丁前に歯向かおうとしやがって……あー、イラつく』

『ハァ……ハァ……』

『んじゃ、こいつは貰ってくわ~。また反抗しやがったら次はマジで一家諸とも焼き払ってやるよ。ギャハハハハ!!』

 

 

 

 

「──ッ!?ウワァアアアアアアッ!!!」

 

 思わず飛び上がるように起き上がる。今は深夜で他の皆は寝静まっていた。

 

「ハァハァ……夢?いや……」

 

 夢ならどれだけよかったか……。

 

「少し、風を……」

 

 全身汗でビッショリになってしまいとても二度寝する気になれなかった俺はじっとしてられずひとり寝室を出て外の空気を吸いに行く。

 

「寒……」

 

 冷たい夜風が体の熱を冷ましてくれる。お陰で動悸も徐々に収まり気持ちを落ち着かせた俺は昼間の事を思い出し苦笑した。

 

「ハハ……カン十郎にどうこう言える立場かよ。どの口が言ってやがる」

 

 俺だって、鬼姫様に会うまでは……。

 

 ()()()だった頃、百獣海賊団として傍若無人な性格だったのを覚えている。今でもあの頃の自分はホントにクソ野郎だった。

 

 だが、所詮それは俺の人格が入る前の話。だから関係ない……そう、何度も思い込ませようとしたが直感的に理解してしまう。あれは俺ではないが俺だ。

 

 

 転生前のクズだった頃の俺そのものだった。

 

 

 ONE PIECEに出会わなければ、()()()に出会わなければ……間違いなくああいう大人になっていただろう。だからこそ、百獣海賊団で好き放題していた頃の俺を他人事とは思えなかった。

 

 勿論、今は違う。でも、だからと言って自分がやらかした事に対してなあなあで済ませていいワケ……。

 

「アルガァ~?」

「えっ!ル、ルフィ……起きてたの?」

「いや~、さっきまで寝てたんだがハラ減って起きちまったからよ、冷蔵庫から肉漁ってた。ウマかった~」

 

 ポンポンと腹を叩き満足気なルフィだったが、俺の顔を見て表情が変わる。

 

「何かあったのか?」

「っ!別に、何でも……」

「じゃあ何で、お前はそんなツラそうな顔してんだよ」

「──ッ!!」

 

 ルフィはこういう時ホントに鋭くなる。やっぱコイツに隠し事はできないな……。

 

 俺は観念し少し間を置いてから重要な部分は濁して伝える。

 

「俺さ、昔決して許されない過ちを犯した」

「過ちィ?」

「うん、"ゾウ"で……その件を皆に打ち明けるつもり……なんだけど」

 

 俺はルフィの真っ直ぐな瞳を見て覚悟を決めた。

 

「ルフィはこれから海賊王になるために四皇のひとり"百獣のカイドウ"と戦う事になる」

「おう!そして必ずブッ倒す!」

「だけど、その前に俺は付けなきゃいけないケジメがある」

「ケジメ……?」

「ああ、そこでひとつお願いを聞いて欲しい」

 

 

 

 

 ゾウに着くと俺達はその巨象の規模に驚いた。原作知識を持っていた俺でも実際に目の当たりにするとその存在感に圧倒されてしまう。

 

 足元へ近づくとサニー号を見つけたのでバルトロメオ達とはここで別れて俺達はゾウの背中へ向けて出発した。

 

 上るに当たって、カン十郎の能力でちゃんとした鳥の絵を描き皆が乗れるサイズの巨鳥を作り出した。もしもの保険としてトラ男さんがカン十郎の心臓を抜き取りヘタな真似ができないようにする。

 

 その時、錦えもんは複雑な顔をしていたがこればかりは仕方がない。そして、ここにもう一名不服そうな方が……。

 

「ロビン?」

「かわいくない……」

 

 そういえば、カン十郎のヘタな絵好きだったね……。

 

 絵を描き終えると再び手錠をかけ能力を無力化する。皆はその巨鳥に乗り一気に飛び上がった。

 

「うひょ~~!はえェ~なァ~~!!」

 

 原作とは違い風を切る速度でぐんぐんと上昇していく巨鳥。楽しげ騒ぐルフィに比べてモネさんは少し不安そうだった。

 

「羽のない状態で空へ飛ぶなんて少し不思議な感じ。少し恐いわね」

「まあ、落ちたらって考えたらそう思っちゃうよね。ウチのウソップなんか……」

 

 モネさんを宥めつつ前にいる人達に視線を向けた。そこには先頭のルフィの後ろで違う叫びをあげている者がひとり……。

 

「ギャァアアア!!?飛びすぎ飛びすぎ!?せめてもうちっとゆっくり飛んでぐれェ~~!!!」

「ギャァアアア!!?そのビックリ顔を見せんじゃないわよォ!?お姉ぢゃ~~ん!!!」

 

 ……訂正、二人でした

 

「お互い世話が焼けるな……」

「そうね……」

 

 二人に呆れつつ空の旅をする事数十分後、原作よりも遥かに早い時間で到着した俺達はゾウの背中へと到着した。

 

 目の前には無理やり抉じ開けて破壊された大きな門があり、そこを通ろうとしたらカンカンと大きな鐘の音が響き渡る。

 

 門の上に監視していた小さなサルがおり俺達を侵入者と判断したようだ。その後すぐに動物……いや、ミンク族に囲まれ一触即発の雰囲気になったがそこへ先に来ていたナミ達がやって来た。

 

「ちょっと!ちょっと!皆ストーーップ!!争う必要はないから!!」

 

 ナミの制止する声で周りの殺気が収まる。そこへチョッパー、ブルックに続き……。

 

「ナミさんの言った通りだクソ野郎共!!……あっ♡ロビンちゅわんモネすわんも久しぶり~~♡♡……と、誰だその子供?」

「誰が子供よ。こう見えて22なんだから」

 

 …………え?何でお前ここいんの!?結婚式の招待はどうした!?あれ?ちょっと待てよ?

 

「ん?どうしたアルガ?おれの顔ジロジロ見て」

「いや別に」

 

 予想外の展開に頭を悩ませるがすぐに答えが出る。

 

 そうだ、ルフィの奴この前のドフラミンゴ戦でサクッと勝てたから原作よりも回復する期間が早まってたんだ。だからサンジが連れていかれる日よりも前にゾウへ着いちゃったのね。

 

 というより、そんな事すら忘れていたなんて……ダメだな。ゾウに近づくに連れ思考が悪い方にばっか行ってる。

 

「お前ら~~!会えてよかったァ!無事にゾウに着いてたみてェだな!」

「ええ、合流できたのは嬉しいんだけど……!」

 

 久しぶりの再会の喜ぶルフィだったが、ナミは慌てた様子で錦えもんの方へ行く。

 

「詳しい事情は後で話すわ!それよりもアンタ達二人はすぐに違う服装に着替えてちょうだい!というか、何でそっちの男は手錠なのよ?」

「それがこっちも色々あってよォ」

 

 ゾロが面倒そうにタメ息を吐く。その後、錦えもんの能力でとカン十郎と共に和服から洋服に替えてミンク族のいる場所へと案内された。

 

 その案内中にお互いの近況を報告する。ナミの方はビッグ・マムの船から逃走後、翌日にはゾウへ着いたが国は滅びミンク族が全滅する寸前だったので急いで治療したらミンク族達に気に入られてしまいスゴいもてなしてくれたらしい。

 

 そして、滅んだ理由がいるはずのないワノ国の人間を探しに来たジャックと言う百獣海賊団にシーザーの毒ガスでやられてしまったと言う胸糞話だった。

 

 故に、ここでは侍の話は厳禁だとか。それを聞いて錦えもん達の服を変えた理由にゾロ達は納得した。

 

「へえ、そのジャックってのは強ェのか?」

「強いよ。ソイツは3人しかない"大看板"と呼ばれる最高幹部のひとり。懸賞金10億の紛れもない強者だ」

 

 ゾロの疑問に答えると周囲はざわめく。ウソップなんか発狂した。

 

「じゅ!?じゅ……10億ゥゥ!!?ドフラミンゴの何倍だと思ってんだよ!!?インフレが過ぎるだろ!!」

「ホウ……手応えがありそうじゃねェか。つーか、お前よく知ってるな」

「まあ、それなりにはね……」

 

 ゾロの視線に堪えきれず目を逸らす。ナミの説明を聞きサンジが改めて錦えもん達に注意する。

 

「そう言うこった。だから錦えもん、お前らはあまり目立つようなマネすんじゃねェぞ?」

「…………」

 

 色々と考えているのかサンジの注意に錦えもんは無言で目を瞑る。

 

 ナミの話を終えると今度は此方の情報を伝える。ドレスローザでSMILEの工場の破壊に成功し、錦えもんの仲間カン十郎と合流できた事。

 

 ここまではよかったが、そのカン十郎が実は自分達と敵対関係だったことを知り今はこうして手錠をかけ心臓をトラ男さんが持っている状態だ。

 

「そんな事がねェ……。モモちゃんこれを知ったらどんな顔しちゃうんだろう……」

「そういやナミ、モモの助はどこ行ったんだ?姿がねェみたいだが」

「ここに来てから気分が悪いのか部屋から出ないの。でも、今はその方が都合がいいのよね」

 

 ワノ国関連で滅んでしまった国の中でできる話ではない。なので、その部分は敢えて伏せ他の情報を話し合いながらミンク族の避難所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 その後、森の奥にある避難所で歓迎された俺達だったが容態が回復した二人の王が目を覚ましたと聞いた瞬間、錦えもんは顔色を変えカン十郎と部屋の奥に身を潜めていたモモの助と共に避難所を飛び出した。

 

 そして一言……。

 

「ゾウの国の者達よ!!二人の国の王に伝えてくれ!!拙者、ワノ国光月家が家臣!錦えもんと申す者!!!都の広場にてイヌアラシとネコマムシを待つと!!!」

 

 錦えもんの言葉にミンク族はざわめき一斉にその場を離れる。仲間達は錦えもんの行動を理解が追いつかず慌てて止めにはいるが錦えもん達の足は止まらなかった。

 

 都の広場まで追いかけるとその中央に3人は待ち構えていた。こうなってしまってはもうどうにもならない。すぐに無理やりにでもサニー号へ帰そうと思っている矢先に二人の王が広場へ降り立った。

 

 次々と国中のミンク族がやって来て広場を取り囲む。絶体絶命なこの状況で息を飲む仲間達だったが……。

 

「同国武人"雷ぞう"を探しに来た!この国に来てはおらぬか?」

「だから!!そいつがいねェから、この国は滅んだんだよ!!!」

「お待ちしていた……」

「えっ……?」

 

 ピリつく空気の中、錦えもんが声を高らかに上げて二人に説く。ウソップが止めようと叫ぶが、ネコマムシとイヌアラシに続きこの場のすべてのミンク族が膝をついた。

 

 

「───雷ぞう殿は、ご無事です!!!」

 

 

『!!!?』

 

 その言葉に仲間達は全員驚愕し開いた口が塞がらなかった。唯一口を開けなかったゾロでさえ目を見開き動揺を隠せずにいる。

 

「そうか無事か!よかった!」

 

 錦えもんはそう言いホッとするとイヌアラシはニコッと笑う。そんな中、ウソップは納得できない様子で泣きながらミンク族に声を荒げる。

 

「おい待て……!おいおい!!雷ぞうはいたのか!!ずっと!全員知ってたか!?…………!!お前らみんな!!!死ぬトコだったんだぞ!!!千年続いた都市が、滅んだんだぞ!!!!」

 

 ウソップの叫びに国中のミンク族は笑い返した。そして、ネコマムシが答える。

 

「ゆガラ達にも秘密ですまんかった。じゃが、ワノ国の光月家と我らは遥か昔より兄弟分。───何が滅ぼうとも、敵に"仲間"は売らんぜよ!!!」

 

 衝撃的な展開に呆気に取られる仲間達。だが、ミンク族の"仲間"を思う気持ちに自然と心が暖まり笑顔になる。

 

「"仲間"、か……」

 

 その中でひとり、カン十郎だけは俯き顔を上げることができなかった。

 

 錦えもんはルフィ達のところへ行くと上半身をさらけ出し背中に刻まれているマークを見せると今まで隠していた真実を告げた。

 

 自分の息子と言っていたモモの助は実は錦えもんの子供ではなく、ワノ国"九里"の大大名「光月おでん」の跡取り、光月モモの助だと。

 

 ミンク族の王二人もまたおでんの家臣であり周囲の反応からして相当な有力者なのは容易に想像できる。

 

「して、錦えもん……何故ゆえカン十郎は錠を付けとるんじゃき?」

「そうだ、せっしゃも気になっていた。教えてくれ」

 

 ネコマムシが疑問に思っていたことを尋ねるとモモの助も便乗する。錦えもんは少し考えた後に答える。

 

「余り知られたくない事ゆえ場所を変えたい。ここは人の目が多すぎる」

「そうか、ならば雷ぞうの所へ案内しよう。あそこなら誰も入ってはこれん。それに、ゆガラらも心配だっただろう」

「エェ~~!!遂に忍者に会えるのかァ~~!!」

 

 イヌアラシの言葉に反応したルフィはいよいよ忍者に会えると感動し目を輝かした。しかし、錦えもんは余り乗り気な様子ではなかった。

 

「ウム……そうだな。これは奴にも教えねばならぬ事……雷ぞうの所まで案内を頼む」

「ああ」

 

 こうして、イヌアラシとネコマムシが先導しワノ国組と俺達"麦わらの一味"とトラ男さん、モネさんとシュガーが雷ぞうの所まで案内された。

 

 場所はゾウの中でも一番大きなクジラの形をした樹の上。そこに隠し扉がありずっと下まで続いている階段を降りると広い空間に出た。

 

 その樹の部屋には壁に大きな家紋が印されておりポツンと大きな石とそこに鎖で縛られている男がひとり。

 

 彼こそがワノ国の忍者、"霧の雷ぞう"である。イメージと違ったビジュアルでショックを受けるルフィ達。だが、忍術は本物であり鎖から解放された雷ぞうはルフィ達に次々と忍法を披露すると拍手喝采された。

 

「モテ期は来ねェが無敵の忍者!!"霧の雷ぞう"只今ァ~~あっ、参・上ォ~~!!!忍!!忍!!!」

『雷ぞう~~~~!!!』

 

 自己紹介も済ませ雷ぞうと盛り上がる中が忍者に興味のない女性陣は石の方に興味を向ける。

 

 中でもロビンは見たことのない"歴史の本文"に興味津々であり、縛られていた石である"ロード歴史の本文"の解読が終わるといよいよ話を進める。

 

 その"ロード歴史の本文"は世界に4つあるとされそれを全て揃え解読すると"ラフテル"の場所が導かれる。それを聞き皆は驚く。

 

 しかし、その内の2つは四皇の"ビッグ・マム"と"百獣のカイドウ"が所持していると聞くと一部は絶望する。

 

 ここまで説明を受けたロビンは何故こんなにも"歴史の本文"に詳しいのか聞くとそれは光月家の一族が作ったものであるからとのこと。

 

 本来、そこに書かれている古代文字の読み書きは代々引き継がれていたが、モモの助が学ぶ前に先代で途絶えてしまった。

 

 そこまで話すと錦えもん達は悔し涙を流しルフィ達に伝えた。

 

「おでん様は……処刑され申した!!!ワノ国の将軍と海賊カイドウの手によって!!!」

『!!!?』

 

 ワノ国にカイドウがいる。その事実を知った皆は衝撃を受ける。そして、処刑されたおでんが残した最後の一言「ワノ国を開国せよ」。

 

 その使命を果たすために錦えもん達は海へ出て共に戦う者達を集めようとしていたとのこと。

 

「しかし……」

 

 ここで錦えもんはカン十郎を見た後で耐え難い真実をモモの助含むワノ国陣営に告げた。

 

「誠に受け入れがたいが……。我ら家臣の中に……裏切り者が見つかった」

「「何だとっ!!?」」

 

 ここへ来て今度はネコマムシとイヌアラシが驚く。錦えもんは俯き淡々と語り始める。

 

「20年前、あの戦で用意周到に待ち構えていた百獣海賊団。あまりにできすぎたあの状況は全てこちらの動向が筒抜けだったがゆえ。そして……その犯人は──」

「もうよい錦えもん」

「ッ!!!」

 

 

 口を震わせながら話す錦えもんの言葉を遮ったのはカン十郎だった。カン十郎は悟ったような目で錦えもんを見た後手錠を付けたままイヌアラシとネコマムシ……そしてモモの助の前へと立った。

 

「このなりを見て薄々感じてはいただろう。そうだ某が……いや───()()が裏切り者だったのさ」

「っ!!?カン、十郎……おぬしが、なぜ……」

 

モモの助がショックを受けるとその瞬間ネコマムシがカン十郎を押し倒す。

 

「フーッ!フーッ!」

「グッ!ネコ、マムシ……ッ」

「何故じゃ……!何故おどれがそないな事をしたじゃきィ!!わしらは共におでん様の家臣として……!!!にゃのに……にゃのにィ!!!」

「よせネコ!!!」

「死に去らせェエエッ!!!」

 

 激情に駈られたネコマムシはそのまま足で組伏せ動けなくなったカン十郎に腕を振り上げる。イヌアラシが止めようとするも声は届かず爪を立てて思いっきり降り下ろした。

 

───バキィィッ!!!

 

 一切の抵抗もなくカン十郎はそれを受け入れようとした。しかし、ネコマムシの手が当たることはなかった。

 

「なっ!?ゆガラ何故っ!!?」

『アルガッ!!?』

「グッ!ウ"ゥ……!」

 

 理由はカン十郎に当たる前に俺が立ち塞がりネコマムシの攻撃を受けたからだ。額から血を流し体が揺らいでしまうがそれでも倒れることなく俺は立ち尽くす。

 

 その光景を見ていたその場の皆が驚愕した。手を上げたネコマムシも、庇われたカン十郎すらも。

 

 これが病み上がりの威力なのか?流石ミンク族……。ノーガードとはいえ危うく気を失いかけた。

 

「そこを退けい!!!これはわしらの問題じゃき!!幾ら恩人の仲間とはいえ邪魔するなら手加減できんぜよ!!!」

「い、や……だね……。確かに、コイツは絶対に許されない罪を犯した。だけど、コイツをこうさせたのは……誰なのか分かってんのか?」

「何をォ……?」

 

 ギロリと見下ろすネコマムシ。だが、俺は一切怯まずその場から動かなかった。そこへ慌てて錦えもんが間に入る。

 

「落ち着つくのだ!!アルガ殿の言う通りカン十郎の行いは万死に値する!しかし!どうかまずは拙者の話を聞いてくれ!!」

「グッ、ヌゥ……」

 

 錦えもんの決死の弁明でようやくネコマムシの勢いが止まる。そして、落ち着かせたところで錦えもんは切り出した。

 

「拙者は……この旅で考えていたことがある。何故ワノ国は今あのような状況に陥ってしまったのか」

「そんなもん分かりきった事じゃけェ!今の"将軍"が……カイドウが……!!」

「そこではない!!もっと、根本なところでござる」

「根本じゃとォ?」

 

 ネコマムシが聞き返すと錦えもんは頷く。

 

「さよう。元を辿れば黒炭家の不正に始まったこの負の連鎖……しかし、執拗に追い込みその連鎖を加速させたのは紛れもない───ワノ国の者達にござる」

 

 不正により粛正された後もワノ国の皆は黒炭と言う免罪符を得たことで今回関係のなかった親族までも次々に手を掛けていった。

 

 その結果、悪魔を産み出してしまった。"将軍"黒炭オロチと言う悪魔を。そして、それはそのままカン十郎にも当てはまる。

 

「幼い頃に目の前で両親を殺され自身の感情が亡くなり、誰かの役者でしか存在意義を見出だせなかったあやつを……拙者はただの裏切り者として見る事ができぬ。モモの助様……貴方はどの様に考えまするか?」

「せ、せっしゃは……」

 

 錦えもんは現状のままではワノ国の行く末が良い方へは進まないことを悟り、モモの助に問いかける。しかし、まだ幼い彼にはどうすれば良いのか分からず……頭を悩ませ俯かせる。

 

 そこへ、モモの助に対して鼻をほじり呆れてタメ息を吐く男が一言漏らす。

 

「何だ、ワノ国の奴らも悪いんじゃねェか」

「ちょっとルフィ!!」

 

 ルフィの辛辣な一言にモモの助はビクッと肩を震わせる。流石に言い過ぎだとナミが肩を掴んで怒鳴るが振り払われてしまう。

 

 そして、モモの助に近づきルフィは言ってやった。

 

「でもよ、だからって悩んでも仕方ねェだろ。一度始めたケンカは止められねェ。モモ!お前はコイツらの大将なんだろ?ならお前が決めろ!!お前は今、何がしてェんだ!!!」

「───ッ!!!」

 

 ルフィを見上げるモモの助の目からじんわりと涙が溢れてくるが袖でゴシゴシと拭き取り、顔付きが変わった。

 

 そのままカン十郎の元まで歩き、堪えるような眼差しで向かい合う。

 

「せっしゃはまだ子どもゆえ、よくわからぬ。だが、錦えもんのはなしをきいて、ワノ国をとりもどすだけではダメだというのは……わかった」

「モモの助……様」

 

 カン十郎は思わず様付けをしてしまう。それ程までに、カン十郎にとってモモの助が大きく見えたのだ。

 

「カン十郎、おぬしが父上を裏切ったことは許せぬ。でも、ワノ国の未来を思うなら……憎んでばかりじゃ……ダメでござるゥ」

 

 目尻に涙を溜め震える声でカン十郎に手を差し出す。

 

「だから、ここで終わりにしよう。せっしゃ達を裏切り敵に情報を密告した罪は消えぬが……憎しみあう思いは……これで、終わりにござる」

「……またれよ。憎しみを、終わらせる?そんな事できる筈がない!!おれはおでん様を……お前の父親を死に導いた張本人だぞ!?何故そんな言葉が出る!?何故……そんな目でおれを見れる!!?」

 

 モモの助は裏切った事に怒っていた。だが、それ以上に国の未来を考え、憎むのではなく許す選択を取った。

 

 だからこそ、モモの助は涙を流しつつもカン十郎に優しく微笑んでいた。そして、差しのべる手をさらに突き出す。

 

「黒炭との因縁はここで終わらねばならぬ。だから、この手をにぎってほしい。そして、ワノ国のモノたちにかわってせっしゃにいわせてくれ。───すまぬ」

「ッ!!?そ、そんな……おれ、は……ッ!!モモの助様ァッ!!!」

 

 カン十郎は決壊し涙が止めどなく溢れ出る。そして、8歳の幼子の手をギュッと両手で握りしめた。

 

 その光景に自然と口が緩む一同。子供の成長は早いと聞くが、ホントに大きくなったな。モモの助……。

 

 内心感心しつつも同時に劣等感を覚える。そして、モモの助はルフィに向き合った。

 

「ルフィ、せっしゃは……カイドウを倒したい!!!カイドウは親の仇でござる……!!できるものならせっしゃが仇を討ちたい!されど、体が小さいゆえ……むりでござる!だから、いっしょにたたかってほしいでござる!!!」

 

 ルフィは真剣な顔でモモの助を見る。そして、すがるように土下座でお願いをしようとしたところでモモの助を止めた。

 

「よくわかった!手ェ組もう!!「同盟」だ!!カイドウの首はおれが貰うぞ!」

「ルフィ!かたじけのうごz──」

「待てルフィ」

 

 ルフィが手を差し出す。モモの助はその手を掴もうとしたが、そこで俺が待ったをかけた。突然横やりが入り皆は不思議そうな顔になる。

 

 だけど、ゴメン……ここで話さなければ全部あやふやになってしまうんじゃないかと思ったから。

 

 モモの助には悪いけど、話すなら……もう、ここしかないんだ。

 

「何だよアルガ。今スゲー大事なところだぞ!」

「ゴメン、だけど……俺はこのままワノ国の人達と戦うことはできない」

「ハァ!?何でだよ!」

「ルフィ、昨日の夜を覚えてるか?ケジメだ」

「ッ!……そうか」

 

 ケジメと言う言葉で察したルフィは短く頷いた。そして、俺は皆を目を向け今日決めていたことを告げた。

 

「俺は今日───殺される覚悟でここにいる」

『ッ!!?』

 

 ルフィを除くこの場の全員が戦慄する。何でアルガがなど呟く声が聞こえる中で、俺は話し始める。

 

「錦えもんさんが全てを話したことで俺もようやく話す時が来た。別にもっと早い段階で話すこともできたが…………俺にその勇気がなかった」

「アルガ殿?どうしたのだ急に……」

「錦えもんさん、あなたは昨日俺に何を知っているのか聞いたね」

「うむ……」

「話す前にその事について謝らせてほしい。実は……ワノ国の事情の全てを俺は知っていた」

「なっ、なんと!!?」

 

 モモの助及びワノ国陣営が驚いた。

 

「何故知っているのか、それを話すに辺り、皆にも俺の食べた悪魔の実について話すよ」

「そういや聞いたことなかったな。お前が能力使って戦うとこあまり見ねェから。それで、お前が食った実ってのは?」

 

 ウソップが思い返しながら聞いてくる。その質問に俺は答えた。

 

「ああ、以前ロビンには話したが俺が食べた悪魔の実の名は「ツギツギの実」。食べた人間は死後どこかで産まれる赤子に記憶ごと魂を引き継ぐ能力」

「引き継ぐ能力……つまりアルガは一度死んでるって事かよっ!?」

「私の能力と類似した能力ですね」

 

 仲間達が騒然とどよめく中、錦えもんはこれまでの俺の言動から何かを察したのか声を震わせる。

 

「アルガ殿……まさか……ッ」

「俺は20年前、この肉体とは違う別の体で海賊をやっていた。そして、そこでお前達と会ったことがある。いや、戦場に居合わせたことがある」

「ッ!!20年前の戦場など……拙者達はあの場しかござらん……!!」

「ああ、そうだ。俺は───」

 

 胸の鼓動が激しくなるのを感じながらも毅然とした態度で隠してきた秘密を告白した。

 

 

「元百獣海賊団だ」

 

 

 俺が告白するとしばらく場は静まりかえり沈黙が続いた。しかし、その目から十分に伝わってくる程驚きが伺えてくる。

 

 だが、それ以上に……。

 

「ネコ!!」

「イヌしっかり押さえてるじゃきィ…。今、わしは理性が飛びかけちょる!!」

 

 フラフラと俺に近づくネコマムシを不審に感じたイヌアラシは肩を押さえる。だが、ネコマムシの怒りが伝わり一瞬怯んでしまう。

 

 そりゃそうだ。この人達にとってあの戦いは昨日のように思い出すだろう。モモの助や錦えもんさん達に至ってはほんの少し前の出来事だ。

 

 "見聞色"を使わずとも、殺気は充分に伝わってくる。

 

「あの頃の俺はクズだった。逆らえないのをいい事にワノ国の人を暴行し略奪だってした。そんな俺が……どんな顔してお前達と一緒に戦えるってんだッ!!!」

「アルガ……」

 

 ルフィが俺の名を呟く。皆の視線が痛い程突き刺さる。恐い、仲間達が今どんな目で俺を見ているのか……恐くて内心震えが止まらない。

 

 幻滅したか、失望したか、嫌われてしまったか……でも、俺は自分の行いに対し責任を取らなければならない。

 

 ケジメをつけなければならない。

 

 だから、俺は己の過去と同様に錦えもん達に目を逸らさず向き合うと、その場で膝を着き頭を下げた。

 

 土下座、俺にできる事はこれしかなかった。

 

「だから、これからお前達に何されようが俺は文句は言わない。それだけの事を俺はしたんだ……」

「アルガッ!お前……」

「…………」

 

 俺の土下座を見て錦えもんは歩み寄る。そして淡々と口を開く。

 

「オヌシの言葉が嘘ではないのは分かる。時に、聞かせてくれないか?」

「何かな?」

「ドレスローザの地下での戦い。貴殿がいなければ、カン十郎が今もこうして我らと共にいることはなかった。元は敵であったハズなのに……何故だ、何故拙者達のためにあそこまでしてくれたのだ?」

「……それは──」

 

 錦えもんの問いかけに俺は頭を上げて答えた。

 

「カン十郎をあのまま別れさせたくないと思ったから」

「そうか……。やはりオヌシは……」

 

 俺の答えに納得したのか、さっきまでの険しい顔が徐々に柔らかい表情に変わる。

 

「その土下座と優しい瞳……。姿は変われど見覚えがある。貴殿は、あの処刑の前夜に現れた者か?」

「えっ!どうして……」

「やはりな、あの百獣海賊団にその様な目をする者など、拙者はひとりしか知らぬ」

「なんと!?あの時の男であったか!」

「ほう!懐かしいにゃあ!ゆガラじゃったか!!」

 

 言葉をつまらせる俺を見て錦えもんは確信した。そして、錦えもんの言葉でイヌアラシや殺気立っていたネコマムシも思い出したように明るい声をあげる。

 

 あれ……何かおかしい。だんだんと殺伐としていた雰囲気が和らいで……?

 

「何をほうけた顔をしておる?」

「ハ……?いや待てよ俺は元百獣海賊団で……」

「ああ聞いた」

「~~ッ!!じゃあ何だよその反応は!?さっきまで俺を憎んでたハズだろ!なのに何で──」

 

 俺は急に変わった空気に堪らずおかしいだろと声が出てしまう。だが、俺が言いきる前に錦えもんが答えた。

 

「オヌシはおでん様が仰っていた者そのものだったからだ」

「……えっ、おでん……さんが?」

 

 ここで錦えもんはあの処刑の前夜に俺が帰った後、どんな話をしていたのか教えてくれた。

 

『おでん様!ホントによかったのですか?あのような名も知らぬ敵に日誌の場所を教えて……』

『いいんだ。アイツは他の連中とは違う気がする』

『所詮は海賊ですぞ?』

『ならおれも一緒だな!わはははは!』

『そんな呑気な……』

『それにアイツの目ェ見たか?正直おれァアイツが海賊って言う方が疑わしい。そんぐれェいい目をしていた』

『目……ですか?』

『ああ、ひょっとするとアイツ近い内にここの海賊辞めんじゃねェか。おれの勘はよく当たるんだ』

『そんな馬鹿な……』

『もし海賊辞めんなら……いづれカイドウを倒す者と共に戦うかも知れねェぜ?』

『お戯れを』

 

 当時の会話を聞き俺は耳を疑った。

 

「おでんさんが、そんな事を……」

「人生何が起こるか分からんものよ。流石はおでん様と呼ぶべきか。だからアルガ殿……もう頭を下げる事はない」

「いや、だけど……!」

「オヌシとこうしてまた会えたのも何かの縁。拙者から改めてお頼み申す。どうか、拙者達と共に戦ってくれんか?」

「───ッ!!!……ああ、此方こそ……よろしくお願い……じま"ずっ"」

 

 錦えもんの申し出に俺は……断る理由が見つからなかった。そんな顔で差しのべられたら……手をとるしかないじゃないか。

 

 差しのべられた手を掴んだ瞬間、俺の中にあった重苦しい感情がスゥーと消えていく。それに合わせ自然と涙が流れた。

 

 

 

 

 俺の抱えていたモヤモヤが消え心なしかスッキリした俺は改めて皆と向き合う事ができた。そして、今度こそワノ国とミンク族の同盟を結ぶのだった。

 

「よォ~~し!!色々あったけど、これで今からおれ達は"忍者海賊ミンク侍同盟"だ!!!」

「長ェな!!」

「忍者いるの?」

『それはいるだろ』

 

 わだかまりも無くなりいよいよカイドウに向けて本腰を入れようと皆で気合いを入れ直す中、錦えもんが尋ねてきた。

 

「そういや、あの夜に申していたお方には日誌を渡せたか?」

「うん、お陰さまで無事日誌は主人に渡せたよ」

「主人~?そういや、アルガって誰かの従者だとか言ってたよな?」

 

 ルフィが思い出したように呟く。

 

「丁度いい、俺の過去を話したしもうひとつ伝えたい。俺の主人について」

「おっ、実はずっと気になってたんだ。聞かせてくれよ~!」

 

 ウソップがワクワクと主人について聞いてくる。他の皆も同じ様子だ。

 

「あ、わたし少しだけ聞いたことある。確か刀を使うようになった理由が主人の命令だったかしら」

「まあ、概ね合ってるけど……。よく覚えてるねナミ。確かそれローグタウンの話じゃなかった?」

「まあね~♪」

 

 ナミが得意気にドヤ顔する。あざといが可愛いなそれ。

 

 そこへウソップが少し慌てた様子で割って入る。

 

「ん?待てよアルガ。ひょっとしてお前の主人ってワノ国の奴なのか?」

「正解、そして俺の主人は当時おでんさんが処刑されたあの場所にいたんだ」

「なんと!?」

 

 思わぬ情報を聞き錦えもんは驚く。

 

「主人はそこでおでんさんに憧れて以降、自分をおでんと名乗るようになった……。俺が刀を使うようになったのも「おでんの従者なら刀を使えるようにならないと」って言われたからだ」

「そんな理由だったのかよ!?」

 

 俺の剣を握る理由に衝撃を受けたゾロはつい声が出てしまう。それを余所に錦えもんは納得した様子で頷く。

 

「成程、だからあの時オヌシも"おでん二刀流"を扱えた訳だな」

「なぬっ!?それは真か錦えもん!!アルガが父上の……!!」

 

 モモの助が俺を見て驚いた。俺が剣を握るきっかけの話に脱線してきたので主人の話に戻す。

 

「まあ、その話は置いといて……俺が言いたいことは、決戦当日はおそらく主人も加勢するってこと」

「アルガの主人が!?オイオイ、大丈夫かよ!?強ェのか?」

 

 ウソップが心配そうな声で聞くが俺は問題ないと答える。

 

「強さは保証するよ。間違いなく戦力になる」

「アルガがそこまで言うなんて……いったい何者なの?」

 

 元々、どんな人物なのか気になっていたナミが聞いてきたので俺は主人の事を皆に伝える。

 

「俺の主人の名はヤマト。カイドウの息子だ」

「へェーそうなのカイドウの…………カイドウのッッッ!!?!?」

「コイツ……今さらっととんでもないこと口喋ったぞ……」

「つーか、息子なら親とは戦えないんじゃ……」

 

 ナミは一度復唱した後、理解が追いついた瞬間慌てて聞き直す。ゾロとウソップも呆れ気味で俺を見てきた。

 

「息子と言っても親子関係は20年前からとっくに破綻してる。おでんと名乗ってからは特に仲が悪くなって主人はいつでもカイドウと戦う覚悟はあるから安心して」

「あららー、そういやモリアに子育てで負けてるって言ってたな」

 

 ウソップが以前俺が言っていたことを思い出しそう呟くと錦えもんが反応する。

 

「親子関係が破綻、か……」

 

 サンジが何か含みのある一人言を呟く。それを余所に錦えもんはモリアと言う名に引っ掛かっていた。

 

「モリア……確か以前ワノ国を襲った海賊の名でござったか。……あっ!!!そうでござる!!ゾロ殿!!オヌシが持つその黒刀"秋水"を今すぐに返すでござる!!!」

「だから、返すも何もこれはリューマから貰ったんだよ!!!」

「ハァ~ッ?嘘を申せ!!リューマは大昔にワノ国で亡くなった侍にござる!!!死人が物を恵むものか!!!」

「あ、その件に関して俺から説明するよ」

 

 何とか錦えもんをなだめると、彼含むワノ国の皆に"秋水"を手に入れた経緯を説明する。前世で百獣海賊団にいた俺の話には信憑性があり、すんなりと信じて貰えた。

 

 当時、ワノ国に攻めてきたモリアはカイドウに敗れた後、リューマの死体と"秋水"を奪い、その後自分のゾンビ兵として部下にしていた。

 

 だが、そこへ現れたゾロがリューマとの戦いに勝ち直々に"秋水"を受け取ったとのこと。そして、リューマの遺体は火葬し遺骨としてサニー号にあると伝えると、錦えもん及びワノ国一同が涙を流した。

 

「グヌゥ……!そんな事があったとは……ッ!!ゾロ殿!重ね重ねこれまでの非礼深く謝罪するでござる!!!そして"刀神"リューマの遺骨も持っていたとは……何と礼を言えばよいかっ!!」

「別に礼なんざいらねェよ!あれはおれが海賊として奪っただけだ!!遺体も火葬して遺骨をワノ国の土に戻す案を出したのはアルガだしな」

「そうは言うけど、ぶっちゃけ"秋水"を受け継ぐって意味じゃゾロが適任じゃね?だってお前リューマの子孫じゃん」

「そうだな、おれがリューマの……………………ん?」

『ン"ン"ン"ン"ッ!!!?!?』

 

 俺がさらっとぶっ込むとゾロは遅れて反応する。そして同時にワノ国の侍達も驚愕した。

 

「オイちょっと待てェ!!お前何さらっととんでもねェ事を言ってやがる!!!その話マジなのか!!?つーか何でそれお前が知ってんだよォ!!?」

「確信したのはウォーターセブンでゾロと稽古した後に話してくれた時だね」

「2年前からかよ!!?だったらもっと早く言えやァァアアアア!!!」

 

 ゾロの怒号が響き渡る。錦えもん達も同意するようにうんうんと頷く。そこで錦えもんはある事に気づく。

 

「ムムッ……!と言うことはゾロ殿は霜月の家系と言うことに!?いやいやいやいや、そんなまさか……」

「確かゾロの祖母が霜月って言ってなかったっけ?祖母の名前は?」

「ああ、結婚する前だな。名前はフリコだ」

「その名は牛マル様の姉ぎみィィイイイイ!!?本物でござるゥゥゥッッッ!!!?」

 

 ゾロに続き今度は錦えもんの叫びが部屋に響き渡るのだった。

 

 

 

 

 その日の夜、同盟を結んだお祝いに宴が開かれた。遠くでメインの肉を頬張るルフィを見ながらすぐ隣でグレープを頬張るシュガーに目を向ける。

 

「おいし~♪ここのグレープ最高だわっ」

「確かに~♪地上より日当たりもいいからかここの果物は格別だなっ。あ、俺も一粒貰っていい?」

「えー、やだ」

「ウソップ~、ちょっといいか~?」

「好きなだけ持っていってください」

「どもども♪」

 

 このようにシュガーと()()()食事しているとロビンとモネさんが此方へやって来た。

 

「フフ、随分と仲良くやってるみたいね」

「私には妹が脅迫されてるようにしか見えなかったのだけど……」

「あ、ロビンとモネさん。2人も食べる?ウマイぞここの果物」

「お姉ちゃ~ん!!あの鬼が虐める~ッ!」

 

 人聞きが悪い。……ん?何やらロビンの様子が……。

 

「アルガ、さっき聞いたのだけど……ゾウへ来る前にルフィにだけケジメの話をしてたようね」

「え、ああ……はい」

「それも、その内容が「自分が何をされても決して手出ししないで。仲間が割って入ろうとしても止めて欲しい」……だったかしら」

 

 ジリジリとにじり寄ってくるロビン。笑顔なのに圧力が徐々に上がっているのは気のせいだろうか。

 

「事前に相談してくれたってよかったんじゃないのかしら?殺される覚悟だなんて聞いて私ホントに心配したのよ?」

「それは……そのォ~……」

「何か言い分でも?」

「そのようなことあろうはずございません。申し訳ありませんでした」

「鬼畜を従わせる悪魔……お姉ちゃんこわい……」

「私もこの時のロビンはまだ慣れないわ……」

 

 本日二度目の土下座。だが、錦えもんの時以上に姿勢を正しくし、そんな俺を見て姉妹が若干引き気味に怯える。

 

 どうしよ、笑顔のハズなのに背筋が凍るように寒い。と言うか恐い……。

 

「あなた前にスリラーバークで言ったわよね?これから無茶しないように頑張るって……ねえ、アルガ」

「ウ"ッ、痛いところを突かれた……」

「全く、次同じ事したらバツを受けて貰うわ」

「はい、スミマセン……」

「ホント、いつもあなた達は賑やかよね。心を安らぐヒマがないわ」

 

 モネさんは少し疲れたようにタメ息を吐く。まあ、分からんでもない。

 

「特に今日は色々あったからねー。海賊王関連の情報が盛り沢山」

「ええ、興味深い情報ばかりだったわ」

「…………」

「お姉ちゃん?」

 

 俺とロビンの会話にモネは静かになる。何も話さなくなった姉を見てシュガーが顔を覗き込む。

 

「何て言うか……改めて、あなた達は本気で"海賊王"を目指しているんだと実感したわ」

「「当然」」

「船長を信じているのね。フフ、羨ましいわ」

 

 モネさんはどことなく寂しげな顔でそう呟いた。そして、シュガーの手を引いて別の場所へと移動した。

 

 まだ、ドフラミンゴに思うところがあるのだろう。長年信じてきたんだ。当然だな……今はそっとしておこう。

 

 ロビンと2人になるが仕切り直して宴を楽しもうと考えた矢先、ある人が俺の前にやって来た。

 

「ロビン殿、少々この男を借りても良いか?」

「ええ、構わないけど……」

「カン十郎?どうした?」

 

 やって来たのはカン十郎だった。だが、相手の顔は宴に似つかわない暗いものだった。

 

「二人で話したい事がある。来てくれ」

「ああ、わかった」

 

 宴で皆が楽しく騒ぎ倒す中、俺はカン十郎と一緒に森を抜け夜空と下に広がる海を眺めていた。

 

「オオ~!こんな高さから海を眺めるなんて空島以来だ懐かしー」

「静かだな……」

「"見聞色"で周りに誰もない場所を選んで来たからね。そっちの方が都合がいいんでしょ?」

「まあな」

 

 珍しい組み合わせだと思う。でも、宴中にカン十郎から誘いがあったので来てみたら、こうして景色を眺める状況になっていた。

 

 沈黙が続くとカン十郎が口を開いた。

 

「何故、あの時言わなかった」

「何のこと?」

「惚けるな。最初っからおれの正体を知っていたお前は気づいてるだろ。このゾウを襲った百獣海賊団は……おれが手引きした事を」

 

 ああ、そう言うことか。

 

 カン十郎が未だに暗い顔をしている理由。それはまだ隠していた事があったから。そして、それが……この国を滅ぼした原因がカン十郎本人にあると言うこと。

 

「確かに、それを言ったら流石にぶちギレた可能性はあるわな」

「お前は隠していること全て話した。それに比べておれは……何と弱い者か」

「別に無理して言う必要はないんじゃね?」

「なんだと……?」

 

 俺の言葉にカン十郎は眉をひそめる。

 

「言っとくが俺は隠していること全て話した訳じゃない。もっとヤバイ秘密だってまだ隠しているぞ」

 

 原作知識とか転生とか。

 

「そうなのか?」

「何だ知りたいか?そーだなー、俺だけ秘密を知ってるのは不公平だしひとつだけ教えてやってもいいぞ」

「別に不公平とは思っておらんが……因みに秘密って?」

 

 何だよ結構乗り気じゃん。それじゃ~……アレにするか。

 

 俺は特段バレても問題ない秘密を教える。

 

「これはまだ仲間どころか誰にも話していない事なんだが……実は今の俺は人生三度目だったりする!」

「何っ!?お前の食べた実って何度も効果が発動するものなのか!?」

「は~い、これ以上は秘密でェ~すっ♪」

「腹立つなその顔!!」

 

 ワザとらしく煽り顔で振る舞うとカン十郎が少しイラついていた。こうして見ると感情がないとか言っていた頃が懐かしい。

 

 しっかり持ってるじゃないか。

 

「何だその目は」

「いや、別に~」

 

 どうやら、うっかり思っていたことが顔に出てたみたいだ。カン十郎に指摘されてしまった。俺は綺麗な夜空に視線を戻した。

 

「まあ、何が言いたいかって言うと世の中綺麗な奴ばかりじゃないって事さ。俺だって結構ロクな人生歩んでないしな。だから無理に言うことはないと思うぞ」

「そうか……」

「まあ、それはそれとして……面白い事思いついたしなァ」

「面白い事?」

「ジャックはドフラミンゴを奪い返しに行ったが十中八九失敗する。ならまた雷ぞうを探しにここへ来るハズ……。そ・こ・で~♪」

 

 俺はいきいきとした顔でジェスチャーしながら説明する。

 

「俺達は迎撃の準備をして待ち構える。後はお前がここへまた誘き寄せれば───ジャックの軍勢はここで叩き潰せる!!ぶっちゃけ戦力ならこっちの方が上だ。油断しなきゃ余裕で勝てる」

 

 向こうが汚い手を使う前に先手を決めれば必勝よ!!ズニーシャなら鼻で一撃だがケガを負っちまうし、だったら被害を最小限で済ませるように立ち回りたい。

 

「お前、結構悪どいな……」

「お前に言われたからねェーよ」

 

 お互いに悪態を着くと同時に笑ってしまう。

 

「お互いに秘密を隠している者同士、改めてこれからよろしくなカン十郎」

「ああ、おれの方こそ。アルガ殿()

 

 こうして、お互いにどこか親近感を覚える俺達は再び夜空を眺めるのだった。




どうも皆さんもしロマです!
40話をご覧くださりありがとうございます!
今回のアルガの懸賞金額について補足があります。以前810の数字で野獣と読んでいた方がそこそこいましたが、810と言う数字は「野獣」ではなく「ヤマト」なので覚えててほしいです!
そして、今回カン十郎と和解したことにより……康イエとアシュラの生存がほぼ決まりました~!パチパチ‼
ですが、今後どんな展開になるかはまだ未定なので2人の無事を祈っていてください!
ではまた会いましょうでわでわ~( ´ ▽ ` )ノシ
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