あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
明けましておめでとうございます!今年も本作を楽しんでもらえると嬉しいです!
長らく投稿が送れてスミマセン。とりあえず言えることは…………今週号に出てきたクセッ毛髪ジト目オッドアイ萌え袖上半身に対して下半身の露出っ子とか属性盛り過ぎで可愛すぎるんだが??4人目の推しになりそうなんですが???
それでは続きをどうぞ!( ´ ▽ ` )つ


44話 地獄の結婚式には負の楽曲

 気づくと俺は見渡す限り一面暗闇の世界に突っ立っていた。自分の体はハッキリ見えるがそれ以外は真っ暗な不思議な空間。

 

 ……ここは……どこだ?辺りが暗い……。

 

『──っ!!──っ!───!!!』

 

 この声、聞き覚えがある。振り返るとそこには光があった。声はそこから聞こえる。覗き込むとそれは誰かの視点から見た光景。これは───

 

『フザけんなっ!!たくっ!てめぇが外でウロチョロするせいでまた周りから変な目で見られちまっただろうが!!!』

 

『私ぃ~、これから用事あるから帰りは明日の朝になるんじゃないかしら。今度こそカイト君の売上を1位にしなくっちゃ!!お腹すいた?知らないわよ。勝手に済ませなさい。何もない?ハ?テキトーに水道水でも飲んどけば?』

 

 俺に向かって拳を振るう男、空腹で動けない俺を適当にあしらう女。それだけじゃない……。

 

『あっ!君っ!今店から売り物を盗んで行った人見なかった?最近ここらで食品を盗難してる奴らしくてさっきウチもやられたんだ。畜生許さねぇ!!絶対に見つけ出して……え、あっち行った?悪いなボウズ!!』

 

『オイ見ろよ。アイツだぜ?ろくでなし夫婦のガキっての。服もボロボロで汚ぇなw見るからにクソガキだわw』

 

『ねえ聞いた?あの子の夫婦また揉め事起こしたそうよ。怖いわぁ~、そんなんだから子供もロクなもんじゃないのよ。クラスでもよくケンカするって言うし……最近の盗難もあの子なんじゃないかって噂よ?』

 

『コラ!また教室で暴れたそうじゃないですか!私のクラスで問題を起こすんじゃない!!それに給食費も出さない、勉強もしない、友達もいない。そんなんだから「からっぽ」なんて呼ばれるんです!もっと身の振りを改めなさい!』

 

 次々に映し出される光景、それは───俺の記憶だった。

 

 俺の周りには敵しかいない。寝ている間も気を抜けない。親に殴られるから。そうでなくても俺に向ける視線全てが不快に思い気を安らげる場所なんてどこにもなかった。

 

 まだ幼い息子と言えどあの両親に倫理観などなく、家にいれば親に殴られる。腹が減っても作ってもらえず外で店の物を盗むか誰かの財布をくすねてお金を手に入れる以外方法はなかった。

 

 他にもっといい方法はあったんだろうが子供が考えつきそうな事なんてたかが知れてる。

 

 そんな生活をしていてまともな人格に育つハズもなくクラスでも浮いていた俺は後ろ指を差されていた。だが、ちょっかいを出す者など気にくわない奴は全員殴って黙らせた。

 

 あのクソ親父は尊敬できないがひとつだけ参考になった事がある。それは、ムカつく奴は殴れば静かになると言うこと。

 

 どうせ俺に近づく奴はみんな敵なんだ。だったら誰も俺に近づかないようにすればいい。

 

 そうだ。別に味方なんていらない。誰も助けてなんてくれないんだ。だったら───

 

『違うよ』

 

 …………?何だ?今また別の光から声が……。

 

 

『君は───』

 

 

 何者かの声が聞こえたその時、暗かった世界は消え──目を開くと誰かが俺を背負って走っていた。

 

「ッ!アルガ!?よかった目を覚ましたようね。アルガ……?キャッ!?」

 

 女性の声。俺は意識が覚醒すると息も絶え絶えになって必死に走っていた彼女の背中を突き飛ばし地面に着地した。

 

 その時、体に違和感を覚える。いつも空腹だったお腹が全然減っていない。

 

 変だな?……いや、それよりも今は目の前の女だ。にしても、コイツ何でそんな目で俺を見てんだよ。

 

 彼女の見る俺への目が他の奴らと違う。まるで、心配するような……。

 

 ……いや、それが何だと言うのか。俺以外は──みんな敵だ。

 

「あのさ」

 

 だから俺は困惑しつつも近づこうとする彼女に対し警戒心を上げ睨みつけると一言呟いた。

 

 

「お前、誰だよ」

 

 

 俺がそう突きつけると女は酷く動揺し困惑した様子で此方を見てくる。

 

「アルガ……何を言って……」

「だいたいアルガって誰だよ。人違いだろ。俺はそんな名じゃねぇ」

「そんなっ!アナタひょっとして……!?」

「ああ~~!!!」

 

 人が親切に教えてやってんのに未だに引き下がらねぇ女は口を震わせながらそう呟くと、遠くから誰かが声を上げて駆け寄ってきたのだった。

 

 ソイツはパッと見能天気そうな顔をする服装に似合わない麦わら帽子を被る青年だった。

 

 

 

 

 "鬼の戦漢"の記憶(メモリー)を抜き取った私はママに有用な情報を伝えるために部屋中に散らばっているフィルムを読み漁っていた。

 

「あー……クソ!マジで何なんだよアイツ!!私たちが欲してる情報が全然見つからねェ!!無駄に記憶(メモリー)量があるだけじゃねェか……!!!」

 

 元々、政府をも脅かす重大な何か知っているアイツの記憶(メモリー)を奪いそれを元に政府を利用して「万国(トットランド)」をさらに繁栄させる目的だったが……その情報源がどこを探しても見つからない。

 

 わかった事と言えば、何で奴がここまでの記憶(メモリー)量を保有していたのか。それは、奴の食べた悪魔の実によるものだった。

 

 生まれ変わって人生を繰り返していたのなら納得だ。しかも、コイツ前の人生じゃママと同じ「四皇」の一人……"百獣のカイドウ"の部下だったらしいじゃない。

 

 そりゃあ重要な秘密の一つや二つは持っているだろう…………そう思ったのにまるで情報が出てこねェのは何でだよ!!!

 

「……やっぱり()()に隠されていやがる……のかしら?つっても何よコレ……こんなこと初めてだわ」

 

 奴から抜き取った記憶(メモリー)は2人分に続き更に謎の記憶も出てきた。なぜ謎なのか……それは前世以前のフィルムが砂嵐のように見えなくなっていたからだ。

 

 これも記憶なのだとしたらコイツは3回人生を歩んでいることになる。だけど、このフィルムだけまるで壊れたテレビのように何も映さない。何なのよこれは?異常すぎるでしょ。こんなこと今まで一度もなかったのに……。

 

 と言っても、何も収穫がなかった訳じゃない。茶会前に知れてよかった重大な情報も見つかった。

 

 ひとつは長年探し求めていた"ロード歴史の本文(ポーネグリフ)"の在処。正直これは価千金の情報だ。今すぐにでもママに報告すれば褒めて貰えるだろう。

 

 だけど、それは今報告すべきじゃない。もっとそれ以上に優先しなければならない情報が出てきたから。最悪、この情報はそれを危惧してママを宥めるための材料に取っておきたい。

 

「プリン様!ご報告にあがりました!!ベッジに怪しい動きが!!!」 

「そう、やっぱりクロだったのね。ベッジの野郎ォ……ママを裏切りやがって!!」

 

 優先しなければならない重大な情報、それはベッジの裏切りだ。先日、ゾウにて鉢合わせた"鬼の戦漢"はベッジと手を組んだ。ママの暗殺のために。

 

 それを知った私はすぐにチェス戎兵を向かわせベッジの動向を調べに行ってもらったのだ。

 

「それで?ベッジはどうしたの?兄さんたちに伝えて捕まえてもらった?」

「いえ、それが……」

「……?何よ?」

 

 バツが悪そうに言葉を詰まらせる。その様子にイライラしつつ聞くとチェス戎兵の一人が報告した。

 

「各島の大臣たちにベッジの反逆の件は伝えたのですが……既に拠点には被告のベッジ含む"ファイアタンク海賊団"の姿が……確認できませんでした」

 

 ……………………は?今コイツら何つった?ベッジが、逃げ……ッ!!?

 

「ハ、ハア~~ッ!?じゃあ何!?アンタらはベッジに感づかれてみすみす取り逃がしたってこと!!?何やってんのよ!!!」

「ヒィィィッ!!プリン様申し訳ありません!それといつもと様子が違います。怖いですゥ!」

 

 ざっけんじゃないわよ!!!何のために誰に伝えるよりも先にアンタらを向かわせたと思ってんのよ!!

 

 と言うことはアイツは……今……ッ!!

 

「えと……プリン……様?」

「……いけ……」

「え?」

「今すぐベッジを探しに行けェエエ!!!!」

「は、はいィ~!!直ちに~!!!」

「ハア……ハア……」

 

 私の怒声に慌てて部屋を後にしたチェス戎兵。普段ここまで声を出さない私は少し息を切らす。

 

 怒鳴り散らして多少の溜飲を下げようとしたが全く収まらない。むしろ不安と恐怖が増幅された。一刻も早くベッジを見つけなければならないから。

 

 そのせいでまともな判断ができていなかった。本当はこの場に数人残して一緒にこの山のような記憶を読み漁る手伝いをするべきだったのに。

 

 知られてしまってもそのチェス戎兵の記憶(メモリー)を切り抜けばそれで解決。それで済む話なのにそこまで頭が回らなかった。

 

 原因はこの記憶(メモリー)のせい。昨晩ベッジと二人で密会していた奴との会話だ。内容が内容なだけにたとえペロス兄さんやカタクリ兄さんと言えど伝え誰にも伝えることができなかった。

 

 

『成程な、シュトロイゼンの能力は理解した。それじゃ最後に聞いていいか?例のあの写真の人物について───』

 

 

 兄さん達はおろかママだって知らないあの写真の人の行方……その末路を……。

 

 この会話を見て私はママに畏怖した。勿論、確証なんてない。だからこそ私は今もこの山のようなフィルムからその情報源を探している。

 

 だけど、あの人の子供だからこそ分かる。ママならあり得ると。「食いわずらい」で正気を失ったママならたとえその人だろうと……。

 

「~~ッ!!チクショウ!こんなの私一人で抱えきれないよ……!」

 

 でも、誰にも相談なんてできない。万が一この事をママに知られたらどうなるか……考えただけでゾッとする。

 

 だが、何より恐ろしいのはベッジだった。話を聞き終えた奴はその内容に動揺しつつも最後には───笑っていた。嗤っていたんだ。

 

 その時悟った。最早私にできることはこの事実を知るベッジを一刻も早く見つけ始末すること。あの会話の最後にニヤついたベッジの顔を見て確信した。奴は絶対にママに会わせてはいけないと。

 

 断言できる。この国において奴は……ベッジは"麦わら"以上の驚異となる存在だ。

 

 とは言え、既に麦わらたちは部屋に現れた緑髪の女とホネとジャガーのミンク族を除き皆捕まえている。後はベッジをどうにかするだけ。それで全て上手く行くハズなんだ。

 

「さっさと全員ブチ殺して、茶会を成功させる!!!」

 

 そうすれば全て丸く収まる。大丈夫、絶対に成功させる!そう決意を固めた私は再び山のようなフィルムを読み漁るのだった。

 

 

 

 

 現在、おれの拠点にビッグ・マムんとこのチェス戎兵が押し寄せて来た。次々と部屋を探索する様子からしてどうやらおれの裏切りがバレちまったようだ。

 

 その様子を悠々と眺めるおれだが向こうは気づかない。おれの存在を見つけることはできやしない。

 

 何故なら今、おれ達は"鏡世界(ミロワールド)"から見ていたからだ。

 

「この段階でブリュレを捕まえられたのは幸運だった。お陰で此方は予定よりずっと動きやすくなった」

 

 必死に探し回るチェス戎兵を見て滑稽に思いついほくそ笑んでしまう。安全地帯から敵が慌てる様子を見るのは愉快でしかない。

 

「ククク、必死で探してやがる。だが、生憎ともうその拠点は捨てたのさ。そっちからはわからねェだろうが……こっちはちゃ~んと見えてるぜェ?」

 

 無能を見下すのは楽しいがいつまでもこうしちゃおれねェ。そもそも、奴らがあそこに踏み込んできた理由を推測する。これまでおれは奴らにシッポを捕まれるようなヘマはしていない。

 

 そうなると導き出される答えはひとつだった。

 

「チッ、オメェんとこがゲロッちまったみたいだな。この場にいねェあの嬢ちゃんか、"鬼の戦漢"か……」

「何をォ~!アルガはそんな奴じゃねェ!!」

「そうよ!わたしならともかくアルガは尋問に屈するような男じゃないわ!!モネだってそうよ!助けてくれた事には感謝するけど仲間を侮辱するのは許さないわよ!!!」

「まーまー、お二人とも落ち着いて。とりあえず無事に救出できてよかったです」

「とりあえず状況を整理するぞ」

 

 ソウルキングが麦わらと泥棒猫を宥める。その間におれは皆に現在置かれている状況を今一度説明する。

 

 昨朝に"誘惑の森"に入った後、散々にされた麦わらと泥棒猫は三将星の一人クラッカーと交戦。その後森を抜け豹変した黒足とケンカして疲弊したところをビッグ・マムの軍勢に捕縛連行された。

 

 危うく拷問にかけられそうになった所をその場に居合わせた"海峡のジンベエ"に助けられ見事脱走する。

 

 そこで二手に別れ麦わらは黒足と再び再会し仲直りする。そして、そこへブリュレを捕縛したトナカイとウサギが泥棒猫、ジンベエ、おれ達の順で"鏡世界(ミロワールド)"に避難させ麦わら達も回収した訳だ。

 

「とりあえず暫くの間おれ達の身は保証されたが訳だが……状況はかなりマズイ。まだ茶会まで時間がある。折角"(ルーク)"の称号まで得られたが裏切りがバレたおれじゃあもう警備として茶会に近づくのは不可能。さて、どう出るか……」

「そんなことよりもだ!オイ枝!!」

「ブリュレだよォ!!!」

「おれを鏡から出せ!!」

「っ!?ちょっとルフィ!!話聞いてた!?今この鏡の世界から出るのは危険なのよ!?」

「だからだろ!!!」

「えっ」

 

 麦わらは癇癪を起こしとんでもないことを口走る。ついさっきまで自身に何が起きたのかもう忘れちまったのか?

 

 仲間が宥めようとするが麦わらは止まらなかった。

 

「そんなヤベェ所にアルガ達はいるんだろ?だったら早く見つけに行かねェと危ねェだろ!!!」

「確かにその通りだ。モネちゃんが危険な目にあっているかもしれん。心配だ」

「そ、それはそうだけど……!今アイツらがどこにいるのか分からないことには……」

「んなもんチョッパーがいりゃあ大丈夫だろ!行けそうかチョッパー?」

「うん!勿論!」

 

 トナカイが自信満々に頷くと泥棒猫は頭を悩ませる。そして、しばらく葛藤すると観念したのか麦わらの案に乗った。

 

「~~!!あーもう!分かったわよ!!わたしも行く!心配なのはわたしだって一緒なんだから!!」

「おれも行きてェが……長い時間居なくなると怪しまれる。悪いがおれは城に戻るから後は頼む。いいか?絶対ェモネちゃんだけは見つけて安全を確保しろよ!!」

「ああ!任せろ!!後アルガもな」

 

 そうして麦わら達は黒足を除き鬼の戦漢を捜索しに"鏡世界(ミロワールド)"から出ていった。

 

 見送った後少しの間静寂に包まれていると体内からシフォンがおれに声をかけてきた。

 

「あんたは行かなくてよかったのかい?」

「どうしたシフォン突然」

「だってあんたアタシらに何か隠しているだろう?」

「っ!?」

「どうして分かったのかって顔ね。分かるわよそんぐらい。妻なんだから」

 

 シフォンの指摘に何も言えなくなってしまう。妻の言う通りおれはひとつ隠し事をしていた。

 

 それは、先日鬼の戦漢が話してくれたシフォンのお義父様のことだ。その人は今もこの"万国(トットランド)"にいるとか。

 

 だが、今の状況で下手に動けばおれやシフォンに危険が及ぶ可能性がある。それだけは阻止したかった。

 

 しかし、麦わら達が仲間を迎えに行く時おれも無意識に反応してしまったのだろう。その小さな変化をシフォンに見透かされてしまったようだ。

 

「ま、言いたくないなら無理して聞こうとしないわ。あんたはいつだって私たちのために考えているもの。今回もそうなんでしょ?」

「……さあな」

 

 スマネェな。これを話せばお前は間違いなくアイツらと探しに行くのが目に見えてたからよ。後で薄情と言われても構わねェ。

 

 …………だが、もし会う機会があるとしたら……おれは───

 

 

 

 

 

 よく分からない森の中、見知らない女と立ち会っていると更にぞろぞろと人がやって……人か?あれ……?

 

 現れるは先頭から黒髪の男とオレンジ髪……はまあ染めてるんだろう。だがそれ以降はちっこいタヌキに人形のウサギとトラ。更にはガイコツ……うん。

 

「何か変な集団が来たぁああ!?!?」

「皆っ!!」

 

 緑髪の女がホッと息を撫で下ろす。え?アイツらコイツの知り合い?やっぱヤベェ連中じゃん。つーか何この状況!夢でも見てんのか!?

 

 必死に頬を引っ張るも目が醒める気配はない。何でさ!?

 

「よかったァ~!二人とも無事で~!」

「それが大変なの実は……!」

 

 意気揚々とやって来ると緑髪の女が何やら切羽詰まった様子で説明している。とりあえず見るからにヤベェ連中とこれ以上いるのは身の危険を感じるので今の内に逃げよう。

 

 俺がコソコソ森の奥へ移動すると───。

 

「あ!オイ何どっか行こうとしてんだよアルガ!お前もこっち来い!!」

「ギャーーーッ!!?腕が伸びてるーーっ!!!」

 

 数メートル離れた所から麦わら帽子を被った男が腕をびよーんと伸ばして俺の肩を掴む。

 

 何コイツ腕が伸びてんだけど!?あん中で一番まともな見た目だったのにもう何も信じられないんだが!?

 

「なんか懐かしーなこの感じ」

「"新世界"に来てからはあまり驚かれる事もなかったもんねアンタ。わたしも一周回って新鮮さを感じるわ」

「それにしてもモネの言う通りホントに何も覚えてないんだね。どうにかできないチョニキ?」

「能力で記憶を抜かれたとなると記憶喪失じゃねェからな。いったいどうすれば……」

 

 何冷静に会話してんのコイツら!?…………ん?ちょっと待って?今……誰が喋った?俺の目が間違いなければ……。

 

「タヌキが喋った!?」

「タヌキじゃねェ!!トナカイだ!!」

「どっちにしろ変だわ!!」

「何だとコノヤロー!!!」

「ギャーー!?巨大化したーー!?!?」

 

 確定、コイツらはバケモノ集団だ。

 

「まーまーチョッパーさん落ち着いて。アルガさん安心してください。皆さん人とは少し変わっていますが怖くないですよ?」

「お前が一番変わり果てて怖いわ!!!」

「ヨホホホ!手厳しィ~!あ、頭も割れますよ?」パカッ

「ギャーーー!!?」

「いい加減止めんかァ!!!話が進まないのよ!!」

 

 笑いながら頭を開くガイコツに恐怖しているとオレンジ髪の女が殴って黙らせる。この人も怖いがどうやら一番まともそうだ。

 

「怖がらせてゴメンね。まずわたし達の話を聞いて欲しいの」

 

 そこで彼女は俺がなぜこんな状況になっているのか説明してくれた。一通り話を聞き終えるがにわかに信じがたい。俺の記憶がある者に抜かれてしまったなんて。

 

 確かに俺が何者で何でここにいるのか分からない。辻褄は合っている。だけど大前提の話───

 

「つーわけだ!お前はおれの仲間だなんだ。だから迎えに来たんだ!」

「いやいや、俺が海賊の仲間ぁ?悪魔の実ぃ?意味不明過ぎんだろ。漫画かっての。だいたいここは日本じゃねぇのかよ?」

「ニホン?ここはホールケーキアイランドって言う島の森の中よ」

「ケーキの島とか……じゃあ回りに不自然に生えてるお菓子は食えるってのか?」

「そうね、島の至るところにあるお菓子は全部ホンモノで食べれるわ」

「ガキの妄想かよw」

「どうしよ、生意気でだんだん腹立ってきた」

「ナミ落ち着いて!?」

 

 あまりに非現実的な事ばかり言うので鼻で嗤うと彼女は拳を震わせる。それを見て周囲の人たちが止めに入った。

 

 それじゃつまり何か?俺は日本とは違う世界に住むお菓子の国に連れ去られて魔女に記憶を抜かれましたってか?で、この世界の仲間がお前らと……ハハハ、メルヘンだねーw

 

 彼女の妄言に嘲笑するが現状は笑えない。小バカにした後、一転し重いタメ息を吐く。

 

「ハァーー……勘弁してくれよ。騙すにしても人を選べって。俺そう言った話疎いんだよ。漫画とかロクに見たことねぇのに」

 

 違う世界に飛ばされて冒険!的なアレか?んなもん現実にあってたまるか。

 

「まだ信じてもらえませんね。もう少し彼について掘り返してはどうです?例えば家族とか」

「あー、そういえばこの前アルガの両親について聞いたことあったわね」

 

 ガイコツが提案するとみんなは納得し再びこちらを見る。そして、次の一言で俺は───

 

「ねえ、これはつい先日アンタから聞いた話なんだけど覚えているかしら?自慢するように自分の()()()()()だって……」

「…………は?」

 

 確信する。コイツらは……俺じゃない誰かの話をしていると。

 

「え……?いや、だからこの前最高の親の子ってアンタが──」

「フザけるな……最高の親だぁ?」

「ッ!?ア、ルガ……?」

 

 

「フザけんな……ッ!!!俺の親が……あんなクズがいい親なワケねぇだろうがぁあっ!!!!」

 

 

 突然叫ぶ俺の怒号に一瞬戸惑った女に詰めより胸ぐらを掴む。

 

「今のでハッキリした。やっぱお前らが探してんのは俺じゃねぇよ。次に俺の前で親の話したらタダじゃおかねぇからな!!!」

「ウゥ、アルガ……苦しい……キャッ!?」

 

 俺は乱暴に女の胸ぐらを放すと一目散にこの場から駆け出した。

 

「ナミ!?クソ!おいアルガ待てェ!!」

「ダメですルフィさん深追いしては!!アナタ自分の置かれている立場覚えてます!?次見つかれば容赦なくビック・マム海賊団に殺されますよ!!!」

「グッ!だけど……!!ってアイツもうあんな所まで!?」

 

 何やら後ろで揉めているようだったが、余裕がなかった俺は気にせず走り続けた。

 

「囲え囲え!この森から逃がすn──ヒィ!?」

「何だ!?奴からママの気配が……!!?」

「ダメだ!おっかなくて近づけねェ!!」

 

 途中、何やら声が聞こえてきたがそれすら無視しひたすら前へと突き進む。

 

 それからどれぐらい走っただろう。息が切れるまでがむしゃらに走り続け、いつの間にか俺は森を抜け海辺まで来ていた。

 

 ハアハアと息が絶え絶えになりその場に倒れ込む。すると手の中に何かを握っていることに気づいた。どうやらいつものクセで無意識にスッていたみたいだ。

 

 あ、いけね。ひょっとしてさっき女の胸ぐらを掴んだ時にくすねちまったか?まあ、別にいっか。

 

「って何だこれ?紙か?にしても腹減ったなー……ん?」

 

 拳を開くと中からは一枚の紙切れ。何だこれはと考えていると影に覆われ不審に思った俺は振り返ると……二頭身のデッケーおっさんがいた。

 

「巨人のバケモノーー!!?」

「初対面の相手にバケモノ呼ばわりは酷いのよね。うぬはタダの人間なのよね」

「お前みたいな人間いてたまるかぁあ!!」

 

 ここまで等身と身長がバグった奴見たことないわ!

 

 声を荒げると体力が消費してしまいグゥーと腹の音がなる。大きい音だったので相手にも聞かれてしまう。

 

「うぅ……」

「なんだ?ハラ減ってんのか?なら足元のクリームでも食えばいいのよね」

「ハア?足元って……うおっ!?よく見りゃあ何だこの海辺!?砂浜じゃない!?」

 地面が一面白い。足元のクリームを指で掬うと少し固いが滑らかな手触りでいい香りがする。少し戸惑ったが恐る恐る一舐めしてみた。

 

 その瞬間、俺の脳に衝撃が走った。

 

「───ッ!!!」

「気に入ったようでよかった。よほどハラ減ってたのよね……ってオイオイ泣く程感動したか?」

 

 気づけば一心不乱に足元のクリームをがっついていた。初めて口にする味。甘いものなんて砂糖ぐらいしか知らなかった。

 

 こんなに、美味しかったのか……。

 

「そうかそうかウマイか!ならコレもやろう。森で取れた美味しいアップルジュースなのねん」

「ん!!」

 

 初めて感じる味覚に俺は涙を溢しながら食べ続けた。

 

 

 

 

 あれから時間が過ぎ夜中。俺は今海上にいた。

 

「いやー、しかし……誘っておいてアレだけどホントによかったのか?着いてきて?」

「え?ああ、うん……」

 

 あの後、一通り食べて腹が膨れた俺は自身の状況を思い出しこれからどうするか思い悩んでいた。

 

 そこにこのオッサンが「行く宛がないなら一緒に来るか?」と誘われそれを了承したのだ。

 

「一人で動くより誰かと行動した方がいいし」

 

 それに、このオッサンちょろそうだし利用できそう。いざとなればすぐ見限ればいいし。

 

「今、何か恐いこと考えなかったのよね?」

「そんなワケないでしょ。一人の船旅より誰かと一緒にいた方が楽しいよきっと」

 

 すぐに表情を切り替えて善人を装う。

 

 俺がそうホイホイと見知らねぇオッサンと一緒に行くかよ。悪いが利用させて貰うぜ。にしても……。

 

 俺は船から顔を出し海を覗き見る。そこにはオレンジ色の海が広がっていた。聞けばここ一帯は「ジュースの海」だとか。

 

「ホントに違う世界なんだな」

「何か言ったか?」

「いいや別に。俺が知ってる場所とは全然違うなーって」

「まあ、世界でも珍しい海域ではあるのよね」

「そういや、アンタは何で海に出たんだ?」

 

 話題を剃らすために質問するとオッサンは笑顔で答える。

 

「うぬはこれから娘を探しに出るところなのよね」

「娘?」

「ああ、うぬは娘が産まれてすぐ妻に追い出されてまだ一度も抱いた事がないのよね。そんな娘が結婚したと聞いていてもたってもいられずこれから一番いそうなカカオ島へ向かう途中なのよね」

「へー」

「リアクション薄っ!?聞いてきたのそっちなのよね!もっと関心もって欲しいのよね!!」 

「だって家族にいい印象ねーし」

 

 俺はあからさまに嫌そうな顔をするとそれでもオッサンはイキイキと語り続ける。

 

「まあ、家庭は人それぞれなのよね。うぬにとって娘はかけがえのない存在なのよね」

「まともに会ったこともねーのに?」

「ああ、勿論よね。うぬにはもう、娘しか残っていないから……」

 

 皮肉を飛ばしたのに即答で返されてしまった。思ってた解答と違い俺はイラッと来てしまいふて寝する。

 

「チッ、面白くない……もう寝る」

「……?おやすみよね」

 

 不機嫌になった俺を見て不思議に感じたオッサンは首をかしげるも特に言及せずそのまま返事を返す。

 

 だが、眠りにつく直前オッサンは優しく声をかけてきた。

 

「聞けばお前記憶がないのよね?ならきっとその無くなった記憶に必ずある筈よね。かけがえのない人が」

「…………」

 

 俺はそんな奴いるワケないだろと内心毒づきふて寝するように眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 視界に広がるのはひたすらに真っ暗な世界。そんな世界に淡い光がポツンと目の前に存在する。

 

 ああ、またかとその淡い光の中を覗くとそこにはやはり俺の記憶らしきものが映し出されていた。

 

 次々と流れる記憶の数々。案の定、どれもロクなモノではなかった。暴力暴言陰口スリ騙し……そんなものばかりだ。

 

 これ以上見ても気分よくないのでその光から離れようとした時───

 

『コラー!!!』

 

 ……?今の声は……?

 

『こんな小さい子供に寄って集って恥ずかしくないの!?弱いものイジメなんてだっさいマネするんじゃないわよ!!!』

 

『ほら、見せてみなさい。ケガしてるじゃない』

 

『アナタ、ひとりなの?』

 

 少女のような高い声が響き渡る。その声を聞き離れていた俺の足が止まった。

 

『ねえ、ずっとひとりで寂しくない?』

 

『え!マンガとか読まないの!?ならオススメの見せてあげる!面白いし道徳心の欠けてるアンタにはもってこいの作品よ!』

 

 聞き覚えのない少女の声が聞こえ再び光の中に視線を戻そうとする。

 

 

『ほら、行こうよ!』

 

 

 自然と気になり光の中を見た瞬間、俺は意識が遠退いた。薄れ行く意識の中、光の中から笑顔を向ける少女を見て思った。

 

 今の……確かどこかで───

 

 

 

 

「んあ、ここは……」

「お、目が覚めたか。ちょうど着いた所よね」

「そっか、俺寝てて……って、何じゃここぉ!!?」

 

 寝惚けていた俺は目の前の光景を見て一発で眠気が吹っ飛んでしまった。何故なら目の前にはチョコなどのお菓子で作られた町が広がっていたからだ。

 

「ケーキの島の次はお菓子の国とかおとぎ話かよ……」

「ここはシフォンが育った街ショコラタウンだ。呆気に取られているところ悪いが早く娘を探しに行くのよね」

「お、おお……」

 

 オッサンに言われ正気に戻ると一緒に町へと入っていった。町中にいる住民も見たことのない生物ばかりで内心驚きながら進み続ける。

 

 しばらく探し回ったが見つかる気配がなく夕暮れになる頃にはヘトヘトになっていた。

 

「見つかんなかったな」

「ダメなのね、全然見つからないのよね……」

「てか、思ったんだがロクに娘を見たこともないのに今の姿とか知ってんのか?」

「あ……多分大丈夫よね」

「ダメに決まってんだろ!!!」

 

 そりゃ見つからねーよ!だって顔知らねぇんだもん!むしろよく見つかると思ったな!

 

 内心タメ息を吐きそろそろこのオッサンを見限るべきか本気で検討していると遠くから異様な集団はやってきた。

 

「キャ~~!オーブン様よォ!!」

「何故ここに?プリン様なら既に本島へ行かれたが……?」

 

 オーブン?あの先頭にいる奴のこと……ってかなんだあれ!?デカッ!?5メートルぐらいあるぞ!!

 

 見るからにヤバそうな人物なので離れようとしたが向こうがこちらに気づくとニヤリと笑い勢いよく駆け寄ってきた。

 

 突然の事に慌てるが既に遅く目の前まで近づくとオーブンと呼ばれる大男に掴み上げられてしまった。

 

「あぐっ!?なんだよ!誰か知らねぇが放せよ変態オヤジ!!」

「誰が変態オヤジだガキ!!」

 

 上半身裸にマントとか変質者そのものじゃねぇか!!しかも髪型も変だし!……ひょっとしてこれが有名なあたおかって奴か?

 

「にしてもプリンの言ってた通りまだ自我があるって事ァ……記憶は完璧に抜き取れていなかった訳だな」

「っ!?記憶だと……!」

 

 まさか、コイツが俺の記憶を奪ったとか言ってた奴らか!て事はあの話はマジだったのかよ……熱っ!!?

 

「ぐああああ!!!焼けるぅ……ッ!!」

「暴れるからだ。これ以上ヘタなマネするんなら……容赦なく消し炭にするぞ?」

 

 畜生!コイツも変な力持ってんのかよ!バケモノが多すぎんだろこの世界!!

 

 ジュウウ!と皮膚の焼ける音と共に激痛が走りオーブンに恐怖を覚える。

 

 万引きがバレて血相を変えて襲いかかってきた店員のジジイ以上の威圧感。ハッタリではなく次はホントに消し炭にされてしまうと思った俺は動けなくなった。

 

「そうだ、それでいい。このまま大人しく───グッ!?」

「オーブン君~~~!!!」

 

 不適に笑うオーブンにオッサンが殴りかかった。その表しに握力が緩んだのですぐに抜け出し急いで離れた。

 

「てめェ……何のつもりだ!!!」

「この子が何者なのか詳しくは知らないのよね。でも……」

 

 一歩も引かないオッサンはオーブンを睨み付けた。

 

「記憶を失くした子供が理不尽にキズついて、それを黙って見過ごすような男がどの面下げて娘に……ローラやシフォンに会うのよねェエエ!!!!」

「んなもん知るかァア!!!」

「ボヒィーー!!?」

 

 啖呵を切ったはいいが実力差がありあっさりと殴り飛ばされる。だが、それでも立ち上がるオッサンはオーブンに立ち向かう。

 

「あまり舐めたマネすりゃあてめェと言えど命はねェぞ?元お義父ちゃん」

「ハアハア……!グ、クソ……!うぬの事はいいから逃げるのよね!!さあ、早く!!!」

「う、あぁ……」

 

 オッサンがそう言うも体が動かず立ち尽くしてしまう。別にどこかを痛めて動けなくなったわけではない。

 

 いや、何でだよ。動けよ!何躊躇してんだよ俺!?元々こう言う時のために一緒にいたんだろ?利用して見限る予定だっただろ!なのに───

 

『弱いものイジメなんてだっさいマネするんじゃないわよ!!!』

 

「──ッ!」

 

 

『ねえ、ずっとひとりで寂しくない?』

 

『うぬにはもう、娘しか残っていないから……』

 

 

 ああ、そうか。ようやく分かった気がする。

 

 俺がこれまで感じていたオッサンへの苛立ち……それは浅ましくも───嫉妬だった。

 

 俺と同じで何も持っていないクセにキラキラとした目で今も娘娘と……揺るぎないモノを持っていたからだ。

 

 だから苛立ちを隠せなかった。でも───

 

 

『聞けばお前記憶がないのよね?ならきっとその無くなった記憶に必ずある筈よね。かけがえのない人が』

 

『ほら、行こうよ!』

 

 

 …………しょうがねぇな。

 

 性に合わないが、オッサンに借りを作りっぱなしなのは気分がよくない。それに……。

 

「さァ、とっとと消し炭にしてや──ブッ!?」

「ッ!?お、お前!?何故逃げなかったのよね!?」

 

 オーブンの顔面をぶん殴りぶっ飛ばした。捕まっていたオッサンも解放され消し炭にされなかったが俺を見て驚く。

 

 と言うか俺も驚いてる。え?何この体?助走ありとはいえ5メートルぐらいある巨漢の顔までブッ跳んで殴り飛ばしたんすけど??

 

 ……でもまあ、これなら行けそうだ。

 

 驚くオッサンに向けて俺は不適に笑った。

 

「うっせーわ。んなもん俺の勝手だろ。だいたい……記憶を奪った連中がわざわざ来たってのに逃げるかよ。まずはコイツをブッ潰して記憶を取り戻す」

「グヌゥ……調子に乗ってんじゃねェ!!!」

 

 顔を押さえて苛立ちを隠せていないオーブンは全身からあり得ない熱を放出する。そして、拳を握りしめ飛びかかって来るのだった。

 

 そこから俺達の戦いが始まったのだが…………まあ、あれだけ見栄を張ったのはよかったが現実とはやはり非常なもので……。

 

「たく、無駄な抵抗しやがって」

「グフッ……ゲホッ」

 

 ボコボコに叩きのめされていた。

 

 最初は行ける雰囲気だったがオーブンの熱が増した後はまともに殴ることもできず一方的にやられてしまったのだ。

 

 周りの建物はオーブンの熱により溶けたり崩れたりしていた。夢中になって殴り合っている内に気づけばオッサンの姿は消えていた。

 

 やっぱり俺を置いていったのだろうか?まあ、元から信用してなかったから別に構わんが……。

 

「よし、それじゃ予定通りコイツを連れていくとしよう。これでまだ隠れている残りの一味を誘き出せる」

 

 クククとオーブンはニヤついた笑みで俺を持ち上げ船に乗せるのだった。その後カップケーキみたいな船に連行され一晩かけてまたあのケーキの島へと連れ戻されてしまう。

 

 そして、ここがコイツらの本拠地のようだ。巨大なケーキの城に圧倒されつつ中へ入り牢屋に牢獄されてしまった。

 

「ここで大人しくしておけ。明日の式で貴様をエサに仲間の残党を誘き出すとしよう。ああ、仲間の記憶は無いんだったなァ~?ワハハハハ!!!」

 

 最後まで嫌な奴だったな。言ってろ短気単細胞野郎が。にしても来るとこまで来たって感じだよなー。これからどうするか……。

 

 やっぱあの時戦わず逃げればよかった。でも、あのオーブンとかいう熱野郎がムカついてしまったのだから仕方ない。

 

「野郎が言ってた仲間ってアイツらの事だよな?ならムダ骨だったな。俺は別に仲間でもねーし」

 

 でも、それだと明日にはホントに消し炭にされてしまうかもしれない。まあ、別にいいや……どうでも。

 

 正直、もう疲れた。ロクな人生を送れず終いにゃこんなよく分からん世界で何も分からないまま理不尽に殺されそうになって……。

 

 殺るんだったら、もういっそ一思いに……。

 

 そんなことを考え続け夜が明ける。そして、牢屋から出された俺は拘束され城の屋上へと連れていかれた。

 

 ジャラジャラと鎖を引きずる音と共に屋上の扉の前まで着くといよいよ運命の日が訪れたと直感した。俺はさながら処刑台へ歩む囚人のような気持ちで屋上へと踏み入れた。

 

 しかし、ギィ……と扉が開くと、目の前に広がる光景は俺が想像していたものとは違っていた。

 

「ウエディングケーキがァァアアア!!?」

「どうなっているの!?何で"麦わら"があんなに沢山!?」

「そもそも奴は拷問されて死んだ筈じゃあ!?」

「これはいったい何のマネだ!?答えろビッグ・マムゥ!!!」

「たまらねェな!!このライブ感!!!」

「…………は?」

 

 崩れている巨大なケーキ。無差別に周りの人を襲う先日の麦わら男の集団。怒り狂っている巨大ババア。身動きが取れず何やら泣き叫ぶ仮面のおじさん。その光景を嬉々として撮影する鳥。屋上はまさに阿鼻叫喚。地獄絵図と化していた。

 

「……何が起こってるんだ?」

「ギャッ!?」

「グアッ!?」

「なっ!?急に倒れた!?」

 

 俺が唖然と突っ立っていると俺を連行してきたチェスの駒のような被り物をしていた兵士が呻き声をあげ倒れる。

 

 何が起こっているのか困惑していると後ろから男の声が聞こえてきた。

 

「よお、無事でよかったぜ」

「……誰だ?」

 

「記憶がねェ奴に言って意味ないと思うが一応な……。味方だ、てめェのな」

 

 振り返ると見るからに悪そうな奴が現れた。その人相の悪さに若干疑いを持ちつつも今助けてくれたことには代わりない。

 

「助けてやったんだ。礼ぐらい言ったらどうだ?」

「……別に助けてくれなんて言って──」

「アルガァ~~!!!」

「どわぁ!?」

 

 突然男の体から先日会った連中が現れた。いや、どっから出てきた!?

 

「オイ勝手に出てくんな。まだ出てくる時じゃねェんだぞ」

「アルガが捕まってたんだぞ!!出てくるに決まってんだろ!!!」

「ケッ、勝手にしやがれ。こっからはおれの大仕事なんだ。先行くぞ」

 

 マフィアみたいな男はそう言い大きな鏡の中へと入って……え!?どうなってんだ!?

 

「おい!?アイツ今!!?」

「それより気をつけて!もうすぐ騒音が鳴り響くわ。アンタもこの耳栓を」

「やめろよ!だいたい何でまた来るんだよ!!俺はお前らとは無関係の人間だ!!!それなのに……お前らは何なんだよ!!!!」

 

 自分の都合ばかり押し付けてあたかも関係者を気取るコイツらに俺はとうとうキレてしまい激情をぶつける。

 

 しかし、コイツらは先日と違い一切動揺することなく俺を見つめていた。そして、オレンジ髪の女はまっすぐに答えた。

 

 

「"仲間"だからに決まってるじゃない」

 

 

 その一言に俺の胸は何故かズキンと苦しくなった。

 

「仲……間……だと……?」

「ええ、そうよ。今のアンタに何言ってもムダなのはもうわかってる。でもね、たとえ記憶が無かろうがあたし達にとってアンタは……かけがえのない仲間なのよ」

 

───ズキン

 

 まただ。また胸が痛む。

 

 なぜこの女の言葉がこんなにも響くのか。なぜ彼女以外の奴らも同じ目をしているのか。なぜ……俺は彼女の瞳から視線を剃らせないのか。

 

 何も分からない。だけど……痛いハズなのに不思議と苦しくはい。むしろ───

 

 

「ヒャアァアァアァアァアアアアア!!!!」

 

 

「──っ!!?何だ!?うるさっ……耳が……!!!」

 

 突然響き渡る轟音。思わずしゃがみこみ耳を押さえるがあまり効果がなく甲高い声が脳を揺らされる。

 

 鼓膜がやぶけそうになり、もうダメだ!そう思った時、耳に何かを詰められる。すると、不思議と何も聞こえなくなり先程の騒音が嘘のように止んだ。

 

 顔を上げるとそこには人形のウサギがニコッと笑っていた。どうやら耳栓をしてくれたようだ。

 

 にしてもあの音量を通さないこの耳栓ヤバイな。少し欲しいかも。

 

 ……ん?ウサギが何か書いてる。何々……っ!

 

『わたし達はやる事があるからここにいて。今モネがあなたの記憶を持ってきてるハズだから』

 

 マジか!俺の記憶を……!

 

 そうメッセージを残した後、皆は会場へと走っていった。そして、何やら動けなくなっている連中を助けると今度はさっきのマフィアみたいな男達が泣き叫ぶ巨大ババアにロケランのようなものをぶっぱなした。

 

 しかし、その球は巨大ババアに当たる直前に爆発する。それを見たマフィアみたいな男達は唖然とした。

 

 明らかに失敗したと悔しそうに男は顔を歪める。そして、男はすぐに撤退し空から現れた男の用意した鏡に飛び込もうとするが───轟音と共に巻き起こる強風によりモノの見事に割られてしまった。

 

 皆が絶望の表情になると中、マフィア男が突然巨大な城のロボットみたいなモノに姿を変えた。ええ……ちょっとカッコいいかも……。

 

 皆が城の中へ駆け込もうとするが見るからにヤバそうな奴らがそれを阻止し捕まえる。オーブンもトナカイを捕まえており咄嗟に助けようと体が動く。

 

 だが、その時さっき捕まっていた連中が変身し形勢が変わる。次々と捕まった皆を救いだし全員城の中へと入って行った。

 

 俺も行った方がいいのか?……ってうわ!?

 

「~~!───ッ!!」

 

 門が閉まる途中、その隙間から何か叫んでいる麦わらの男が腕を伸ばし俺を掴む。そして、このまま引っ張るが───

 

「ぐあっ!?何だこれ!!モチィ!?」

 

 ベトベト体にくっつく白い物体が俺の体を取り込み麦わら男の腕が離れてしまう。そして、そのまま引っ張られた先には口許を隠す大男が俺を掴んでいた。

 

 あまりの威圧感に俺は硬直してしまう。すると手をかざされ思わず目を瞑ってしまうが想像していた衝撃などは来なかった。

 

 変わりに耳栓を取られてしまう。すでに轟音は止んでおり周りも特に苦しんでいる奴はいない。そこへマフラーの大男がドスの利いた声で俺を睨み付ける。

 

「オイ、残党を呼び寄せる為のエサの分際で何拘束を解いてんだ?だが丁度いい……貴様を使ってあのフザけた城から連中を引きずり出すとしよう」

「がっ!?ハッ!……い、ギが……っ!」

 

 ギュゥ!っと俺の首を掴む握力が強まると苦しくなり酸欠を起こす。奴の腕を掴み踠こうとするがまるでピクリともせず反って苦しみを増す。

 

 視界がチカチカとし徐々に意識が遠退く中、そこには映っていたのはただ冷酷に俺を見る男の顔だった。

 

 まるで人の命など躊躇せず殺すことも厭わないようなその冷たい眼に俺は恐怖を抱き意識を断たれてしまった。

 

 

 

 

 ここは……どこだ?辺りが暗い。またあの夢の中か?

 

 見渡す限り暗闇が広がる世界。最近よく見る夢の中と思ったが何だかいつもと違う。今回は記憶の映像が見れる光がどこにもない。

 

「どうなって……うおっ!?声が出せる!じゃあここは現実か?でも、さっきまで俺は首を……いったい何が……?ん、あれは……火?」

 

 光のない暗闇の世界……と思った時、目の前に掌サイズぐらいの紫色の火が現れた。

 

 つい好奇心で手を近づけるが……暖かくない。むしろ冷たい。何だこの火は───

 

───触れて

 

「──っ!?何だ!?声が……!」

 

───今のキミ 心が弱い それじゃ すぐ死ぬ

 

 火が……喋ってる?

 

───♯︎ᛉ♪︎も弱ってる でも だからここにいる

 

 ……?誰だって?今何かノイズのようなものが……。

 

───弱っている から 一部は出せる あの実も いらない

 

「あの実?何を言って……」

 

───さァ キ ミ の 楽譜() を 渡 し て

 

「渡すって……うおっ!?火が体に!あ、熱っ……くねぇ?何で……まあ、一先ずよか──」

 

 火が近づくと俺の胸の中へと入り込んでしまう。慌てて胸辺りを確認するが火傷の後はない。ホッと息をなどおろすと───

 

───これで 使える この魂は 今 キミの体に 引き憑いだ

 

「ぁぁ?」

 

───ボクが、おれが、わたしが、我が、拙者が、アタシが、おらが、ワイが、ウチが、わたくしが、自分が、小生が、おれが、某が、僕が、ぼくが、おれが、私が、あっちが、おのれが、おれが、おれ様が、我輩が、ワタシが、あティアが、おれが、おいが、私が、ぼくが、おれっちが、ぼくちんが、吾輩が、僕が、俺が、あーしが、あちきが、うちが、儂が、オレが、あたしゃーが、僕が、ミーが、あたしが、ワリャアが、オラが、わらわが、おいらが、わーが、私が、わしが、おいが、わっちが、拙僧が、吾が輩が、当方が、拙が、あたいが、己が、わたすが、わすが、わてがが、余が、あたくしが、わいが、あっしが、ボクが、おれが、わたしが、我が、拙者が、アタシが、おらが、ワイが、ウチが、わたくしが、自分が、小生が、おれが、某が、朕が、僕が、ぼくが、おれが、おいらが、私が、あっちが、おれが、おれ様が、我輩が、ワタシが、手前が、わえが、あティアが、おれが、おいが、私が、ぼくが、おれっちが、ぼくちんが、吾輩が、僕が、下名が、おれが、あーしが、麿が、あちきが、吾が、うちが、儂が、オレが、あたしゃーが、僕が、ミーが、あたしが、ワリャアが、オラが、わらわが、おいらが、わーが、私が、わえが、わしが、わっちが、小生が、拙僧が、吾が輩が、当方が、あたいが、己が、わたすが、わてが、余が、あたくしが、わいが、あっしが、ボクが、おれが、あが、わたしが、我が、拙者が、アタシが、おらが、ワイが、ウチが、わたくしが、自分が、小生が、やつがれが、おれが、某が、僕が、ぼくが、おれが、余が、私が、あっちが、おれが、おれ様、我輩が、おいどんが、ワタシが、あティアが、おれが、おいが、私が、ぼくが、おれっちが、ぼくちんが、吾輩が、僕が、おれが、あーしが、麿が、おのれが、あちきが、うちが、儂が、オレが、あたしゃーが、僕が、ミーが、あたしが、ワリャアが、オラが、わらわが、おいらが、わーが、私が、わしが、わっちが、拙僧が、吾が輩が、当方が、あたいが、己が、わたすが、わてが、あたくしが、わいが、あっしが、───────が……

 

「~~ッ!!?イツッ!次々と色んな声が……!感情が……!!あ、あぁ!頭が……割れ、そうだっ!!!」

 

 何だこれ!?気持ち悪い!吐きそう!頭が痛い!苦しい!辛い!怖い!誰か───助け

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

───さァ 呼べ 歌え この力を 求めよ

 

「ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ」

 

 

 

 

 

 ビッグ・マム暗殺の失敗したおれは”大頭目(ビッグ・ファーザー),,に変身し一時的に皆を避難させた。しかし、鬼の戦漢だけ取り残されてしまい人質となってしまった。

 

 カタクリに首を絞められ気絶させられるとそれを見ていた麦わらが激昂する。

 

「アルガァァァ!!!アイツ~~!!絶対にブッ飛ばしてやる!!!」

「ちょっと落ち着きなさいルフィ!!気持ちはわかるけど今ここから出ても格好の的よ!?お願いだから冷静になって!!!チョッパー!押さえてなさい!!」

「うん!わかった!」

「ウガーー!!!」

 

 仲間が麦わらを抑えなんとか止めようとしている。ったく、血の気が多いい奴はこれだから───

 

───バキィ!!!

 

「グアァアアア!!?」

「あんた~~!!」

頭目(ファーザー)!!』

「ベッジ!?オイどうした!!」

 

 突然襲われる激痛に踠き苦しみ周りが何事だと心配し駆け寄ってくる。余裕がないおれは何が起きているのか簡潔に説明した。

 

 今、会場内にいるビッグ・マム海賊団が「大頭目(ビッグ・ファーザー)」の周りを包囲し正気に戻ったビッグ・マムが怒りの形相でこの城を破壊している。

 

 だから、これから命懸けの逃走策に出る。

 

 まず、「大頭目(ビッグ・ファーザー)」は的が大きすぎるので一度人間に戻りシーザーがおれを担いで空から逃げる作戦だ。

 

「オイ!それじゃアルガはどうなんだ!!!」

「知るか!こっちにゃもう余裕がないんだ!!骨とあのミンク族も写しを入手し次第サニー号へ直行してすぐ出航できるように動いているハズだ。はやくしねェと奴らに先回れるぞ!!!」

「だけど……!!」

「ベッジ君!!」

「オッサン……?」

 

 そこでおれの名を呼ぶのは……先日発見し救出したシフォンの父、パウンドだった。

 

「うぬからも、もう一度頼むのよね!!あんな子が理不尽に痛い思いをしてひとり取り残されるなんて可哀想なのよね!!あの子とうぬは短いけど一緒に航海をした友達なのよね!!!」

「パパ……」

「オッサン……」

 

 パウンドお義父様の訴えにシフォンと麦わらがしおらしくなると一緒におれを見て目で訴えかける。

 

「助けて貰っておいて厚かましいがお願いなのよね!!!あの子をどうか……救って欲しい!!!」

「…………」

 

 貴方にそこまで言われちゃ……やるしかないでしょうが。

 

 元々、お義父様の顔も知らなかったおれ達がこうして見つけられたのは鬼の戦漢から情報を聞いたお陰でもある。それに、ここで仁義に欠けるマネをすりゃ……ファミリーに示しがつかねェわな。

 

「仕方ねェ……。予定追加だ!機を伺いつつ鬼の戦漢を奪還しこの会場を出るぞてめェら!!!」

頭目(ファーザー)~~ッ!!!』

 

 全員にそう伝えると皆が盛り上がる。お義父様も感謝の気持ちでいっぱいになり涙を溢す。

 

「ししし!よかったこれでアルガを……サンジ?」

「…………」

 

 麦わらが呼ぶが反応せず黒足はジェルマの方へと歩いていく。そして、こんな状況だってのに家族の縁を切るだの二度と現れるななど言い出した。

 

 言いたいことを言い終えると今まで黙っていたジャッジは黒足の言葉を受け入れる。どうやら黒足とその親族との折り合いが付いたらしい。

 

 しかも、どういう風の吹きまわしなのかジェルマが力を貸してくれるそうだ。今は少しでも戦力が欲しい。これで少しは生存率も……ッ!?

 

「ウオッ!?」

「今度は何だベッジ!?」

「外が騒がしいと思えば「大頭目(ビッグ・ファーザー)」が揺れる程の強風!?──ッ!!?……オイ、麦わら」

「ん?何だ?」

「鬼の戦漢はよォ……"動物(ゾオン)系"の能力者なのか?」

「は?ちげェけどそれが何だ?」

「じゃあよ───ありゃいったい何なんだ?」

『───ッ!!!?』

 

 おれの言葉で皆が一斉に窓の外へ視線を向けた。そして、漏れなく全員同じように表情が固まってしまう。

 

 コイツらの視線の先、外では今───

 

 

「ハハ、アハッ……アハハハハハ!!!!」

 

 

 会場をめちゃくちゃに暴れまくる怪物───カタクリの拘束を解き異形なモノへと変貌した鬼の戦漢の姿だった。

 

「ギャァアアア!!助け──ガッ!!?」

「何だよアイツ!?カタクリ兄さんに捕まったと思えば急に姿を──ヒィィッ!」

「バケモノだァ!!ママ!ママァ~~!!!」

 

 漆黒の翼で宙を舞い、魔法陣のようなものからピアノの鍵盤でできた腕を出現させ相手を叩き潰す。それだけじゃ飽きたらず瞳孔が開いた目から、口から、周りのドクロから光線を放ち全てを焼却する。

 

 その姿は鬼なんてもんじゃない。あの狂喜に満ちた笑みをする奴の姿は───まさに魔王だった。

 




どうも皆さんもしロマです!
44話をご覧くださりありがとうございます!

今年最初の投稿がこんなにも遅れてしまい申し訳ありません!リアルの方が色々と立て込んでしまい中々書く時間がありませんでした……。

今年の抱負は『目指せ完結!』なので未完にはさせません!今年も宜しくお願いしますm(_ _)m
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