あなたにもう一度毛布をかけるため 作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!
感想で「1話にしてランキング1位おめでとうございます!!」というコメントがきて1分ほど放心しました……え?マジで??(今だ信じきれず)(゚ω゚;)
こんなにも高評価を貰えるとは……これからも頑張らねば!!
それでは続きをどうぞ!!(* >ω<)つ
拝啓、鬼姫様。いかがお過ごしでしょうか?お腹を減らしていませんか?体調はよろしいですか?私がいなくてもちゃんとしているか心配です。
あれから約5年の時が経ちましたが未だにあなたに対する扱いを変えられません。きっと大きくなっておられるでしょうが私の中ではまだまだ子供のままです。今では私の方が子供なのですが……。
さて、そんな私ですが今は───。
「さっさと紅茶を持ってくるえ!このノロマめえ!!」
「はいっ!申し訳ありません!!」
絶賛奴隷として日々を過ごしております。
……誰か人生のリセットボタン持ってない?(二回目)
「ハァ……今日も終わった……」
今日も地獄のような一日を乗りきった俺は日付が変わるぐらいの時間にようやく我が家である飼育小屋へ帰宅した。
そう、飼育小屋だ。別名「
これは、どっかの天竜人の思いつきで作られた制度であり、わざわざ下界まで買いに行かずに済むよう奴隷の生産を目的にこの養人場が誕生したらしい。
産まれてくる子供には反逆心を覚えさせないよう幼少期の頃から教育し心まで奴隷に育て上げる。これを奴隷育成政策と呼ぶ。つまり人間で家畜を作ろうってワケだ。イヤ胸糞~~~~……。
マリージョアの奴隷解放といえばフィッシャー・タイガーだけど、年を逆算しても後2年は待たなければならない。いやツラすぎるよーー。ここで産まれてからずっと己は奴隷であると思い込ませるよう教え込むんだもん。
産まれた子供には既に飼い主が決まっており物心ついてからは奴隷の思想を植え込み5歳から奴隷として働かされ始める。
当たり前の話しだが産まれたばかりの赤子は一人じゃ生きられない。なので最低限親と一緒に過ごさせつつ奴隷として育てる。そういった経緯で今の養人場ができたのだ。
「あら、おかえりアルガ。今日も一日頑張ったわね」
「うん、ただいま母さん」
小屋に着くと母さんが出迎えてくれた。名前はソールといいウェーブのかかった綺麗な金髪をしている。どうやら今日は早く帰れたようだ。痣の数が少ない。
「あとはお父さんの帰りを待つだけだけどまだ帰ってこないのかしら?」
「あっ、もうすぐ帰ってくるよ」
「えっ?」
俺がそういうとドアが開きひとりの男性が入ってきた。
「帰ったぞ~~。いや~スマンなアルガ、ソール。遅れたっ」
「もう、遅いわよアナタ。心配したじゃない」
明るい感じで現れたのは俺の父さん。名前はリベルといい体格のいい大男だが、普段からこんな感じで奴隷の身でありながらその笑顔を絶やさずそれでいてよく働くため天竜人からの受けはそこそこ良い。
母さんもそんな父さんにつられてか普段から笑顔が多く周りの人達から評判がよかった。
俺はそんな両親の間から産まれた子供アルガとして生活している。
「それにしてもアルガ、よくお父さんが帰ってきたのが分かったわね?」
「うん、
「あらそう?わたしは聞こえなかったのだけど……」
もう歳かしらね~と呟きながら就寝の準備を始める。
「そういや、アルガはまだ寝ていないのか?明日も早いだろう」
「うん、俺もさっき帰ってきたばかりだから」
「アルガが優秀だからって次々と仕事を押し付けてくるのよ」
前世の記憶もあって働き始めた俺は周りより物覚えが良いと評価され他の子供達よりも多く働いていた。
最初は面倒な仕事はさっさと終わらせて自分の時間を作ろうと考えたがそんなことを天竜人が許すハズもなく終わった端からどんどん仕事を増やしてきやがった。
少し考えれば分かったことだろうに俺のバカ野郎……。
「アッハッハッハ!そうか!流石はおれの息子だ!だが仕事は明日もある。早く寝るといい」
「うん、そーする」
「何言ってるの。早いのは皆でしょ?ホラ、皆で早く寝るわよ」
「おっ、それもそうだな!よし寝るか!」
そうして俺達は3人で同じ藁の上で寝転がり両親は眠りに就いた。
俺も眼を瞑るが寝るわけではない。意識を張り巡らせ集中する。すると、さまざまな声が聞こえ始める。
隣の小屋からは3人……向かいからは4人。外には2人ペアが5組……。よし、だいぶ見聞色も使えるようになってきたな。
寝る時間帯の他にも少しの時間があればこうして覇気の訓練を行っていた。
いつかくる決戦のために……。
あれから約1年が経った頃、事件は起きた。
天竜人が飼っていた猛獣の鎖が外れ暴れだしたのだ。幸いすぐに衛兵達がやってきて騒ぎはすぐに収まったがその被害は大きく騒ぎに気付いた天竜人達がワラワラと集まっていた。
この時、俺もたまたま飼い主の天竜人の連き添いで近くを通っており野次馬で見始めた飼い主と一緒に現場を見ると……そこには父さんが倒れていることに気が付いた。
血の気が引くのを感じた。気付くと俺は走りだし倒れている父さんの元へ駆けつけた。
「父さん!!」
声をかけるも返事はない。いつもならうるさいぐらい声を出す父さんだが今は静かで何も聞こえない。
いや、見聞色を使うとまだ微かに声が聞こえる。まだ助かる!
「スミマセン!!誰か───」
しかし、気が動転していた俺は忘れていた。
俺や父さんが何者なのかを。
「ア~~ア、こいつ動かなくなったえ。まあ、壊れたのならすぐ新しいのを買えば済むえ」
「あっ」
すぐに治療すれば助けることもできただろうが、父さんは奴隷。死んでもまた新しい奴隷を用意すれば解決するのにわざわざ手間をかけてまで治療なんてしない。
出血が止まらず倒れている父さんを見て誰ひとりとして助けようと動くものはいなかった。
そして、次の瞬間俺の首輪が引っ張られたまらずその方向へ倒れた。
「この奴隷め!主人の元から離れ使えなくなったゴミに触れるとは!お前汚いえ!」
「グエッ!ゴホガハッ!」
飼い主の天竜人は倒れこむ俺に金槌を手に持ち叩き続けた。
「お前は!わちきの!奴隷!なんだから!そんな!壊れた!ゴミに!近付くんじゃ!ないえ!」
「ガッ!グッ!ゴッ!オォ……ッ!」
しばらく制裁は続き疲れてやめた頃には俺は動ける状態ではなかった。
「ハァ……ハァ……。全く世話かけさせやがって。オラ!とっとと行くえ!」
「……アァ……ドゥ……ザ……ン……」
引っ張られる力に逆らえず俺は倒れる父さんを見詰めたまま飼い主の家まで引きずられその場を後にする。それが俺が最後に見た父さんの姿だった。
親って何なのだろう?
父さんが亡くなったあの日から俺はたびたび考えるようになった。二度の人生を送りどちらともロクな親ではなかった俺には三度目の人生で出会った今の両親との距離感がイマイチ掴めきれずにいた。
なぜ俺にご飯をくれるのだろう?
なぜ俺に話しかけてくるのだろう?
なぜ俺に……優しくしてくれるのだろう?
元々、以前から接してくる度に俺は心のどこかでそんな疑問が浮かんでいた。何かをしたわけでもないのに笑いかけ頭を撫でたり抱き締めてきたりする。
そんな疑問を強く感じるようになったのは父さんが亡くなった日を境に母さんが変わってからだ。
いつも笑っていた母さんは笑わなくなった。
いや、俺がいる時は笑顔に戻るが俺がいなくなったり寝ると笑顔が消え悲しい声が聞こえてくる。見聞色を鍛えているとそういった声がずっと響き渡り俺はその度に何度も考え込んだ。
そもそも俺は何で父が倒れた時あんなにも焦っていたのだろう。いつもはうるさくて敵わないから少し離れていたぐらいなのに。
俺を誉めてくれたから?俺を気に掛けてくれたから?
分からない……。でも、あの時間違いなく俺の中で何かが叫んでいた。助けようと必死になっていた。
前世でONE PIECEを読み始め俺は道徳心を学んだ。善意の気持ちや友情など。あの頃は確かにそういった気持ちの大切さを教えてくれた。
しかし、それはあくまで客観的に見た感想であり実際にそういった感情がどんなものなのかを俺は知らずにいた。
そりゃあそうだ。だって、経験がないのだから。誰かに愛して貰ったことなんて。
知らない感情をいくら考えたところで答えが出るハズもない。そんな分かりきったことなのに俺は考えることをやめられなかった。
あれから母さんは数日過ぎても回復するどころかむしろ悪化し体調を崩し始めた。
母さんの分まで働こうと今まで以上に頑張って生きていたある日、俺に運命の出会いが訪れた。
いつものように夜遅くまで働き小屋へ帰る途中、森の茂みからガサガサと物音が聞こえた。何かと思い茂みの中を見るとそこにいたのは───。
「フィッシャー・タイガー……?」
「ハァ…ハァ…!グッ!クソッ見つかっちまったか!」
大きい体格に赤い皮膚。そして人間にはない魚のヒレ、間違いない。前世でも見たことがあるONE PIECEの原作キャラ、フィッシャー・タイガーであった。
タイガーは俺に見つかったことに焦り警戒心を剥き出しにするが俺はかまわずに近づく。
「動かないで。酷い傷……早く手当てしないと……」
「俺に近づくなァ!人間っ!!」
「ガハッ!」
タイガーは近づく俺の胸ぐらを掴み木に押し付ける。体格差があり持ち上げられた俺は抵抗できなかった。
そうだ。今は原作から14年前……つまり、タイガーがこのマリージョアから逃げ出す年だ。それまで人間に酷い扱いをされていたのだから俺が近づけばこうなるのは明白だった。
「お前をここで野放しにしちゃあおれがここにいたのがバレる。お前には悪いがここで大人しく死んでもらう」
「グッ……!グエッ」
首を締め付ける力が増し俺は呼吸をすることも難しくなってきた。マズイ……興奮して正気の状態じゃない。このままじゃ本当に……。
「苦……しい……ヤメ……テ……」
「だろうな!だったら早く楽に……」
楽にしてやる。そう言わせる前に俺は気力を振り絞り口を開いた。
「子供を……殺すの……?」
「なんだと……」
少し力が緩まる。俺はその隙をついてタイガーの手を振りほどいた。
「っ!?しまった!」
「待って!正気に戻って!これ以上……自分を追い込まないで!!」
「───っ!?」
俺の制止の声をあげタイガーは一時的に止まる。ようやく己が何をしようとしたのかを実感したようだ。
本来、タイガーは人間を憎むことはあっても決して子供に手を上げるような男ではない。それはコアラの件を見て明らかだ。
むしろ、コアラのような子供はそんなに嫌いではないハズ。タイガーは今そんな子供に手をかけようとしたことに対し体を震わせていた。
「おれは……今、何をしようと……」
「落ち着いてっ。あなたはまだ誰も手にかけていない。まだ
「っ!?オ、オメェ……」
「見れば分かるよ。オジサンは今まで奴隷だったんでしょ?なら今まで正気じゃなかったんだよね?俺も奴隷だからその気持ち分かるよ」
自分の過ちを後悔するタイガーを宥めるように俺は背中をさすった。
「……こんなガキに諭されるとは情けねェ」
「情けない気持ちがあるのは自分が正常だって証拠だよ。ホラ、怪我してるんでしょ?見せて」
そういうとタイガーは大人しくなり抵抗することなく手当てを受け入れた。といっても消毒液や包帯なんて大層なものはないから今汲んである桶の水で洗い流して服の布をちぎって巻いただけだけど。
「なあ、聞かねェのか?」
「何を?」
「気づいてんだろ?おれの首輪と手錠」
「ん、まあ」
タイガーの言う通り彼の首や手には首輪も手錠もない。どこかで外して今は逃亡のために身を隠していたのだろう。
「それがどうしたの?」
「なんだと……?」
「オジサンはここが嫌で逃げ出そうとしてるんでしょ?ここから出たい気持ち分かるしだったら誰にも言わないよ」
「ならお前はなぜおれに助けを求めないんだ?今おれと一緒に行けば抜け出せるかもしれねェのに」
簡易的な応急処置を終えた俺はタイガーと向き合った。
「冗談っ。オジサン怪我してるじゃん。そんな状態で俺も一緒に行ったら迷惑かけちゃうよ。せっかく自由になれたのにまた捕まったら嫌でしょ?」
「……何でそこまで人に優しくできるんだよ」
「じゃあさ、いつかオジサンが助けに来てよ」
「なに?」
オジサンは驚くように聞き返す。
「今のオジサンじゃ途中で力尽きちゃいそうだしね。それならいつか万全の状態で助けに来てくれた方が俺も安心できるよ。まあ、この地獄にもう一度戻ってくる勇気があればだけどね」
「……ハッ。ガキが言うじゃねェか」
そういうとタイガーは少し笑い立ち上がる。
「上等だガキ、だったら約束してやる。この怪我が治って力をつけた時この地獄から助けにきてやる。……人間に借りを作りっぱなしはごめんだからな」
そう宣言すると彼は歩み始める。
「このおれ、フィッシャー・タイガーの名に懸けて誓ってやる!ガキ……お前の名は?」
「アルガ」
「アルガか。よし覚えた。待ってやがれ?すぐ助けに来てやるからよ」
そういうと今度こそ走りだしタイガーの姿は森の中へ消えていく。そんな背中を見続け俺は抑えていた気持ちを吐き出した。
「あれがフィッシャー・タイガー……カッコよかったなァ~~」
俺は産まれ変わって初めて原作キャラに会えたことに喜びだす。
うっわ~~!あれがリアルタイガー!?めっちゃカッコいいやん!会えるとか嬉しすぎて興奮がとまらねェ!!
それに予想外だったのは俺を助けに来てやるって……まさか来年の聖地マリージョア襲撃のこと言ってんの!?奴隷解放で俺を救いにくんの!!?タイガーは俺にとってのニカかよ!!
【嬉報】
タイガーは俺のニカだった!!!
興奮しすぎて何言ってるのか分からなくなってきた。まあ、とにかく今日はもう帰って明日に備えて寝るとしますか。今夜寝れるかなァ~~?
そうして俺は浮き足だって小屋へ帰るのだった。
タイガーと出会った日から1年が経ったある日の夜、運命の日は訪れた。
───ボカァァアアアンッ!!!
大きな爆音が鳴り響き、聖地マリージョアは現在大混乱に陥っていた。
「きたっ!!」
こんな所に襲撃をする奴は一人しかいない!
俺はこの騒ぎが誰の仕業なのかを瞬時に理解し急いで小屋へ走った。
「この日のため特訓はしてたんだ!急いで母さんを連れて行かないと!」
この1年で俺の武装色もだいぶ鍛えられた。もう少し練度が上がれば内部破壊も可能になるだろう。そうすれば、首輪だって外せる。
しかし、ここは天高くに建てられた聖地マリージョア。逃亡手段がなければたちまち捕まってしまう。
だから今まで耐えてきたけど今日でそれも終わりだ。この騒ぎに便乗して母さんと一緒に逃げ出そう!
そう決めた俺は仕事帰りでいつも通る明かりのない夜道を駆け抜け急いで小屋へ帰る。
俺は今まで感じていた体の重さを嘘のように感じず軽快な足どりでドアを開けた。
「母さんっ」
しかし、そこにいたのは……部屋で倒れこむ母さんの姿だった。
「母さんっ!?」
俺は駆け出し倒れている母さんを抱え声を張り上げる。
「しっかりして!大丈夫!?」
「……あ、アルガ?ごめんね……お母さんどうも限界みたいなの……」
「限界って……っ!?」
抱き抱えていた腕に何やら生暖かい感触がした。見ると俺の手は真っ赤に染まっていた。
「母さん!これって……!」
「母さんも歳ね、お仕事の帰り道でドジっちゃって……」
「もういいよ!喋らないで!」
母さんを抱えているとある既視感に気付いた。これは忘れもしない俺が鬼姫様と別れる直前に感じた体が冷たくなる感じ……!
ヤバイと思い俺は慌てて周りを見渡す。しかし、どれも止血に使えそうな物はなかった。
何でだよ!ようやくこの地獄から抜け出せるチャンスがきたってのに……!!
俺がそう嘆いていると母さんは意外そうな目で俺を見ていた。
「驚いたわ……まさかアルガ……悲しいの?」
「は?そんなの決まってんじゃん!」
「…………ごめんなさい。わたし、あなたに謝ることがあるわ……」
「えっ?謝ること……?」
俺が聞き返すと母さんは苦い顔をして語り始める。
「ここで産まれてくる子供は皆無駄な感情を出さないよう天竜人のためだけに動く奴隷にするべく躾けているわ。他の小屋の子供達のように……」
そう、ここには俺の他にも何十人もの子供がいてその全員が無駄な感情を抜き取った奴隷に仕付けられる。
精神を形成する前の子供と違って既に精神が大人だった俺はそうならずに済んだ。
「お父さんが亡くなったあの日、リベルが死んだショックと……あなたの変わらなかった顔を見てわたしは絶望した……ああ、この子もそうなんだって……」
でもね、と震わせた声で母さんは涙を流した。
「でも違った……。あなたも悲しんでいたのね……。それを分かってやれなかったなんて……ごめん、ごめんねェ……」
「母さん……」
最近の不調はそういった心境からきたものだと知り俺は後悔した。
「オ……オォ……」
違うんだ。俺は元々親とまともに接することなく生きてきた。1回目も2回目の人生でも……。それが普通だったから。だから、今回も父さん母さんとあまり話さなかっただけなんだ。
でも……それが間違いだった……!!
なんだよ畜生……全部俺のせいじゃねェか!!俺がちゃんと母さんと話し合っていれば……こうはならなかったんじゃねェのかよっ!!!
「オオォォォオ"オ"ォオオ"ォッ!!!!」
俺は後悔や怒り、悲しみなどがぐちゃぐちゃに混ざり目の前が暗くなるような錯覚に陥った。
だが、次の言葉で俺は正気に戻った。
「そして、ありがとう」
「……えっ?」
「だってあなたは天竜人の教育に負けない思いやりのある強い子だって分かったから」
徐々に体温が下がっていく母さんだが止まらず喋り続ける。
「これでわたしが逝っても先に向こうで待ってるお父さんに言えるわ……」
「母さん……!」
「『どうだ!わたし達の息子は天竜人になんて負けない強い子なんだ!』って……」
「……っ!?」
母さんの言葉に俺はもはや何も言えなかった。
「あなたが産まれる前。奴隷にされたあの時。絶望していたわたしにお父さん、いえリベルはこう言ってくれたの」
『笑えないならおれが笑わせよう!笑顔のキミはきっと太陽のように美しいから!』
「嬉しかったなァ……。あの言葉を聞いた瞬間、絶望に囚われていたわたしの心は解放されたの」
「そんなこと言ってたんだ……」
何と言うか……父さんらしいや。
「それからよ。どんな時でもわたしが笑うようになったのは。絶望したって変わらない。なら自分や周りの皆も笑顔にしようと決心したわ」
そんな経緯があって俺の両親はいつも明るかったのか。確かに、養人場にいる人達は二人の笑顔を見て釣られて笑ってたっけ。
そして、母さんは思い更けるのをやめ改めて俺を見る。
「あなたにはまだ分からないと思うでしょうけど……。そんなわたし達の子が優しい心を持って今を生きている。それがどれだけ嬉しいことか……!」
母さんは肩を震わせて俯くと何かを決心したらしく顔を上げる。
「アルガ。あなたにひとつ教えるわ」
「……うん」
「不幸の数よりも自分と他の人を幸せにした数を数えなさい。それはあなたが生きた証であり誇りなの」
「証があったって別れたら悲しいよ……?」
そう、もう既にほとんど体温を感じられない。このままだと死んでしまう。
だけど、それを承知の上なのか母さんの顔には恐怖や絶望といった感情は感じられなかった。
「確かに別れは悲しいわ。けれど、わたしはパパと出会えたこと。そして何より……あなたが産まれてきてくれて幸せだった。こんなにも幸せを抱えて逝くんだから絶望なんてしないわ」
「母さん……」
「だから生きなさい。笑った数だけ人は強くなる。──絶望ごとき生きた笑顔の数で捩じ伏せなさい」
母さんは芯の強い瞳で俺を見詰めてくる。こんな眼をした母さんを見たことがなかった俺の体は動けなかった。
「アルガならきっとできる。だって……」
そして、そんな強い瞳からいつもの優しい眼に戻る……いや、いつも以上に優しく俺の心を包み込むような瞳になった。
「あなたの未来はそんなわたし達の"夢"なんだから……」
………………。
俺はそんな母さんの言葉に圧倒された。だが同時に自分の胸を締め付けていた
「母さん……。ひとつだけ聞いてもいい?」
「ええ……なァに?」
『あんたなんて産まなきゃよかった!用がないなら近寄んじゃないよ!!』
言葉に出すことができなかった……前世から言いたかったそんな疑問。俺はこれまで一度も聞けなかった……聞きたかった思いを母さんに聞いてみた。
「俺は……産まれてきてよかった?」
母さんは優しく微笑みすぐにこう答えた。
「当たり前よ。わたし達はアルガを愛してる。それにわたし達だけじゃない」
「えっ?」
「生きていればあなたを愛してくれる人はもっとできる。そう思えばホラ……笑えるでしょ?」
その時、俺は自分が涙を流しながらも笑っていることに気付いた。
「俺からも母さんに約束してほしい」
「……?なにかしら……」
「俺は必ずここから抜け出して海へ……自由な海へ出るから……母さんと父さんは笑って見守っていてほしい」
母さんの眼が見開き、これまで以上の笑顔になり涙の雫が頬から流れ落ちた。
「そうね。そうなったらきっと……あなたと離れても
そして、力が抜けるように母さんは眠りに就いた。そこには悲しみなど一切感じさせない幸せな笑みを浮かべたまま。
「…………」
『おじさ~~ん!』
俺の脳裏に鬼姫様が過る。
俺は元々打算目的で鬼姫様に近付いた。自分が助かるにはこれが最適と考えたからだ。
しかし、一緒にいればいるほど俺の中で鬼姫様への考え方が変わっていくのが分かった。ひとりにさせたくない。元気に育って大きくなってほしい。そういった気持ちが強くなった。
それが何なのかは分からなかったが少しずつ成長していく鬼姫様を見て胸が暖かくなるのを感じていた。
そうか……これか……。これが今まで分からなかった感情だったのか……。
「ありがとう……父さん……母さん……。そしてありがとう……鬼姫様……!」
俺はこの日、三度目の人生を経て初めて"親からの愛情"を知った。
どうも皆さんもしロマです!
2話をご覧くださりありがとうございます!
ついに出された主人公の名前。今回はアルガとその両親について紹介します。
アルガ
本作の主人公。当初ここまで追い込ませる予定ではなかったが逆境で苦しむ姿を書いていた作者がゾクゾクしてしまったがためにここまで苦しませてしまった不憫なキャラ。
名前の由来は戦艦「大和」の艦長、有賀 幸作からきている。
リベル
アルガの父親。常に明るく笑っておりその笑顔は周りも笑顔に変えてしまう不思議な男。そんな男だからこそ彼女は太陽のように明るく笑う。
名前の由来はラテン語で自由。もともと自由ではなかったところを解放されて自由になった、自由を獲得したという意味。
ソール
アルガの母親。この先アルガが成長するためにどうしても必要だった存在。道徳心で唯一分からなかった愛情を本当の意味で教えてくれた。そんな偉大なこの人達は今後もアルガの成長を笑って見守るだろう。
名前の由来はラテン語で太陽。明るく笑う彼女の笑顔にぴったりだとリベルに言われ自身もこの名前を気に入っている。
また次回にお会いましょうでわでわ~~( ´ ▽ ` )ノ