あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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《前回、アルガのビブルカード所持者》
ロビン「……ッ!!!?」
ベラミー「アルガァ……ッ!!」
ロメオ「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!!?!?!?」
レベッカ「ウソッ!!?おじさん!!!」
サイ「恩人ンンンンッ!!!」


45話 おかえり♡

 話しは少し遡り結婚式前日。

 

 うぬは訳も分からず呆気に取られた顔で目の前の光景を呆然と眺める。

 

「フー、何とか救出成功。頭目(ファーザー)!!やりました!!」

「よし!でかしたぞオメーら!一先ず鏡から離れろ!向こうに気付かれちゃマズイ!!」

『ハッ!』

 

 ここは、どこなのねん?見たことない空間のあちこちに鏡?うぬはさっきまであの子とオーブン君が戦っているところを見てて……。

 

「ちょっとあんた!何であの子も助けに行かないのさ!!妹の恩人を見捨てるようなマネ……!」

「落ち着け!優先順位だ。アイツはまだ向こうに取っちゃ利用価値がある。だから最悪殺されはしねェ。が、コイツは別だ」

「コイツはって……誰よ。このオッサン」

「……っ!?ァ……アァ……」

 

 女性の怒鳴り声が聞こえそちらを見ると───直感でわかった。この子は……。

 

「シ、シフォンか……?」

「え?何で私の名前……あんたは……」

「記憶を抜かれる前に鬼の戦漢から聞いたんだよ。シフォン、お前の父親の事を」

「え……じゃ、じゃあ……この人が……まさか───ッ!!!」

 

 その時、うぬは無言でペンダントの写真を見せた。言葉ではなくもっとハッキリとしたうぬとの関係の証を。

 

「と、突然の事で、戸惑っているのよね。ずっと、ずっと会いたかった……会って色々話したいことがあったのよね。でも……それよりも前にこれだけは言いたかったのよね」

 

 ペンダントに写る双子の赤ん坊の写真を見せて言葉を詰まらせながらもこれまでの想いを告げた。

 

 

「結婚、おめでとう。シフォン!」

 

 

 うぬの言葉に娘のシフォンは両手で口を押さえ涙を浮かばせる。必死に堪えるように顔を俯かせよろよろと歩み寄る。

 

 そして───

 

「パ、パパ……」

「ッ!!!ああ、ああ!そうだ!!会いたかった!!会いたかったのねん!!!娘よ!!!」

「あたしにとって……家族はもうベッジとベッツだけかと思ってた。でも……ぐすっ……違った。会いたかった!会いたかったよ!!パパァ!!!」

 

 2人して強く抱き締め合いしばらくの間泣き続けた。どのぐらい泣いたのかは分からないが、気付くと知らない人達が増えていたのよね。

 

「ちょっとォー!!何でアルガも一緒に助けなかったのよ!せっかくのチャンスを~!!」

「無茶言うな!!あの時助けちまったらおれ達の移動手段がバレちまう!現段階でブリュレ誘拐がバレる訳にはいかねェんだよ!!!今回の作戦の要だぞ!!」

 

 何やらまた別の女性の怒鳴り声が聞こえてくる。そっちに目を向けると今度は見たことのある者だった。

 

「あれ?確かお前は森で会った……」

「ん?ああ、あの時ぶりね。うるさくしちゃってごめんなさいね。折角の父娘の再会に」

「ああ、いいのよね。それより……」

 

 そこでこの子、ナミから色々と説明してくれた。

 

 ここは"鏡世界(ミロワールド)"と言われる場所でリンリンの娘の1人ブリュレを伝って"現実世界"と行き来できるらしい。そして、うぬと一緒にいたあの子はこの者達の仲間らしく取られた記憶と一緒にどうにか取り返したいらしい。

 

「それなのに……な~ん~で~アルガも助けなかったのよォ!!ぶつわよ!!」

「やめろバカ!理由はさっきから話してんだろ!!それにいいか?よく聞け、連中もアイツを無下には扱わねェ筈だ!必ずおれ達をおびき寄せる為に利用する。アイツを助けるのはその時でも遅くはねェ!!」

「だとしても……大丈夫かしら。わたしなんて拷問されるところだったのよ?ジンベエが来なかったら……」

「おれも最善は尽くす。それで問題はないだろ」

「アルガ……」

 

 心配そうにそう呟く。それはナミだけではない。周りの仲間達も同じ反応だった。

 

「君は……?」

「そういえば自己紹介がまだっ……でした。お義父様、おれの名はベッジ。あなたの娘シフォンの旦那です」

「そうか君が……」

 

 どんな男なのか気になっていたが、シフォンの顔を見るに悪い人ではなさそうなのねん。それに他の人達にも慕われているみたいだ。

 

 なら……。

 

「ベッジ君。うぬからも頼むのねん。どうかあの子を救ってやってほしい」

「っ!!分かりました。こうしてお義父様を助けられたのはアイツのお陰でもあります。だから安心してください。アイツはおれ達が助けます」

 

 義理の父だからか丁寧な言葉使いでそう宣言するベッジ。彼の目には決意が感じられうぬは安心する。

 

「そういうこった。時間がねェ!作戦を伝えるぞ麦わら!!しっかり聞いておけ!!」

「おう!アルガを絶対ェ救い出して結婚式もブッ壊す!!」

 

 そうして、士気が高まり翌日に向けての作戦会議が始まるのだった。

 

 もう少し待っててほしい。必ず助けるのよねん。

 

 

 

 

 

───ゴポゴポ……

 

 ここは、どこだろう……。

 

 力が入らない。何も見えない。虚無感が続く。ただ、どこまでも暗い空間に溺れていく感覚。

 

 それなのに周囲からハッキリとした声が聞こえてくる。

 

『イヤだ』『寂しい』『助けてェ』『死んじゃう』『どうすれば』『誰か』『こわい』『消えたくない』『いたい』『どうして』『おねがい』『ダメだ』『ゆるせない』『悲しい』『このままじゃ』『虚しい』『もう』『ツライ』

 

 怒り、悲しみ、恐怖、嫌悪、孤独、不安、辛み……様々な負の感情が籠った声だけが。

 

 ただそれだけ。他は何もない。耳を塞いでも聞こえてくる声を拒絶するように俺は座り込み膝を抱えて踞る。

 

 もう、どうでもいい……。

 

 ここが何処なのか?

 

 コイツらは何なのか?

 

 何故ここにいるのか?

 

 俺は何なのか?

 

 何もかも……どうでもいい。眠らせてくれ。

 

 

 

 

 

 どうなっていやがる……!

 

 確かにおれは奴の意識を奪った。にも拘らず突然目を覚ましたかと思えばあの異形な姿に変わりおれの拘束を無理やり解きやがった。

 

 その後は会場内をメチャクチャに暴れておれの家族達が悲鳴を上げている。おれは目の前の光景を受け入れずにいた。

 

「助けて!!カタクリ兄さん!!!」

 

 おれの可愛い家族にビームが放たれる。おれに助けを求める声に応えるように家族を抱えてビームを避けた。

 

「ありがとう!助かったわ!」

「いや、気にするな。奴を捕らえきれなかったおれの落ち度だ」

 

 奴の身に何が起こったかはわからねェが、これ以上好きにはさせねェ!

 

「……ッ!!」

 

 家族を下ろし奴を止めようとしたがすぐに足を止める。何故なら"見聞色"でこれから起こる未来を見たからだ。

 

 ママが奴に襲いかかる未来を。 

 

「おい、何おれの茶会で暴れてやがんだ。これ以上カワイイおれの子を……泣かせてんじゃねェよ!!!」

 

────ズドォォオオオオオン!!!!

 

 飛び回る奴をママが跳躍し片手で鷲掴みするとそのまま床へと叩きつける。あまりの衝撃に床は崩れ大きな穴が開いた。

 

 奴はママにがっしりと頭部を掴まれていたため落ちなかったがママの並外れたパワーで掴まれちゃ一溜りもあるまい。

 

「ったく、ガキははしゃぐものだが限度ってもんがあんだろうが。おれの子供に危害を加える奴ァ……死んで詫びなァ」

「ウ、ウォオオオッ!!!ママがやったぞ!!!」

「あの化物を一撃で……!!流石ママだ!!!」

 

───キィィィン……!

 

「ッ!!」

 

 これで助かったと周囲から歓声を上げるが、未来が見えたおれは違った。

 

「ママ気を付けろ!!!そいつはまだ死んじゃいない!!!」

「んあ?」

……キ

 

 ママの手がプルプルと震え出す。何事かとママは首を傾げ自身の手を見ると徐々に握り込んだ手が開き……奴は自力で脱出した。

 

 それを見て皆は驚愕する。押さえ込んだママから抜け出すパワーに。そして、今の一撃を食らってもまるでダメージが入っていない奴の頑丈さに。

 

「何だよアイツ!!?あれを食らって無傷だと!!?」

キャハハハハハ!!!

「うおっ!?オオォォォ~~~~ッ?」

 

 脱出すると奴の左右から魔方陣のようなものが出現し巨大な鍵盤の腕が飛び出した。その腕はママを掴み頭上高く持ち上げる。

 

「ヘェ、今度はおれを叩きつける番ってか?ママママ!!舐めんじゃねェぞ。そんなんでおれにキズが……んん?」

 

 捕まっても尚余裕の表情を崩さないママ。しかし、それもつかの間ママの周りに幾つものドクロが囲む。そして───

 

アハッ♪

 

───ズドドドドドドオォォオオオン!!!!

 

「ママーーーーッ!!!」

 

 会場でビームを散々撃ちまくっていたあのドクロがママに向けて一斉に集中砲火。直撃したママは爆炎の中に包まれてしまった。

 

 数秒間に渡り撃ち続けた後はさっきの意趣返しと言わんばかりに床へと叩きつける。

 

アハハハハ!!!

「てめェ!!よくもママを──」

「やめなカタクリ」

「──ッ!!ママ!!!」

「コイツァおれの獲物だ。手ェ出すんじゃないよォ。さもねェと───」

 

 床に叩きつけられ立ち込む爆煙の中から服が焦げ付いただけで無傷のママが現れ刀身を出したコニャックを握っていた。

 

「タダじゃ済まないよ!!!”威国(いこく),,!!!」

ギギッ

 

 コニャックから放たれた斬撃、エルバフの槍が奴に向かって飛んでいく。その規模は凄まじく奴1人丸々と呑み込んでしまう大きさだ。

 

 しかし、奴が腕を交差するとそれに連動するように先程の巨大な鍵盤の腕が壁のように重なる。それによりママの一撃が鍵盤の腕に直撃し防がれた───ように見えたが……。

 

ギッ?

「ハッハアアアアアア!!!」

 

 徐々に鍵盤の腕にヒビが入ると次の瞬間粉々に砕かれ奴を吹き飛ばした。流石ママだと感心するがある違和感に気付く。

 

 今の技は全てを削り取る技だ。なのに奴は直撃して()()()()()()()。つまり、原型を保っていると言うこと。

 

「ホウ、今の食らってピンピンするとは……随分と骨があるじゃないか。面白れェ!!!」

キキ……キャハハハハハ!!

 

 会場外へ飛ばされていったにも拘らずすぐさま黒い翼を広げ戻ってきた。それを見てママは久々に手応えを感じイキイキとしていた。

 

 どちらの攻撃も規模が大きく被害が広がり続けもはや怪物と怪物との怪獣大戦争だ。このままでは会場が持たない。

 

 そう、悩んでいるともう一つの敵が動き始めた。

 

「カタクリ様!!ベッジの奴らが出てきました!!」

「そうか、ようやく観念したか」

 

 あの怪物はママに任せておれ達は他の連中を消すとしよう。

 

 姉弟達がこぞって裏切り者であるベッジとジェルマ、シーザーを囲って銃を一斉射撃した。だが、その銃弾は全てジェルマが壁となり防ぎきった。

 

 流石はジェルマの科学力。ただの銃じゃあのスーツは通らねェか。

 

 防御力だけではない。各々がオーブンやダイフクやスムージーなどウチの主力メンバーと渡り歩いている。やはり一筋縄では行かないな。

 

 敵ながら称賛していると何か不足の事態が起きたのかベッジは焦りながらある方向へと叫んでいた。

 

「あ!おい!勝手にひとりで行くな!?」

「ウオオオオオオオ!!!」

「この会場内で単独で動くとは……よほど死にてェと見た」

 

 何とこの敵だらけの会場で無謀にも麦わらがひとりママの方へと向かっていた。いや、ママと対峙している仲間の元と言った方がいいか。

 

 だが、このおれがそれを黙って見ていると思うなよ?

 

 おれは腕をモチに変え麦わらを捕らえ行く。麦わらに近づくにつれモチが肥大化していき人をまるまる1人呑み込める大きなモチとなり麦わらを襲う。

 

 しかし……。

 

「ッ!ウッ、あぶねェ!!」

「何……?」

 

 後ろから迫るおれのモチから麦わらは振り返りもせずジャンプし避けた。そう、避けたのだ。

 

 "見聞色"で捕まる未来を見たおれのモチから……コイツはその未来を覆した。

 

 どういう事だ?偶然か?いや、まさかコイツ……。

 

「試してみよう。”(やなぎ)モチ,,!!!」

「ッ!!」

 

 足をモチに変え複数の足に分裂させると"武装色"を纏った踵落としを一斉に振り下ろす。今回も"見聞色"で麦わらの行動を先読みして攻撃したが……やはり避けられてしまった。

 

「何だとッ!?カタクリ兄様の攻撃を避けやがった!!」

「ヘェ、話には聞いてたがホントに野郎の"見聞色"も未来視レベルとはな。カタクリ以外に初めて見たぜ」

 

 麦わらが避けたことで動揺する姉弟達。そして、ほくそ笑むベッジの言葉と今見た麦わらの動きで確信した。

 

 そうか、お前もおれと同じ領域(ステージ)に立っていたか。これならクラッカーが敗れたのも納得が行く。

 

「だが、これ以上はママには近づけさせねェ。”モチ(ツキ),,ィ!!!」

「ゲェエッ!?腕から槍ィ!?」

 

 腕から三叉槍「土竜」を取り出し構えた手を大きく膨らまし捩じって放つ。ドリルの如き高速回転を伴う強烈な槍の突きが麦わらを襲った。

 

 今度は振り向かないまま避けるなんて事はできず上体をのけ反って避け足を止めてしまう。

 

「クソ~!早くアルガのとこまで行きてェのに!!」

「諦めろ。お前はおれが直々に殺してやる。あの怪物擬きもママが相手じゃ一溜りもない。すぐ死ぬ」

「……ッ!!」

 

 おれの言葉に反応した麦わらは歯軋りし睨んでくるがすぐに冷静になり一度深呼吸する。

 

「……お前とは戦いてェが、今はダメだ。だから───」

「安い挑発には乗らねェか。次にお前は「そこを退け」と言うが───」

 

 麦わらがおれに向かって拳を振り上げる。おれも応戦のため拳を構え───

 

 

「そこを退けェエエ!!!」

「諦めろ」

 

 

 お互いの拳がぶつかり合う。その瞬間、黒いイナズマが走り近くにいた連中が泡を吹いて気絶した。

 

「こ、これは……覇王色の衝突!!?」

「嘘だろ!?ママやカタクリ兄さんと同じ……!!あの麦わら小僧もそうだって言うのかよ!!?」

「離れろォ!2人の戦いに近づくなァ!!」

 

 今のを見ていた姉弟達は危険と判断しおれ達から距離を取る。正直、おれも驚いた。まさかコイツもおれと同じ"覇王色"を持っていたとは。

 

 これは、ますます……潰し甲斐がある。

 

「何ニヤついてやがるコノヤロー!!」

「マフラーで口元は見えねェ筈だが?」

「見えなくてもそんぐらいわかんだよ!!」

「……フン、まあいい。すぐに決着をつけるとしよう。向こうも片付く頃合いだ」

「何……ッ!!?」

 

 おれが遠くを見ると麦わら同じ方向を向く。その先にはコニャックにプロメテウスを纏わせた業火の剣が奴に直撃していた。

 

「まさか合体技まで出させるたァやるねェ。だが、いい加減やられちまいな!!”皇帝剣(コニャック) 破々刃(ハハバ),,!!!」

ギッ、ガガァァアアア!!!

 

 振り抜かれていた一撃が奴の腹に直撃すると、ホームランしたボールように遠くへと飛ばされていった。

 

「アルガァァァ!!!」

「ママママ!!手こずらせやがって、頑丈な敵ってのは面倒でイヤだねェ~……ンァ?」

 

 決着がついたとママが笑うとそこへ1人の男が現れた。今回のママ暗殺の実行犯にして裏切り者、ベッジだった。

 

 どうやら、ジェルマの力を借りてあそこまで行けたのだろう。しかし、あれはあまりにも無謀じゃないか?

 

 さっきの状況ならまだしもベッジじゃママにキズ一つつけられやしない。いったい何を……。

 

「兄さん!!!」

「ん?プリンか、ここは危ない。早く避難していろ」

「違うの!!!止めるのは麦わらじゃない!!ベッジ!!!早くベッジを殺って!!!」

「何?どういう事だ」

「ベッジは……ママにとって最悪の情報を──」

 

 プリンが必死訴えかけるが既にベッジはママに語り始めていた。義理妹のこの慌てよう……ただ事ではない。奴が何を話すと言うんだ。

 

「ククク、よォ……ビッグ・マム」

「何だいベッジ。わざわざおれに殺されに来たのかい?」

「まさか、少しだけおれの話を聞いて欲しくてね」

「裏切り者の分際で……おれに話を聞けだとォ?」

「ああ、絶対に興味を示す筈だぜ?何せおれが今から話すのは───マザー・カルメルの行方だからなァ」

「───ッ!!!!」

 

 マザー・カルメル。それはママが後生大事にしていた写真のシスターの名前。おれ達家族にも詳しくは話してくれない謎多き人物だが……それが何故───

 

「ダメよ……ダメダメダメダメ!!カタクリ兄さん!!!これ以上アイツを喋らせないで!!!」

「どういう事か不明だが妹の頼みなら……ッ!チッ!」

「お前の相手はまだおれだろ!!」

 

 首を後ろへのけ反ると、麦わらの拳がおれのさっきまでいた顔面の位置を通過する。

 

 麦わらがママの所へ行けないように、おれも同じくママの所へ行けなかった。これは早急に片付けた方が良さそうだ。

 

「もう遊びは終わりだ。”雪崩(なだれ)モ───」

「兄さん!!もうダメ間に合わない!!」

 

 地面に手つけ覚醒技を使用しようとした時、プリンが絶望した顔でそう叫ぶ。それと同時にベッジから衝撃的な言葉を言い放った。

 

 

「マザー・カルメルはずっと前に死んじまった。いや、殺されちまったのさ。───お前になァ」

 

 

 時が止まる感覚、それはおれだけでなくママも同じだった。だが、次第に顔を真っ赤にし怒りを露にする。

 

「マザーが……殺された……?おれに……?…………ッ!!!ふざけてんじゃねェよォ!!!!」

 

 怒りで無意識に"覇王色"が迸る。それにより周囲の者達が次々に倒れていく。

 

「おれはマザーを尊敬してんだ!!それを事もあろうかおれが殺しただァ~?よくもまあそんな大ホラが吹けたもんだねェ……おれの前でよォ!!!」

「ホントは薄々気付いてたんじゃないのか?」

「ア"ア"ン"!!!」

 

 ここまで怒り狂うママは久々に見る。その迫力だけで思わずたじろぐ怒号と威圧感にベッジはものともせず堂々と向かい合う。

 

「当時、マザー・カルメルは能力者だった。しかし、ある日を境に姿を消しその能力はお前に引き継がれている。何でかねェ~?」

「……ッ!!!そ、そりゃオメー……!」

「取り込んだからじゃないのか?」

「ッ!!」

 

 ベッジの言葉に心当たりがあるのかママの顔色が徐々に青白いものへと変わっていく。そして、ベッジは言い放った。

 

 

「死因はお前の「食いわずらい」。ここまで来りゃ解るよな?お前が愛してやまないマザー・カルメルは───お前がァ!!!食っちまったのさ!!!!」

 

 

 ベッジの言葉にママは勢いが止まり後退る。

 

「う、ウソだ……おれが……おれが……」

 

 ママは頭を抱え苦悶の表情になる。もはや目の前のベッジなど気にもせずただその場で呻き声を上げる。

 

「ア、アア……アァ……ッ!」

 

 瞬間、おれの"見聞色"に最悪の未来が見えた。先程のように写真を割られ泣き叫んだママが───

 

「まさか、こんなことが───ッ!!?」

 

 

「ヒャアァァァアアアァァアアアァァアアアアア!!!!!」

 

 

 本日二度目の絶叫が会場中に轟き渡った。もはや咆哮とも呼べるそれは一度目の時とは比べ物にならない突風と共に押し寄せた。

 

「……ッ!!グッ……ウゥッ!」

 

 思わず耳を塞ぐ。だが、こんなものさっきみたくモチで耳を防げば済む話。

 

 おれはすぐにモチで耳を塞ぎ他の皆の分も量産しあちこちに散りばめる。これで残る問題はベッジだけ───ッ!!

 

 そう考えていたが不足の事態が続いたことにより冷静さを欠けていたいたおれは"見聞色"を怠っておりある存在に気が付かなかった。

 

 ママの攻撃で空の彼方へと吹き飛ばされたあの怪物が戻ってきていたのを。

 

 ベッジはソイツを見るやニヤリと笑い場を離れる。それを見て今のママにアレをぶつける気かと思ったおれはすぐさま走り出した。

 

 ベッジの野郎!!!ママには触れさせは……!!?

 

 ママを助けるために動き出したおれを後ろから目にも止まらぬ早さで何かが横切った。それは……伸びた腕だった。

 

アルガァァアアアアッッ!!!」

 

 伸ばした腕で怪物を掴むと麦わらが飛んでいく。その時、耳を塞いでいたから何を叫んでいるのかは不明だがあの表情から必死なことだけは見て解る。

 

 そして、さっきと明らかに姿が違った。蒸気の羽衣を纏い素早い動きで怪物の方へと突っ込んだ。

 

もういい止まれ止まれェこれ以上無茶すんなッ!!!」

 

 麦わらが抱き絞めると怪物は無理や振り払おうと暴れる。しかし、麦わらは奴を決して離さなかった。

 

 そして、バランスを崩しそのまま屋上を飛び出した2人は落下してしまう。

 

 屋上から地上まではかなりの高さだ。アイツらなら死なねェだろうが多少のダメージはあるだろう。何とも締まらねェオチだ。

 

 今の一部始終を見ていたおれは一つ結論が付いた。奴が怪物のように変身したのはどうやら向こうも想定外の事だったらしい。

 

 とりあえずあの怪物と麦わらは後回しだ。今はベッジの野郎を……ム。

 

 ここでおれはあることに気付く。妙に周囲が煙たい。突如会場内に立ち込む煙に視界が奪われる。

 

 それにこの匂い……ッ!違う、煙じゃない。これはガス。まさか……。

 

 案の定、会場内に"見聞色"を発動するがどうやらもう会場から逃げ出したようでベッジ含む他の連中の気配の声はなかった。

 

 まんまとシーザーにしてやられた。まさかおれ達を出し抜くとは……。ん、ガスが立ち込む、と言うことは……。

 

 そこでママの号泣による突風が止んでいることに気付く。どうやらママが泣き止んだらしく耳のモチを取りママの方を見ると……未だにショックで悲しむママの姿があった。

 

「おれは……おれはマザーを……」

「ママ……」

 

 何て声をかければ言いか解らず体が止まってしまう。そこへ1人男がママの元へ行き……。 

 

「リンリィィイイン!!!」

「……ッ。シュトロイゼン……」

 

 総料理長シュトロイゼンがママの元へ駆けつけ肩の上に乗る。声を張り上げてママの名を叫ぶがあまり反応がない。

 

 しかし、それでも懸命に語りかけた。

 

「リンリン!!よく聞いて欲しい!私がお前と出会ったあの日、実は見ていたんだ!!シスターや子供達が消えた現場を……!!!」

「え……」

「今まで話さなかったのには理由があった!!だが、それはベッジが言ったようなデマカセではない!!!」

「で、ま……かせ?」

「ああ!あの日あの場で起きたのはお前の暴食ではない!!!……全部、巨人族による犯行だったのだ!!!」

「───ッ!!!」

 

 唐突に突きつかれた真実を聞きママは驚愕する。

 

「巨人族……エルバフかい?」

「っ!そ、そうだ!!子供達を!シスターを消したのも!!み~~んな!!あいつらが原因だ!!!」

 

 ママの目に光が戻る。

 

「だからもう悲しむな!!!お前は何も悪くない!!!!」

「あ、アァ……そうか……おれは……マザーを食っちゃいなかったのか……よかったァ……!」

 

 シュトロイゼンの言葉にママは涙を流し心から安堵した。ママの精神が安定したことに周囲の者達もホッと息を呑んだ。

 

「んん?それじゃ、何でおれがマザーの能力を……?」

「亡くなったことで奇跡的にお前の近くでシスターの「ソルソルの実」が成りそれを食べたんだ。これこそまさに───リンリンとシスターが産み出した奇跡じゃないか」

「───ッ!!!そうか……そうだねェ」

 

 そう呟き何やら考え深く染々とした優しい笑みを浮かべる。だが、次第に事の現状を思い出したのか今度は怒りに変わった。

 

「……にしても、ベッジの野郎ォ。よくもこのおれに───絶対ェ許さねェ」

 

───ゾクゥゥ!

 

 ママの怨念のこもった言葉におれ含む全員の背筋が凍る。それ程までに明確な殺意が感じられ向けられていない筈のおれ達ですら体を震わせた。

 

「この落とし前……しっかりと、つけて貰おうじゃねェかァアア!!!」

 

 ママの怒りの咆哮で会場内のガスが一気に吹き飛ばされた。周囲は視界がよくなり安心するがママの怒りの顔を見て表情を一転させる。

 

「おい!!奴らはどこ行ったんだい!!?」

「ヒィ!?ベ、ベッジ含む麦わらの一味とジェルマは既に会場から逃げ出しており現在地上の警備班が目下捜索中であります!!!」

「ア"ア"?逃げられただァ~~??揃いも揃って何て様だい!!!寿命を抜かれてェか!!!」

「ヒィィィッ!!?申し訳ありません!!すぐに見つけて参りますゥゥ!!!」

 

 逃げられた要因はママの癇癪が大きいがそれを指摘できるものはこの場には誰もいなかった。

 

 そして、各々逃げ出した奴らを追いかけるために動き出す。おれはシュトロイゼンの所へ行きお礼を言おうとするとそこにはプリンがいた。

 

「ありがとう……!もうダメかと思った!!」

「ホッホッホ!何の何の!みんな無事でよかった」

「全くだ」

「カタクリ兄さん」

 

 二人の会話に割って入ると顔をこちらに向ける。

 

「お前は知っていたな。何故おれやペロス兄に報告しなかった」

「ごめんなさい。でも、あんな事万が一ママの耳に入ったらと思ったら言い出せなくて」

「成程、確かにな……。聞くがその情報は鬼の戦漢からか?」

「ええ、その通り……。でも、確証が得られる情報がなかったからシュトロイゼン様が止めてくれてホントによかったわ。流石ママと一番付き合いが長いだけはあるわ!」

「それなんじゃが……」

 

 プリンが息を撫でおろすとシュトロイゼンが頬をポリポリとかき言いづらそうな感じで口を開いた。

 

「アレは私が咄嗟に浮かんだウソだ。実のところ真実はベッジが正しい」

「え……!!?」

「……っ!!?」

「あの場はああ言うしか他なかった。元々エルバフとの関係は破綻しておったし今さら責任転嫁しても支障はない。じゃから、この事は決して誰にも話すんじゃないぞ?墓場まで持って行け」

「……わかったわ」

 

 とんでもない事を聞かされたおれとプリンは絶句しつつもさっきよりかは冷静さを欠かなかった。

 

 用事も済みおれも奴らを追うために二人から離れる。

 

「よし、おれは先回りして奴らの船に向かう。2人はここで───」

 

 

───ズガァァァァアアアアアアアン!!!!

 

 

「きゃっ!!」

「ぬわァ!?なんだァ!!?」

「ッ!!!こ、これは───!!?」

 

 突然の爆発音、同時に会場が大きく揺れたと思えば今度は会場が……いや、このホールケーキ(シャトー)全体が傾いていた。

 

「一難去ってまた一難……か。全く、嫌になる」

 

 今日はつくづく不測の事態が起きる日だ。

 

 

 

 

 

 上手いこと"ロード歴史の本文(ポーネグリフ)"の写しを入手した私はペドロさんと一緒に城を後にしていた。

 

 予定通り屋上で大混乱に陥っていたお陰で宝物庫の警備が手薄となり侵入も容易にできた。元々それを見越して実行日を今日にしたのですが……。

 

 上手く行きすぎて逆に胸騒ぎがしますね。

 

 私の嫌な予感は的中してしまい城を出るとルフィさん達がいる屋上からおぞましい量の怨念の声が聞こえてきた。

 

「どうした死体男爵!!」

「いえ、何やら屋上が騒がしいようで」

「作戦じゃすぐにカタを付ける手筈だが……失敗してビッグ・マム海賊団が暴れだしたか?」

「いえ、それもありますが私が言ってるのは魂の声です」

「魂……?」

 

 "見聞色"とは違い一度死んだことのある私だからこそ聞こえる死者の声。それが屋上で密集している。

 

 死んだ者は魂となり黄泉の国へと誘われる。だが、稀に強い未練が残っており地縛霊としてこの世に留まる魂も少なからず存在している。

 

 だから、屋上で死んだ者が1人や2人いても不思議ではない。

 

 しかし、この声の数……百や二百じゃ収まらない。下手をすれば千……いや恐らくはもっと……。

 

 あり得ない。本来ならばそんな数が同じ場所にいるなどと……。

 

 いったい屋上では何が……ッ!

 

 その時、屋上から落下する二人の影が見えた。アレは両方とも姿は違いますがルフィさんとアルガさん。何故二人して落ちてきたかは解りませんがあることに気付く。

 

 屋上で聞こえてきた無数の魂の声があろうことかアルガさんから聞こえてきたのです。故に私は落ちていった二人の元へと急いで向かった。

 

「これは……!!」

「待て死体男爵!!どこへ!?」

「ルフィさんとアルガさんが落ちてきました!!すぐに助けに行きます!!」

 

 落下地点に向かうとルフィさんがアルガさんを羽交締めにして動けないようにしており他の方々も集まっていた。

 

「ビッグ・マム暗殺の切札として取っておいたあの情報を使ってまでテメーらを逃がしたんだ。ソイツをしっかり元に戻せよ?」

「わかってるわよ!でも、こんなアルガ今まで見たことないの。いったいどうすれば……」

 

 どうやらアルガさんの事でお困りの様子。ならばと私も皆さんの前に駆け寄った。

 

「ここは私にお任せください」

「ッ!!ブルック!?お前何でここに?」

「用事を済ませて城を出たのですが何やらお二人がただならぬ雰囲気で落ちてきたのを目撃しまして……それよりも」

 

 私はアルガさんに近づき改めて拝見する。そして……。

 

「やはり、これは相当憑かれてますね」

「疲れて?やっぱアルガ無理してんのか?」

「いえ、疲れてではなく憑かれている。霊が取り憑いているのです」

「何ですって!?」

 

 私の仮説にナミさんが驚く。他の人達もどよめきの声が上がる。

 

「ルフィさん、私が思うにアルガさんは霊に取り憑かれやすい体質なんじゃないでしょうか?ほら、ゾロさんと試合した時もそうでした」

「ああ、確かに修行の頃にアルガも言ってたな。強化技を使う時はオバケの力借りるって」

 

 アルガさんを押さえ込みながら答えてくれるルフィさんのお陰で私の仮説は確信に変わる。ならば、手はある。

 

 そう考えた次の瞬間、今まで以上に暴れだしたアルガさんがルフィさんの拘束を抜け出した。

 

「おわっ!?しまった!!逃げられ──えっ?」

 

 魔方陣を出現させると中から鍵盤の腕が現れ私たちを包むように囲む。何をする気なのかと身構えると───

 

 

───ズガァァァァアアアアアアアン!!!!

 

 

 突如、目の前が光に包まれた。ものすごい爆音に全員耳を塞ぎしばらくすると我々を包んでいた鍵盤の腕はボロボロと崩れてしまった。

 

 いったい何がと考えたが辺り一面焼け野原となっており今の爆発に巻き込まれたアルガさんがその場に踞っていた。

 

「アルガッ!!!」

「ウソッ!?ひょっとして今の爆発から私たちを守るために……!」

「何でだ!?アルガは暴走してたんじゃ!?いや、その前に医者~~!!!」

「落ち着いて!!医者はチョニキでしょ!?」

「ハッ!そうだった!!にしても妙だな。会場ではビッグ・マムの攻撃を食らってもピンピンしてたのに……」

「皆さん聞いてください」

 

 皆さんがアルガさんの状態を見て心配や困惑と言った気持ちが渦巻く。私もさっきの行動には疑問を覚えますが今は後回しです。それよりもまずこれを皆さんに伝えねば。

 

「今アルガさんに取り憑いている霊は尋常ではないほど怨念が籠っています」

「怨念っ!?悪いオバケって事か!!」

「はい、しかもそれが数え切れない数……故にここで私が───」

 

 背負っていたギターを手に取りジャーン!とチューニングする。

 

「アルガさんに憑いてる全ての悪霊を昇天させて彼を正気に戻します!!!」

「ホントかブルック!?じゃあすぐに頼む!!」

「勿論です!ですが、演奏で敵がやってくるかもしれませんので皆さん気をつけてください!!」

「背に腹は代えられないわね……!わかったわ!その代わりなるべく早く済ませて頂戴!」

「OH YEAH!!!やるぜベイベー!!!」

 

 そうして、いつ敵がやって来るかわからないドキドキはらはらなライブが行われた。

 

───ジャンカジャンカジャンカジャンカ!ジャーン!ジャーン!

 

ギッ!?ガ……アァッ!!

「おお!効いてる効いてる!」

「すごーい死体男爵!!」

 

 私の魂が込められた伴奏にアルガさんは次第に苦しみだし徐々に動きが悪くなる。そして、体から発する邪気を祓い切るとアルガさんは元の姿へと戻るのだった。

 

「ウオオオオ!!やったなブルック!これでアルガが元に……」

「いいえ、まだです」

「えっ?」

 

 元の姿に戻ったアルガさんを見て一同が喜ぶがまだ早いと忠告する。今までのは私の得意分野でしたから問題ありませんでしたが……。

 

 重要なのはむしろここから……!

 

「今のはあくまでアルガさんの体に纏わり憑いた霊を祓っただけです。肝心のアルガさんの魂がまだ戻ってきていません」

「ハアッ!?どう言うことだ!!アルガは死んじまったのか!?」

「いえ、彼の魂は心の奥底に潜んでいます。それを今度は───」

 

 私は体を脱力させると意識が肉体から抜け魂となって口から飛び出した。

 

「私自身が彼の体に入り直接呼び起こします」

「ウオッ!?ビックリした……幽体離脱もできたのかこのホネ……」

 

 見慣れていなかったベッジさんは私のこの姿を見て驚く。普段ならここで茶化したりするのですが……今は猶予がありません。

 

「おい!あっちの方から音がしたぞ!!」

「マズイ!?気付かれた!」

「こうなっては仕方ありません。彼を起こしている間に私とアルガさんの体を運びつつ船へ戻りましょう!」

「わかった!体は任せろ!アルガを頼む!!」

「ええ、では!!行って参ります!!!」

 

 こうして、私は彼の体に入り心の中へと潜り込むのだった。

 

 

 

 

 ここは……随分とまあ暗い場所ですこと。

 

 どこを見渡しても一面真っ黒。これは相当深い場所までやってきたみたいですね。

 

「さて、アルガさんはどこに……おや?」

 

 ずっと暗闇の世界が続いていたが奥に幾つもの光の玉を見つけた。早速近づきそれが何なのか確認しようと触れようとした。

 

「これは───」

『ダメ』

「っ!」

 

 誰もいる筈のない空間に女性の声が聞こえた。振り返るとそこには見知らぬ少女の姿が……。

 

『それに触れたらダメ。()()はアナタ達が見ていいものじゃない』

「貴女は、いったい……」

『着いてきて』

「え……?」

『彼の所に案内するよ』

「それはご親切にどうも。ところでお嬢さん」

 

 突然現れた謎の女性が案内をしてくれるようだ。とりあえず悪い霊ではなさそうなので彼女の親切に甘えることにした私はひとつ尋ねた。

 

「パンツ見せて貰ってよろしいでしょうか?」

『フ……』

 

 彼女は唐突な私の要求に勝ち気に笑いこう答えた。

 

『幽霊は、パンツを履かない』

「───ッ!!!?」

 

 この日、私はあの世の真理をひとつ知った。

 

 

 

 

 

 いつまで続くのだろう。もう楽になりたい。

 

『辛い』『かなしい』『ごめんなさい』『ダメだ』「幽霊はノーパン」『苦しい』

 

 永遠と聞こえてくるこの声が、耳障りで仕方がない。もう嫌だ……早く俺を……。

 

 ………………ん?何か今変な言葉が……?

 

「……ってよく考えてみたら私も霊体なので何も履いてませんでした。ヨホホホホ」

 

 ………………。

 

「……ッ!?うぎゃああああ!?幽霊~~!!!」

「あ、アルガさんどもです」

「いや軽っ!?つーかアルガじゃねぇって言ってんだろ!!」

「お元気そうで何よりです」

「いや、つい今まで割りと沈んでたんだがお前見たらそんな気分ぶっ飛んだわ」

 

 よく見たらコイツあの骨じゃね?

 

「お前、とうとう骨ですらなくなったな……」

「ヨホホホホ、アナタをお迎えするためにこの姿で来ました」

「そうか……って、迎え?」

「ええ、アナタをここから救い出すために」

「俺を?」

「はい、それでは行きましょう!皆が待ってます!!」

「ちょ!待てって──」

『待って……』

「そうそう待ってって……え?」

 

 意見に賛同してくれたので便乗したがすぐに誰が出した声なのか確認するために周りを見渡すと……。幾つもの手が俺に向かって伸びてきた。

 

『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』『ダメ』『だめ』『駄目』『だめ』『駄目』『ダメ』『だめ』

 

「ヒッ!」

「奥底にまでこれ程の……よほど根深い怨念を秘めていたのでしょうね。あなた方が彼に何故ここまで固執するのかは存じませんが……彼は我々にとっても大切な存在。返して貰います!!!」

 

 霊体となった骨顔が俺の背中を押し無数の手を避けた。

 

「っ!お前……!」

「皆さんが待ってます!!さあ、早く行きましょう!!」

「俺は……もういいんだよ」

「何ですって……?」

 

 俺は今抱いている気持ちをコイツにぶつけた。

 

「もう疲れたんだ。何もかもに……。この先生きたってどうせロクなもんじゃない。だったらいっそ……ここで───」

「いいえ、アナタの本心は違います」

 

 俺の思いを否定するように言葉を遮られてしまう。見透かしたようなその態度にカチンときた俺は詰め寄りつっかかった。

 

「あ?何わかった風なこと言ってやがる。テキトーなこと言ってんじゃねぇ!!!」

「ええ、確かに私は皆さんと比べたらまだ日は浅いでしょう。ですがね……アナタこそ適当な言葉を言うんじゃありません!!」

 

 ここへ来て相手が初めて怒鳴り俺はたじろいでしまう。

 

「もういっそここで?アナタがそんな弱い心のままだったらとっくに飲まれてるんですよ!ですが、こうして自我をまだ持っている。ホントはこう思っている筈なんですよ!!───まだ生きたいと!!!」

「──ッ!!!」

「消極的になって人生を悲観するのは簡単です。ですが、まだ道が残っている。待っている者がいる。忘れてしまっても私が何度でも言います。アナタは決してひとりじゃないと!」

「……っ!」

 

 訴えるように、それでいて諭すように優しく語りかけるその声に俺は不思議と何かが込み上げてくるのを感じた。

 

 

───アナタは決してひとりじゃない!

 

 

 今の言葉を聞き、俺は……。

 

「ホントに……俺は……ひとりじゃない?」

「ええ、勿論です。アナタを大切に想う仲間がいる。友人がいる。まだ人生捨てたもんじゃないと教えてあげますよ」

 

───もう一度、生きてもいいかなと思えた。

 

「何か、ゴメン……色々と」

「ヨホホホ、お節介は年寄りの道楽です。それに、彼女もアナタを想っていた」

「彼女?それって──」

『ま…………て…………』

「ッ!!」

 

 先ほどと同じ様にまたも引き留めようとする声と共に無数の手が此方に差しのべられる。

 

「さあ行きましょう!皆さんが待ってます!!」

「ああ!!」

 

 今度こそ俺は彼の言葉に頷き止まっていた足を動かした。今まで暗い水の中で沈み続ける感覚だったハズなのに、いつの間にか消えており重かった足取りが軽くなっていた。

 

 これなら、行ける……どこまでも。

 

『ま……テ……』

 

 振り返る事はなかったが徐々に声が遠退くのがわかった。けど、俺を引き留めようとする声を聞いてふと思った。

 

 ひょっとして───

 

 

 

 

…………………………。

…………………。

…………。

 

 ここは、明るい。そうか、俺は──グァッ!! 

 

 目を覚ました俺は突然襲われる苦しみに悶えていた。

 

「くくく、ようやくお目覚めかい?ペロリン」

「な、んだ!苦、じい……手ぇ、どけろぉ……!」

「おーおー威勢がいいなァ。もうじきお前達は全員ここで死ぬってのによォ~」

「何……!」

 

 何が起こっているのか確認するため苦しみながらも周囲を見渡す。ここは海岸で船に乗る見知った奴らとその船を掴む巨大なババアがおり、俺は海岸の上でこの長いベロを垂らす男に首を掴まれていた。

 

 よく見たらあのガイコツとトナカイ?が船の上で何かで固められており敵に囲まれている。それと、ベロ男の足元には虎男が横たわっており踏みつけにされていた。

 

「理解したか?絶体絶命って奴だ。未来が見えねェおれにもこの瞬間だけはわかる。お前らが絶望に満ちた顔で死ぬ未来が……!」

「ぐ……ぎ……!」

「くくく、さっきまでおれ諸とも自爆をしようとしやがったお前も流石に仲間を巻き込むことはできまい。残念だった……な!!」

「グッ!」

 

 さらに踏みつけると下敷きになっている虎男は呻き声を漏らす。そして、空いてる手からピンク色の斧が形成される。

 

「まずはお前からだペドロ……。死ねェ!!!」

「──ッ!!!」

 

 もうだめだ!と死を覚悟した虎男は目を瞑るがその斧が振り落とされる事はなかった。

 

「ブゲェッ!!?」

「なっ!?」

 

 振り落とされる直前、俺は残りの気力を振り絞り足蹴を食らわせた。持ち上げていたお陰でちょうどいい位置に顔があってよかった。

 

「へ、へへ……ザマァ……みやがれ」

「こん、のォ~~!!どうやら貴様から死にたいらしいな!!お望み通り……先に殺してやるよォオオ!!!」

「アルガァ!!!」

 

 ほとんどの奴らが殺されてしまう俺に視線を向ける。船を掴む巨大なババアと……もうひとりを除いて。

 

「違う!!!ペロス兄!!上を見ろォ!!! 」

「ん?どうしたカタクリ。上に何が───ッ!!」

「…………?」

 

 上に何があるのかと俺も見上げるとそこには───鳥の翼を生やした女がこっちに向かって突っ込んできたのだった。

 

 

 

 

 

 ローに頼み人間の姿に戻した私は昔のように空を自由に羽ばたくことはできない。しかし、雪で翼を形成し滑空することはできた。

 

 なので城から飛び出した私は滑空し船へと向かう。城が倒れてしまった時は慌ててしまったけれどそれでも高度は十分確保できた。

 

 それに、この大混乱のお陰で上手く気付かれないまま城を抜け出せた。このまま急いでこの()()を持って船に向かうがそこでは一目でピンチに陥っていることが分かるぐらい危ない状況となっていた。

 

 そして、その中でも更に不味く今にも殺されそうになっていた彼の姿を見て私は高度を一気に下げ加速する。

 

 そこで向こうも私の存在に気付き迎撃の構えを取る。無数のアメで作られた槍を私に向けた。

 

 当たれば間違いなく殺られる。でも、ここで引くわけには行かない!何のためにここまで来たのか。

 

 ここには彼らの役に立ちたくて覚悟を持って着いてきた。だったら───

 

 

 今ここで動かなきゃ何が覚悟よ!!!!

 

 

『ねえアルガ。「万国」に着く前に聞きたい事があるのだけど』

『何?』

『ゾウを出る前に「"友達"を重く捉えすぎじゃない?」って言ってたわよね?でも、アナタって友達のためならどんな危険も厭わないじゃない。それって矛盾してない?』

『いや、ほらだって……友達の定義なんて人それぞれだろ?俺は蔑ろにしたくないけどそれを他に押し付けるのは違うかなって……』

『ハァー、あのねェ……』

『あ、あのモネさん?顔ちち近い……』

『そういう考えもあるでしょうね。でも、友達って、互いの思いやりが同じぐらいないと成り立たないんじゃないかしら?』

『っ!同じ、ぐらい……』

『ええ、私も友達いなかったから上手く言えないけれど……互いに色んなものを与えたり貰ったりする。それは物だったり気持ちだったりでもいい。そう言う人達を「友達」って呼ぶのだと、そう思ってる』

『モネさん……』

『だからアナタが友達のために命張るんだったら───』

 

 

「───私だって友達(アナタ)のためにこの命!!!張ってやろうじゃない!!!!」

 

 

 無闇に突っ込む私を見てアメ男はほくそ笑みながら無数のアメで作られた槍を発射した。

 

 その前に咄嗟に周囲全体に吹雪を巻き起こすと次の瞬間、幾つもの槍が私の体を貫通する。

 

「吹雪で軌道を逸らすつもりだったか?バカめ、でしゃばるからこうなる!ペロリ──」

「あら、どこを狙っているのかしら?」

「……ッ!ハアッ!?お前なぜ……確かに今串刺しに……!!?」

 

 すぐ横に現れた私を見て驚愕するアメ男。さっきまで私が居た場所を見るとそこには形を崩した雪像があった。

 

「ニセ、モノォ!?」

「”雪騎将(ホワイトナイト),,……。アナタ確か懸賞金が7億だったかしら。よほど強いのね。───けれど、戦闘力と勝敗は別物でしょ?」

「て、めェ……!何……をォ……」

 

 優しく雪の翼で抱き締めるとアメ男はみるみる力が抜けていく。そして、持ち上げきれなくなった彼の首を手放すとすぐに抱き寄せ足元にいたペドロも回収する。

 

 抱き締めたのは一瞬だけだったから相手もすぐに力を取り戻す。だが、もう遅い。

 

───既に私の任務は完了していた。

 

「てめェ……!ふざけた真似しやがって!!もう許せ……なァ!?それは……奴の記憶(メモリー)!!?」

 

 私が持っていた大量のフィルムがどんどん彼の頭の中へと入っていく。

 

 そして───

 

「────ッ!!!!」

「遅いわよ、全く……おかえり♡」

「うん、ただいま……今までありがとう。()()()()

 

 モネさん。その名前を聞いた瞬間、こんな状況にも関わらず安心感で胸がいっぱいになった。

 

「スゥーー……んんん~~~~…………ッ!!!」

 

 彼は息を吸い込みしゃがみこむと……両手を突き上げて一気に立ち上がった。いつも見てきた優しい笑顔で。

 

 

「戻ッッッッたァァァァアアアアアアアア!!!!」

 




《今回、アルガのビブルカード所持者》
ロビン「…………ホッ」
ベラミー「心配させやがって」
ロメオ「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
レベッカ「よ"がっだァ~~ッ!!!」
サイ「恩人ンンンンッ!!!」
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