あなたにもう一度毛布をかけるため 作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!
長らくお待たせしました!個人的にはこの話が一番書きたかったので普段よりも文字数が多く過去最多の21000文字超えとなっています!(;^ω^)ヤバスギィ…
それでは続きをどうぞ!
気が付くとそこは何もない世界だった。
ここは何処だろう?何もない、真っ暗だ。……?声が出ない?アレ?何も感じない……と言うか肉体がない。
ふよふよと浮いている俺は今どういう状態なのか察した。ああ、そうか。俺はカイドウに"
そうだ!早く起きて俺も戦わない、と───……ん?
一瞬、感情の高ぶりを覚えるが……嘘のように気持ちが冷めてしまった。まるで大事な何かが抜け落ちる様に。
……ッ。痛ェ、どうやら気を失ってたらしいな。
確かカイドウに突っ込んでいってそれから……ッ!そうだ!あいつの攻撃を食らってそれで!闘いはどうなったんだ!?カイドウは!?
目が覚めるとおれは殴られた箇所を押さえ起き上がる。気絶した間にどうなったのか気になり辺りを見渡すと弟のルフィを見つける。
まだダメージが残っておりよろめきながら近寄ると……。
「ア、アァ……ッ!ヴア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ!!!」
無惨な姿となったアルガを抱え発狂していた。
「ッ!!?ルフィ!!まさかそいつ……」
「クソッ、クソッ!クソォ!!何が海賊王だ!!仲間を守れねェで……何がッ!!!おれは弱いッ!!!」
己の非力さを嘆き絶望するルフィ。弟のこんな姿は久しく見た。兄貴として放っておけないがまずは状況を把握ししなければと泣き叫ぶルフィを宥める。
「落ち着けルフィ!!まず説明しろ!ここで何があった!?カイドウは倒せたのか!?」
「んぐ、アァ……アルガが……アル、ガ…がァ……」
目の焦点が合ってない。正常な状態じゃないんだ。ルフィはアルガの名を呼び続けると、事切れたかのように白目を向いたまま気を失う。
それでも、アルガを掴む手だけは放さなかった。
「ルフィ……」
痛々しい弟の姿をただ見ているだけしかできないおれは無力感に苛まれ弟の名を呟いた。その時───
「アァ……コイツらは本当によく闘ったぜ」
「───ッ!!?」
声が聞こえバッと顔を上げる。すると突如嵐のような強風が襲う。とても目が開けられず腕で顔を被うと少しだけ瞼を開いた。
その先には満身創痍だがどこか異様な気配を漂わせるカイドウがいた。
「やっぱ生きてたか……!カイドウ!!」
「いつ以来だァ?おれが死を悟ったのはァ……」
何だこの嫌な感じは?さっきまで"見聞色"でもわからねェぐらい弱まっていたってのに。もう身体だってボロボロ、にも拘らず存在感が……覇気が増してやがる……?
奴の身に何が……ッ!?
「若ェ時期を思い出すぜェ。おれよりも強ェ奴と闘い敗けた経験。死にかけた経験がよォ。だが、この能力を得てからはそういった奴とやり合う機会がなくてなァ……。だから、───まで至れなかった」
今も膨張し続ける覇気は黒いイナズマとなり自身を覆う。そして、バリバリ!とイナズマが弾けると中からこれまでとはまた違う姿のカイドウが姿を現す。
体格は更に一回りデカくなり、ツノもより長くより鋭利に、薄い青色だった鱗は色濃く青々しい紺青に。
「ウソだろッ!この土壇場で……コイツ!!?」
「"覚醒"するには能力者の心身が能力に完全に追いつかないといけねェ。そして、おれに足りなかった最後のピース。それは───"危機感"だった」
眉はぐるりと渦巻き、黒の羽衣を身に纏っていた。
「礼を言う。お前達のお陰でおれは、更に一つ上の
「ッ!?……〜ッ!!」
もはや言葉では言い表せられない感情が湧き出る。タダでさえ手に負えなかったバケモノが更に成長してしまいやがった。
もはやコイツの強さの上限がどれ程なのか想像すらできない。いや、したくない。そう思ってしまうぐらい目の前にいる生物が圧倒的に見えた。
これが、「世界最強の生物」……!!
「晴々とした気分だ。今日ここでお前らと戦えたのは強運だったのかもなァ。今なら赤髪や黒ひげ……世界政府すらも真正面から凌駕できちまいそうだァ」
強く握り締める拳を見つめると目を見開き勢いよく天に突き上げた。
「さあ、ここから始めようじゃねェか。───「暴力の世界」を!!!」
そう高らかに宣言するカイドウの顔は高揚としていた。だが、そこへ水を差す存在が現れその表情は固まってしまう。
「ッ!?てめェは……!」
「え、アルガ……!お前起きて……ッ!?」
「………」
いや、正しくは起き上がった、だ。だけど、何故か無意識におれはそう表現してしまった。そこにいるのは間違いなくアルガだ。なのに……おれの
ぬるり、とまるで関節を感じさせない不気味な動きで体を起き上がらせると片腕をダランとし、ヒタ…ヒタ…と歩み始める。
不気味なほど静かなソレは、カイドウを前にし立ち止まる。しばらく沈黙が続くとカイドウの方から問いかける。
「おい」
まるで、初めて見る得体の知れない存在を前にした様に。
「お前は───誰だ?」
「………」
カイドウの問いかけに無言を貫く。だが、行動で応えるように腕が失くなった右肩を上げる。すると、ジュクジュクと右肩から肉片なのか分からない白い何かが生え出す。
「ほお」
「なっ!?」
異様な光景に目を疑う。しかし、目を逸らすことはできなかった。
───カラン
肩から溢れる謎の物体により体が揺れ頭が揺れるとアルガのアイデンティティであるツノのカチューシャが外れ地面に落ちた。
そして、白い物体は形成し失くなったハズの右腕が出来上がる。
思わず絶句するおれ。仁王立ちし興味深そうに見下ろすカイドウ。それを気にも止めないソレはようやく静かだった口がゆっくりと開いた。
不気味な笑みへと変わって……。
「…………アハッ」
いったい何処に落としちゃったのかしら?
私はドクロドーム内の廊下を走りながらアルガのビブルカードを探していた。一緒にいるモネとブルックにもお願いしてもらい探し物を手伝ってもらう。
「こんな広い場所で一枚の紙切れを見つけ出すのは骨が折れますねェ〜。あ、骨が折れたら大事でした私の場合。ヨホホホホ!!」
「呑気なこと言ってないでしっかり探しなさい!とは言えブルックの言う通りこのままがむしゃらに探すのは現実的じゃないわ。来た道を戻ろうにもまだCP0が戦っているかもしれないし。そうだわ」
モネは閃いたように懐を弄る。
「この際、失くしたビブルカードは諦めなさい。私が持ってるのを切り分けてあげるか、ら……」
「ほんと?ありがとう。……モネ?」
見つかりそうにないと考えたモネは自身が持つビブルカードを分けてあげると提案してくれた。モネの心遣いに感謝するが何やら動きが止まる。
まるで、絶望したように顔を青褪めていく。そして小さく呟いた。
「ない」
「えっ」
「あら、ひょっとしてモネさんも失くしちゃいました?」
「そんな筈ないわ!だってしっかり鍵付きのポーチに入れていたのよ?ここへ来て一度も開けていないからカードだけ消える……なん、て……」
「まさか……」
ここへ来てモネは……いや、私達は最悪の可能性を想像してしまう。ビブルカードは別名「命の紙」とも言われ持ち主のいる場所や生命力を示す。
私のだけが消えたのなら失くした可能性も十分にあり得る。しかし、二人同時に失くしたとなると偶然とは思えない。
ビブルカードが消えたもう一つの可能性。それは持ち主の───
「うそ……そんな訳……」
「ウゥ゙ッ!?」
「ブルック!?どうしたのっ?」
あり得ない。と口に出そうになった時ブルックが突然両耳を押さえる。
「ああもうウルサイですね。何ですかこの声は……」
「声?声が何よ?」
「わかりません。急に上から大勢の声が……」
「何よ今更、戦なんだからそんなのあちこちから聞こえるわよ。いや待って、確か"覇気"に目覚める人は最初貴方みたいな症状が出るって……!」
「え、ブルック貴方ひょっとして覇気を……」
モネの推測に私は思わず驚く。一味の中でも覇気を使える者は限られている。その中にブルックも入るのかと思ったが彼は否定するように首を横に振る。
「いえ違います。んー、この声は以前にも聞いたことが……ッ!!?」
「どうしたの!何か気が付いたの?」
「ま、まさか……っ」
ブルックの表情がみるみる険しくなっていく。何かを察したのかしばらく思考が続くとモネが痺れを切らし彼に詰め寄る。
「消えたアルガさんのビブルカード。そして、私にだけ聞こえるこのおびただしい数の声……。それも憎悪と言った負の感情が籠もっている。もしかすると……」
「もう!何なのよ!私達にも説明して!」
「……お二人共、これから話すのはまだ推測の段階です。なので取り乱さず聞いてください」
「ええ、わかったわ。話して頂戴」
ブルックの前置きにモネは了承し私も頷いた。いったい何を話すのかと身構える私達にブルックは重々しく一言……。
「まず、アルガさんは死にました」
───…………………?え。しんだ?シンダ?……死んだ?誰が?アルガが?
一瞬、脳の処理が追いつかず理解が遅れる。
それは、モネも一緒だったらしくほぼ同じタイミングで意識が我に返るとブルックの前置きを忘れてしまった様に激昂し詰め寄る。
「ハア!!アルガが……!!し、死ん───そんな事ある訳ないでしょう!!!」
「では、消えたビブルカードの行方はどう説明をつけろと?」
「そ、それはっ……」
「お気持はわかります。ですが、それだけではありません。事態はもっと悲惨かもしれません。今さっき我々が考えていた予想とは……比べ物にならない程最悪な状況にッ……!」
アルガの死よりも最悪な状況。そんなもの考えつかない。考えたくもない。彼が居なくなっただけでも受け入れ難いと言うのに!
これ以上、何が……!
「私にだけ聞こえているこの声の正体は……アルガさんの中に潜む集合体の魂です」
「ちょっと待って!?それって確か!」
「二人とも何の話?アルガの中に潜むって何のこと?」
私だけ話に着いてこれず二人の間に割って入り聞き返す。ブルックは「そういえばあの時にロビンさんはいませんでしたね」といい補足してもらう。
「以前、サンジさんを取り戻しにビッグ・マムのお茶会へ行った時アルガさんの中にいる別の魂が暴走したのです」
「彼の中に、別の魂ですって!?」
そんな事初めて聞いた。
「時間がないのでその別の魂については危険な魂と覚えていただければいいです。それで、私は暴走していた彼の肉体へと入り取り込まれかけていたアルガさんの魂を助けました。ですが、依然としてその別の魂は彼の中に潜んでいたのです」
ブルックは自身の無力感を悔いるように手を震わせ淡々と結論を述べた。
「そして、アルガさんが死に魂が抜けた今……抜け殻となった肉体をその魂が乗っ取った……と言う事です」
「そ、そんな……」
「ブルック、それは……まだ推測なのよね?」
「はい、ですが───」
───ズズズゥ゙ゥ…………ゥン!!!!
その時、ドクロドーム全体が……いえ、鬼ヶ島全体が揺れた。あまりの大きな揺れに思わずバランスを崩しそうになる。
何が起きたのか周囲を見渡すがわからない。だけど、ブルックだけは理解したのか天井を見上げる。
「声が強まった。やはり……アルガさんの身に!!」
「ブルック落ち着いて!まだ決まった訳じゃない!!だいたい屋上にはルフィだっているのよ!?二人が敗けたって言いたいわけ!?」
「モネの言う通りよ。ここで話してても埒が明かない。一先ず私達は他の皆と合流して───」
ここで私は口が止まってしまう。
さっきも今みたいにドクロドーム全体が揺れる事態が起きた。そして、その揺れの原因は屋上で戦っていたカイドウによるもので、討ち入り直後にできた大穴からお菊ちゃんの腕が落ちてきた。
それで、つい先程にもそれと同じ規模の大穴が屋上にできていた。そこから今また別の腕が降ってくるのを目撃する。
「また腕が!?……えっ」
見覚えのある腕だった。ウソップが特注で作ったグローブを嵌めた腕……。それを着けているのは世界に一人だけ。
何より、その腕と一緒に落ちて来た───角のカチューシャを見て言葉を失った。
「アルガ───」
そこから先は頭が真っ白になり記憶がなかった。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ドクロドーム屋上、そこは今まさに地獄へと化していた。怪物と怪物とのぶつかり合い。もはや怪獣バトルと言えた。
「ウォロロロロロ!!!」
「アハハハハハハ!!!」
何だよこれ……闘いと言うより災害じゃねェか!
両者のデタラメな戦闘の余波で周囲の地面や岩が抉れる。とてもじゃないが近づけない。
カイドウが炎を超えた高熱の熱線を放つと
カイドウは避けてから上空へと飛び上がる。視線で追おうと顔を上げた時には既に急降下していたカイドウが一気に間合いを詰めていた。
「面白ェ!!まだ上がるか!!だったらおれも更に飛ばしていくぜェ!!!”
「ギッ!!」
カイドウの金棒が直撃したアルガは屋上の端までブッ飛び地面にメリ込んだ。咄嗟に駆け寄ろうとするがすぐに立ち上がったのか土煙を払い除け姿を現す。
そこには更に異形なものへと変貌する怪物がいた。
「だんだん人間と呼べなくなってきたなァ。おれを倒すにはバケモノになるしかねェってか?上等だよ」
「ア、アァ……」
カイドウの言葉通り闘いが経過するとアルガの姿が徐々に変化して来た。まず新しく生え出した腕を始めに黒い翼、ドラゴンの首がついた帽子、ドクロの首飾り、鍵盤の腕、周囲に浮かぶ無数のドクロとみるみる変わっていく。
そして、とうとうその体格までも変わり果て今ではカイドウと大差ないぐらいに巨大化していた。ここまで来るとアルガの面影があるバケモノと形容した方がしっくりきてしまっていた。
「アイツにいったい何が起きたって言うんだよ……!」
未だ状況を呑み込めないおれを他所に両者仕掛ける。周囲に浮かぶ幾つものドクロがエネルギーを溜めるとカイドウに狙いを定め一斉砲火する。
「アハッ!」
カイドウは四方八方から飛んでくる光線が直撃し爆炎に包まれるが中から狂気じみた笑みを浮かべ飛び出すと意趣返しに熱線を放った。
「”
戦いが続くに連れ両者の攻撃の規模も増していく。このままだとこの屋上どころか鬼ヶ島が保たないかもしれない。
そう危惧していると一部の地面に穴が開きその近くに倒れている弟がいた。
「まずい!?ルフィ!!」
急いで駆けつけるが、ビキビキ……ガララァ!とルフィのいる地面が崩れ屋上から下のフロアへと落下してしまった。
アルガの事も気になるが、まずは弟の安否を優先しすぐにルフィが落ちた穴へと飛び降りた。足の炎を噴射させ落下するルフィに追いつき手を掴んだ。
「あっぶねェ、まだ息はある。絶対に死なせねェからな、ルフィ……!」
気を失っている弟を抱きかかえるとドーム内の建物へと着地する。一先ず弟の無事を確認し一安心すると向かいの建物の壁が破壊された。
「魚人空手奥義!!!”
「グアアアアアアアッ!!?」
なんと中から現れたのはジンベエだった。どうやらジンベエの拳でCP0は壁ごとブッ飛ばされたらしい。今ので決着が付いたのか片膝を床に着け息切れする。
「ハアッ!ハアッ!流石イージス0……手強かったが何とか勝てたわい」
「ジンベエ!」
「ん!おおエースか!!お前さんカイドウの所へ行った筈じゃ……ッ!?ルフィ!!?」
「何だとっ!?」
ジンベエのいる所まで飛び越えるとジンベエはおれが抱えていたルフィを見て慌てて駆け寄る。一緒にいたイゾウも同様だ。
「麦わら!何があったんだ!!」
「ルフィ!無事なのか!?エース、上でいったい何があったんじゃ!?」
「それは……」
「ウオッ!?ホントにいたァ!」
事情が事情なだけに説明しようとするも口籠ってしまうとそこへ大声を上げ慌てた様子で部屋に入ってくる奴らがいた。
ルフィの仲間の二人にお玉、そしてイスカだ。
「ウソップにナミ。お前さんら無事そうでよかった」
「おおジンベエ、走ってたら上からエースとルフィが落ちてきたのが見えたから駆けつけて来たんだ。最初は見間違いかと思ったんだが……どうやら違ェみたいだな」
むしろ見間違いであって欲しかった。そんな気持ちを表すように苦い顔をする長鼻。オレンジの女とお玉は涙を堪えた様子でルフィを見つめる。
「ルフィ!?ちょっとどうしたのよこれ!意識ないけど死んでないでしょうね?」
「うわーん!ルフィのアニキ〜!」
「安心せい。意識を失っとるだけじゃ。まだ生きとる。じゃが、詳しい事はこれから聞く所じゃ。エース、聞かせてくれ。屋上で何があった?」
再びジンベエの質問が飛んでくる。おれは意を決し自分の知っている限りの状況を説明した。カイドウにやられた後、戻ってきたルフィとアルガがカイドウと戦った事。その結果、アルガは倒されルフィはアルガを抱えて気を失った事。
そして、起き上がったアルガが異形の姿へと変貌し今もカイドウと戦っている事……。
「そんで、その戦いの最中に地面が割れてルフィが落ちまったから助ける為におれも降りてきたんだ」
「アルガが戦って……?それっておかしくねェか?」
「何じゃウソップ、何か違和感でもあったか?」
おれの説明にウソップだけ納得のいかない様子で異を唱える。他のみんなは何が変だったのかわからずジンベエが聞いている。
「カイドウが上で戦っているのはわかる。今も上からスゲー地響き起きてるし。だけど、上からはアルガの声が全く聞こえねェんだよ」
「驚いた。ウソップお前さんそんな広範囲に"見聞色"を使えるのか。じゃが、そうなると確かに変じゃのう」
「ウソップって言ったか。実はおれもそこには引っかかってた」
「え?」
「アルガが倒れたのはおれが起きる前だったから何とも言えないが……」
「構わない。教えてくれエース」
曖昧な答えになってしまうがイスカの後押しもあり答えることにした。
「ルフィは気絶するまでアルガを抱き締めながら自分を責めていたんだ。まるでアルガは死んだ様な反応で」
「なっ!!?」
「事実、お前の言った通り起き上がってからはアイツの声が聞こえてこなかった。まるで別人が乗り移ったみたいな」
おれが今のアイツをアルガだったバケモノと形容しているのはこれが大きな理由だ。"見聞色"を使えば本人からしか聞こえない気配の様な声が聞こえてくる。
けど、今のアイツからはそれが全く聞こえてこなかったんだ。なのに今もなおあのカイドウと戦っている。近くで見ていたおれにも何が起きたのかわからなかった。
「アルガが死ん……乗り移って……ッ!!?ちょっと待って!!それって……!!」
「ん?何か知ってんのかナミ?」
「え、ええ……」
「そこからは私が説明致しましょう」
ナミが答えづらそうにしているとそこへ更に三人が部屋へと現れる。一人は知らないが残りの二人はルフィの仲間だ。
その内の一人は心ここにあらずといった様子でもう一人がナミの元へ歩み寄り解説を始める。
「ブルック……」
「ナミさん、これ以上貴女の口から言うのはお辛いでしょう。ここからは私が代わります」
「うん……」
そこからブルックと呼ばれるガイコツが説明を始める。まず、第一にアルガが死んだ事。それだけでもこの場の全員が騒然とするが更に死んだアルガの体に別の魂が乗り移り暴走しているとの事。
「何じゃと……そんな……」
「マジ、かよ……」
ジンベエは開いた口が塞がらず、ウソップは信じられないと言った顔で目を見開き。他のみんなも似たような反応だ。
すると、ここでルフィの体がピクッと震えた。もしやと思いみんなが一斉に視線を向けるとルフィはゆっくりと目を開いた。
「あれ……ここは?確かおれはカイドウと……ッ!!!」
ぼんやりと上体起き上がると途端に飛び上がり必死で誰かを探し始める。
「そうだ!?アルガはどこだ!?いねェ!アルガ!?どこだアルガァァァ!!!」
「ルフィ……」
目の前のおれ達に気づかない程視野が狭くなっている。この様子を見ただけで今ルフィがどれだけ追い込まれているのか想像できてしまう。
みんながルフィの痛々しい姿を見て無理に動くルフィを止め始める。
「落ち着けルフィ!!お前がそんなんじゃアルガが浮かばれねェ!!」
「そうじゃ落ち着くんじゃルフィ!!」
「ウガアッ!!誰だ離せブッ飛ばす、ぞ……ウソップ?ジンベエ?それにみんなも……」
ジンベエが羽交い絞めしウソップと共に必死で声を掛けるとようやく正気に戻る。だが、すぐにその目からは光が消え絶望の顔へと変わる。
「すまねェ……皆すまねェ……!おれ、必ず勝つって言ったのに……カイドウを倒せなかった……!それだけじゃねェ……おれァ、アルガ、アルガまで……ッ!!ウ"ッ!ウ"ゥ゙……!」
大事な仲間の死。それは皆にとって受け入れ難い事だった。
そして、自信家な弟がここまで追い込まれた顔を見たのは初めてなのだろう。この場の全員がなんて声をかけたらいいのかわからないでいた。
「ルフィ」
───ただ、一人を除いて。
「おめェがここまで心を折られているの初めて見たぜ」
「ウソッ……プ……」
「よく聞けルフィ」
ウソップは皆と同じで涙を流していた。だが、その目は決して心を折られてはいない。まだ諦めてはいない。そう、目でルフィを訴えていた。
「ルフィ、おれはこれまで色んな強敵と闘ってその度に心を折られてきた。おめェみたいに絶対に折れなかった強ェ心と違ってなァ」
「ウソップ……?」
突然の自虐に困惑するルフィ。だが、本人は至って真面目だった。
「そんで、その度に思うんだ。おれ一人敗けるだけならいい。だけど、おれが敗けたら次は残された仲間達を危険に晒させる」
「ああ、おれも思ったさ。だから必死に闘った。でもダメだった……!もうおれなんて……!!」
「じゃあ、おれ達も死んじまっていいってか?」
「ッ!!?」
ウソップの一言にルフィは勢いが止まる。
「アルガが死んだからもう全部がどうでもいいってか?違うだろォッ。だからっ、奮い立たせるんだろ!?おれは大切な仲間が生きてる限り最期まで闘う!!お前は違うのかよルフィ!!!一度心が折られたぐれェで!全て捨てんのかよッ!!!」
「───ッ!!!」
ウソップの言葉にルフィは小さく口を開く。そして、弱々しいがこの場の皆に聞こえる声で……。
「い、やだ……」
「だったら立てよ!!!お前らしくねェじゃねェか!!!ここが地獄じゃあるめェし!!お前が死にそうな顔してんじゃねェよ!!!心配させんじゃねェよ畜生!!!」
ウソップの思いが伝わったのかルフィだけでなくこの場の皆の目の色も変わり出す。そして、ジンベエもルフィの前へと立った。
「ウソップの言う通りじゃ」
「ジンベエ……」
「辛かろうがルフィ!!それらを押し殺せ!!!まだわしらにはやるべき事がある!!まだ足を止めちゃいかん!わしらは何のために戦っているか今一度思い返せ!!!」
「………ッ!!」
ウソップとジンベエの激励に心を震わせるルフィ。徐々に目から生気を取り戻しつつあるがもう一押し何かが欲しい。
弟を、ルフィを立ち上がらせる何かを……。
「ルフィ」
「ロビン」
そこへロビンがルフィの前へと立った。
「あなたの気持ちよくわかるわ。私もさっき、天井から彼の腕が落ちて来たのを見て正気を保てなくなった」
そういい、ロビンはさっきまで一緒にいた緑髪の女とブルックに目を向け微笑みかける。
「でも、その時周りの皆が私を支えてくれた。だから今もこうして私は私を見失わずに済んでいる。まだ、私には大切なものが残っている」
「大切な、もの……」
「ええ、そうよ。それに、今ここで立ち止まってしまったら……私は二度と彼に顔を向けできない気がするから」
「ッ!!」
ルフィはハッとした顔になる。それを見てロビン表情を柔らかくすると胸に手を当てて思い耽るように話し続ける。
「アルガはね、夢の話をする時の笑顔が好きだって言ってたの。だから私は進む。私の幸せは私と、彼の願いだから」
「アルガの……」
「ルフィ、あなたも彼から何かを貰ったんじゃないかしら?目には見えなくてもあなたの中にある大切な何かを」
「………」
そこまで言うとしばらく沈黙が続く。そして、俯いたまま応えた。
「おれは、言われたんだ」
「なんて?」
「アルガから「勝てよ」って……ッ」
そこまで言うとルフィはバッと顔を上げた。そこにはさっきまでの弱々しかった弟の姿はもういない。固い決意を秘めた熱い眼差しでロビンを見つめた。
「お前らの言う通りだ。おれはまだこんな所で立ち止まってなんかいられねェ。カイドウをブッ倒して、タマやワノ国のヤツらに腹いっぱいメシを食える国にしてやるって……決めたんだ!!!」
もう大丈夫だと確信したジンベエはルフィの腕を離す。そして、力強く握り締めた拳を震わせると頭上を見上げた。
「だからこんな所で悲しんでるヒマはねェ!!おれはカイドウに勝つ!!!それだけだ!!!」
そう宣言した弟の瞳には……迷いは消えていた。
何かが違う。おれは戦いの最中そう思っていた。
鬼の戦漢が復活してくれたのは嬉しいかった。これまでより数段強くなったんだ。当然だ。だが、この違和感は何だ……?
みるみる姿が変わり完全にバケモノに成りつつある。それは別にいい。姿を変える相手は別に珍しくもない。にも拘らず全く別の何かと対峙している気がしてならない。
そうだ、目が違うんだ。初めておれに歯向かって来た時も、おれに再び戦いを挑んできた時も……みんなイキイキとした目をしていた。
だが、今のコイツの目からはそれが感じない。まるで別人のような……。
おれは今、何と戦っている?
「……ま、強ェ奴と戦えんなら何でもいいか!もっともっと楽しませて───ッ!!?」
戦いを嬉々として笑っていたおれは突如頭上から感じる異様な気配に気づき顔をあげる。するとそこには───
「何だ、ありゃあ……?」
そこに映るのは……鬼ヶ島を優に被う程に大規模な黒い
「チッ、せっかく人が景気良く計画を進めようとしてたってのに……水差すんじゃねェよ!隠れてねェで姿を現せ!!」
邪魔に感じたおれは口から高熱の炎を溢れさせる。その漏れ出す炎はより高温となり赤から蒼色の炎へと変わった。
「”
放った熱線は一気に周囲の大気を干上がらせ熱気の余波で周囲の地面は灼熱の大地へと変える。
そんな熱線は瞬く間に天へと突き抜け雲を穿つ。それにより直撃した周囲の雲が晴れ一部が剥き出しとなる。
そこには、とても現代科学とは思えない人工物が見えた。
「今のおれの炎をくらってもびくともしねェとは。だいぶ頑丈だな……。アレを上回る程のエネルギーを中に保有していると見える」
そこでおれはある事を思い出す。そういや、ウチにCP0が来ていたな。奴らがここにいる理由は幾つかあるだろうがある程度は予想できる。
十中八九ニコ・ロビンの身柄に加え……。
おれはもう一つの目的であろう"鬼の戦漢"に視線を変えた。すると、妙な動きが見えた。
「…………ッ!!!ア"ア"ア"ア"ァァァ!!!」
理性をなくした獣のようにおれを執拗に襲ってきてた奴がピタリと止まり頭上にある謎の飛行物体を見るや否や咆哮を上げると黒い翼をはためかせ一気に飛んでいく。
標的を変えた?目の前のおれではなく、頭上のアレの方が脅威だと本能で察したか。だとすれば屈辱だ。おれを見やがれ。そんな謎の機械兵器なんぞに───
「ッ!!兵、器……そうか!!」
ここでおれは一つの可能性を見出した。頭上に浮かぶあれこそが政府の保有している古代兵器……!
そこまで思考を巡らせた時、天から一筋の光が飛んできた。鬼の戦漢は傍にいたドクロから光線を放ちそれを相殺させる。
しかし、その光線はただの序章に過ぎなかった。
「───ッ!!?政府の奴らめ……!おれ達を島ごと消し去る気か!!」
"見聞色"で未来を見たおれは冷や汗を滲み出す。今降ってきた光線もあの大将黄猿の出すレーザーの規模を大きく超えていた。
それが、今から雨のように降り注ぐ。
密度も物量も次元が違う。くらえば骨も残さないだろう。まさに必殺の兵器。古代兵器がどれだけのものか考えてはいたがこれ程とは……!
「ア!アアッ!!アアアアアアアア!!!」
"鬼の戦漢"も次の瞬間、己が、この島がどうなるのか理解したのか周囲に無数のドクロを出現させる。だが、今更十や二十増やした所で焼け石に水……無意味だ。
そう、考えていたのだが……。
「───ッ!!?まるで魔王だな……兵器には兵器をってか?」
視界に広がるドクロの集団。あまりの数に空が埋め尽くされ古代兵器が見えなくなってしまった。なんて数だ。ありゃざっと見ても万は軽く超えるぞ……。
「手を抜かれていたのか?いや違うな、まさか……」
おれが仮説を立てていた瞬間───
───カッ!!!ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………ゥン!!!!
いったいどれだけの時間が経過しただろう。10秒?1分?おびただしい数の光線が襲ってきたのを"鬼の戦漢"も同じ様に無数のドクロから光線を放ち相殺させ続けた。
一つでも取り零せばただでは済まない光線から身を挺して受け続けた。
「ギッ……!!!ガア"ア"ア"ア"ア"アア"ッ"!!!!」
"鬼の戦漢"は吼える。何かに必死な声色でただひたすらに光線の雨を迎え撃つ。
そして───
───ドドドドド……ドドド……ドッ……シュ〜……ン
おれですら脅威に感じた古代兵器は次第に音が止むと光線の雨はなくなった。それを皮切りに頭上にいた"鬼の戦漢"は周囲のドクロが消える事切れたように地面へと落下すると、バケモノから元の姿へとゆっくり戻って行く。
「やはり出し切った、か……」
アレだけのエネルギーを放出したのだ。当然と言えばそれまでだが……。
「シケた幕引きになっちまった。政府の野郎ォ……!!!」
余程、コイツを消したかったのだろうが関係ねェ。必ず後悔させてやる。横から割って入っておれの楽しみを邪魔した代償は高くつくぜ。
「せいぜい束の間の平穏を噛み締めておけ。おれがお前ら全員───」
「アルガ」
「ッ!!」
政府に復讐の念を抱いているとある男の声が聞こえ顔を下げる。そこには"鬼の戦漢"を抱える麦わらがいた。
「わり、おれが不甲斐ねえェから……お前に負担をかけちまった。ゆっくり、休んでくれ……。エース、アルガを頼む」
「ああ」
パキパキ、と今もゆっくり姿を戻し続ける"鬼の戦漢"を"火拳"に渡す。そして、ゆっくりと立ち上がった麦わらはおれに近づいてくる。
「またてめェか。何度も立ち向かってくるその根性は褒めてやるが……いい加減うんざりだ。今はちっとばかし機嫌が悪い。次はねェぞ?」
「今更だろ」
「アア?」
おれの怒気の含んだ声に一切怖気づく事なく歩き続ける。さっきまで発狂してた奴とは思えない。この短い間に何があった?
「おれひとりじゃお前には勝てない。認めるよ、お前はスゲェ……だがな!おれは!一人じゃない!!!」
そこでようやく深々と被っていた麦わら帽子を上げ顔を見せる。その目には決意を感じた。
「おれにはまだおれを信じてくれる仲間がいる!!おれが勝つと信じてくれる皆がいる!!!アイツらはこの戦いをおれに託してくれた!!!」
麦わらはおれの前まで来ると睨み返してきた。
「それで、もう一人!おれは託された!!「勝てよ」って……おれはっ!アルガから託された───託されたんだァアア!!!!」
そこまで言うと麦わらはおれに飛びかかる。覇気もねェ無鉄砲なその姿におれは呆れるが……悪くないと思った。
そういうバカは嫌いじゃねェ。だが、勝敗は別……その啖呵応えるためにも───一撃で葬り去るとしよう。
「ルフィ!!危ねえ!!その炎はヤバい避けろ!!!」
「ウオオオオオオオオオオ!!!!」
「”
カッと光った瞬間青白い炎が麦わらを呑み込んだ。それを見たエースは驚愕する。しかし、もう遅い。さっきまでの”熱息,,と違いこの炎の威力はケタ違いだ。根性で耐え切れるモノじゃない。
実際、炎に呑み込まれた麦わらの雄叫びは消えた。"見聞色"にも反応がない。それが分かっているのか火拳も絶望し膝から崩れ落ちる。
これで麦わらも───
───ドンドットット♪ドンドットット♪
「ォォォオオオオオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッ"!!!!」
「「───ッ!!?」」
炎の中から声があがる。バカな。あり得ねェ。そう思った瞬間目の前の熱線の中から拳が飛んで来た。炎を吐き続けていたおれは避けれずモロにくらってしまう。
「グアアアアアッ!!?」
後方の岩盤に叩き込まれたおれはすぐに立ち上がり相手を見る。そこには、おれの知らない人物が立っていた。
全身白い服に身を包む白髪の男。身体には白い蒸気の羽衣を纏っている。しかし、その顔の面影……何より首にぶら下がる麦わら帽子がその男が誰なのかを物語っていた。
「そうか、お前も到ったか」
「ルフィ、お前……」
「ししし」
不敵に笑うその男は……己の勝利を疑わなかった。
「もう迷わねェ。アイツの分までおれが戦う。さあ、
ん?今、何か聞こえたか?気のせいか。それにしても、ここはホントに何処なんだろうか?
モリアと戦った後に死にかけた時は三途の川の手前みたいな場所だったが、あそことはまた違う。まるで世界そのものが別次元のような……。
ん。?何だ……本?雑誌か?
目の前に一冊の本がポツンと現れる。何の本なのかと近づこうとしたら一気に燃え上がり幾つかの炎に別れた。
近づくと何やらそれぞれの炎の中から不思議な光景が映し出される。
『「震えるね」「不思議だね。ずっと仲間だったけど、今度は敵なんだから」「あのっ、猪股先輩っ!よかったら今週末っ、うちに来ませんかっ!」』
『「死ぬな真冬!おい!!真冬!!」つめたい…カチカチ…「……いつも…おせーょ…。くそあにき…」』
『「終わりたくねぇ。終わりたくねぇよ」「泣くな、白けちまうだろ。もういいよ」「……ありがとう」「君、超面白かったよ」』
他にも幾つもの炎から見覚えのある光景が映し出される。それらを見て
ならば、この中に
『「聖人…?…おれはただの、気弱な"
小さくてよく見えないが、恐らくはコレだろう。だが何となく分かる。この炎はもう少しで消え───二度とそこへは戻る事が出来ないだろう。
つまり、これ以外の他を選べと……え?
仕方がないと後ろを向き他の炎へ向かおうとしたが何かに引っ張られた俺は振り返った。そこには今にも消えそうな炎から糸のようにか細い光が俺と繋がっていた。
まるで行かないでと言ってるような───
『いやダメだろ。ルール違反だ』
……?今何かあったような……気のせい?
一瞬記憶が抜け落ちた気がしたが思考を止め別の炎へと向かう。そう、向かおうとしたのだが───
───ガシッ!!グイィィイッ!!!
うおっ!?何だ!!?また引っ張られて……また?
「また」という違和感に疑問を覚えるがそんな事を考えている内に今にも消えそうな火に体が引っ張られる。俺の大きさではその小さな火には入れない。
そう、諦めていたが……おれを掴む
そしてそのまま炎の中へと誘われた俺は───
『よかったね。友達ができて』
「……?……ッ!!?あっっっっっっっぶな!!!?」
あの空間から出てきた俺は冷や汗が止まらないでいた。それ程までにあそこが恐ろしい空間だと実感させる。
強制的に割り切った思考にさせられていた!もう戻ってはいけないと思わされていた!自分の意思を感情を抜かされていた!
「死んだ者には不要。さっさと次へ行けってか?フザけんな。人生をそんなホイホイと変えられてたまるかよ!」
しかし、現状を見るに状況は最悪。俺は既に死んでしまい黄泉の国へと続く三途の川前へと来てしまっているわけだ。
いや、既に片足突っ込んでしまっている。モリアとの戦い後よりもマズイのは確かだ。俺の死を乗り越えてルフィをニカへと覚醒させる博打をしたのはいいが……。
「やっぱ、まだ死にたくねェな……」
『だめ』
「えっ……」
突然どこからか声が聞こえ周囲を見渡す。すると……。
『だめ』『ダメだ』『駄目駄目』『いや』『嫌だ』『やだよ』『いかないで』『まって』『待ってくれ』『いけない』『だーめー』『もっと』『おねがい』『おれを』『私を』───
俺の中から弱々しく光る無数の魂が出てくる。そして、俺はそれが何なのか、既に分かっていた。だから俺はそれ、いやそいつらの名を呼んだ。
「お前ら……ホントに自分勝手な奴だなァ。───トットムジカ」
『……』『……』『……』『……』『……』『……』『……』『……』
俺の言葉に一斉に押黙る。だけど俺は止めずにトットムジカについて話をする。
「自分勝手ってのは言い換えればエゴだ。エゴは自己中で悪意と言われやすい。お前はその魂の集合体だもんな」
俺は改めてコイツらのは正体を突きつける。だが、決して悪く言うワケではなく、感謝の気持ちを込めて伝えた。
「悪意の集合体、それが
『っ!』『ッ!!』『えっ』『っ!!』『ん!』『っ!?』『…ッ』『っ!』『ッ!!』『っ!!』『ん!』『っ!?』『えっ』『…ッ』『っ!』『ッ!!』『っ!!』『ええ』『ん!』『っ!?』『…ッ』
コイツらが俺の体を使って暴れていたのはそういう事だ。ただ、負の集合体だから想いの伝え方が不器用で傍からは悪霊に思われていただろうが……俺はちゃんとわかってるよ。
お前は根がいい奴だってことぐらい。
「だけど、何で俺を助けてくれたんだ?言っちゃ何だが俺はお前を消滅させちまったのに」
俺はかつてウタと共にコイツの体とも呼べる楽譜を燃やしてしまった。怨みはあれど親しまれる様な事なんて……。
『言ってくれたから』『言ったんだ』『あなたが……』『いったいった』
「言った?何を……?」
『『『『『『『大好きって、言ってくれたから』』』』』』』
「あっ」
『俺さ、実はお前の曲聞いたことあるんだ。ここじゃない違う世界で。そこで最っ高の歌い手が歌ったお前の曲──スゲーかっこよくて大好きだったぜ』
トットムジカが消える直前にいった言葉を思い出す。そうか、だから……。
『僕を』『私を』『わしを』『おれを』『わたしを』『ボクを』『認めてくれた』『嬉しかった』『胸が苦しくなった』『いい気持ちだった』『だから助けたかった』
助けたかった。その言葉を聞き今更になって気付く。コイツらの光が……魂が消滅しかけていることに。
「なっ!?おい!ここは死後の世界だろ!?何で消えかけて───まさか!」
ここで俺は思い出した。さっき俺がいたあの空間から助けてくれた鍵盤の腕を。その自身の腕を燃やして俺をあそこから救ってくれた事を。
「何で……!確かに本来ならあそこにお前は居ちゃいけない!消されちまう場所だ!けどそれは1回目で失敗した時に分かってただろ!!何でそこまで!!」
『『『『『『『『『友達だから』』』』』』』』』
「───ッ!!!」
友達、まさかトットムジカにそう言われる日が来るなんて思わなかった。素直に嬉しい。けど、だからこそ納得出来ない。
世界中に恨まれるだけ恨まれてたった一人の友達を助けて浮かばれないまま消えていくなんて───
「ふっっっざけんなァァァ!!!」
『え?』『なになに?』『どうしたの?』『泣いてるの?』『いやだな』『泣かないで』『悲しまないで』『泣いてほしくない』『幸せになって欲しい』『だから』
「ギャーギャーギャーギャーやかましい!!!そんなバッドエンド俺は絶対に認めねェ!!!」
俺は片膝まで沈んでいた足を無理やり上げて脱出を試みる。そして、今にも消えそうなその淡い光を手に添える。
「消えさせねェ!!たとえ世界がお前を否定しようが俺だけは見捨てない!!!俺が今こうしてここにいるのはお前のお陰なんだ!!!だからずっと一緒だ!!だから……!!!」
俺はその淡い光を───
「もし、お前が消える事になるのなら───俺も一緒に消えてやる!!!絶対ひとりになんてさせねェ!!!これからも俺とお前は……"友達"だ!!!」
『『『『『『『───ッ!!!』』』』』』』
すると、次の瞬間不思議な現象が起こる。
その掴んた淡い光の魂が強く光出し……気付けばその光は消え、俺は三途の川を出ていた。
「え、は?何だ?何が起きた?何で俺川から上がってんだ?トットムジカは……?」
何が起きたのか一切理解できず頭を悩ませる。だが、次第に胸の辺りから温もりを感じ全てを理解した。トットムジカは消えたわけじゃない。そう分かった瞬間どっと緊張の糸が切れその場にへたり込む。
「は、はは……。よかった、消えなくて……。トットムジカ、お前らの魂は……しっかりここに
そういい俺は胸の辺りに手をかざしギュッと拳を握り締めた。
『わーい』『やったー』『これからも一緒〜』『嬉しい』『えへへー』『一つになってる?』『不思議だ』『でもいいかも』
「いや普通に意思疎通できるのかい!?」
嬉しいがなんだか締まらんなァ……。
だが、これで俺はある確信を得た。それは、俺がまだ完全に死んじゃいないって事だ。トットムジカの魂を引継げたのがいい証拠。これは間違いなく能力による現象だ。
何故かは分からんが恐らくトットムジカと魂を融合したのが大きいのだろう。
既に死にかけていた俺の魂だけならばまだ三途の川から抜け出せずそのまま終わっていただろうが、比較的まだ生きてているトットムジカの魂と融合したことで2つ分の生命力を得た。これなら納得がいく。
つまり、まだ間に合う。皆の所へ戻れるんだ!
「でも、どうやったら戻れるんだ?言うて今も死にかけているのには変わらねェし……あー!あの時みたいに何かきっかけがあれば!!!」
「んお?アルガお前こんな所で何してんだ?」
「ゑゑ?」
何故か聞き覚えのある声が聞こえ振り返る。そこには三途の川を見て海中水泳でも始めようとストレッチをしているバカがいた。
「キングを倒した後の記憶がなくてなー。とりあえずキズもねェしここで鍛えようと思ったんだが……迷子か?」
「何か戻れる気がしてきたわ」
さすが
ひょっとして原作で数日目が覚めなかったのはここで泳いでたからかとツッコミそうになるのを我慢し内心呆れてしまう俺だった。
弟が見たこともない姿へと変身しカイドウと戦いを始める。
ルフィの戦いは見ていて全てがデタラメだった。カイドウのブレスを地面を捲って跳ね返したり、パンクアップしたようなムキムキの体になってカイドウを投げ飛ばしたり……まるで現実じゃないたいだ。
だけど、それでもカイドウは倒せない。むしろ強くなったルフィを見てカイドウは更にギアを上げデタラメな戦いに順応し始めている。
「どっちもすごい……。この世の闘いとは思えない」
「ああ」
途中、異変を察知したのかヤマトが戻って来て一緒にルフィの戦いを見ていた。最初はアルガを見て号泣していたが必死で堪えルフィの戦いの行く末を見届ける事にした。
でも、どうしてもアルガを抱えたいと必死に言って来たのでアルガはヤマトに抱えさせる。
そうして、この予想もつかない戦いがどうなるのか。そう、思っていた時───むくり。
「は…………えっ!?」
「お、おじ……さん」
一瞬、理解が追いつかなかった。ヤマトの腕の中でもぞもぞ動き出し何事かと思ったら、目が合った。
死んでしまったとばかり思っていた奴が……目を開き見つめ合うとヤマトは驚いてしまい思わず手を離してしまう。
「わっ!?あっ!落ちっ……え!?」
見間違いなどではなく、手を離したそいつはしっかりと自身の足で地面を踏みしめ立ち上がった。
「お、お前……!!?」
「いや〜、一時は死にかけて別次元まで行ったけど何とか戻って来れたわ」
「ワケわかんねェ事言ってんじゃねェ!!!どれだけ皆が心配したと思ってやがる!!!」
「それについてはホントにごめんなさい。それはそうと……お!まだ決着はついてないな。よかった」
「おじさァァァアアアアアアアん!!!!」
「わぷっ。鬼姫様落ち着いて……。さてと……」
ヤマトを宥める男……アルガは気を取り直しカイドウとルフィの元へと歩き始める。……ってオイオイ!
「待て待て待て!!何しれっと行こうとしてんだ!!!お前死にかけたんだぞ!!!」
「だからって戦うのをやめる理由にはならない」
「なっ!!?」
「俺はカイドウ打倒を志して20年修行してきたんだ。まだ戦えるのなら止まる理由が見当たらねェよ。試したい事もあるんだ」
あれだけ傷ついてなお立ち向かうアルガにおれは言葉を失う。そんなおれを尻目にアルガはズンズン先へと進む。だが、数歩進んだ所で右腕を見てギョッとする。
「アレ!?右腕が生えてる!確か斬られたハズだけど……」
「それはお前が気絶している間に暴走?みたいなのが起きて」
「えっ!?腕が切れた!?生えた!?何それ知らない!!!」
おれが説明すると途中にヤマトが割って入る。そのせいで説明が出来なかったがアルガはしばらくし「あ、なるほど。また助けられたな」と何か納得した様子で再び冷静になる。
「腕が治ったのは嬉しい誤算だな。これでまた剣を握れる。えーと、俺の武器は……あそこか」
周囲を見渡し金棒と刀を見つけると先にそっちへ向かおうとするアルガ。しかし、ヤマトの方を振り返り何かに気づいたのか戻って来る。
そして、ヤマトの傍まで来るとそこへしゃがみ込みある物を拾った。
「これって……」
「あっ、うん。昔おじさんが着けてた角のカチューシャだよ。さっき驚いた拍子に落としちゃってたんだ」
アルガはそれを拾い自身の頭を擦る。何も着けていないことに気付くとアルガは拾ったカチューシャを頭に着けた。
「どうも俺の失くしちゃったみたいなのでお借りします」
「いいよいいよ!元はそれおじさんのなんだから返すよ!」
「そうですか?ありがとうございます」
「───っ!!うん、やっぱりそれ似合ってるよおじさん!」
「嬉しい限りです。では……」
そういい残し今度こそ進み始める。
「………」
「エース?」
アルガを任されたおれとしてはアイツを止めないといけない。だけど、アイツの目を見ているとそれができなくなってしまった。
「アルガ」
「ん?」
だから、せめてこれだけは約束して貰おう。
「もう、悲しませんじゃねェぞ」
「ああ」
その返事に一切の迷いはなかった。
鬼姫様からカチューシャを頂きエースから約束を交わした俺は次第に走り出す。そして、金棒の"鬼嫁"と刀の"花州"と"二代鬼徹"を拾い上げると準備を整えルフィの元まで突っ走る。
近くまで来ると白熱していた二人が俺の存在に気づき揃って驚きた後嬉しそうな顔になる。ルフィはわかるがなんでカイドウまで?
「アルガ……生きてたんだな!よがっだァ〜!!!」
「ああ!心配させて悪かった!!俺も一緒に戦わせてくれ!!!」
「おう!!!」
お互いに力強く頷くと俺は更に加速させるとカイドウは嬉々として俺に狙いを定める。
「ウォロロロロ!!!あのまま決着じゃ消化不良だったんだ!ありがとよ生きててくれて!!”
「俺だって意識もないまま終わったんじゃ納得できねェ……よっと!!」
迫りくる熱線をタイミングよく回避し上空へ飛ぶ。そこで俺は力を解放した。
「”
”流桜武神,,ではなく敢えてこっちのワザを使ったのには理由がある。それは、俺にはもう不要だからだ。
消費の激しい”流桜武神,,を使わずとも今の俺には尋常ならざる力がある。そうだろ?トットムジカ。
『そうそう!』『今のアルガは強い!』『頑丈!』『体カッチカチ〜!』『僕らの硬い』『だから』『アルガもかたい!』
トットムジカと魂をひとつにした影響か、コイツの性能の一部を俺の体にも引き継いでいたのだ。トットムジカのあのバカ硬い防御力を誇る肉体。
これなら、”流桜武神,,を使わずとも俺の覇気を100%引き出すことができる!他にも何やら面白そうな性能もあるみたいだしまずはやりたかった事を全部出し切ろう!!
『久々におれ達二人で力を貸すぞ!』
『ええ、家族の力を見せてあげましょう!』
(うん、ありがとう。父さん、母さん)
『ねーね』『おれたちは?』『忘れないで』『私達も一緒』『二人だけじゃない』『もっといる』『僕も戦う!』『やってやろう!』『ぶっ潰す』『アルガと一緒に戦う〜!』
『うおっ!?何だコイツら!?』
『あら可愛い』
(そうだな。悪い、それじゃ
トットムジカの頑丈な肉体、太陽のように明るく俺を照らす
「ルフィィイイイ!!!」
「ん〜?」
「俺の心臓の───
「あ!な〜る〜。ししし!面白そうだなァそれ!!!おっしゃ任せろ!!”ゴムゴムの,,〜〜!!!」
ルフィは俺の意図に気付くとニカッと笑い拳を飛ばしてくる。その拳はみるみる俺の方へ伸びていき───心臓に直撃した。
「”
「なっ!?なんのマネだおめェら!!!仲間に攻撃を───ッ!!!」
次の瞬間、カイドウは言葉を失う。その呆けた顔を見て俺はつい笑いがこみ上げてきた。
「ぷっ、くく……アヒャヒャヒャヒャ!!!」
まだわかってねェみたいだな。今のルフィは、自分がやりたい事を全部できるようになったんだぞ。触れたモノをゴムの性質に変えることだってできる。つまり、俺はたった今到ったのだ!
己の極致へ!その名も───
「”
待たせたな。これが俺の───"最高地点"だ。
どうも皆さんもしロマです!
53話をご覧くださりありがとうございます!
一時はどうなることかと思いましたが無事アルガ復活です!え?途中に出てきた目は誰かって?さあ、誰でしょうね〜?(; ^3^`)ピューピュー
【補足】
アルガのビブルカードが完全に消滅したのにも拘らずなぜ生きていたのか?それは既にアルガとトットムジカの魂が融合しかけていたからです。
それによりアルガの魂が肉体から離れてもトットムジカの魂を通す事で辛うじて生き返ることができました。文字通り間一髪って奴ですね!
それではまた会いましょうではでは~( ´ ▽ ` )ノシ