あなたにもう一度毛布をかけるため 作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!
いつも誤字報告ありがとうございます。ひとりでは何度チェックしてもそこが誤字と分からない場合もあるため非常にありがたいです。
それでは続きをどうぞ( ´ ▽ ` )つ
聖地マリージョアは今、前代未聞の大事件に見舞われていた。辺り一帯は炎に包まれ消火を急ぐ者、解放され逃げ惑う奴隷達を捕まえる者達がいた。
そう。奴隷達が解放されているのだ。それも一人二人ではなく何十何百人ととんでもない人数である。
俺はそんな大混乱の中逃げる人達を掻き分け逆走していた。
「ハァハァ……!どこだ?どこにいる?早く見つけないとっ」
おびただしい人数の中俺は見聞色を発動しタイガーを探す。先ほどすぐ近くで爆発が起きたのでそこに狙いを定めてやって来たが中々見つからない。
クソッ!周りに人が多すぎて声が頭に響く。想像以上に負担がでかい。長くは持たないぞ……っ!!あれは!
俺は一人震い昂る男の声が聞こえてその場所まで駆けつける。その声の主のところまで着くとついに目的の男を見つけた。
あの赤い皮膚に魚のヒレ。間違いない!!
「タイガーさん!!」
「っ!!おおアルガか!探したぜ!去年より少し大きくなったんじゃねェか?」
「オォウ……タイガーさんに名前呼ばれた……ヤベェ、にやけそう……」
「お前中身も変わってないか?」
しょうがないじゃん。今生はまだ真面に原作キャラに会えてないんだもん。
内心言い訳しているとタイガーさんは俺に鍵を渡す。
「ホラよ錠の鍵だ。それでさっさと首輪と手錠を外しな」
「うん、ありがとう!」
「おう、気にすんな。言っただろ?助けに来てやるってよ」
「うん、信じてたよ!ホントにありがとう!」
俺はお礼をいい首輪と手錠の鍵を開けた。よし!これで自由になったぞ!
「これで借りは返したぜ。それじゃ自由になったことだしお前とはここでお別れだ」
「借りって言っても傷を少し手当てしただけなのに……。助けた恩とぜんぜん釣り合ってない気がする」
「何いってんだ。お前があの時いなけりゃあおれは死んでいたかも知れねェ。これでも足りないぐらいだ」
いや、あんたは聖人か何かか?本当は人間嫌いのハズのなのにいい人過ぎる……!!俺が女だったら惚れるわこんなん。
「じゃあなアルガ。もしどこかの海で会うことがあったらよろしくな」
「あっ……あのっ!」
「ん?なんだ?」
別れを切り出しこの場を去ろうとしたタイガーに俺は咄嗟に引き留めてしまう。
もしどこかで会えたら……か。俺はタイガーさんのこの先の結末を知っている。でも、だからといって俺にできることはなかった。
大量出血で死んでいったタイガーさんは輸血をすれば助かっていた。だが、人間という人種を拒絶し輸血を拒んだ。
己のプライドを曲げず生きて後悔するより死して本望を選んだこの男に俺は死なないで等の無責任な言葉は言えなかった。
そんなタイガーさんに対し俺はこんなことを聞いてしまう。
「タイガーさんは……もう、人間を愛せませんか?」
「っ!?」
己の核心を突かれたのかタイガーさんは目を見開いた。
「…………あの日会った時から感じていたが、不思議なガキだなお前は」
「…………」
「ああ、そうだな。おれはもう……人間を愛せねェ」
そう答えたタイガーさんの顔は悲しげに、だが僅かに申し訳なさといった感情の瞳をしていた。
「人間にもいい奴悪い奴がいるってのは頭じゃあ分かってんだ……。だが、どうしても人間を前にすると奥底に潜む憎しみが顔をだす」
「……はい」
「きっとこの憎しみが消えることは一生ねェだろうな」
分かってはいたがこう面と向かって言われると来るものがあるなァ……。やっぱり、タイガーさんの未来は変えることはできないのか……。
今生で初めて会えた原作キャラであり俺の恩人。その人の運命を変えられるのなら変えたかった。
俺は俯くとタイガーさんは頭をポリポリかき俺から背を向けた。
「でも、まあ……お前のことは嫌いじゃなかった」
「……えっ」
「お前にもっとはやく会えたら……違っていたのかもな」
タイガーさんはそういうと俺に優しく笑いかけてくれた。俺はたまらなくなり胸を抑える。
「タイガーさん……」
「じゃあな。お前みたいな人間に会えておれはよかった」
最後の言葉はどんな顔で言ったのか俺に背を向けて分からなかった。しかし、俺もこれだけは言えた。
「うん、俺も……タイガーさんに会えてよかった!!」
タイガーさんは走りだす。俺の言葉をどう受け取ったのかは分からないが……これでいい。お互いに伝えたい言葉は交わせたのだ。
なら、もう振り返るのはやめよう。じゃないとこの選択をとったタイガーさんにも失礼だ。
俺も気持ちを切り替えて走りだす。助けてくれたタイガーさんのためにも。自由の海へ出ると誓った母さんのためにも。
こうして俺はこの聖地……いや地獄を抜け出し人生で一番濃厚に感じた長い夜は終わりを向かえるのだった。
ここは"
「おおっ、見えてきたぞ島だ!」
聖地マリージョアから逃げ出した俺は港で漁船を見つけたのでそれに乗って脱出し海へ出た。こちとら腐っても元百獣海賊団。航海術は持ってんだ。
「あそこにいた数少ないメリットだよなァ~。さてと、島に着いたらまずはいろいろ揃えなきゃだな……ん?」
島についてからのことを考えている内に港が見えてきたが何やら大きな船が停まっていることに気づく。
なんとそこには海軍の軍艦が停泊していた。奴隷で脱走中の身として今は会いたくない人達なので俺は港に停めるのはやめて別の所を探した。
「ウッワァ~~……。何で海軍がここにいんだよ。近くに海賊でもいたのか?」
仕方ないので俺は港から少しはなれた場所にある海岸沿いに船を着けた。ここなら人気もないし問題ないだろう。
そして、島に上陸ししばらく進むと港町へと出た。
「ウォォオオ~~!!スゲェ賑やか!ワクワクするなァ!」
今までずっと奴隷だったためこんな賑やかで楽しそうな場所を見ると胸がドキドキする。やっぱ、大勢の人が笑顔でいる場所って好きだなァ。
「よし、まずは物資を買い揃えないとな!忙しくなるぞ~~!」
そうして俺は港町へ足を踏み入れた。その後はブラブラと見て周り、いろんな店へ赴いた。
「まいど~~!また来てくれよ坊主!」
「お~~!おっちゃんありがとー!」
あれからまず身なりを整えるために服屋へ行きその後は水や食糧の備蓄、本などをいろいろ買い込んでしまった。
実はマリージョアから出る際に襲撃され半壊していた建物から金品とお金を少々拝借していたのだ。退職金代わりに貰ったぜ。
犯罪じゃないのかって?聖者でも相手にしてるつもりか?こちとら元海賊だぜ(言いたかっただけ)。
そんなワケで金銭面は当分の間は心配無用なのだ。イヤァ~金があるっていいねェ~。
さっき肉屋で仲良くなったおっちゃんからサービスで貰ったコロッケを頬張りながら歩いていると飯屋を見つけた。
コロッケだけじゃ物足りなかったし入るとするか。
俺は昼食をとるため店に入る。時間帯もちょうどお昼頃だったので人がそこそこおり盛り上がっていた。
俺はカウンターに座ると後ろから話し声が聞こえた。
「オイ聞いたか港の軍艦の話」
「ああ、聞いた聞いた。何でも近くの海賊船を沈めたんだろ?助かるよなァ」
「それがよ。船は沈められたがひとり逃げ出した奴がいるって話だ」
「マジかよ。だから港に軍艦があったのか恐ェな」
なるほど、港の軍艦はそれが理由か。海軍も大変だねェ……。まあ、脱走した奴隷の捕縛でいるワケではなさそうだしもう少し観光を楽しんでから船に戻ろうかな。
「マスター!お肉ちょーだい!後お水~!」
「あいよ。坊主、そんなに荷物を持っておつかいかい?偉いねェ~。後でデザートでもサービスしてやろう」
「わァ~~い。ありがとォマスター!」
さっきからいろんな店でサービスをしてもらっている。子供の姿万歳っ!!
その後は、昼食をたっぷり堪能し腹が膨れたので勘定を終え店を出た。そして一通り町を観て回って日が落ち始めてきたので船へ戻るため森の中を進む。
───ガサガサ
「ん?なんだ。茂みから物音が……デジャヴ?」
その道中で俺は茂みから音が聞こえ覗いてみると……そこにはおよそ15歳ほどの少女が倒れていた。
「えっ……てか待ってこの人ってっ!!?」
……………………ん……ここは……っ!?
私は意識を取り戻すとガバッと上体を起こす。どうやら、眠ってしまったようだ。
先日まで身を置いていた海賊船は政府に襲われた。それを察知した私は逸早く船を見限り近くの島で身を隠していたが限界が来ていたらしい。
しかし、起き上がると私はベッドの上にいて周りに人の気配はない。この微かに揺れる感じ……ここは船内かしら?
警戒しているとガチャとドアが開く。すぐにそっちに視線を向けると幼い少年が入ってきた。
「あれ?お姉さん起きたの。目が覚めてよかったよ」
「ええ、ありがとう。それはそうとここはどこかしら?」
「ここは僕の船だよ。帰る途中で倒れてるお姉さんを見つけたからここに運んだんだよ」
「そうなのね、ありがとう。小さい体で運ぶの大変だったんじゃない?」
「大丈~~夫!鍛えてますからっ」
そういい少年は力こぶを見せるように腕を巻くってにかっと笑う。
長年人の目を見て生きてきたけれど、この子の目に嘘はない。一先ずは安全そうね。
「そういえば、お姉さんあそこで倒れてたけど何かあったの?」
少年は疑問を聞いてくる。森の中に倒れるように眠っていたのだ当然だろう。どうにか誤魔化さないと。
「ひょっとして、海賊に襲われちゃったとか?」
「えっ」
「今日町で食事をしてたら噂を聞いたんだよ。なんでも海賊の生き残りがこの島に紛れ込んだって。港にも軍艦があったしよっぽど凶悪犯なんだろうね」
「ええ……そうなの。実は私も船で旅をしていたのだけど。運悪く海賊に襲われて船は壊されてなんとかこの島に辿り着いたのだけど……力が尽きて倒れたみたい」
私は少年の話しに乗っかり嘘の作り話を語る。だが、少年は私の話を信じたようでテーブルの上に置かれているポッドから暖かい飲み物を注ぎ私に渡す。
「そうなんだ。それはツラかったね。よかったらこれを飲んでよ。ホットミルクだから体が暖まるよ」
「ありがとう。優しいのね」
「困った時はお互い様だよ」
渡されたマグカップを手に取り一口飲むと口の中で甘さが広がり体が暖かくなる。甘くて……美味しい……。
「お姉さん船を壊されたっていったけどこの先どうするか決めてるの?」
「そうね……。それなら……」
私は少し考えた後少年に顔を向けひとつ提案を持ちかけた。
「しばらく、私をこの船に置いて貰えないかしら?」
「…………ファ?」
私の提案が意外だったのか少年の目は点になり開いた口が塞がらない様子だった。ちょっと可愛い。
「ダメかしら。私としては行く宛てがないからここに置かせて貰えると凄く助かるのだけれど」
「………………ハッ!?いかん脳の処理が追い付かんかった。え?まって?お姉さんがこの船に乗るってこと?リアリー??」
「ええ。リアリーよ」
「なるほど……。ええ、ティーンズロビンと一緒に航海とかご褒美過ぎるんやが?俺死ぬの?あ、既に2回死んでたわヨホホホホ」
途中で小声になってしまい少年が何を言ったのか聞き取れず私は首を傾げる。
「……?それでどうかしら?もし置いてくれるのなら船の雑用でもなんでも手伝うわ」
「イヤァ~~、俺としても船は俺ひとりだから人手が増えるのはありがたいんですが……男女が二人でってのは色々問題がですね?」
少年がテレた感じに早口でそういうと私は少しおかしくなって笑ってしまう。
「あら、意外とお年頃なのね。でも、あなたはまだ子供なのだから気にしなくてもいいのよ。それに女性に手を出すようには見えないし」
「うーーん、否定できない……。分かりました。それじゃ、しばらくはよろしくお願いします」
「ええ、これからよろしく。私の名前はロビン。あなたは?」
「俺の名前はアルガ。こちらこそよろしく」
こうして私は次の寄生先を見つけることに成功した。この子には悪いけど政府に見つかるまではあなたを隠れ蓑にさせて貰うわ。
周りのものは何でも利用する。そうしなければ生き残ることはできない……。だって私の夢には敵が多すぎるから。
「シャオラァ!!!ロビンと航海!我のファン人生に一片の悔いなし!!」
あれから数日が経ちこの船での生活も慣れてきた。といってもほとんど何もしていないから苦労はないのだけれど。
そう、手伝うと言った手前私も何かしようと思ったのだけど、気づいた時には既に全て終わっているのだ。
朝早く起きて朝食の準備でもしようとしても───。
「あっ、ロビンさんおはよう!今日も早いね。すぐに目玉焼きができるから先にパンでも食べてて。置いてるジャムは好きなだけ使っていいから」
「……ええ、ありがとう」
私より更に早く起き既に朝食の準備をしていたり。船の甲板を掃除しようとしても───。
「あっ、掃除なら起きて最初にしたから今日はもう大丈夫だよ」
「…………そうなの。偉いわね」
洗濯物を干そうと外に出るも───。
「あっ、洗濯物なら食事中に干しておいたよ」
「………………仕事が速いのね」
私が気づいた時にはそれらが終わっており私はここへ来た時からそれといった手伝いをできていない。
今まで他の船に置いて貰った時は雑用や力仕事など色々手伝わされてきたがここに来てからそれらが一切ない。
生活する上でこれと言った苦労はなく、なんというか……快適すぎて逆に申し訳ない気持ちがあるわ。
というより彼、私より寝るのが遅く私より早く起きるっていったい睡眠はどれぐらいとっているのだろうか?朝イチの掃除時間を考えると少なくても4時間も眠れていないだろう。
そんな一抹の不安を抱いている私だったが気に入っている時間がある。
「ロビンさ~~んっ。コーヒー淹れたから一緒に飲もうよ」
「ええ、頂くわ」
「それで、この前読んだ国引きオーズの伝説なんだけどさ……」
午前の仕事が一段落終えるとこうして休息の時間に彼がコーヒーを淹れてきて一緒に飲む。そして、本の話や歴史の考察などを一緒に話し合ったりするのだが、この時間が私は好き。
今までこんな風に自分の趣味の話ができる相手はいなかったため彼とこうして話す時間は楽しく感じつい時間を忘れてしまう。
だからかしら……。話している時に彼のカップが落ち床で割れる前に咄嗟に能力を使ってしまったのは。
彼との会話を中断したくない。そんな気持ちがあったからか無意識で床から手を咲かしカップを掴む。幸い中身は溢れずにすんだけど突如現れた手を見て彼は固まる。
「ロビンさん……これ……」
「これはっ……」
「あなたも能力者だったんだね」
「えっ」
私は想像していたものと違い咄嗟に声が出せなかった。
今までこの力を見たほとんどの者達は私を気味悪がった。だから私もあまりこの力を人前で見せることはなくなったのだけれど、彼……アルガは違った。
それに引っ掛かる言葉もあった。あなたもってことはひょっとして……。
「アルガも……能力者なの?」
「うん。あまり役に立つ感じの能力じゃないけどね。それにしてもこの能力スゴいね。これってどこにでも生やせるの?」
「ええ……。あらゆる所から咲かせることができるわ……」
そう答えると私はアルガの体に腕を咲かせる。だが、やはりアルガは恐がらなかった。
「はえ~~。色々と便利そうな能力だなァ~~。洗い物とかすぐ終わんじゃん」
「……フフ、アルガって面白いわね」
アルガが言ったことは私も力を得て最初に考えたもので実際ひとりの時は洗い物等に力を使っていた。
考えることが同じだったのがついおかしくなり笑ってしまう。
「これってさ。大勢の相手に囲まれても間接技とかきめれば強くない?」
「…………。確かにそれは強いわね」
考えもしなかった。この力は皆を恐がらせるだけだと思っていたけどれ、それができるようになれば今後の自衛にも繋がる。でも……。
「すぐにそんなことを思い付くだなんて恐ろしい想像をするわね」
「そうかなー。誰でも考えそうなことだけど」
「それにしても困ったわね」
「何が?」
「どちらも能力者だと船が転覆しちゃったら溺れてサメの群れに食べられて私たちの血肉で海が真っ赤に染まりそうね」
「お前の想像の方がよっぽど恐ろしいよ!?」
彼が盛大にツッコム姿をみてフフっと笑ってしまう。この力を見ても恐がらなかったのはサウロ以来かしら……。
こうして力がバレても態度を変えない彼の純粋な心に私は少しだけ甘えることにした。
そんな彼との日々を過ごし私はふと感じた疑問を聞いてみた。
「ねえ、アルガ。あなたはなぜ海へ出たの?」
「そうだね。海へ出るまでは色々と縛りの厳しい環境にいたからかな。それで自由を求めて海へ出たんだ」
「へえ、そうだったのね」
「うん、だからいつか海賊になりたいんだっ」
「なぜそこで海賊が出るの?」
あまりに飛躍した答えに私の頭には疑問符が浮かぶ。でも、アルガはキラキラした瞳で語りだした。
「なぜってそりゃ、まだ見たことのない世界を冒険して一喜一憂し時には仲間達と唄ったりして楽しいことばっかりじゃん!それに何より自由!それが海賊だからっ!」
「アルガの海賊のイメージは賑やかでとても楽しそうね」
「エヘヘ~~。それじゃ、ロビンさんはなんで海に?」
「私は……そうね。世界の歴史を探求するためかしら」
「ああ~~、そういや考古学者って言ってたもんね。それじゃ一緒だねっ」
「……え?」
アルカの言葉に私は再び疑問が浮かんだ。なぜ私はアルガと一緒なのだろう?私はただ歴史を知りたいだけなのに。
「だって、自分の知らないことを見つけるために海に出たんでしょ?なら冒険と一緒じゃん」
「あっ」
目から鱗とはこのことだろう。私は今まで様々な島へ足を運んだ。それは歴史を知るための手段だったから。しかし、彼の言葉で新たな認識を覚える。
確かに彼のいう通りこれも冒険なのだろう。
「俺もまだ知らない場所へいくのはワクワクするし気持ち分かるよ。だからこの航海やこれから行く島の上陸だって俺には冒険なんだ」
「そう……確かにそうね。航海や上陸が……冒険だなんて考えたこともなかった」
「うえっ!?」
「……?どうかした?」
「いえ何も。……あの台詞を生で聞ける日が来ようとわっ!!!」
最後の方は小声で聞こえなかったがすぐに調子が戻った。
「それじゃさ、いつか俺が海賊になったらロビンも一緒に行こうよ」
「えっ?私も……?」
「うん、今みたいに一緒にまだ知らない世界を冒険しようよっ」
「…………そうね。もしそうなれたら楽しそう」
私がそう答えるとアルガは更に笑顔になり私も一緒に笑ってしまう。
まだ10にも満たない子供にしてはしっかり者だが、それでも自分の好きなものを語るその顔は純粋な子供のそれであった。
今日もまたアルガという男がどういう人なのか分かった気がする。
彼の知らない一面を知る度に私は心のどこかで忘れていたサウロやクローバー博士といた時の暖かい感情を思い出す。
この気持ちが冷めぬ内に私は手に持つ暖かいコーヒーを口に入れるのだった。
あれから月日は流れアルガと出会ってから1年が過ぎた頃、私達の運命は大きく変わることとなった。
遠くから島が見え上陸の準備を始めるとニュース・クーが新聞を持ってきてくれた。アルガは新聞を手に取り広げるとしばらく難しい顔になった。
私は何が書かれているのか気になり後ろから見てみると───。
『悪魔の子の目撃情報あり!その存在に迫る!!』
「っ!?」
私は息を飲んだ。新聞の記事には手配書の写真も張られており、パッと見じゃ分からないだろうがよく見比べれば私がその悪魔の子だというのは誰にでも分かるだろう。
特に普段から一緒にいるアルガならなおのこと……。
「…………」
私は今だ自分の正体を教えてはいない。正体を明かして彼に裏切られるのが恐かったから。……でも、それも長くは続かないのだろう。
アルガは少し考えるように顔を伏せたが顔を上げると新聞を置き上陸の準備を再開させた。
「ロビンさん。島に着いたら別行動で島を回らない?そっちの方が物資を早く買い揃えられるし」
「……ええ、そうね……」
私は彼の顔を見る勇気がなかった。何を思って今の台詞を言ったのか分からなかったから。
言葉の通り効率を考えてのことなのかそれも……。
悪い方に考えが進んでしまうため頭を振り思考をリセットさせる。いけない。こんなことばかり考えるのはダメね……。でも……。
島へ上陸すると私達はすぐに買い物の分担を決める。アルガは帆の修繕の布や板に釘など。私は生活必需品な水や食糧など。そして最後にアルガはこう言った。
「今日は色々見て回ると思うからいつもより遅くに帰ると思う。でも、夕方には戻るからロビンさんは船でのんびり待っててよ」
「ええ、分かったわ……」
そうして私達は別れた。アルガに気付かぬよう体に耳を咲かせて。
それから午前の内に必要な物は買い揃え船に戻るとアルガに咲かせた耳からとある声が聞こえた。
『そこの少年、少しいいかい?』
『はい、誰ですか?』
『ありがとう。私は……政府の者でね。君に話したいことがある』
私は船内で肩を震わせた。来たっ、とうとう来てしまった。
『君と行動している少女は私達が探し求めている人物でね。何年も逃げ続けている凶悪犯なんだよ』
『そんなっ!?ロビンが……!』
『嘘ではない。証拠にこの手配書を見せよう。彼女が凶悪犯として顔を出した8歳の写真だ』
私が隠していた事実を知りアルガは衝撃の声をあげる。アルガの驚く声に私の胸はズキンと痛んだ。
『君みたいな少年の心に漬け込んでここまで逃げてきたようだが……いつ君もあの少女の毒牙にかけられるか分からない。そこで君にも少し手伝いをして欲しい』
『手伝い……ですか……?』
『ああ……その少女をこの島の森の中まで誘き寄せて欲しいのさ。そこまでしたら後は我々で何とかしよう。無論、報酬は支払おう。なに、仮に失敗してもこの島の船は全て我々政府の船だ。逃がしはしない』
政府はアルガに私を売るように頼み込む。お願い……やめて……。
私は無意識にそんなことを願っていた。バレたのならすぐにこの島から逃げ出せば済むのにそれを考えず断って欲しいという気持ちでいっぱいだった。
しかし、私の気持ちは彼には届かなかった。
『……ええ、分かりました。いいですよ、
私は目の前が真っ暗になった。
ちょうどよかったって何……?ひょっとして今朝の新聞で私の正体に気付いていたとか……。
私は結論に辿り着き渇いた笑いが漏れる。
『では、夕日が沈む時間に誘いましょう。そっちの方が政府の方も色々と助かるでしょう』
『ほほう、話しが分かるうえになかなか利口な子で感心するよ。では、また夕暮れ時に合おう』
そういい政府の人の声は消えた。どうやらどこかへ行ったようだ。それよりは今はアルガのことだ。いったいどうすれば……。
そう考えている内に時間が過ぎいつの間にか外は夕日が沈み始めた頃、船の外から足音が聞こえてきた。私は咄嗟に身を隠し様子を伺うと船内にアルガが帰ってきた。
そして彼は何かを探すようにキョロキョロする。
「ロビンさんまだ戻ってきていないのか。しょうがない探しに行くか。なァに、すぐ見つかる。島は小さいし他の船は政府が抑えているんだ……。この船以外逃げる方法はない」
彼はそういい船を降りてまたどこかへ姿を消した。だが、私の体はしばらくの間動かなかった。
……いったい何故こうなったのかしら?彼に正体を隠していたから……?
そうよね……。小さい頃から人を騙しては裏切ってきたもの。こうなるのは当然よ……。
そして、この後はどう行動すればいいのかは決まっている。今までだってそうしてきたのだから。
「さようなら……アルガ」
私はアルガが居なくなったところを見計らいひとりで出航の準備を始めた。
「さようなら……ロビンさん」
今朝からロビンさんが俺に能力を使ったのは見聞色で分かっていた。なぜ、使ったのか最初は分からなかったがすぐに政府と接触したことで理由が分かった。
話を聞く限り既にロビンさんが俺と行動しているのは政府に知られている。なら仮にここを逃げられたとしても今後政府は俺達をずっと狙い続けるだろう。
残念ながら今の俺には世界を相手にできるほどの力はない。ロビンさんもそれは分かっているハズ。
となるとロビンさんは今後どう行動するかを考える。今まで政府に勘づかれたら組織にすぐ見切りをつけ逃げ出している。きっと俺にもそうするだろう。
なら俺にできることは…………いかにロビンさんが逃げやすい状況を作り出せるかによる。
船には既に十分な水や食糧を積んである。これならしばらく海へ逃げても食糧面は心配いらない。
ここを逃げきれば後は何とかするだろう。
そう考えている間、俺は今はひとりで森の中を進んでいた。そして、森を抜けると周りが樹に囲まれた拓けた場所へ着きそこには政府の役人達が大勢いた。
「おい小僧……。何のマネだ?」
今朝であった政府の人が前から現れる。ただ、会った時のような余裕のある感じではない。明らかに怒っている。
まあ、ロビンをここまで誘き寄せるって話だったのに俺しかいねェならそりゃ怒るわな。
「いや~~。何のことでしょう?」
「惚けるなっ!お前があの少女をここまで連れてくる話だっただろ!!」
「あっ!!ここへくるのは少女でしたか。いっけねェ、俺ってば少年と聞き間違えちゃいました~。なにせ、
「は……?何言って……っ!?」
俺は惚けたフリをしながら上着を脱ぎ背中を見せる。そこには俺が生まれた時につけられたあの紋章が刻まれていた。
「"天駆ける竜の蹄"……天竜人のマーク!!コイツまさかっ!」
「約1年ほど前に聖地マリージョアから奴隷の脱走者が多発した大事件……。お前ら政府も血眼になって探していたんじゃないのか?そんな俺からのプレゼントをどうぞっ」
そういい俺は手に持つボタンを押した。そして、俺の正体を知った役人達の目の色が変わるがすぐにでんでん虫がなり受話器をとった。
「なんだっ!こんな時に!」
『大変です!港に停めていた船の舵が全て爆破されました!!そのせいでニコ・ロビンが乗っている船が先ほど島を出てしまいましたが追うことができません!』
「なんだとっ!?……貴様かァ!!!」
俺が手に持っているボタンを見て状況を察する。さすが諜報部員……理解が早い。
「これでニコ・ロビンを追うことはできなくなったな。今のあいつなら飛んでいっても視界に見える敵なら無力化できる。諦めて俺で妥協しなってェ~~。成果ゼロよりはマシでしょ?」
まあ、無抵抗で捕まるつもりはないけど。
おそらく今の俺は大分ゲスい顔になっているだろう。政府相手にこんなにコケにしてめちゃくちゃウキウキしてる。
そんなことを考えていると後ろから突如2人の男が現れ俺に奇襲をかける。
「見えてるよっ」
「ガハッ!?」
「なにっ!?」
俺は後ろからの不意打ちを躱し攻撃でがら空きの腹に武装色の拳をくりだした。男は堪らずその場に倒れもうひとりは即座に距離をとった。
「っ!?気をつけろ!ただのガキじゃない!覇気使いだ!」
「嘘だろ!こんな子供が?」
子供が一撃で大人……それも六式使いを倒したため相手は一旦距離を取り警戒心を高める。
この場にいるのは全員で20人弱……さっきの動きを見るに六式も使えるだろうな。まあ、倒せなくてもいい。ここでどれだけ時間を稼げるかが重要だ。
状況を整理すると役人は顔を歪め俺に怒鳴る。
「貴様っ!こんなことをして何になる!何故そこまでしてあの女に手を貸す!!」
そういわれ俺は真顔になる。
「何故って?そんなの決まってんだろ。ロビンさんは俺の───」
船を出し島が見えなくなるまで離れてようやく気持ちに余裕ができた。
「ここまで来ればひとまずは安心ね。でも妙だわ……」
何故、私が逃げた後すぐに追いかけてこないのかしら?私が船を出せばすぐに追いかけてくると思ったのだけれど……。
私は疑問が浮かぶが結論がでず色々と疲れがたまっているため一度船内に戻る。
「……?あらこれって……」
船内に戻るとテーブルの上に一通の手紙が置かれていることに気が付く。今まで冷静ではなかったから視野が狭くなっていたのだろう。
その手紙を見ると差出人はアルガからだった。
「……なぜアルガの手紙が。ひょっとしてあの時?」
おそらく一度戻ってきた時、私が隠れている間に置いたのだろう。少し冷静さを取り戻した私は手紙を開いてみることにした。
そこには驚くべきことが書かれていた。
『ロビンさんへ
この手紙を読んでいる頃にはおそらくお別れしている頃だと思います。もし、一時的とは言えロビンさんを騙し不安にさせてしまったのならすみません。ですが、こうでもしないと政府はずっと追いかけてくると思いあんな行動を取りました。』
手紙を読み私の目が見開く。騙した?アルガは私を裏切ったんじゃないの……?
『実は俺はあなたが何者なのかは始めから知っていました。あのオハラの生き残りであり政府が決して許さない
──っ!?知っていた!?私の正体を……。じゃあ、なぜ今まで私なんかと共にしたの?それにアルガの秘密って……。
『俺はあなたと出会う前まで奴隷でした。それも世界政府のもっとも偉い世界貴族「天竜人」の……。』
───っ!?聞いたことがある。この世界の創造主の末裔であり、その高い権力でどんな人間も奴隷として扱う神のような存在。そして、そんな彼らには誰も逆らうことができない……。
そんな人達の奴隷だったなんて……。
『そこではツラい日々の繰り返しだった。何度も絶望した。そこで親も亡くなりひとりになってしまったから。』
わたしはかつて失った母親オリビアやクローバー博士を思い出す。
あなたも、私と一緒だったのね……。
『ですが、そこから逃げた先で出会えたのがロビンさん……あなたです。』
私……?
『俺はあなたと一緒にいる間とても楽しかった。一緒に笑って話し合う人なんて今までいなかったので……。』
文章の一文を読むたびに自分の過去が甦る。ひとりがどれほどツラく寂しいものか。そんな中誰かと話す時間がどれほど救われるのか。
『なので俺はこの先何が起きても頑張れます。あなたと友達になれたから。事実、あなたと出会ってからの1年は今生で一番楽しかった。』
そんなの私だって一緒だ。あなたと話しててどれだけ楽しい一時を過ごせたことか………!
『政府に捕まればどうなるかは想像できますが……それでも、あなたを逃がせるのなら俺は喜んで捕まります。それでロビンさんが逃げられるのなら。』
なぜ……あなたはそこまでして私を……っ!!
『この先、ツラいことも待っていると思いますが夢を決して捨てないでください。夢の話をする時の笑顔が俺は好きだから。』
「っ!?……ア、ルガ……!」
ポロポロと止めどなく涙が溢れ始める。
『それに俺だって一生奴隷のままでいる予定はありません。いつか必ず逃げ出します。そして、何年何十年経とうとどこかで再会したら……その時はもう一度たくさんお話ししたいです。
俺にとってあなたは初めての友達だったから。
アルガより』
もうわたしは自分の涙を止めることはできなかった。
「ウッ……ウゥ、ウワアアァァアアッ!!!!」
しばらく泣き止むことができず収まる頃には日は沈みきっており綺麗な月が夜空を照らしていた。
「……アルガ」
『よく食べる子だね。居候のくせに……』
『すぐに目玉焼きができるから先にパンでも食べてて。置いてるジャムは好きなだけ使っていいから』
「また……会えるかしら……」
ボソッとそんなことを呟く。
ダメね、弱気でいちゃ……。会う会えないじゃない。アルガのためにも私は必ず夢を叶えてみせる。そのためにも───。
「海賊……ね。海賊といえば確か政府公認の制度があったわね」
そこに属している海賊の傘下に入ることができれば、私の夢に少しは近づけるかしら?
「かなり危険な賭けだけど……試してみる価値はありそうね」
そうして私の夢のためにこの手紙に改めて誓う。その後、私は王下七武海のひとりであるクロコダイルと手を組むことになるのだった。
俺は今、政府の船に護送されていた。
「ったく……手間とらせやがって」
「いくら覇気使いでもあの人数に敵うわけねェのにな。だが、かなりの数がやられちまった」
「我々はこのガキをマリージョアまで引き渡す。お前らは見失ったニコ・ロビンの捜索へ迎え」
「了解」
などの会話が聞こえる。よかった、どうやらロビンさんは無事逃げきれたようだ。後は俺の目的を果たそう。
そう、俺がここで無駄に暴れたのには理由があった。それは今朝みた新聞にある。
俺はもう一度あの地獄でしかないマリージョアまで行く必要ができた。そのためにわざと政府に天竜人のマークを見せた。
そうすれば多少の負傷は負うが殺されることはない。あいつらにとって俺は奴隷とはいえ天竜人の所有物なのだから。
そして、推測通り俺は捕縛されマリージョアまで送られている。だが、このまま奴隷にされ続けられると思うなよ……。
俺が行く理由は単純に放っておけなかったのと……タイガーさんなら同じことをすると思ったからだ。
俺は新聞の内容を思い出す。
『"
原作開始から12年前……。そういえばちょうどこの時期だったな。
漫画でも起きたあの鬱展開。亡くなる直後に再会したためお互いに別れの言葉すら言えなかったあの糞みたいな運命を変えられるのなら……やってやる。
だから、待ってろよ……ジニー。
どうも皆さんもしロマです!
3話をご覧くださりありがとうございます!
今回は書きたい内容が多かったため少し話が長くなっちゃいました……(-∀-`; )
それでもこの小説でやりたいことの一つ『ロビンの「16です。何でもします」発言を阻止する』を達成できて満足です!
おそらく次回で幼少期時代は終わると思いますので楽しみにお待ちください。
また次回に会いましょうでわでわ~~( ´ ▽ ` )ノ