あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
ここまで来れたのも皆さんのお陰です。
最後まで楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
それでは続きをどうぞ!( ´ ▽ ` )つ


最終話

 背景、父さん母さんへ。先日は息子の俺と一緒に戦ってくれてありがとう。二人のお陰で俺は今もこうして生きています。

 

 二人も黄泉の国で幸せに暮らしていると幸いです。

 

 さて、前置きはこれぐらいにして本題へ入りたいと思います。俺が何故、こうしてお二人に挨拶をしているのかと言いますと───

 

 

「えー、これより被告人アルガの裁判を執り行います。罪状は我々一味を心配させた罪とロビンモネの個人的怒り罪の二件です」

 

 

 周囲の怒気に当てられて生きた心地が全くないからです。ワンチャンそっちに行きそう。

 

 こうして、ウソップのなりきり口調から裁判という名の集団説教が始まる。そんな中、俺は天を仰いで現実から目を逸らすとこう思うのだった。

 

 人生のリセットボタンってどこにありますか?

 

 

 

 

「待ってまずは話を!……あり?」

 

 目が覚め起き上がると俺は和室にいた。

 

 あ、そうだ。戦が終わった後ルフィを担いだエースと鬼姫様とで一緒に屋上から降りて皆の所に戻ったんだ。

 

 皆揃って何故か急に俺を見て驚いたかと思えば一斉に駆け寄ってきて……んお?そこから思い出せん。

 

 記憶が曖昧だなァ。そこで気を失ったか。となるとここは城の一室か?置物とかはほとんどなく殺風景だが部屋自体は手入れが行き届いてて綺麗だ。畳にシミひとつない。

 

「日も上がってるし皆も起きてるかな。俺も起きて……ん?」

 

 布団をよく見ると違和感が。異様に膨らんでる……誰か入ってるのか?

 

「おおかたルフィと一緒に寝かされたな。それかゾロ、か……」

「スゥ−…スゥー…」

 

 布団をめくるとそこには気持ちよく眠っている鬼姫様の姿が……ぴゃ!?!!?

 

 ……いや待って!?お、おにおおっっっっ!?!?

 

「起きたみたいねアルガ」

「………」ピタッ

「それじゃ早速だけど───色々と説明して貰おうかしら」

「………はい」

「Zzz〜♪」

 

 こうして、俺は城の中庭へ連れて行かれ仲間内での裁判が始まった。なお、その間もずっと鬼姫様は心地よくお眠りしていた。

 

 …………夢オチからの正夢オチでしたかァ。

 

 

 

 

 うへー、こってり皆に詰められてしまった。いやでも気持ちはわかるよ。今回は流石に自分でも悪いかもとは思ったし。

 

 これまで以上に死にかけて(てか一度死んだし)皆にはすごい心配をかけてしまった訳だし。

 

 にしてもだよ?俺のビブルカードを勝手に作ってたのには遺憾なんですが?いつの間に作ったのよ。

 

 けど、それを聞いてやっと驚いてた理由がわかったわ。ビブルカードが燃え尽きて死んだと思っていた俺が普通に戻ってきたんだもんな。そりゃ仲間達もビックリしますわ。

 

 ですがねー、だからって起きて早々やる事が裁判とはこれ如何にですよ。もっと労って欲しい。

 

 え?自己犠牲でルフィのために命を投げ出したのは聞いたって?フゥン、成程……ごめんなさい。

 

 あの後、皆がこぞって「命大事に」と力説されてしまった。終いには自己犠牲マン代表のサンジにすら諭されてしまう始末っ。グォォ、アイツに言われると流石に来るものがある……!

 

「後はロビンとモネから鬼姫様が女性だった件を詰め寄られたが……どちらかと言うとこっちが本命ですよ言わんばかりに圧が強かったな」

 

 あの威圧感ひょっとしてカイドウの覇王色レベルだったんじゃないか?何故か冷や汗が止まらなかった。

 

「当然じゃない。こっちはヤマトを息子と聞かされていたんだから」

「スミマセン」

 

 隣でロビンとモネからジト目で睨まれてしまい本日何度目かの謝罪をする。でも、内心ジト目モネが可愛くてちょっと興奮した。やっぱ着物モネ最高。

 

 皆からこってり説教を食らった後、俺は二人と甘味処でお茶をしていた。情報収集で色んな店に寄ったがここの団子が美味かったんだよなァ。だから是非ロビンには食べて欲しかった。

 

 朝日を浴びながら美味いおやつを食べる。なんて贅沢な時間だろうか。あ〜、最近色々と忙しくてこうしたのんびりとした時間は久し振りだな。繁忙期を終えた後の休日を堪能するサラリーマンの気分だ。

 

 まあ、俺は鬼姫様と一緒に"願かけ"の最中だから頂いてるのはお茶だけなんだけど。

 

「こんな平和なひと時にはほのぼのとした話で花を咲かせたいねェ〜」

「そうね、私はこの国の歴史を少し調べてみたいわ」

「ほのぼのと言うよりインテリね」

「あー、歴史と言えばアラバスタの"歴史の本文(ポーネグリフ)"にプルトンがワノ国にあるって書かれてたんだっけ」

「ほのぼのとはかけ離れた話ね」

「「…………」」

「「えっ!!!?」」

 

 少し間が空くと次の瞬間二人して驚愕する。

 

 うおビックリした。すぐ隣で大声出さないでよ。思わずビクッとしちゃったじゃないか。

 

「アルガそれ本当なの!?」

「ん?モネはわかるけどロビンも知らなかったの?アラバスタの"歴史の本文(ポーネグリフ)"読んでないん?」

「え、ええ……色々あって見ていないわ。内容が古代兵器の在処と言うのは知っていたけれど……まさかここにあるなんて」

 

 そうだったのか。アラバスタじゃ終盤で俺リタイアしたから細かな結末知らないんだよなァ。所々で原作を変えてしまったか。

 

「それならここには空白の100年について何か手がかりが……」

 

 ロビンは色々と考え始める。あー、こうなると声かけても反応しないんだよなァ。仕方がない、モネと違う話でもするか。

 

「そういや、まだ錦えもん達に会ってないな。城内ならどっかで鉢合うと思ったけど。何か知らない?」

「それが何かの処理に忙しいのか赤鞘達はドタバタしてたわね。でも、そうね。ひょっとすると……」

 

 モネは何か心当たりがあるらしく少し応えづらそうに頭を悩ませる。すると、道を通り過ぎた人の会話が耳に入り団子を持つ手が止まる。

 

「なァなァ、聞いたか例の話」

「ああ聞いた。黒炭の生き残りの件だろ?確か今日の昼過ぎにその処遇がどうなるのか決まるんだったか」

 

 は?ちょっと待て。黒炭の生き残り……ってまさか!?

 

 俺は慌てて今通り過ぎた人を引き留め話を聞いた。だってオロチが亡くなった今、黒炭の生き残りはもうアイツしかいない。

 

「へー、兄ちゃんも気になるか。そりゃそうか!なんたってあの黒炭の残党だもんなァ。手っ取り早く打ち首になってくれりゃあいいが」

「違ェねェ。オロチが死んでやっと平和になったと思えばまだ残党がいやがったとは。しかも、その生き残りってあの赤鞘の一人だって聞いて大勢が驚れェたもんよ」

「だよなー。すぐ処刑すればいいのに何故か今日まで引き伸ばしてたが、ようやくその裏切り者の最期が拝めるんでこうして急いでるって訳よ!」

「ギャハハハ!何なら兄ちゃん達も一緒に見に行くか?その裏切り者の最期をよ……ってオイオイ!何だよ急にコエー顔しやがって!」

 

 話を聞いた後、ロビンはモネに任せて俺はすぐに走り出した。アイツがこれまで仕出かした罪は分かってはいたがいざ直面すると受け入れ難い気持ちになる。

 

 確かに、ワノ国を陥れた要因の一つではあったが……それでも最後には己の誤りに気づき反省の意を示していた。

 

 だからどんな処罰でもアイツは受け入れるだろう。でも……!

 

「カン十郎……!」

 

 無我夢中で走り出したがあることに気付き足を止める。あ、そういやどこでやるのか聞いてねェ。しまったさっきの所に戻るか?

 

 そう思い悩んでいると常時発動の見聞色に反応が出る。

 

「ッ!!この殺気!かなり多い声だ。あっちか!」

 

 反応がある方へ向かうと街を出て森の奥へ入ってしまった。そこで少し疑問が浮かぶ。こんな生茂った森の中で裁判をするか?

 

 確かに黒炭の奴らに非道な行為をするにはうってつけの場所かもしれんが……。

 

 しかし、杞憂だったのか奥から怒声が聞こえた。

 

「これより詮議の程を言い渡す!」

「っ!やっぱここなのか!てかもう可決寸前じゃねェか!?こんな場所でするってことは少なくとも公正な裁判じゃないだろ!早く止めねェと!」

 

 草木をかき分け獣道を突き進むと開けた場所へと出る。そしてそこでは裁判が───

 

「被告人、スクラッチメン・アプーは我々キッド海賊団と同盟を結ぶも奴は既にカイドウの傘下にあり我々を裏切って情報を渡していた。この事実を持ち入り奴を有罪とする」

「異議ありィイイ!ありよりのありィイイイ!!」

「被告人の異議を却下する」

「IYAAAAAAAA!!?」

 

 裁判だけど人違いでした。

 

 役人になりきったキラーが淡々とアプーの有罪を宣言すると絶叫するアプーとは反対にキッドやホーキンスなど周囲からは静かに拍手が送られる。

 

 俺も見なかった事にしてその場を離れようとするもアプーが俺に気付き助けを乞う。ちっ、面倒だな。

 

「Heyブラザー!助けてくれYO!!このままじゃ殺されちまう!!つーか、戦中に誘ったのはブラザー何だからコイツらを説得してくれェェェ!!!」

「アルガか、目覚めたんだなよかった。それにしてもこんな森の中まで来てどうしたんだ?」

「城下町でカン十郎の裁判があるって聞いて慌てて走ってたらここで裁判する声が聞こえてな」

「え、無視!?」

 

 キラーが安堵しながら俺の所まで来るので事情を話す。すると、欲しかった情報を教えてくれた。

 

「ああ、例の黒炭か。それなら城でやると聞いている。もうすぐ始まるらしいから急いだ方がいいぞ」

「マジか!ありがとう!」

「ファファファ!気にすんな。お前には恩がある」

「あれ?」

 

 気分良く笑うキラーだったが、その様子に少し違和感が引っかかり急いでいたが聞いてみることにした。

 

「何だ、まだスマイルの副作用残ってるのか?確か薬はチョッパーがもう完成させてワノ国の奴らを治してるって聞いたが」

 

 そう、キラーは元々自分の笑い方がコンプレックスだったハズだ。それで戦いも終わり約束通りチョッパーにスマイルの副作用を治して貰ったと思ったんだが……。

 

「アレか、勿論薬は貰ったさ。お陰で常時笑う症状は消えた。ただ少し考えを改めただけだ。この笑いにな」

 

 そういいキッドの仲間達がこぞって笑う。

 

「そうとも!キラーさんはこの笑いを嫌がってたがおれたちゃあ陽気なあの笑いが大好きだからな!!我慢する必要はねェって言ったのさ!」

「ファファ、そういう事だ。無理に笑うのを我慢するのはやめたんだ」

「そっか」

 

 あんなに自分の笑い方が嫌いだったキラーが今では受け入れるようになったのか。いい海賊団だな。

 

「それじゃ俺はそろそろ行くよ。場所教えてくれてありがとな!」

「ああ、気にするな。間に合うといいな」

 

 キラーに一言礼を伝え今度こそこの場を後にした。俺が立ち去るのを見てアプーは一言……。

 

「おれは……?」

「細切れ」

「圧死」

「呪い」

「「「好きなのを選べ」」」

「NOOOOOO!!!」

 

 後ろで誰かの叫び声が聞こえたが放っておこう。今は急いで城に戻らないと!

 

 そして再び走り出ししばらくすると城へと辿り着いた俺は城内の廊下でナミと鉢合う。ナイスタイミングと思い場所を聞いてみることにした。

 

「ナミか!ちょうどよかった!実はこの城で裁判をやるって聞いたんだけど何処でやるか知らない!?」

「わたしも探してた所だったのよ。よかったわ、それにしても不運よねェ。まさかあの人が……友達でしょ。早く行ってあげたら?」

 

 そう言われ場所を教えてもらうとすぐさまその部屋へと向かった。ドタバタと階段を駆け上がり少し広い大部屋のある襖の前まで辿り着く。

 

「ここだな!」

 

 ガラッと勢いよく開ける。そこでは俺の大切な友達が縛り上げられ怒りと憎悪の視線を向けられている姿が───

 

「被告人、ポートガス・D・エースは以前ワノ国に訪れここにいるヤマトに対し「今夜は寝かせねェぞ」と供述したと───判決、有罪」

「異議ありィィィイイ!!!おれは無実だァ!!!」

「お前もかいィィィイイ!!!」

 

 デジャヴな光景に思わず叫んでしまった。

 

 アプー同様に縛り上げられたエースがイスカに詰め寄られている。んで、その様子を何故か鬼姫様はウキウキと眺めていた。

 

「……と述べているが、実のところどうなのだ?」

「うん!そんな感じみたいな事言ってたよー。あの日は盛り上がったなァ〜!」

「ほう」ゴゴゴ…

「ヤマトォォォ!!!そんな事ァ言ってねェだろォ!!」

「あれ?そうだっけ?あー、そういえば確か……「今夜は寝ちまったら勿体ねェよ」だっけ?」

「大して変わらんではないかァ!!!」

「そうだけどそうじゃないィィ!!!あっ!!アルガちょうど良い所に助け───」

 

 パタン……。

 

 こっちに気付いたエースが何か言ってきたが無視しそっと静かに襖を閉めた。何か奥で聞こえるが聞かなかったことにしその場を後にした。

 

 フゥ……よし、カン十郎の所へ急ぐか。

 

「おーい!おじさーん!」

「鬼姫様!?戻らなくてよろしいので?」

 

 おそらくかなり修羅場っている気がするんですが……。

 

「実は目が覚めたら渡そうと思ってた物があってね!」

「渡そうと思ってた物?……ってコレは!」

 

 そういい懐から取り出したのはまさかの代物だった。

 

 

 

 

 

 太陽が真上に昇る時刻、おれは観衆の見世物にされながらその場に正座していた。場所は城内の庭園、普段なら民衆が入り込むなど叶わぬ所だが今日この庭園内は一般の者達も入ることができた。

 

 それは、おれの裁判が公開されるからだ。周りの者達はおれの処刑はまだかまだかと待ち焦がれている。全方位からおれに怒りや軽蔑の眼差しを向け陰口が飛んでくる。

 

 だが、これは当然の扱い。これまでおれは20年以上この国を陥れてきたのだ。ならば、おれは何も言わずその場で今後の処遇を待つのみ。

 

 既に覚悟は出来ている。

 

「これより詮議の程を言い渡す。被告人、黒炭カン十郎を───有罪とする」

 

 有罪と聞き周囲から歓声の声が上がる。切腹かおでん様と同様に釜茹での刑か。はたまたオロチと同じ火だるまの刑か……。

 

 何にしても、おれの命は今日で───

 

「本日をもって罪人、黒炭カン十郎を無期限の国外追放とする。二度と、その足がこの地に踏み入れると思わぬ事よ」

 

 役人の言葉に歓声から静寂となりすぐにどよめきの声へと変わる。この場の誰もがおれの死を疑わなかったのだから当然だ。

 

 っ!?コレはいったい、どういう事だ……?

 

 そして、それはおれも同じだった。何せおれには弁護人すらおらぬ状況での裁判。そう、これは裁判と名ばかりの処刑宣告場だったのだから。

 

「……エエッ!?」

「ちょ!ちょっと待てよ!!何だよそれフザケてんのか!?」

「そうだそうだ!こいつは黒炭だぞ!?生かす価値もねェ!!!」

「そうよ!!早く縛り首なりしてよ!!」

 

 不満が爆発し納得のいかなかった民衆がこぞって批判する。だが、役人は一切表情を変えず民衆を宥める。

 

「静粛に!!これは既に決定事項である。此度の裁判の采配は上からの通達である。これ以上、異論を述べる者はおるか?」

『……っ!!?』

 

 上からの通達。裁判を取り仕切る役人にそんな事をできる者は限られている。民衆もその事を分かっているからかすぐに静かになった。

 

 そう、つまりおれの処遇を決めたのは───

 

 

 

 

 裁判を終えると言われた通りワノ国を出る為「白舞」の港を出航した。この先には海外の海へ続くリフトがありそこまで護送する船がすぐ隣を進んでいる。

 

 そして、護送する船には役人達と……。

 

「暫しの別れ、でござるな……」

「………」

 

 錦えもんが乗っていた。

 

 城から船に乗るまで一切口を開かず黙っていたおれはここで錦えもんと言葉を交わす。最後に、どうしても聞きたいことがあったから。

 

「何故、おれを助けた?」

「ぬ?」

「いくら鬼ヶ島で多少の武功を挙げたとは言えそれでは覆しきれぬ大罪を犯した。なのに何故おれを処刑しない?」

 

 確かにこれまででおれ達の関係は多少改ざんされたかもしれん。ゾウでのモモの助様のお言葉は身に沁みた。鬼ヶ島で錦えもん達とも溝は埋まって来ていた。

 

 しかし、冷静に考えればそんな事ではおれを、引いては黒炭の怨念がワノ国から消えることはない。

 

 おれの心からの疑問に錦えもんは振り返りワノ国を一望した後おれと向かい合う。そして、こう答えた。

 

「今のワノ国には"改革"が必要と結論が出た」

「は?"改革"……?」

 

 聞き返すと錦えもんはコクリと頷いた。

 

「ワノ国がこうなってしまわれたのには少なからず拙者達にも原因がある。それはルフィ殿達との航海で学ばせてもらった」

 

 以前、ドレスローザでも同じ様な事を言っていたのを思い出す。そして、その考え方はゾウでモモの助様も持つようになっていた。

 

 その答えを今、錦えもんが教えてくれる。

 

「ワノ国の行き過ぎた行いが怨念を生み自身を蝕んだ。今ここで黒炭であるオヌシを切り捨てようと今後同じ事が起きれば歴史は繰り返される。モモの助様はそれを危惧した」

 

 ただおれを殺せば済む話ではない。故におれはまだ殺さないと結論が出た訳か。だが、所詮それは問題の先延ばしでしかない。

 

 根本が変わらなければ何も……。

 

「だから、モモの助様はこう答えたのだ。ワノ国を意識改革し黒炭の怨念を払拭すると」

「なっ!!?」

「あくまで悪いのはオロチや悪行に手を染めた者達。他は罪のない者達と分別が出来るようにしていく。モモの助様はそう考えた」

 

 錦えもんの言葉に絶句する。黒炭の怨念を払拭……消すと言ったのか?そんな事ムリに決まっている。昼間の裁判にいた民衆の顔を見ていないのかコイツは……?

 

 考えは立派だがいくらモモの助様であろうとそんな事できる訳……。

 

「黒炭の怨念を払拭する。これはかのおでん様でもなし得なかった事であるが……モモの助様は本気だ。本気でワノ国を変えようとしておられる」

「無理だ。できやせん」

「そうかもしれんな。しかし───ッ!」

 

 この場にはいない主に対し錦えもんは肩を震わせ確信を持ってこう答えた。

 

「いつになるかは判らぬが、あのお方なら……いずれ必ずやり遂げると拙者は、いや()()は信じている」

「───ッ!!!」

 

 おれは何かに気づき錦えもんが見据える方向を見る。既に船は出港しており港からかなり離れているがハッキリと見えていた。

 

「………」

 

 赤鞘の中でも特段おれを嫌っていたあのアシュラが、此方を……おれを見ていた。

 

 その顔にはあの時のような怒りや憎悪に満ちた顔は消えていた。つまり、それは少なくともワノ国の一人がモモの助様の意識改革の可能性を示した証拠に他ならない。

 

 そして、声を震わせ堪えるように錦えもんはおれに宣言する。

 

「あのお方は!モモの助様は……おでん様を超える男にござる!!!」

「……そうかも、しれぬな」

 

 少なくとも、ワノ国は一歩を踏み出した。途方もなく険しい道だが一番重要である大きな一歩を。

 

「いつか、か……。そんな未来が開かれれば……ワノ国は明るいであろうな」

「だから先程こう言ったのだ。「暫しの別れ」と」

「っ!そう、か……」

 

 ここでおれの罪がただの国外追放ではなく()()()の国外追放だった訳か。

 

「もしまた会えたら……また宜しくな。()()

「ッ!ア、ア゙ァ゙……!」

 

 この時、お互い我慢していたものが決壊し目から涙が溢れ出した。もうじきロフトへ着く。そこで錦えもんともお別れ───

 

「間ァ〜にィ合っっったァァアア!!!」

「っ!!?アルガ殿!!?どうしてここへ!?」

 

 突如、頭上からアルガが降りてきた。おそらく港から飛んできたのだろう。港付近ではアルガを見てざわめいていたのが見える。

 

「今日やたらと裁判やってる所が多くて遅れちまった!カン十郎の裁判が終わったって聞いた時は焦ったぜ。だが、白舞の港にいるって聞いて一直線にここへ来たってワケよ」

「ウ、ウム……それで何故ここに来られたのだ?引き止めに来られたのなら流石に止めねばならぬが……」

「違う違う、そんなんじゃねェよ。無期限の国外追放だろ?それ聞いて何となく察したよ。だから俺は、ただ友達を見送りに来た。それだけだ」

「っ!!」

 

 友達、おれにそう言ってくれるこの者の存在は眩し見える。おれには勿体ないほど……!

 

「ん?何だ泣いてんのか?まあとりあえずこれ受け取ってくれよ。餞別だ」

 

 そういいおれに渡した物は、一枚の紙切れだった。だが、これはただの紙切れじゃないことはわかっていた。

 

「これは、ビブルカード……」

「そ、鬼姫様が新しく作ってくれてたみたいでせっかくなら一切れカン十郎にあげようと思ってね。受け取ってもらえる?」

 

 ビブルカードを渡す相手はどういった人なのかを知っていたおれは渡された一切れを手に取り小さく呟いた。

 

「ありがとう」

「こちらこそ」

「アルガ殿、拙者からも深く礼を言う」

 

 おれ達の間に錦えもんが入り一緒にお辞儀をした。

 

「思い返せばこうしてカン十郎との仲を戻せたのもアルガ殿のお陰でござる。この恩、一生忘れぬ」

「まあ、気にするな。俺は俺がやりたいと思ったからやっただけ。2人の仲が戻ってよかった」

 

 ああ、この時見せたアルガの顔は一生忘れないだろう。それ程までに、まるで太陽のように眩しく、暖かい笑顔をしていた。

 

 この先の未来で二人と再会できる日を───楽しみにしよう。

 

 

 

 

 

 カン十郎を見送った後、俺は再び森の中へと訪れていた。キラーや他の皆が楽しげにしていた姿を見てどうしてもやりたい事ができたから。

 

「赤髪との再戦は控えろだと?」

「うん、少なくとも今のままじゃ間違いなく瞬殺だろうしね」

 

 いや〜、まだここに居てくれて助かった。探す時間が省けた。よほどそこに転がっているアプーの制裁に熱が入ってたんだなァ。

 

 骨は拾ってやるぞアプー。

 

 また現れた俺を見てキラーやキッドが不思議そうにしている。さっそく駆け寄り要件を伝えた。

 

 要件の内容で分かると思うが俺がやりたい事とは要するにキッド海賊団の壊滅の阻止だ。

 

 原作では出会い頭に一撃貰って文字通り瞬殺だったからなァ。

 

 しかし、当然ながら俺の言葉に微塵も納得できなかった頭でっかちさんはギラついた瞳で顔を近づけ睨見つける。

 

「言ってくれるじゃねェの。格下海賊の部下の分際で……!!赤髪の前にまずてめェからぶっ殺してやらァ!!!」

「落ち着けキッド。冷静になれ、アルガも瞬殺は言い過ぎじゃないか?おれ達は既に四皇の一角を落としたんだ。多少なりとも戦えると思うが」

「いや、断言できる。何ならキッドとキラー2人合わせても一撃瞬殺だろうね」

「てんめェェェ!!!」

 

 自分だけでなく仲間まで侮辱されたと思ったキッドは更に激怒し額から血管が浮き出る。下手すると血も出てきそう。

 

 でもなァ、成り行きとはいえ同盟を結んだ仲だし必敗と分かっている戦いを見て見ぬふりは出来なかった。

 

「そんな死に急ぐ必要はないだろ。お前らはあのビッグ・マムを倒したんだ。実はシャンクスとエルバフは友好関係なんだがビッグ・マムと因縁のあるエルバフにその事伝えれば自ずとシャンクスとも関係が結べるかもよ」

「何故ここでエルバフの名が出る?」

 

 唐突に出てきたエルバフというワードに引っかかったキラーはその疑問を聞いてきた。なので内密に2人にだけコソッと教える。

 

「ここだけの話し、ワノ国を出航後赤髪海賊団がいる可能性が高いのがエルバフなんだよ」

「「なッ!!?」」

「だからこれまでみたいに勢いに任せてエルバフに殴り込みに行っても軽くあしらわれてあっという間に壊滅するぞ」

「ッ!!だ、か、らァ……!!」

 

 俺が何とか説得を試みようとするがキッドはわなわなと肩を震わせると思いの丈を叫んだ。

 

「おれが敗ける前提で話を進めてんじゃねェ!!!」

 

 あー、言葉のチョイスミスったな。なるべく穏便に済ませたかったが仕方がない。路線を変えよう。

 

「だったら試してみるか?」

「ア゙ア゙ン!!何を───ッ!?」

 

 キッドの威嚇に負けないぐらい威圧感で相手を黙らせた。

 

「お前らがどうやって敗けるのか」

 

 

 

 

 森を抜け街を抜けると場所は変わり一面岩だらけの開けた場所へと着いた。ここならいくら暴れても多少は大丈夫だろう。

 

 まあ、そんなに被害が出るとは思わないけど。

 

「てめェ、本気でおれと殺り合おうってか?それも、これだけ距離を開けて」

 

 そう言ってくるキッドと俺との間にはかなりの距離がありお互いに攻撃の射程圏内にはいなかった。キッドのあの技を除いて。

 

「うん、どう敗けるのかなるべく再現したいからね」

「再現だァ?舐めやがって……!!吠え面かかせてやる!」

「アッハッハ、大丈夫でしょ。だって君弱いもん」

「ぜってー殺す」

「あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ」

「〜〜ッ!!!」

 

 うっは、やべー何故か更に怒らせちった。別に煽ったわけじゃないんだけどなァ〜♪

 

 だって、事実その通りだし。

 

「こっちはいつでもいいぞー!早くやろうぜ〜!」

「言われなくったってすぐに終わらせてやる!!」

 

 そういいキッド腕をかざし磁力を発動させる。近くの鉄骨や鉄の廃材を密集させると巨大な武器が創製させた。

 

「こんだけ距離がありゃてめェが何かする前に確実に仕留められる!!この”電磁砲(ダムドパンク),,でなァ!!!」

「実際に見たのは初めてだが、すごい力だよな。だからこそ惜しい」

 

 能力だけでここまで来たのは称賛するが、お前にはもっと可能性があると言うのに。今、それを教えてやるよ。

 

 ”電磁砲,,発射まで残り10秒。ここからでもビリビリ感じる程凄まじいエネルギーだ。何もしなければ一撃で倒れてしまうな。実際、今"見聞色"で未来が見えたがものの見事に俺の体は黒ずみとなり倒れていた。

 

 何もしなければ、だがな。

 

「どうした!!ボサッと突っ立ってるだけかよ!直前で怖気づいたかァ!?所詮てめェは───うお!?」

「”降霊(こうれい)呼憑(よびつ)き」,,!!!」

 

 俺の体から淡い光が立ち込め周囲に強風を巻き起こす。この状態でも倒せるとは思うが、奴を納得させるには圧倒的な一撃が必要だ。だから───

 

「そして───」

 

 トットムジカ、お前の力を借りるぞ。

 

「”魂合憑(こんごうつ)き「魔王の系譜(トットムジカ)」,,!!!」

 

 俺の魂に眠る友達を呼び覚まし力を解放する。すると、俺の背中からバサッと黒い翼が生える。毛髪も増え左右から魔方陣が展開され中から鍵盤の腕が出てくる。

 

 そして、周囲にドクロが複数出現し何処からか出てきたシルクハットを被った。

 

 これは俺とトットムジカとの魂が融合したことにより成せた形態。能力もスゴイが何よりスゴイのは肉体がより頑丈になり身体能力が跳ね上がった事だ。

 

 因みに、この状態からルフィのニカパンチを加える事で先日の”自由な太陽(ニカ),,を使えるようになる。

 

「少し成りを変えたな。だが!!もう遅ェ!!!」

 

 そう叫びキッドは”電磁砲,,のチャージを完了させる。

 

「消し飛べ!!!電磁砲(ダムドパンク),,!!!!

 

 俺に照準を合わせ狙いを定める。しかし、その頃にはもう───

 

「───ッ!!!?」

 

 俺はキッドの目の前で刀を構えていた。

 

 かなり距離があったにも拘らず一瞬で詰められてしまいキッドは驚愕する。だけど、その視線は俺ではなく鍵盤の腕で持っているドクロ。その口からビームサーベルのように巨大な光線の刀だった。

 

 刀を持つ俺の動きと連動する様に鍵盤の腕が動き刀を振り抜いた。

 

 

桜木秘奥(さくらぎひおう)!!!”魔桜斬歌(まおうざんか),,!!!!

 

 

───ズッパァァアン!!! 

 

「ガッ!!?ご、オォ……!!」

「キッドォォォ!!?」

 

 刀を一振り、同じ動きで鍵盤の腕も振り抜かれキッドの”電磁砲,,は真っ二つに斬られてしまった。斬撃の勢いは止まらずキッドの腹も斬り裂いてしまい鮮血が飛び散る。

 

 気を失ったのか能力が解除され”電磁砲,,はただの鉄屑に戻るとその場でキッドは倒れる。それを見たキラーやホーキンス、他のクルー達が駆けつける。

 

「キッド!大丈夫か!?起きろキッド!!!」

「よもやこれ程とは……"鬼の戦漢"恐ろしい男だ」

「嘘だろ!?キャプテンが敗けるなんて……!!」

「それも一撃!?おい誰か手当てを!!」

「畜生!!目を覚ましてくれ!!」

 

 仲間達の必死な呼びかけに応えるようにキッドは意識を取り戻す。しかし、とても動ける状態ではなく痛みに悶える。

 

「キッド気が付いたか!よかった!!」

「ゲホッ!……クソが、何が起こった?ハアハア、突然ヤツが現れたかと思えば……」

「何で敗けたかわかるか?」

「グッ!」

 

 変身を解き元の姿に戻った俺は動けないキッドに歩み寄りさっきの敗因を説明する。

 

「”電磁砲(ダムドパンク),,は確かに強力な技だ。だけど撃つまでに溜めが長過ぎる。シャンクスは敵にそんなヒマは絶対に与えない。撃たれる前に確実に一撃で倒しに来るだろうな。今の俺のように」

「だが当てさえすりゃあ……!!」

「カイドウやビッグ・マムは戦いを好む。だから相手も攻撃する隙がある。だが、シャンクスは違う。いざ戦いとなれば遊びや様子見なんてしない。初手から全力で来る。そうなればお前は必敗だ」

「うぐっ」

 

 一発当てる。それが出来なかったからこの結果である。少なくとも俺に勝てない様じゃシャンクスには絶対に勝てやしない。

 

 今の俺でもシャンクスには勝てないのだから。

 

「改めて言うぞ。お前、今のままじゃ次は右腕……いや、仲間達も全て失うぞ」

「た、たかが一回おれに勝ったからって調子に乗んじゃねェ!!おれはまだ終わってねェ!次だ、次やりゃ今度は!!」

「……死ぬまでやれば満足か?」

「何だとっ!!……っ!?」

 

 未だ負け惜しみが止まらないキッドに俺は少し厳しめに言い放った。その俺の顔を見たキッドは口が止まる。

 

 俺の感情が消えたような冷めた瞳を見て。

 

「呆れたな。てめェ、それでも一船の船長か。てめェの未熟さを晒すのは勝手だが、それで仲間達に危害を及ぶってんなら船長の器じゃねェよ。とっとと船の旗を降ろすんだな」

「───ッ!!?」

 

 俺の正論にとうとう折れてしまったキッドはその場で項垂れる。他の皆も言い返せず悔しそうにするだけだった。

 

 ちょっと可哀想ではあるがこれが現実なんだ。ここで教えてやらないとコイツらはエルバフで確実に全滅する。

 

 ……と、まあお叱りはここまでにして。

 

「はい、説教タイム終了」

『は……?』

「別に戦うなとは言ってないよ。あくまで「今は」ってだけでキッドにも今後次第じゃ十分可能性はある」

「な、に……」

「まず反省会な。戦って俺が思った感想はそうだなァ……豚に真珠猫に小判って感じだな」

「よくわからんが、バカにされてるのだけはわかる」

 

 別にバカにしてるワケじゃないんだけどなァ。んー、どう伝えたらいいものか。よし、こうしよう。

 

「ハッキリ言おう。キッド、お前は磨けば輝く原石だ」

「げ、原石……?」

「そうだ、能力の覚醒はマジで凄いと思う。だけどそれだけに注力してるのは実に惜しい。覇気を鍛えれば間違いなく化けるぞ」

「コイツ急に褒めてきたな。さっきまでキャプテンを貶してたのに調子狂うぜ」

「俺はホントの事しか言わないだけだよ」

 

 仲間のひとりが怪訝そうに見てくる。まあ、急に落して上げてをしてくる相手はそうそういないかもね。

 

 だけど、こういった相手にはアメとムチをしっかり使い分けねーとな。

 

「お前って確か覇王色持ってんだろ?だったら"纏い"を使えるようになれば少なくとも瞬殺はされないだろうよ」

「"纏い"?待ってくれ、覇王色と言うのはただ相手を威圧するだけじゃないのか?」

 

 聞き慣れない言葉にキラーが質問してきたので説明も兼ねて応える。

 

「あ、そっか。これあまり知ってる奴いないんだっけか。そうそう、覇王色は武装色みたいに纏って攻撃に転じる事ができるんだ」

「何ッ!?知らなかった……」

「黒ひげは分からんが他の四皇は皆これが使える。だからお前も出来ないことには同じ領域(ステージ)に立つことはできないと思え」

「覇王色を、纏う……考えた事もなかった」

 

 キッドは自身の手を見つめ新たな可能性を見出したのかニヤリと笑った。

 

「ち・な・み・にィ〜」

 

 俺は次のキッドの反応を予想し笑いを堪えながら含みのある言い回しをしキッドを焚き付けた。

 

「カイドウを倒したルフィは勿論"纏い"を使えるけど……あれまァ〜、キッド君このままじゃホントに置いていかれちまうぞォ〜??」

「ア゙ア゙ッ!?だったらおれもやってやるよ!!あのガキのできておれにできねェ訳がねェ!!!」

 

 おっ、いつものキッドに戻ったな。うんうん、やっぱこっちの方がしっくり来るな。

 

 うおー!やるぞー!と息巻くキッドは怪我なんて気にせず立ち上がりやる気に満ちていた。その様子を見てキラーが俺に礼を言ってきた。

 

「アルガありがとう。今日ここでお前と戦えたのはキッドにとって必ずプラスになるだろう。とはいえ、敵に塩を送るようなマネをして……今後敵対した時に後悔しても遅いからな」

「ああ、その時は全力で叩き潰すからそっちこそ覚悟してな。でも、今はまだ同盟中だろ?だったら仲良くやろうぜ。元々、心配で説得しに来たんだからよ」

「ファファファ!!呆れた男だ」

 

 こうして、キッドに新たな可能性を教えると共に原作でのキッド海賊団壊滅ルートは免れたと俺は内心喜ぶのだった。

 

 ……あ、アプーは未だに森の中に放置したままだった。

 

 

 

 

 カン十郎との別れとキッドの説得を行なった翌日、ずっと眠っていたあの二人が目を覚ました。

 

「肉ゥ〜〜〜〜!!!」

「酒ェ〜〜〜〜!!!」

「ルフィとゾロが目覚めたァ〜!!!よかったァ〜!!」

 

 目が覚めるなり急に騒がしくなる。給仕の人達がどんどん料理を出すもその7日間寝たっきりの二人の胃袋は尋常ではなく次々と料理を口の中へ運んでいた。 

 

「「おかわり!!」」

「はえェな!?」

「待て待てまだあまり食うな!おぬし達が目覚めたら国をあげて宴をやる事にしておる。今日やろう!!」

 

 大人になったモモの助がそういい張り切って宴の準備を始めるとナミが鬼姫様に声をかける。

 

「ヤマト、お祭り前にお風呂入ろ。"願かけ"は終わりでしょ?」

「がんかけ?」

 

 ルフィは頬張りながら聞いたことのない言葉に聞き返すので俺が説明する。

 

「ワノ国には願いが叶うまで何かを我慢して神仏に祈る風習があるんだ。それで鬼姫様と俺はお前らが元気になるまで食と風呂を断ってたんだ」

「え!?あの風呂好きなお前が!!?」

 

 一瞬食の手が止まってしまう程驚いたルフィはギョッと俺を振り向く。

 

 確かに、元日本人の俺にとって風呂は何よりの娯楽だ。サニー号でも毎日風呂に入ってたし露天風呂もあるこの国で我慢するのはホントにツラかったわ。

 

 異世界転生した者達は必ず一度はこう思うだろう。米!醤油!風呂!これが無いとマジ辛いと……。その点に関してはワンピ世界には普通に普及されてるからまだ恵まれていたんだなと改めて思った。

 

 その温泉を"願かけ"で禁止してからどれだけ我慢したことかっ……。

 

 しか〜し!それも今日で終わり!!これで心置きなく皆で風呂に入れる!!!

 

 …………んん?皆で風呂?あれェ??確かこの後って……。

 

「ナミ、城には混浴はないから」

「?」

「拙者は……ご一緒にいいですか?」

「??」

 

 ナミの誘いを鬼姫様が断りお菊が申出る。それに理解が追いついていなかった。

 

 その後、原作通り俺達は城内の岩風呂へと来ていた。勿論、鬼姫様も一緒に……。

 

「ふろだ〜〜〜〜!!!」

「いい湯〜!!あがったら宴〜〜!!最高!!!」

 

 場所は変わりルフィと一緒に大はしゃぎし温泉を楽しむ鬼姫様。しかし、数名この場でお気に召さない者達が……。

 

「確かに風呂はいいが……見晴らしは最悪だ!!アルガてめェ何のマネだ!!!」

「そ〜ですよ!この目隠し外してください!!あ、私元々隠す目玉無いんですけどヨホホホ」

「真っ暗で何も見えぬでござるゥ〜ッ」

 

 俺にタオルをギチギチに絞められ視界を奪われてしまったサンジ、ブルック、モモの助は一斉にブーイングをかますがズバッと言い返す。

 

「当たり前だ。他はともかくお前らは鬼姫様を邪な目で見るだろ。だからこうして視界を奪ったんだ」

「チクショォォォォ!!!!」

「なあアルガ……」

 

 鬼姫様の裸体を拝めず絶望し絶叫するアホを他所にルフィが駆け寄ってくる()()()()()()()

 

「お前さっきから誰もいねェ所向いてるぞ?つーか何で自分で目ェ潰してんだ?」

「鬼姫様に害のあるものは例外なく排除だ」

「いや、お前もかよ」

 

 ゾロの呆れた声が聞こえる。だってしょうがないじゃん。武装色だけじゃなくて見聞色も強いから目隠し程度じゃ気配で体格とか分かっちゃうんだよ。

 

 だからこうして痛みを与える事により見聞色を阻害しているのだ。うん、クソ痛い……。

 

「ハアー、だったらあん時ナミに頼んで女湯に連れてってもらえばよかっただろ」

「は?鬼姫様の意向に背けと?処されたい?」

「えー、やだよ。だって僕おでんだし」

「さすが鬼姫様その振る舞い正におでんです」

「メンドクセーなこの従者!!?」

 

 とうとう我慢していた感情が溢れたゾロは思わずツッコんでしまう。

 

「駄目だこいつヤマトを全肯定しやがる。後その喋り方も慣れねェな……」

「安心してよ。ちゃんと使い分けるから」

「そういう事じゃ……」

「ねーねー」

 

 ゾロが何か言ったそうにしていたがそこへ鬼姫様が近寄ってくる音が聞こえた。

 

「どうしておじさんそんなに離れてるの?たまにだけど昔は一緒に入ってたじゃん」

「それが成長と言うものです」

 

 鬼姫様が近づくと同時に俺も後退し距離を保とうとする。しかし、それが気に入らなかったのか次の瞬間一気に距離を縮めた。

 

 目を隠していた事もあり反応が遅れた俺は為すすべもなく鬼姫様に抱き着かれてしまった。

 

「えー!いいだろ成長したって僕は僕だしおじさんはおじさんだろー!!」

「ちょっ!!?鬼姫様!!?」

 

 だきっ!ふにゅん♡

 

 鬼姫様の感触がダイレクトに───

 

「”朧突(おぼろづ)き,,ィ!!!!!」

「おじさん!!?」

 

 感触が脳に伝わる前に全力で自身の顔をぶん殴り意識を刈り取った。

 

 

 

 ……………………。

 …………。

 ……。

 

 ん、んんー。あれ?何で俺また寝てたんだ?確か風呂に入って……そこから思い出せん。

 

「知らない天井だ」

「いやおじさんが今朝寝てた部屋だよここ」

 

 一度言ってみたかった台詞を呟くとすぐ隣に鬼姫様がいた。誰もいないと思ってたのに聞かれてたの恥ずかしい。

 

「さて、おじさん起きた事だし早速行こう!もうすぐお祭り始まるよ!」

「あちゃー、もうそんな時間ですか」

 

 鬼姫様が目をキラキラ輝かせて祭りに行きたそうにワクワクしている。せっかくのお祭りだ。俺も楽しもうかな。

 

「鬼姫様、他の皆は?」

「ルフィ達なら既に城下町の屋台で楽しんでるよ。僕達も早く行こうよォ〜!」

「そうですね」

 

 身支度を済ませ俺と鬼姫様は城を出ると賑やかな場所へと出る。何処もかしこも屋台を出しており何処から回るか悩ましい。

 

 この光景、何だか日本を思い出すなァ。

 

 昔に思いふけっていると前方からお面や焼きそばに肉など拵えたルフィが走ってきた。

 

「おーい!アルガァ〜!」

「あ、ルフィ」

「起きたんだな!うっしなら乾杯すっか!!」

 

 そういいルフィは祭りの中心部へ向かいお祭りの櫓の上まで登るとこの場の全員に呼びかけ号令を執る。

 

 途中でキッドがルフィに飛びかかるも意にも介さず腕でぐるぐる巻きにし引っ張り寄せるとジョッキを掲げ楽しく叫んだ。

 

「明日のメシを祝して〜〜、行くぞー!!」 

 

 

「乾杯〜〜〜〜い!!!」

 

 

 ルフィの乾杯に合わせ周囲のみんなも飲み物を笑顔で掲げた。

 

「宴だァ!!飲み明かせェ〜〜!!!」

 

 さっきも十分賑やかだったが今の完敗で更に騒がしくなる。何処もかしこも食べたり飲んだり踊ったり今を楽しんでいた。

 

 そして、それは鬼姫様も同じだった。

 

「うわーー!?お祭り初めて〜!たのしー!おいしー!」

「それはよかったです」

「うん!おじさんも楽しい?」

「勿論」

「そっか!」

 

 たこ焼きや焼きそばを頬張りながら鬼姫様はニコっと無邪気に笑う。それを見て俺は熱くなるのを感じた。

 

 ああ、この笑顔のために頑張ってきてよかった。

 

 これまでの努力が報われた気がして少しうるっと来てしまったが、そこへ以外の人物が現れた。

 

「アルガァ〜!!久しぶり〜!!」

「えっ!?」

 

 思わず硬直してしまいました上手く言葉が出なかった。そこへルフィもやって来るとその人物を見て目が飛び出した。

 

「やっ!ルフィも久しぶり!!会えて嬉しいな!」

「え〜〜〜〜っ!!?ウタかお前っ!?デカくなったなァ〜!何でこんな所に?」

 

 驚くルフィにウタはにししと笑って応える。

 

「えへへ〜、近くまで寄ったから久しぶりに会いたくなっちゃって来ちゃった♪」

「にしてもよく来れたなァ。あのでっけー滝を登れたのか」

「ルウさんに送ってくれたの」

「ルウってシャンクスんとこの!?」

 

 懐かしい名前を聞き再び驚くルフィ。そりゃそうだ。別れてから10年以上も経ってるんだ。

 

「へー、懐かしいなー!おれ会いてェ」

「ん、ルウさんならそこにいるよ」

「えっ!?」

 

 ウタが指を差した先は屋台が並んでいる。しかし、既に数店舗ほど在庫を切らし店仕舞いしていた。そして、その原因はそれらを買い占めたひとりの男によるものだった。

 

「ルウ〜〜!!!」

「ムシャムシャ……んお、ルフィじゃねェか!久しぶりだなァ元気そうで何よりだ!!」

 

 二人して大はしゃぎし再会を喜んで抱きしめ合う。ルウは何故ひとりでウタを連れてきたのか事情を話す。

 

「おれもよォー、本当は皆でお前に会いに行きたかったんだぜ?だけどよォ、お頭は事情があるつって断るしヤソップは何か息子に会うの日和ってるしベックはまあ……」

 

 そこへ最悪のタイミングにキッドとキラーが現れる。あちゃー、マズイ組み合わせが鉢あってしまった。

 

「赤髪の娘!?それにもう一人は……!!」

「な、コイツらがいるからおれだけになったんだ」

「あー、そういやキザ男シャンクスにやられたってドロが言ってたなァ」

「正確にはベックだがな」

 

 楽しく談笑するルフィとルウとは反対にキッドは歯ぎしりし今にも飛びかかりそうな雰囲気をしていた。

 

 なのでキッドに近付きストップをかける。

 

「キッド、昨日言ったこと忘れてないだろうな?」

「っ!……チッ、わかってるよ。おいそこのデブ」

「おれか?」

 

 おいおい、ルウさん相手にデブは啖呵切りすぎだろ。戦いが起きないか心配になってくるぞ。

 

 しかし、次にキッドが告げる言葉は俺の予想とは違うものだった。

 

「あの時みてェな特攻はやめた。今は手を出しても無駄だからな。だが、おれはいずれ必ずてめェらを超える!その時は覚悟しとけ」

「ヘェ……少しの間に丸くなったな。考えなしに突っ込むだけじゃこの"新世界"じゃ生きていけねェ。誰に諭されたかは知らんがいい縁を持ったな」

「ケッ」

 

 言いたい事を言い終えるとキッド達はまたどこかへと行ってしまった。とりあえずこの場で乱闘が起きなくて良かったと安堵する。

 

 へー、思ったより大人になってて驚いた。キッドを生かすのが今後原作にどういうパラドックスを生み出すかはまだわからんが、今は友達の成長を素直に喜ぶとしますか。

 

「おいルフィ!あっちに肉大食い大会ってのがあるらしいぞ!!!どっちが多く食えるか勝負しようぜ!!」

「マジか!!?肉肉ゥ〜♡」

「ちょっと二人とも!私もいる事忘れてない!?待ってよォ〜!」

 

 ルフィ達もあっという間に去って行きまた二人だけになってしまう。

 

「賑やかな人達だったね。特にルフィはいつも楽しそうだ」

「ええ、ルフィは普段からあんな感じですよ」

「そっかァ……ねえ、おじさん。やっぱり海賊って楽しいの?」

 

 期待を寄せた眼差しが俺に向けられる。俺は当然と言わんばかりに即答した。

 

「勿論、それはもう最っ高です!」

「……フフッ。だよね、おじさんも楽しそうな顔してる!」

 

 鬼姫様も何だか嬉しそうに笑い遠くを見据える。おそらく海に出る自分の姿を想像しているんだろうな。

 

 このまま船に誘えば一緒に来てくれるかもしれない。そう思っていた矢先───

 

 ……ッ!!来やがったな。

 

「鬼姫様、あちらにわたあめが売られています。一緒に食べましょう」

「ホントッ!?行く行くゥ〜!」

 

 少しでも敵意から離れる為にも俺は鬼姫様を遠ざける。よかった、鬼姫様はまだ気が付いていない。

 

 俺は後ろを少し振り返る。その先には都からずっと離れた場所を歩み寄るひとりの男がいた。肉眼で見えなくても俺の見聞色は数キロ先まで相手を確認できる。

 

 何よりそんだけ敵意剥き出しなら既にサンジやゾロ、ジンベエ辺りなら気付いているだろうな。ここに、海軍大将緑牛が来ていることに。

 

 奴の存在に気付けば鬼姫様はワノ国を心配して放っておけなくなる。つまり、俺達と海に出られなくなる。

 

 一時的に俺も一緒にワノ国に残る選択も考えた事はあるが……。

 

 

『俺は……主人と共に海へ出るために』

 

 

 "偉大なる航路(グランドライン)"に入る直前に進水式で誓った言葉を思い出しその選択を頭から掻き消すように首を振る。

 

 やっぱり、俺はサニー号で鬼姫様と海へ出たい。

 

「おじさん」

 

 突然、鬼姫様は立ち止まり俺を心配そうな顔で見てくる。

 

「何で、そんなツラそうにしてるの?」

「えっ」

 

 悟られた?なぜだ、顔には出してなかったハズなのに。

 

「わかるよ、だって僕はおじさんの主だもん」

「……っ!?」

「何か悩んでるんだろ?聞かせてよ。おじさんは僕の従者なんだ。困っているなら力になりたい」

「鬼姫様……」

「ねえ、おじ……ッ!!何だ、都の外から強い気配が!?」

 

 そういい鬼姫様は颯爽と来た道を走っていった。くそ、バレてしまった!俺も急がねェと!

 

 俺も鬼姫様を追いかけ走り出す。みるみる緑牛との距離が縮まっていくととうとう都を出てしまい遠くの荒野で緑牛と赤鞘達とモモのが戦っているのが見えた。

 

「何だあのでっかい木!?僕も助太刀に……!!」

「待てヤマト!!!」

「ッ!?」

 

 岩壁を飛び降りようとするヤマトの正面に立ち塞がる者がいた。それは見知った人でヤマトと俺は立ち止まる。

 

「エース、何でここに……て言うか今はそれどころじゃない!早く僕達も行かないと!!」

「そうやって、連中はお前に守られ続けて納得するのか?」

「なにっ!」

 

 エースの言葉に鬼姫様の勢いが止まる。しかし、エースは淡々と話を進めた。全ては鬼姫様とモモの助、ひいてはワノ国の未来の為に。

 

「さっきモモと会ってな。おれも戦おうとしたが止められた。何でかわかるか?」

「いや……」

「先立つ奴らの力を借りていたらこれからワノ国を守る事なんて夢のまた夢だってよ」

「───ッ!!」

 

 モモの助がエースの助けを断った理由を聞き鬼姫様がハッとする。

 

「お前は海へ出たいんだろ?おでんみてェに自由に生きたいんだろ?だったらここはあいつらに任せるべきだ」

「で、でも僕は……」

「ハアー、お前が底知れねェお人好しなのは知ってるよ。だからアルガもここに行かせないようにしてたんだろ?」

「ウッ」

 

 その場にいたワケじゃないのによくお分かりで。

 

「あっ、そうかだからおじさんはさっき……」

「騙すような形となり申し訳ありません。ですが、これも皆のためなんです。それと……」

 

 ここで、龍となったモモの助が捕まり緑牛に縛りあげられる。赤鞘達の攻撃もいまひとつ通らず焦りが見えた。

 

 それを見て鬼姫様は心配そうな顔になるが俺とエースの顔を見て自身も見届ける選択を取る。モモの助達が何とかすることを信じて。

 

 そして、思いが通じたのか───

 

「彼らはあなたの力を借りなければ戦えない程、決して弱くはありません」

「っ!!!」

 

 龍となったモモの助が口からカイドウにも劣らない巨大な炎を吐き大将緑牛の体を全焼させた。

 

「赤鞘達もそうですが、モモの助も同じワノ国の武士───心身共に一人前の侍です」

 

 暫くし緑牛は元の姿に戻るが何やら覇気に当てられてしまい戦意を失う。そして、奴はそのまま都を後にした。

 

 つまり、この勝負はモモの助達ワノ国の勝利で幕を閉じたのだ。

 

「すごい……今の火まるでカイドウみたいだ……!」

「ね、心配いらなかったでしょう?」

「うん、驚いちゃった。モモの助君も立派なワノ国の侍だ!!」

 

 目を輝かせ改めてモモの助達の凄さを知った鬼姫様は気持ちを高ぶらせる。しかし……。

 

「でも、ごめん。今後また今みたいな奴が押し寄せてくるかもって思うと……僕は彼らを放っておけないや」

「……っ!」

 

 ああ、やっぱりあなたはどこまでも優しい。俺もその優しさに何度も救われた。だけど───

 

「仕方ねェな〜」

「エース?」

 

 エースは頭を掻くと少し勿体ぶるように話し出す。

 

「これはまだ誰にも話していないんだが、おれ今イスカと新婚旅行であちこち色んな島を回ってたんだがよ。そろそろ決めたい事があったんだよねェ」

「えっ!!?お前結婚してたの!?!?」

「今はそこはどうでもいいんだよ!!お前は黙って聞け!!」

 

 いや、どうでもよくないが!?いい感じの仲なのは知ってたが結婚してたとか聞いてねェよ!!祝福したかったぞこの野郎!

 

「ったく、んでその決めたい事ってのが……新居、住む場所を探してたんだ」

「え、住む場所を?新婚旅行は?」

「あー、いやァ……」

 

 何やら歯切れの悪い様子で視線を逸らす。おい、何だその顔は……はっ!!!まさかお前……!

 

「実は……デキちゃったんだよな。おれの子供」

「「エエェェェェエエエエエッッッッ!!?!?」」

 

 エースのトンデモ発言に二人して思わず叫んでしまう。しょうがないじゃん!だって!え!?……………………ええ!!?

 

「だー!うるせェ!!だからあまり言いたくなかったんだよ!まあ、要するにアレだ!おれがワノ国にいるならお前も気兼ねなく海へ出れんだろ!」

「エース……っ!!もう君って奴は君って奴は!!」

「ホントにいいのか?ここに住むってことは海には暫く出られなくなるんだぞ?」

 

 俺の問いかけにエースは勿論と言わんばかりに強く頷いた。元々決めていた事らしくその目に迷いはなかった。

 

「ああ、この島なら政府も安々とは上陸できねェだろうしイスカも安全して子供を産める。それに、おれが欲しかったものはとっくに見つかったしな!」

「そっか、なるほどね」

 

『……おれは"生まれてきてもよかったのか"。欲しかったのは……その答えだった』

 

 原作でエースが死に際に悟り自身が本当に欲しかったものを言うあのセリフを思い出した。

 

 そっか、エースにとってその答えは"ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)"と同じぐらい価値があるものなんだろうな。

 

「だから、お前は気にせず海へ出ろ。枷も外れた。カイドウもいねェ。後はお前次第だヤマト!」

「エーズ……!ウ"ンッ!!」

 

 エースがニカッと笑うと鬼姫様は徐々に鼻と目尻が赤くなり感情が溢れ出す。その光景を見て俺も自然と笑みを溢していた。

 

 

 

 

 お祭りも終わりみんなが寝静まった深夜、鬼姫様は色々あって疲れたのか電池が切れたように眠っていた。

 

 そんな鬼姫様を起こさないように俺は背に乗せて城へと戻っていた。体格差はあれどこれぐらいなら造作もない。

 

「ん、んむゥ……スースー」

 

 気持ちよく眠っており何だがほっこりする気持ちになる。そうしていると城へ到着し寝室へと入る。そっと布団に寝かせると鬼姫様の目がうっすらと開いた。

 

「起こしてしまいましたか。申し訳ありません」

「あれ?ここは?そっか、僕モモの助君の活躍を見た後お祭りを楽しんでそれで……」

「鬼姫様……」

 

 上体だけ起こし目を擦りぼやけた意識を覚醒させる鬼姫様に俺はふとこんな質問をした。

 

「今日は楽しかったですか?」

「それはもう!あの決戦以降、あんなに誰かと一緒にいたのは初めてで色んな人と話したんだ。おじさんの仲間たちにもね」

 

 元気そうにそう答える鬼姫様を見てフフッと笑ってしまう。

 

「その中でもルフィは特に面白かったよ。まるで日誌に書いてたロジャーのように」

「当然です。ルフィはいつか海賊王になる人ですから」

「僕もそう思うっ。ねえ、おじさん……」

「はい、何でしょう?」

「僕はこれからおじさんの船に乗ろうと思ってるんだけど……これからも僕と一緒にいてくれる?」

 

 少し不安そうに俺を見つめてくる鬼姫様を安心させるように頭を撫で寝かせ直す。

 

「勿論、もう二度とあなたをひとりにはさせません。これからは私がずっと傍にいます」

「ホントに……?」

「はい、お腹が空いた時は一緒にごはんを食べます。寂しい時は私が支えます。眠たい時は毛布をかけます。20年前に、約束しましたもんね」

「約束……あっ」

 

 

『ふふっ、ぼくの従者なら頑張って毛布をかけてよね』

 

 

 あの時の言葉を思い出したのか鬼姫様は嬉しそうに微笑み寝たまま俺に身を寄せる。そんな鬼姫様に俺は毛布を……。

 

「えへへ、覚えててくれたんだ」

「ええ、長い道のりでしたが……ようやくここまで来ました。全ては鬼姫様との約束を果たすために。そう───」

 

 

最終話

 あなたにもう一度毛布をかけるため

 




どうも皆さんもしロマです!
最終話をご覧くださりありがとうございます!

えー、前回の感想欄で最終回と悲しむ方々が多くいましたが……一つお伝えがあります。
スミマセンまだ続きます。
少し前にメンタルをやられたのはお話しましたが、その後に無事メンタルも回復し仕事も見つかりました。なので、今後忙しくなるため今までのように更新ができなくなる可能性があります。

そのためここで一区切り入れようと思いこのような形となりました。言い換えると第一部完みたいな感じです。

ですが、皆さんもご存知かと思いますが本編がかなり原作に近付いちゃいました。エッグヘッド編までは書けますがエルバフ編以降はその章が終わるまではお預けの形とします。

その間は本編では書かなかった日常回や劇場版、別時空編など書いていこうかと思います。投稿頻度は遅くなるかもしれませんが今後もふとした時に見に来てもらえると嬉しいです。

差し当たり、まずは後日談として【投稿しなかった話のワンシーン2年後編】より『最終話後 モネの夢』を追加しました。
そして、近日中に『外伝 エピソード・オブ・アルガ』を更新する予定ですので楽しんで貰えると幸いです。

ではまた会いましょうでわでわ~( ´ ▽ ` )ノシ
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