あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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今回はFILM回!最初なのでストロングワールドを書こうとしましたがそれだと前作と似た流れになりそうなので止めちゃいました(汗)


FILM〜Z〜上

 俺は目の前の光景に唖然としていた。

 

 迂闊だった。勝手に可能性から除去していた自分に怒りすら覚えてしまう。

 

 これまでの航海でアニオリ展開も来なければウタとゴードンさんを除いて劇場版キャラも出てくることはなかった。

 

 出てくるにしても順当に考えればシキからだと思うが、2年前に奴と対峙することもなく新世界へ来ている。

 

 しかし、実際に目の当たりにしてしまった以上は腹を括るしかない。

 

「アルガちょうどよかったわ。ルフィ達が漂流した人を助けてたのだけど……どうも右腕の義手、海楼石で出来てるみたい。ただの漂流者ではなさそう」

「おお〜来たかアルガ!見てくれこの腕!カッチョいい〜!触ると力抜けっけど」

「こらルフィあまり騒ぐなよ!キズに障るだろ!」

 

 医務室のベッドで寝ている男。ゼファーを見て俺は後に起こるであろう未来に眉を顰めた。

 

 FILM Z、始まるのかァ……。

 

 

 

 

 医務室にチョッパーを残し俺はことの重大性を知らせるために皆を外に連れ出し助けた漂流者、ゼファーについて説明した。

 

『元海軍大将〜〜〜〜ッ!!!?』

「シーッ!?声がデカイ!!!」

 

 あっぶね!医務室でこれ話してたら今の叫びで目覚めるかもしれなかったぞ。

 

「それもただの大将じゃない。あのセンゴクやガープの同期で、元三大将にスモーカーの様な名のある海兵は皆奴の教え子。つまり全ての海兵を育てた男だ」

 

 偶然助けた人物がそんな大物とは知らなかった皆は息を呑んだ。その中でもダントツで顔色を悪くするウソップが恐る恐ると言った様子で質問する。

 

「そ、そんなヤベー奴が何だってあんな所で漂流してたんだよォ……」

「おそらくは……」

 

 チラッと頭上を見上げ空から降り積もる火山灰を見て推測を立てる。

 

 FILM Zの序盤で起きたファウス島での大噴火に巻き込まれたせいだろう。とはいえ、海軍の機密をおいそれと話すワケにはいかない。

 

「おそらくは何だよ?」

「いや、やっぱ何でもない。色々と不確定要素が多すぎるから細かい事情は省こう。今はあの男が目覚める前にどうするか───」

 

 ゼファーの身柄をどうするか方針を決めようとした時、医務室の扉が開きチョッパーが出てきた。

 

「おーい、皆ァ!患者が起きたぞォ〜!」

「ギャアアア!?遅かった〜〜!!?」

 

 チョッパーの知らせにウソップが絶叫を上げる。他の皆も少なからず緊張が走り皆の表情に唯一事情を知らないチョッパーは首を傾げると中から一人の大男が現れた。

 

「随分と賑やかだな。助けてくれたんで礼をと───思ったんだがなァ」

 

 本心から出たであろう礼の気持ちで外に出てきたゼファーは帆の海賊旗に目が止まってしまい言葉が詰まる。

 

 すると、残念がる様に声のトーンが落ちサングラスをかけ直した。

 

「チョッパー危ない!!!」

「え───」

 

 見聞色で奴の未来を見た俺はすかさず飛び出しチョッパーを抱えて金棒を構える。すると次の瞬間、ゼファーの右腕が俺達を襲った。

 

「ほう、いい動きだ。それに今の見切り……見聞色も中々鍛えている」

「そりゃどうも!オラァ!!」

 

 ガードしていた金棒で右腕を弾く。そして、チョッパーをウソップに投げ渡し金棒を顔面めがけフルスイングした。

 

 しかし───

 

「武装色も申し分無い。だが、おれに言わせちゃまだまだだ……ヌゥオ!!!」

「ブッ!!?」

 

 武装色で黒腕となった左腕で俺の頬をぶん殴られる。その威力に踏ん張り切れずぶっ飛ばされてしまった。海には落ちなかったもののバキッとマストにメリ込んでしまう。

 

「アルガッ!?お前ェ!よくもおれの仲間をォォォ!!”ゴムゴムの,,〜!!」

 

 仲間がぶっ飛ばされるところを見たルフィは怒り出し”ギア2,,で一気に突っ込むとゼファーに殴りかかった。

 

「”JET銃(ジェットピストル),,!!!」

「ヌゥゥ"!?」

 

 ルフィの目にも止まらない速度の殴打がゼファーに直撃する。しかし、直撃した腹には武装色をまとわせており大してダメージは入っていなかった。

 

「なっ!?」

「その顔、見たことがあるぞ。確かガープの孫だったな。流石の一撃だ。だが、まだ足りねェな!!!」

「ぐっ!?なんらァ……ほれはァ、海楼石ィィ……」

 

 繰り出した拳を掴むとみるみる力が抜けるルフィにゼファーは躊躇なく爆撃した。

 

「”スマッシュバスター,,!!!」

「ブフォッ!!?ゲホッ……」

「ルフィ!!?」

 

 海楼石で力が抜けた所にゼロ距離爆破。幾らルフィでも能力者である以上、今の攻撃はタダでは済まなかった。

 

 爆破の衝撃でぶっ飛ばされたルフィを受け止めると黒焦げになったルフィを見てゼファーは落胆する。

 

「この程度か。ガープの孫にしては少々ガッカリだ」

「何だとォ……!!」

 

 ゼファーの言葉にピクッと反応したルフィはものすごい剣幕で睨みつける。

 

「事実だろう。おれが戦ってきた奴らならこの程度どうとでも対処してきた。つまり、対処出来ないお前はその程度の男という訳よ」

「ナメんなよガチャ腕!!おれは海賊王になる男だ!!!」

「海賊王、だと……?」

 

 今度はルフィの言葉にゼファーが反応しお互い鋭い形相で睨み合う。すると、遠くから近づいてくる複数の声を見聞色で感知した俺はフランキーに指示を出す。

 

「フランキー!クードバーストの準備!!敵船に囲まれるぞ!!」

「何ィ!?」

「おい見ろ!!向こうから艦隊が突っ込んで来るぞ!!!」

 

 敵船と聞きフランキーがぎょっとするとウソップも目認し皆に知らせる。

 

 ルフィの戦いに夢中だった皆はこっちに向かってくる艦隊に視線を向け目を見開いた。すると、船から二つの影が空を飛びサニー号に乗り込んだ。

 

「うお!綺麗なレディー♡」

「黙ってろぐる眉!?何モンだてめェら!!」

「私達は全ての海賊を根絶やしにする者。NEO海軍!!ゼット先生の名の下にこの船諸とも全員沈めてくれる!!」

「モサモサ〜!!海賊は悪!!!よって粛清してくれるゥ!!」

 

 乗り込んできたのは映画でも見たことのあるメンバー。アインとビンズだった。ビンズも厄介だが何よりマズイのはアインの能力。

 

 俺はマストから出て二人の前に降り立つ。少しでも変な動きをしたらすぐに潰せるように金棒を構えながら。

 

「お前ら気を付けろ!!このヘンテコ忍者は植物を操る!もうひとりの女は触れた相手の年を奪う!何度も触れたらヘタすれば存在を抹消されるぞ!!!」

「うげ!?なんつーエゲツねェ能力だよ!!」

「っ!?」

「モサ!?」

 

 俺の説明にウソップがへっぴり腰になりサンジの後ろに隠れる。皆もふたりを警戒する中ゼファーが俺を訝しむ。

 

「随分と……物知りじゃねェか。あいつらの力はまだ知れ渡っていねェ筈だが」

「さあ、何でだろうねェ〜?情報管理がなってないんじゃない?」

 

 少しでも隙を作るためにニヤニヤと煽りを含めた嘲笑をするがゼファーは一切表情を崩さない。むしろ、何処か納得したような……。

 

「その不思議な情報源。貴様はまさか……」

 

 俺を訝しんだ後どこか腑に落ちたように頷くとゼファーは跳躍した。跳んだ先は近くまでサニー号に幅寄せしきていた艦隊の一隻。そこに飛び移るとアインとビンズもゼファーの船に飛び乗った。

 

 そして、右腕を掲げ宣言する。

 

「おれはNEO海軍総帥ゼット!!ゼットは全ての海賊を滅亡させる せいぜい生き延びろよ。海賊王!!!」

 

 その言葉が合図となり周囲の艦隊から砲撃の照準を合わせられる。今にも一斉放射されそうな状況となった所でフランキーの声が轟いた。

 

「アウ!!待たせたなオメーら!コーラパワー準備完了!!!全員何かに掴まってろ!!!」

「よし!!逃げるぞ急げェ!!」

「全艦砲撃用意……撃てェ!!!」

「行くぜサニー!!!クードバースト!!!!」

 

 そして、敵艦の砲撃の発射音と同時にサニー号は空へと飛び立つのだった。

 

 

 

 

 何とか危機を脱した俺達だったが内心穏やかではなかった。

 

「うが〜〜っ!!何がその程度の男だァ!!次会ったら絶対にぶっ飛ばしてやるゥ!!」

「ルフィ落ち着けって」

 

 荒ぶるルフィを宥めつつ俺達は今後について話し合う。これ以上ヤベー連中には関わらない方が良いと言う意見もあれば舐められたままで終わってたまるかと奮起をたたせる意見もあり二極に別れていた。

 

「アルガ〜、お前も戦わねェ方に賛成だよな!?な!?」

「あの患者海軍大将だったのか!?おれコエーよー!」

「このまま舐められっぱなしで終われるか!!ゼットは必ずぶっ倒す!!」

 

 ノー戦闘派のウソップ、チョッパー。イエス戦闘派のルフィ。それぞれが俺の意見を求めてくる。

 

 俺は深く考え込んだ後で意見を述べる。

 

「今回はルフィに賛成だな」

「「エエェェエエ〜〜〜〜ッ!!?」」

「よゥし!!」

「ま、逃げっぱなしは性に合わねェしな。それにアインちゃんにまた会いたい」

「諦めろウソップ。船長(ルフィ)が決めた事だ」

 

 サンジとゾロもノリ気なのかルフィ側の援護に加わる。サンジの言う通りだが理由は他にもある。それはあいつらの目的だ。

 

 ダイナ岩によるエンドポイントの破壊。これを阻止しなければ新世界は破滅する。

 

 だけど、今の時点でゼファー……いや、ゼットか。ゼットの目的は話せない。機密情報であるダイナ岩やエンドポイントの説明ができないからな。

 

 それに気になる事がもうひとつ。

 

『その不思議な情報源。貴様はまさか……』

 

 あんなセリフ映画には無かった。まあ、原作には俺は居ないのだから当然なんだが。にしても俺を見て何を思ったのか。それを知るためにも、もう一度会う必要がある。

 

 突然の事で狼狽えてしまったが、もう油断はしない。

 

 そもそも、ゼットはルフィが”ギア4,,を使わず倒した相手だ。幾ら伝説の元海兵だろうと底が見えている以上油断さえしなければ敗けはしない。

 

 最後のピリオ島に行くまでもねェ。とっとと謎を聞き出した上でぶっ倒してセカン島で決着をつけてやる。

 

 

 

 

「……とは言え、戦の前には休息も大事ってね〜」

 

 カポーン、と桶の音が響くここは島でも有名なスーパー銭湯。

 

 俺達は次にゼットが狙うエンドポイントの島、セカン島に来ていた。そこは火山の島であり温泉で有名な観光名所。

 

 情報収集は変装したナミ、ロビン、ウソップ、チョッパーに任せ他のメンバーは観光を堪能していた。

 

「ア"ア"〜♪極楽なんじゃ〜♪」

「相変わらず風呂好きだなテメーは」

 

 これまで様々な島へ行ってきたが、温泉街のある島は一度もなかったからな〜。訪れた島の中でも5本の指に入るかもしれんぞこの島は。

 

「確かにいい湯だァ。しかし、おれにゃちと暑すぎる。すっかりのぼせちまったぜ」

「あ〜?俺はこれぐらいがちょうどいいけどな〜」

 

 後ろから気怠げそうな声が聞こえてきたのでそう返すが仲間たちの声じゃない事に遅れて気付き思わずバッと振り返る。

 

「よっ」

 

 そこには元海軍大将青キジもとい、クザンがいた。

 

 皆もクザンを見て慌てて温泉から上がり警戒する。出会ったことがないブルックを除いて。

 

「どうしたのですか?この方、皆さんのお知り合いで?」

「海兵だ。海軍大将青キジ」

「大将〜〜〜〜っ!!?」

「"元"な」

 

 ルフィの説明にブルックが驚きクザンは訂正する。そういや、ここで再会するんだったなコイツ。

 

 温泉があまりに極楽なもんですっかり忘れてた。

 

「そう警戒しなさんなって。別に今更お前らをどうこうしようとは思っちゃいねーよ。おれはもう海兵を辞めたんだ」

「そ、それじゃ貴方は一体何なんですか!?」

「おれかァ?そうだなァ……ん?おれは何なんだ?」

「「知るかァァァ!!!」」

 

 見事なまでにゾロとサンジのツッコミがハモる。

 

 よく言うよ。海軍辞めて黒ひげ海賊団に入ってるクセに。

 

 2年前、海軍元帥の座を巡り赤イヌと決闘し敗北したクザンは海軍を辞めその1年後に黒ひげと接触し仲間に入っている。そのせいで世間からは"闇"に通じているなんて噂をされていた。

 

 まあ、せっかくの温泉の場所でそんな物騒な事は置いておこう。

 

「とりあえず上がって話でもしようか。そのためにわざわざこんな所で待っててくれたんでしょ?」

「ん、まあな。それと湯上がり姿の悩殺ねーちゃんスーパーボインを拝む為でもある」

「女性陣は別行動でここには来てないぞ」

「帰るか」ハァ…

『帰んな!!?』

 

 一気にやる気をなくしたクザンが背を向けるので皆から一斉に止められる。自由過ぎるだろ。いや気持ちは分かるけどさ。

 

 その後、何とか説得し温泉から出た後ビン牛乳を飲みながらクザンの話を聞く。ゼットが何者で何故海賊をあんなに憎んでいるのか。

 

 この新世界で何を企んでいるのか。

 

 流石にどこにいるかまでは知らないらしく話し終えたクザンはベンチで横になる。

 

「お前らと目的は違うが追ってる男は同じだ。どっかでまた会うかもしんねェからそん時はよろしくな。おれァちっと寝るわ」

「あ、最後にひとついいか?」

「アン?何だァ?」

 

 今にも寝そうなクザンには悪いが気になった事を聞いてみた。

 

「お前───今を生きてるか?」

「っ!」

 

 俺の意図に気づいたのかクザンは一瞬体を強張らせると呆れたように溜息を吐く。

 

「ほんっとに不思議な奴だなオメーは。出会った時からよォ……。オメーさんならおれが今どこに属してるのか知ってる気がしたがこうも当てられるといよいよもって疑い深くなる」

「疑い深く?」

 

 ああ、とクザンが頷くと遠い目で過去を振り返る。

 

「初めて会ったあの日、オメーさん言ったよな?"この世界のファン"だって」

「あー、言ったなー。そういや……」

 

 あの時はノリで言ってカッコつけてしまったが後々になって厨ニ臭いなと恥ずかしくなったのを思い出す。だからあまり掘り返さないで欲しんですが。

 

「そん時から引っ掛かってたんだが……」

 

 頭をポリポリしだらけきった姿勢だが俺を見るその目だけは真剣そのものだった。

 

「オメーさんひょっとして───」

 

 

 

 

 

 全ての海賊を滅亡する。それがおれの使命だ。

 

 そして、その一部の海賊を"王下七武海"として容認する政府も海軍も最早正義など掲げるに値しない。

 

 全てを終わらせる為におれはダイナ岩を奪い3つのエンドポイントの破壊を際立てた。既に1つ目を破壊し2つ目であるここセカン島にもダイナ岩を設置し終えた。

 

 ここを破壊する事で海軍もいよいよもって焦りを見せるだろう。そして、このおれゼットの怒りを知るだろう。

 

 もう誰にも止められない。このおれの行く手を阻むモノは全て蹴散らしてくれる!

 

 その為にも───

 

『お前の計画で一番の壁は四皇でも海軍でもない』

 

 眉唾程度の助言。いや予言と言うべきか。最初は鼻で笑ったもんだが奴らと出会いそれは次第に信憑性が増していた。

 

 そして、今それが確信へと変わりつつあった。

 

「……っ!やはり来たか」

「ゼットォォオオオオ!!!」

 

 時刻は夕暮れ、襲いかかる海兵を全て蹴散らし日も落ち始めた頃に奴らは現れた。

 

「おれがやる!!アルガは手ェ出すなよ!!」

「待てルフィ!先走るのは良いが油断すんなよ!?相手は海楼石の銃弾持ってんだかんな!」

「おう!!”ギア2,,!!!」

 

 また何処から得たのか不明だが確かな情報を船長に伝える鬼の戦漢。それに頷き身体から蒸気を出す麦わら小僧がまた正面から突っ込んできた。

 

「ウオオオオオ!!”ゴムゴムの,,〜〜!!!」

「…………」

 

『麦わらのルフィ、実力だけなら現時点ではお前が上だろう。だが、コイツは最後には必ず勝つ。そう言うシナリオ(運命)と決まっている。そう……()()にはな』

 

 麦わら小僧が後ろの拳を伸ばし炎を纏わせるのを見ておれはバトルスマッシャーを起動し撃ち込む体勢に入った。

 

「”火拳銃(レッドホーク),,!!!」

「”スマッシュバスター,,!!!」

 

───ジジジジ……ズドォォオオオン!!!!

 

 互いの拳がぶつかり合い周囲に爆炎が巻き起こる。その余波の衝撃に耐えきれず同時に後ろへ飛び距離を取るが麦わら小僧は追撃を仕掛ける。

 

 その無鉄砲さ。拳骨バカ(ガープ)を思い出させるじゃねェか。

 

 おれはタイミングを見計らい右腕を勢いよく振り上げ竜巻を発生させる。

 

「”スマッシュトルネード,,!!!」

「ウオアアアア!?」

 

 愚直に突っ込んできた麦わら小僧はそのまま竜巻に巻き込まれた上空へと打ち上げられてしまう。空中で無防備となった奴に向けて拳銃を放つと慌てて避ける。

 

「あっぶねェ!?海楼石の銃……ウゲッ!?」

 

 無理に避けたせいで体勢を崩してしまう。その隙を狙いおれは跳躍するとバトルスマッシャーで掴み捕獲した。

 

 捕まった麦わら小僧はみるみる力が抜けていくのを見て先程とは別の()()()を搭載する。

 

「しまっはァ……まはァ〜……っ!?」

「並の爆発じゃあお前を倒せないのは先日の戦いで理解した。だが、次の弾は───微量のダイナ岩を含ませた特殊弾。これは効くだろう?」

「ッ!!?」

「”スマッシュ,,!!!」

 

───ジジジジ……!!

 

”ダイナバスター,,!!!

 

───ボカァァアアアン!!!!

 

 先程とはケタ違いの大爆発が日の沈みかける夜空を照らす。

 

 掴まれ無抵抗のままゼロ距離爆発を食らう麦わら小僧。当然だ、海楼石で力が抜けた状態でコイツをもろに喰らえばタダでは済まない。

 

「実戦での初の試みだったが、上出来だ」

「ルフィ!!」

 

 白目を剝き地面に落下した麦わら小僧は鬼の戦漢に抱えられおれから距離を取る。

 

「しっかりしろ!!油断するなって言っただろうが!!」

「さて、残るは後一人」

「チィッ!」

 

 麦わら小僧を地面にそっと横に寝かせると背中の金棒を掴み臨戦態勢に入る。

 

「何だよさっきの技。あんなん知らねェぞ……だが、やるしかねェな。個人的にもあんたはここで倒しておきたいし」

「それは、エンドポイントを全て破壊したらおれ含む新世界の者が死ぬからか?それとも───」

 

 鬼の戦漢の言葉の意味を汲み取ったおれは敢えてそれを口にした。

 

 

「計画が破綻しおれが海軍に殺られる未来が待っているからか?」

 

 

 すると、鬼の戦漢の時が止まった。そう思わせる程に奴の身体が硬直する。

 

「は……?」

「何故それをって顔だなァ。おれを心配するのは結構だが、今は……自分の心配をしたらどうだァアア!!」

「ぐっ!!」

 

 バトルスマッシャーからガトリング砲による銃乱射を始めると鬼の戦漢は間一髪の所で回避する。中々の動きだ。そして、そうさせる見聞色の練度の高さ。

 

 ならば、予定通りにアレを実行するとしよう。

 

「貴様がどんな未来を知っていようが関係ないない!!おれの未来はおれが決める!!!当然、海軍に殺られる未来なんざ起こさせやしねェ。対策もある。……貴様の対策もな」

「俺の対策だと……?」

 

 鬼の戦漢、貴様の頭の中ではある程度この()()()()()()()が分かっているんだろう?だったら、それにはない展開を起こせばお前はたちまち動揺し心を乱す!

 

『お前は「全ての海兵を育てた男」と呼ばれていた。そんな奴が本来()()()()()に気付かない筈がない。そう、まるで展開上ナーフされてしまった様に』

 

 悔しいが、奴の言う通りだ。何故こんな事を思い付かなかったのか今では不思議に思うぜ。

 

 おれは右腕のバトルスマッシャーを取り外すと身軽となった義手を掲げ作戦の合図を送った。

 

 

「来い!!!───アイン!!!!」

 

 

 鬼の戦漢の顔から冷静が完全に無くなると同時に遠くに潜伏していたアインが飛んでくる。そして、おれの隣に着地すると奴は信じられないものを見るかのようにアインに目が行っていた。

 

 

 

 

 

 どういうことだ?訳が分からない。

 

 目の前にいるハズのない人物、アインを見て俺は目を疑った。

 

「なっ、は?え?おまっ、何でここに……!!?ゾロは───」

「海賊狩りは極度の方向音痴。故に単独で行動しているのならあえて放置すれば勝手に自滅する」

「っ!!」

「情報通なのは何も貴様の専売特許じゃあないぞ?」

 

 ゼットから感じる異様な余裕の笑み。それを不気味に感じ思わず一歩後退る。

 

 何だこれ。さっきから何が起きてんだ?

 

 ゾロの件と言い、さっきの武器だってそうだ。この時点で……いや、終盤でさえダイナ岩を自身の武器に組み込むなんて事はしなかった。

 

 それにここにアインがいるって事は……っ!!

 

「まさか!!?」

「ほう、貴様も()()()()に気付いたか。やはり貴様も……。だがもう遅い!!やれ、アイン!!!」

「ハッ!ゼット先生!!”モドモド,,!!!」

 

 アインが来た次点ですぐに気づくべきだった。そんですぐに対処する必要があった。奴の能力は何も敵にデバフを与えるだけのものはない。

 

 コイツの能力で最も警戒するべきだったのは───

 

「フゥー、この活気溢れる感覚……懐かしい。肩が軽い」

 

 モドモドの能力でみるみると肉体が若返り当時存在していた右腕さえも復元され義手がゴトッと地面に落ちる。

 

 ここからでも伝わってくる強者のプレッシャー。さっきまでとは明らかに───

 

「んじゃ、始めるとしよう」

「はy───ッ!!?」

 

 体格も変わりズレてしまったサングラスをかけ直した瞬間、俺の視界からゼットが消えた。事前に見聞色で次の行動を見ていたので咄嗟にガードの構えを取るが……。

 

「おい、雰囲気の変わった相手の攻撃は無策に受け止めない方がいい。でないと……」

「ゴパァッ!!?」

 

 かつてここまで重たい拳を食らったことがあっただろうか?そう思わせるほどに鈍い痛みが走りよろけてしまう。しかし、ゼットの恐ろしさはその強さだけではなく、確実な勝利への手段だった。

 

 パアン!と銃声の音が聞こえた瞬間肩から血飛沫が舞う。一瞬痛みを感じた直後、何とも言えない脱力感が襲う。

 

「こ、これは……」

「海楼石製の銃弾だ。分かっていても不意に食らえばどうしようもないな。さて、終わりにしよう」

 

 ザッザッとゆっくり歩み寄るゼット。体が言うことを聞かずその場に膝まづくしかできなかった俺はそれが死神の足音のように聞こえてきた。

 

「では、さらばだ」

 

 次に俺の視界に映っていたのは……空だった。

 

「ゴッ!!?ブハァ!!」

 

 何、だ……今の、馬鹿げた威力……。これが、ゼットの、全盛期の……力……?

 

 あまりの威力に脳が揺れ景色がブレる。ギャグ漫画みたいにどこまで飛ばされていくのか分からずただ勢いに身を任せ空を飛び続ける。

 

 全盛期の肉体を得たゼット。転生前、読者からもアインを使った強化法とかはよく言われていたが……実際にされるとここまで桁外れなのか。

 

 規格外なパワー。それに加えかつて"黒腕"と呼ばれていた武装色の練度。成程これは───

 

 

 ヤバすぎる。

 

 

 ゼットの恐ろしさを改めて理解すると、ドボォン!と島の海岸沿いまで飛ばされた俺は海へと落下しゴポゴポと沈んで行くのだった。

 

 

 

 

 目を覚ますとそこはサニー号の医務室だった。

 

「アルガが起きたぞォ〜!!」

 

 目が合ったチョッパーが慌てて部屋から出ると仲間たちが一斉に入ってくる。

 

「よかったァ〜。あんたが空から降って来た時は驚いちゃったわよ全く」

 

 ナミが心配した様子でこれまでの経緯を説明してくれた。

 

 俺が飛ばされた後、ウソップ、ゾロ、サンジは気絶していたルフィを担ぎ何とか海列車でナミ達と合流できセカン島が爆発する前に脱出できたらしい。

 

 その間、俺はどうなっていたのかと言うとなんとナミ達の乗る海列車まで飛ばされていたらしく海に落ちた俺を見てナミが急いで救助してくれたらしい。

 

 ルフィは海列車が発車してすぐ目覚めたが俺は中々目を覚まさず結局、サニー号に着いてからようやく意識を取り戻したとの事だ。

 

「マジか、ありがとうナミ助かった」

「いいわよこれぐらい。それで、何であんたはあんな事になってた訳?」

 

 ナミだけでなく他の皆も気になっていたらしく俺も黙っているわけにも行かず事の経緯を説明する。

 

「端的に言うと、アインの能力でゼットが全盛期の肉体まで若返ってドチャクソ強くなった。んで、拳一発で火山から海まで殴り飛ばされた」

「バケモンかよ!!?」

 

 ウソップが目を飛び出しそうな勢いで驚愕する。うん、そうだよね。俺もそう思う。

 

 とにかく、これ以上はじっとしていられない。そう思い部屋を出ると今いる場所は小さな島だと言うのがわかった。

 

 映画でもあったセカン島の隣の島にある小さなドッグ。今はここで停泊させてもらっているみたいだ。

 

「となると……っ。やっぱいたな」

 

 波の音が静かに聞こえる夕暮れ時、そこに奴は現れた。

 

「あららら、もう動いちゃて大丈夫なのか?重傷だろうに」

「全然だね。チョッパーの医学力は世界一なんで」

「青キジ!!?」

 

 サニー号のすぐ近くまで来たクザン。セカン島で再会したメンバー以外は青キジと叫び驚く。そんな中、俺はサニー号から降りてクザンと対話する。

 

「つえーだろう。ゼファー先生は」

「強いのは分かってたがまさか若返って更に強くなるとは思わなかったがな」

「えェー、そんな事になってんの?だとすりゃあマジで手に負えねェだろそれ」

 

 クザンも流石に予想外だったのか俺の言葉にビックリした様子となる。

 

「んじゃあ、いよいよもって新世界も危ねーなァ。今の内に逃げ出すか?」

「笑えねェ冗談だな。今更どこへ逃げるんだよ」

 

 出来もしない事を口にしお互いに嘲笑し合う。その後、「それに……」と付け加えるように俺の気持ちを告げる。

 

「まだ、俺の用事は済んでねェ」

「…………」

「ルフィだって大切な麦わら帽子を取られてんだ。このまま終わる気はないさ」

 

 俺の言葉に反応したルフィはサニー号から飛び降り俺の隣に着地するとクザンに啖呵を切る。

 

「そうだ!!おれはまだ終わっていねェ!アルガも目覚めた事だしすぐにでも船を出すぞ!!奪われた帽子を取り返さなくっちゃだしな!!!」

 

 ウオオオオオ!!やるぞ〜!!と息巻くルフィを見てクザンはニヤリと笑う。

 

「どうやら激励は不要だったみてーだな。まあ、しっかり頑張んな。新世界の運命はオメーさんらに懸かってる」

「悪いが俺たちにそんな運命を背負うつもりはないぞ」

「何……?」

 

 俺の言葉にクザンは眉を寄せる。そして、今抱いている率直な気持ちを伝えた。

 

「新世界の運命とか関係なく、俺はゼットと戦いたい」

 

 実際に対峙してみて改めてゼットが如何にスゴイ男だったのかを理解した。そりゃそうだ、覇王色を持つ猛者達と武装色ひとつで渡り合ってきたんだもんな。

 

 アイツも、俺と一緒で覇王色を持たず武装色のみであの高みまで……。

 

 言ってしまえば、ゼットは俺が目指す完成形のひとつなのかもしれない。

 

 まあ、だからといってこのまま負けっぱなしじゃ終わる気はねェけどな。あの時は惨敗してしまったが次はもう敗けない。

 

「あんだけ打ちのめされてもまだ折れねェか。やっぱ、ここへ来てよかった」

「ん?」

 

 急に雰囲気が変わりしんみりとしたクザンが酒瓶を開け一口飲む。

 

「おれァ元々あそこへは湯治で来たんだが、もう一つ供養する為でもあった」

「供養……ゼットのか?」

「ああ、ゼファー先生をこれ以上好きにさせちゃマズイからな。しかし、そこへ()()が現れた」

 

 んん?お前達ではなく俺単体?

 

「俺が何だよ?」

「…………さてな」

 

 おい、焦らすだけ焦らしておいてなんだその回答は。気になるだろうが。

 

「ま、やる気があるのが知れたしおれはもう行く。忠告しとくが、死を覚悟した奴は迷いが無くなる。迷いがない敵は手強いぞ?」

「それはこっちだって同じだ」

 

 あの強さに怯んだのは確かだ。だけど、同時に思ったんだ───ゼットの武装色を越えたいと。

 

 きっと、アイツの武装色を乗り越えた先に俺が目指していたものが見える気がするんだ。

 

 

───武装色の"極致"ってやつが。 

 




書いて欲しいと多くの声が出たため始まりましたR-18版シリーズ。下のリンクから飛べますが18歳未満はまだダメだからね?
https://syosetu.org/novel/390201/
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