あなたにもう一度毛布をかけるため   作:もしも=ロマンの可能性だよねッ!

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どうも皆さんもしロマです!
なかなか続きが書き終えず投稿が遅くなりました(^_^;)
それでは続きをどうぞ!( ´ ▽ ` )つ


FILM〜Z〜中

 最終目標である打倒カイドウを志す俺は覇王色のまといと張り合えるぐらい武装色を強くするために覇気を鍛え続けてきた。

 

 武装色を極める。それが俺が唯一カイドウと渡り合える手段だと考えたからだ。

 

 それにあたりまず俺はとあるキャラ二名の武装色を超える事を通過点として見据えていた。

 

 ひとりはバレット。奴は能力で島と同じぐらい巨大になった身体を全身武装色で覆い尽くせるほど覇気総量が膨大だ。正直、覇気総量だけ見たらアイツが作中最強かもしれん。

 

 そして、もうひとりはゼット。劇場では”ギア4,,を使わずルフィが勝ったが、ラストを見るにゼットにはまだ余力があった。何より全盛期では覇王色のまといを扱う強者達と武装色一本で渡り合った超人だ。

 

 武装色で武器や身体を黒く変色するのは当たり前の中で唯一"黒腕"と言う異名がついた男。

 

 そんな男を今、俺は超える為に奴が居るであろうピリオ島を見つめていた。

 

「目標はゼット!!!進めェェエエエ!!!」

 

 周りはNEO海軍の艦隊に囲まれているがルフィの指示の下、構わずピリオ島へ一直線に突き進むサニー号。

 

 砲撃は各自で撃ち落としサニー号を死守。上陸を阻止するべく正面に待ち構えている艦隊はガオン砲で撃ち沈める。もはやこうなった俺達を止める手段は主戦力のいないNEO海軍にはなかった。

 

 そして、ついにピリオ島に到着した俺達は一斉に船を降り島へ上陸した。

 

「ゼットはどこだ!!道を開けろォーッ!!!」

 

 この戦いのために着替え直した最強装備を着込んだルフィ。腰に携えていた剣を抜き開戦の合図を出すと俺達は一斉に駆け出した。

 

「ウオオオッ!!待ってろよゼットォォオオ!!!」

 

 迷わず島の中央の火山を目指すルフィ。ゼットと対戦するために少しでも体力を温存させようと仲間達が周囲の雑兵を分散させ次々となぎ倒していく。

 

 俺はルフィと一緒にゼットの下へと向かって行く。若返ったゼットあの強さは尋常じゃない。仮に映画補正があったとしてもルフィひとりじゃ心配だ。

 

 万が一、ルフィがまた敗けることがあれば……。

 

 前方から襲いかかるNEO海軍との戦闘は最小限に抑え途中ルフィの肉休憩を挟みついに火山口へと辿り着く。

 

「来たか、小僧共」

「待たせたな。……ってまた少し雰囲気が変わったな。まさかまた……」

「ああ、万全の準備で迎え撃つ為にアインにもう2回若返らせてもらった」

 

 そこには以前よりもさらに威圧感を研ぎ澄ませた若かりしゼットと……アイン。

 

「マジかよ」

 

 確かゼットは今年で74歳だったハズ。セカン島合わせて3回と言う事は36歳若返って今の肉体は38歳。この数字に俺は息を呑む。

 

 何故なら38歳のゼットと言えば……海軍大将に上り詰めた歳だからだ。

 

 覇気は熟練。肉体は全盛期。成程、これは間違いなく強敵だ。2年前の青雉と黄猿を相手取っていたあの時の方がまだ勝機が見えるぐらいに。

 

 それにしても……。

 

 何故かFILM Zのシナリオを知っていたゼットはここでも作中通りの配置ではなかったか。

 

「どうしたァ?ここにアインがいて不思議に思ったか?おれは誰の思い通りにはならん。おれの行末はおれが決める」

 

 視線は俺に向けてそう言ってくるゼットだったが、何故かそれだけじゃない気がした。まるで、ここにはいない()()()()にもそう言い放っているような。

 

 だからといって俺がここへ来たのは目的は変わらないがな。

 

「別に仲間が若返られた訳でもないしそこまでこだわりはないよ。むしろ、アンタの傍にいるなら好都合だ」

「なにィ?」

「俺はアンタの武装色を超えるために来たんだ。若返ってより強くなったんなら更に超え甲斐がある……燃えてきた」

 

 俺の言葉にゼットは鼻で笑い、ルフィに視線を向ける。

 

「ハンッ、一丁前な事を言う。じゃあ貴様は何しに来た?」

 

 ゼットの問いかけにルフィはただ黙ってゼットを見据える。

 

「新世界を救う……そんな大義を海賊が背負って来たとでも?」

「そんなもんどうでもいい。おれはただ帽子を取り返しに来ただけだ!」

「こんな所まで遥々やって来るとは。こんな帽子が何だと言うんだ」

 

 ルフィにとっての麦わら帽子。それは……。

 

 

「道しるべだ」

 

 

 迷いなくそう答えたルフィにゼットは表情を変える。

 

「おれが海賊王へとなるための。だからゼット、お前をぶっ倒して帽子は返してもらう!!!」

「ケッ、生意気言いやがって……。上等だ、今度こそ息の根を止めてくれる。覚えておきな!!貴様らを殺す男の名は───ゼットだァァアアア!!!」

「来るぞルフィ!!構え───」

 

 両腕が武装色で黒腕と化したゼットが雄叫びを上げた。来る!そう身構えルフィに警告しようとした時、謎の浮遊感に襲われ視界が変わる。

 

 バゴォン!と大きな音が響き気が付けば岩盤に埋もれていた。

 

「ッ!?がっ!おォ"ッ!?」

「アルガァァ!?」

「おれを前に他人の心配とは……余裕だなァおい」

 

 何が起きた?何で俺が岩にめり込んでる?何でゼットがルフィの隣にいる?……殴られた?

 

 一瞬で近づき俺を殴り飛ばした。そう遅れて理解すると今更になって殴られたであろう腹に鈍痛が響く。内臓がぐちゃぐちゃにされたような痛み。思わず吐き気まで出てきた。

 

「オ"ェ"……くそ、当然武装色も内部破壊レベルか。分かってはいたが……強い」

 

 これが全ての海兵を育てた男と言われたゼットの実力。ただ強いだけじゃなく判断力も侮れない。さっきの攻撃がいい例だ。俺がルフィに意識が僅かに向いていた一瞬を見極め即行動し潰しにかかる。

 

 油断を見逃さない洞察力。そして、それを実行できるフィジカル。これが経験の差ってやつか。

 

 俺はゼットの実力を改めて認識し立ち上がると全身に力を込めた。

 

 俺に、力を貸してくれっ!

 

「”降霊・呼憑(こうれいよびつ)ぎ,,!!!」

 

『勿論、頑張ってねアルガ。今回の相手は……へえ、手強そうね』

(あ、わかっちゃう?そうなのよ。今回の敵はマジで強いんだよね)

 

 母さんと話しているとゼットの目つきが変わり警戒心を上げる。

 

「雰囲気が変わったな。ここからが本番って訳か」

「ああ、覚悟しろよ若作りジジイ。その自慢の覇気捻じ伏せてやる!」

「おれを忘れてんじゃねェ!!”ゴムゴムのJET銃(ジェットピストル),,!!!」

 

 ゼットの頭上に跳んだルフィが超速の拳を繰り出す。しかし、意に介さずと言った様子で見向きもせず腕を上げルフィの殴打を掴んだ。

 

「忘れてなどいない。ただ、まだおれを奮い立たせるには不十分……ぬ?」

「ウオオオオオッ!!”ゴムゴムのォ,,……!!」

 

 掴んだ拳を離さずルフィを捕らえた気でいたゼットだったが今度は真上に伸ばした足をルフィは勢いよく振り下ろす。

 

「”JET斧(ジェットアックス),,!!!」

「ヌオォ!?」

 

 攻撃はゼット自身のではなく足元の地面。勢いよく踏み抜いた地面は瓦解し足場が崩れる。完全に地面が壊れる前にゼットは後退すると手を離しその隙にルフィも距離を取って着地した。

 

 ナイスルフィ!冷静さを乱したな!今度はこっちの番だ!!

 

 突然足場がグラつき一瞬俺達から意識が途切れるゼット。そこを突きさっきの仕返しとばかりに俺は最速で駆け出した。

 

「”神速・黒蛇駆(しんそくこくじゃく),,!!!」

「ぐおおっ!!」

 

 金棒が顔面を捉えるも即座に反応したゼットは両手をクロスさせ黒腕で受け止める。完全に決まったかと思ったがバケモノじみた反射神経で対応されてしまった。

 

 だが、まだ完全に防がれたわけじゃない!このまま押し切れェエエ!!

 

「ウォォオオラァアアアア!!!」

「ぐっ……ウォオオッ!?」

 

 着地した所を狙った事もあり完全に体勢が整う前に攻撃を受け止めたゼットはそのままブッ飛ばされた。

 

「シャア!!リベンジ成功!!」

「うお〜!やるなアルガ!」

「ありがとルフィ!だけどあんま周りは壊すよな!ヘタすりゃダイナ岩が爆発しちまう!!」

「そうだった!わり、気を付ける!」

 

 明るく反省反省と返すルフィに内心ため息をつくとドゴォン!と瓦礫を押しのける音が聞こえる。すぐに視線を向けると土煙を払い鼻血を拭うゼットが仁王立ちしていた。

 

「イテェなクソガキ」

「うそん」

 

 ほとんど効いてない……え?まともに入ったよな?結構強めに行ったんですが……。

 

「小賢しい……!二人まとめて一掃してくれる!!」

 

 ッ!来るっ!!

 

 見聞色で未来を見通しゼットにのみ全神経を集中させる。すると今度はしっかり奴の行動を読み取れ一瞬で詰め寄ってきた目の前の黒い拳を払いのける。

 

「そう何度も同じ手くらうかよバーカァ!!」

「ほほう」

「”ゴムゴムの,,ォォ……!!」

 

 俺とゼットの視線が合わさり互いに笑みを浮かべる。そこへルフィが”ギア3,,で巨大化させた拳をぶっ放す。

 

「”業火拳銃(レッドロック),,!!!」

「ブハッ!!?」

 

 ギリギリまで俺と対峙するしていたゼットはルフィの攻撃までは対処し切れず業火の巨拳に衝突し岩盤までブッ飛ばされた。

 

「どーだコノヤロー!!」

 

 おー、ルフィの奴ハデにやったな。そうだよな、シナリオ通りゼットに二度やられてるとは言え現時点でコイツもカイドウ再戦時の強さはあるんだ。

 

 しかし……。

 

「今のは効いたァ。小僧、やればできるじゃねェか」

「うげ!?まだピンピンしてやがる!」

「流石は元海軍大将」

 

 今のでもダメとなるといよいよもって腹を括るしかないな。俺もルフィも奥の手を使えば奴に通用するかもしれない。

 

 だけど、ダメだった場合は最悪の状況になってしまう。だから様子見でここまで温存していたが……。

 

「やるかルフィ」

「そうだな。このままやっても時間の無駄だ」

 

 俺とルフィは並びギアをもう一段階上げた。

 

 同時に力を解放すると周囲に突風が巻き起こる。明らかなパワーアップの最中、ゼットは凛とした姿勢で仁王立ちしていた。

 

「まだ力を残していたか。面白い……!!!」

 

 強者の余裕、しかしそれがどこまで続くのか見ものだ。その余裕の笑みを絶対に崩してやるぜ。

 

 そして、力を解放した俺達は異形な姿へと遂げた。

 

「”「武装龍鬼(ぶそうりゅうき)流桜武神(りゅうおうぶしん),,!!!」

「”ギア4「スネイクマン」,,!!!」

「肌をヒリつかせるこの覇気、成程……悪くない!!!」

 

 より一層楽しそうな笑みを浮かべるゼットに対しまずはルフィが仕掛けた。

 

「”ゴムゴムのォォ黒い蛇群(ブラックマンバ),,!!!」

「速いな!だが、まだまだァアア!!!」

 

 最速最多でゼットに手数で勝負するルフィ。最初は想定外の素早さだったからか数発くらうゼットだが、すぐに対応し避けるか受け流すかで捌き始める。

 

「クソッ!!動けるなアイツ!だったら!!”ゴムゴムの,,ォォ!!」

 

 ゼットの順応力に苦い顔をするがルフィもまた同様に次の手を打つ。ゼットをその場に残すために片手で連撃を継続しつつ、もう片方の腕が地面に埋まる。

 

 そして、地面を伝ってゼットの足元まで来ると勢いよく地面から飛び出しゼットの顎をかち上げた。

 

「”潜る大蛇(シーサーペント),,!!!」

「ブッ!!?……ォォ"?」

 

 顎を殴られた事で脳が揺れたのか一瞬体勢をグラつかせる。そこを狙い今度は俺がほとばしる覇気を込めた拳を放つ。

 

「”地獄万力鬼(じごくまんりき),,!!!」

「ぐあああっ!?」

 

 殴打は見事クリーンヒット。しかし、ルフィの攻撃と同様に瞬時に食らった箇所には武装色を纏っており致命的なダメージは防いでいた。だが、それでも先程までとは明らかに違い苦悶の表情へ変わっていた。

 

 つまり、通じているんだ。俺達の攻撃が!

 

 よし行ける!このまま一気に畳み掛ける!!

 

 ルフィの”ギア4,,の活動限界は10分ぐらいだが、俺の”流桜武神,,はもって1分。この1分で終わらせてみせる!

 

「”ゴムゴムの,,……!!!」

「ゲフッ。させるか……ぐっ!?」

「行かせねェよ!!」

 

 見聞色でルフィの大技を感じ取ったのか駆け出そうとしていたのでルフィの前に立ち塞がりゼットの両手を握り動きを止める。

 

「ど、けェェェ!!!」

「させるかァァァ!!!」

 

 どちらも譲らない取っ組み合い。お互い握力を強めどんどん足元に亀裂が広がる。パワーは互角、だがそれならルフィがいる分軍配はこちらが上だ。

 

「ッ!?しまっ───」

 

 俺との取っ組み合いで動けない所を狙ったルフィが炎を纏った超速の拳を繰り出した。

 

「”業火拳蛇(レッドサーペント),,!!!!」

 

 炎の大蛇が横っ腹に襲いかかり重い一撃を食らったゼット。辛うじて武装色で致命傷は避けられたがもはやその顔には余裕などなかった。

 

「ぐっ!!ゲフッ!!?クソッ……己小僧め……!!」

「俺も忘れんじゃねェぞ?」

「ああ、心配せずともまずは貴様からだ鬼の戦漢!!!」

 

 ルフィを睨見つけていたゼットに声を掛けるとすぐに俺の方を向きお互い同時に拳を握り絞めた。

 

「”桜憑鬼(おうつき)朧突(おぼろづ)き,,!!!!」

「”最高の破壊(デストロイスマッシュ),,!!!!」

 

 互いの黒拳が衝突する。周囲には覇気がほとばしり、強風が吹き荒れる。

 

 ぐぬぬぬぬ……!すごいパワーだ!?だけど、敗けてたまるかァァァ!!!

 

「ハアアアアアアッ!!!」

「ヌォオオオオオッ!!!」

 

 絶対に敗けたくないと強く想いさらに力むと覇気が色濃く照らされる。

 

 すると───

 

「ぐっ!?こ、これは……!!?」

「───っ!!そうか、少し考えてみりゃ当然か!」

 

 ゼットの体に変化が起きた。なんと、若返っていた体が徐々に()()()()()のだ。まだ完全に戻った訳じゃないが少なくともさっきまでの38歳の若々しさはない。

 

 何故ゼットの体が戻ってきているのか?その答えは奴の覇気が原因だろう。過剰な覇気に能力は通じない。つまり、ゼットの纏う覇気が強過ぎてアインの能力が解けてきたのだ。

 

 全盛期の肉体で奴の武装色を超えたかった俺としては少し惜しいが、こればかりは仕方がない。せめて、今出せる奴の全力の覇気を真っ向から撃ち倒す!

 

「先生っ!!」

「案ずるなアイン。ちと、遊び過ぎた」

「へっ?」

 

 なんと、拮抗していた両者の拳だったがゼットがわざと拳を引き俺は前のめりになってしまう。まさかここで引いてくるとは思わず体勢を崩すと一瞬でゼットが懐に入りミゾ、喉、顎の順に殴り蹴り掌底突きを繰り出した。

 

「ゲボッ!?ゴボッ!!アガッ!!?」

「こうなってしまってはもう手加減はできん。悪いが───確実に貴様を殺す」

「アルガァ!!今助け……あぶねっ!?」

 

 顎に衝撃が走り頭が回らない。ぼやける視界で辛うじてルフィがこっちに向かってくるのが見えたがゼットが何やら銃で発砲すると慌てて避けていた。

 

 そして、その避ける隙で俺を仕留めるのはゼットにとって容易な事だった。

 

「”暴力的な破壊(バイオレントスマッシュ),,!!!」

「ブフォオッ!!?」

 

 ミゾで苦痛を味わい喉で呼吸を止められ顎で思考を止められた。そんな完全無防備となった状態から強烈な一撃を食らってしまう。

 

 俺は堪らず”流桜武神,,の形態が解かれる。そして、そのままブッ飛ばされた先の着地点───溶岩へと落下する。

 

 マ、マズイ……何とか、何とかしない……と……。

 

「アルガァァアアアアア!!!」

「ル、フィ……っ!」

 

 ルフィの絶叫が耳に入る。そして……。

 

 ドボォン!ポコポコ……ポコ……ポコ……

 

 俺の体は溶岩の中へと沈んしまったのだった。

 

 ポコ……ポコ……

 

 

 

 

『"黒腕のゼファー"アナタには可能性がある。共に手を組み一緒に海賊を滅亡させましょう!』

 

 それはファウス島からダイナ岩を奪取する前の事。おれはとある人物と出会った。

 

 その者もまた、おれと同じ使命を掲げていた。だから手を組んだ。あの者と手を組めばより確実に世界を変えられると考えて。

 

 我がNEO海軍に加え()()()()()も合わせれば腐った海賊も、腐敗した海軍も根絶やしにできる!そう確信し憂い舞い上がった。

 

 奴が、海賊と名乗るまでは……。

 

 当然、それを聞いたおれは激昂し奴と対峙した。同じ使命を志した者同士とはいえ海賊なら話は別だ。奴もおれの敵……。

 

 だが、おれが手を組んだ理由は奴の未来を見ているのかと言うレベルで的中させる予言と奴が従わせる猛者の戦力。

 

 そして───奴の力にあった。

 

『残念だよ。人がせっかく強くなる術も教えたって言うのに……。あ〜あァ、FILMボスはなるべく仲間に引き入れたかったんだけどなァ〜』

 

 ハッキリ言おう。おれは敗北した。完膚無きまでに。辛うじて逃げおおせたが、決して諦めた訳じゃない。

 

 確かに奴の戦力は絶大だ。しかし、ダイナ岩さえあれば関係ない。新世界ごと奴らをまとめて一掃できる。

 

 そう結論付けたおれは再び自身の立てていた計画に戻りダイナ岩を奪いに出た。最初からこうすればよかった。時間を無駄にしたと思ったがお陰でこの計画の重要性を改めて実感する。

 

 あんな奴らを野放しにする方が世界にとって害悪だと。己の決心をより固めることが出来た。

 

 断言できる。世界政府、四皇、王下七武海。そんな奴らより自由にさせてはいけない危険分子は───奴だ。

 

「ああっ!アルガァ……!!アルガァアア!!!」

 

 改めてこの計画の重要性を振り返っていると鬼の戦漢が沈んでいった溶岩に向かって麦わら小僧が叫び続けていた。

 

 余程ショックだったのか形態も戻っておりその場で力無く倒れ込み四つん這いで叫ぶ奴の姿は見苦しかった。

 

「喚くな。時期にお前も奴の後を追う事になる」

「ぐっ!!クソッ!お前よくもアルガを……っ!?」

「ハア……諦めが悪い。何度も溶岩を見たって奴の結末は───っ!!?」

 

 奴も感じたのだろう。おれの見聞色からも聞こえる……奴の声が。どういう訳かは分からんが、奴はまだ───死んじゃいない!!

 

 

 

 

 

 死んで、たまるかァアアああアアあアアア!!!

 

 マグマダイブしてしまった俺は全身に武装色を纏っていた。勿論、ただ纏うだけでは溶岩に焼かれて終わりだ。

 

 だから、俺は触れずに弾く流桜を全身で行っていた。

 

 本来、流桜とは不必要な場所の覇気を一点に集約させ放出する技法。ゆえに、それを全身で行うこの所業は大量に覇気を消耗させてしまいほぼ自殺行為に等しかった。

 

 だがやるしかねェ!幸い沈んだ溶岩の中は粘度が高いせいか水判定がない。後はこの全身が燃えるような熱さに耐えつつ背面の弾く覇気の出力を上げる!

 

 そうすれば……!

 

 ボコ……ボコポコ……ポコポコポコ……ドッボォン!

 

「出〜ら〜れ〜た〜〜〜〜っ!!!」

「アルガァァ〜〜!!!」

「やはり生きてたか!?にしてもまさか這い出てくるとは……!!」

「へぶっ!」

 

 溶岩から勢いよく飛び出した俺は地面に倒れ込む。さっきのは弾く覇気で無理やり体を浮かせていただけで体自体は未だ動かせないからな。

 

 と言うか……。

 

「アッツ!!?熱々っ!!あちゃちゃちゃっ!!」

 

 溶岩に触れてなくても至近距離で熱は当てられ続けていたから全身が火傷したように熱い。つーか熱い通り越して痛い!

 

 だが、最悪の自体は回避できた。

 

「アルガ大丈夫か?」

「ああ、何とか……。だけどまだ体が動かない。ルフィは?」

「覇気はまだ戻ってないが”ギア4,,を途中で止めたから体は動く」

「そうか」

 

 そうかそうか動くか……なら、いけるな。

 

「やるぞルフィ」

「いや、お前動けねェだろ。無理すんな」

「何言ってんだ。それなら覇気を使えないお前だって厳しいだろうが」

「何だとォ〜!!」

 

 カチンときたルフィが怒りの声を上げるが別にこの戦いを降りろと言ってるわけではない。

 

 誤解を解くために少し大きめな声で伝える。

 

「だから、()()でやんだろうが」

「ンン?」

 

 ここで冷静になったルフィに作戦を話す。そこへゼットが近付いてきた。

 

「動けぬ者と覇気を使えぬ者。もう貴様らに勝機はない。さっさと諦めて───何ィ?」

「そうさ、俺達はもう満身創痍。だがな……二人の力を合わせれば!!」

 

 ゼットは思わず歩みを止める立ち尽くし。その視線の先には、俺を背負ったルフィの姿。そう、体を動かせない俺を担いでルフィが戦う。それが俺達の作戦だ!

 

「ホントに戦えんのかこれで……?」

「何だよお前好みの合体戦士作戦だぞ。もっと喜べや」

「かっこ悪ィ……」

 

 非常に遺憾である。

 

 いいじゃないかこれでも。チェスマーリモの時は喜んでたって聞いたぞ。それと何が違うよ?

 

「そんなマヌケな格好で本当に勝つ気でいるとは……もっと真面目にやれェエエ!!!」

 

 おふざけと思ったゼットは怒りが込み上げ突撃してくる。俺を担いでいるせいで避ける余裕がないルフィはゼットの振り上げた拳に対し殴り合う選択しかできなかった。

 

 覇気を使えないルフィがそんな事をすれば当然撃ち負ける。だがな……。

 

「俺も生物に対してやるのは初めてだが……ぶっつけ本番で行くぞルフィ!!!」

「おう!!!」

 

 ルフィもまた拳に力を込めゼットの黒腕に向けて殴りつけた。そして……。

 

 ドゴォオオン!!!

 

「何っ!!?小僧の腕に……なぜ武装色が!?」

 

 覇気が切れたルフィの拳には確かに武装色が纏われておりゼットの黒腕と拮抗していた。

 

 うっしゃあ!成功したぜ他者への武装色纏い!

 

 武装色は武器の様な無機質な物体への付与は割と簡単だ。だが、生物となるはその難易度はアホほど跳ね上がる。

 

 自身の血液など体中を巡り流れるモノに沿って纏う必要のある武装色を他者で行うなんて芸当言葉にするだけでもその難しさが容易に想像できる。

 

 だが、この2年の修行で覇気の扱いに関してはマスターしたと自負できるレベルに仕上がっている。それに加えレイリーさん曰く他よりも覇気の容量が多いと言われた俺ならまだまだやれる!

 

「不格好上等!!元より戦いにスタイリッシュさなんざ求めちゃいねーんだよォ!!」

「”ゴムゴムのォ〜象銃連打(エレファントガトリング),,!!!」

「チィッ!!小賢しい!!!」

 

 次々と飛んでくる巨拳を弾いて捌くゼット。キリがないと考えたのかタイミングを見計らい頭上へと跳んだ。

 

「だが、その勝利への執念は認めてやろう!おれはNEO海軍総帥ゼット!!!全ての海賊の信念を打ち砕く男だァ!!!」

 

 名乗りを上げ自身を鼓舞するゼット。

 

 上空から急加速し俺達に迫る。ルフィも攻撃の軌道を変えゼットに向けて連打を仕掛けるが”剃,,”月歩,,の合わせ技”剃刀,,で攻撃を避けつつ接近する。

 

「おれの信念は誰にも折られねェ!!お前が何だろうと関係ねェ!!!おれは海賊王になる男だ!!!!」

 

 もう連打はムダだと踏んだルフィは連打を止め大技の一撃に出る。

 

「”ゴムゴムのォ〜灰熊銃(グリズリーマグナム),,!!!」

「”破壊する黒腕(レイヴンスマッシュ),,!!!」

 

 互いの大技が衝突する。余波で引き飛ばされそうになったが意地で耐えていると両者の拳が弾かれ宙に上がる。

 

 そう弾かれたのだ。つまり、今の俺達の攻撃は奴と拮抗している証拠。まだ戦えると自信がつき一気に畳み掛ける。

 

「もう一踏ん張りだ!!気張れルフィ!!!」

「ウオオオオオッ!!”ゴムゴムのォ〜,,……!!!」

「面白い!!最後の足掻き見せてみろォ!!!」

 

 巨大化させた片腕を後ろに伸ばし拳に灼熱の炎を纏わせる。これで擬似”業火拳銃,,を放てるが、きっとまだ火力が足りない。

 

 俺達を倒すためにこれまで以上の攻撃を仕掛けるくるハズ。だから……!

 

「”降霊「鬼火」(こうれいおにび),,!!!」

「───ッ!!?奴の拳が光って……上等だ。こうなってしまったら仕方がない。元戦友の技を借りよう」

 

 さながら天から流星の如く落下する隕石のように見えるルフィの拳を見てゼットはサングラスをかけ直し不敵に笑った。

 

 その時、ゼットが握る拳に俺達は一瞬ゾッとした。何故だか奴の拳から果てしない宇宙が見えたからだ。

 

 だからと言って止まるわけには行かない。ここで必ずぶっ倒すためにも!

 

 そして、両者の今出せる最大火力の一撃がぶつかった。

 

 

「”拳骨破壊(ギャラクシースマッシュ),,!!!!」

「”隕石砲(メテオガン),,!!!!」

 

───カッ!!!ドガァアアアアアン!!!!

 

 衝突した瞬間、真っ白に光り辺りを眩しく照らす。まるで爆発が起きたように。

 

 視界は見えない。だが、確かに聞こえる。二人の攻撃がぶつかり合い今も尚押し負けんと張り合っている音が。

 

「ウギ、ギギギギイイイッ!!!ハアッ、アアアアアアアア!!!!」

「グッ、ヌゥゥゥッ!!!ウ、オオオオオオオッ!!!!」

 

 絶対に勝つと言う信念が最高潮に燃え上がりそれが雄叫びとなって声を張り上げるルフィとゼット。その熱意が拳の宿り周囲に覇気を撒き散らし溶岩がさざ波を起こす。

 

 そして───

 

海賊王に!!!おれはなるゥゥウウウ!!!!

「なっ!!?お、圧され───」

 

───ズドォオオオオンッ!!!!

 

 迫りくる宇宙を突き破り隕石はゼットに激突した。

 

 確かな手応えを感じたルフィはニヒッと笑みを浮かべ腕を戻す。するとそこには体に限界が来たせいか、或いは最後に覇気を限界以上に使ったせいかアインの能力が解かれ元の姿に戻っていくゼットの姿が。

 

 それを見て安心したのかルフィも限界だったようで一気に体の力を抜く。俺の覇気とは言え無理やり体中に巡らせたのははやり肉体的にもキツかったのだろう。

 

 ……いや待て、今割と高い所から落下中だから下手すると俺ヤバいんだが?

 

「うへェェ〜……も、疲れたァ……」

「おいルフィ!もうちょい気張ってくれ!?ゴム人間のお前はいいだろうが俺生身の人間だぞ!?おいって───ッ!!?」

 

 ルフィに発破をかけていると見聞色に反応が出る。おい嘘だろ……アイツまだっ!?

 

「ゲフッ!?ごほげほっ!これが、奴の言っていた運命の強制力だと言うのか……ごほごほっ!だが、まだ倒れん……!」

 

 元の年齢に戻って喘息も酷くなっているゼット。だが、執念だけで倒れることを拒みその大地に踏み止まっている。

 

「ざ、最後、には……ムギぎ、麦わらが、勝つ?ぞ、んな運命……ねじ曲げてクれるゥ!!見でロ、ぼ……ん……しゃ!!」

「マジかよあの野郎」

 

 もはや言葉が出ない。サングラスは砕け目の焦点も合ってない。何なら片方は白目を剥いている。

 

 それでも尚コイツは……ッ!

 

「あ、そうか……。だからアイツは……」

 

 その時、俺はゼットの虚ろな瞳を見て察した。何故ここまで戦うのか。何故そこまでして無茶をするのか。

 

「体は……」

 

 まだ戻りきっていないが……いけるか。

 

 覇気を使うことに専念していたおかげであまり動かしていなかった俺の体は少しだけなら動かせるぐらいには回復していた。

 

「ルフィ、ここまでありがとな。後はゆっくりしててくれ」

「お前にだけェ、行かせるかァ……おれもォ〜……」

「無茶すんなって。戦いはもう終わってる。この戦いは俺達の勝ちだ」

 

 そう説明するがまだ倒れぬゼットを見て意味がよく分かっていない様子のルフィ。

 

「ここからは癇癪を起こしたジジイを止めるだけ。だから後は任せろ」

「アルガ……うわっと!」

 

 ルフィの背中から降りゼットに向かい落下する。その間も軽く拳をニギニギし具合を確かめる。

 

 まだほとんど動かないが……体に力が入らないのなら、能力で無理やり引き出すまでだ!

 

「”降霊「呼憑(こうれいよびつ)き」,,!!!」

 

 能力で強制的に肉体を強化し全身から淡い光を纏う。よし、これならまだ戦える。

 

 そして、ゼットの前に着地し近距離で向かいあった。

 

「かか、海……賊は……全員……滅亡させ、る……!」

 

 武器は重いので地面に置きステゴロで構える。すると再び母さんの思念体が現れた。

 

『急に途切れて母さん心配したわ。それにしてもだいぶ弱ってきたわね』

(ああ、だけど後もう一押し欲しいんだ。力を貸してくれ)

『勿論いいわよ。でも、それなら今回はスペシャルゲストに来てもらいましょう!と言うよりもう来ちゃってます♪』

(スペシャルゲスト?)

『ええ、本来なら前世のアナタが知り合った人しか呼び寄せられないのだけど……余程想われていたのね彼……』

 

 母さんがゼットを見つめ優しく微笑む。

 

『”降霊(こうれい)呼憑(よびつ)ぎ」,,は死者生者との境界線を魂で繋げる技。あの世とこの世で強く想い合い、その気持ちが強ければ強い程惹かれ合う。それが魂と言うものよ』

 

 この技を改めて説明すると母さんはウインクし突如現れた二体目の思念体に声をかけた。

 

『黄泉の国で仲良くなった私の友人。彼女に、彼を止めて貰いましょう。お願いできるかしら?』

『ええ、任せて』

 

 その人を見た瞬間言葉を失った。俺はこの女性を知っている。前世ではない、それよりもずっと昔……転生する前のFILM Zの劇場で。

 

 この人は、ゼットの───

 

『そういう訳だから、私の旦那を止めるの手伝ってくれるかしら?ソールの息子さん』

(はい、こちらこそ)

 

 FILM Zでもこの人の情報は全くと言っていい程描写されなかった。だからあまり重要視していなかったが……。

 

「お前、めっちゃ愛されてたんだな」

「ア……ア"ア"ァ……」

「なのに今ではテロリストのトップで海賊を滅亡するためにこの島諸とも自分の残ったものすべて犠牲にしようとするなんて……あの世で、と言うかここで奥さんが泣くぞてめェ」

 

 ずっと考えていたことがある。

 

 仮にゼットの計画が成功すれば四皇や海軍、新世界にいる猛者達は一網打尽にできるだろう。

 

 ……だけどそれまでだ。

 

 "偉大なる航路(グランドライン)"の前半の海や他の4つの海にいる海賊達は生き残ったままこれからも悪事を働くだろう。爆心地となるこの島にいたら自身は確実に死ぬのは分かっている筈なのに。

 

 だから思ったんだ。ひょっとしてゼットはもう疲れていただけなんじゃないのか?生きていくのに。

 

 ここで命を絶てばあの世また家族に会えるからと道半ばで区切りをつけようと。だとするのなら、とんだ半端者のクソジジイじゃないか。

 

「だったら……」

 

 それでも今もこうして必死に足掻いているのは何かこの世に可能性を見つけたいからなのか。だとするのであれば……。

 

「0か100でしか結論の出せねェ極論オヤジに程々って言葉を教えてやるよ!!!」

 

 俺の声が合図となり同時に動いた。

 

 ゼットの黒腕が俺の顔面を強打。とても74歳の肉体とは思えない覇気の質量だ。頭がクラクラしやがる。

 

 だが、俺がやるべきは殴り合いじゃない。

 

「今、目を覚まさせてやるよ!」

 

 ゼットの拳を振り払い握りしめた拳を開き───

 

 パッチィィィイイイン!!!

 

「っ!?ぐ、んん……?」

 

 ビンタしてやった。ゼットの頬を思いっきり。とはいえ覇気は込めていないのでそこまで痛くはない。それでも、目覚ましには十分だ。

 

 正気を失いかけていたゼットが途端に大人しくなり俺を見るないなや数秒ほど真顔で見つめてくる。そして、小さく口が開いた。

 

「どういう事だ?何故、貴様から……()()の面影が……」

「ようやく話せるようになったな」

 

 目に正気が戻り冷静になったゼット改めて対面すると数秒の間をおいて話を切り出した。

 

「戦いは終わりだ。肉体も元に戻って覇気も弱ってる。これ以上は海軍が来る可能性もあるし潮時だな」

「終わっちゃいないさ。ダイナ岩を起動させれば」

「そもそも、どうしてそこまで拘るんだよ?ピリオ島を噴火させれば新世界の海賊は死ぬがお前も死ぬんだぞ?他の海の海賊共を残してな」

「………貴様には解るまい」

 

 ゼットは遠い目で空を見据える。

 

「愛する家族を、大切な教え子たちを守れなかったら悔しさが!信じてきた組織に裏切られた怒りが!!何も出来なかった己の無力さが……!!!」

 

 その目には再び怒りが宿る。

 

「貴様ら海賊が平気な面で容易く奪う命の尊さを知らしめる為にも、己を罰する為にも……おれはダイナ岩を使って───」

「中途半端だな」

「……何だとォ?」

 

 これ以上はとても聞いていられなかった。

 

 ザッザッと一歩また一歩と歩みを進めゼットへ近づく。ゼットの癇癪とも言える暴走をこれ以上この人に見せたくなかったから。

 

「あれだけデカい口叩いておいて世界から海賊はなくなんねーし民間人には甚大な被害が出るし。お前今どんだけ自分勝手な事してると思ってやがる」

「それでもやらねばならないんだ。世界の脅威、その大本は潰す為にも。奴らは……いや、()はこの世にいちゃいけない」

「奴……?」

 

 海賊って言う不特定多数ではなく特定の人物の言い回し。四皇の誰かはたまた右腕を切った海賊か?それとも……。

 

 まあ、誰を指していようがこんな暴挙を許すわけには行かないな。

 

「貴様の言う通りもう時間がない。噴火の邪魔はさせん。どうしても止めたいのであれば……このおれを殺して行けェ!!!」

「結局そこに落ち着くのかよ。わかった」

 

 もはやコイツに言葉だけの説得では心は揺らがないのだろう。だったら最後まで付き合ってやろうじゃないか。

 

「男には何も考えずがむしゃらに殴り合いたい時ってのがあるよな。いいぜ、相手してやるよ」

 

 そういい俺とゼットは同時に両腕を武装色で黒く染めた。

 

「かかってこい!!これが最後だァアアア!!!」

 

 

 

 

 あれからどれぐらい経っただろう?何時間か?それともまだ数分か?同時に前へ出てノーガードで殴り合いを始めてから時間の感覚が消えていた。

 

「ブホッ!?んにゃろう!!オラァ!!」

「ぐはっ!?グォォ……まだまだァ!!」

 

 顔、腹、体中アザだらけになりそれでも倒れず目の前の相手に拳を振り下ろし続けた。

 

「ハアッハアッ!!いい加減くたばれやクソジジイ!!」

「ゴホゴホッ……!そいつァおれのセリフだ。おれは言ったはずだぞ「殺して行け」と……!!なのに何故拳に殺気が籠もっておらん!?ここへ来て臆したか!!それならおれがお前を殺すまでだ!!!」

 

 そう怒気を撒き散らしゴキィン!と俺の頬に衝撃が走った。痛みで意識が飛びそうになるのを歯を食いしばって留まる。

 

 ゼットの言う通り俺は殺気を込めたパンチを打つなんて出来ない。でも、俺は何もゼットを殺したいワケじゃない。

 

「そうだよなァ……」

「ぬっ!?コイツまだ……!」

「お前は俺を殺したいんだよな。だけど、逆なんだよ。俺はお前の殺したい気持ちと同じぐらい……お前に生きててほしいんだよ!!!」

「───ッ!!?」

 

 俺の言葉に意表を突かれたのか勢いを止めてしまうゼット。だが、俺はお構い無しに懐へ入り腹へ重い一撃をぶち込んだ。

 

「ゴフッ!!?……生きてて欲しいだとォッ?何を言って……」

「そりゃ守りたかったもん守れなかったら悔しいし辛ェよな!!俺だってそうさ!!!救いたくても救えなかった命なんて沢山ある!!」

 

 母さん、父さん、タイガーさん。本当は生きててほしかった白ひげにおでんさんやワノ国で亡くなった侍たち……。俺にもっと力があれば何て妄想を何度繰り返したことか……!

 

「だけど!!!それでも必死こいて足掻いてんだよ!!お前みたいに自暴自棄になってまだ残ってるもん守れるもんがあるのにそれすら自分から投げ捨てて「これで良いんだ」「正しいんだ」とか抜かすようなマネ絶対しねェんだよ!!!!」

「おれに……残っているもの……?そんなのある訳が───」

 

 未だ目を向けないコイツに苛立ちを憶えとうとう昂ぶった気持ちが爆発してしまった。

 

 

「ボケが回ってんじゃねェよ耄碌ジジイ!!!振り返ってその目ン玉ひん剥いてでもよく見てみやがれ!!!お前に何が残っているのか!!!!」

 

 

 ゼットは何のことだと分からない様子で後ろを振り向くと……ようやく目に映る。

 

「───ッ!!!」

「失ったもんばっか数えんな!!!ないものはない!!今、お前に残っているもんは何だァ!!!!」

 

 ゼットの目に入ったもの。その視界の先にいた───心配そうにこちらを見ていたアインをこれまで見たことのない表情で見つけていた。

 

「ゼット先生」

「アイン」

「あっただろ。お前の残っていたもの」

「おれに、残っていたもの……か」

 

 そこでようやくゼットから殺意が消えていく。ゼットの心情を察した俺はそれを見て改めて問いかける。

 

「もう一度聞くぞ?このまま新世界を終わらせたらアインや他のNEO海軍の奴らも当然死ぬ。まだ、進むのか?」

「元よりNEO海軍はこの計画のために命など島に捨てている」

「お前っ!」

 

 コイツまだ……!そう思った時、遮るようにゼットは声を張り上げる。

 

「だがっ……」

「えっ」

「残りの人生をあいつらと共に過ごすのも、悪くない……と今しがた思い始めてしまった自分がいる」

「ゼット……」

(アナタ……)

 

 その言葉に嘘はないのだろう。事実、殺意どころか今の奴からは戦意すら感じられなかった。

 

「大切なものはずっと傍にいた。わかっていた筈だったんだがなァ。いや、だからおれはあえて蓋をしていたのかもしれん」

 

 少し顔を俯かせると顔を上げ俺を見つめる。その時、ゼットは優しい目をしていた。

 

「小僧……いや、"鬼の戦漢"アルガ。この勝負……おれの敗けだ」

 

 そう言い残しドサッと背を地面につかせ倒れた。同時に俺も限界が来てしまい”降霊「呼憑ぎ」,,が切れてしまう。

 

 それにより母さんも消えゼットの奥さんもいなくなる。だが、消える直前彼女はゼットを見つめた後俺の笑顔でお礼を言ってくれた。

 

(アルガ、ゼファーを止めてくれてありがとう)

 

 技の反動で声を出す余力もなかった俺はそのお礼に対し笑って応えその場に倒れた。

 

「終わった……」

 

 マジで強かった。思い返せば若ゼットなんつー強さだよ。とてもひとりじゃ倒せなかったわ。

 

「おつかれアルガ」

「ルフィ、お前もう平気なのか?」

「ああ、お前のお陰でしっかり休めたし体も動く!!帽子も取り返したし満足だ!!」

「そりゃよかった」

「アルガー!!ルフィー!!」

 

 ホッと息をなでおろすと遠くで見ていたのか仲間達が駆け寄ってきた。けど、ひとり足りない。

 

「あれ?ねえウソップ、ゾロは?」

「さあ、迷子じゃね?」

 

 あの野郎……。今回マジで良いところなしじゃねェか。アインと鉢合わせしないとここまでポンコツになるのか。

 

 ゾロへの愚痴を内心で溢していると同じようにアインと今来たビンズがゼットの元へと駆け寄る。

 

「ゼット先生!!!」

「アイン、それにビンズも……情けない所を見せた。すまない」

「そんな!!いいんです!私は先生が無事ならそれで……!」

 

 すすり泣き抱きつくアインの頭を優しく撫でるゼット。すると、お互いに目が合い思い切って聞いてみることにした。

 

「なあゼット、聞きたいことがある。お前は俺達と出会う前から知っている感じがした。そして、今この状況すらも」

「そうだな。色々と趣向を変えていたが……概ねおれの知る展開になってしまった」

「お前はその情報を、どこで知った?」

 

「海軍を辞めしばらくした頃だ。アイツは嬉々としておれの前に現れた」

「アイツ……?」

 

 アイツって誰のことだ?まさかとは思うが、いやFILM Zのストーリーをゼットに話した奴がいるのなら間違いなくそいつは……。

 

「ああ、アイツはこの先のおれの未来を予言……いや確信していた」

「っ!!」

「おれからもいいか?」

 

 ゼットの言葉に思わず鼓動が激しくなるとゼットからも質問を受けた。

 

「何だ?」

「お前はひょっとして───」

 

 

「はい、そこまでだよォ〜」

 

 

 突如聞こえてきた声に一同一声に顔を向けるとその先には黄猿がいた。いや、それだけじゃない。数百数千と言う数の海兵が配置されている。

 

 その戦力にウソップが思わず腰を引いてしまう。

 

「ウゲェッ!?海軍!!やっべもうここまで来ちまってたのかァ!!?」

「マズイな、こっちは体力を消耗してるってのに……」

 

 仲間達が慌てる中、それを見ていたゼットは神妙な顔つきになりボソリと呟いた。

 

「これが、運命の強制力と言うやつか……」

「えっ?」

 

 自身の変えられない運命を突きつけられたにも関わらず顔つきが変わり立ち上がると、ひとり海軍の方へと歩き出した。

 

「アルガよ、今日ここでお前と戦えてよかった。お陰で最期におれは自分の本当にやりたい事を見つけられた気がする」

「はっ?ゼット何を言って……!」

「好き勝手した落とし前は取らんとなァ。麦わらのルフィ。お前にはお前の冒険があるのだろう。ここはこのゼットが引き受けた!」

 

 ここで皆はゼットが囮としてたったひとりであの数の海兵を相手にしようとしていることに気が付きアインは慌てて止めようとした。

 

「そんな!ダメです!!先生ェ!!!アアッ!?」

 

 しかし、アインとゼットを分け隔てるように巨大な氷塊の壁が現れた。壁の向こうにはゼットと海兵が残っており明らかに誰かが俺たちを逃がすように仕向けていた。

 

 まあ、こんなマネできるのはアイツしかいないけどな。

 

「いやっ!!先生!!先生ェエエ!!!」

 

 アインはその場を動こうとせず氷塊の壁を弱々しく叩く続ける。ビンズも立ち尽くし動こうとしない。

 

「………」

 

 ルフィはゼットの覚悟を汲み取り表情を変えると気持ちを切り替えた。

 

「行こう、早くしねーとオッサンの努力が無駄になる」

「ルフィ……」

 

 そうだ、劇場版だってその選択を取った。判断は間違っていない。

 

 だけど、何だろコレ……すごいモヤモヤする。

 

「ゼット先せ……ゼファー先生ェェ……」

「っ!」

 

 叩き続きけ手から血をポタポタ流すアインは呟くようにゼットの名を呼ぶ。

 

「先生の為に死ぬのはいい。今回の計画で一緒に死んだって構わなかった……だけど!!私たちを置いて先に先生が亡くなるのはイヤァ……イヤなのォ」

「…………っ!!」

 

 気付けば俺は限界だった体が動いておりアインの方へと足を進んでいた。

 

「アルガ?どうした早く行かないと」

「ああそうだな。だけどコイツらもゼットが残した宝だ。だから俺が逃がす間にゾロ探しとサニー号出航の準備を頼む」

「あ、そういやゾロ忘れてた。ロビン、サンジ!ゾロ頼む!!」

「仕方ねェな。ったく最後まで迷惑かけやがってあのマリモ!!」

「アルガ……!」

 

 ルフィの指示にサンジは渋々承諾し各々行動に出る。そんな中、ロビンは俺に一言いい残す。

 

「無茶はしないで」

 

 伝え終えるとサンジと一緒に行ってしまう。

 

 あらら、これは何をするのかバレちゃったかな?ロビンって何かと俺に対して勘が冴えるんだよなァ。後で土下座で謝ろう。

 

「モサ……」

「鬼の、戦漢……?」

 

 そうして、アインとビンズの下へ行き……。

 

「おい、何をする気だ?人がせっかく好意で助けてやったっていうのに」

「青キジ……!」

 

 上から高みの見物をしていたクザンが俺の行動に見かねて降りてきた。アインとビンズはこの氷塊の壁を作った張本人だとすぐ気付きキッと睨見つける。

 

 しかし、そんな睨みなど一切気にせず俺に語り出す。

 

「個人的にもお前を気に入ってんだ。ロビンの件もあるしな。だからここで死なれたくねェ」

「ヘェー、随分と優しいじゃんか。仮にも黒ひげ海賊団のクセに」

「やっぱ知ってたか。だが、おれァ一度もあいつらを仲間と思ったことはねェ。一時的に手を組んでいる、それだけだ」

「だろうな。お前と黒ひげの性格的に合うとは思わんし」

「って、こんな話をしに来たんじゃなかった。バカな真似はするんじゃない。ゼファー先生の覚悟を踏みにじる気か」

 

 クザンは頭をポリポリと掻き話を戻す。わざわざここへ来てくれたのも俺を心配してくれているからか。優しいやつだなァ。

 

 でも、悪いなクザン。

 

「俺は基本、救える奴がいたら手を差し伸べたりするが、自身の運命を受け入れ覚悟を決めた奴にはその意志を尊重する。けどな……」

 

『残りの人生をあいつらと共に過ごすのも、悪くない……』

 

「未練が残っている奴の虚勢は別だ」

「虚勢……?あ、おいっ」

 

 クザンの声を無視しアインとビンズの前に立つ。

 

「一度だけ聞く。お前ら正直に答えろ」

「「………」」

「仮にゼットを助けても決死で逃がそうとしているアイツはその行動をよく思わないだろう。むしろ咎めるかもしれない。…………それでも助けたいか?」

 

 

「「助けたい!!!!」」

 

 

 二人の即答に俺は頬が緩んだ。

 

「だったら、お前ら───死なない覚悟を持てよ?」

 

 運命の強制力っていうものは確かに存在するのだろう。俺が加わっても物語の道筋は大本原作通りに進んでいるし。

 

 だがな、誰かが亡くなる運命まで強制されてたまるか。エースの時だってそうだ。死の運命から抜け出せた奴はいる。

 

 だったら、今回だってやってやろうじゃねェか。

 

 運命様上等だってヤツだ!

 

「アイン、ビーン」

 

 行く前にこれぐらいは教えてもいいかなと思い俺はゼットの本音を教えた。

 

 

「お前らの想いは、間違いなくゼットに届いていた」

 

 

 

 

 あいつらは、逃げられただろうか……?

 

「ハアハア……ゲボッ!」

 

 もはやただの咳で血反吐してしまう程に弱ってしまったが、まだ倒れるわけには行かない!

 

「もう十分でしょうゼファー先生。いい加減倒れてくれやせんかねェ〜」

「言った筈だ。最期の稽古をつけると……!!すぐに終わってしまっては勿体なかろう!!ドルァア!!!」

『グギャアアアア!!?』

 

 左腕を振り抜くと突風が発生し周囲に居た海兵が次々と吹き飛んでいく。しかし、その突風にも吹き飛ばされず襲いかかる中将達がこぞって剣を突き立ててくる。

 

「ゼファー先生ご覚悟!!!」

「グッ……!?」

 

 避けようにも右の義手もなく病弱の老いた身体。そして、これまで蓄積されてきたダメージが身体の自由を奪う。

 

 ここまでか……と、自身の最期を悟ったその時───目の前に巨大な植物が現れ剣からおれを守った。

 

「こ、これは……!?」

「そこまでだ!!!」

 

 何者かの声が響くと海兵が一斉に距離を取り警戒する。そして、植物が消えたらビンズとNEO海軍の軍服を着た2人の男女が現れた。

 

 ひとりはアインだがもうひとりは……っ!!?

 

「ン〜〜?誰だァ〜い?」

「フフフ、アッハッハッハ!!なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け!」

 

 ボルサリーノが尋ねると軍服を着た男が一歩前に出て高らかに応えた。

 

 

「名乗る程でもないが───俺はゼット様の忠実なる名も無き下部!NEO海軍一般戦闘員Rだっ!!!」

 

 

 

 

「あいつらはまた迷子になりやがって……ん?何だテメーら。NEO海軍の格好じゃねェな」

「アッチィ……。やっぱおれダメだ暑いとこ……」

「おいおい、お前の能力が一番アチーんだから我慢しろよ!!融解すんぞ!!?」

「ジャララララ!!おれ達ァ"チームANIORI"!!!あの方の命令でダイナ岩をトレジャーハントしに来た!!」

「バロロロロ!!おれは計画に1分1秒の遅れも許さねェ。ターゲットじゃねェが、邪魔すんなら速攻で殺すぜ"海賊狩り"ィ!!!」




今年中にはGOLDまで書きたいです……(切実)
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